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2 4 4 恒星の一生 いろいろな天体 1 恒星は暗黒星雲の中で生まれます 暗黒星雲としては馬頭星雲が有名です 電波観測 により一酸化炭素などの分子が存在することが分かっているので 分子雲とも呼ばれます 分子も存在できるような密度が濃く温度が低い 30K 程度 領域です 雲 といっても 最初はその密度は1立方センチあたり水素原子1000個と物理の実験室で普通に作られ る真空 1立方センチあたり10億個 と比べるとはるかに希薄です ただそれが何光年 にもわたって続いているために光が通り抜けられなくなります 背後に星の光があればそ れをバックに黒く浮かび上がるわけです 背後に光がなければ闇夜のカラスで見えません が 電波では光る分子雲として観測されます 2 暗黒星雲の中でちょっと周りよりガスが濃いところがあると自分の重力で収縮します 収縮すると重力はさらに強くなり 重力は距離の2乗に反比例することを思い出してくだ さい さらに収縮が進みます こうしてガスは中心に落下していき 摩擦熱で熱くなり 赤外線や可視光で輝くようになります この状態の星を原始星といって 重力エネルギー で光っている星です 原始星の状態は1千万年くらい続きます 37

大質量星の場合 途中 ハービックハロー天体 ( ジェットを噴出している原始星 ) の状態を経験することもあります 3 中心の温度が1 千万度になると水素の核融合が始まります そうして星は安定して輝くようになります HR 図で主系列の星はこうして水素の核融合で輝いている星です 重い星は短命 軽い星は長生きです 星は 太く短く 細く長く生きます これは核融合反応が温度に非常に敏感なためです 太陽では100 億年輝きます 太陽の10 倍の星では1 億年 太陽の1/10の星では10 兆年輝きます 38

4 太陽はすべての燃料を使うと1000億年輝く計算になります しかし太陽は1 10 使用した時点で一生を終わります それはこういう事情です 中心に水素の 燃えカス であるヘリウムが1 10ほどたまると水素とヘリウムとの境界で燃えている水素の核反 応が不安定になり 星の外層がどんどん膨張してしまいます その結果 星は大きく広が り(地球軌道くらいまで膨らむ) 表面温度は下がり 赤色巨星 となります さらに外層 は流出が続き ついには 中心にヘリウムの芯 外側に広がったガス 惑星状星雲 とい う状態になります 外層のまだ燃えていない層は宇宙空間に広がってしまい これでこの 恒星の一生は終わりです あとには白色矮星と惑星状星雲が残ります 惑星状星雲は 1 0万年で飛散してしまい 姿を消します 白色矮星は100億年もすると冷えて黒色矮星 になります これが太陽の質量の 3 倍以下の星の一生です 5 質量が太陽の3倍から8倍の星では 赤色巨星となるまでは同じですが 重いため中心の温度が上がり ヘリウムも核融合を始 め炭素や酸素に変わります そしてさらに炭素も核融合を始めます ところが炭素の核融 合は激しいので星は爆発してしまいます これが I 型超新星です (I 型超新星にはもう 1 種類 連星系の白色矮星に隣の星から物質が降りつもり爆発する場合もある ) 歴史的に は突如星が現れるので新星と呼ばれました そのうち特に明るいのが超新星です しかし 39

実際は超新星は恒星の最後の大爆発でした そして I 型の場合には 星は木っ端微塵に吹き飛び あとには星は何も残りません 吹き飛んだ星の物質は 超新星残骸として見えます それも10 万年程度の寿命で飛散してしまいます 6 質量が8 倍から30 倍の星では 赤色巨星となるところまでは同じですが 重力が強いため炭素や酸素も安定して燃えます そして最終的に鉄が生成されます 鉄はそれ以上核融合できません しかし重力により鉄の芯は収縮し温度が上がります 50 億度になった時点で鉄は熱を吸収し水素に分解してしまいます これまで水素から鉄に至るまで核融合で出してきた熱を一気に吸収する訳です すると星は支えを失い 中心に向かって落下していきます あるところまで中心が圧縮されると芯は中性子星というものになります 中性子星はとても硬いのでそれ以上は圧縮されません それにもかかわらず物質は落ちてきます 物質は中性子星にあたり 跳ね返ります そうして星全体が吹き飛びまる それが II 型超新星です 吹き飛ばされた物質は超新星残骸となります 爆発のメカニズムにはもう1 説あります 鉄が分解するときに大量のニュートリノを出します 爆発のエネルギーの実に99% はニュートリノで出てきます それが星の外層に吸収されて そのエネルギーで爆発するというものです どちらが本当かはまだ決着がついていません とにかく 中心に中性子星 周りに超新星残骸が残ります 7 質量が30 倍以上の星では 赤色巨星になり 鉄の分解で星が崩壊するところまでは同じです しかし中心にできる中性子星はこの星を支えることはできず つぶされてブラックホールになってしまいます 外層は 吹き飛んで超新星残骸になると考えられています しかしひょっとしてすべてブラックホールに落ち込んでしまい 超新星爆発はしないのかもしれません とにかく 中心にブラックホール 周りに超新星残骸が残るとしておきましょう 40

