短 期 大 学 部 幼 児 教 育 学 専 攻 学 生 に 対 する 幼 児 体 育 についての 意 識 調 査 33 板 谷 厚 Survey on the junior college students attitude toward the physical education for infants Atsushi ITAYA Abstract The purpose of this study was to investigate what the junior college students of the pre-school education specialty think about the PE taken in the kindergartens and nursery schools. In my questionnaire, the students were asked who teach PE and what is taught in PE. Analyses of the answers revealed that one-third of the student thought that only expert PE teachers should teach PE. Playing with balls was more preferred in the answers of the students who thought only expert PE teachers should teach PE than in those of the other students who thought only nursery teachers should teach PE. These results suggest that especially when the junior college students of the pre-school education of specialty will teach infants to play with balls, the students would require expertise in sports and physical activities. Key words : junior college students, infant, physical education, nursing, playing with balls Email: Atsushi.Itaya@gifu.shotoku.ac.jp, TEL: +81-58-278-4160 1 はじめに 現 代 社 会 に 生 きる 我 々は 科 学 技 術 を 発 展 させ 生 活 の 便 利 さを 追 求 してきた その 結 果 運 動 す る 機 会 が 減 り 生 活 習 慣 病 をはじめとする 健 康 問 題 への 対 策 に 苦 慮 するようになった このような 社 会 的 背 景 の 下 文 部 科 学 省 が 幼 児 期 運 動 指 針 1) を 策 定 するなど 幼 児 期 の 運 動 経 験 を 充 実 さ せようとする 機 運 が 高 まっている 今 後 保 育 者 養 成 校 は これまでにも 増 して 幼 児 期 の 運 動 経 験 の 重 要 性 を 理 解 し 適 切 な 援 助 ができる 保 育 者 を 育 成 することが 求 められることは 必 至 である これに 関 連 する 幼 児 保 育 現 場 での 取 り 組 みの 現 状 について 北 海 道 から 沖 縄 までの 全 国 の 幼 稚 園 43 園 を 対 象 に 行 なった 健 康 体 力 づくりの 意 識 と 運 動 指 導 の 実 態 調 査 2) によれば 40 園 (93.0%)が 何 らかの 形 で 健 康 体 力 づくりを 心 がけていた 保 育 時 間 内 に 運 動 指 導 を 行 っている 幼 稚 園 は32 園 (74.4%)にのぼり これらの 園 の26 園 (81.3%)では 保 育 者 以 外 の 体 育 運 動 専 門 講 師 ( 以 下 専 門 講 師 ) が 運 動 指 導 を 行 っていた 運 動 指 導 の 内 容 は 器 械 運 動 サッカーや 水 泳 など 特 定 の 種 目 が 多 く 挙 げられていた これらの 結 果 から 幼 稚 園 では 幼 児 の 健 康 や 体 力 づくりに 高 い 関 心 があり そ
