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1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

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従って IFRSにおいては これらの減価償却計算の構成要素について どこまで どのように厳密に見積りを行うかについて下記の 減価償却とIFRS についての説明で述べるような論点が生じます なお 無形固定資産の償却については 日本基準では一般に税法に準拠して定額法によることが多いですが IFRSにおい

ならないとされている (IFRS 第 15 号第 8 項 ) 4. 顧客との契約の一部が IFRS 第 15 号の範囲に含まれ 一部が他の基準の範囲に含まれる場合については 取引価格の測定に関する要求事項を設けている (IFRS 第 15 号第 7 項 ) ( 意見募集文書に寄せられた意見 ) 5.

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IFRS 第 15 号の定めの表現の置換え 4. 下表では IFRS 第 15 号の基準本文 ( 適用指針を含む ) の日本語訳を左の列に示し 表現を見直した文案を右の列に示している (1) 表に用いられている色は 以下を表す ( ) は IFRS 第 15 号における項番号を表す 青色 : 企業会

無断複写 転用 転記を禁じます 国際財務報告基準 (IFRS) 連結財務諸表シリーズ シリーズ <5>IAS 第 31 号 ジョイント ベンチャーに対する持分 ( 平成 22 年 7 月 31 日現在 ) 1. ジョイント ベンチャーの対する持分 ( 総論 ) 本シリーズでは ジョイント ベンチャー

できる 105. 前項の取扱いを適用する場合には 次の事項を注記する (1) その旨及び決算月に実施した計量の日から決算日までに生じた収益の見積りが極めて困難と認められる理由 (2) 当連結会計年度及び当事業年度の決算月の翌月に実施した計量により確認した使用量に基づく収益の額 ( この収益の額が 決

2. 基準差調整表 当行は 日本基準に準拠した財務諸表に加えて IFRS 財務諸表を参考情報として開示しております 日本基準と IFRS では重要な会計方針が異なることから 以下のとおり当行の資産 負債及び資本に対する調整表並びに当期利益の調整表を記載しております (1) 資産 負債及び資本に対する

会計上異なる結果が生じる可能性があるとしていま す イセンス付与に関しても 約定の性質の定義に係る ガイダンス等 IASB がの必要なしと決定した論 点についてを加えています 両審議会は 以下の論点については同じ修正を行っています a. 履行義務の識別 b. 本人か代理人かの検討 c. 売上高ベース

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質問 2 財務諸表作成者の実務負荷及び監査人の監査負荷を必要以上に増大させる契約の分割には反対である その理由は以下のとおりである 当初の取引価格算定時点においては 契約の分割と履行義務の識別という2 段階のステップを経ずとも 履行義務の識別が適正になされれば適正な取引価格が算定可能である 契約の分

関する IFRS-IC の議論が IASB と FASB により共同で行われている IFRS 第 15 号に関する移行リソースグループ (TRG) における議論と不整合を生じさせる可能性が危惧されたためである 論点の所在 4. 今回 明確化が要請された会計処理に関する主な論点は 銀行がプリペイド カ

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7. 我が国の場合 第 4 項に示される政府が企業に課す賦課金の例としては 固定資産税 特別土地保有税 自動車取得税などが挙げられる 8. 日本基準において諸税金に関する会計処理については 監査 保証委員会実務指針第 63 号 諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取り扱い があるが ここでは

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開発にあたっての基本的な方針 97 Ⅰ. 範囲 102 Ⅱ. 用語の定義 110 Ⅲ. 会計処理等 114 (IFRS 第 15 号の定め及び結論の根拠を基礎としたもの ) 基本となる原則 収益の認識基準 117 (1) 契約の識別 117 (2) 契約の結合 121 (

[ 設例 11] 返品権付きの販売 [ 設例 12] 価格の引下げ [ 設例 12-1] 変動対価の見積りが制限されない場合 [ 設例 12-2] 変動対価の見積りが制限される場合 [ 設例 13] 数量値引きの見積り 7. 顧客に支払われる対価 [ 設例 14] 顧客に支払われる対価 8. 履行義

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平均株価は 東証が公表する当該企業普通株式の終値の算術平均値を基準とした値とする 調整取引の結果 経済的には自社株を平均株価で取得したのと同様の結果となる 企業は株価上昇時の支払いのために 証券会社に新株予約権を割り当てる ステップ 3 : 株価上昇時は 新株予約権が権利行使され 差額分に相当する株

