2/15 1 円円安になれば 目の前で株価も上昇する 非常に即効性があり 効率的な政策 円安は日本経済には良いとの見方はここに由来するといえよう 東証 1 部 ROEと米ドル円為替レート推移 (1980 年 ~2013 年 ) ( 円 ) (%) 米ドル円為替レート



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経済学でわかる金融・証券市場の話③

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金融政策決定会合における主な意見

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

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サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

【16】ゼロからわかる「世界経済の動き」_1704.indd

1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

市場では 物価上昇方向のサプライズが起こりやすい状況になっていると考えている いく つかの経路を確認してみよう 今後は 一層の円安はインフレを輸入するとの発想も醸成されやすくなる? 1. 経常収支は 5 月 12 日に 3 月分の発表が予定されているが 季節調整済の四半期ベー スでの赤字が否定できな

当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

○ユーロ

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各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

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受益者の皆様へ 平成 28 年 2 月 15 日 弊社投資信託の基準価額の下落について 平素より弊社投資信託をご愛顧賜り 厚くお礼申しあげます さて 先週末 2 月 12 日 ( 金 ) 以下のファンドの基準価額が 前営業日の基準価額に対して 5% 以上下落しており その要因につきましてご報告いたし

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第 1 四半期運用実績 ( 概要 ) 運用利回り +1.54% 収益率 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1.02% 実現収益率 ( )) 運用収益額 +3,222 億円 総合収益額 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1,862 億円 実現収益額 ( )) 運用資産残高 ( 第 1 四半期末 )

Microsoft Word ECB利下げ.doc

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中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

米国株 投資家心理が落ち着けば 上昇基調に回帰と想定 株式市場 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 長期金利の上昇を契機に急落米国株式市場は下落しました 月初に発表された1 月の雇用統計において 時間当たり賃金が市場予想を上回る伸び率となったことを受けて 長期金利が約 4 年ぶ

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米国の利上げ見送りと日本の長期化した金融緩和

米労働市場は直近の回復基調に変化なし ~FRB出口政策への影響は限定的~

「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入

平成 21 年 9 月 5 日 角山智 投資環境レポート (2009 年 9 月 ) 1. 主な株価指数 8 月は 中国株が大幅に値下がりしました 反面 出遅れていた英国株が好調です 市場 日本株 日本新興市場 J-REIT 米国株 英国株 中国株 ( 指数 ) (TOPIX) (JASDAQ) (

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(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

参考資料いちよし証券投資情報部 2019 年 10 月 7 日 極端な悲観相場の修正へ 業績の下方修正リスクも織り込み 日米経済指標に注目 最終ページに お客様にご確認いただきたい重要な注意事項を記載しております 必ずご確認ください

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2018 年度第 3 四半期運用状況 ( 速報 ) 年金積立金は長期的な運用を行うものであり その運用状況も長期的に判断することが必要ですが 国民の皆様に対して適時適切な情報提供を行う観点から 作成 公表が義務付けられている事業年度ごとの業務概況書のほか 四半期ごとに運用状況の速報として公表を行うも

平成23年11月1日

マイナス金利付き量的 質 的金融緩和と日本経済 内閣府経済社会総合研究所主任研究員 京都大学経済学研究科特任准教授 敦賀貴之 この講演に含まれる内容や意見は講演者個人のものであり 内閣府の見解を表すものではありません

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経済財政モデル の概要 経済財政モデル は マクロ経済だけでなく 国 地方の財政 社会保障を一体かつ整合的に分析を行うためのツールとして開発 人口減少下での財政や社会保障の持続可能性の検証が重要な課題となる中で 政策審議 検討に寄与することを目的とした 5~10 年程度の中長期分析用の計量モデル 短

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株式市場 米国株 景気 企業業績は依然として堅調 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 貿易摩擦への懸念から下落米国株式市場は下落しました トランプ米大統領が鉄鋼やアルミニウムの輸入を制限する方針を表明したことから 世界的な貿易摩擦への懸念が高まり下落して始まりました その後 貿

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マクロ インサイト FRB FRB 長期金利 FRB bp 図表 1 FRB と市場の金利予測の乖離 FOMC 予測 vs 市場予測 年末 年末 2.0 市場が

株式市場 米国株 新政権の政策期待による上昇も一服 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました ISM( 全米供給管理協会 ) 指数など月初に発表された経済統計がおおむね良好であったことを受け 月前半の株式市場は堅調に推移しました 月半ば以降は 高値警戒感な

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タイトル

経済・物価情勢の展望(2017年10月)

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

チャート編 1 日経平均株価 ( 日経 225) TOPIX( 東証株価指数 ) 2,0 NY ダウ工業株 30 種平均株価 ( 米ドル ) ダウセレクト配当込み指数 3,000 28,000 26,000 24, ,000 26,000 2,0 20,000 1,0 24,000 1

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スライド 1

株式市場 米国株 上値が重く神経質な展開 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は下落しました FOMC( 米国連邦公開市場委員会 ) における利上げの有無 大統領選挙の動向 ドイツの大手銀行の資本不足懸念などに一喜一憂する展開となりました 月半ばにかけて 利上げ観測や原油

