2013.1 花粉症診療の基2 本意CareNet Continuing Medical Education 外と知らない!? Copyright 2013CareNet,Inc. All rights reserved. 監修日本医科大学大学院医学研究科頭頸部感覚器学分野教授 大久保公裕先生
目次 1. 花粉症と診断するには 2. 薬剤を使い分けていますか? 3. 期待される舌下免疫療法 4. 患者さんにはこうアドバイス! 本コンテンツは 花粉症における非専門の先生方を対象に編集 しております 1
花粉症治療症状を抑えるために中心となるのは薬物治療 対症療法 薬物療法 手術療法 根治療法 花粉の除去 回避 免疫療法 2
治療薬の分類 ➊ケミカルメディエーター遊離抑制薬 ( 肥満細胞安定薬 ) インタール リザベン ソルファ アレギサール ペミラストン ➋ケミカルメディエーター受容体拮抗薬 a. ヒスタミンH1 受容体拮抗薬 ( 抗ヒスタミン薬 ) 第 1 世代ポララミン タベジール など第 2 世代ザジテン アゼプチン セルテクト ゼスラン ニポラジン ダレン レミカット アレジオン エバステル ジルテック リボスチン タリオン アレグラ アレロック クラリチン ザイザル b. ロイコトリエン受容体拮抗薬 ( 抗ロイコトリエン薬 ) オノン シングレア キプレス c. プロスタグランジンD2 トロンボキサンA2 受容体拮抗薬 ( 抗プロスタグランジンD2 トロンボキサンA2 薬 ) バイナス ➌Th2サイトカイン阻害薬アイピーディ ➍ステロイド薬 a. 鼻噴霧用アルデシン AQネーザル リノコート フルナーゼ ナゾネックス アラミスト エリザス b. 経口用セレスタミン ➎その他非特異的変調療法薬 生物製剤 漢方薬 (2012 年 12 月現在 ) 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン- 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. より一部改変 3
< 参考 > 主な治療薬の投与経路 分類商品名経口点鼻点眼 ケミカル メディエーター 遊離抑制薬 第 1 世代 抗ヒスタミン薬 第 2 世代 抗ヒスタミン薬 インタール リザベン ソルファ アレギサール / ペミラストン ポララミン タベジール ザジテン アゼプチン セルテクト ゼスラン / ニポラジン ダレン / レミカット アレジオン エバステル ジルテック タリオン アレグラ アレロック クラリチン ザイザル リボスチン パタノール 分類商品名経口点鼻点眼 抗ロイコトリエン薬 オノン 抗 PGD2 TXA2 薬バイナス Th2 サイトカイン 阻害薬 ステロイド薬 シングレア / キプレス アイピーディ セレスタミン アルデシンAQネーザル / リノコート フルナーゼ ナゾネックス アラミスト エリザス 4
これらの薬剤の中から個々の患者さんに的確な薬剤を選択するためには? 5
まず 3 大症状の強さから病型を診断 くしゃみ 鼻漏型鼻閉型充全型 くしゃみ くしゃみ くしゃみ 鼻汁 鼻汁 鼻汁 鼻閉 鼻閉 鼻閉 6
それぞれの病型に有効性の高い薬剤 くしゃみ 鼻漏型 第 2 世代抗ヒスタミン薬 ケミカルメディエーター遊離抑制薬 鼻閉型 抗ロイコトリエン薬 鼻噴霧用ステロイド薬 重症の場合 点鼻用血管収縮薬 経口ステロイド薬 7
さらに 各症状の程度から重症度を診断 < 鼻アレルギー診療ガイドライン > 程度および重症度 くしゃみ発作または鼻漏 * + - 最重症最重症最重症最重症最重症 最重症重症重症重症重症 鼻閉 最重症重症中等症中等症中等症 + 最重症重症中等症軽症軽症 - 最重症重症中等症軽症無症状 * くしゃみか鼻漏の強い方をとる くしゃみ 鼻漏型鼻閉型充全型 従来の分類では 重症 中等度 軽症である スギ花粉飛散の多いときは重症で律しきれない症状も起こるので 最重症を入れてある 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン- 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 8