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(1) 契約の識別契約の識別にあたって 厳密な法律上の解釈まで必要とするのか あるいは過去の商慣習等で双方の履行が合理的に期待される程度の確認で済むのかが論点となります 基本的に新しい収益認識基準では 原則として法的な権利義務関係の存在を前提とします また 業界によっては 長年の取引慣行のみで双方が

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3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

2 リース会計に関する論点の整理注釈 38によると 借地権 ( 借地借家法の適用のないものを含む ) は 我が国では非償却の無形資産として扱う場合が多く 無形資産 ( 又は土地に準ずる資産 ) に該当するのか リースに該当するのかについてはその内容を踏まえて検討が必要であるとしている しかし 借地権

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参考資料 日本語粗訳 このペーパーは IASB による公開会議での討論のために IFRS 財団のスタッフによって作られたものであり IASB または IASB のメンバー個人の見解を表していているものではありません IFRS の適用に関するコメントは それが受け入れ可能な見解であるか否かを定める目的

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1 本会計基準等の概要以下の概要は 本会計基準等の内容を要約したものです 本会計基準等の理解のために 本会計基準等の基本となる原則である収益を認識するための 5 つのステップについて 別紙 1 に取引例及びフローを含めた説明を示しています また 本会計基準等と従来の日本基準又は日本基準における実務と

2 事業活動収支計算書 ( 旧消費収支計算書 ) 関係 (1) 従前の 消費収支計算書 の名称が 事業活動収支計算書 に変更され 収支を経常的収支及び臨時的収支に区分して それぞれの収支状況を把握できるようになりました 第 15 条関係 別添資料 p2 9 41~46 82 参照 消費収入 消費支出

A. 受贈者に一定の債務を負担させることを条件に 財産を贈与することを 負担付贈与 といいます 本ケースでは 夫は1 妻の住宅ローン債務を引き受ける代わりに 2 妻の自宅の所有権持分を取得する ( 持分の贈与を受ける 以下持分と記載 ) ことになります したがって 夫は1と2を合わせ 妻から負担付贈

第 298 回企業会計基準委員会 資料番号 日付 審議事項 (2)-4 DT 年 10 月 23 日 プロジェクト 項目 税効果会計 今後の検討の進め方 本資料の目的 1. 本資料は 繰延税金資産の回収可能性に関わるグループ 2 の検討状況を踏まえ 今 後の検討の進め方につ

CL23 PwCあらた監査法人 平成 28 年 5 月 31 日 企業会計基準委員会御中 PwC あらた監査法人品質管理本部アカウンティング サポート部 収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集 に対するコメント 拝啓時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます さて 貴委員会から

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13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

平成 22 年 4 月 1 日現在の法令等に準拠 UP!Consulting Up Newsletter 無対価での会社分割 バックナンバーは 当事務所のホームページで参照できます 1

日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

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本実務対応報告の概要 以下の概要は 本実務対応報告の内容を要約したものです 範囲 ( 本実務対応報告第 3 項 ) 本実務対応報告は 資金決済法に規定する仮想通貨を対象とする ただし 自己 ( 自己の関係会社を含む ) の発行した資金決済法に規定する仮想通貨は除く 仮想通貨交換業者又はが保有する仮想

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[2] のれんの発生原因 企業 ( または事業 ) を合併 買収する場合のは 買収される企業 ( または買収される事業 ) のおよびを 時価で評価することが前提となります またやに計上されていない特許権などの法律上の権利や顧客口座などの無形についても その金額が合理的に算定できる場合は 当該無形に配

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営業活動によるキャッシュ フロー の区分には 税引前当期純利益 減価償却費などの非資金損益項目 有価証券売却損益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目 営業活動に係る資産 負債の増減 利息および配当金の受取額等が表示されます この中で 小計欄 ( 1) の上と下で性質が異なる取引が表示され

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適用時期 5. 本実務対応報告は 公表日以後最初に終了する事業年度のみに適用する ただし 平成 28 年 4 月 1 日以後最初に終了する事業年度が本実務対応報告の公表日前に終了している場合には 当該事業年度に本実務対応報告を適用することができる 議決 6. 本実務対応報告は 第 338 回企業会計

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【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

第 47 期末貸借対照表 2019 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 千円 ) 資 産 の 部 負 債 の 部 科 目 金 額 科 目 金 額 流 動 資 産 9,306,841 流 動 負 債 2,136,829 現 金 及 び 預 金 8,614,645 未 払 金 808,785 立 替