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【11】ゼロからわかる『債券・金利』_1704.indd

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第 79 回 2017 年 5 月投資家アンケート調査結果 アンケート調査にご協力下さりました皆様 今年 5 月に実施致しましたアンケート調査にご回答下さり誠にありがとうございます このたび調査結果をまとめましたのでお送りさせていただきます ご笑覧賜れましたら幸 いです 今後もアンケート調査にご協力

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変額年金 ( 特別勘定 ) の現況をご覧になる方に 特にご確認いただきたい事項 投資リスクについて 変額年金保険の特別勘定の資産運用は 国内外の株式および公社債 国内外のその他の有価証券 貸付金 コールローンおよび預貯金等を主な運用対象としておりますので 株価の下落や金利の変動 為替の変動などにより

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株式市場 米国株 先行き不透明感強いがファンダメンタルズは良好 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は下落しました 堅調な経済指標の発表を受けて米国の年内利上げ観測が高まったことで 金利動向の影響を受けやすいディフェンシブセクターの一部が軟調に推移しました また 米

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第 2 四半期運用実績 ( 概要 ) 運用利回り +0.09% 実現収益率 ( ) ( 第 2 四半期 ) 運用収益額 億円 実現収益額 ( ) ( 第 2 四半期 ) 運用資産残高 ( 第 2 四半期末 ) 357 億円 年金積立金は長期的な運用を行うものであり その運用状況も長期的に

第1章

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当面の金融政策運営について(「量的・質的金融緩和」を補完するための諸措置の導入、12時50分公表)

2017年上半期の為替相場展望

マネックス証券トレードステーションセミナー

Transcription:

October Issue 2014 年 10 月 1 日新生銀行市場営業本部市場調査室執行役員市場調査室長政井貴子 MSGM-14100100 円安と日銀の量的緩和と株価の関係は 一層市場での注目ポイントとなっていくだろう 市場の期待誘導をコントロールすることが 一層必要とされている局面を迎えつつある 一段の円安は日本経済に良いのか悪いのか という議論が識者や市場参加者の間で盛んに 一段の円安は日本経済に良いのか悪いのか という議論が識者や市場参加者の間で盛んになってきている なってきている 当月報でも 9 月号にて 現在の日本は 基本的に円安になりやすい因子を多くもっている中 日米の政策の方向性の違いが強調されやすい環境にある そうした中 安易な円安誘導は 貯蓄を持ち合わせていない家計にとっては さらなる負担増となり 最終的には経済にも負の影響を与える可能性がある この為 慎重になされるべきであろう としたが 今一度 論点を整理したいと思う 為替に関する主な発言 政府 政界 日銀 麻生太郎副総理 財務 金融相 (9 月 9 日 106 円台 ) 岩田規久男副総裁 (9 月 10 日 106 円台 ) 緩やかに変化していく方が望ましい 円安にならないと物価上昇率 2% は達成できないとは思っていない 菅義偉官房長官 (9 月 11 日 106 円台 ) 黒田東彦総裁 (9 月 19 日 109 円台 ) 経済への影響はメリット デメリットがある 大きな問題があるとは思っていない 公明党山口那津男代表 (9 月 18 日 108 円台 ) 金融界 学識者 円安が進みすぎているという感がある 国際協力銀行渡辺博史総裁 (9 月 3 日 104 円台 ) 甘利明経済財政 再生相 (9 月 19 日 109 円台 ) これ以上円安になるとマイナスになる産業が増えてきている 急激な為替変動はあまりプラスにはならない 日本経済研究センター岩田一政代表理事 理事長 (9 月 19 日 109 円台 ) 安倍晋三首相 (9 月 24 日 108 円台 ) 適正な円レートは1ドル=90-100 円 現在もその見解に相違はない ( 円安が ) 地方経済や中小企業に与える影響を注視したい ( データ元 : 各種報道作成 :( 株 ) 新生銀行市場営業本部市場調査室 ) 円安の是非は 経済効果の効率重視か 円安効果の受益者数重視か で異なる まず 円安の是非は 2 つの観点から議論されているように見える ひとつは 円安は 速攻性 のある効率的な景気浮揚策 との観点 もうひとつが 円安効果の受益者の数に着目した考え 方 といえると考えている 東証 1 部上場企業の ROE= 自己資本利益率とドル円には 一定の関係があることが見て取れ る 円高は ROE を下げる要因になっており 逆に円安は ROE を上げる結果となっている これ が 円安は 株高 ということを端的に支えているといえよう 1/15

