企業会計において 給与などの費用には発生主義の考え方が採られています これは 当期に支出した金額のみを当期の費用とするのではなく 当期に支払の原因となる事実 ( 給与に関しては 労働の提供 ) が発生していれば 当期に費用計上するという考え方を言います 言い換えると 支払が翌期であっても それが当期

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IFRS基礎講座 IAS第12号 法人所得税

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第 298 回企業会計基準委員会 資料番号 日付 審議事項 (2)-4 DT 年 10 月 23 日 プロジェクト 項目 税効果会計 今後の検討の進め方 本資料の目的 1. 本資料は 繰延税金資産の回収可能性に関わるグループ 2 の検討状況を踏まえ 今 後の検討の進め方につ

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改正法人税法により平成 24 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度については法人税率が 30% から 25.5% に引き下げられ また 復興財源確保法により平成 24 年 4 月 1 日から平成 27 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度については基準法人税額の 10% が復興特別法人

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企業結合ステップ2に関連するJICPA実務指針等の改正について⑦・連結税効果実務指針(その2)

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貸借対照表 (2019 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目 金額 科目 金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 3,784,729 流動負債 244,841 現金及び預金 3,621,845 リース債務 94,106 前払費用 156,652 未払金 18,745

CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

第4期電子公告(東京)

第 3 期決算公告 (2018 年 6 月 29 日開示 ) 東京都江東区木場一丁目 5 番 65 号 りそなアセットマネジメント株式会社 代表取締役西岡明彦 貸借対照表 (2018 年 3 月 31 日現在 ) 科目金額科目金額 ( 単位 : 円 ) 資産の部 流動資産 負債の部 流動負債 預金

科目 期別 損益計算書 平成 29 年 3 月期自平成 28 年 4 月 1 日至平成 29 年 3 月 31 日 平成 30 年 3 月期自平成 29 年 4 月 1 日至平成 30 年 3 月 31 日 ( 単位 : 百万円 ) 営業収益 35,918 39,599 収入保証料 35,765 3

貸借対照表 平成 28 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 千円 ) 科 目 金 額 科 目 金 額 資産の部 負債の部 流動資産 (63,628,517) 流動負債 (72,772,267) 現金及び預金 33,016,731 買掛金 379,893 売掛金 426,495 未払金 38,59

第28期貸借対照表

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税されるときは 給与等課税事由が生じた日 ( 権利行使日 ) に 法人において 当該役務提供に係る費用の額が損金に算入されますので ( 法人税法第 54 条第 1 項 ) ストック オプションの付与時において将来減算一時差異に該当し 税効果会計の対象となります Q3: 削除 Ⅱ 中間財務諸表等におけ

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科目当年度前年度増減 [ 負債の部 ] 流動負債未払金 3,44,15,654 3,486,316,11-46,3,357 給付金未払金 3,137,757,265 3,192,611,196-54,853,931 年金未払金 287,13, ,91,778 7,228,646 その他未

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中小企業の退職金制度への ご提案について

営業活動によるキャッシュ フロー の区分には 税引前当期純利益 減価償却費などの非資金損益項目 有価証券売却損益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目 営業活動に係る資産 負債の増減 利息および配当金の受取額等が表示されます この中で 小計欄 ( 1) の上と下で性質が異なる取引が表示され

法人税における役員特有の取扱いには 主に次のようなものがあります この取扱いは みなし役 員も対象となります 項目 役員給与 損金算入制限 過大役員給与 特有の取扱い 定期同額給与 ( 注 1) や事前確定届出給与 ( 注 2) など一定のもの以外は損金不算入 実質基準 ( 職務内容 収益状況など

[2] 財務上の影響 自己株式を 取得 した場合には 通常の有価証券の Ⅰ. 株主資本 ように資産に計上することはせず 株主との間の資本取 1. 資本金 引と考え その取得原価をもって純資産の部の株主資本 2. 資本剰余金 (1) 資本準備金 から控除します そのため 貸借対照表上の表示は金額 (2

財務諸表 金融商品取引法第 193 条の 2 第 1 項の規定に基づき 当社の貸借対照表 損益計算書 株主資本等変動計算書及び附属明細表については 有限責任あずさ監査法人の監査証明を受けております 貸借対照表 科目 ( 資産の部 ) 流動資産 平成 27 年度末平成 28 年 3 月 31 日現在

