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計測自動制御学会東北支部第 260 回研究集会 (2010.10.29) 資料番号 260-3 ロボット制御のための dspic マイコン用ソフトウェアの開発 Development of robot control software for dspic microcontrollers 竹田真也 *, 鈴川裕一 **, 落合章裕 *** **, 冨樫洋海, 山野光裕 Takeda Shinya *,Suzukawa Yuichi **,Ochiai Akihiro ***,Togasi Hiroumi,Yamano Mitsuhiro ** * 山形大学工学部, ** 山形大学大学院理工学研究科 *** 日本電産株式会社, 東北電機鉄工株式会社 * Faculty of Engineering, Yamagata University ** Graduate school of Science and Engineering, Yamagata University *** NIDEC CORPORATION, TOHOKU DENKI TEKKO Co.,Ltd キーワード : ロボット制御システム (robot control system), マイクロコントロールユニット (Micro Control Unit), ソフトウェア開発 (software development) 連絡先 : 992-8510 山形県米沢市城南 4 丁目 3-16 山形大学工学部機械システム工学科山野研究室, 竹田真也,Tel.:(023)-826-3238,E-mail: qqym2kmd@wind.ocn.ne.jp 1. 緒言研究用ロボットの制御システムは,PC と, DIO ボードや A/D ボード, カウンターボードなどで構成される場合が多かった. 近年ではマイコンが高性能化し,A/D 変換やエンコーダのパルスカウンタなどの機能を有している. そのため,1 つのマイコンにセンサの読込みやモータの制御などを担わせることができ, マイコン単独のロボット制御システムや,PC とマイコンを用いたロボット制御システムの構築が行われるようになった. 小型ヒューマノイドロボットの KHR シリーズ 1) は, マイコン単独で複数のサーボモータを制 御している. 小型ヒューマノイドロボット morph3 2) は,PC とマイコンボードが搭載されている. マイコンボードは PC からの命令に従いモータを制御し, 各種センサの読込みも行う.Yamano ら 3) は,PC と dspic マイコンを用いた, ヒューマノイドロボットの制御システムの開発を行った. ロボットの制御システムにマイコンを用いる場合, マイコンのソフトウェアは, 計算部分と入出力等の処理に分けられる. 計算部分は,C 言語などで比較的容易に書くことができる. しかし, 入出力等の処理は煩雑な設定が伴い, 習熟に時間がかかる. - 1 -

本研究では, マイコンを使い始めた人でも, 短時間でロボット制御を行うためのプログラムを作成できるようにすることを目的とし, そのためのソフトウェアを開発, 提供する. マイコン初心者でも扱いやすいマイコンボードとして,Arduino 4) がある.Arduino は C 言語に似た独自の言語を用いて, 簡単に動かすことができる. しかし,Arduino は, エンコーダカウンタがないこと,A/D 変換の分解能が 10bit しかないこと,PWM の周期が長く分解能が低いことなどから, ロボット制御には不十分である. 2. ロボット制御用ソフトウェア 2.1 対象とするマイコンと機能本研究で対象とするマイコンは, Microchip 社の dspic33 シリーズである. マイコンの動作クロックは 40MHz に設定する. 対象とする機能はデジタル入出力,10/12bit A/D 変換, エンコーダパルスカウント,PWM 出力,16bit タイマ, 非同期シリアル通信 (UART) である. dspic マイコンのプログラムの開発は Microchip 社の統合開発環境 MPLAB を使用して行う. コンパイラは純正品の C30 コンパイラを使用する.MPLAB と C30 コンパイラはフリーで提供されている. マイコンにプログラムを書き込む際には PICkit2 などの書き込み機器を使用する. Fig.1 Hierarchy of Programs グラムは dspic マイコンの機能ごとに関数化し, 一部の関数は Arduino の関数に似せることにする. そうすることで, マイコン初心者でも dspic マイコンを Arduino のように, 簡単に扱いやすくする. ソフトウェアの階層構造を Fig.1 に示す. 上位層の User s Programs は, ユーザーが用意するプログラムである. 中間層の Developed Functions in this paper は, 本研究で用意する関数である. 下位層の Special Fanction Registers of dspic33 は, dspic33 の本来のプログラムの書き方である. 上位層であるユーザーのプログラムで, 中間層である各機能の関数を呼び出す仕組みである. この構造によって, 煩雑な設定を気にすることなく各機能を実現できる. 2.3 開発した関数中間層として開発した関数を Table.1 に示す.Table.1 では, 引数は省略している. 各関数の機能を説明する. 2.2 ソフトウェアの階層構造 Arduino のプログラムは機能ごとに関数化され, 煩雑な設定を気にすることなく各機能を使うことができる. そこで, 開発するプロ 2.3.1 ピン設定 pinmode(pin,mode) はピンの入出力設定, 機能の割り当てなどを行う関数である. ピンと機能を指定する. - 2 -

