目次 1. 花粉症と診断するには 2. 薬剤を使い分けていますか? 3. 期待される舌下免疫療法 4. 患者さんにはこうアドバイス! 本コンテンツは 花粉症における非専門の先生方を対象に編集 しております 1

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今回の調査では 主に次のような結果が得られました 花粉症の現状と生活に及ぼす影響の実態 スギ花粉症を初めて発症してから 10 年以上経つ人が 66.8% と 長年花粉症に悩まされている人が多いという結果に 10 年以上経つ人の割合が多い地域としては静岡県 栃木県 群馬県 山梨県等が上位に 今までにス

2/5 分類その枯草熱レルギー性鼻炎医薬品の有無花粉症治療薬 ( 内服薬 ) 花粉症の治療に内服で用いられる主な抗ヒスタミン薬 抗アレルギー薬をまとめました 後 : 後発医薬品 会社名剤形規格 単位薬価後発効能 効果皮膚疾患皮そ他蕁麻疹膚の疹湿 そ皮う膚痒炎症用法 用量 : 適宜増減ア他第二世代抗ヒ


から身を守るには 玄関の外で花粉を落とす 衣服や髪についた花粉を振り落としてから家に入りましょう 花粉をなるべく浴びないようにすることが大切です 次のことに気をつけるだけで ずいぶんと花粉を防ぐことができます 花粉情報をチェック 事前にテレビや新聞 インターネットで花粉情報をチェックしましょう 下記

小児アレルギー性鼻炎診療の問題点と対応 小児耳 2013; 34(3) 図 小児診療に用いる器具 覚症状が改善ない例もあった このような例を詳しく調べると, アレルギー性鼻炎を合併しており, しかも事前にアレルギー性鼻炎の診断がされていない例が該当していた このような気づかれないアレルギー性鼻炎を見

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3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

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抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンなら

通常の単純化学物質による薬剤の約 2 倍の分子量をもちます. 当初, 移植時の拒絶反応抑制薬として認可され, 後にアトピー性皮膚炎, 重症筋無力症, 関節リウマチ, ループス腎炎へも適用が拡大しました. タクロリムスの効果機序は, 当初,T 細胞のサイトカイン産生を抑制するということで説明されました

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

3. 花粉症の治療には 6 割近い人が病院に行く ( 必ず行く 22.3%+ 行く場合もある 36.2%) 女性 70 代以上 は最も病院に行く割合が高く 72.1% 一方 男性 30 代の 5 割以上は病院に 行かない 花粉症の治療で病院に行くか ( 単数回答 )n=1053 行かない 41.5%

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より詳細な情報を望まれる場合は 担当の医師または薬剤師におたずねください また 患者向医薬品ガイド 医療専門家向けの 添付文書情報 が医薬品医療機器総合機構のホームページに掲載されています

耳鼻咽喉科領域における最近の知見 ( アレルギー疾患 嗅覚障害を中心として ) 小島耳鼻咽喉科医院小島純也 はじめにアレルギー性疾患は年々増加傾向にある ( 図 1) 以前はアトピー素因を持った幼児は臓器を変えながら様々なアレルギー疾患を発症し成人に移行するアレルギーマーチという概念において 喘息は

AC 療法について ( アドリアシン + エンドキサン ) おと治療のスケジュール ( 副作用の状況を考慮して 抗がん剤の影響が強く残っていると考えられる場合は 次回の治療開始を延期することがあります ) 作用めやすの時間 イメンドカプセル アロキシ注 1 日目は 抗がん剤の投与開始 60~90 分


アトピー性皮膚炎の治療目標 アトピー性皮膚炎の治療では 以下のような状態になることを目指します 1 症状がない状態 あるいはあっても日常生活に支障がなく 薬物療法もあまり必要としない状態 2 軽い症状はあっても 急に悪化することはなく 悪化してもそれが続かない状態 2 3

2018 年 10 月 4 日放送 第 47 回日本皮膚アレルギー 接触皮膚炎学会 / 第 41 回皮膚脈管 膠原病研究会シンポジウム2-6 蕁麻疹の病態と新規治療法 ~ 抗 IgE 抗体療法 ~ 島根大学皮膚科 講師 千貫祐子 はじめに蕁麻疹は膨疹 つまり紅斑を伴う一過性 限局性の浮腫が病的に出没