第6期決算公告

ASBJ「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い」の概要

に相当する金額を反映して分割対価が低くなっているはずですが 分割法人において移転する資産及び負債の譲渡損益は計上されませんので 分割法人において この退職給付債務に相当する金額を損金の額とする余地はないこととなります (2) 分割承継法人適格分割によって退職給付債務を移転する場合には 分割法人の負債

設例 [ 設例 1] 法定実効税率の算定方法 [ 設例 2] 改正地方税法等が決算日以前に成立し 当該改正地方税法等を受けた改正条例が当該決算日に成立していない場合の法定実効税率の算定 本適用指針の公表による他の会計基準等についての修正 -2-

有価証券報告書の訂正報告書 ( 第 120 期 ) 自平成 25 年 4 月 1 日 至平成 26 年 3 月 31 日 大阪市大正区船町一丁目 1 番 66 号 株式会社中山製鋼所 (E01229)

3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

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平成30年3月決算における税務上の留意事項

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はじめに 会社の経営には 様々な判断が必要です そのなかには 税金に関連することも多いでしょう 間違った判断をしてしまった結果 受けられるはずの特例が受けられなかった 本来より多額の税金を支払うことになってしまった という事態になり 場合によっては 会社の経営に大きな影響を及ぼすこともあります また

図表 1 将来減算一時差異とは 課税所得の計算上 差異が生じたときに加算され 将来解消するときに減算されるものです 税効果会計の適用において最も取り扱う機会が多いのが将来減算一時差異です 貸倒引当金の損金算入限度超過額 賞与引当金及び退職給付引当金の額 減価償却費の損金算入限度超過額 棚卸資産等に係

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第 21 期貸借対照表 平成 29 年 6 月 15 日 東京都千代田区一番町 29 番地 2 さわかみ投信株式会社 代表取締役社長澤上龍 流動資産 現金及び預金 直販顧客分別金信託 未収委託者報酬 前払費用 繰延税金資産 その他 固定資産 ( 有形固定資産 ) 建物 器具備品 リース資産 ( 無形

ケース 1: 死亡日より後に給与 ( 賞与 ) の支給がない場合 1 年末調整をする [ 年末調整 ]-[ 年末調整処理 ]-[ 年末調整処理 ] メニューを選択します [ 年末調整処理 条件設定 ] 画面で 以下を選択して [OK] ボタンをクリックします 年末調整方法 : 単独年調処理方法 :

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2018 年度 (2019 年 3 月 31 日現在 ) 貸借対照表 ( 単位 : 百万円 ) 科 目 金額 科 目 金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 現金及び預貯金 1,197,998 保険契約準備金 908,017 預貯金 1,197,998 支払備金 2,473 有価証券 447,49

税効果会計シリーズ(3)_法定実効税率

2019 年 8 月 22 日 各位 インフラファンド発行者名 東京インフラ エネルギー投資法人 代表者名 執行役員 杉本啓二 ( コード番号 9285) 管理会社名 東京インフラアセットマネジメント株式会社 代表者名 代表取締役社長 永森利彦 問合せ先 取締役管理本部長 真山秀睦 (TEL: 03

平成 30 年 4 月 24 日 各 位 会社名楽天株式会社 代表者名代表取締役会長兼社長三木谷浩史 ( コード :4755 東証第一部 ) 連結子会社 ( 楽天証券株式会社 ) の決算について 当社連結子会社の楽天証券株式会社 ( 代表取締役社長 : 楠雄治 本社 : 東京都世田谷区 以下 楽天証

財務諸表 金融商品取引法第 193 条の 2 第 1 項の規定に基づき 当社の貸借対照表 損益計算書 株主資本等変動計算書及び附属明細表については 有限責任あずさ監査法人の監査証明を受けております 貸借対照表 科目 ( 資産の部 ) 流動資産 2017 年度末 2018 年 3 月 31 日現在 (

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第 29 期決算公告 平成 26 年 4 月 1 日 平成 27 年 3 月 31 日 計算書類 1 貸借対照表 2 損益計算書 3 個別注記表 中部テレコミュニケーション株式会社

目次 1. 回収可能性適用指針の公表について (1) 公表の経緯 (2) 税効果会計プロジェクトの全体像 (3) 適用時期 2. 回収可能性適用指針の概要 (1) 繰延税金資産の回収可能性の基本的な考え方 (2) 課税所得と一時差異等加減算前課税所得 (3) 企業の分類に応じた取扱い総論 (4) 各

