全国人口センサス で 総人口が 億人を突破し 1940 年代より 1 億人も増加していたことや人口の自然増加率が % 台で推移していたことが判明した 建国後の 3 年回復期 (1949~195 年 ) に国民生活が安定したのを背景に出生率が回復したうえ 医療 衛生環境の改善により死亡率が顕著に低下し

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このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

人口 世帯に関する項目 (1) 人口増加率 0.07% 指標の説明 人口増加率 とは ある期間の始めの時点の人口総数に対する 期間中の人口増加数 ( 自然増減 + 社会増減 ) の割合で 人口の変化量を総合的に表す指標として用いられる 指標の算出根拠 基礎データの資料 人口増加率 = 期間中の人口増

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人 ) 195 年 1955 年 196 年 1965 年 197 年 1975 年 198 年 1985 年 199 年 1995 年 2 年 25 年 21 年 215 年 22 年 225 年 23 年 235 年 24 年 第 1 人口の現状分析 過去から現在に至る人口の推移を把握し その背

2. 繰上げ受給と繰下げ受給 65 歳から支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金は 本人の選択により6~64 歳に受給を開始する 繰上げ受給 と 66 歳以降に受給を開始する 繰下げ受給 が可能である 繰上げ受給 を選択した場合には 繰上げ1カ月につき年金額が.5% 減額される 例えば 支給 開始年齢

資料 7 1 人口動態と子どもの世帯 流山市人口統計資料 (1) 総人口と年少人口の推移流山市の人口は 平成 24 年 4 月 1 日現在 166,924 人で平成 19 年から増加傾向で推移しています 人口増加に伴い 年尐人口 (15 歳未満 ) 及び年尐人口割合も上昇傾向となっています ( 人

問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

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の損失額は前年同期比 86.5% となった 次に企業のコスト上昇ペースが早く 1-2 月の業 界全体の主要業務原価は 9862 億元 前年同期比で 715 億元増加し 収入の 90.9% となっ た (3) 固定資産投資の成長率は大幅に失速した 第 1 四半期 電子情報産業固定資産投資は昨年の高成長

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IT 人材需給に関する調査 ( 概要 ) 平成 31 年 4 月経済産業省情報技術利用促進課 1. 調査の目的 実施体制 未来投資戦略 2017 ( 平成 29 年 6 月 9 日閣議決定 ) に基づき 第四次産業革命下で求められる人材の必要性やミスマッチの状況を明確化するため 経済産業省 厚生労働

合計特殊出生率 : 15 歳から49 歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので 1 人の女性が生涯に生む子どもの数の平均に相当するとされる 図 2-1 総人口及び年少 老年人口割合の推移 図 2-2 合計特殊出生率の推移 -8-

免責条項本資料で提供している情報は ご利用される方のご判断 責任においてご使用下さい ジェトロでは できるだけ正確な情報の提供を心掛けておりますが 本資料で提供した内容に関連して ご利用される方が不利益等を被る事態が生じたとしても ジェトロは一切の責任を負いかねますので ご了承下さい Copyrig

2. 年金額改定の仕組み 年金額はその実質的な価値を維持するため 毎年度 物価や賃金の変動率に応じて改定される 具体的には 既に年金を受給している 既裁定者 は物価変動率に応じて改定され 年金を受給し始める 新規裁定者 は名目手取り賃金変動率に応じて改定される ( 図表 2 上 ) また 現在は 少

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社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

目次はじめに 1. 中国の少子高齢化 人口ボーナス論と中国経済 中国の人口ボーナスの課題 人口ボーナスと地域間経済格差 はじめに , demographic dividend 15 6

はじめに 当財団では これまで 212 年と 15 年に 沖縄県の 5 年先までの将来推計人口を推計してきたが その後 5 年毎に公表される国勢調査および都道府県別生命表の 215 年の統計が公表されたことから同統計のほか 人口動態調査や住民基本台帳人口移動報告などの年次統計なども直近のデータに更新

いずれも 賃金上昇率により保険料負担額や年金給付額を65 歳時点の価格に換算し 年金給付総額を保険料負担総額で除した 給付負担倍率 の試算結果である なお 厚生年金保険料は労使折半であるが 以下では 全ての試算で負担額に事業主負担は含んでいない 図表 年財政検証の経済前提 将来の経済状

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第 2 章近江八幡市を取り巻く状況と今後の課題 1 データからみえる地域福祉の状況 1 人口の状況近江八幡市は 平成 22 年 3 月に旧近江八幡市と旧安土町が合併し 人口 8 万人を超える市となりました 旧市町の人口を合計した数値を見ると 平成 12 年から平成 22 年は横ばいで推移していますが