Table.1 Developed Function in this paper name of function work of function pinmode() pin set up digitalwrite() Digital output digitalread() Digital inout ADC_setup() ADC set up analogread() get a result of ADC QEI1_setup() QEI1 set up encoder1_read() get count of encoder palus QEI2_setup() QEI2 set up encoder2_read() get count of encoder palus analogwrite() PWM output pwmwrite() PWM output Timer1_setup() timer1 set up Timer2_setup() timer2 set up Timer3_setup() timer3 set up Timer4_setup() timer4 set up Timer5_setup() timer5 set up delay() wait milli seconds delaymicroseconds( wait micro seconds ) Serial_bigin() UART set up 2.3.2 デジタル入出力 digitalwrite(pin,value) はデジタル出力の関数である.HIGH,LOW を出力できる. digitalread(pin) はデジタル入力の関数である. スイッチなどの読み取りに使う. 2.3.3 A/D 変換 ADC_setup(bit,an0,an1,an2,an3,an4,an5,an6,an7,an8) は A/D 変換の設定を行う関数 である. 分解能は 10bit か 12bit を選ぶこと ができる.A/D 変換の機能を割り当てられる ピンのうち, 使うピンを指定して設定する. analogread(anx) は A/D 変換の結果取得の 関数である.ADC_setup() で設定したピンを 指定し,A/D 変換結果を取得する. 2.3.4 エンコーダパルスカウント QEI1_setup(x_mode,encoder_count_first,encoder_count_max) はエンコーダカウンタ 1 の設定を行う関数である.1,2,4 逓倍の うち, 何逓倍で使用するかを指定できる. ほ かに, 初期カウント値, 最大カウント値を指 定できる.QEI2_setup() はエンコーダカウンタ 2 の設定関数である. encoder1_read() は, エンコーダカウンタ 1 のカウント値を取得する関数である. encoder2_read() はエンコーダカウンタ 2 のカウント値を取得する関数である. 2.3.5 PWM 出力 analogwrite(pin,duty) は PWM 出力の関数である.PWM 周波数は約 490Hz である. デューティ比は 0~255 で指定できる. この周波数と分解能は Arduino とほぼ同じである. pwmwrite(pin,duty) は analogwrite() の機能を拡張した PWM 出力の関数である. analogwrite() と比較して PWM 周波数と分解能が高い.PWM 周波数は 100kHz である. デューティ比は 0~800 で指定できる. 2.3.6 タイマ Timer1_setup(interrupt,prescale,count ) はタイマ 1 の設定を行う関数である. タイ - 3 -

マ割り込みの有無, プリスケール値, カウント値の最大値を指定できる. タイマの設定関数はほかに 4 つあり, タイマ 2 からタイマ 5 までの各タイマの設定を行う関数となっている. delay(ms) はタイマ 1 を使った待ち関数である. ミリ秒単位で待ち時間を指定できる. delaymicroseconds(µs) はタイマ 1 を使った待ち関数である. マイクロ秒単位で待ち時間を指定できる. 2.3.7 UART Serial_bigin(speed) は UART の設定を行う関数である. 通信速度を指定できる. 3. ソフトウェアの適用例 3.1 dspic マイコンボード鈴川ら 5) は, 各種センサやアクチュエータの利用が可能な dspic マイコンボードを開発した. マイコンは dspic33fj128mc204 を用いている. 開発した dspic マイコンボードを Fig.2 に示す. マイコンボードの主な機能は, デジタル入出力が 35ch,10/12bit A/D 変換が 9ch,PWM の出力が 8ch,16bit エンコーダカウンタが 2ch,16bit タイマが 5ch, 非同期シリアル通信 (UART) が 2ch である. このボードを用いて, 開発した関数の動作テストを行う. 3.2 ステッピングモータの制御ステッピングモータを回転させ, スイッチで回転方向を変える. 使用する機能はデジタル入出力とタイマである. システムの構成を Fig.3 に, 実際の装置を Fig.4 に示す. システムはマイコンボード, モータードライバ, ステッピングモータ, プッシュスイッチで構成される. モータードライバはサンケン電気 ( 株 ) 製 SLA7033M を, ステッピングモータはオリエンタルモーター製の PK243-01A を使用した. ステッピングモータの制御は, モータードライバに 4 つのデジタル信号を出力して行う. マイコンボードは, モータードライバに digitalwrite() で指令を出し, ステッピングモータを駆動する. 回転速度は delay を使って制御する. プッシュスイッチの状態は digitalread() を呼び出して読み取り, 読み取った結果をもとに回転方向を変える. 実際にモータを回して, デジタル入出力の関数と delay 関数が正常に動作していることを確認した. Fig.3 System of Stepping motor Control Fig.2 dspic MCU Bord - 4 -