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ず一見蕁麻疹様の浮腫性紅斑が初発疹である点です この蕁麻疹様の紅斑は赤みが強く境界が鮮明であることが特徴です このような特異疹の病型で発症するのは 若い女性に多いと考えられています また スギ花粉がアトピー性皮膚炎の増悪因子として働いた時には 蕁麻疹様の紅斑のみではなく全身の多彩な紅斑 丘疹が出現し

あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

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1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

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第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

名前男 女平成年月日生 ( 歳 ) 学校年組提出日平成年月日学病型 治療学校生活上の留意点 A. 運動 ( 体育 部活動等 ) 3. 強い運動は不可 B. 動物との接触やホコリ等の舞う環境での活動 3. 動物へのアレルギーが強いため不可動物名 ( ) C. 宿泊を伴う校外活動 D. その他の配慮 管

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肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

さらにのどや気管の粘膜に広く分布しているマスト細胞の表面に付着します IgE 抗体にスギ花粉が結合すると マスト細胞がヒスタミン ロイコトリエンという化学伝達物質を放出します このヒスタミン ロイコトリエンが鼻やのどの粘膜細胞や血管を刺激し 鼻水やくしゃみ 鼻づまりなどの花粉症の症状を引き起こします

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1 添付文書の改訂 薬効分類番号 商品名 1 警告 2 禁忌 3 効能効果 4 効能効果注 5 用法 用量 ( 6 用法用量(注 7 原則禁忌 8 慎重投与 9 重要な基本的注意 10 相互作用(禁 11 相互作注 12 副作用 13 重大な副作用 14 高齢者投与 15 妊産婦授乳婦投与 16 小

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す ウイルスの中で検出頻度の高いものはライノウイルス コロナウイルスが多く これに続くのが RS ウイルス インフルエンザウイルス パラインフルエンザウイルス アデノウイルスです また これらのウイルスには季節的流行の特徴があり ライノウイルスは春と秋 RS ウイルス コロナウイルス インフルエンザ

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

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目次 まえがき 1 1 花粉症とは? 3 2 花粉の種類と飛散時期 4 3 花粉症の症状 5 4 花粉症の治療 6 症状を緩和する薬 ( 内服薬 点眼薬 点鼻薬 ) 減感作療法 ( 免疫療法 ) 根本的な治療に近い療法 外科的手術療法 その他 5 自分で出来る花粉症対策 8 一般的に知られている対策

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要旨 抗ヒスタミン薬は日本でも多く使用されている重要な薬の一つである. しかしながら優位性は感覚的なもののため数値化することが困難である. そこで H1 受容体と抗ヒスタミン薬の結合親和性に注目し調査を行った. 野中らの研究により抗ヒスタミン薬の結合に重要な部位は GPCR 受容体における Asp1

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モガヤ ブタクサなど背の低い草の花粉がかなり多く飛んでいます 日本とメルボルンでは影響を及ぼしている花粉の種類が異なるため 日本では重度の花粉症に悩まされていた人がメルボルンでは全く症状がなくなったり 逆に日本では何ともなかった人がメルボルンに来てから花粉症を発症したという例も多いようです ほかにも

近ではその後も夏にはイネ科の花粉症や秋にはブタクサなどのキク科の花粉症も増え 大きな問題となっています とくにスギ花粉の飛散量については その前年の夏の暑さに関係すると言われ 昨年の夏はそれほど猛暑でなかったことから 今年のスギ花粉の飛散量は 例年よりやや少なめと予想されています しかし アレルギー

- 1 - Ⅰ. 調査設計 1. 調査の目的 本調査は 全国 47 都道府県で スギ花粉症の現状と生活に及ぼす影響や 現状の対策と満足度 また 治療に対する理解度と情報の到達度など 現在のスギ花粉症の実態について調査しています 2. 調査の内容 - 調査対象 : ご自身がスギ花粉症である方 -サンプ