図表 02 の 01 の 1 世界人口 地域別 年 図表 2-1-1A 世界人口 地域別 年 ( 実数 1000 人 ) 地域 国 世界全体 2,532,229 3,038,413 3,69

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ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に

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2 / 6 不安が生じたため 景気は腰折れをしてしまった 確かに 97 年度は消費増税以外の負担増もあったため 消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない しかし 前回 2014 年の消費税率 3% の引き上げは それだけで8 兆円以上の負担増になり 家計にも相当大きな負担がのしかかった

共働きは 収入源の分散化や世帯所得の増加をもたらすことから 基本的には消費に対する自由度を高めるものと予想される つまり 配偶者収入も含めて 収入が消費に結びつきやすくなる可能性があるということだ しかし 実際には 共働き世帯が増加しているにも拘わらず 家計は消費に対して慎重になっているようだ 世帯

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目次 今後 30 年間は東京の消費人口は減少しない ( 横ばい ) 今後 30 年間の社会的変化 1) 多様性の拡大 ( 哲学的変化 ) 2) 人間の行動の未来予測の精度向上 ( 技術的変化 ) 3) 多品種少量生産 / 分散配送型への産業構造転換 ( 経済的変化 ) 結論 1) 今後 30 年間の

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23 歳までの育児のための短時間勤務制度の制度普及率について 2012 年度実績の 58.4% に対し 2013 年度は 57.7% と普及率は 0.7 ポイント低下し 目標の 65% を達成することができなかった 事業所規模別では 30 人以上規模では8 割を超える措置率となっているものの 5~2

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みずほインサイト アジア 014 年 3 月 7 日 見直しが進む中国の計画出産政策 単独 胎 の全面実施とさらなる緩和の可能性 アジア調査部中国室研究員劉家敏 03-3591-134 jiamin.liu@mizuho-ri.co.jp 中国政府は 1 人っ子 政策を中核とする計画出産政策を見直し 014 年から 夫婦の片方が 1 人っ子なら 人目を産むことを認める 政策 ( 単独 胎 政策 ) を全国展開していくことにした 高齢化の進行抑制 生産年齢人口の減少による経済減速の回避 1 人っ子 家庭の介護負担増や出生性比の歪みを背景とした 結婚難 の緩和が必要だとの認識が強まったためだ 単独 胎 政策の全面実施により年間 100 万人前後の出生人口の増加が見込まれるが 上記課題を解消するほどの効果は持ち得ない 産児制限が今後さらに緩和される可能性は高いだろう 1. はじめに中国政府が人口政策の見直しに着手した 013 年 11 月に開かれた中国共産党第 1 期中央委員会第 3 回全体大会 ( 以下 三中全会 ) で採択された重要文書である 改革の全面的深化における若干の重大な問題に関する中共中央の決定 に 計画出産政策 (Birth Control Policy 中国語名 計劃生育政策 ) という基本国策を堅持しながらも 夫婦の片方が1 人っ子なら 人目を産むことを認める ( 中国語名 単独 胎 1 ) という政策を漸進的に推進していくとの文言が盛り込まれたのである それにより 一部地域での試行にとどまっていた 単独 胎 政策が014 年から全国各地で本格的に実施されていく見込みとなった 今般の人口抑制政策の緩和により 出生率が上昇し 出産ブームが起こる可能性は高いのだろうか 本稿では これまで実施されてきた 1 人っ子 政策を中核とする計画出産政策を理解する上での3 つのポイント すなわち1 1 人っ子 政策導入の経緯 導入後の政策執行の実態 3 政策の見直しが必要な理由を解説した上で 見直しの具体策として 単独 胎 政策の全面実施が選ばれた理由と 単独 胎 政策が出生人口に与える影響などを考える それを踏まえて中国の計画出産政策の行方を展望する. 計画出産政策の変遷とその背景 (1) 1 人っ子 政策導入の経緯 1950 年代初期の中国では 戦後復興に必要な労働力の不足を背景に 人口の多さは重要な財産である という認識のもと 人口の増加促進政策が実施されていた しかし 1953 年に行われた 第 1 回 1