各症状の程度の基準 種類 程度 + - くしゃみ発作 (1 日の平均発作回数 ) 21 回以上 20~11 回 10~6 回 5~1 回 + 未満 鼻汁 (1 日の平均擤鼻回数 ) 21 回以上 20~11 回 10~6 回 5~1 回 + 未満 鼻閉 1 日中完全につまっている 鼻閉が非常に強く 口呼吸が 1 日のうちかなりの時間あり 鼻閉が強く 口呼吸が 1 日のうち ときどきあり 口呼吸は全くないが鼻閉あり + 未満 日常生活の支障度 * 全くできない 手につかないほど苦しい ( ) と (+) の中間 あまり差し支えない + 未満 * 日常生活の支障度 : 仕事 勉学 家事 睡眠 外出などへの支障 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン- 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 9
病型と重症度に応じて治療法を選択軽症 ~ 中等症 < 鼻アレルギー診療ガイドライン > 重症度軽症中等症 病型 治療 1 第 2 世代抗ヒスタミン薬 2 鼻噴霧用ステロイド薬 1 と点眼薬で治療を開始し 必要に応じて 2 を追加 くしゃみ 鼻漏型 第 2 世代抗ヒスタミン薬 + 鼻噴霧用ステロイド薬 点眼用抗ヒスタミン薬または遊離抑制薬 アレルゲン免疫療法 抗原除去 回避 遊離抑制薬 : ケミカルメディエーター遊離抑制薬抗 LTs 薬 : 抗ロイコトリエン薬抗 PGD2 TXA2 薬 : 抗プロスタグランジン D2 トロンボキサン A2 薬 鼻閉型または鼻閉を主とする充全型 抗 LTs 薬または抗 PGD 2 TXA 2 薬 + 鼻噴霧用ステロイド薬 + 第 2 世代抗ヒスタミン薬 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン- 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 10
重症 最重症 < 鼻アレルギー診療ガイドライン > 重症度 重症 最重症 病型くしゃみ 鼻漏型鼻閉型または鼻閉を主とする充全型 治療 鼻噴霧用ステロイド薬 + 第 2 世代抗ヒスタミン薬 鼻噴霧用ステロイド薬 + 抗 LTs 薬または抗 PGD 2 TXA 2 薬 + 第 2 世代抗ヒスタミン薬 必要に応じて点鼻用血管収縮薬を治療開始時の 1~2 週間に限って用いる 鼻閉が特に強い症例では経口ステロイド薬を 4~7 日間処方で治療開始することもある 点眼用抗ヒスタミン薬 遊離抑制薬またはステロイド薬 鼻閉型で鼻腔形態異常を伴う症例では手術 アレルゲン免疫療法 抗原除去 回避 遊離抑制薬 : ケミカルメディエーター遊離抑制薬抗 LTs 薬 : 抗ロイコトリエン薬抗 PGD2 TXA2 薬 : 抗プロスタグランジンD2 トロンボキサンA2 薬鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン- 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 11
ガイドラインの正しい読み方上の薬剤が優位 下にある薬剤はそれに併用 重症度 病型 治療 中等症 鼻閉型または鼻閉を主とする充全型 抗 LTs 薬または抗 PGD 2 TXA 2 薬 + 鼻噴霧用ステロイド薬 + 第 2 世代抗ヒスタミン薬 例 ) 左記では 抗ロイコトリエン薬 または抗プロスタグランジンD 2 トロンボキサンA 2 薬が優位であり 最初はそれに鼻噴霧用ステロイド薬を加えて治療する それでも くしゃみ 鼻汁が残る場合に 第 2 世代抗ヒスタミン薬を併用する 12
眼の症状と点眼薬花粉症では目のかゆみが特異的 症状 目のかゆみ 流涙 充血 眼脂など 点眼用ケミカルメディエーター遊離抑制薬 治療 ( 点眼薬 ) インタール エリックス アレギサール / ペミラストン リザベン トラメラス アイビナール ケタス ゼペリン など 点眼用第 2 世代抗ヒスタミン薬ザジテン リボスチン パタノール 重症の場合 点眼用ステロイド薬 緑内障 角膜潰瘍 感染に注意 眼科による定期健診が必要 13
薬物療法に 関する注意 Copyright Copyright 2013 2013 CareNet,Inc. All All rights rights reserved. 14
1 ステロイド薬の使用ステロイドは鼻噴霧用が第一選択 鼻噴霧用ステロイド薬ステロイドが微量で 吸収されにくく 1 年以上の連用でも全身的副作用は少ない 経口ステロイド薬鼻噴霧用で制御できない症例に期間を限定して投与 (1 週間程度 ) セレスタミン の処方例 1 日 2~3 錠なら3~5 日 1 日 1 錠なら2 週間以内 15