34 板 谷 厚 の 重 要 性 を 認 識 していることが 示 唆 された しかし 実 際 の 運 動 指 導 は 専 門 講 師 にまかされ その 指 導 内 容 は 小 学 校 の 準 備 教 育 としての 意 味 合 いを 色 濃 く 反 映 して 特 定 の 種 目 の 技 能 向 上 を 目 指 したものになっており 必 ずしも 幼 児 期 に 適 した 運 動 指 導 が 行 われていないことが 示 唆 された つ まり 幼 稚 園 における 運 動 指 導 の 問 題 点 として 担 任 などの 保 育 者 の 関 わりが 少 ないことと 指 導 内 容 が 特 定 種 目 に 偏 っていることの2 点 が 挙 げられている この 報 告 の 対 象 は 幼 稚 園 に 限 られている が 保 育 所 でも 結 果 が 大 きく 異 なることはないと 思 われる 保 育 者 養 成 校 は 保 育 者 を 志 望 する 学 生 に 対 する 指 導 を 通 じてこれらの 問 題 に 対 応 していかなけ ればならない しかし 具 体 的 で 有 効 な 指 導 指 針 を 策 定 する 前 段 階 として 学 生 が 保 育 所 および 幼 稚 園 ( 以 下 保 育 施 設 )で 行 われる 運 動 指 導 についてどのような 考 えを 持 っているか 予 め 把 握 す る 必 要 があると 考 えられる そこで 本 研 究 は 将 来 保 育 者 となる 可 能 性 が 高 い 幼 児 教 育 を 専 攻 する 短 期 大 学 生 ( 以 下 学 生 )が 保 育 施 設 で 行 われる 運 動 指 導 の 指 導 者 と 運 動 指 導 の 内 容 について どのように 考 えているか 調 査 した 2 方 法 2.1 対 象 者 G 大 学 短 期 大 学 部 幼 児 教 育 学 科 に 在 籍 する 卒 業 年 次 生 139 名 ( 女 性 135 名 男 性 4 名 ) を 対 象 とし た 調 査 は 前 期 開 講 科 目 の 基 礎 体 育 Ⅰ の 初 回 授 業 の 冒 頭 に 行 った 基 礎 体 育 Ⅰ は 受 講 生 を4クラスに 配 分 して 開 講 しているために 調 査 はクラスごとに 実 施 した 調 査 に 先 立 ち 対 象 者 には 質 問 に 対 する 回 答 および 提 出 は 任 意 であり 回 答 用 紙 の 提 出 の 有 無 および 回 答 の 内 容 は 授 業 成 績 になんら 影 響 しないことを 口 頭 で 伝 えた 2.2 質 問 紙 調 査 の 手 順 対 象 者 は 授 業 開 始 時 間 に 体 育 館 に 集 合 した 授 業 開 始 の 挨 拶 の 後 対 象 者 に 調 査 用 紙 (A4)を 1 枚 ずつ 配 布 し 質 問 に 対 する 回 答 を 用 紙 に 記 述 するよう 口 頭 で 指 示 した 保 育 施 設 で 幼 児 を 対 象 に 行 う 運 動 指 導 について 質 問 する 旨 を 伝 えた 上 で 次 の2つの 質 問 をした 質 問 1. 保 育 施 設 での 体 育 は 誰 が 行 いますか? 質 問 2. 保 育 施 設 での 体 育 ではどんな 活 動 を 行 いますか? 