IASB 公開草案 リース を公表 国際会計基準審議会 (IASB) は2013 年 5 月 16 日に 公開草案 (ED/2013/6) リース を公表した この公開草案は IASBが2010 年 8 月に公表した公開草案 リース ( 以下 2010 年公開草案 ) に対するコメントを受けた再審議の結果 提案内容が変更となった主な論点について 再度広く意見を募るために公表されたものである 公開草案の概要は以下のとおりである リースは 原資産の性質及び原資産の費消割合に応じて タイプAとタイプBに分類される 不動産以外のリースは原則としてタイプA 不動産のリースは原則としてタイプBとなる リースの借手は 簡便的な処理を採用することとした短期リース以外のすべてのリースについて リース資産 ( ) 及びを認識する ( すなわち リースはオンバランス処理される ) タイプAのリースの場合 リース費用の計上額はリース期間の経過とともに逓減していくのに対し タイプBのリースの場合 リース費用は定額で計上される リースの貸手は タイプAのリースの場合 原資産の認識を中止し リース債権及び残余資産を認識する リース収益の計上額はリース期間の経過とともに逓減していく 一方 タイプBのリースの場合 原資産の認識は継続され リース収益は定額で計上される 1. 背景この公開草案は FASBとの共同プロジェクトであるリース プロジェクトの一環として公表されたものである 2010 年公開草案に対するコメントを受けた再審議の結果 提案内容が変更となった主な論点について 再度広く意見を募るために公表された コメントの締切りは2013 年 9 月 13 日である 2. リースの定義及び適用範囲 定義リースとは 資産 ( 原資産 ) を使用する権利が 一定期間にわたり 対価と交換に移転される契約と定義される 適用範囲リースの定義に該当する すべてのリース ( サブリースにおけるのリースも含む ) にリース基準書を適用する ただし 以下の項目は適用範囲外である 貸手による無形資産のリース 天然資源の探査及び利用に関するリース 生物資産のリース IFRIC 解釈指針第 12 号が適用されるサービス委譲契約なお 借手は 無形資産のリースについて リース基準書を適用する必要はないが 適用が禁止されているわけではない 3. リースの分類 企業はリース開始日に リースをタイプAまたはタイプBのいずれかに分類しなければならない 原資産が不動産ではないリースの場合は原則タイプAとなり 原資産が不動産であるリースの場合は原則タイプBとなる 一定の要件を満たす場合には 原資産が不動産ではないリースであってもタイプBとなり 原資産が不動産であるリースであってもタイプAとなる この関係は次のように表される いいえ タイプA ただし 以下の要件のいずれかに該当する場合はタイプBとなる リース期間が 経済的耐用年数に対して重要ではない 支払リース料の現在価値は リース開始日の原資産の公正価値に比べて重要ではない リースの原資産は不動産か?( 注 1)( 注 2) タイプB ただし 以下の要件のいずれかに該当する場合はタイプAとなる リース期間が 残りの経済的耐用年数の大部分を占めている 支払リース料の現在価値が リース開始日の原資産の公正価値とほぼ等しいかそれ以上 ( 注 1) 原資産の種類 ( 不動産または不動産以外の資産 ) にかかわらず 借手が購入選択権を行使する重要な経済的インセンティブを有する場合 そのリースはタイプAとなる ( 注 2) 不動産とは 土地または建物 建物の一部 もしくはそれら両方である なお 借手がをIAS 第 40 号 投資不動産 の公正価値モデルまたはIAS 第 16 号 有形固定資産 の再評価モデルに従って測定することを選択した場合 ( 4. 借手の会計処理 を参照 ) には 借手はリースをタイプAまたはタイプBに分類しない 表示及び開示規定を適用する際には そのリースはタイプAのリースとして取り扱われる また 短期リースについては 借手 貸手とも 会計方針として リースの分類に関する規定を適用しないことを選択できる ( 短期リースについては 6. その他 を参照 ) はい