全国人口センサス で 総人口が 億人を突破し 1940 年代より 1 億人も増加していたことや人口の自然増加率が % 台で推移していたことが判明した 建国後の 3 年回復期 (1949~195 年 ) に国民生活が安定したのを背景に出生率が回復したうえ 医療 衛生環境の改善により死亡率が顕著に低下したことが人口の急速な増加の主因であった こうした人口変化を踏まえ 中国政府は人口政策を 増加促進 から 増加抑制 に転換することにし 1953 年には 避妊及び人工流産弁法 という法規を公布し 産児制限を提唱し始めた また 避妊及び中絶の自由選択権の提唱 (1954 年 ) や産児制限を促す 人口制御問題に関する指示 の発表 (1955 年 ) など 人口の 増加抑制 への取り組みが相次いで行われた それにもかかわらず 建国後の第 1 次ベビーブーム (1953~1957 年 ) の到来を避けることができず 総人口は 1957 年末に.5 億人に達した こうしたなか 北京大学学長を務めていた馬寅初教授が 1957 年 7 月に 新人口論 を発表し 経済成長より速いスピードで人口が増加することの弊害を指摘するなど 3 人口の 増加抑制 を強化する必要性を訴えた しかし この主張は 人口論論争 (1957 ~190 年 ) のなかで 大躍進 政策 4 (195~190 年 ) に盾突くものとしてみなされ 劣勢を強いられた 5 人口抑制の重要性が再び強く提起されたのは 第 次ベビーブーム (19~1973 年 ) を経て総人口が 9 億人に迫った 1970 年代である 中国政府は 1973 年以降 出生の 晩 稀 少 1 人っ子だからといって少ないわけではなく 人っ子がちょうどよい 3 人っ子では多すぎる といった方針を掲げ 人口抑制策を相次いで試みた しかし それらの取り組みは 人口抑制効果が弱かったため 総人口は 1979 年に 10 億人に近づいた 中国は そもそも耕地や水などの資源が 1 人当たりで見れば世界的に低い水準にあるため 7 人口の増加による資源 食糧不足が生じやすい その上 当時は 文化大革命 (19~197 年 ) による混乱で経済が疲弊しており 財政的基盤も弱かったため 人口増加を支えられるだけの経済的な余力図表 1 中国の計画出産政策 ~ 政策内容 適用地域 対人口比 (01 年 )~ 分類 政策内容適用地域対人口比 I 1 人っ子 政策 城鎮 ( 都市部 建制鎮 ) 以下の農村部 ( 北京市 上海市 天津市 重慶市 江蘇省 四川省 ) Ⅱ 1.5 人っ子 政策 以下の農村部 ( 河北省 山西省 内モンゴル自治区 遼寧省 吉林省 黒竜江省 浙江省 安徽省 福建省 江西省 山東省 河南省 湖北省 湖南省 広東省 広西チワン族自治区 貴州省 陜西省 甘粛省 ) Ⅲ 人っ子 政策 以下の農村部 ( 海南省 雲南省 青海省 寧夏回族自治区 新疆ウイグル 自治区 ただし 3 人っ子 政策の適用対象者を除く ) 35.9% 5.9% Ⅳ 3 人っ子 政策 以下の農村部住民 ( 青海省 寧夏回族自治区 新疆ウイグル自治区の少数民族 および 海南省 内モンゴル自治区の 人目も女の子である少数民族 ) 国境地帯 人口過疎地域 ( 雲南省 黒竜江省などの一部の少数民族居住区 ) 1.% ( 注 )1. 1 人目が障害のある子 再婚夫婦 などの条件を満たせば 上記規制は緩和される. 1.5 人っ子 政策は 1 人目が女児の場合 人目を産むことを認める 政策を指す 3. 上記の地域別分類以外に夫妻の兄弟構成に基づく 双独 胎 政策 ( 夫婦の双方が1 人っ子なら 人目 を産むことを認める 政策 ) 単独 胎 政策 ( 夫婦の片方が1 人っ子なら 人目を産むことを認める 政策 ) が別途実施されている 前者は 011 年から全国展開となり 後者は 01 年から天津市 上海市 遼寧省 吉林省 江蘇省 福建省 安徽省の農村部で試行されている 4. チベット自治区に住むチベット族については 城鎮 は 人っ子 政策 農村部は対象外とされる ( 資料 ) 人口形勢的変化和人口政策的調整 中国発展出版社 01 年により作成 9.%