対 象 者 は 学 校 教 育 の 中 で 体 育 の 名 称 の 下 で 運 動 指 導 を 受 けてきている このことを 考 慮 して 対 象 者 に 違 和 感 なく 受 け 入 れられるよう 運 動 指 導 を 示 す 用 語 として 体 育 を 採 用 した 回 答 方 法 は 本 研 究 は 学 生 の 実 態 を 捉 えることを 目 的 としたので 予 め 選 択 肢 を 用 意 せず 複 数 回 答 可 能 な 自 由 記 述 とした 対 象 者 にはできるだけ 具 体 的 に 思 いつくだけ 記 述 するように 求 めた 回 答 用 紙 は 裏 面 も 使 用 可 能 とし 回 答 のための 十 分 なスペースを 与 えた 用 紙 には 記 名 するよう 依 頼 した 2.3 データ 分 析 予 備 分 析 としてすべての 回 答 を 逐 語 的 に 集 計 し 意 味 内 容 が 同 一 とみなせるものをまとめた さ らに 意 味 内 容 に 基 づいて 分 類 し 対 象 者 の10% 以 上 に 当 たる 出 現 度 数 14 以 上 の 分 類 カテゴリーを 抽 出 した 図 1に 以 上 の 分 類 カテゴリーの 抽 出 手 順 を 模 式 的 に 示 す 質 問 1では 保 育 者 ( 担 任 主 任 先 生 等 )と 専 門 講 師 ( 外 部 講 師 体 育 専 門 講 師 体 育 の 先 生 等 )の2つのカテゴリー( 以 下 指 導 者 カテゴリー)が 抽 出 できた 質 問 2では 器 械 運 動 (マット 跳 び 箱 鉄 棒 平 均 台 ) ボー
短 期 大 学 部 幼 児 教 育 学 専 攻 学 生 に 対 する 幼 児 体 育 についての 意 識 調 査 35 ル 運 動 (ボール 遊 び ボール 投 げ サッカー ドッジボール 等 ) 基 本 的 な 運 動 (かけっこ ジャンプ 発 達 に 合 わせた 運 動 等 ) なわとび(なわとび 大 なわ 等 ) 伝 承 あそび( 鬼 ごっこ だるまさんが ころんだ) 体 操 ダンス( 体 操 リズム 体 操 ダンス おどり 等 ) 固 定 遊 具 ( 登 り 棒 雲 梯 す べり 台 等 ) フラフープの8つのカテゴリー( 以 下 内 容 カテゴリー)が 抽 出 できた これらのカ 1 テゴリーに 全 対 象 者 の 回 答 を 分 類 し 統 計 解 析 に 供 した 図 1 分 類 カテゴリーの 抽 出 手 順 逐 語 録 から 同 意 語 をまとめ それらをさらに 上 位 概 念 のカテゴリーに 分 類 した 約 10%にあ たる 出 現 度 数 14 以 上 のカテゴリーを 質 問 1と 質 問 2でそれぞれ 指 導 者 カテゴリーと 内 容 カテゴ リーとして 抽 出 した 2.4 統 計 解 析 質 問 1についてはカテゴリー 間 で 出 現 率 が 異 なるかどうかを 検 討 するためにMcNemarの 検 定 を 実 施 した さらに 保 育 者 のみ 専 門 講 師 のみ および その 両 方 を 回 答 した 者 の 出 現 率 を 適 合 度 検 定 によって 検 討 した 質 問 2についてはCochranのQ 検 定 によってカテゴリー 間 で 出 現 率 が 異 なるかどうか 検 討 した 内 容 カテゴリーについて 出 現 率 が 均 等 でないと 判 断 された 場 合 には 多 重 比 較 検 定 として 内 容 カテゴリーのすべての 対 についてBonferroniの 方 法 によって 有 意 水 準 を 調 整 したMcNemarの 検 定 を 実 施 した 指 導 者 カテゴリーと 内 容 カテゴリーの 回 答 間 の 関 係 性 を 検 討 するために 質 問 1で 保 育 者 のみを 回 答 した 者 と 専 門 講 師 のみを 回 答 した 者 について 内 容 カテゴリー 毎 に 出 現 率 の 差 の 検 定 ( 独 立 性 の 検 定 )を 行 った なお 保 育 者 と 専 門 講 師 の 両 方 と 回 答 した 参 加 者 の 内 容 カテゴリーデータは どちらの 指 導 者 を 想 定 して 回 答 したものか 判 別 できないので この 分 析 からは 除 外 した すべての 統 計 解 析 の 有 意 水 準 はα=0.05とした 3 結 果 質 問 紙 は 対 象 者 全 員 から 回 収 できた ただし 質 問 1について 質 問 の 意 図 が 理 解 できていないと 考 えられる 回 答 が1 名 ( 男 性 )に 認 められた 本 研 究 の 目 的 を 考 慮 して この1 名 の 回 答 は 予 備 分 析 を 含 めたすべての 分 析 から 除 外 した