2/15 1 円円安になれば 目の前で株価も上昇する 非常に即効性があり 効率的な政策 円安は日本経済には良いとの見方はここに由来するといえよう 300 250 200 150 東証 1 部 ROEと米ドル円為替レート推移 (1980 年 ~2013 年 ) ( 円 ) (%) 米ドル円為替レート ( 左軸 ) 東証一部 ROE( 右軸 ) 25 20 15 10 5 100 0 50-5 0 1980 年 1984 年 1988 年 1992 年 1996 年 2000 年 2004 年 2008 年 2012 年 ROE=PBR/PER( 年率調整 ) ( データ元 : 東証 作成 :( 株 ) 新生銀行市場営業本部市場調査室 ) -10 リーマンショック後の米国や 資源開発ブーム後の豪州の景気の支えとなっているのは 株高といった 資産効果 に支えられた回復だ 多くの構造改革や 企業努力は 1 日で株価を上昇させることはできないが 日本の場合 1 円円安になれば 目の前で株価も上昇する 非常に即効性があり 効率的な政策といえる 円安は日本経済には良いとの見方はここに由来するといえよう これがすべての日本人にとって良いのかというと それは別の話になる 円安は良くないと警鐘を鳴らしている人たちは この点に注目し論じているといえる ただ これがすべての日本人にとって良いのかというとそれは 別の観点の話になる 東証 1 部上場企業は約 1,700 社 総務省によれば 日本に会社というものは約 420 万社ある シャワー効果が期待され 最終的には全体の底上げになるとはいえ 株価指数の上昇が日本全体を描写しているかどうかは別といえよう また 金融広告中央委員会の調査から推測する日本の金融資産を持たない無貯蓄世帯は 1,600 万世帯を超える つまり日本の約 3 世帯に 1 世帯は貯金が無く 資産効果からは 無縁だ 同調査の 2 人以上世帯の金融資産平均値は 確かに 1,100 万円程となるが 中央値は 300 万円台だ 世帯数では 無貯蓄世帯が最も多い 円安はよくないと警鐘を鳴らしている人たちは この点に着目し 最終的に日本の経済に与える悪影響を論じているといえる この 悪影響 を端的に見て取れるのが 交易条件に左右される交易利得 損失だといえる 足元では 交易損失がネットで拡大しており 今後一層円安になればなるほど さらに悪化する可能性も否めない これは 国内企業や家計にとってはコスト増となる もちろん 海外投資を企業や家計にも後押しし この損を所得収支で取り返すという政策が採られているが 多くの持たざる家計にとっては原資が無いため 取り返せない 2/15

3/15 悪影響 を端的に見てとれるのが ネットでの交易損失拡大傾向 (10 億円 ) 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0-5,000-10,000 交易利得 損失と純輸出 ( 実質ベース ) の推移 (2000 年 6 月 ~2014 年 6 月 ) -15,000-20,000-25,000 交易利得 損失純輸出 ( 実質ベース ) 合計 合計 ( 純輸出 - 交易利得 ) も大きくマイナス -30,000 2000 年 2002 年 2004 年 2006 年 2008 年 2010 年 2012 年 2014 年 交易利得 純輸出ともに実質 GDPデータ交易利得 = 海外取引の価格 ( 交易条件 ) 変動に伴う所得の流出入分 ( データ元 : 内閣府作成 :( 株 ) 新生銀行市場営業本部市場調査室 ) 増税に加え そうした家計に負担がかかるばかりとなってしまう 行き過ぎれば最終的には 全体の消費意欲が高まらず 国内企業が価格転嫁しにくい 実質賃金が上がりにくいといったことから景気に対してマイナスになってしまう 従って 円安は日本経済にとってマイナスという整理になっているといえよう 従って 双方共に間違っているわけではなく 視点の相違と整理できるだろう そして 現在 円安に対する株価の反応が鈍ってきている 来年以降も量的緩和維持見込みだが 今後も円安 株高効果が維持されるかが 重要な注目ポイント 円安と量的緩和と株価の関係は 今後一層市場の注目を集めることとなるだろう の市場は 速攻性のある円安 株高への反応を優先しているとも受け取れる ただ 円安を受けた株高の上昇幅が以前に比べて鈍ってきているとの指摘が市場から上がってきている 確かに 2012 年 2013 年からの動きから見れば 円安に対する株価の反応が鈍ってきている 昨年は 日銀による量的緩和の功績も当然大きかった 来年以降の日銀の政策が 追加緩和 と呼ぶものになるのかどうかは別として 日銀のバランスシートはこれからも膨張していくと市場では予感している 市場にとっては 手法は何であれ そこが重要なポイントだ 更に言えば それをもってして 2013 年と同じような株価上昇に対する触媒効果 ターボチャージ効果が今後もあるのかどうかがもっと重要なポイントといえよう 現在の拡大財政政策や 交易条件の悪化が市場で問題視されていないのは 金融市場として利する部分がこれまで大きかった という評価があるからともいえ 円安と量的緩和と株価の関係は 今後一層 市場の注目を集めることとなるだろう 3/15