が欠けていた さらには 前述の第 次ベビーブームに生まれた約 3 億人が 190 年代半ば以降 結婚 出産期を迎えることになるため 出産抑制を強化しなければ 第 3 次ベビーブームの到来が避けられないという予測もあった 9 これらに危機感を強めた中国政府は 197 年に憲法第 53 条に 計画出産 を盛り込んだ上で 190 年には 000 年末までに総人口を 1 億人以下に抑えること を目標に据え 人口の総量抑制方針を固めた 10 そして この目標を達成するために打ち出されたのが 1 人っ子 政策である 1 人っ子 政策とは 1 組の夫婦が1 人しか子供を産まないこと を提唱する計画出産政策である 中国政府は この政策の実効性を高めるために 191 年には国家計画生育委員会 ( 略称 計生委 11 ) を設置し 19 年に開かれた中国共産党第 1 回党大会は さらに 1 人っ子 政策を中核とする計画出産政策を基本国策と位置付けた 1 () 1 人っ子 政策は全国一律に実施できなかったものの 計画出産政策の中核にしかし 1 人っ子 政策は 全国一律に実施することができず 地域 対象別の政策調整を余儀なくされた その理由は 1 当時の農村部では 農民を対象とした社会保障制度が未整備で 息子夫婦と同居することが 親が安心して老後生活を送る前提となっていたため 農民に男児の出生を強く望む傾向があったこと 自然環境の厳しい地域では 人口の過疎化が進んでおり 経済発展を促すために労働力が必要だとの声があったこと 3 少数民族への配慮が欠かせなかったこと などにある 主要な調整としては 1190 年代半ば以降の農村地域や少数民族を対象とした規制緩和 ( 1 人っ子 政策から 1.5 人っ子 政策 (1 人目が女児の場合 人目を産むことを認める政策 ) や 人っ子 政策 3 人っ子 政策への緩和 ) 13 195 年から 011 年にかけての 双独 胎 政策 ( 夫婦の双方が1 人っ子なら 人目を産むことを認める政策 ) の実施 14 が挙げられる 図表 1990 年代以降低水準が続く中国の合計特殊出生率 (%) 7 5 193 年 :7.50 1 人っ子 政策の実施 4 3 191 年 :.3 人口置換水準 1 0 53 57 1 5 9 73 77 1 5 9 93 97 01 05 09 13 年 1.5 ( 注 )1. 合計特殊出生率 (Total Fertility Rate) とは, 1 人の女性が一生の間に生むとされる平均の子供数であり 15~49 歳の女性の年齢別出生率の総和によって求められる. 人口置換水準 (Replacement Level Fertility) は 総人口が一定に保たれる合計特殊出生率を指し 一般に TFR NRR( ( 女性の年齢別生残率 ) ( 女性の年齢別女児出生率 )) で算出される ( 世界平均は約.1) 3.00 年以降は 計生委 ( 現 衛計委 ) が発表した数字 ( 資料 ) 路遇等 新中国人口六十年 中国人口出版社 009 年 田雪原 中国人口政策 0 年 社会科学文献出版社 009 年 加藤久和 人口経済学入門 日本評論社 001 年により作成 3

こうした政策調整の結果 1 人っ子 政策が厳格に実施されている地域の対総人口比は 01 年時点で 35.9% に止まっている ( 前々頁図表 1) この割合を理由に 中国国内では 計画出産政策はもはや 1 人っ子 政策を主体とする政策ではなくなったと主張する学者もいる しかし 1.5 人っ子 政策は 1 人目が女児の場合に限って 人目を産むことを認める ものであり 自分の意思で自由に 人目を産めるわけではないため 1 人っ子 政策の変種であると言える 1 人っ子 政策と 1.5 人っ子 政策の適用地域の対人口比を足した 自分の意思で 人以上の子を産めない 人口割合が全体の.% と高いことから これまで実施されてきた計画出産政策は 1 人っ子 政策を中核とする政策であるといってよいだろう (3) 1 人っ子 政策実施の影響 1 人っ子 政策が 30 年強にわたり実施されてきた結果 中国では 出生率の低下を通じて人口の増勢が確実に弱まった 合計特殊出生率 (TFR) は 193 年時点で 7.5 だったが 1 人っ子 政策の実施以降 その値は低水準となり 1991 年以降は 人口が減りも増えもしない人口置換水準 (.1) を下回る状態が続いている 15 ( 前頁図表 ) それに伴い 人口の自然増加率が 1990~000 年平均の 1.07% から 000~010 年平均の 0.5 へと低下し 人口の増勢が半減したといえる その結果 1 億人の人口増加に何年かかるか を見ると 億人から 9 億人へは 5 年 (199~1974 年 ) だったが 直近の 1 億人から 13 億人へは 10 年 (1995~005 年 ) を要している ( 図表 3) 13 億人から 14 億人への増加にかかる時間はさらに 14 年 に延びると見込まれていた 政策目標との兼ね合いでみても 第 11 次五カ年計画 (00~010 年 ) の人口目標は 13 億,000 万人以下 と設定されたが 010 年末の実際の人口はそれよりも約,000 万人少ない 13 億 3,97 万人となった このように人口抑制効果は見られたものの 政策の実施に伴って人口の年齢別構成や出生性比の歪みが強まり それが様々な経済 社会問題を引き起こすことが懸念されている その 1 つが少子高齢化の進行加速である 1 人っ子 政策の下で 年少人口 (0~14 歳 ) は 19 図表 3 人口抑制効果が大きい計画出産政策 1 ( 億人 %) 1 人っ子 政策の実施予測値 14 14 13 13. 1 1 11 10 10 9 総人口 7 14 年 5 年 7 年 10 年 4 人口の自然増加率 0-1954 年 4 9 74 1 95 05 13 019 年 ( 注 )190 年の人口の自然増加率が 0.457% となった背後には食糧不足による死亡者数の急増がある ( 資料 )CEIC DATA 田雪原 中国人口政策 0 年 社会科学文献出版社 009 年により作成 4