36 板 谷 2 厚 3.1 指 導 者 カテゴリー 出 現 度 数 は 保 育 者 96 名 (69.6%) 専 門 講 師 98 名 (71.0%)であった ( 図 2) McNemarの 検 定 の 結 果 保 育 者 と 専 門 講 師 の 出 現 率 に 有 意 な 差 は 認 められなかった(X 2 = 0.012, p = 0.9128) 保 育 者 のみ 専 門 講 師 のみ およびそれらの 両 方 を 回 答 した 者 は それぞれ 40 名 (29.0%) 42 名 (30.4%) および56 名 (40.6%)であった( 図 2) 適 合 度 検 定 の 結 果 これらの 出 現 率 の 相 違 に 有 意 性 は 認 められなかった(X 2 = 3.304, p = 0.1917) 出 現 度 数 ( 人 ) 125" 100" 75" 50" 3.2 内 容 カテゴリー 内 容 カテゴリーの 出 現 度 数 を 図 3に 示 す CochranのQ 検 定 の 結 果 各 内 容 カテゴリー 間 の 出 現 率 に 有 意 差 が 認 められた(Q= 141.274, ) 多 重 比 較 検 定 の 結 果 器 械 運 動 77 名 (55.8%) ボール 運 動 63 名 (45.7%) 基 本 的 な 運 動 54 名 (39.1%) および なわとび47 名 (34.1%) は ぞれぞれ 伝 承 あそび23 名 (16.7%) 体 操 ダンス20 名 (14.5%) 固 定 遊 具 17 名 (12.3%) フ ラフープ14 名 (10.1%)よりも 有 意 に 出 現 率 が 高 かった( 表 1 図 3) さらに 器 械 運 動 となわと び 間 の 出 現 率 の 差 に 有 意 性 が 認 められた 25" 0" 0 保 育 者 専 門 講 師 図 2 指 導 者 カテゴリー 別 度 数 白 抜 きは 保 育 者 のみ 黒 塗 りは 専 門 講 師 のみ 灰 色 の 塗 りはそれらの 両 方 を 回 答 した 度 数 ( 人 ) 分 析 総 数 は138 保 育 者 と 専 門 講 師 の 出 現 率 間 に 有 意 差 なし 保 育 者 のみ 専 門 講 師 およびそれらの 両 方 を 回 答 の 出 現 率 間 に 有 意 差 なし 100 75 出 現 度 数 ( 人 ) 50 25 0 器 械 運 動 ボール 運 動 基 本 的 な 運 動 なわとび 伝 承 遊 び 体 操 ダンス 固 定 遊 具 フラフープ 内 容 カテゴリー 図 3 内 容 カテゴリーの 出 現 度 数 *: p < 0.05.
1 短 期 大 学 部 幼 児 教 育 学 専 攻 学 生 に 対 する 幼 児 体 育 についての 意 識 調 査 37 表 1 各 内 容 カテゴリー 間 の 出 現 率 比 較 ( 多 重 比 較 検 定 の 結 果 ) X 2 = 2.817 p = 0.0933 X 2 = 6.286 p = 0.0122 X 2 = 11.681 p = 0.0006 X 2 = 33.440 X 2 = 41.813 X 2 = 45.803 X 2 = 46.331 X 2 = 0.810 p = 0.3681 X 2 = 3.879 p = 0.0489 X 2 = 22.368 X 2 = 27.138 X 2 = 29.779 X 2 = 35.446 X 2 = 0.554 p = 0.4567 X 2 = 15.254 X 2 = 19.446 X 2 = 19.2817 X 2 = 27.161 X 2 = 9.796 p = 0.0017 X 2 = 13.796 p = 0.0002 X 2 = 16.820 X 2 = 24.976 X 2 = 0.114 p = 0.7356 X 2 = 1.136 p = 0.2865 X 2 = 1.829 p = 0.1762 X 2 = 