2 鼻噴霧用ステロイド以外の点鼻薬 ( 血管収縮薬 ) 頻回使用はしないように指導 血管収縮薬の入った点鼻薬 ( 市販の点鼻薬を含む ) は 頻回に使用するとリバウンド現象により鼻閉が悪化する 重症例に対して 治療初期の 1~2 週間に限って用いる 16
3 妊娠中の治療局所用剤を中心とする 時期 妊娠初期 ( 妊娠 4~7 週 ) 妊娠前期 ( 妊娠 3~4 ヵ月 ) 妊娠中期以後 ( 妊娠 5 ヵ月 ~) 治療 局所温熱療法器を使用 原則として薬剤を投与しない 局所温熱療法器を使用 鼻噴霧薬 ( ケミカルメディエーター遊離抑制薬 抗ヒスタミン薬 ステロイド薬 ) 点眼薬を使用 局所温熱療法器を使用 鼻噴霧薬 ( ケミカルメディエーター遊離抑制薬 抗ヒスタミン薬 ステロイド薬 ) 点眼薬を使用 経口抗アレルギー薬の短期投与 授乳中 同上 17
毎年強い花粉症症状 を示す患者さんには 初期療法 を推奨 Copyright Copyright 2013 2013 CareNet,Inc. All All rights rights reserved. 18
初期療法とは? 花粉飛散前から薬物療法を開始し飛散終了まで継続 ( イメージ ) 発症時期の差 発症後治療 症状初期療法開始花粉飛散開始発症発症症状の差 初期療法 ( 症状発現前から薬物療法開始 ) 日数 発症時期を遅らせ 症状を軽減することが可能 19
TSS初期療法の効果花粉飛散数にかかわらず発症後治療群より症状が軽減 2,000 個 /cm 2 以下 [ 少量 ~ 中等度飛散 ] 2,001~5,000 個 /cm 2 5,001 個 /cm 2 以上 [ 大量飛散 ] [ 超大量飛散 ] 6 5 発症後治療群 (n=238) 6 5 発症後治療群 (n=154) 6 5 発症後治療群 (n=119) 4 4 4 ** 3 2 1 *** *** *** ** * * *** *** 初期治療群 (n=579) 3 2 1 *** *** ***** * *** 初期治療群 (n=310) 3 2 1 *** *** *** 初期治療群 (n=211) 0-3 -2-1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 経過 ( 週 ) TSS: 鼻の 3 症状のスコアの合計 0-3 -2-1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 経過 ( 週 ) 0-3 -2-1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 経過 ( 週 ) Wilcoxon Test ***p<0.001, **:p<0.01, *:p<0.05 初期治療群 : 花粉飛散開始日の 7 日後までに治療開始 治療開始時が軽症以下の患者 発症後治療群 : 飛散開始日以降に治療開始 治療開始時が中等症以上の患者 < 投与薬剤 > 第 2 世代抗ヒスタミン薬 ( オロパタジン ) 藤枝重治ほか. 日鼻誌. 2007; 46: 18-28. 20
初期療法における治療法の選択 < 鼻アレルギー診療ガイドライン > 治療 1 第 2 世代抗ヒスタミン薬 2 遊離抑制薬 3 抗 LTs 薬 4 抗 PGD2 TXA2 薬 5Th2 サイトカイン阻害薬 初期療法 くしゃみ 鼻漏型には 1 2 鼻閉型または鼻閉を主とする充全型には 3 4 5 のいずれか 1 つ アレルゲン免疫療法 抗原除去 回避 初期療法は本格的花粉飛散期の導入のためなので よほど花粉飛散の少ない年以外は重症度に応じて季節中の治療に早めに切り替える 遊離抑制薬 : ケミカルメディエーター遊離抑制薬抗 LTs 薬 : 抗ロイコトリエン薬抗 PGD2 TXA2 薬 : 抗プロスタグランジン D2 トロンボキサン A2 薬 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン- 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 21
初期療法における薬剤選択例年 最も症状が強い時期における病型をもとに選択 くしゃみ 鼻漏型 第 2 世代抗ヒスタミン薬 ケミカルメディエーター遊離抑制薬 Th2サイトカイン阻害薬 鼻閉型 抗ロイコトリエン薬 抗 PGD 2 TXA 2 薬 22