2 IFRS News Flash 4. 借手の会計処理当初認識時の処理はいずれのタイプであっても同じであり 借手はとを認識する ( オンバランス処理 ) 当初認識後の会計処理は タイプAとタイプBで異なる 当初認識時の会計処理借手はリース開始日に とを認識する は 将来支払うリース料を貸手が借手に課す利子率 ( または借手の追加借入利子率 ) で割り引いた現在価値で測定する 一方 リース開始日のの原価は (a) (b) 貸手から受け取ったあらゆるリースインセンティブを控除した リース開始日及びそれより前に行ったすべてのリース料の支払い 及び (c) あらゆる初期直接原価の合計である 当初認識後の会計処理借手は に係る割引の振戻し及びその会計期間に支払ったリース料を反映するために の帳簿価額を調整する ( に係る割引の振戻しを加算し その会計期間に支払ったリース料を減額する いわゆる実効金利法 ) 一方 については その原価から 償却累計額及び減損累計額を控除した額で測定する タイプAのリース ( 9. 設例 を参照 ) 借手は に係る割引の振戻し ( タイプAでは 利息費用となる ) との償却費をそれぞれ包括利益計算書に計上する 利息費用はの残高に割引率を乗じて算定されるため その額はリース開始当初が最も大きく の残高が減少するにつれて小さくなる 一方で の償却は原則として定額法で行われる このため リースに係る費用計上額 ( 利息費用 + 償却費 ) は逓減していくことになる タイプBのリース ( 9. 設例 を参照 ) 借手は 毎期定額となる単一のリース費用を包括利益計算書に計上する 単一のリース費用は に係る割引の振戻しとの償却を足し合わせたものである に係る割引の振戻しはタイプAと同じ方法で算定されるが の償却額は リース費用を定額にするための逆算の結果として算定される すなわち その期のリース費用とその期のに係る割引の振戻しの差額について の帳簿価額を毎期減額していく 借手が有形固定資産の特定項目 ( 例 : 建物 ) に含まれるすべての資産を再評価している場合には その有形固定資産の項目に関連するをIAS 第 16 号 有形固定資産 に従った再評価額で測定することができる 5. 貸手の会計処理貸手の場合 タイプAとタイプBの会計処理は大きく異なる タイプ A のリース 当初認識時の会計処理 貸手はリース開始日に 原資産の認識を中止し リース債権及び残余資産 ( リース中に貸手によって留保されている原資産に対する権利を表す資産 ) を財政状態計算書で認識するとともに その結果として生じるリースに関連する利益 ( リース開始日に認識する利益 ) を包括利益計算書に計上する リース債権は 将来受け取るリース料を割り引いた現在価値で測定する ( 初期直接原価が発生した場合には それを加算する ) 残余資産は 次の式により算定される 残余資産 =A+BC A: 総額の残余資産 ( 貸手がリース期間の終了後に原資産から生じると予想する額の現在価値 ) B: 予想される変動リース料の現在価値 ( ただし 貸手が借手に課す利子率を貸手が決定する際に変動リース料の予想を反映し 変動リース料がリース債権に含まれていない場合のみ ) C: 未稼得利益 また リース開始日に認識する利益及び未稼得利益 (C) は次の式により算定される D: リース開始日に認識する利益 =E C=ED 支払リース料の現在価値原資産の公正価値 E: 原資産の公正価値とリース開始日直前の原資産の帳簿価額の差額 ( ただし 公正価値 > 帳簿価額の場合のみ ) 貸手の当初認識時の会計処理のイメージは 次のようになる ( 初期直接原価及び変動リース料 (B) がないケースを想定 ) リース開始日に認識する利益 (D) の測定に関する例外的処理の測定方法について 前述のものと異なる例外的処理が 以下のように規定されている リースされた不動産が投資不動産の定義に該当し 借手が会計方針として IAS 第 40 号 投資不動産 の公正価値モデルを選択した場合には リースされた資産から生じる 原資産の帳簿価額 リース料の現在価値に見合う部分 総額の残余資産に見合う部分 リース料の現在価値 残余資産 未稼得利益 (C) リース債権 総額の残余資産 (A) 未稼得利益 貸手が原資産から生じると予想する額 を IAS 第 40 号の公正価値モデルに従って測定しなければなら リース開始時 リース終了直後 ない