こうして 原始星 恒星 赤色巨星 白色矮星 中性子星 ブラックホールが登場しました これらの星々は 次のようにとららえることができます 星の一生は重力との闘いである < 重力カタストロフィー ( 重力崩壊 )> ニュートンの重力の式 F=GMm/r 2 を見ればわかりますが rが小さければ F は非常に大きくなります 2 物体があるとしましょう 1.2 物体に重力が働く 2.2 物体は近づく 3. すると2 物体に働く重力はもっと大きくなる 4. するとますます2 物体は近づく 3 に戻る こうして2 物体は際限なく近づきます 41

こういった結果が原因を助長する仕組みのことをポジティブフィードバック ( 正のフィードバック ) といいます 1. 勉強がわかる 2. やる気がでる 3. ますます勉強がわかるようになる 4. ますますやる気がでる 3 に戻る といった例のようにポジティブフィードバックはありふれています その結果 超できるやつと全くできないやつに2 分化します 宇宙でも 冷たく広がったガスと 熱く小さく固まった星とに2 分化します 決して等温度の均一な宇宙にはなりません それはひとえにこの重力のせいです 星の一生は重力との闘いです 星はいろいろな力を使って 重力崩壊から免れようとします しかしどうしても勝てず とことんまで重力崩壊していった天体がブラックホールなのです 天体密度支える力 惑星 1-5 g/cm 3 電子の反発力 ( クーロン力 ) 星間ガス原始星恒星白色矮星 ガスの圧力 ( 温度 ) ( 温度が低いと力は小さい ) ガスの圧力 ( 温度 ) ( ガス雲が縮んでいくことで重力エネルギーを熱エネルギーに変えて温度を維持している ) 1g/cm 3 ガスの圧力 ( 温度 ) ( 水素の核融合で熱を発生させ高温を維持している ) 1 トン /cm 3 電子の縮退圧 ( しゅくたいあつ ) ( 縮退圧 : 電子同士には言わば なわばり があって 2 個を近づけようとすると ある距離以下で巨大な力が働く アイデンティティの発現とでも言おうか クーロン力よりも大きい 温度に依らない ) 中性子星 10 億トン /cm 3 中性子の縮退圧 42

(しかし更に圧力を上げると さすがの電子の縮退 圧でも支え切 れなくなる 電子は逃げを決め込み 陽子と合体して中性子にな っ てしまう 中性子も電子と同じくフェルミオンといわれる粒子 なので縮退圧が 働く その力は質量が大きいぶん 電子のより大 きく より重い力に耐えられる ) ブラック 無限大 ホール なし (しかし質量がそれより大きい場合 最終的には重力が勝ち 星は 1点まで収縮し ブラックホールに なってしまう 星の分類 夜空を見上げると 明るい星もあれば暗い星もあります 赤い星もあれば青い星もあ ります 星をみてすぐ分かるのは明るさと色です 等級 星の明るさは 当初 一番明るい 1 等星から肉眼でぎりぎり見える 6 等星までの 6 種類 に分類されました 近代になって機械で明るさを測ってみると 1 等星と 6 等星の明るさの 差は 100 倍でした また人間の眼の感じ方は 倍倍ゲーム であり 2.51 倍明るいと 1 等 43