4/15 相場の常で 緩和による円安効果が却って経済にマイナスになるとの見立てが強まると 実体経済で円安効果のマイナス面を計測するよりもずっと早い段階で 金融市場はデメリットを織り込む動きになりがちだ 日本経済が一層の浮揚の為には 足元でのそうした相場展開が起こることは プラスにはならない ( 円 ) 17,000 16,000 日経平均株価と米ドル円為替レート推移 (2013 年 1 月 ~2014 年 9 月 ) 日経平均株価 ( 左軸 ) 米ドル円為替レート ( 右軸 ) ( 円 ) 115 110 15,000 105 14,000 100 13,000 ( 倍 ) 年間変動倍率推移 1.6 米ドル円為替レート下落倍率 1.5 1.4 日経平均株価上昇倍率 1.3 12,000 1.2 1.1 1.0 11,000 0.9 2012 年 2013 年 2014 年 2012 年 2013 年は 年末営業日終値 / 年始営業日終値 により算出 2014 年は 9 月末営業日終値 / 年始営業日終値 により算出 10,000 2013 年 1 月 2013 年 5 月 2013 年 9 月 2014 年 1 月 2014 年 5 月 2014 年 9 月 95 90 85 80 ( データ元 :Bloomberg 作成 :( 株 ) 新生銀行市場営業本部市場調査室 ) 9 月 29 日には安倍首相の所信表明が行われ 経済政策重視 を明言した折 円は下 落 株は上昇した 今後は これまでよりも一層慎重に市場の期待をコントロールすることが 政策を担う側にとって必要とされている局面を迎えつつあるといえよう 4/15

5/15 10 月の為替市場見通し ドル高が一層進行した月 9 月の為替市場は ドル高が一層進行した月だった 円は 8 月からの流れで見れば最弱 通貨に近いが 9 月だけで見ると 豪ドルやブラジルレアルの弱さが際立った 豪ドル ニュー ジーランドドルやユーロ等は 日本同様当局からの明確な通貨安選好が明示されており 米ド ル見直し機運が高まると 売り相手として人気が高まりやすい ( 円 ) 110 108 106 104 主要イベントと米ドル円為替推移 (2014 年 3 月 ~2014 年 9 月 ) 9/3 日内閣改造 GPIF 改革期待 9/5 日短期国債 3ヶ月物マイナス金利 9/4 ECB 利下げ 追加の緩和決定 9/5 ロシア ウクライナ停戦合意 9/8 日 4-6 月期 GDP 改定値 -7.1% 9/9 日短期国債 6か月物マイナス金利 102 100 98 96 94 7/30 米 4-6 月期 GDP 速報値 +4.0% 8/8 米オハ マ大統領イラク空爆承認 8/13 日 4-6 月期 GDP 速報値 -6.8% 8/22 シ ャクソンホール シンホ シ ウム 8/25 独 10 年債利回り1% 割れ 8/28 米 4-6 月期 GDP 改定値 +4.2% 9/17 FOMC 10 月でのテーハ リンク 終了方針明示 9/18 日貿易赤字継続 9/18 ECB TLTRO 第一弾実施 9/19 日短期国債 1 年物マイナス金利 9/21 G20 財務相 中央銀行総裁会議 9/26 米 4-6 月期 GDP 改定値 +4.6% 9/30 日鉱工業生産 -1.5% 8/29 ユーロ圏 8 月 CPI 速報値 +0.3% 9/30 ユーロ圏 9 月 CPI 速報値 +0.3% 92 2014 年 3 月 2014 年 4 月 2014 年 5 月 2014 年 6 月 2014 年 7 月 2014 年 8 月 2014 年 9 月 ( データ元 :Bloomberg 作成 :( 株 ) 新生銀行市場営業本部市場調査室 ) ウクライナ問題は 米国とは距離 また 概ね市場予想を外さなかった米国経済動向で米ドル見直し機運高まる 米ドルの見直し機運が高まった背景には 半年続いた地政学リスクの米国にとっての重石が和らいだ事が1 点 ウクライナとロシア問題は 欧州に深刻な経済的影響を与えつつあるのとは対照的に アメリカ経済には限定的のとの見方が広まったといえる 中東での問題も原油高に結びついていないこと また 戦況も市場では限定的だと受け止められているようだ 結果として一時は 2.3% 台まで低下していた米国 10 年債が7 月の2.5~2.6% 水準に戻っている こうした動きに加え 日米欧の経済指標の動向でも 米国の経済指標動向は ほぼ予想に 沿った結果が出ている一方 欧州や 日本では 予想を下回る指標が相次いだ この為 米国では 政策金利上げが 2015 年中の春なのか 夏なのかという議論が明確になってくる一方で ECB や日本銀行からは一層の量的緩和政策の拡充が示唆され 通貨は通貨安が対ドルで進んだ また 21 日閉幕した G20 では 事実上ドル高を追認した格好となり こうした動きを正当化している 5/15