3 当初認識後の会計処理貸手は リース債権に係る割引の振戻し及びその会計期間に受け取ったリース料を反映するために リース債権の帳簿価額を調整する ( リース債権に係る割引の振戻しを加算し その会計期間に受け取ったリース料を減額する いわゆる実効金利法 ) 一方 残余資産については 当初の帳簿価額に総額の残余資産に係る割引の振戻しを加算した額で測定する ( 貸手が借手に課している利子率で増価させる ) 貸手は 以下の各項目を包括利益計算書に計上する リース債権に係る割引の振戻し ( 利息収益 ) 総額の残余資産に係る割引の振戻し ( 利息収益 ) その会計期間に受け取った リース債権に含まれていない変動リース料リース債権に係る割引の振戻しは リース債権の残高に割引率を乗じて算定されるため その額はリース開始当初が最も大きく リース債権の残高が減少するにつれて減っていく タイプBのリース貸手は リース開始日後も引き続き原資産を認識し ( すなわち リース開始日の仕訳はない ) 受取リース料を原則として定額法でリース期間にわたり収益として計上するとともに 原資産を適切な基準書に従って測定及び表示する 6. その他 リース期間借手及び貸手は リース期間を リースの解約不能契約期間に 以下の期間を両方とも加えた期間として決定しなければならない 借手が延長選択権を行使する重要な経済的インセンティブを有する場合には その選択権の行使により延長される期間 借手が解約選択権を行使しない重要な経済的インセンティブを有する場合には その選択権を行使しないことにより延長される期間 初期直接原価初期直接原価は リースの交渉及び準備に直接起因する費用のうち リース取引を行わなかったならば発生しなかったものと定義される 初期直接原価は発生時に費用処理するのではなく ( 借手 ) やリース債権 ( 貸手のタイプAのリース ) 等として資産計上する 購入選択権借手が購入選択権を行使する重要な経済的インセンティブを有する場合には 借手及び貸手は 購入選択権の行使価格をリース料 に含める また そのような場合 借手は をリース期間でなく原資産の耐用年数にわたり償却する 割引率借手は割引率として 貸手が借手に課す利子率 を入手できる場合にそれを使用し それ以外の場合は 追加借入利子率 を使用する 一方 貸手は 貸手が借手に課す利子率 を割引率として使用する 変動リース料指数またはレートに基づく変動リース料は リース開始日の指数またはスポット レートを用いて認識する また 実質的に固定の支払いとなる変動リース料は認識する これら以外の変動リース料は ( 借手 ) またはリース債権 ( 貸手のタイプAのリース ) の当初測定に含めない 減損借手の及び貸手の残余資産ともに IAS 第 36 号 資産の減損 に基づいて減損を評価する 貸手は残余資産が減損しているか否かを評価する際 残価保証を考慮する 貸手のリース債権については IFRSの金融商品のガイダンス ( 現行 IAS 第 39 号 金融商品 : 認識及び測定 または現在開発中の金融資産の減損に関する新たな基準書 ) に基づいて減損を評価する 短期リース短期リースとは リース開始日において延長選択権を含めた最長リース可能期間が12ヶ月以内のリースで 購入選択権が含まれていないものである 借手 貸手ともに 会計方針として選択することにより 短期リースを簡便的に会計処理することができる 簡便的な会計処理のもとでは 借手は を認識せずに 支払リース料を定額法で費用計上する 一方 貸手は受取リース料を原則として定額法で収益計上する 7. 移行措置企業は 新リース基準書を以下のいずれかの方法で適用することを選択できる IAS 第 8 号 会計方針 会計上の見積りの変更及び誤謬 に従った完全遡及適用 新リース基準書を初めて適用する際の財務諸表において 比較期間のうち最も古い期間の期首に存在する 新リース基準書が適用されるリースについて リースの分類に応じて規定されている方法により認識及び測定を行う方法さらに 適用日より前に開始したリースについて 新リース基準書を適用する際には 以下の負担軽減措置のいずれか または両方を利用することができる
4 IFRS News Flash 企業は 初期直接原価を ( 借手 ) またはリース債 権 ( 貸手 ) の測定に含める必要はない 企業は 事後的判断 (hindsight) を用いることができる ( 例 : 契 8. 適用日 約にリースが含まれるか否かの判断 ) 新リース基準書の適用日は コメントを踏まえて決定される予定で ある 9. 