における診断 病態 治療 予後因子 における診断 病態 治療 予後因子の解明に ついての研究 千田金吾 要旨 受賞の契機となった当施設の研究を4点に絞って紹介する 1 肉芽腫性疾患の診断法の検討のため 肉芽 腫を特異的に認識する単クローン抗体の作成を行った その結果,肉芽腫形成の存在を病理組織学的に的確に行え るようになった 2 の病因論に関する検討では ラットにおける死菌BCG肉芽腫反応での樹 状細胞の意義を経時的に解析した また 病変部における樹状細胞のCD1分子発現の意義をあ きらかにし 脂質抗原の関与を推定した 3 の治療法の検討では の治療 のためにステロイド隔日投与を行うと 副腎皮質の機能は保たれるが間脳下垂体機能の抑制はみられることを示 した また 性ホルモンとの予後の解析から ホルモン補充療法が肝臓病変 に有効であることを報告した 4 の予後関連因子の解析では 胞マクロファージにおける 25-hydroxyvitamin D3 1α-hydroxylase geneの発現との予後の関連を見いだした また サル コイドーシスにおいて自己抗体検出の頻度が高く 自己抗体検出例では予後不良であることを示した 日サ会誌 211; 31: 3-1 キーワード 樹状細胞 CD1 ホルモン補充療法 25-ヒドロキシビタミンD3-1α水酸化酵素遺伝子 自己抗体 The Study of Sarcoidosis in Terms of Diagnosis, Pathophysiology, Treatment, and Prognostic actors Kingo Chida Keywords: dendritic cell, CD1, hormone replacement therapy, 25-hydroxyvitamin D3 1α-hydroxylase gene, autoantibodies はじめに 1 肉芽腫性疾患の診断法の検討 の病因は未だ確定していない 一 肉芽腫を特異的に認識する単クローン抗体の作成を 方 病態についてはかなりの解明が進んだ それに 行い を始めとする肉芽腫形成の存 従って 診断基準も概ね確立しつつある また治療の 在を病理組織学的に的確に行うことを可能にした 1 適応 治療法もある程度のコンセンサスを得るところ 単クローン抗体作成のための抗原は 気管支胞洗 までに達した 今回 これらの知見に我々が関与でき 浄によって得られたBAL細胞を使用した BAL細胞 た研究内容をレビューする 1. 18/生理食塩水 を同量のフロインド 完全ア ジュバンドと混液を作り その.2 mlをbalb/cマ ウスに皮下投与した Köhlerとilsteinの方法に準じ 浜松医科大学 内科学第二講座 著者連絡先 千田金吾 ちだ きんご 431-3192 静岡県浜松市東区半田山1-2-1 浜松医科大学 内科学第二講座 E-mail chidak11@hama-med.ac.jp Second Division, Department of Internal edicine, Hamamatsu University School of edicine 日サ会誌 211, 31 1 3
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における診断 病態 治療 予後因子 組織 6例 を準備した igure 6 抗体として る細胞の存在の証明 および脂質抗原自体でも肉芽腫 anti- O1 anti-cd1b 4A7.6.5 anti-cd1c 形成反応が惹起されうることが示され サルコイドー L161 anti-cd83 I269 を使用した 各組織に シスにおける肉芽腫形成反応には 樹状細胞を介した おいて免疫組織化学解析を行った結果 サルコイドー CD1/脂質抗原による免疫応答が関与している可能性 シス9例の検討材料中5例にCD1陽性細胞が認めら が示唆された れた 陽性細胞は肉芽腫内部および近傍に分布してい さらに脂質成分が豊富な結核菌とサルコイドーシ た 一方 対照群では全例陰性であった CD1陽性例 ス発症との関連をみるため 患者で と陰性例の間に病勢との関連は認められなかった ま のクオンティフェロンテストの陽性率を検討した結果 た CD1b CD1cそれぞれの陽性細胞の出現頻 Table 2 3.3 の症例で陽性であったに過ぎず結核 度には 一定の傾向は認められなかった 以上 CD1 菌の関与の可能性は低いと推定された 1 を発現している細胞すなわち脂質抗原を抗原提示しう 対照 AH-2 類上皮細胞肉芽腫 過敏性炎 igure 1. AH-2での免疫組織化学的反応性 Rat granuloma model protocol Specificity of monoclonal antibodies for immuno-histochemistry Rat Clone Isotype Antigen Positive cells Reference OX62 integrin subunit, DC J. Exp. ed. α like γδ T cell? 1992 OX52 IgG2a unknown membrane Pan T cell Immunol. 1986 OX8 CD8 Cytotoxic T cell Eur. J. Immunol. 198 V65 γδ TCR γδ T cell J. Immunol. 1988 ED1 gp9-11 cytoonocyte, plasmic granules φ, DC Immunol. 1985 ED2 IgG2a unknown membrane Tissue φ Immunol. 1985 OX6 RT1B, class II B cell, DC, φ Eur. J. Immunol. 1979 igure 2. ラット肉芽腫形成モデルにおける樹状細胞とT細胞の分布 日サ会誌 211, 31 1 5