年の 3.4 億人から 01 年には. 億人に減少し 総人口に占める割合も 33.% から 1.5% に半減している それに対し 老年人口 (5 歳以上 ) は 0.5 億人から 1.3 億人に増え 総人口に占める割合も 4.9% から 9.4% へと上昇している 一般に総人口に占める 5 歳以上の人口割合が 7% を超えるか否かが 高齢化社会 になったか否かを判断する 1 つの基準とされているが 中国は 1 人当たり GDP が,747 ドル (013 年 ) と高所得国レベルに達していないのに すでに 高齢化社会 に突入している ( 中国ではこれを 未富先老 という ) 老年人口の対年少人口比率である 老年化指数 をみても 19 年の 14.% から 01 年には 57.0% へと上昇している 少子高齢化の進行加速により 生産年齢人口が減少に転じ それが経済成長の減速を招くとの懸念が強まっている 1 生産年齢人口は一般に 15~4 歳 と定義されることが多いが 中国の場合 法定定年年齢が男性 0 歳 女性 50~55 歳であることから 生産年齢人口を 15~59 歳 と定義することが多い 15~4 歳 基準の生産年齢人口は 01 年で 10.0 億人であり 増加基調にあるが 15 ~59 歳 基準で見ると 同年には前年より 345 万人減少した (9.4 億人 ) 17 人口構成上 経済成長が促されやすい時期は 人口ボーナス期 と呼ばれている 人口ボーナス値 1 が を下回ると 人口ボーナス期 が終了したと判断される 15~59 歳 基準で算出した 人口ボーナス値 は 011 年の.31 をピークに 01 年には.5 に低下しており ( 図表 4) 少子高齢化の進行を背景に 計画出産政策の見直しが行われなければ 中国の 人口ボーナス期 は 00 年頃に終了すると指摘されてきた 19 ( なお 15~4 歳 基準で見ても 035 年頃には 人口ボーナス期 が終了すると予測されてきた ) 0 1 人っ子 政策を主体とする計画出産政策は 様々な社会問題を生み出してもいる 1 人っ子 政策が実施された結果 都市部では 1 人っ子 家庭 ( 中国語では 独生子女家庭 ) が主な世帯形態となってきている しかし 公的な高齢者介護サービスの整備が遅れているため 1 人っ子 同図表 4 中国の 人口ボーナス値 の推移 ( 人口ボーナス値 ) 3.5 3.0 人口ボーナス値 (A).93.7.5.0 1.5 1.0 0.5.01 人口ボーナス値 (B).31.5 0.0 90 91 9 93 94 95 9 97 9 99 00 01 0 03 04 05 0 07 0 09 10 111 年 ( 注 )1. 人口ボーナス値 = 生産年齢人口 ( 年少人口 + 老年人口 ) その値が 以上である時期は 人口ボーナス期 と呼ばれる. 人口ボーナス値 (A) は生産年齢人口を 15~4 歳 基準で 人口ボーナス値 (B) は 15~59 歳 基準で算出 ( 資料 )CEIC DATA により作成 5

士が結婚した場合 夫婦 人で高齢になった双方の親の介護を担わなければならず 非 1 人っ子 家庭より 金銭的 精神的な負担が大きいのが現状である また 1 人っ子 に先立たれた家庭 ( 中国語では 失独家庭 1 ) では残された親が孤独な状況に追い込まれ 老後生活が苦しくなるのも大きな社会問題となりつつある さらに 1 人っ子 政策が実施された結果 出生性比 ( 女児を 100 とした場合の男児の数 ) が 19 年の 107 から 010 年には 11 に上昇し 正常範囲 (105±) を大きく上回っている 農村部では 男児を跡継ぎや労働力として求める傾向が強いため 産み分けで男児の出産を図ったり 女児であると判明した場合 人工中絶を行ったりするケースが多いからだ こうした状態が続く中で 将来結婚できない男性が急増するのではないかとの懸念が高まっている また 計画出産政策の縛りがあるなか 男児が生まれなかった家庭の強い養子需要を背景に 男児誘拐事件が多発している どれだけの男児が誘拐されたかについては 明らかになっていないが 011 年に救出された児童 ( そのほとんどが男児 ) は,0 人に上っている 3 3. 全面実施に至った 単独 胎 政策これらの経済 社会問題が強く認識されるようになり 1 人っ子 政策の見直し気運が高まった 特に011 年の 第 回全国人口センサス (010 年 ) の結果発表を契機に 人口変化の実態がより確実に把握されるようになったことや 前述のように 15~59 歳 基準で捉えた生産年齢人口が01 年に初めて減少したことなどを背景に 中国国内では 1 人っ子 政策を堅持する必要性に疑問を呈する学者が急増した 様々な推計結果を受けて中国政府は 013 年 11 月に開かれた 三中全会 で 単独 胎 の全面実施に舵を切り 014 年からその政策を漸進的に実施する方針を示した 政策実施のタイミングの決定は 各省 ( 直轄市 自治区 ) 政府が主導権を握る状態にあるが 4 014 年 3 月 7 日現在 11 省 ( 直轄市 自治区 ) で 単独 胎 政策が実施されている 5 (1) 単独 胎 政策が選ばれた理由 1 人っ子 政策がもたらした前述の経済 社会問題を解決するのであれば 単独 胎 政策にと図表 5 中国の年間出生人口の推移 ( 万人 ) 3,500 3,000 193 年 :,919 万人 197 年 :,50 万人,500,000 1,500 第 次ベビーブーム 第 3 次ベビーブーム 013 年 :1,3 万人 1,000 第 1 次ベビーブーム 500 0 54 5 70 74 7 90 94 9 0 0 10 013 年 ( 注 )(n) 年の年間出生人口 =(n-1) 年末の総人口 (n) 年の出生率 (013 年の出生率は 1.1%) ( 資料 )CEIC DATA により作成