Fig.4 Overview of Stepping motor Control 3.3 距離の計測とシリアル通信距離センサのデータを取得し, 取得したデータを PC の画面に表示させる. 使う機能は 12bitA/D 変換と UART である. システムの構成を Fig.5 に, 実際の装置を Fig.6 に示す. システムはマイコンボード, 赤外線距離センサ,USB シリアル変換モジュール,PC で構成される. 赤外線距離センサはシャープ製の GP2Y0A21YK を使用した. analogread() で距離センサのアナログデータを取得し,UART を使って PC へ送信する. 今回, データを送信するプログラムは用意していないので, データの送信には C 言語の printf 関数を使用する. 送信されたデータの画面表示は Tera Term を使用する. A/D 変換結果を Fig.7 に示す.12bit の Fig.5 System of Distance Measuring Fig.6 Overview of Distance Measuring Fig.7 Result of Distance Measuring データが取得できていることが分かる. これにより,A/D 変換の関数と,UART の設定関数が正常に動作することを確認できた. 3.4 DC サーボモータの制御 DC サーボモータが目標角度に動くように位置制御をする. 使用する機能はエンコーダカウンタ,PWM, タイマである. システムの構成を Fig.8 に, 実際の装置を Fig.9 に示す. システムはマイコンボード,DC サーボモータ, モータードライバ, エンコーダ, ローパスフィルタ, 増幅器で構成される. モータは maxon motor 製の RE 35 シリーズを, エンコーダはマイクロテック ラボラトリー ( 株 ) 製の MGH-20-100-E を, モータードライバは Okatech 製の JW-143-2 を使用した. - 5 -

マイコンボードから出力される PWM 信号は, ローパスフィルタと, オペアンプによる増幅器を通り, ドライバに対応したアナログ信号となる. モータドライバはその入力電圧に応じてモータを駆動する. マイコンボードは, エンコーダのパルスをカウントし, カウント値に応じた PWM 信号を出力することで位置制御を行う. 制御周期は, タイマ割り込みを使用して 1 ミリ秒に設定する. 実際にモータを動かし, 位置制御できていることを確認した.PWM 出力と, エンコーダ読込みの関数が正常に動作していることが確認できた. Fig.8 System of DC motor Control 4. 結言本研究では,dsPIC33 シリーズのマイコンを対象として, 各機能を実現する関数を用意した.dsPIC マイコンボードと, ステッピングモータなどのデバイスを, 開発したソフトウェアで制御し, 正常に動作することを確認した. これにより, 煩雑な設定を気にせずに各機能を実現できるため, マイコン初心者でもロボット制御のプログラムを開発しやすくなった. 本研究で開発したソフトウェアは dspic33 シリーズを対象としたが, ピン設定の関数は, 動作テストに用いた dspic マイコンボードに搭載されている dspic33fj128mc204 のピン配置に依存しているため, 開発した関数のなかには,dsPIC33 シリーズのほかのマイコンでは使えないものがあると思われる. また, UART は設定の関数しか用意していないなど, 不十分なところがある. 今後の課題は,UART の送受信などの, 関数化ができていない部分の関数化をすること, 現在のソフトウェアを,dsPIC33 シリーズのマイコンであればすべての関数が適用できるように改良することである. 本研究で用意したプログラムは web ページで公開する予定である. 参考文献 1) 近藤科学 KHR http://kondo-robot.com/product/khr-seri es.html 2) 千葉工業大学未来ロボット技術研究センター,morph3 Fig.9 Overview of DC motor Control http://www.furo.org/ja/robot/index.html - 6 -

3) Mitsuhiro Yamano,Akihiro Ochiai,Yuichi Suzukawa,Hanafiah Yussof,Masahiro Ohka and Yasuo Nasu,Design of a Distributed Control System Using a Personl Computer and Micro Control Units for Humanoid Rbots, Journal of Computer Science 6,8,880/885 (2010) 4) Arduino http://www.arduino.cc/ 5) 鈴川裕一, 山野光裕, dspic マイコンと RT ミドルウェアを用いたロボット制御システムの開発, 第 28 回日本ロボット学会学術講演会予稿集,CD-ROM, RSJ2010AC1P2-5,(2010) - 7 -