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2013.1 花粉症診療の基2 本意CareNet Continuing Medical Education 外と知らない!? Copyright 2013CareNet,Inc. All rights reserved. 監修日本医科大学大学院医学研究科頭頸部感覚器学分野教授 大久保公裕先生

目次 1. 花粉症と診断するには 2. 薬剤を使い分けていますか? 3. 期待される舌下免疫療法 4. 患者さんにはこうアドバイス! 本コンテンツは 花粉症における非専門の先生方を対象に編集 しております 1

花粉症治療症状を抑えるために中心となるのは薬物治療 対症療法 薬物療法 手術療法 根治療法 花粉の除去 回避 免疫療法 2

治療薬の分類 ➊ケミカルメディエーター遊離抑制薬 ( 肥満細胞安定薬 ) インタール リザベン ソルファ アレギサール ペミラストン ➋ケミカルメディエーター受容体拮抗薬 a. ヒスタミンH1 受容体拮抗薬 ( 抗ヒスタミン薬 ) 第 1 世代ポララミン タベジール など第 2 世代ザジテン アゼプチン セルテクト ゼスラン ニポラジン ダレン レミカット アレジオン エバステル ジルテック リボスチン タリオン アレグラ アレロック クラリチン ザイザル b. ロイコトリエン受容体拮抗薬 ( 抗ロイコトリエン薬 ) オノン シングレア キプレス c. プロスタグランジンD2 トロンボキサンA2 受容体拮抗薬 ( 抗プロスタグランジンD2 トロンボキサンA2 薬 ) バイナス ➌Th2サイトカイン阻害薬アイピーディ ➍ステロイド薬 a. 鼻噴霧用アルデシン AQネーザル リノコート フルナーゼ ナゾネックス アラミスト エリザス b. 経口用セレスタミン ➎その他非特異的変調療法薬 生物製剤 漢方薬 (2012 年 12 月現在 ) 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン- 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. より一部改変 3

< 参考 > 主な治療薬の投与経路 分類商品名経口点鼻点眼 ケミカル メディエーター 遊離抑制薬 第 1 世代 抗ヒスタミン薬 第 2 世代 抗ヒスタミン薬 インタール リザベン ソルファ アレギサール / ペミラストン ポララミン タベジール ザジテン アゼプチン セルテクト ゼスラン / ニポラジン ダレン / レミカット アレジオン エバステル ジルテック タリオン アレグラ アレロック クラリチン ザイザル リボスチン パタノール 分類商品名経口点鼻点眼 抗ロイコトリエン薬 オノン 抗 PGD2 TXA2 薬バイナス Th2 サイトカイン 阻害薬 ステロイド薬 シングレア / キプレス アイピーディ セレスタミン アルデシンAQネーザル / リノコート フルナーゼ ナゾネックス アラミスト エリザス 4

これらの薬剤の中から個々の患者さんに的確な薬剤を選択するためには? 5

まず 3 大症状の強さから病型を診断 くしゃみ 鼻漏型鼻閉型充全型 くしゃみ くしゃみ くしゃみ 鼻汁 鼻汁 鼻汁 鼻閉 鼻閉 鼻閉 6

それぞれの病型に有効性の高い薬剤 くしゃみ 鼻漏型 第 2 世代抗ヒスタミン薬 ケミカルメディエーター遊離抑制薬 鼻閉型 抗ロイコトリエン薬 鼻噴霧用ステロイド薬 重症の場合 点鼻用血管収縮薬 経口ステロイド薬 7

さらに 各症状の程度から重症度を診断 < 鼻アレルギー診療ガイドライン > 程度および重症度 くしゃみ発作または鼻漏 * + - 最重症最重症最重症最重症最重症 最重症重症重症重症重症 鼻閉 最重症重症中等症中等症中等症 + 最重症重症中等症軽症軽症 - 最重症重症中等症軽症無症状 * くしゃみか鼻漏の強い方をとる くしゃみ 鼻漏型鼻閉型充全型 従来の分類では 重症 中等度 軽症である スギ花粉飛散の多いときは重症で律しきれない症状も起こるので 最重症を入れてある 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン- 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 8