0.114 p = 0.7356 X 2 = 0.893 p = 0.3447 X 2 = 0.148 p = 0.7005 網 掛 け 部 分 は 統 計 的 に 有 意 なおBonferroniの 方 法 によって 修 正 した 有 意 確 率 は0.0018 (0.05/28) 3.3 指 導 者 カテゴリーと 内 容 カテゴリーとの 関 係 性 質 問 2において 保 育 者 のみ 回 答 した 者 と 専 門 講 師 のみ 回 答 した 者 の 各 内 容 カテゴリーの 出 現 率 の 差 を 検 討 した 結 果 を 図 4に 示 す ボール 運 動 では 専 門 講 師 のみの 群 で 出 現 率 が 有 意 に 高 く なった ( 保 育 者 のみでの 出 現 率 vs. 専 門 講 師 のみでの 出 現 率 [%]: 30.0 vs.52.4, X 2 = 4.228, p = 0.0398, 以 下 同 様 ) 伝 承 遊 び(22.5 vs. 7.1, X 2 = 3.868, p = 0.0492) 固 定 遊 具 (27.5 vs.0.0, X 2 = 13.339, p = 0.0003) およびフラフープ (20.0 vs. 2.4, X 2 = 6.509, p = 0.0107)では 保 育 者 のみの 群 での 出 現 率 が 有 意 に 高 くなった 器 械 運 動 (45.0 vs. 52.4, X 2 = 0.447, p = 0.5038) 基 本 的 な 運 動 (50.0 vs. 35.7, X 2 = 1.709, p = 0.1911) なわとび(35.0 vs. 28.6, X 2 = 0.391, p = 0.5318)および 体 操 ダンス(12.5vs. 16.7, X 2 = 0.285, p = 0.5934)では 出 現 率 の 群 間 差 に 有 意 性 は 認 められなかった 60 保 育 者 専 門 講 師 40 出 現 率 (%) 20 0 器 械 運 動 ボール 運 動 基 本 的 な 運 動 なわとび 伝 承 遊 び 体 操 ダンス 固 定 遊 具 フラフープ 内 容 カテゴリー 図 4 対 象 者 間 の 内 容 カテゴリー 別 出 現 率 比 較 白 抜 きは 保 育 者 のみ 黒 塗 りは 専 門 講 師 のみ *: p < 0.05.
38 板 谷 厚 4 考 察 4.1 指 導 者 カテゴリー 分 析 の 結 果 保 育 施 設 における 運 動 指 導 者 として 保 育 者 と 専 門 講 師 のそれぞれを 考 えた 学 生 がほ ぼ 同 数 ( 約 7 割 )であった さらに 保 育 者 のみ 専 門 講 師 のみ および その 両 方 と 考 える 学 生 がほぼ 均 等 に 存 在 することが 分 かった 先 に 述 べた 先 行 研 究 では 幼 稚 園 の 約 6 割 に 専 門 講 師 がい ることが 示 され 保 育 者 の 健 康 や 体 力 づくりに 関 する 知 識 や 理 解 が 十 分 でないために 保 育 者 は 幼 児 の 体 育 運 動 活 動 が 特 別 なものと 考 えていることが 示 唆 されている 2) この 先 行 研 究 と 同 様 に 考 え るのであれば 本 研 究 の 結 果 は 学 生 が 幼 児 に 対 する 運 動 指 導 を 特 別 なものとして 捉 える 傾 向 があ ることを 示 しているのかもしれない しかし これと 同 時 に 約 4 割 の 対 象 者 が 専 門 講 師 と 保 育 者 の 両 方 を 挙 げたことを 考 慮 すると 学 生 が 専 門 講 師 と 保 育 者 の 協 働 や 役 割 分 担 をある 程 度 想 定 してい るとも 考 えられる 4.2 内 容 カテゴリー 各 内 容 カテゴリーの 出 現 率 を 分 析 した 結 果 器 械 運 動 ボール 遊 び 基 本 的 な 運 動 なわとびの 出 現 率 が 比 較 的 高 く 伝 承 遊 び 体 操 ダンス 固 定 遊 具 フラフープは 出 現 率 が 比 較 