C. 研究結果 考察 1, 全国統計にみた自殺の次推移 ( 表 1 図 1) 1899~23 以降の全国人口動態統計からの推移をみてみると 第二次世界大戦前の自殺死亡率は 12~22 前後で大戦後よりも低値であった 一方 毎の全 人当たりのについても大戦前は 6~13 と大戦後に比較して低かった 全

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新潟県の自殺の現状 平成 27 年の本県の自殺者数は厚生労働省の人口動態統計によると 504 人です 自殺者数の推移を見ると 平成 10 年に国と同様 中高年男性を中心とした自殺者の急増があり 当時は県内で 800 人を超える方が毎年自ら死を選択されるという状況でした 以後漸減し 平成 27 年の

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1 人口動態の概況 ( 平成 24 年 1 月 ~12 月 ) (1) 出生数 < 減少 > 出生数は56,943 人で前年に比べ1,116 人減少し 出生率は人口千人に対し8.0で 前年と比べ0.2ポイント低下した (2) 死亡数 < 増加 > 死亡数は59,137 人で前年に比べ1,467 人増

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資料 4 明石市の人口動向のポイント 平成 27 年中の人口の動きと近年の推移 参考資料 1: 人口の動き ( 平成 27 年中の人口動態 ) 参照 ⑴ 総人口 ( 参考資料 1:P.1 P.12~13) 明石市の総人口は平成 27 年 10 月 1 日現在で 293,509 人 POINT 総人口

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まえがき 平成 24 年福島県簡易生命表 は 平成 24 年の福島県日本人人口 ( 推計 ) と平成 22~25 年の人口動態統計 ( 確定数 ) を基にして 本県の死亡状況が今後変化しないと仮定したとき 各年齢の者が1 年以内に死亡する確率や平均的にみて今後何年生きられるかという期待値などを 死亡

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目 次 1 交通事故の発生状況 1 2 死傷者の状況 (1) 齢層別の状況 3 (2) 状態別の状況 5 (3) 齢層別 状態別の状況 7 (4) 損傷部位別の状況 12 (5) 昼夜別の状況 14 3 交通事故の状況 (1) 齢層別の状況 17 (2) 法令違反別の状況 19 (3) 飲酒別の状況


60 政治学研究 57 号 (2017) 表 1

本章のまとめ 第 4 章当市の人口推移 本章のまとめ 現在までの人口推移は以下のとおりである 1. 人口の減少当市の人口は平成 23 年 7 月 (153,558 人 ) を頂点に減少へ転じた 平成 27 年 1 月 1 日時点の人口は 151,412 人である 2. 人口増減の傾向年齢 3 区分で

3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

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81 平均寿命 女 単位 : 年 全 国 長野県 島根県 沖縄県 熊本県 新潟県 三重県 岩手県 茨城県 和歌山県 栃木県

Transcription:

平成 16 度厚生労働科学研究費補助金 ( こころの健康科学研究事業 ) 自殺の実態に基づく予防対策の推進に関する研究分担研究報告書 自殺の実態に関する法医学的研究 - 東京都区部と茨城県の異状死体取り扱いデータを用いた自殺の実態調査と全国統計との比較 および精神疾患と自殺との関連 - 分担研究者山崎健太郎筑波剖検センター長 研究要旨目的 = 自殺の実態を把握するために 東京都区部と茨城県の検案データを基に 検索考察し さらに全国の集計データと比較した さらに 東京都区部と茨城県において 精神障害者の自殺例を別途抽出した これらの検索資料を 自殺の実態解明と予防対策のための基礎資料とした 方法 = 東京都区部は東京都監察医務院開院時からの 6 分 茨城県は茨城県警察本部に保管してある 198 から 19 分について 死因別死亡率 ( 以下自殺死亡率 ) 全死亡者に対するの割合を算出した これらのデータを 1899 以降の全国人口動態統計と比較した さらに 東京都区部では 6 分 茨城県においては 19 分の検案デ - タを元に 自殺者の約 3 割を占める精神障害者の自殺例を別途抽出した 結果 考察 = 1899 以降の全国人口動態統計よりのみをまとめると 第二次世界大戦前の自殺死亡率は 1~2 前後で大戦後よりも低値であった 一方 人当たりのについても大戦前は 6~13 と大戦後に比較して低かった 歴史的にみると 第二次世界大戦直前ないし戦争中のきわめて緊迫した情勢の中よりも 世界恐慌前後から満州事変にむかう経済的 政治的に混沌とした情勢下での自殺者 自殺死亡率の上昇がみられた 大戦後に関しても 終戦直後の極めて混乱した経済 衛生環境を脱しつつある 192 頃から 196 頃まで 自殺死亡率の増加がみられている その後死亡率は低下していたが 1998 頃から 19 代に匹敵する増加を見せている 次に 自殺傾向の地域差に関して検討してみると大都市については 全国に比較して自殺死亡率は全般的に低値であるが 死亡率の上昇時期は全国よりも早期にみられ自殺増加が都市部から全国に拡大する傾向がみられた また東京都と茨城県との比較では死亡率 全死亡者数との比率の数値では大きな差はみられないが 全国傾向と同様に東京都区部に比較して自殺のピークが若干遅れる傾向はある 最後に精神疾患との関連では 自殺動機に精神疾患 ( 精神病 神経症 ) が関与していると考えられる事例は全の 2~3% で茨城県においては 198 代に比較してやや増加している ただし次毎のバラツキがみられ 動機の評価方法などの影響も否定できない また 東京都区部では動機に関しては茨城県とほぼ同率であり 精神疾患の加療歴がある例は全自殺者の 3% を超え自殺対策上無視できないと思われた A. 研究目的東京都監察医務院および茨城県警察本部の検案 検視記録に記載され データベース化されている記録を基に自殺関連事項 ( 動機の概略 手段 精神疾患の有無など ) を用いて東京都区部と茨城県内の自殺の比較的長期間に及ぶ概略を調べ 全国人口動態統計との比較を試みると同時に 精神疾患が自殺におよぼす影響を探る基本データを作成し 自殺防止へのアプローチへつなげるための実態データのひとつとした B. 研究方法東京都監察医務院の事業統計 (1946~ 23 ) と検案データベース (1998~23 ) 茨城県警察本部の検案資料 (198~ 23 ) をもとに 各自治体が公表している人口動態統計から次毎の人口と死亡者数を組み合わせ 各地域毎に人口 1 万人当たりの自殺による死因別死亡率 ( 以下自殺死亡率 ) と 人当たりの自殺者の割合を算出した また 1899 から 23 までの全国人口動態統計から人口 全死亡者数を抽出し同様の死亡率を算出した これらのデータをもとにの次推移の傾向と 全国と大都市部 都市周辺部 ( 茨城県 ) との相違について検討した さらに東京都区部と茨城県において自殺動機に精神疾患 ( 統合失調症 うつ病 神経症 ) が疑われる事例数 さらに東京都区部での自殺例のうち精神疾患で加療中の事例をを抽出し 自殺予防の一資料とした