各症状の程度の基準 種類 程度 + - くしゃみ発作 (1 日の平均発作回数 ) 21 回以上 20~11 回 10~6 回 5~1 回 + 未満 鼻汁 (1 日の平均擤鼻回数 ) 21 回以上 20~11 回 10~6 回 5~1 回 + 未満 鼻閉 1 日中完全につまっている 鼻閉が非常に強く 口呼吸が 1 日のうちかなりの時間あり 鼻閉が強く 口呼吸が 1 日のうち ときどきあり 口呼吸は全くないが鼻閉あり + 未満 日常生活の支障度 * 全くできない 手につかないほど苦しい ( ) と (+) の中間 あまり差し支えない + 未満 * 日常生活の支障度 : 仕事 勉学 家事 睡眠 外出などへの支障 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン- 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 9

病型と重症度に応じて治療法を選択軽症 ~ 中等症 < 鼻アレルギー診療ガイドライン > 重症度軽症中等症 病型 治療 1 第 2 世代抗ヒスタミン薬 2 鼻噴霧用ステロイド薬 1 と点眼薬で治療を開始し 必要に応じて 2 を追加 くしゃみ 鼻漏型 第 2 世代抗ヒスタミン薬 + 鼻噴霧用ステロイド薬 点眼用抗ヒスタミン薬または遊離抑制薬 アレルゲン免疫療法 抗原除去 回避 遊離抑制薬 : ケミカルメディエーター遊離抑制薬抗 LTs 薬 : 抗ロイコトリエン薬抗 PGD2 TXA2 薬 : 抗プロスタグランジン D2 トロンボキサン A2 薬 鼻閉型または鼻閉を主とする充全型 抗 LTs 薬または抗 PGD 2 TXA 2 薬 + 鼻噴霧用ステロイド薬 + 第 2 世代抗ヒスタミン薬 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン- 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 10

重症 最重症 < 鼻アレルギー診療ガイドライン > 重症度 重症 最重症 病型くしゃみ 鼻漏型鼻閉型または鼻閉を主とする充全型 治療 鼻噴霧用ステロイド薬 + 第 2 世代抗ヒスタミン薬 鼻噴霧用ステロイド薬 + 抗 LTs 薬または抗 PGD 2 TXA 2 薬 + 第 2 世代抗ヒスタミン薬 必要に応じて点鼻用血管収縮薬を治療開始時の 1~2 週間に限って用いる 鼻閉が特に強い症例では経口ステロイド薬を 4~7 日間処方で治療開始することもある 点眼用抗ヒスタミン薬 遊離抑制薬またはステロイド薬 鼻閉型で鼻腔形態異常を伴う症例では手術 アレルゲン免疫療法 抗原除去 回避 遊離抑制薬 : ケミカルメディエーター遊離抑制薬抗 LTs 薬 : 抗ロイコトリエン薬抗 PGD2 TXA2 薬 : 抗プロスタグランジンD2 トロンボキサンA2 薬鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン- 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 11

ガイドラインの正しい読み方上の薬剤が優位 下にある薬剤はそれに併用 重症度 病型 治療 中等症 鼻閉型または鼻閉を主とする充全型 抗 LTs 薬または抗 PGD 2 TXA 2 薬 + 鼻噴霧用ステロイド薬 + 第 2 世代抗ヒスタミン薬 例 ) 左記では 抗ロイコトリエン薬 または抗プロスタグランジンD 2 トロンボキサンA 2 薬が優位であり 最初はそれに鼻噴霧用ステロイド薬を加えて治療する それでも くしゃみ 鼻汁が残る場合に 第 2 世代抗ヒスタミン薬を併用する 12

眼の症状と点眼薬花粉症では目のかゆみが特異的 症状 目のかゆみ 流涙 充血 眼脂など 点眼用ケミカルメディエーター遊離抑制薬 治療 ( 点眼薬 ) インタール エリックス アレギサール / ペミラストン リザベン トラメラス アイビナール ケタス ゼペリン など 点眼用第 2 世代抗ヒスタミン薬ザジテン リボスチン パタノール 重症の場合 点眼用ステロイド薬 緑内障 角膜潰瘍 感染に注意 眼科による定期健診が必要 13