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3. 基本財産及び特定資産の財源等の内訳 基本財産及び特定資産の財源等の内訳は 次のとおりです 科目当期末残高 ( うち指定正味財産からの充当額 ) ( うち一般正味財産からの充当額 ) ( うち負債に対応する額 ) 基本財産投資有価証券 800,000,000 (662,334,000) (137



貸借対照表 ( 平成 20 年 3 月 31 日 ) ( 厚生年金勘定 ) ( 単位 : 円 ) 科 目 金 額 資産の部 Ⅰ 流動資産 現金及び預金 11,313,520,485 有価証券 13,390,000,000 販売用不動産 93,938,423,482 未収金 389,813,000 未

第21期(2019年3月期) 決算公告

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日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

( 資産の部 ) ( 負債の部 ) Ⅰ 特定資産の部 1. 流動負債 366,211,036 1 年内返済予定 1. 流動資産 580,621,275 特定社債 302,000,000 信託預金 580,621,275 事業未払金 2,363, 固定資産 6,029,788,716 未払

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平成 29 年度連結計算書類 計算書類 ( 平成 29 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日まで ) 連結計算書類 連結財政状態計算書 53 連結損益計算書 54 連結包括利益計算書 ( ご参考 ) 55 連結持分変動計算書 56 計算書類 貸借対照表 57 損益計算書 58 株主

旭情報サービス (9799) 平成 28 年 3 月期第 1 四半期決算短信 ( 非連結 ) 添付資料の目次 1. 当四半期決算に関する定性的情報 2 (1) 経営成績に関する説明 2 (2) 財政状態に関する説明 2 (3) 業績予想などの将来予測情報に関する説明 2 2. サマリー情報 ( 注記

貸借対照表 ( 平成 27 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目金額科目金額 ( 資産の部 ) 流 動 資 産 現 金 預 金 受取手形 営業未収金 貯蔵品 前渡金 前払費用 繰延税金資産 その他 貸倒引当金 固定資産 有形固定資産建 物 構築物 機械装置 車両運搬具 器具備品

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第 9 章純資産の会計 問題 43 問題 43 資本剰余金の振替え 借方科目金額貸方科目金額 次の独立した取引の仕訳を示しなさい ⑴ 資本準備金 2,000,000 円とその他資本剰余金 800,000 円を資本金とすることを株主総会で決議し その効力が生じた ⑵ 資本金 500,000 円を資本準

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3 平成 25 年 4 月に給与の支給規程を改訂し 平成 24 年分 10 月にまでさかのぼって実施する こととなり 平成 25 年 4 月の給与支給日に支払うこととなった平成 24 年 10 月から平成 25 年 3 月までの給与改訂差額 A 3 1 給与所得の収入金額の収入すべき時期は 契約又は

2 事業活動収支計算書 ( 旧消費収支計算書 ) 関係 (1) 従前の 消費収支計算書 の名称が 事業活動収支計算書 に変更され 収支を経常的収支及び臨時的収支に区分して それぞれの収支状況を把握できるようになりました 第 15 条関係 別添資料 p2 9 41~46 82 参照 消費収入 消費支出

固定資産の減損損失に係る将来減算一時差異の取扱い 36 役員退職慰労引当金に係る将来減算一時差異の取扱い 37 その他有価証券の評価差額に係る一時差異の取扱い 38 退職給付に係る負債に関する一時差異の取扱い 43 繰延ヘッジ損益に係る一時差異の取扱い 46 繰越外国税額控除に係る繰延税金資産 47

包括利益の表示に関する会計基準第 1 回 : 包括利益の定義 目的 ( 更新 ) 新日本有限責任監査法人公認会計士七海健太郎 1. はじめに企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 ( 以下 会計基準 ) が平成 22 年 6 月 30 日に

受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税 35 外国法人税 36 適用時期等 38-2-

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ずほ証券連結財務諸業績と財務の状況 みずほ証券連結財務諸表み表繰延税金資産 15,653 14,554 当社は 平成 28 年度及び平成 29 年度の連結貸借対照表 連結損益計算書及び連結株主資本等変動計算書について会社法第 444 条第 4 項の規 定に基づき 新日本有限責任監査法人の監査証明を受

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財務の概要 (2012 年度決算の状況 ) 1. 資金収支計算書の概要 資金収支計算書は 当該会計年度の教育研究活動に対応するすべての資金の収入 支出の内容を明らかにし かつ 当該会計年度における支払資金の収入 支出の顛末を明らかにするものです 資金収支計算書 2012 年 4 月 1 日 ~201