6/15 110 108 106 米ドル円為替レートと日米 10 年債利回り差推移 (2014 年 1 月 ~2014 年 9 月 ) ( 円 ) (%) 米ドル円レート ( 左軸 ) 日米 10 年債利回り差 ( 右軸 ) 2.4 2.3 104 2.2 102 2.1 100 2.0 98 96 1.9 94 2014 年 1 月 2014 年 3 月 2014 年 5 月 2014 年 7 月 2014 年 9 月 1.8 ( データ元 :Bloomberg 作成 :( 株 ) 新生銀行市場営業本部市場調査室 ) 思惑主導の円売りで 実際の金利差や実勢の長期移動平均から乖離している円安傾向を需給がサポートしている とはいえ 誰もが口にするドル高円安拡大の理由である日米金利差は 為替の伸び程は開いていない むしろ 金融政策の方向性の違いの拡大への思惑や また GPIF の日本株や外貨資産の一層の運用額拡大への思惑が主導している相場といえる 通常こうした思惑主導の市場動向は 調整局面を迎えやすいのだが 経験的に市場が指標としてみてきた金利差と円安の進行速度や実勢レートの値動きが長期移動平均から乖離した状況を円とドルとの需給関係がサポートしているのだろう 最新の自動車海外生産台数を見ると 輸出の改善は期待薄 貿易収支は今後も円安の大きなサポート要因であり続けそうだ 大幅赤字が続く貿易収支はその代表格だ その 2 割を占める自動車関連輸出は 8 月も振 るわない 海外生産台数は粛々と拡大されており 輸出のけん引役として期待するのは難しく なっているという印象を改めて持った リーマンショック前までは 根雪のような黒字が円高調 整への機運を運ぶことが多かったが 今は 円安の大きなサポート要因だ 乗用車 8 社の生産 販売 輸出実績 ( 前年同月比増減率 ) 国内生産 海外生産 国内販売 輸出 7 月 -2.20% 7.70% -2.60% -2.60% 8 月 -6.90% 4.70% -10.00% -7.60% 8 社 =トヨタ 日産 ホンダ スズキ 三菱自 マツダ ダイハツ 富士重 ( データ元 : 各社 HP, 各種報道作成 :( 株 ) 新生銀行市場営業本部市場調査室 ) 6/15

7/15 円は余り 外貨が不足する バランスの悪い状況も円安を暗示 また 円の恒常的な過剰感は 円のベーシススワップの推移から垣間見える 3 ヶ月のベーシススワップの動向は 9 月末に向かっての金融機関のドル調達意欲の強さとして注目された 加えて 殆ど落札のなかった日銀のドル供給オペも 9 月末をまたぐタームでは 2 年ぶりに 2 億ドルを超え 話題になった また 国内投資家から爆発的人気を博しているサムライ債 ( 海外企業などによる円建て債券 ) は このまま行くと年間ベースで 2 兆 4000 億円規模となり 過去最高となる模様 2009 年からの政府の支援制度もあり 調達側にも人気だ そうして国内で調達された円は ドルを中心とした外貨で持ち出される 異なる通貨の金利を交換するベーシススワップでは この数年常に円に対しドルプレミアムだが 8 月中旬以降は一層ドルプレミアムが進んだ こうした外貨資金調達取引は為替に直接影響は無いが 国内での外貨ニーズの趨勢を伝えてくれる 海外から日本国内への投資が盛んになれば 当然円を持たない海外企業や投資家からのニーズが増えて バランスは良くなるが 現状ではこれといった政策がなく この状況は今後も続くだろう 110 109 108 米ドル円為替レートとベーシススワップ金利推移 (2014 年 1 月 ~2014 年 9 月 ) (3ヶ月物) (5 年物 ) ( 円 ) (%) 米ドル円為替レート ( 左軸 ) 米ドル円ベーシススワップ金利 ( 右軸 ) -35 110 109-30 108 ( 円 ) (%) 米ドル円為替レート ( 左軸 ) 米ドル円ベーシススワップ金利 ( 右軸 ) -60-55 107-25 107 106 106-50 105-20 105 104 103-15 104 103-45 102-10 102-40 101 101 100 2014 年 1 月 2014 年 5 月 2014 年 9 月 -5 100 2014 年 1 月 2014 年 5 月 2014 年 9 月 -35 ( データ元 :Bloomberg 作成 :( 株 ) 新生銀行市場営業本部市場調査室 ) 10 月の注目ポイント日欧の量的緩和拡充の有無と 米国一国が景気を維持できるのかが注目 10 月の注目ポイントは 日欧と米国の金融政策のコントラストが一層はっきりするかどうかが ポイント 言い換えれば 日欧の量的緩和拡充の有無と 米国だけが好調な景気を維持でき るのかが注目だ 7/15

8/15 欧州では ドイツの景況感 ユーロ圏インフレ率と欧州銀行のストレステスト結果発表に注目 欧州の注目指標イベントを絞ってみると 低下に歯止めのかかっていないドイツの景況感や ユーロ圏のインフレ率だろう また ロシア制裁の影響が徐々に効いてきている欧州経済だが 域内の欧州銀行のストレステスト結果発表も月内に予定されている サプライズは無いとされているが 長期的に銀行のリスク許容度に影響を与えるだろうと考えられており それもあって ECB がバランスシートの大幅拡大を伴う緩和を行うと市場は予想している よって通貨的に は売り整理となっている 日本の経験からは これで景気が浮上するとも思えず 今後は 各 国政府による財政出動へと市場の視線も移っていくだろう 市場では 日銀からマネタリーベース目標 270 兆円以上に拡大する政策が出されると思っている 日本は 弱い指標の数字が続くと消費税増税議論が高まりそうだが 実際は 減税とのカップリング議論になっていくだろうと見ている その上で 日銀の協力にも相応の期待が維持されると思われ 月末の展望レポートおよび政策決定会合は注目されるだろう 市場では 目標のマネタリーベースの規模は更に拡大する政策が出ると見ている GPIF 改革発表後 直ぐにフローが発生しなければ 材料出尽くしの可能性 GPIF 改革が発表され 直ぐに株買いや外貨買いが出ないと市場で受け止められると 出尽くし に為るリスクが相応にあると思われる この 1 年 殆ど価格調整をしていない円であるので 注 意しておきたい また 為替の水準感については 多くの新旧当局者や財界からコメントが出ているが 安部首 黒田総裁はじめとした当局者のコメントも注目 相が 先月 21 日に円安に配慮したコメントを出した折には円安進行がストップするなど多分 に政治主導となっている 引き続き 黒田総裁 ( 通貨は財務省管轄なので異例だが ) はじめと した当局者のコメントも注目されよう 8/15