どまらず より大胆な規制緩和も選択肢として考えられる 実際 単独 胎 ではなく 人っ子 政策の全面実施を提言する声も出ていた しかし 中国政府は 単独 胎 政策の全面実施にまず着手し 漸進的に規制緩和を進めていく道を選んだ その理由として 1 第 3 次ベビーブーマー (19 ~1993 年生まれ 前頁図表 5) が結婚 出産期を迎えており 人っ子 政策を全面実施した場合 年間 1,000 万人が生まれる可能性が高いこと 7 既存の教育 医療施設では出生人口の急増に対応できるだけのキャパシティがないこと 3 政策の見直しに当たって国家衛生 計画生育委員会とその下級行政組織の権限を再調整する必要があるが その調整に時間がかかること などが理由として挙げられる () 単独 胎 政策の全国展開の影響では 単独 胎 政策の全面実施により出生人口がどのようなペースで増えるかを予測してみよう 中国では 生育年齢女性 は 一般に 15~49 歳 と定義されているが むろんこれらの女性のすべてが政策変更により第 子を生むわけではない 第 子出産の可能性が高そうなのは 1 法的に最低結婚可能年齢とされる0 歳以上で 1 人っ子 政策実施の初年度 (191 年 ) 以降に生まれており (01 年現在 31 歳以下 ) かつ 3 1 人っ子 政策が徹底化している 城鎮 ( 都市と 建制鎮 ) に常住する女性である つまり 01 年時点で 城鎮常住の0~31 歳の女性 9 ということになる ただし 統計的な制約があるため 0~9 歳の女性で見ると その人口は,1 万人である それに結婚率 (4~79%) 30 非不妊不育症率(5%) 31 1 人っ子 世帯のうち第 子の出産意欲を持つ世帯の比率 (50%) 3 を掛けると 1,351~,3 万人 (,1 万 (4~79%) 5% 50%) となる この0 代の女性人数が 第 回全国人口センサス (010 年 ) から得られた年齢別出生率(%) 33 に基づき第 子を出産すると仮定すると 単独 胎 政策による第 子の年間出生人口は1~133 万人となる これは 013 年の出生人口 (1,3 万人 ) の5~% に相当する規模である 概ね年間では100 万図表 中国の 050 年までの 総人口 生産年齢人口 ( 億人 ) 01 年 :13.7 億人 1 013 年 :13.1 億人 14 総人口 050 年 :11.9 億人 1 013 年 :9.94 億人 10 030 年 :9.5 億人 050 年 :7.37 億人 4 生産年齢人口 0 013 00 07 034 041 04 050 年 ( 注 )1.013 年の 総人口 は実績値.013 年以降の 生産年齢人口 014 年以降の 総人口 は 中国社会科学院が 00 年までの合計特殊出生率を 1.44 01~050 年の合計特殊出生率を 1.3 と仮定し 推計した 低位予測値 3. 生産年齢人口は 15~4 歳 基準 ( 資料 ) 田雪原 人口老齢化与 中等収入陥阱 社会科学文献出版社 013 年により作成 7