. 減価償却の仕組みを理解する 60 定率法 定額法など減価償却の方法を理解しましょう. 有価証券の整理をする 68 有価証券一覧表に 購入売却のつど その取引内容を記載していくと 決算業務の際に便利です. 受取配当金を集計する 78 有価証券の整理後 受取配当金と源泉所得税を集計し 申告書作成の準

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解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異の取扱い 35 固定資産の減損損失に係る将来減算一時差異の取扱い 36 役員退職慰労引当金に係る将来減算一時差異の取扱い 37 その他有価証券の評価差額に係る一時差異の取扱い 38 退職給付に係る負債に関する一時差異の取扱い 43 繰延ヘッジ損益に係る一時差

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人件費 第 1 回 : 給与の会計処理 2014.04.26 新日本有限責任監査法人公認会計士友行貴久 新日本有限責任監査法人公認会計士横山彰 はじめに第 1 回 給与の会計処理 では 従業員の給与と 給与に関連して発生する社会保険料などの人件費の会計処理を解説します 第 2 回では 賞与など従業員に対するその他の人件費の会計処理を解説します 第 3 回では役員に関する人件費の会計処理を扱います 1. 給与の会計処理 (1) 支給時の会計処理以下 一般的と思われる給与明細をもとに 給与支給時の会計処理を解説します ( 給与明細の一例 ) 上段は 基本給 残業手当 通勤手当 およびその他の手当からなる給与の支給項目です 支給項目の名称は 会社によってさまざまです これらの支給項目は 会社が支払い 費用として計上すべきものです 下段は控除項目です 従業員が負担する所得税の源泉徴収および住民税の特別徴収 社会保険料 労働保険料 ( 雇用保険料 ) からなっています このほか 財形貯蓄などの控除項目があります 従業員に対しては 支給項目を合計した支給額計から これら控除項目を差引いた額を支払うことになります 給与支払時の仕訳例 ( 上記の給与明細をもとに ) 費用科目を給与 残業手当 諸手当 通勤費などに細分化する会社もあります 本稿では 以降も 給与 として仕訳例を記載します (2) 発生主義に基づく費用計上 1

企業会計において 給与などの費用には発生主義の考え方が採られています これは 当期に支出した金額のみを当期の費用とするのではなく 当期に支払の原因となる事実 ( 給与に関しては 労働の提供 ) が発生していれば 当期に費用計上するという考え方を言います 言い換えると 支払が翌期であっても それが当期に行われた労働の対価 ( 給与 ) であるならば 当期に 未払費用を相手科目として費用計上することになります 給与を発生主義に基づいて会計処理するに当たっては 個々の会社における給与の計算期間 ( 締日 ) や支払日が関係してきます 例 ) 毎月 25 日に 前月 16 日 ~ 当月 15 日の給与を支払っている場合の月次決算における仕訳例 上記 123により 11 月 1 日から 11 月 30 日に発生した給与 ( 例では 323,000) が 11 月の月次決算で費用処理されています 1 未払費用計上する半月分 (16 日 ~ 月末日 ) の給与額は 同期間の時間外手当の発生実績を考慮して計算する方法のほか 特に月次決算においては 直近の給与支給実績額 (2においては 11 月 25 日に支給された 10 月 16 日 ~11 月 15 日の給与支給額 ) を用いて見積計算するといった方法も考えられます 注 ) 本稿では 月次決算において 当月費用計上額 = 当月に発生した額となる仕訳例を記載していますが 会社によっては 月次決算では1の仕訳のみ行い 2および3に相当する仕訳は年度決算 ( 四半期決算 ) においてのみ行うことで 年度決算 ( 四半期決算 ) ベースでは費用計上額 = 当期 ( 当四半期 ) に発生した額とする といったように いろいろな実務が考えられることをお断りします ( 以降の仕訳例についても同様です ) (3) 控除項目の会計処理 1 所得税および住民税給与支払額からは 所得税の源泉徴収および住民税の特別徴収が控除され 前述のとおりこれを預り金に計上します 所得税 住民税とも翌月 10 日までに納付します 2