における診断 病態 治療 予後因子 Immunostaining of granuloma with OX62 DC Double staining of rat granuloma day 14 OX62 blue, DC OX52 red, Pan T igure 3. 肉芽腫形成過程における樹状細胞 DC の関与 Clone Specificity Source Species/isotype rabbit poly. S-1a Dako rabbit O1 Immunotech mouse HB15a CD83 Immunotech mouse IgG2 igure 4. 患者の生検およびリンパ節標本の切片における免疫染色 6 日サ会誌 211, 31 1
における診断 病態 治療 予後因子 第1染色体 HC Class Ic CD1分子の抗原結合部は 疎水性のアミノ酸で覆われ ペプチド抗原では なく 脂質抗原に結合する CD1b CD1c CD1d CD1e CD1分子はHC class Icに分類され 古 典的HC class Iaやclass IIと異なり多 型性に乏しい分子である 脂質/糖脂質 抗原の疎水鎖と結合しその抗原をT cell に提示する igure 5. T細胞への抗原情報の提示に関わるHC Class I HC Class II以外のHC 対象症例 群における免疫染色の結果 CD1b CD1c CD83 症例1 耳下腺 リンパ節 リンパ節 症例2 眼 肝 リンパ節 リンパ節 症例3 眼 症例4 8 皮膚 皮膚 症例5 筋 眼 腓腹筋 症例6 筋 眼 腓腹筋 症例7 筋 大腿筋 症例8 61 25 眼 リンパ節 リンパ節 症例9 73 6 癌 症例11 61 癌 症例12 52 128 癌 症例13 7 125 癌 症例14 61 8 癌 症例15 41 炎症性病変 症例16 29 2 特発性リンパ節炎 リンパ節 リンパ節 B. I. 疾患 罹患臓器 生検組織 症例1 年齢 才 性 63 眼 筋 腓腹筋 症例2 31 3 症例3 23 14 症例4 59 症例5 72 症例6 54 症例7 57 症例8 68 症例9 症例1 症例4 組織 症例9 CD1c 頸部リンパ節 igure 6. の病変組織における CD1b CD1c CD83の分布 日サ会誌 211, 31 1 7
における診断 病態 治療 予後因子 3 の治療法の検討 の関係をあきらかにした 14 の治療のためにステロイド隔日投 与を行うと 副腎皮質の機能は保たれるが間脳下垂体 機能の抑制はみられることを示した 11 また胞マクロファージにおける25-hydroxyvitamin D3 1α-hydroxylase geneの発現を検討した 1,25 OH 2D3 が肉芽腫形成部位で産生されることが知ら に対して本邦で最初に低用量メソ れているが それは25 OH D3 1α-hydroxylase gene の発現の結果である その機序をigure 7に示す 結 また吸入ステロイドの導入が治療効果があるか検討 果としてマクロファージ上の1,25 OH 2D3 の受容体に し その病変に対する治療の可能性を初めて報告し 作用してマクロファージの融合が促されることにな た 13 る このように25 OH D3 1α-hydroxylase geneの発 中高年女性のの予後は 他の年代 現との活動性や予後との関連が推 に比して不良であることが多い そこで 後述するよ 定される 実際 igure 8に示すように25 OH D3 1 うに実験的に性ホルモンの低下が肉芽腫形成反応を助 α-hydroxylase geneの発現とbalリンパ球 CD4/8 長することを確認し ACEまた予後との関連を見いだした 16 トレキセート間欠投与の有用性について報告した 12 これを基に臨床的な応用とし 14 てホルモン補充療法が肝臓病変に有 効であることを報告した 15 4 の予後因子に関わる因子の検討 の末梢血とBAL細胞における Th1/Th2 Tc1/Tc2のプロフィールと 17 サルコイ ドーシスにおいて自己抗体検出の頻度が高く 自己抗 体検出例では予後不良であるため 18 自己免疫疾患と は予後関連因子の解析では 中高 の関連を抗TPO抗体測定を中心におこなった 19 サ 年のの予後が不良であり 妊娠 出 ルコイドーシスで抗血管内皮細胞抗体の検出例は 多 産を契機にの病勢が大きく変動する 臓器病変の存在が示唆された 2 ことなどの臨床的観察から 性ホルモンと肉芽腫形成 igure 7. 胞マクロファージ と 25 OH D3 1α-Hydroxylase について 8 日サ会誌 211, 31 1
における診断 病態 治療 予後因子 Cells from BAL fluid NA nonadherent A adherent a b Lym c CD4/8 ACE igure 8. の活動性とマクロファージでの25-hydroxyvitamin D3 1α-hydroxylase gene expression Table 2. QT陽性率の比較 対象 報告者 健常者 症例数 9 ori Kang 216 99 年齢 TST 陽性率 QT 陽性率 3.3 48.7 3.5 23-73 3/84 2 64.6 18-33 73/113 25 24-36 51 1.8 4. 5/99 median range TST = tuberculin skin test 日サ会誌 211, 31 1 9
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