1. 国際財務報告基準に準拠した財務諸表 ( 抜粋 翻訳 ) 国際財務報告基準に準拠した財務諸表の作成方法について当行の国際財務報告基準に準拠した財務諸表 ( 以下 IFRS 財務諸表 という ) は 平成 27 年 3 月末時点で国際会計基準審議会 (IAS B) が公表している基準及び解釈指針に

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に暫定的に合意した 特定の状況 ( 例えば 企業に税務当局との未解決の係争がある状況 ) に範囲を限定しようとすると 恣意的なルールにつながるであろうと考えたからである ただ 2015 年 1 月の委員会の議論で 繰延税金を含まないことに対する懸念が出され 最終的には当期税金及び派生する繰延税金を対

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Transcription:

解説 IFRIC 収益関連解釈指針 (IFRIC 第 12 号サービス譲与契約 IFRIC 第 13 号顧客ロイヤルティ プログラム IFRIC 第 15 号不動産工事契約 ) 国際会計基準審議会 (IASB) 実務研究員公認会計士 おおき大木 まさし正志 1 はじめに国際財務報告解釈指針委員会 (IFRIC) は 過去数年に 収益認識に関連する解釈指針を4つ提供している これら解釈指針は 2008 年から2009 年にかけて順次に適用日を迎えている これらの解釈指針に関連して 最近 IFRIC にアジェンダリクエストが提出されるようになってきていることから 実務の現場では 収益認識関連解釈指針が ホットな領域 となっていることと想定される そこで本稿では このうち IFRIC 第 12 号 同 13 号 同 15 号について解説することとしたい なお IFRIC 第 18 号は 会計 監査ジャーナル 2009 年 5 月号にて解説をしているので 参考にされたい 筆者はIASB 実務研究員 (Practice Felow) としてIFRIC 関連プロジェクト及びボード年次改訂プロジェクトに従事している 文中の意見にわたる部分は筆者の見解であることを あらかじめお断りしておく 2 IFRIC 第 12 号サービス譲与契約 IFRIC 第 12 号 サービス譲与契約 は 公から民へのサービス譲与契約のうち 当該インフラを用いて提供 2008 年 7 月 1 日以降開始する事業年度から適用される 早期適用が認められている IAS 第 8 号 会計方針 会計上の見積りの変更及び誤謬 に準拠して遡及的に適用する必要がある 解釈指針名適用日 IFRIC 第 12 号サービス譲与契約 2008 年 1 月 1 日以降開始する事業年度 (ServiceConcession Arrangements) ている から適用される 早期適用が認められ IAS 第 8 号 会計方針 会計上の見積りの変更及び誤謬 に準拠して遡及的に適用する必要がある IFRIC 第 13 号顧客ロイヤルティ プログラム (CustomerLoyalty Programmes) IFRIC 第 15 号不動産工事契約 2009 年 1 月 1 日以降開始する事業年度 (AgreementfortheConstructionofRealEstate) ている IAS 第 8 号 会計方針 会計より適用される 早期適用が認められ上の見積りの変更及び誤謬 に準拠して遡及的に適用する必要がある IFRIC 第 18 号顧客からの資産の移転 (TransfersofAssetsfrom Customers) 2009 年 7 月 1 日以降に行われる顧客からの移転について 将来に向かって適用される 移転時における適切な評価額及び他の情報が入手可能な場合には 早期適用が認められている されるサービス及びその価格を公的セクターが管理 規則し かつ 譲与契約終了時のインフラの重要な残存部分を公的セクターが支配する場合に適用される解釈指針である 背景多くの国で 道路 橋 トンネル 会計 監査ジャーナル No.650 SEP. 2009 49