2 社会保険料および労働保険料 社会保険料および労働保険料について 会社は 給与から控除した従業員負担分と会社 ( 事業主 ) 負 担分とを合わせて納付します 次項以降で解説します 2. 社会保険料の会計処理 (1) 社会保険料の算定の概要ここでは 健康保険料 厚生年金保険料および介護保険を総称して 社会保険料 と呼びます 前述のとおり 社会保険料の従業員負担分は給与から控除し 会社負担分を費用として計上したうえで 従業員負担分と合わせて納付します 毎月の社会保険料は 標準報酬月額に保険料率を乗じて求め これを会社 ( 事業主 ) と従業員 ( 被保険者 ) とが折半します ただし 組合管掌健康保険においては 健康保険料の事業主負担割合を高めることができます 標準報酬月額は 毎年 1 回 定時決定と呼ばれる見直しが行われます 具体的には 4 月から 6 月の給与をもとに標準報酬月額を算定し これを 9 月から翌年 8 月までの社会保険料の計算に適用します ただし 随時改定と言って 定時決定以外のタイミングでも 給与に大幅な変動があった場合に標準報酬月額を見直すことがあります (2) 発生主義に基づく費用計上 当月分の社会保険料は 会社負担分と従業員負担分とを併せて 翌月末までに納付することになって います 納付が翌月であっても 当月末に被保険者資格を有する従業員について 当月分の社会保険料がすでに発生しています そこで発生主義の考え方により 未払費用を相手科目に 当月に費用計上します 仕訳例給与支給日は毎月 25 日 社会保険料は 80,000( 会社と従業員で折半 ) とします 3

3. 労働保険料の会計処理 (1) 労働保険料の算定の概要労災保険と雇用保険とを合わせて 労働保険 と呼びます その保険料はともに 賃金 に対して保険料率を乗じて計算します 雇用保険料は会社 ( 事業主 ) と従業員 ( 労働者 ) の双方が負担しますが 労災保険料は全額が会社負担であり 給与からは雇用保険料のみが控除されます 労働保険の保険期間は4 月 ~3 月です 会社は毎年 7 月にその保険期間の保険料の概算金額 ( 概算保険料 ) を納付します ( 年 3 回の分納が認められる場合があります ) 一方 その年度の賃金実績に基づいて労働保険料の実績額 ( 確定保険料 ) を計算します このうち雇用保険料の従業員負担分について 給与支給額から控除します 翌年の7 月に 概算保険料と確定保険料との差額を精算するとともに 次の保険期間に対する保険料を概算納付します これを年度更新と呼びます 4

(2) 発生主義に基づく費用計上納付した概算保険料と確定保険料との差額は 次の 7 月に精算されます そのため 当期 ( 当月 ) に実際に発生している費用の金額は 賃金実績から計算された確定保険料ということになります この考え方に従い 会計処理の一例を示します 概算納付額は費用科目ではなく 前払費用 ( 会社負担分 ) 立替金 ( 従業員負担分 ) という資産科目 で計上します 毎月の賃金実績に基づき 実際に発生した費用を計上し 概算納付額による前払費用を取崩します 従業員負担分を給与から控除し 概算納付額による立替金を取崩します 翌年 7 月の年度更新 ここでの未払費用および預り金は 対象としている保険期間 (4 月 ~3 月 ) において発生した保険料 ( 確定保険料 ) が 同期間に納付された概算保険料を上回っている額であり 前述の2-1 および2-2 の仕訳により計上されたものを指します 3 3-2 確定保険料 < 概算保険料の場合 次期概算納付額への充当をする場合 ( 仕訳なし次期概算保険料に充当するため 前払費用 立替金のまま ) ここでは3-1 とは反対に 概算保険料が確定保険料を上回る額が 前払費用および立替金残高に残っています 2 概算納付により発生した前払費用および立替金の残高があれば それらを取崩しますが 残高が足りなければ それらの代わりに未払費用 ( 会社負担分 ) 預り金( 従業員負担分 ) を計上することになります 3 還付を選択することも可能とされており その場合以下のとおりの仕訳となります 未収入金 XXX 前払費用 XXX 立替金 XXX 5