C. 研究結果 考察 1, 全国統計にみた自殺の次推移 ( 表 1 図 1) 1899~23 以降の全国人口動態統計からの推移をみてみると 第二次世界大戦前の自殺死亡率は 12~22 前後で大戦後よりも低値であった 一方 毎の全 人当たりのについても大戦前は 6~13 と大戦後に比較して低かった 全般的な増減の傾向をみると 第二次世界大戦直前ないし戦争中のきわめて精神的 身体的に危険な情勢の中よりも 192~ 193 代の世界恐慌前後から満州事変にむかう経済的 政治的に混沌とした情勢下での自殺者 自殺死亡率の上昇がみられた 大戦後に関しても 終戦直後の極めて混乱した経済 衛生環境を脱しつつある 194 頃から急激な上昇がみられ 196 頃まで 2 前後の自殺死亡率の高値が続いた その後 196 代後半は 14~1 前後と低値であったが 198 前後に 2 前後のピークをみせ 1998 頃より再び増加傾向がみられ 19 代と同じく 2 を超えている 全死亡者に対する自殺者の割合の変化は自殺死亡率よりも大きく 大戦直後は 1~13 前後であるのに対し 19 代で自殺者の割合は 3 倍弱 (198 で 34.) に達している またその後も 2~2 前後で推移し 198 代前半 34 まで上昇 そして 1997 以降は常に 3~33 前後と高値が続いている 自殺死亡率の増減は 戦争や世界的な経済的危機そのものよりも これらの事件に派生して起こる すなわち世界的な危機局面に先駆け あるいは遅れて発生する体制や価値観の変化等 生命の危険に直結はしないが混乱や不安の生じる時期に増加していると思われる また大戦後国際交流や情報化社会の構築により 様々な情報が飛び交い自殺思考に拍車がかかるようになってきたことが自殺増加の要因と考えられる 特に近のネット自殺などはこれらの現象が絡んでいると思われる 自殺数や自殺死亡率の次推移は 自殺予防を過去の記録から図ることの重要性を表していると考えられる 2, 東京都区部と茨城県の死亡率の比較 ( 表 1 図 2 図 3) 地域毎の統計資料は少ないため長期にわたる検討は難しい 医師法の規定等もあり自殺は警察官による検視対象となっている 従って 地域の自殺動向は都道府県警察や監察医務機関の調査や検査内容は有力な資料となりうる 自殺死亡率や自殺者の割合の値自体は全国統計と大きな差はみられな かった しかし 東京都区部の推移を仔細にみてみると 東京都区部で自殺死亡率は 19 27.19 198 29. 1998 26.1 と高値のピークをみせている 全国統計では 198 (2.7) 1998 (2.4) 23 (2.) とピークがみられるのに対し 東京都区部は自殺死亡率の増減がより急峻で ピークの始まりが全国より同時ないし 1 前後早い 自殺死亡率の数値は全般に全国統計より低いが 前述の通りピーク値は全国統計より高い傾向にある 茨城県は 198 以降のデータしか入手できなかったが 自殺死亡率の変化は全国統計に近い ここでも 自殺死亡率の変化よりも全死亡者に対するの変化の方が顕著にみられた 3, 精神疾患と自殺の関連 ( 表 2 図 4 図 ) 自殺動機に精神疾患 ( 精神病 神経症 ) が関与していると考えられる事例は全の 2~3% 前後であるが 茨城県においては 199 代後半は 198 代に比較して全般に増加している ただし次毎のバラツキがみられ 動機の評価方法などの影響も否定できない また 1998 以降の東京都区部のデータでは動機に関しては茨城県とほぼ同率であるが 精神疾患の加療歴がある例は全自殺者の 3% を超え自殺対策上無視できないと思われた 精神疾患の詳細な分析は今後の課題である D. 結論全国人口動態統計と異状死体としての自殺の基礎データをもとに 主に自殺死亡率により 今回は長期間に及ぶ次推移を検索したところ 過去の自殺データを検討すること 死亡率の他に全死亡者数のうちの占める割合を検討することも 自殺実態把握に有用であることを示した 併せて精神疾患と自殺との関連も今後より詳細に検討していく必要があるように思われた E. 健康危険情報なし F. 研究発表 1. 論文発表なし 2. 学会発表なし H. 知的財産権の出願, 登録状況 1. 特許出願 なし 2. 実用新案出願 なし 3. その他 なし