刑務所 病院 空港 水道施設 電力供給及び電気通信網など 公共サービスに対するインフラは伝統的に 公共部門により建設 運営 維持され その予算は公共予算から配分されている 一部の国では 政府が このようなインフラの開発 資金繰り 運営及び保守に対して民間からの参加を招くようなサービスの取決め ( サービス契約 ) を 契約によって導入している インフラは既に存在しているケースもあれば サービス契約期間の間に建設されるケースもある この解釈指針の範囲に含まれる契約は 公共サービスを提供するために使用されるインフラの建設 改善を行う 及び一定の期間においてそのインフラを運営 保守する 民間部門の企業 ( オペレーター ) に関係する オペレーターには 契約期間にわたって そのサービスに対する対価が支払われる 契約は 建設- 運営 - 譲渡 修復 - 運営 - 譲渡 又は 官から民への サービス譲与契約 (serviceconcessionarrangement) と呼ばれている サービス契約によって オペレーターは 公共部門の組織に代わって 公共にサービスを提供することを義務付けられる サービス契約に関する 共通の特性は下記のとおりである ( 第 3 項 ) オペレーターが引き受ける債務の性質が 公共サービスの特性を持つこと サービス契約を譲与する当事者は 公共部門の事業体であること オペレーターは 少なくともインフラ及び関連するサービスの管理の一部について責任を負い 単に 譲与者の代理としてのエージェントの役割を行うものではないこと 契約は オペレーターによって 徴収される最初の価格を設定し サービス契約の期間にわたる価格改訂を規制すること オペレーターは 契約の期間終了時点で 譲与者にインフラを引き渡す義務を負うこと適用範囲 IFRIC 第 12 号は 公から民へのサービス譲与契約のうち 当該インフラを用いて提供されるサービス及びその価格を公的セクターが管理 規則し かつ譲与契約終了時のインフラの重要な残存部分を公的セクターが支配する場合に適用される ( 第 5 項 ) すべてのサービス譲与契約をカバーしているわけではないことに留意する必要がある ( インフォメーション ノート2を参照 ) IFRIC 第 12 号は オペレーター側の会計処理に関するガイダンスを提供する 譲与者側の会計処理に関するものではない IFRIC 第 12 号に定められるサービス譲与契約の会計処理の概要が フローチャートにまとめられている ( インフォメーション ノート1) 論点 IFRIC 第 12 号は サービス譲与契約における義務及び関連する権利の認識及び 測定についての一般的原則を定めている IFRIC 第 12 号は 主に以下の論点に関するオペレーター向けガイダンスを提供している ( 第 10 項 ) オペレーターは 既存のインフラ若しくは取得又は建設した公共サービスのためのインフラを自社の固定資産として認識すべきか オペレーターは サービス譲与契約の下で受領する契約の対価 ( 現金及び当該インフラに係る権利等 ) をどのように会計処理すべきか ( 借方側 ) サービス ( 建設又は運営 ) に関 する収益及び費用をどのように会計処理すべきか ( 貸方側 ) コンセンサスオペレーターのインフラに対する権利の取扱いオペレーターは 譲与者の既存のインフラ 又はサービス譲与契約の一部としてオペレーターが建設 購入したインフラを 自己の固定資産として認識しない ( 第 11 項 ) IFRIC は フレームワークにおける資産の定義 ( 特に 支配 ) に注目し 適用範囲内にあるサービス譲与契約において オペレーターは公共インフラの使用を支配していないことから 有形固定資産として認識すべきではないとした また オペレーターは 原資産の使用を支配する権利 を有していないことから リース資産としても認識すべきではないとした IFRIC 第 12 号の適用範囲内の契約では オペレーターは 公共サービスを提供するために使用されるインフラを建設又は回収する オペレーターは 譲与者の代わりに公共サービスを提供するためにインフラを運営することになる オペレーターが認識する資産は 建設又は改修する公共サービス インフラではなく サービスとの交換で受領する対価であるとした 契約の対価の認識及び測定 IFRIC 第 12 号の範囲に含まれる契約条件の下では オペレーターはサービスの提供者の役割を果たす 営業者は 公共サービスの提供のために使用されるインフラを建設又は改修し ( 建設又は改修サービス ) 一定期間の間 当該インフラを運営及び保守する ( 運営サービス )( 第 12 項 ) オペレーターは 建設又は改修サービスに関して譲与者から受領すること 50 会計 監査ジャーナル No.650 SEP. 2009