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人件費 第 2 回 : 従業員に対するその他の人件費 2014.05.29 新日本有限責任監査法人公認会計士友行貴久 新日本有限責任監査法人公認会計士横山彰 1. 従業員賞与の会計処理 (1) 発生主義にもとづく費用計上従業員賞与も 給与と同様 発生主義に基づいて 労働が提供された期間において費用計上することが必要です 具体的には 多くの企業が就業規則などで定めている支給対象期間 ( 月から 月の勤務に対する賞与を 月に支給する ) を考慮することになります 例 3 月決算会社支給時期と支給対象期間 1 5 月 ~10 月にかかる賞与を 12 月に支給 2 11 月 ~ 翌期 4 月にかかる賞与を翌期 6 月に支給 (3 月末の仕訳 ) 2について 支給は翌期 6 月となりますが 賞与の支給される可能性が高く かつ金額を合理的に見積もることができる場合には 当期において賞与を引当金計上する必要があります この場合 財務諸表作成時において 賞与の支給見込み総額が 6,000 とすると 当期に属する対象月である 11 月 ~3 月の 5 カ月分 (6,000 5/6 5,000) を引当金計上します 賞与引当金繰入額 5,000 / 賞与引当金 5,000 また 賞与に係る社会保険料等の会社負担分も賞与が支給されれば必ず発生し 金額を合理的に見積もることができますので 併せて見積り計上する必要があります なお 期末における負債科目を 賞与引当金ではなく未払費用としている会社もみられます 負債科目に関する判断基準は 以下のとおりです 未払従業員賞与の財務諸表における表示科目について ( リサーチ センター審理情報 No.15) より 支給額が確定しているか ( ) 確定している 表示科目 未払費用 ( 成功報酬的賞与など 賞与支給額が支給対象期間以外の基準に基づいて算定され ている場合には 未払金も考えられる ) 確定していない 賞与引当金 確定している には 個々の従業員への賞与支給額が確定している場合のほか 例えば 賞与の 支給率 支給月数 支給総額が確定している場合などが含まれます 7

( 翌期 6 月支給時の会計処理 ) 実際支給額も 6,000 であったとします また 社会保険料および労働保険料の従業員負担分 所得税の源泉徴収額の合計が 1,200 であったとします 賞与引当金 5,000 預金 4,800 賞与 1,000 預り金 1,200 前期に帰属する額 5,000 は引当金を取崩し 当期の費用となる額 1,000(4 月の 1 カ月分 ) は賞与勘定で計上します (2) 賞与引当金と税効果会計会計上は 上述のように発生主義に基づいて費用計上しますが 法人税法上は 未払の賞与が損金算入できるのは 支給予定月がすでに到来している賞与 および 個々の従業員に支給額が通知されているなどの要件を満たす賞与 のみであり それ以外は実際の支給時に損金算入されることになります ( 法人税法施行令第 72 条の 3) そのため 多くの場合 期末に計上した賞与引当金 ( または未払賞与 ) は 会計と税務との一時差異となり 税効果会計の対象となります 2. 退職給付の会計処理退職給付は 従業員が一定期間労働を提供したこと等により 退職以後に支給される給付であり 将来に支払われる退職給付のうち 当期に発生している額を費用として処理します 退職給付制度は 確定拠出制度と確定給付制度とに分類できますが 会計処理はいずれも当期に属する負担額を費用計上します 詳しくはリンク先 ( 退職給付 ( 平成 10 年会計基準 ) 第 1 回 : 退職給付制度の概要 ) をご覧ください 3. 早期割増退職金の会計処理希望退職を募集するにあたり 通常の退職金とは別に 早期割増退職金 ( または特別退職金 特別加算金など ) を支給することがあります 早期割増退職金は 当該金額が合理的に見積られる時点で費用処理を行います そのため 期末時点では支給が行われていなくても 費用計上することがあります なお 希望退職の募集は 大量退職 ( ) にも該当することがあります その場合 退職給付制度の終了 ( 一部終了 ) に準じた会計処理を行うことになります 退職給付制度の終了 についてはリンク先をご覧ください 大量退職 とは 工場の閉鎖や営業の停止等により 従業員が予定より早期に退職する場合であって 退職給付制度を構成する相当数の従業員が一時に退職した結果 相当程度の退職給付債務が減少する場合をいいます 4. 日本版 ESOP に関する会計処理 8