表 1 の次推移 全国 東京都区部 茨城県 次 1899 明治 32 932 13.7 6.36 19 33 863 13.4 6.44 191 34 7847 17.7 8.48 192 3 89 17.9 8.4 193 36 8814 19.4 9.47 194 37 8966 19.4 9.38 19 38 889 17.4 8. 196 39 767 16.3.8 197 4 7999 16.9 7.87 198 41 8324 17.4 8.9 199 42 9141 18.8 8.38 191 43 9372 19.1 8.81 1911 44 9373 18.8 8.98 1912 大正元 947 18.7 9.14 1913 2 1367 2.2 1.9 1914 3 192 2.9 9.89 191 4 113 19.2 9.28 1916 999 17.9 8.8 1917 6 924 17.1 7.71 1918 7 111 18. 6.76 1919 8 9924 18. 7.74 192 9 163 19. 7.47 1921 1 1138 2. 8.81 1922 11 1146 2.1 8.97 1923 12 11488 19.8 8.62 1924 13 11261 19.1 8.97 192 14 12249 2. 1.12 1926 昭和元 12484 2.6 1.76 1927 2 1284 2.8 1.8 1928 3 1332 2.8 1.4 1929 4 1274 2.1 1.1 193 13942 21.6 11.91 1931 6 1433 21.9 11.7 1932 7 14746 22.2 12. 1933 8 148 22. 12.4 1934 9 144 21.3 11.79 193 1 14172 2. 12.2 1936 11 1423 22. 12.4 1937 12 1429 2.2 11.83 1938 13 12223 17.2 9.7 1939 14 178 1.1 8. 194 1 9877 13.7 8.32 1941 16 9713 13.6 8.4 1942 17 9393 13. 8. 1943 18 8784 12.1 7.21 1944 19 194 2

表 1 続き 次 の次推移 全国東京都区部茨城県 1946 昭和 21 6 17.43 1947 22 12262 1.7 1.77 797 19.8 1948 23 1273 1.9 13.42 87 19.21 1949 24 1421 17.4 1.2 144 19 2 16311 19.6 18.3 1246 23.14 191 26 141 18.2 18.37 1169 192 27 1776 18.4 33.92 1289 193 28 17731 2.4 22.9 1412 194 29 263 23.4 28.6 176 19 3 22477 2.2 32.41 189 27.19 196 31 2217 24. 3.2 186 2.67 197 32 22136 24.3 29.42 1923 26.37 198 33 23641 2.7 34. 2239 29.1 199 34 219 22.7 3.7 1926 24.2 196 3 2143 21.6 28.1 1842 22.71 1961 36 18446 19.6 26.2 198 19.17 1962 37 16724 17.6 23. 1333 1.67 1963 38 149 16.1 23.9 118 13.73 1964 39 1477 1.1 21.8 99 11.38 196 4 14444 14.7 2.62 124 11.61 1966 41 1 1.2 22.4 1199 13.48 1967 42 14121 14.2 2.92 17 12.7 1968 43 1461 14. 21.27 188 12.24 1969 44 14844 14. 21.4 1117 12.6 197 4 1728 1.3 22.6 119 13.43 1971 46 16239 1.6 23.72 1237 14.2 1972 47 181 17. 26.3 148 1.99 1973 48 1889 17.4 26.8 1462 16.66 1974 49 191 17. 26.89 143 16.8 197 1997 18. 28.44 1361 1.71 1976 1 19786 17.6 28.13 1373 1.91 1977 2 2269 17.9 29.37 1361 1.9 1978 3 2199 17.6 29.3 1377 16.21 1979 4 2823 18. 3.19 1326 1.72 31.31 198 242 17.7 28.42 1332 1.89 3. 1981 6 296 17.1 27.9 1342 16.1 29.97 1982 7 2668 17. 29.3 1178 14.18 26.64 1983 8 2498 21. 33.76 163 18.82 34.4 1984 9 24344 2.4 32.89 1471 17.69 31.71 198 6 23383 19.4 31.8 1426 17.11 3.42 39 19.78 31.23 1986 61 2667 21.2 34.19 162 19.4 34.48 64 21.99 34.84 1987 62 23831 19.6 31.73 1386 16.9 29.19 7 2.8 32.8 1988 63 2279 18.7 28.74 1319 1.88 26.3 9 18.19 27.6 1989 平成元 2112 17.3 26.79 1232 14.9 24.74 482 17.6 27. 199 2 288 16.4 24.49 1199 14.61 23.14 47 16.2 24.79 1991 3 1987 16.1 23.9 122 1.36 24.2 43 1.12 22.8 1992 4 2893 16.9 24.39 124 1.24 23.29 489 16.84 24.9 1993 216 16.6 23.3 1197 14.78 21.92 476 16.26 23.4 1994 6 2923 16.9 23.89 1373 17.7 2.12 48 16.28 23.91 199 7 2142 17.2 23.23 1371 17.16 24.4 27 17.83 24.37 1996 8 22138 17.8 24.7 1474 18.2 26.44 4 18.19 2.86 1997 9 23494 18.8 2.72 1471 18.49 26.2 82 19.2 26.69 1998 1 317 2.4 33.91 282 26.1 36.12 682 22.78 3.78 1999 11 31413 2. 31.99 249 2.7 33.83 748 24.94 31.91 2 12 321 24.1 31.46 273 2.74 3.8 73 24.4 31.7 21 13 2937 23.3 3.27 188 22.63 31.6 78 23.67 3.2 22 14 29949 23.8 3.49 187 21.98 3.1 7 2.6 31.2 23 1 3219 2. 31.64 1987 23.82 32.2 789 26.37 32.