ができる対価を金融資産及び ( 又は ) 無形資産として認識する ( 第 15 項 ) 金融資産 無形資産の認識区分 IFRIC 第 12 号で最も特徴的な会計処理は サービス契約の違い ( オペレーターのキャッシュフローに対するリスク ) により サービスの対価を金融資産若しくは無形資産として認識する点にある オペレーターは 建設サービスに対し 譲与者から現金等の金融資産を受領する無条件の契約上の権利について金融資産を認識する ( 第 16 項 ) 金融資産モデルでは 対価の金額が一般の人々のサービス利用程度 ( 例えば 通行量 ) に左右されないで決定されることから オペレーターは現金等を受領する無条件の権利を有している 一方 オペレーターは インフラの使用に関して料金を徴収する権利について無形資産を認識する ( 第 17 項 ) 無形資産モデルでは 対価の金額が一般の人々のサービスを利用する範囲に左右されることから 公共サービスの利用者に請求する権利は 現金を受け取る無条件の権利ではない オペレーターのキャッシュフローに対するリスクは 契約条件に依存している オペレーターのキャッシュフローが譲与者により保証される場合 ( この場合 譲与者が需要リスクを負う ) オペレーターは譲与者に対する金融資産を認識する 一方で オペレーターのキャッシュフローが公共サービス利用者の利用度合いを条件とすることもあり ( この場合 オペレーターが需要リスクを負う ) この場合には オペレーターは無形資産 ( 公衆に対して料金を徴収する権利 ) を認識する IFRIC 第 12 号の設例で確認する 契約条件によりオペレーターが2 年 以内に道路を建設し その後 8 年間にわたり一定の水準で 道路を維持管理する 契約条件により オペレーターは 8 年目終了時点で道路の再舗装をする 再舗装では収益が発生する 10 年目の終了時点で 契約は終了する 設例 1では 契約により譲与者は オペレーターに対して毎年一定額の対価を支払わなければならない よって オペレーターに金融資産を譲与するケースである オペレーターは 譲与者に対する金銭債権を対価の公正価値にて当初認識する 当初認識後 金融資産はIAS 第 39 号に従い 償却原価で測定される 設例 2では 契約により オペレーターは 道路を使用するドライバーから料金を徴収することを認められているものの 徴収額について譲与者から特段の保証が与えられてはいない よって オペレーターに無形資産を譲与するケースである オペレーターは インフラサービス利用者からの料金 ( 道路通行料など ) を受け取る権利である無形資産と交換で 譲与者に工事サービスを提供する すなわち 譲与者は工事サービスに対して非現金対価の支払いを行う オペレーターはこの場合 無形資産を使用して 公共サービス利用者からさらなる収益 ( 現金収入 ) を創出することになる IAS 第 38 号 無形資産 に従い オペレーターは 無形資産を原価 すなわち 資産を取得するために移転される対価の公正価値 ( 引き渡される建設サービスに対して受領する対価の公正価値 ) で当初認識する 当初認識後 無形資産は使用可能期間 ( 例では3 年目から10 年目 ) にわたり償却する 収益認識オペレーターは 建設サービスの 提供に係る収益をIAS 第 11 号 工事契約 に基づいて認識 測定し ( 第 14 項 ) 運営サービスに係る収益を IAS 第 18 号 収益 に基づいて認識 測定する ( 第 20 項 ) その他オペレーターは インフラの使用の結果生じるインフラの保守及び回復義務を IAS 第 37 号 引当金 偶発債務及び偶発資産 に基づいて認識 測定する ( 第 21 項 ) 先の設例でいえば オペレーターが再舗装を行う債務は 運営フェーズの期間において 道路の利用の結果として発生する この債務は IAS 第 37 号に従い 貸借対照表日の現在債務を決済するのに必要となる支出の最善の見積りで認識 測定される オペレーターは 無形資産を受領する契約上の権利を有している場合を除き 借入費用を発生時に費用処理する 無形資産を受領する契約上の権利を有している場合には IAS 第 23 号 借入費用 に基づいて 建設フェーズにおける支払利息は資産として計上されなければならない ( 第 22 項 ) 認識した金融資産は IAS 第 39 号 金融商品: 認識及び測定 に基づいて会計処理する 認識した無形資産は IAS 第 38 号 無形資産 に基づいて会計処理する ( 第 26 項 ) 譲与者がオペレーターにその他の資産を提供し オペレーターがそれを保持するか売却するかを選択できる場合 オペレーターは当該資産をオペレーター自身の資産として公正価値で当初認識するとともに それに対応する負債を未履行の義務に関して認識する ( 第 27 項 ) 適用日及び移行措置 IFRIC 第 12 号は 2008 年 1 月 1 日以 会計 監査ジャーナル No.650 SEP. 2009 51