的 低 いこと が 分 かった 器 械 運 動 ボール 遊 び なわとびは 使 用 する 用 具 が 保 育 施 設 各 所 に 設 置 されており 学 生 が 幼 児 期 に 保 育 施 設 で 見 たり 遊 んだり 実 際 に 指 導 された 可 能 性 が 高 いものである さらに 実 習 先 の 保 育 施 設 でこれらの 用 具 を 目 にする 機 会 もある このため 学 生 が 想 起 しやすく 出 現 率 が 高 いと 考 えられる これらに 対 して 固 定 遊 具 とフラフープもまた 多 くの 保 育 施 設 に 設 置 されている が これらの 出 現 率 は 比 較 的 低 かった これらは 自 由 遊 びの 中 で 行 われ 指 導 そのものが 不 要 か 指 導 に 体 育 スポーツの 専 門 性 が 不 要 と 学 生 が 感 じていることが 示 唆 される 用 具 を 用 いない 活 動 として 基 本 的 な 運 動 伝 承 遊 びおよび 体 操 ダンスが 内 容 カテゴリーとし て 抽 出 された 幼 児 の 運 動 場 面 といえば 元 気 に 駆 け 回 っている 姿 を 想 起 することは 自 然 なことの ように 思 われる 実 際 に 基 本 的 な 運 動 に 分 類 された 回 答 は かけっこに 代 表 される 走 運 動 を 示 す ものが 大 半 であった(49/54) 伝 承 遊 びに 分 類 された 回 答 は 鬼 ごっこが 大 半 であった(22/23) 伝 承 遊 びの 出 現 率 は 比 較 的 低 く 固 定 遊 具 やフラフープと 同 様 に 伝 承 遊 びの 指 導 には 体 育 スポー ツの 専 門 性 は 必 要 ないと 学 生 が 考 えていると 推 察 される 4.3 指 導 者 と 内 容 の 関 係 性 本 研 究 の 結 果 運 動 指 導 者 として 専 門 講 師 のみを 回 答 した 対 象 者 の 方 が 保 育 者 のみを 回 答 した 対 象 者 よりも 運 動 指 導 内 容 としてボール 運 動 をイメージする 確 率 が 高 いことが 分 かった このこ とは 幼 児 に 対 する 運 動 指 導 の 内 容 として ボール 運 動 は 体 育 スポーツの 専 門 性 を 備 えた 専 門 講 師 が 指 導 する 方 がよいと 学 生 が 考 えていることを 示 唆 する ボールを 用 いた 運 動 の 典 型 である 投 球 や 捕 球 は 幼 児 期 に 習 得 すべき 基 礎 的 運 動 パターンに 含 まれるが 対 象 物 を 操 作 する 点 で 歩 走 跳 などの 生 得 的 な 運 動 とは 異 なり 幼 児 にとって 複 雑 な 運 動 課 題 の 一 つである 3) このことが ボー ル 運 動 の 指 導 には 体 育 スポーツの 専 門 性 が 必 要 だと 学 生 に 感 じさせる 一 因 となっているのかもし れない この 結 果 の 裏 を 返 せば 将 来 保 育 者 となる 学 生 本 人 が ボール 運 動 の 指 導 に 対 して 消 極 的 である ことを 示 しているとも 考 えられる 本 研 究 の 対 象 者 のほとんどが 女 性 であった(185/188) 女 子 は
短 期 大 学 部 幼 児 教 育 学 専 攻 学 生 に 対 する 幼 児 体 育 についての 意 識 調 査 39 幼 少 期 に 投 球 や 捕 球 を 学 習 する 機 会 が 男 子 よりも 少 なく 投 球 や 捕 球 が 比 較 的 未 習 熟 4) で その 差 が 成 人 にまで 存 続 する また 女 性 の 場 合 運 動 能 力 に 自 信 がないという 心 理 がスポーツへの 参 与 を 妨 げる 原 因 になることが 知 られており 5) 6) 同 様 のことが 運 動 指 導 に 対 しても 生 じることは 容 易 に 推 測 できる したがって この 結 果 の 背 景 には 投 球 や 捕 球 に 自 信 がない 女 性 が ( 多 くは 男 性 