級明るいと感じるようです そこで 1 等星は 2 等星の 2.51 倍 2 等星は 3 等星の 2.51 倍 5 等星は 6 等星の 2.51 倍になるように等級を決めました 1 等星は 6 等星の 2.51 の 5 乗倍 つまり 100 倍明るいわけです この定義を使えば 2.4 等級などと小数で正確に表すことができます また 1.0 等級より 2.51 倍明るいのは 0.0 等級 さらに 2.51 倍明るいのは-1.0 等級と 負の数を使って表すこともできます 全天一明るいシリウスは-1.5 等級です 太陽は-26.8 等級 満月は-12.6 等級 金星は最大 -4.7 等級です < 本当の明るさ> しかし星には近い星 遠い星といろいろありますから 距離が分からなければ星の本当の明るさは分かりません 1990 年頃ヒッパルコス衛星は三角測量 ( 年周視差 ) によって 20853 個の星の距離を 10% 以上の精度で求めました < 星の色 > 次に気付くのは星の色です オリオン座の右肩の星ベテルギウスは赤い星です オリオン座の左足の星リゲルは青い星です 星の色は表面温度を表しています 赤い星は温度が低く (3000 度程度 ) 青い星は温度が高い(1 万度程度 ) 星です 太陽は黄色っぽい星で 温度は 6000 度です こうして星の色と本当の明るさという 2 つの情報が分かったので 色を X 軸に本当の明るさを Y 軸にして グラフを書いてみます 最初にこの図を書いた人達の名前を取って この図をヘルツシュプルング=ラッセル図 略して HR 図といいます < 主系列 > すると大抵の星は左上から右下に至る線上に並ぶことが分かりました 明るい星は表面温度が高く 暗い星は温度が低いわけです ほとんどの星がこの系列にあるので これを主系列といいます 太陽も主系列にありちょうど真ん中あたりに位置します 主系列は水素の核融合で光っている星です < 赤色巨星 > 赤い星 つまり表面温度が低いにもかかわらず 本当の明るさが太陽の 100 倍とかいう明るい星もあります おうし座の α 星アルデバランなどです これはつまり大きさがとても大きい星で 半径が太陽の 100 倍もあります 金星軌道くらいの大きさです 赤色で大きな星なので 赤色巨星 と呼ばれます これは星の末期の姿です 太陽もあと 50 億年すればこのような星になると考えられています 水星と金星は太陽に飲み込まれてしまうでしょう 地球は飲み込まれはしませんが 今の太陽の100 倍の熱を至近距離から受け 灼熱の世界と化すでしょう 44

< 赤色巨星が巨大なわけ> 恒星は中心部で 水素を核融合させヘリウムに変えています 燃えカス であるヘリウムは星の中心にたまっていきます ヘリウムコアの表面で水素が核融合しているので殻燃焼といいます 太陽の場合 100 億年たつと全質量の 10% がヘリウムに変わり 中心にヘリウムのコア ( 芯 ) ができます これほどヘリウムがたまるとヘリウムコアの存在が無視できなくなります つまり ヘリウムコアだけみると1つの星をなしているので 自分の重力で縮もうとします 普通は星は中心で核融合を行っていて その熱で 縮もうとする重力を支えています しかしヘリウムコアの中には熱源がないので 自分の重力で縮んでそれによって発生する熱で星を支えるしかありません 縮むときの熱を放出してヘリウムコアは光ります しかし殻状の水素燃焼層にとってみれば 自分の燃焼熱でそこより外側の層を支えていて釣り合いがとれているのに 中から余分に熱せられることになります 核融合反応は温度に非常に敏感です ちょっと温度が上がっただけで反応が過剰になり 必要以上の熱を発生し外側の層に与えるようになります すると外層は膨らみます 膨らむと温度が下がります こうして赤色の巨星になります 核反応は主系列時代の 10~100 倍も盛んになります < 赤色超巨星 > 赤色巨星の中にはベテルギウスのように太陽の 1 万倍とか明るいものもあります これは赤色超巨星と呼ばれます 大質量星の末期であり 内部は ネオンの層 炭素 酸素の層 ヘリウムの層 水素の層というようにたまねぎ構造になっていると考えられています おのおのの燃焼層で反応過剰が起こるので星が超巨大となります ベテルギウスは 500 光年も離れているにもかかわらず ハッブル望遠鏡で直接星の形が見えています その大きさは太陽の 1700 倍もあります 内部はたまねぎ構造ではあるが あとになるほど生成されるエネルギーは微小になっていくのであっという間に消費されます 太陽の 18 倍の星 SN1987A の場合 水素の燃焼は 1000 万年 ヘリウムの燃焼は 100 万年も続くのに対し 炭素の燃焼は 1 万 2 千年 ネオン 酸素の燃焼は12 年 シリコンの燃焼は1 週間しかもちません そして鉄の崩壊による II 型超新星へと突進していくのです < 惑星状星雲 > 太陽の重さの 3 倍以下の星の場合 赤色巨星はその後も外層の膨張が続き 惑星状星雲となります 中心のヘリウムのコアはどんどん縮んでいきますが あるところまで収縮すると熱で支えなくとも電子の縮退圧で支えられるようになります となるともはや縮む必要はありません この星が白色矮星です 1 光年程度に広がった惑星状星雲 その中心に高温の白色矮星という図式になります 45