降開始する事業年度から適用となる 早期適用が認められている ( 第 28 項 ) IFRIC 第 12 号は IAS 第 8 号 会計方針 会計上の見積りの変更及び誤謬 に準拠して遡及的に適用する必要がある ( 第 29 項 ) なお 遡及適用が実務上不可能な場合の移行措置が規定されている ( 第 30 項 ) 3 IFRIC 第 13 号顧客ロイヤルティ プログラム IFRIC 第 13 号 顧客ロイヤルティ プログラム は 企業がその顧客向けに運営又は加入している顧客ロイヤルティ プログラムに関する会計処理についてガイダンスを提供している IFRIC 第 13 号により ポイント等に相当する収益の認識を繰り延べなければならないことが明確化された 初度取引対価全額を収益認識し ポイント利用による見積費用を引当金として会計処理する方法は認められないこととなった 背景顧客ロイヤルティ プログラムとは 商品 サービスの販売促進のために用いられるインセンティブ制度である 典型的には スーパーマーケット 航空会社 通信会社 ホテル クレジットカード会社が運営するポイント制度である 顧客は 商品等の購入によって付与されたポイント等の特典を使用することで 無償又は割引価格で商品又はサービスを得ることができる ( 第 1 項 ) プログラムは多岐にわたる方法で運営されている 顧客は ポイントを使用する前に特定の最低数量ないし最低価額のポイントを貯めなければならないことがある 企業は プログラムを自己で運営する場合もあるし 又は他社によって運営されているプ ログラムに参加する場合もある 提供される特典は 自社の商品 サービスの場合もあれば 他社の商品 サービスの場合もある ( 第 2 項 ) 適用範囲本解釈指針の適用範囲となるロイヤルティ プログラムは 販売取引の一部として企業が顧客に特典ポイントを付与し 顧客は特典を使用することで無償又は割引価格で商品又はサービスを得ることができるようなプログラムである 本適用指針は 顧客に特典を付与する企業側の会計処理に関するガイダンスを提供している ( 第 3 項 ) 論点本解釈指針は 以下の論点について明らかにしている ( 第 4 項 ) 将来において無償又は割引価格で商品又はサービスを提供する企業の債務をいかにして認識 測定すべきか すなわち 販売取引において顧客から受け取った ( 又は今後受け取る ) 対価のうち 一部についてポイント等特典に配分し 収益認識を繰り延べる方法 (IAS 第 18 号第 13 項を適用 ) を採用すべきか それとも 収益金額を即時に認識するとともにポイント等特典付与により発生する債務を履行するための将来費用について引当金を計上する方法 (IAS 第 18 号第 19 項 ) を採用すべきか もし 対価を特典に配分する方法を採用するのであれば 配分される金額をいかにして決定するか 収益認識時点はいつか 第三者が特典を供給する場合には収益をいかに測定すべきか コンセンサス企業はIAS 第 18 号第 13 項を適用して 特典相当部分につき ( 特典付与 原因取引たる ) 初度販売取引の個別に識別可能な構成部分として会計処理しなければならない 初度販売取引に関して 顧客から受領した ( 又は今後受け取る ) 対価は 引き渡した商品とポイント等の特典それぞれに配分する ( 第 5 項 ) よって 特典相当分の収益の認識を繰り延べなければならない 初度取引対価全額を収益認識し 将来の見積費用を引当金として会計処理する方法は認められない 引当金方式主張者の論拠はIAS 第 18 号第 19 項に基づいているが 同項が適用されるケースとは 既に 提供された商品 サービスに直接対応するコスト ( 例えば 製品保証コスト ) が発生する場合である しかし IFRIC の見解では ポイントが付与される初度販売は 1つの取引が 提供時点の異なる 複数の個別の商品 サービスから構成される と考えた よって IFRIC は IAS 第 18 号第 13 項が適用されるべきと結論した 特典に配分される対価は 特典そのものの公正価値 ( すなわち ポイント等特典を個別に販売した場合の金額 ) に応じて測定されなければならない ( 第 6 項 ) ポイント自体の公正価値を直接測定できない場合には 顧客が当該特典を使用することで獲得する商品等の価値を参考にして 特典の公正価値を見積もることを認めている ( 適用ガイダンス ) また IAS 第 18 号 収益 の趣意にかんがみて 初度販売金額の特典相当部分への配分は 販売部分と特典部分の公正価値の比に基づいて収益を配分することによることもできるとしている ( 結論の背景第 14 項 ) ポイント等の特典に係る収益は 当該ポイント等が使用されて商品等特典供給義務を充足したときに認識 52 会計 監査ジャーナル No.650 SEP. 2009