表 2 次 精神疾患と自殺者との関連 東京都区部動機に精神疾患が関与する に占める割合 (%) 精神疾患の既往のある に占める割合 (%) 茨城県動機に精神疾患が関与する に占める割合 (%) 精神疾患の既往のある に占める割合 (%) 198 6 119 22.1 1986 61 118 19. 1987 62 96 16.8 1988 63 98 19.3 1989 平成元 99 2. 199 2 99 21.1 1991 3 131 3.1 1992 4 1 21. 1993 96 2.2 1994 6 1 21.9 199 7 1 19.9 1996 8 164 3.4 1997 9 11 2.9 1998 1 8 24.4 647 31.1 147 21.6 1999 11 491 24. 69 32.2 2 26.7 2 12 42 26.1 696 33.6 171 23.4 21 13 18 27.9 62 33.6 183 2.8 22 14 23 28.9 62 31.1 28 27.7 23 1 479 24.1 71 3.7 24 3.4 ( 図 1) 全国の自殺死亡率と自殺死亡割合 (1899~23 ) 4 自殺死亡率 ( 人口 1 万人当 ) 自殺死亡割合 ( 死亡 1 人当 ) 3 3 2 2 1 1 1899 196 1913 192 1927 1934 1941 191 198 196 1972 1979 1986 1993 2 死亡率自殺死亡割合

自殺死亡率 ( 人口 1 万人当 ) ( 図 2) 地域別自殺死亡率 3 3 2 2 1 1 1946193196196719741981198819922 全国東京都区部茨城県 ( 図 3) 地域別自殺死亡割合 自殺死亡割合 ( 全死亡数 1 人当 ) 4 3 3 2 2 1 1 1979 1981 1983 198 1987 1989 1991 1993 199 1997 1999 21 23 全国東京都区部茨城県 ( 図 4) 精神疾患が動機とされる ( 図 ) 精神疾患が動機とされる自殺者の割合 人数 6 4 3 2 1 198 1987 1989 1991 1993 199 1997 1999 21 23 全自殺者に占める割合 (%) 3 3 2 2 1 1 198 1987 1989 1991 1993 199 1997 1999 21 23 茨城県 東京都区部 茨城県 東京都区部