薬物療法に 関する注意 Copyright Copyright 2013 2013 CareNet,Inc. All All rights rights reserved. 14

1 ステロイド薬の使用ステロイドは鼻噴霧用が第一選択 鼻噴霧用ステロイド薬ステロイドが微量で 吸収されにくく 1 年以上の連用でも全身的副作用は少ない 経口ステロイド薬鼻噴霧用で制御できない症例に期間を限定して投与 (1 週間程度 ) セレスタミン の処方例 1 日 2~3 錠なら3~5 日 1 日 1 錠なら2 週間以内 15

2 鼻噴霧用ステロイド以外の点鼻薬 ( 血管収縮薬 ) 頻回使用はしないように指導 血管収縮薬の入った点鼻薬 ( 市販の点鼻薬を含む ) は 頻回に使用するとリバウンド現象により鼻閉が悪化する 重症例に対して 治療初期の 1~2 週間に限って用いる 16

3 妊娠中の治療局所用剤を中心とする 時期 妊娠初期 ( 妊娠 4~7 週 ) 妊娠前期 ( 妊娠 3~4 ヵ月 ) 妊娠中期以後 ( 妊娠 5 ヵ月 ~) 治療 局所温熱療法器を使用 原則として薬剤を投与しない 局所温熱療法器を使用 鼻噴霧薬 ( ケミカルメディエーター遊離抑制薬 抗ヒスタミン薬 ステロイド薬 ) 点眼薬を使用 局所温熱療法器を使用 鼻噴霧薬 ( ケミカルメディエーター遊離抑制薬 抗ヒスタミン薬 ステロイド薬 ) 点眼薬を使用 経口抗アレルギー薬の短期投与 授乳中 同上 17

毎年強い花粉症症状 を示す患者さんには 初期療法 を推奨 Copyright Copyright 2013 2013 CareNet,Inc. All All rights rights reserved. 18

初期療法とは? 花粉飛散前から薬物療法を開始し飛散終了まで継続 ( イメージ ) 発症時期の差 発症後治療 症状初期療法開始花粉飛散開始発症発症症状の差 初期療法 ( 症状発現前から薬物療法開始 ) 日数 発症時期を遅らせ 症状を軽減することが可能 19

TSS初期療法の効果花粉飛散数にかかわらず発症後治療群より症状が軽減 2,000 個 /cm 2 以下 [ 少量 ~ 中等度飛散 ] 2,001~5,000 個 /cm 2 5,001 個 /cm 2 以上 [ 大量飛散 ] [ 超大量飛散 ] 6 5 発症後治療群 (n=238) 6 5 発症後治療群 (n=154) 6 5 発症後治療群 (n=119) 4 4 4 ** 3 2 1 *** *** *** ** * * *** *** 初期治療群 (n=579) 3 2 1 *** *** ***** * *** 初期治療群 (n=310) 3 2 1 *** *** *** 初期治療群 (n=211) 0-3 -2-1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 経過 ( 週 ) TSS: 鼻の 3 症状のスコアの合計 0-3 -2-1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 経過 ( 週 ) 0-3 -2-1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 経過 ( 週 ) Wilcoxon Test ***p<0.001, **:p<0.01, *:p<0.05 初期治療群 : 花粉飛散開始日の 7 日後までに治療開始 治療開始時が軽症以下の患者 発症後治療群 : 飛散開始日以降に治療開始 治療開始時が中等症以上の患者 < 投与薬剤 > 第 2 世代抗ヒスタミン薬 ( オロパタジン ) 藤枝重治ほか. 日鼻誌. 2007; 46: 18-28. 20

初期療法における治療法の選択 < 鼻アレルギー診療ガイドライン > 治療 1 第 2 世代抗ヒスタミン薬 2 遊離抑制薬 3 抗 LTs 薬 4 抗 PGD2 TXA2 薬 5Th2 サイトカイン阻害薬 初期療法 くしゃみ 鼻漏型には 1 2 鼻閉型または鼻閉を主とする充全型には 3 4 5 のいずれか 1 つ アレルゲン免疫療法 抗原除去 回避 初期療法は本格的花粉飛散期の導入のためなので よほど花粉飛散の少ない年以外は重症度に応じて季節中の治療に早めに切り替える 遊離抑制薬 : ケミカルメディエーター遊離抑制薬抗 LTs 薬 : 抗ロイコトリエン薬抗 PGD2 TXA2 薬 : 抗プロスタグランジン D2 トロンボキサン A2 薬 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン- 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 21