設例 シンプルな数値例を用いて 今回の公開草案で提案された借手の タイプ A のリース及びタイプ B のリースを解説する 借手 : タイプ A のリース ( 前提条件 ) 借手は 機械 A( 耐用年数 3.5 年 公正価値 280) を 3 年のリース期間 でリースする契約を貸手と締結する 借手は年間リース料 支払 う ( 後払い ) 貸手が借手に課す利子率は 5% であり 借手はそれを 入手できる 初期直接原価は発生しなかった 借手は リース資産 の 90% をリース期間にわたり費消すると予測している ( 解説 ) 不動産以外の資産のリースであり タイプ B に分類すべき要件に該 当しないため タイプ A のリースと判断される 期間 各期間のリース料 () を貸手が借手に課す利子率 (5%) で割り引 いて当初認識額 ( すなわち 支払リース料総額の現在価値 ) を算定 する ( 1.05+ 1.05 2 + 1.05 3 =) その後は毎期 リース料 ( 現金 ) から利息費用 ( に係る割引の振戻し ) を 控除した額だけ減額していく (1 期 :(14)=186) 財政状態計算書包括利益計算書支払い 開始時 1 期 186 2 期 3 期 合計 181 90 償却費 91 91 90 利息費用 14 9 5 28 費用総額 105 現金 利息費用 残高に貸手が借手に課す利子率 (5%) を乗じて算定す る (1 期 : 5%=14) 借手 : タイプ B のリース ( 前提条件 ) 借手は オフィスビル ( 耐用年数 40 年 公正価値 2,000) を 3 年のリー ス期間でリースする契約を貸手と締結する 借手は年間リース料 支払う ( 後払い ) 貸手が借手に課す利子率は5% であり 借手はそれを入手できる 初期直接原価は発生しなかった 借手は リース資産の5% をリース期間にわたり費消すると予測している ( 解説 ) 不動産のリースであり タイプAに分類すべき要件に該当しないため タイプBのリースと判断される 期間 開始時 1 期 2 期 3 期合計 各期間のリース料 () を貸手が借手に課す利子率 (5%) で割り引 いて当初認識額を算定する ( 1.05+ 1.05 2 + 1.05 3 =) その後は毎期 リース料 ( 現金 ) からに係る割引 の振戻しを控除した額だけ減額していく (1 期 :(14)= 186) なお タイプ B ではタイプ A のように利息費用を包括利益計算 書に計上することはないが 及びの当初認 識後の測定のために それを算定する必要がある と同額の で当初認識する その後は毎期 リース費 用からに係る割引の振戻しを控除した額だけ減額してい く (1 期 :(14)=186) リース費用 支払リース料の総額 ( 3 回分 =) をリース期間 (3 年 ) で除す ( 3=) 財政状態計算書 186 186 包括利益計算書 リース費用 支払い 現金 と同額ので当初認識する その後は毎期 償却費だけ減額していく (1 期 :91=181) 償却費の償却費をリース期間 3 年にわたり定額法で計上する 3 年 =91(3 期目は端数調整のため90)
5 編集 発行 有限責任あずさ監査法人 IFRS 本部 IFRS Information Desk email: AZSAIFRS@jp.kpmg.com ここに記載されている情報はあくまで一般的なものであり 特定の個人や組織が置かれている状況に対応するものではありません 私たちは 的確な情報をタイムリーに提供するよう努めておりますが 情報を受け取られた時点及びそれ以降においての正確さは保証の限りではありません 何らかの行動を取られる場合は ここにある情報のみを根拠とせず プロフェッショナルが特定の状況を綿密に調査した上で提案する適切なアドバイスをもとにご判断ください 2013 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative ( KPMG International ), a Swiss entity. All rights reserved. The KPMG name, logo and cutting through complexity are registered trademarks or trademarks of KPMG International. www.azsa.or.jp/ifrs あずさ監査法人は 公開草案 リース の概要を詳しく説明する刊行物 IFRSの改訂リース会計 ( 案 ) ~ 公開草案 リース の解説 ~ を2013 年 6 月中旬に公表予定です また KPMG IFRG Limitedも 英語版の解説資料 New on the Horizon を作成中です あずさ監査法人では 発行後この原文を上記のIFRSサイトに掲載する予定です