< 白色矮 ( わい ) 星 > シリウス B の話 1800 年代前半 シリウスの動きが蛇行していることが見つかりました シリウスは全天一の明るさの恒星です ひとえにそれは近いからです 肉眼で見える星のうちでは ケンタウルス座 α 星についで近いのです (8.6 光年 ) よって星の動き( 固有運動 ) も良く分かります 蛇行運動はシリウスが連星系で 太陽程度の重さの星と連星をなしていることを表していました シリウスの重さは太陽の 2.3 倍なので相手の星も同じくらい重いはずです しかしいくら見ても太陽のような明るい星は存在しませんでした しばらく 目に見えないなぞの星 と思われていましたが 1862 年新しくできた望遠鏡によりシリウスのすぐそばに 8.6 等級の白い星が見つかりました その星をシリウス B といいます シリウス A は -1.5 等級なので シリウス B はその 10 等級落ち 1 万分の 1 の明るさしかありません 温度は 32000 度で シリウス A の 10700 度よりも高いのです 温度が高いのにこんなに暗いのはなぜでしょう? それは大きさが小さいからです 太陽の 100 分の 1 程度しかない計算になります 半径 5400km です これは地球 ( 半径 6400km) 程度です それなのに太陽の 1.02 倍の重さがあります 表面の重力は地球の46 万倍になります 本当にこんなに表面重力が大きいことは スペクトル輝線の重力赤方偏移で確かめられました 白色で小さいので このような星は白色矮星と呼ばれます 実はかつての恒星の中心部であるヘリウムのコアや炭素 酸素のコアが露出している星であり 余熱で光っているのです 内部の熱を出し切ってしまうと温度は低くなって光らなくなり黒色矮星へと変化します 白色矮星は電子の縮退圧という力で支えられているので 温度が下がっても縮むことはありません そのままの大きさで黒色矮星となります しかしそれには100 億年という長い時間がかかります 宇宙の初期にできた球状星団中の白色矮星がやっと黒色矮星になったかならないかくらいです 黒色矮星はそもそも暗いのでまだ見つかってはいません その昔はシリウス B はシリウス A より明るい星であったことでしょう そのため先に進化し 赤色巨星になって 惑星状星雲になって 白色矮星が残りました もし当時もシリウスが近くにあったのなら 1 等星の明るい二重星はきれいだったでしょうし 赤色巨星は金星よりも明るい燃えるような赤い星であったでしょうし 惑星状星雲も夜空に大きく広がりきれいだったでしょう でも実際は 星はめいめい勝手な方向に動いているので 地球からそれが見えたことはなかったでしょう 太陽に一番近い星なんて 10 万年程度で入れ替わるのです なお冬の大三角のもう 1 つ こいぬ座のプロキオンにも白色矮星があります 白色矮星はこのようにありふれた星なのです 46

球状星団 球状星団というのは 恒星が 10 万か ら 100 万個程度 球状に集まった星団 です 大きさは 100 光年程度です 個々 の星は球状星団の重心の周りを回って いますが 近くにある星に軌道を乱さ れ結構バラバラに動いていることでし ょう 球状星団は銀河系の周りに点在 していて 銀河系の中心の周りを回っ ています もし地球が球状星団の中に あれば夜空はさぞかしにぎやかでしょ う でもみんな赤い星なので面白くな いかもしれません 球状星団の星は宇 宙の初期に一度に作られその後は作ら れていません 誕生以来 100 億年程度 たっているので 青い星は既に死んで しまい もはや太陽程度より赤い星し かありません HR 図を描いてみると主 系列星が途切れて赤色巨星へと折れ曲がっています 折れ曲がり点にある星は 今まさに 一生を終えようとしている星なのです M4 という球状星団の中には かつての重い星の慣れの果てである多数の白色矮星が発見 されています 恒星 10 万個に対し 4 万個の白色矮星があると推定されています できた ての熱い白色矮星から 100 億年もたってかなり冷えてしまった白色矮星までが観測されて います 中性子星も発見されてい ます 中心に星が密集して いるきょしちょう座 47 番 星(47Tuc)という球状星団 では 12 個ものミリ秒電波 パルサーが見つかっていま す これらは 2 ミリ秒から 6 ミリ秒と非常に速く回転 しています これらはもと もと連星系で隣の星から落 ち込んだガスによって加速 されたと考えられています 47