初期療法の開始時期 花粉飛散予測日または症状が少しでも現れた時点 くしゃみ 鼻漏型 第 2 世代抗ヒスタミン薬 ケミカルメディエーター遊離抑制薬 Th2サイトカイン阻害薬 鼻閉型 抗ロイコトリエン薬 抗 PGD 2 TXA 2 薬 花粉飛散予測日の 1~2 週間前 23
鼻噴霧用ステロイド薬花粉飛散増加により症状増悪が認められれば早めに鼻噴霧用ステロイドを追加 くしゃみ 鼻漏型 鼻閉型 第 2 世代抗ヒスタミン薬 ケミカルメディエーター遊離抑制薬 Th2サイトカイン阻害薬 抗ロイコトリエン薬 抗 PGD 2 TXA 2 薬 + 24
薬物治療の最初に患者さんに説明するポイント 初期療法で処方された薬剤をシーズンが終わるまで きちんと服用する 症状が出ない 症状が出たといって服用をやめると かえって強い症状が出る 眠気に注意 眠気やだるさなどがあれば医師に相談 薬剤を服用していても 飛散が多いときは症状が出ることもある 薬剤を継続しても効果が薄れることはない 効果には個人差がある 25
< 参考 > 各薬剤の特徴 Copyright Copyright 2013 2013 CareNet,Inc. All All rights rights reserved. 26
第 2 世代抗ヒスタミン薬 ( 第 1 世代と比較して ) 1 中枢抑制 抗コリン作用などの副作用が少ない 2 全般改善度はよい 3 鼻閉に対する効果がややよい 4 効果の発現が遅いが * 持続が長い 5 連用により改善率が上昇する * 比較的即効性はあるものの 通年性アレルギー性鼻炎での臨床試験で 十分な効果を得るのに 2 週間程度を要する 亢進した過敏性を単独治療で抑制するのに必要な期間と考えられる 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン - 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 27
経口ケミカルメディエーター遊離抑制薬 1 連用により改善率が上昇する 2 効果はマイルドなため臨床効果発現が遅い 3 鼻閉にもやや効果がある 4 副作用が比較的少ない 5 眠気がない 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン - 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 28
抗ロイコトリエン薬 1 鼻粘膜の容積血管拡張や血管透過性を抑制し 鼻閉を改善する 2 鼻閉に対する効果は 第 2 世代抗ヒスタミン薬よりも優れる 3 好酸球浸潤や鼻汁分泌を抑制する 4 くしゃみ 鼻汁にも有効である 5 効果発現は内服開始後 1 週で認められ 連用で改善率が上昇する 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン - 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 29
プロスタグランジン D2 トロンボキサン A2 受容体拮抗薬 1 鼻粘膜血管拡張と血管透過性を抑制し 鼻閉を改善する 2 鼻閉に対する効果は 第 2 世代抗ヒスタミン薬よりも優れる 3 好酸球浸潤や鼻過敏症を抑制する 4 くしゃみ 鼻汁にも有効である 5 効果発現は1 週間で認められ 長期連用で改善率が上昇する 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン - 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 30
鼻噴霧用ステロイド薬 1 効果は強い 2 効果発現は約 1~2 日 3 副作用は少ない 4 鼻アレルギーの 3 症状に等しく効果がある 5 投与部位のみ効果が発現する 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン - 通年性鼻炎と花粉症 -2013 年版 ( 改訂第 7 版 ). ライフ サイエンス ;2013. 31
次回は 期待される 舌下免疫療法 Copyright Copyright 2013 2013 CareNet,Inc. All All rights rights reserved. 32