9/15 10 月の円金利見通し 米金利先高観が台頭する中 円安 株高が進行 本邦長期金利は 一時 6 月以来となる 0.58% まで上昇 9 月の長期金利 (10 年国債利回り ) は 2 日に行われた 10 年債入札がやや低調な結果となったことを受け 月初は上昇して始まった その後は 8 日に発表された米サンフランシスコ連銀の公開書簡の中で 市場参加者は利上げペースを過小評価している との表現が材料視され 米国長期金利は 2.5% 台に上昇 円相場も米金利先高感を背景に約 6 年ぶりに 1 ドル 108 円台をつけるなど 国内債券市場にとっては向かい風が吹く中 本邦長期金利は 17 日 には 0.58% まで上昇した その後は 23 日に米国がシリアでイスラム国を対象とした空爆を実 施し 地政学リスクが再び意識されたことや 国内銀行勢から押し目買いとみられる買いが 入ったことで 本邦長期金利は月末にかけて低下基調で推移した 2014 年 9 月の長期金利とボラティリティの推移 (%) (%) 0.60 38 0.58 0.56 36 34 32 0.54 0.52 0.50 長期金利 (10 年国債利回り左軸 ) 30 日ヒストリカルボラティリティ ( 右軸 ) 30 28 26 24 22 0.48 9 月 1 日 9 月 8 日 9 月 15 日 9 月 22 日 9 月 29 日 20 ( データ元 :Bloomberg 作成 :( 株 ) 新生銀行 ) (10 億円 ) 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0-5,000-10,000-15,000-20,000-25,000-30,000-35,000-40,000-45,000-50,000-55,000-60,000-65,000 国債投資家別売買動向 ( 長期債 2013 年 8 月 ~2014 年 8 月 ) 都市銀行地方銀行信託銀行農林系金融機関生保 損保外国人 10 年国債利回り (%) 0 2013 年 8 月 2013 年 10 月 2013 年 12 月 2014 年 2 月 2014 年 4 月 2014 年 6 月 2014 年 8 月 ( データ元 : 日本証券業協会作成 :( 株 ) 新生銀行 ) (%) 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 9/15

10/15 足元対ドルで前年比 10% 以上の円安が進行 10 月末に発表される 9 月 CPI の結果が注目される 前年比 10% を超える円安水準は 想定外の消費者物価上昇をもたらす可能性も 9 月 4 日の日銀金融政策決定会合後の記者会見において 黒田総裁は 米国がテーパリングを終了する一方 日欧は緩和的な金融政策が続く状況では ドルが強くなっていくことは 何ら不思議ではない 今の水準から円安になることが 日本経済にとって何か非常に好ましくないとは思わない との見解を示し 足元円安が進行していた為替水準について特段の問題 意識を持っていないことをにじませた 日銀は 4 月の展望レポートにおいて 国際商品市況や為替相場の動きを反映して 消費者物価に対する輸入物価の押し上げ効果が夏ごろにかけて減衰すると予想していた また 民間エコノミストの予想でも 円安効果が剥落する夏場以降は消費者物価指数の伸び率は鈍化するというのが大勢を占め 一部では そのために日銀は追加緩和を余儀なくされるという見方もあった そんな中 足元のドル円相場は 総裁会見後も 110 円目前まで円安が進行し (9 月 30 日現在 ) 前年比では昨年 1 月以来 10% を超える円安水準となっている 日銀は 物価の変動要因として 1 企業や家計の中長期的な予想物価上昇率 2 労働需給を中心としたマクロ的な需給要因 3 企業が需給の引き締まりに応じて価格や賃金をどの程度引き上げるか 4 輸入物価の動向の 4 つをあげている 国際商品市況価格は足元軟調に推移しているものの 仮に一段の円安が進行すれば 輸入物価は再び強含むことが予想され 10 月末に発表される 9 月の消費者物価指数 ( 除く生鮮食品 ) は注目される (%) 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0-0.5 消費者物価指数 輸入物価指数 米ドル円対前年比の推移 消費者物価指数 ( 生鮮食品を除く総合 前年同月比左軸 ) 米ドル円 ( 対前年比右軸 ) 輸入物価指数 ( 前年同月比右軸 ) (%) 35 30 25 20 15 10 5 0-5 -10-15 -1.0-20 2011 年 1 月 2011 年 6 月 2011 年 11 月 2012 年 4 月 2012 年 9 月 2013 年 2 月 2013 年 7 月 2013 年 12 月 2014 年 5 月 14 年 4 月以降の消費者物価指数 ( 除く生鮮食品 ) は 消費税増税の影響を除いたベース ( データ元 : 総務省, 日本銀行, Bloomberg 作成 :( 株 ) 新生銀行 ) 10/15