従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引 ( いわゆる日本版 ESOP) の会計処理について 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い ( 企業会計基準委員会実務対応報告第 30 号 ) が公表されています 日本版 ESOP では 従業員に対する福利厚生として 一定の要件を満たせば自社株式の受給権となるポイントが付与されることがあります 同実務対応報告では この付与されたポイントについて 付与ポイントに対応する株式数 自社株式の取得株価の金額を基礎に費用と引当金を計上する会計処理を示しています 詳しくは リンク先 ( 日本版 ESOP の会計処理及び開示に係る実務対応報告のポイント ) をご覧ください 5. ストック オプションストック オプションとは 企業が従業員または役員に対する報酬として 一定の金額の支払により自社の株式を取得する権利を付与することをいいます ストック オプションによる報酬については 企業がその従業員や役員から得る役務に応じて費用計上し 貸借対照表では純資産の部 新株予約権 に計上する会計処理を行います 詳しくは リンク先 ( ストック オプション第 1 回 : 会社法における取扱いと会計基準の概要 ) をご覧ください 9

人件費 第 3 回 : 役員人件費の会計処理 2014.05.30 新日本有限責任監査法人公認会計士友行貴久 新日本有限責任監査法人公認会計士横山彰 1. 役員人件費の概要 (1) 役員人件費には次のようなものがあります 役員報酬 ( ここでは 月額払いなどで定期的に支払われる報酬 ) 役員賞与 役員退職慰労金会社法では 役員報酬を 報酬 賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益 ( 会社法 361 条 ) とし 役員賞与を役員報酬の一つと位置付けています これら役員報酬の支給は 定款または株主総会の決議 ( または報酬委員会の決議 ) を必要とします また 役員退職慰労金も 在任期間中の職務執行に対する後払いの報酬と考えられており 支給に当たっては 株主総会の決議が必要となります (2) 会計処理のポイント 1 月額払いなどで定期的に支払われる役員報酬は 発生期間に応じて費用処理を行います 2 役員賞与は 役員報酬と同様に発生期間において費用として処理しますが 賞与額の算定方法によっては 支給が翌期になることもあり 役員賞与引当金などの科目を用いて費用計上することがあります 3 役員退職慰労金については 役員退職慰労引当金の計上を検討することが必要となります 2. 役員賞与の会計処理 (1) 役員賞与に関する会計処理の変遷かつて 会社法が施行される前は 役員賞与は利益処分により支給され 役員報酬のように費用処理をせず 翌期に未処分利益を減少させる会計処理が求められていました 会社法は 役員賞与を役員報酬の一つと位置付け 役員賞与の支給手続を 役員報酬と同様に定款への記載または株主総会の決議 ( 委員会設置会社においては 報酬委員会の決定 ) によることとされました ( 会社法第 361 条 第 379 条 第 387 条 第 404 条第 3 項及び第 409 条 ) (2) 発生した期間における費用処理前述の通り役員賞与は費用と位置付けられ 発生主義のもと 発生した期間の費用として処理されることになりました そのため 支給が翌期であっても 当期の職務執行に対する役員賞与は 原則として当期において費用計上することになります 1 役員賞与の支給を 翌期中に開催される株主総会の決議事項とする場合 10

役員賞与の支給は株主総会の決議が前提となるため 当期末において支給が確定した債務とはなっ ていません そのため 支給の決議事項とする額またはその見込額を 原則として 引当金に計上しま す ( 役員賞与に関する会計基準第 13 項 ) 役員賞与 XXX / 役員賞与引当金 XXX ( 支給の決議事項とする額またはその見込額 ) 2 実質的に確定債務と認められる場合子会社が支給する役員賞与のように 株主総会の決議がなされていなくても 実質的に確定債務と認められる場合には 未払役員報酬等の適当な科目をもって計上することができます ( 役員賞与に関する会計基準第 13 項 ) 役員賞与 XXX / 未払役員報酬 XXX ( 支給予定額 ) (3) 役員賞与に対する税効果法人税法上 役員賞与は事前確定届出給与または利益連動給与に該当するものを除いて 損金算入されません そのため 費用処理される役員賞与について 会計と税務とで差異が生じます 税務上 役員賞与は以下の場合をのぞいて損金不算入となります 事前確定届出給与 ( 法人税法第 34 条 1 項 2) 利益連動給与 ( 法人税法第 34 条 1 項 3) 役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で 納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する必要な届け出をしているものをいいます 同族会社に該当しない内国法人が 全ての業務執行役員に対して支給する利益連動給与で 法人税法第 34 条 1 項 3イロにおける要件を満たすものをいいます 以下 当期の職務執行に対する翌期支給予定の役員賞与 10,000( 不相当に高額な金額はない ) 法定実効税率 35%( 繰延税金資産の回収可能性に問題ない ) である場合の仕訳例を記載します 1 事前確定届出給与または利益連動給与に該当しないもの役員賞与で 事前確定届出給与または利益連動給与に該当しないものは 法人税法上 損金不算入となります そのため従業員賞与と異なり 支払った期においても損金とされず税金を減額する効果がありません 従って 永久差異のため税効果会計の対象とはなりません 当期の会計処理 ( 役員賞与費用計上 ) 役員賞与 10,000 / ( 税効果 ) 仕訳なし 役員賞与引当金 10,000 2 事前確定届出給与に該当する場合役員賞与が 納税地の所轄税務署長に届け出された定めの通りに支給され 事前確定届出給与に該当する場合 支給した期において損金に算入されます そのため 当期末に計上される負債は 会計と税務との将来減算一時差異であり 税効果の対象となります 11