初期療法における薬剤選択例年 最も症状が強い時期における病型をもとに選択 くしゃみ 鼻漏型 第 2 世代抗ヒスタミン薬 ケミカルメディエーター遊離抑制薬 Th2サイトカイン阻害薬 鼻閉型 抗ロイコトリエン薬 抗 PGD 2 TXA 2 薬 22

初期療法の開始時期 花粉飛散予測日または症状が少しでも現れた時点 くしゃみ 鼻漏型 第 2 世代抗ヒスタミン薬 ケミカルメディエーター遊離抑制薬 Th2サイトカイン阻害薬 鼻閉型 抗ロイコトリエン薬 抗 PGD 2 TXA 2 薬 花粉飛散予測日の 1~2 週間前 23

鼻噴霧用ステロイド薬花粉飛散増加により症状増悪が認められれば早めに鼻噴霧用ステロイドを追加 くしゃみ 鼻漏型 鼻閉型 第 2 世代抗ヒスタミン薬 ケミカルメディエーター遊離抑制薬 Th2サイトカイン阻害薬 抗ロイコトリエン薬 抗 PGD 2 TXA 2 薬 + 24

薬物治療の最初に患者さんに説明するポイント 初期療法で処方された薬剤をシーズンが終わるまで きちんと服用する 症状が出ない 症状が出たといって服用をやめると かえって強い症状が出る 眠気に注意 眠気やだるさなどがあれば医師に相談 薬剤を服用していても 飛散が多いときは症状が出ることもある 薬剤を継続しても効果が薄れることはない 効果には個人差がある 25

< 参考 > 各薬剤の特徴 Copyright Copyright 2013 2013 CareNet,Inc. All All rights rights reserved. 26

第 2 世代抗ヒスタミン薬 ( 第 1 世代と比較して ) 1 中枢抑制 抗コリン作用などの副作用が少ない 2 全般改善度はよい 3 鼻閉に対する効果がややよい 4 効果の発現が遅いが * 持続が長い 5 連用により改善率が上昇する * 比較的即効性はあるものの 通年性アレルギー性鼻炎での臨床試験で 十分な効果を得るのに 2 週間程度を要する 亢進した過敏性を単独治療で抑制するのに必要な期間と考えられる 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン - 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 27

経口ケミカルメディエーター遊離抑制薬 1 連用により改善率が上昇する 2 効果はマイルドなため臨床効果発現が遅い 3 鼻閉にもやや効果がある 4 副作用が比較的少ない 5 眠気がない 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン - 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 28

抗ロイコトリエン薬 1 鼻粘膜の容積血管拡張や血管透過性を抑制し 鼻閉を改善する 2 鼻閉に対する効果は 第 2 世代抗ヒスタミン薬よりも優れる 3 好酸球浸潤や鼻汁分泌を抑制する 4 くしゃみ 鼻汁にも有効である 5 効果発現は内服開始後 1 週で認められ 連用で改善率が上昇する 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン - 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 29

プロスタグランジン D2 トロンボキサン A2 受容体拮抗薬 1 鼻粘膜血管拡張と血管透過性を抑制し 鼻閉を改善する 2 鼻閉に対する効果は 第 2 世代抗ヒスタミン薬よりも優れる 3 好酸球浸潤や鼻過敏症を抑制する 4 くしゃみ 鼻汁にも有効である 5 効果発現は1 週間で認められ 長期連用で改善率が上昇する 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン - 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 30

鼻噴霧用ステロイド薬 1 効果は強い 2 効果発現は約 1~2 日 3 副作用は少ない 4 鼻アレルギーの 3 症状に等しく効果がある 5 投与部位のみ効果が発現する 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン - 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 31

次回は 期待される 舌下免疫療法 Copyright Copyright 2013 2013 CareNet,Inc. All All rights rights reserved. 32