人前後の育児関連商品 サービスの需要増が見込めるだろう 単独 胎 政策が生産年齢人口に与える影響についても簡単な試算をしてみよう 単独 胎 政策の全面実施により生まれた子供が生産年齢人口になるのは早くても030 年以降である 中国社会科学院が発表した ( 政策の見直しによる出産増加が織り込まれていない ) 低位予測値 では 030 年の生産年齢人口は 15~4 歳 基準で9.5 億人であるが ( 前頁図表 ) 単独 胎 政策の全面実施により 上述のように大目に見積もって毎年 133 万人が生まれると仮定すれば 同時点の生産年齢人口は 9.53 億人となり 社会科学院の予測値より約 0.1% 増加することになる 4. さらなる緩和が見込まれる計画出産政策ただし この程度の効果では 生産年齢人口の減少傾向に歯止めはかからず 1 人っ子 政策の後遺症とされてきた経済 社会問題を完全に解決することはできないという見方が強い こうしたことから 次の緩和策として 夫婦の双方が1 人っ子かどうかにかかわらず すべての夫婦に子供を 人まで生むこと を容認する政策 ( 人っ子 政策 ) の全面実施が学者などから提起されている そのタイミングについて 学者レベルでは 015 年から との提言がある さらには 00 年に出産自由化を行うべきだ 0 年以降 出産奨励 子育て支援策により人口の増加を促す取り組みが必要だ といった提案も 政府系シンクタンクから出されている 34 こうした助言を受けて中国政府は 医療 教育施設など社会インフラの整備状況を睨みつつも さらなる規制緩和を進めていく可能性が高いといえそうだ 1 014 年に入り 中国では 単独 胎 ではなく 単独両孩 と言い換えられるようになっている 胎 は出産回数を意味するが 1 回目の出産で双子以上を産んだ家庭の場合には 夫婦のどちらかが 1 人っ子 であっても 度目の出産 は認められない そこで 誤解を防ぎ 人目の子供を産んでもよい というニュアンスを強調するために 胎 の代わりに子供を意味する 孩 を使い 単独両孩 というようになっている ただし 一般に日本では 従来の 単独 胎 が引き続き使われているため 本稿では 単独 胎 という表現を用いている この時期に中国は従来の 高出生率 高死亡率 低人口増加率 から 高出生率 低死亡率 高人口増加率 に転換したと言える ( 田雪原 中国人口政策 0 年 社会科学文献出版社 009 年 ) 3 馬寅初教授は 新人口論 で 人口過剰は 資本蓄積 工業化 技術革新 国民生活などへのマイナスの影響が避けられない と主張した ( 田雪原 中国人口政策 0 年 社会科学文献出版社 009 年 ) 4 大躍進 政策とは 数年間で経済的に米国 英国を追い越すことを狙いとした 労働力の大量投入などを通じた農業 工業の大増産政策を指す 5 若林敬子 中国の人口政策をめぐる諸問題 ( 人口問題研究 第 157 号 191 年 1 月 ) 晩 は 結婚年齢を男性 5 歳以上 女性 3 歳以上に遅らせること 女性の出産年齢を 4 歳以上に遅らせること 稀 は出産間隔を 3 年以上空けること 少 は子供を 人とすることを指す 7 なお 現在中国は水資源が最も乏しい 13 カ国の 1 つであり 1 人当たり耕地も世界平均の約半分である ( 中国人均水資源下降被列入 13 個最貧水国家 ( 中国新聞網 014 年 1 月 日 )) 文化大革命 は 封建的文化 資本主義文化を批判し 新しく社会主義文化を創生することを目的として行われた民衆運動である 9 田雪原 中国人口政策 0 年 社会科学文献出版社 009 年 10 華国鋒 在第五届全国人民代表大会第三次会議上講話 190 年 9 月 7 日 11 同委員会は 013 年 3 月に衛生部と合併し 国家衛生 計画生育委員会 ( 略称 衛計委 ) となった