当期の会計処理 ( 役員賞与費用計上 ) 役員賞与 10,000 / ( 税効果 ) 繰延税金資産 3,500 / 未払役員賞与法人税等調整額 10,000 3,500 3 利益連動給与に該当する場合利益連動給与は 利益指標を計算する対象期間 すなわち当期において債務として確定することになります そのため 当期に損金経理することで 税務上も損金算入されると考えられ 会計と税務との差異は生じません 従って 税効果の対象とはなりません 当期の会計処理 ( 役員賞与費用計上 ) 役員賞与 10,000 / ( 税効果 ) 仕訳なし 未払役員 賞与 10,000 3. 役員退職慰労金の会計処理 (1) 役員退職慰労引当金計上の検討役員退職慰労金は 後払いの報酬であると考えられています 将来に支給される可能性が高く その金額を合理的に見積ることができる状況があれば 発生主義に基づいて 職務を執行した各期において 費用と引当金とを計上すべきものです 一方 役員退職慰労引当金の支給方法 金額などの決定については その支給に関する内規が存在し 当該内規に基づく支給が行われることを前提に 株主総会が取締役会に一任する実務が多いと思われます 会計上 次の要件を満たす場合においては 役員退職慰労引当金を計上することが必要です ( 租税特別措置法上の準備金及び特別法上の引当金又は準備金並びに役員退職慰労引当金等に関する監査上の取扱い ( 監査 保証実務委員会実務指針第 42 号 ) 3.(1)) 1 役員退職慰労金の支給に関する内規に基づき ( 在任期間 担当職務等を勘案して ) 支給見込額が合理的に算出されること 2 当該内規に基づく支給実績があり このような状況が将来にわたって存続すること ( 設立間もない会社等のように支給実績がない場合においては 内規に基づいた支給額を支払うことが合理的に予測される場合を含む ) 役員退職慰労引当金の残高が 内規に基づいて計算される当期末要支給額に等しくなるように 当期の負担額 ( 当期末要支給額 - 当期首要支給額 ) を 役員退職慰労引当金繰入額 ( 営業費用 ) に計上します 役員退職慰労引当金繰入額 ( 営業費用 ) XXX / 役員退職慰労引当金 XXX 12

上記の要件を満たさない場合には 役員退職慰労金は 株主総会決議時あるいは支出時に費用計 上することになります (2) 役員退職慰労引当金に対する税効果法人税法上 役員退職慰労金は 原則として 株主総会の決議などによりその額が具体的に確定した期に損金算入されます ( 法人税法基本通達 9-2-28) 従って 役員退職慰労引当金の繰入額は損金に算入されず 会計と税務との一時差異が生じます そのため 税効果の対象となりますが 繰延税金資産の回収可能性を判断するに当たり スケジューリングの検討が必要となります なお 役員退職慰労引当金に係る将来減算一時差異は 従業員の退職給付引当金や建物の減価償却超過額のような 将来解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異 ( ) には該当しないとされています ( 税効果会計に関する Q&A Q1) そのため これまでの役員在任期間の実績や内規などに基づいて 役員が退任し 将来減算一時差異が解消される時期を合理的にスケジューリングした結果に基づき 繰延税金資産を計上することになります ( ) 将来解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異は 繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い ( 監査委員会報告第 66 号 ) の3および4ただし書きの会社 ( ) においても 課税所得の合理的見積可能期間 ( おおむね 5 年 ) を超えた年度に解消される額について 回収可能性があるとする考え方を示しています 詳しくはリンク先 ( 税効果会計第 2 回 : 繰延税金資産の回収可能性 ) をご覧ください 13