< 中性子星 > 1967 年 PSR B1919+21 という電波天体から 1.337 秒程度で規則正しくパルスする電波が発見されました 通常の星はいうまでもなく白色矮星であっても そんなに速く回転すると遠心力で星がばらばらになるのでありえません こんなに速く自転できる星は中性子星しかないのです 予言されていた中性子星の発見でした 中性子星の半径は 10km です 東京の山の手線くらいの大きさです でも重さは太陽の 1.4 倍程度もあります 表面磁場も強くて 10^12 ガウスもあります 星の磁極が回転軸の北極と南極とずれているため 回転により電波が発生します 電波のビームが地球の方を向いたとき 強い電波が観測されます ビームが外れているときには電波は来ません 電波はパルス的にやってくるのでパルサーと呼ばれます こんな星が 1.337 秒で1 回転していたのです 最近は何と 1.5 ミリ秒で回転しているパルサー (1 秒間に 600 回転!) も見つかっています 回転による 発電 で電波を出しているので 回転はだんだん遅くなっていきます それでも速い回転のエネルギーにより 1000 万年程度は電波を出し続けると考えられます 1054 年の超新星の残骸であるかに星雲の中心にパルサーが見つかったことから星の最後の姿としての中性子星が確立されました パルス周期は 33 ミリ秒です 1054 年に生まれた時は 19 ミリ秒で回転していたと逆算されています ( ハッブル望遠鏡による画像 : 中心やや左上にある 2つの白い星の下側の方がかにパルサーである かにパルサーからのジェットが左右に出ていて白いかすかな円弧状の形を作っているのがわかる 何ヶ月かたつとこの円弧がさざなみのように動いているのがわかる 黄緑色は超新星で吹き飛んでいる物質 白はパルサーからの電子ビームが光っているところ ) 1968 年には X 線でもパルサーが見つかりました こちらは連星 X 線パルサーと呼ばれ 通常の恒星と中性子星の近接連星系です 通常の恒星の表面からガスをはぎとり それが中性子星に落ちるときの重力エネルギーで光っています ガスは磁力線に沿って中性子星の磁極に落ちます 磁極に落ちてきたガスは 10 億度以上の高温 48

になり X 線を出します 中性子星の回転により地球から磁極が見えたり見えなかったりするので パルス を示します ( ぎんが衛星によるヘルクレス座 X-1 の例 ) 実際はパルスというより強度変化という方が合っているかもしれません 中性子星のような小さな天体では 重力エネルギーは 核融合より単位質量あたり多くのエネルギーを取り出すことができます 電波パルサーは 1000 万年くらいたって回転エネルギーがなくなると もはや電波を出さなくなり我々からは見えなくなります また X 線連星パルサーも 隣の星のガスをほぼ吸い尽くしてしまうと X 線を出さなくなり やはり我々からは見えなくなります こうした 見えない 中性子星は多数あるだろうが あまりに小さいので発見されないだろうと思われていましたが 1996 年にハッブル望遠鏡により RX J185635-3754 という弱い X 線天体が単独の中性子星であることが発見されました 温度が 70 万度以上あり距離も 400 光年以下と近いのに 明るさが 25 等級以下と非常に暗いのです このことから星の大きさは半径 11km 以下であることが分かりました こんなに小さく高温の星は中性子星しかありえません <ブラックホール> ニュートンの万有引力の法則が出た当初 重力カタストロフィーで大きさゼロの点にまで縮み重力が無限大になってしまった物体が考えられました それが最初のブラックホールです しかし実際にはそんなものはないだろうと考えられていました 1916 年にアインシュタインの一般相対性理論が提唱されてから 多くの学者がいろんな条件でアインシュタインの重力の方程式を解きました 第 1 次世界大戦中シュバルツシルドは志願従軍先の戦場で 真ん中に質点がある場合の方程式を解き 光さえも抜け出せない因果の地平というものの存在を示しました これが現代考えられているブラックホールです 最初のブラックホール候補天体は白鳥座 X-1 という X 線天体です 小田稔はすだれコリメータを使って X 線天体の位置を精度良く決めました そこを岡山観測所の望遠鏡で写真を撮ると9 等の青白い星がありました スペクトル観測からこの星は近接連星系であり大きくふらついていることが分かりました 太陽の30 倍もの重い星をふらつかせているので 相手の星の質量は太陽の 10 倍以上ということになります しかし可視光では見えていません X 線はその 見えない星 から出ているらしいのです X 線の強さは 0.05 秒以下で非常に速く変動し X 線星の大きさが地球より小さいことを表しています 中性子星の最 49