1 なお 政策策定時 1 人っ子 政策は 30 年 を適用期間とする 一世代の政策 と定められていた ( 中国共産党中央委員会 関于控制我国人口増長問題致全体共産党員共青団員的公開信 190 年 9 月 5 日 ) 13 国家計画生育委員会 関于計画生育工作情況的匯報 194 年 4 月 13 日 14 双独 胎 政策は 195 年に浙江省を皮切りに導入され始め 011 年に全国適用が完了した ( 双独二胎 己無死角 ( 財経 011 年 1 月 5 日 )) 15 なお 011 年の合計特殊出生率について 計生委 ( 現 衛計委 ) は 1.5~1. であると主張しているが 学者の間ではそれより低いのではないかとの指摘もある ( 衛計委解釈為何在現段階啓動実施単独両孩政策 ( 中国新聞網 013 年 11 月 1 日 )) 1 中国の潜在成長率は 生産年齢人口の伸びの鈍化などにより 第 11 次五カ年計画期 (00~010 年 ) の年平均 10.5% から第 1 次五カ年計画期 (011~015 年 ) には同 7.% となり 第 13 次五カ年計画期 (01~00 年 ) ではさらに同.1% に低下するとの試算もある ( 労働年齢人口第一次出現絶対下降人口紅利拐点己現 ( 人民日報 013 年 1 月 日 )) 17 中国国内には 15~59 歳 基準の生産年齢人口が 010 年から 00 年までに,900 万人減少するとの予測もある ( 労働年齢人口第一次出現絶対下降人口紅利拐点己現 ( 人民日報 013 年 1 月 日 )) 1 人口ボーナス値 は 従属人口( 年少人口 + 老年人口 ) に対する生産年齢人口の比率である その値が 以上の状態を 人口ボーナス期 と呼ぶ 人口ボーナス期 は 現役労働世代に対して 高齢者や子供が相対的に少ない状態にあるため 高齢者や子供の扶養負担が減り 結果として その分 現役労働世代は貯蓄や消費を増やすことが可能になる 貯蓄は投資に回されるし 消費は経済活動を活性化させるため 経済成長が促されやすい ( 加藤久和 人口経済学入門 日本評論社 001 年 ) 19 なお 女性の法定定年年齢の引き上げや 50 歳になる前に仕事を辞めて故郷に帰ることが多い農民工の都市での就業期間の延長などの対策を取り 生産年齢人口の増加や労働参加率の引き上げを図ることで 労働力人口の減少を抑えることは可能である ( 婦聯界政協委員建議延遅女性退休釈放人口紅利 ( 人民政協 013 年 3 月 日 ) など )) 0 中国社会科学院が発表した低位予測値に基づく試算 ( 1 世紀中国人口発展戦略研究 社会科学文献出版社 007 年 ) 1 失独家庭 は年間 7. 万世帯増のスピードで増えており 近い将来には 1,000 万世帯に達する見通しである ( 失独家庭的現状調査 ( 江蘇新聞広播 013 年 1 月 3 日 )) 男児を求める傾向の強い農村部のほうが都市部よりも出生性比はさらに高いと見られる 一部の農村地域では 010 年の第 1 子の出生性比が 151 と高いだけでなく 第 子の出生性比は 39 に達したとの報道もある ( 謁制出生人口性別比失衡須国家強力干予 ( 瞭望新聞週刊 011 年 5 月 9 日 )) 3 011 年全国公安機関解救被拐児童,0 人 ( 中国広播網 01 年 3 月 10 日 ) 4 具体的には 各省 ( 直轄市 自治区 ) の地方人民代表大会常務委員会の承認が必要である 5 具体的には 北京市 上海市 天津市 浙江省 安徽省 江西省 陜西省 広西チワン族自治区 四川省 重慶市 青海省 中国発展研究基金会 中国発展報告 011/01~ 人口形勢的変化和人口政策的調整 中国発展出版社 01 年 7 上海社会科学院城市与人口発展研究所でのヒアリング (013 年 10 月 3 日 ) 建制鎮 は 農村地域の中で工商業が一定程度発達し 非農業人口が比較的集中している地域や行政の中心地となっている末端の行政区画である ( 劉家敏 中国が目指す 都市化 とは何か~ 新型城鎮化 に政府が込めた思いと今後の課題 ( みずほ総合研究所 みずほインサイト 013 年 9 月 30 日 )) 9 図表 1 で示したように 1 人っ子 政策は 城鎮 が主たる対象で 農村地域の多くでは 1 人っ子 政策がすでに緩和されており 1 人っ子 政策の適用対象とされる農村地域であっても 01 年の時点でその一部ですでに 単独 胎 政策が試行されているため 対象外とした 30 4% は 010 年時点で 0~9 歳の 城鎮 常住女性に占める既婚者の割合 79% は 15 歳以上の 城鎮 常住女性に占める既婚者の割合 01 年時点で 0~9 歳の 城鎮 常住女性の結婚率は この範囲内に落ちると仮定した ( 中国 010 年人口普査資料 中国統計出版社 01 年 ) 31 夫婦のうち 15% が不妊不育症との報道を採用 ( 中国不孕不育率達 15% 精子経済市場紅火 ( 広州日報 01 年 10 月 31 日 )) 3 夫婦のうち 第 子が欲しいとの回答率 ( 半数以上受訪者愿意生二孩財力精力成絆脚石 ( 人民日報 014 年 月 14 日 )) 33 010 年時点の 0~9 歳の 城鎮 常住女性の出生率 ( 中国 010 年人口普査資料 中国統計出版社 01 年 ) 34 中国発展研究基金会 中国発展報告 011/01~ 人口形勢的変化和人口政策的調整 中国発展出版社 01 年 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり 商品の勧誘を目的としたものではありません 本資料は 当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが その正確性 確実性を保証するものではありません また 本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります 9