11/15 夏場以降 日銀の想定する ディマンド プル型 ではなく コスト プッシュ型 の物価上昇が進む可能性も ディマンド プル型 ではなく コスト プッシュ型 の物価上昇 4 月に発表された展望レポートによれば 日銀執行部は 下表のとおり消費者物価の前年比上昇率について 見通し期間 (14 年度から 16 年度 ) の中盤頃 すなわち 2015 年の中盤頃に 2% 程度に達する可能性が高いと予想している 上述の通り 日銀は目先の消費者物価については 国際商品市況や為替相場の動きを反映して 消費者物価に対する輸入物価の押し上げ効果が夏ごろにかけて減衰するとした上で 本年度後半にかけて再び上昇傾向をたどると予想 していた 黒田総裁は 年度後半の物価上昇経路の根拠の一つに需給ギャップの改善を上げており 先の2 3の要因を背景とした ディマンド プル型 の上昇経路を想定しているが 足元一段の円安が進めば 従来想定していたよりも早いペースで コスト プッシュ型 の物価上昇が先行する可能性も出てきた 2014~2015 年度の政策委員の大勢見通し (2014 年 4 月中間評価 ) 対前年比 % なお ( ) 内は政策委員見通しの中央値 ( データ元 : 日本銀行作成 :( 株 ) 新生銀行 ) 日銀のバランスシート見通しは依然 2014 年末までしか示されていないこうした中 10 月には 2 回の金融政策決定会合が予定されている 特に 10 月 31 日の金融政策決定会合では 新たな展望レポートの発表が予定されており 注目度は高い また 展望レポートの発表と合わせ 昨年 4 月の量的 質的金融緩和導入時に公表された マネタリーベース目標とバランスシート見通し ( 以下 MB 目標 MS 見通し ) の 14 年末以降の見通しが公表されるかについても にわかに注目が集まっている 日銀は 昨年 4 月の量的 質的金融緩和導入時に 次頁の MB 目標 MS 見通しを公表している マネタリーベースについては 年間約 60 兆円から 70 兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う としており 下記の通り 14 年末の見通しは昨年度の実績から約 70 兆円増加の 270 兆円となっている 9 月 9 日に実施された国庫短期証券の買入れでは 初のマイナス金利での落札となるなど ここへきてバランス シートの拡大にやや苦心する状況となっているが 8 月末実績で 244 兆円と 14 年末の目標に向けて順調にマネタリーベースを拡大させている 一方で 日銀は 14 年末以降の見通しについては 現在においても公表していない 11/15

12/15 15 年以降の MB 目標 MS 見通しが発表されるか否か 発表される場合には現行と異なるペースとなるか否かは今後の債券市場を占う上で重要 日本銀行のマネタリーベース目標とバランスシート見通し 13 年 4 月時点見通しでは 国庫短期証券の残高見通しは公表されていない ( データ元 : 日本銀行作成 :( 株 ) 新生銀行 ) 仮に次回 10 月末の会合で日銀が従来の物価見通しを維持した上で MB 目標 MS 見通しを公表するのであれば 少なくとも 15 年中盤頃まで現行ペースでの MB 目標 MS 見通しが示されると考えるのが自然であろうが 仮に現行と異なるペースでの MB 目標 MS 見通しが公表された場合には債券市場の波乱要因になり得る ( 現行を下回るペースの見通しが発表された場合は実質的な 緩和縮小 上回るペースの見通しが発表された場合は実質的な 追加緩和 と市場に捉えられる可能性がある ) また 見通しが示されない場合でも 仮に一段の円安を通じて 先に述べたコスト プッシュ型の物価上昇の流れが強まる場合には 来年以降の緩和ペース縮小懸念が債券市場で台頭する可能性もある ( その場合 見通しが示されていないことが債券市場のボラティリティを高める要因になる可能性がある ) 市場では 日銀が次回 10 月末の会合で追加緩和に踏み切るのとの見方が一部あるが 同日に発表される 9 月の消費者物価指数 ( 除く生鮮食品 ) の結果や それ以降に発表される同指数の結果次第では 上記の波乱シナリオが起こることも想定しておくべきであろう 日銀はいつ追加緩和に踏み切るか?( ブルームバーグ調査 ) 調査機関数調査実施日 31 2014/8/25~2014/8/28 結果 回答社数 割合 (%) 10 月 7 日 0 0.0% 10 月 31 日 8 25.8% 11 月 1 3.2% 12 月 1 3.2% 来年 1 月 4 12.9% 来年 2 月 1 3.2% 来年 3 月 1 3.2% 来年 4 月以降 7 22.6% 追加緩和なし 8 25.8% ( データ元 :Bloomberg 作成 :( 株 ) 新生銀行 ) 12/15