大質量は太陽のせいぜい2 倍程度なので そんなに小さくて重く見えない星はブラックホール以外に考えられません 我々はまだ事象の地平より内側が 黒い穴 になっているのを見たわけではありませんが 白鳥座 X-1 はブラックホールであることが濃厚です というわけでブラックホール候補天体の第 1 号になりました では X 線はどこから出ているのでしょうか? 見えない星 は恒星の表面のガスを吸い込み ガスは降着円盤となって 見えない星 に渦を巻いて落ちます ガスはブラックホールの強力な重力で加速され摩擦により温度が上がります 実際 X 線のスペクトルは1 千万度のガスが出す形をしていました ブラックホール候補天体 2003 年 6 月現在 18 個 McClintok (Astro-PH 0306213) より 星の終末以外にもう一つブラックホールが存在するところがあります 活動銀河核の中心です 中心核を回るガスや星の動きから活動銀河の中心には太陽の1 億倍程度の重さの天体があることが分かってきました 中心核は電波 可視光 X 線とあらゆる波長の光を出していて その強度は銀河全体の 100 倍にも達します X 線の時間変動から中心核の大きさは1 天文単位程度以下であることが分かります また銀河の大きさを超えてはるか宇宙空間まで100 万光年も伸びるジェットを出している天体もあります こんな小さくてエネルギッシュな天体はブラックホール以外には考えられません しかしこれも事象の地平の決定的証拠をつかんでいるわけではないのでブラックホール候補です さてもし宇宙船に乗ってブラックホールに落ちていったらどうなるのでしょうか? 広 50

大な宇宙を旅していて大きさ 10km のブラックホールに落ちることはまずないでしょうが ここでは超運良く遭遇したとします まずブラックホールに落ちていく場合 重力に身を任せた自由落下なので別に重力は感じません 周りを見ると自分が加速されているのが分かるでしょうが 無重力状態のままです しかし潮汐力により頭と足が引っ張られているような力を感じます 1000km に近づくとこれが結構大きいので宇宙船や人はバラバラになるでしょう しかし何とかがんばってクリアするとしましょう そしていよいよ事象の地平を越えますが そこを越えても何も起こりません ブラックホールに入ったとは気づかないでしょう ただ周りを見ていれば 星の見え方が変わるのに気づくでしょう ここから電波を出しても永遠に外の世界には届きません そして最後には中心の点状の天体に吸い込まれて終わりです ブラックホールが回転している場合 星がつぶれていった先は点ではなく円環状になります カーのブラックホールといいます 円環に当たれば終わりですが うまく環の中に入ったりすると 何も起こらない ワームホールやワープ タイムマシンなどが言われていますが 想像の域を出ていません 注記この節の題は 恒星の一生 としました 恒星としてはこのような一生をたどるので異存はありません しかし恒星の一生が終わったから あとは死んで大した事ないなんて思うと 今や間違いです 恒星が全てではありません 物質は物質であり続け 歴史は続き 恒星のあとには白色矮星 中性子星 ブラックホールが誕生します 恒星の状態は重力カタストロフィーに抗するつかの間の過渡的状態なのです 電波天文学や X 線天文学をやっているとパルサーやブラックホールがさかんに登場します これらの天体ができたこれからが本番となります 超新星爆発は 恒星の一生の終わりの大爆発 ではなく ブラックホール誕生の瞬間 と書きたいくらいです 宇宙の歴史の章で見る通り 恒星が光っている時代なんて宇宙の長大な歴史から見ればほんの一瞬なのです (73 ページの図の黄色いところ ) 51