が 想 定 される) 専 門 講 師 に ボール 運 動 の 指 導 をまかせてしまいたいとの 心 情 が 働 いているのかも しれない 言 い 換 えれば 運 動 に 対 する 苦 手 意 識 が 専 門 講 師 に 対 する 依 存 を 生 じさせている 可 能 性 がある ボール 運 動 とは 対 照 的 に 伝 承 遊 び 固 定 遊 具 およびフラフープでは 指 導 者 として 保 育 者 のみ をイメージした 対 象 者 で 専 門 講 師 をイメージした 対 象 者 でよりも 出 現 率 が 高 くなった これらの 内 容 については 保 育 者 自 らが 指 導 でき しかも 普 段 の 自 由 遊 びの 中 で 十 分 に 行 っているので わざわざ 専 門 講 師 による 運 動 指 導 の 時 間 を 取 ってまで 指 導 する 必 要 がないと 多 くの 学 生 が 考 えてい ると 推 察 される 4.4 結 論 幼 児 教 育 学 専 攻 の 短 期 大 学 生 が 想 定 している 保 育 所 および 幼 稚 園 における 運 動 指 導 者 は 保 育 者 と 専 門 講 師 で その 両 方 とする 者 もあった それらを 想 定 する 学 生 の 比 率 間 に 差 はなかった 運 動 指 導 の 内 容 としては 器 械 運 動 ボール 運 動 基 本 的 な 運 動 なわとび 伝 承 遊 び 体 操 ダンス 固 定 遊 具 フラフープがイメージされており 器 械 運 動 ボール 運 動 基 本 的 な 運 動 およびなわと びをイメージする 学 生 の 比 率 が 比 較 的 高 かった 保 育 者 のみを 運 動 指 導 者 としてイメージした 学 生 は 専 門 講 師 のみをイメージした 学 生 よりも 運 動 指 導 の 内 容 として 伝 承 遊 び 固 定 遊 具 およびフ ラフープを 挙 げる 者 の 比 率 が 高 かった 一 方 専 門 講 師 のみとした 学 生 は ボール 運 動 を 挙 げる 者 の 比 率 が 高 かった これらのことから 幼 児 教 育 学 専 攻 の 短 期 大 学 生 は 幼 児 に 対 するボール 運 動 の 指 導 には 体 育 スポーツの 専 門 性 が 必 要 だと 考 えていることが 示 唆 される 文 献 1) 文 部 科 学 省 : 幼 児 期 運 動 指 針 について http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319192.htm, 2012. (2013 年 9 月 25 日 閲 覧 ) 2) 吉 田 伊 津 美 杉 原 隆 森 司 朗 : 幼 稚 園 における 健 康 体 力 づくりの 意 識 と 運 動 指 導 の 実 態 東 京 学 芸 大 学 紀 要 総 合 教 育 科 学 系 58: 75-80, 2007. 3) 松 浦 義 行 : 体 力 の 発 達 朝 倉 書 店 東 京 pp.5-123, 1982. 4) Nelson, K. R., Tomas, J. R. and Nelson, J. K.: Longitudinal change in throwing performance: Gender differences. Res. Quart. Exerc. Sports, 62: 105-108, 1981. 5) 長 見 真, 嘉 戸 脩 : 中 高 年 者 のスポーツキャリアパターンに 及 ぼす 体 育 授 業 経 験 の 影 響 東 京 学 芸 大 学 紀 要 第 5 部 門 芸 術 健 康 スポーツ 科 学 45: 173-180, 1993. 6)Spreitzer, E and Synder, E. E.: Socialization into Sport: An Exploratory path analysis. Res. Quart. 47: 238-245, 1976.
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