する 収益認識額は 予想交換ポイントと実際交換ポイントの比で決定される ( 第 7 項 ) IFRIC 第 13 号に添付されている設例 1で確認する ある食料品小売店は自前のポイント制度を運営しており CU1 の価値のあるポイント100 を発行している マネジメントはこのうち 80 ポイントが将来使用されると見込んでいる ポイント発生原因となる初度販売時に 収益はCU100 だけ繰り延べられた Year1 終了時に40 ポイントの特典 ( 食料品 ) が交換された この場合 将来使用見込みポイントの半分が実際に使用されたため CU50 ポイント (=40 ポイント /80 ポイント CU100) がYear1 に収益認識される 第三者が特典を供給する場合には 企業は第三者が特典供給に関する債務を引き受けたときに収益を認識する ( 第 8 項 ) IFRIC 第 13 号に添付されている設例 2で確認する 電気製品小売店は 航空会社が運営するカスタマー ロイヤルティ プログラムに参加している 小売店は 電気製品を顧客にCU1 販売するたびに1トラベルポイントを付与する 顧客はポイントを利用して航空券と交換することができる ある年度に小売店は CU100 万の電気製品を販売し 100 万ポイントを顧客に付与した 小売店は1ポイントの公正価値をCU0.01 と見積もっている 電気製品販売の対価より CU10,000(= 100 万ポイント CU0.01) をポイントに配分する ポイント付与時に 小売店は顧客への債務を充足し 航空会社が特典航空券を供給する債務を引き受ける したがって 小売店は 電気製品を販売した際にポイントに配分された収益を認識する 使用見込ポイント数の上方変更により 特典供給に要する予測コストが 初度販売時にポイント等特典に配分された対価の金額を上回る場合 企業は不利な契約 (onerouscontracts) を有すことになる なぜならば 不利な契約の定義 ( 契約による債務を履行するための不可避的な費用が 契約上の経済的便益の受取見込額を超過している契約 ) を満たすからである このような場合 超過コスト部分について 企業はIAS 第 37 号に従って負債計上しなければならない ( 第 9 項 ) 適用日及び移行措置 IFRIC13 号は 2008 年 7 月 1 日以降開始する事業年度から適用される 早期適用が認められている ( 第 10 項 ) IAS 第 8 号 会計方針 会計上の見積もりの変更及び誤謬 に基づき IFRIC 第 13 号を適用日から遡及的に適用しなければならない ( 第 11 項 ) 4 IFRIC 第 15 号不動産工事契約 IFRIC 第 15 号 不動産工事契約 は 不動産工事契約に関する収益認識の会計処理についてガイダンスを提供している 物品販売とサービス提供につき いかなる基準 (IAS 第 11 号 IAS 第 18 号 ) を適用すべきか また 収益認識時点はいつか ( 進行基準と完成基準 ) について整理している 注目されるべきは 物品の販売に関する契約について 支配及びリスク 便益の買い手に対する継続的な移転 (continuoustransfer) を条件として 工事の進捗に応じた収益認識を求めている点である なお continuoustransfer の考え方は 新しい収益認識基準 ( ディスカッションペーパー段階 ) でも重要なバック ボーンとなっている 背景及び論点不動産業界において 開発請負企業は 工事が完成する前に買い手と契約を締結することがある 例えば 居住用不動産の開発に際しては 工事中に各戸ごとの販売を開始する ( オフプランという ) 不動産工事契約に適用される会計基準の特定及び不動産工事に関連する収益認識時期には 実務の相違が存在する 契約をIAS 第 18 号 収益 に基づいて会計処理 ( 不動産が完成して買い手に引き渡されたときに収益を認識する ) する開発業者もあれば IAS 第 11 号 工事契約 に基づいて会計処理 ( 工事の進捗度に応じて収益を認識する ) 業者もある そこでIFRIC 第 15 号は この実務の相違に対処するために 以下の事項に関する不動産工事契約の会計処理について明確化している ( 第 6 項 ) IAS 第 11 号又はIAS 第 18 号のいずれの基準を適用すべきか いつ不動産工事収益を認識すべきか適用範囲本解釈指針は 不動産開発を請け負う企業の収益又は関連費用に係る会計処理に適用される ( 第 4 項 ) 本解釈指針の適用を受ける契約は 不動産工事に関する契約である 不動産工事だけに関する契約のみでなく ほかに物品 サービスの提供も対象としている ( 第 5 項 ) なお IAS 第 8 号の一般原則により IFRIC 第 15 号は不動産業界以外の業界にも類推適用されることが明らかにされている ( 結論の背景第 6 項 ) コンセンサスコンセンサスの前提本解釈指針は 収益はある時点に 会計 監査ジャーナル No.650 SEP. 2009 53