13/15 マーケットデータ主要金利指標 2014 年 8 月末 2014 年 9 月末 変化幅 (%) 無担保コール ( 翌日物 加重平均 %) 0.070 0.066-0.00 債券先物 ( 中心限月 円 ) 145.840 145.840 0.00 日本国債 (2 年物 %) 0.075 0.077 0.00 日本国債 (5 年物 %) 0.162 0.175 0.01 日本国債 (10 年物 %) 0.496 0.531 0.04 日本国債 (20 年物 %) 1.329 1.353 0.02 日本国債 (30 年物 %) 1.625 1.612-0.01 円 / 円スワップ (2 年 %) 0.179 0.170-0.01 円 / 円スワップ (5 年 %) 0.259 0.266 0.01 円 / 円スワップ (10 年 %) 0.615 0.654 0.04 円 / 円スワップ (20 年 %) 1.365 1.407 0.04 円 / 円スワップ (30 年 %) 1.640 1.673 0.03 円 LIBOR(6 ヶ月物 %) 0.176 0.168-0.01 全銀協 TIBOR(6 ヶ月物 %) 0.300 0.300 0.00 米国 FF レート (%) 0.050 0.080 0.03 米国債 (2 年物 %) 0.488 0.579 0.09 米国債 (3 年物 %) 0.929 1.051 0.12 米国債 (5 年物 %) 1.625 1.781 0.16 米国債 (7 年物 %) 2.041 2.222 0.18 米国債 (10 年物 %) 2.343 2.504 0.16 米国債 (30 年物 %) 3.079 3.190 0.11 米ドルスワップ (2 年 %) 0.718 0.826 0.11 米ドルスワップ (3 年 %) 1.154 1.303 0.15 米ドルスワップ (5 年 %) 1.774 1.949 0.17 米ドルスワップ (7 年 %) 2.143 2.317 0.17 米ドルスワップ (10 年 %) 2.495 2.649 0.15 米ドルスワップ (30 年 %) 3.072 3.181 0.11 米ドル LIBOR(6 ヶ月 %) 0.330 0.330 0.00 ( データ元 :Bloomberg, 各種報道機関作成 : 新生銀行 ) 13/15

14/15 主要マーケットイベント 日付国イベント日付国イベント 10 月 1 日 日本日銀短観 10 月 17 日日本 5 年債入札 中国 9 月製造業 PMI 日本黒田日銀総裁挨拶 10 月 2 日 10 月 3 日 10 月 6 日 10 月 7 日 10 月 8 日 10 月 9 日 10 月 10 日 10 月 13 日 10 月 14 日 10 月 15 日 米国 9 月 ISM 製造業 PMI 米国 9 月住宅着工 許可件数 日本 10 年債入札 米国 10 月ミシカ ン大消費者信頼感指数 欧州 ECB 理事会 米国 イエレンFRB 議長講演 米国 8 月製造業受注 10 月 20 日 日本 公社債投資家別売買高 米国 8 月貿易収支 日本 8 月景気動向指数 ( 改定 ) 米国 9 月雇用統計 10 月 21 日 日本 20 年債入札 米国 9 月 ISM 非製造業 PMI 中国 第 3 四半期 GDP 日本 日銀金融政策決定会合 (~7 日 ) 米国 9 月中古住宅販売 日本 8 月景気動向指数 ( 速報 ) 10 月 22 日 日本 9 月貿易統計 日本 黒田総裁講演 米国 9 月消費者物価指数 日本 8 月国際収支 10 月 23 日 中国 10 月 HSBC 製造業 PMI 日本 10 年物価連動国債入札 欧州 10 月製造業 PMI 日本 9 月景気ウォッチャー調査 10 月 24 日 米国 9 月新築住宅販売件数 英国 BOE 金融政策委員会 (~9 日 ) 10 月 26 日 日本 福島県知事選挙 米国 FOMC 議事録 10 月 27 日 独 10 月 Ifo 景況感指数 日本 9 月機械受注 10 月 28 日 日本 2 年債入札 日本 G20 財務相 中央銀行総裁会議 (~10 日 ) 米国 耐久財受注 日本 日銀金融政策決定会合議事要旨 米国 8 月 S&Pケースシラー住宅価格指数 日本 世界銀行 IMF 年次総会 (~12 日 ) 米国 10 月消費者信頼感指数 中国 貿易統計 米国 FOMC(~29 日 ) 独 10 月 ZEW 調査現状 10 月 29 日 日本 9 月鉱工業生産 ( 速報 ) 日本 30 年債入札 10 月 30 日 欧州 10 月景況感サーヘ イ 日本 8 月鉱工業生産 ( 確報 ) 米国 第 3 四半期 GDP( 速報値 ) 中国 9 月消費者物価指数 生産者物価指数 10 月 31 日 日本 9 月全国消費者物価指数 米国 9 月生産者物価指数 日本 9 月失業率 米国 9 月小売売上高 日本 日銀金融政策決定会合 展望レホ ート 10 月 16 日 米国 ヘ ーシ ュフ ック 欧州 10 月消費者物価指数 ( 速報値 ) 欧州 9 月消費者物価指数 米国 9 月個人所得 消費支出 米国 9 月鉱工業生産 月内 日本 GPIF 新ホ ートフォリオ公表 欧州 ストレステスト結果発表 ( データ元 :Bloomberg, 各種報道機関作成 : 新生銀行 ) 14/15

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