認識されるという前提に基づいている したがって 本解釈指針における契約において 収益認識ができないような 継続的な経営上の関与や工事完了後の不動産に対する実質的な支配はないと仮定している ( 第 7 項 ) この点 IFRIS 第 15 号に添付されている設例が ガイダンスを提供している ( 設例 3) 複数の構成要素単一の契約の中に 不動産工事に加えて物品 サービスの供給 ( 例えば 土地の販売 不動産管理サービス ) を含んでいることがある このように 複数の構成要素からなる契約については IAS 第 18 号第 13 項における別個に認識可能な取引に関するガイダンスを適用しなければならない 受取対価を公正価値で各構成部分に配分する ( 第 8 項 ) 適用会計基準の決定 (IAS 第 11 号又はIAS 第 18 号 ) 不動産工事契約がIAS 第 11 号の定める工事契約の定義に合致する場合はIAS 第 11 号を適用し その他の場合はIAS 第 18 号を適用する ( 第 11 項 ) 契約条件とあらゆる関連事実 状況を勘案して決定する ( 第 10 項 ) 契約上 買い手が工事前又は工事中に不動産の設計構造上の主要部分についてその仕様を決定することができる場合は 買い手がその権利を行使するか否かにかかわらず 当該契約はIAS 第 11 号の定義に合致する ( 第 11 項 ) 一方 契約上 買い手が不動産の設計について限定的な仕様決定しかできない場合 ( 例えば 業者が用意したオプションから設計を選択する場合 ) には 当該契約には IAS 第 18 号が適用される ( 第 12 項 ) 収益の認識時期以下の契約においては 不動産工 事契約から生じる収益を契約活動の進捗度に応じて認識する ( この解釈指針に添付されているフローチャートが参考になる ) IAS 第 11 号の定める工事契約の定義に合致する契約 ( 第 13 項 ) IAS 第 18 号に定めるサービスの提供のみを要求している契約 ( 例 : 建設資材の供給が求められていない契約 )( 第 15 項 ) 物品の販売に関するものであるが IAS 第 18 号の定める収益認識の要件を工事進行中満たす契約 ( 工事の進行に応じて現状のまま 工事仕掛品に対する支配及びリスク 便益が買い手に移転する契約 ) ( 第 17 項 ) 上記以外の契約においては IAS 第 18 号第 14 項の収益認識要件をすべて満たしたとき ( 例 : 工事の完了時又は引渡時 ) に収益を認識する ( 第 18 項 ) IAS 第 18 号の対象となる契約について工事の進捗に応じた収益認識をする際には 収益認識及び関連費用についてIAS 第 11 号の規定が適用される ( 第 17 項 ) IFRIC 第 15 号に添付されている設例で確認する 設例 1では 不動産開発業者が土地とオフィスビルを顧客に販売する 契約は 土地の販売とオフィスビル建設の両者から構成される 買い手は 購入した土地や建設中のビルを途中解約することができない 土地の販売は IAS 第 18 号の適用範囲内となる ビル建設着工後 売り手の決定した主要な設計に関して変更ができないことから ビル建設はIAS 第 11 号に定める工事契約の適用範囲外となり IAS 第 18 号が適用される 買い手が購入した土地の上でビルが建設されているという事実及び買い手が建設中のビル を途中で解約して売主に返還することができないという事実から ビル工事の進行に応じて 仕掛中の現状のまま オフィスビルに対する支配及びリスク 便益が売り手から買い手に移転する IAS 第 18 号の定める収益認識の要件を工事進行中満たす契約 (IFRIC 第 15 号第 17 項 ) であるため オフィスビル工事から生じる収益を工事の進捗度に応じて認識する ( パラグラフIE3) 既に引渡しを行った不動産に追加の作業 ( 例 : 軽微な欠陥の修復 ) を行わなければならない場合 企業は IAS 第 18 号第 19 号に従って収益及び当該作業の見積費用を認識しなければならない 既に引渡しを行った不動産とは別個の契約の構成要素である残存債務 ( 例 : 内装工事 ) がある場合は 当該要素を不動産とは区別し その部分の収益をIAS 第 18 号第 13 項に従って繰り延べなければならい ( 第 19 項 ) 開示工事の進捗に応じてIAS 第 18 号第 14 項の収益認識の要件を継続的に満たす物品の販売に関する契約について 特定の開示が要求されている ( 第 20 21 項 ) これらの開示は IAS 第 11 号が求める開示 ( 例 : 契約の進捗度の決定に用いられる方法 ) と類似している 適用日及び移行措置 IFRIC 第 15 号は 2009 年 1 月 1 日移降開始する事業年度より適用される 早期適用が認められている ( 第 24 項 ) この解釈指針は IAS 第 8 号 会計方針 会計上の見積もりの変更及び誤謬 に従って遡及的に適用しなければならない ( 第 25 項 ) 教材コード J020522 研修コード 210314 履修単位 1 単位 54 会計 監査ジャーナル No.650 SEP. 2009