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第 7 章氾濫計算モデルの構築及び計算の実施 7. 氾濫計算モデルの構築及び計算の実施方針について 7. 平面 次元不定流モデルの構築及び計算の実施 7.. 基本構成 7.. 河道の洪水流下のモデル化 7..3 氾濫原のモデル化 7..4 氾濫計算の実施 7.3 次元不等流モデルの構築及び計算の実施 7.3. 基本構成 7.3. 河道及び氾濫原のモデル化 7.3.3 氾濫計算の実施 7.4 池モデルの構築及び計算の実施 7.4. 基本構成 7.4. 河道の洪水流下のモデル化 7.4.3 氾濫原のモデル化 7.4.4 氾濫計算の実施 5

第 7 章 氾濫計算モデルの構築及び計算の実施 7. 氾濫計算モデルの構築及び計算の実施方針について 平面 次元不定流モデル 氾濫解析手法は何か 池モデル 次元不等流モデル 7. 平面 次元不定流モデルの構築及び計算の実施 7.3 次元不等流モデルの構築及び計算の実施 7.4 池モデルの構築及び計算の実施 図 7. 氾濫計算モデルの構築及び計算の実施 に関するフロー 53

7. 7. 氾濫計算モデルの構築及び計算の実施 氾濫計算モデルの構築及び計算の実施方針について 氾濫解析手法に応じ氾濫計算モデルを構築する また氾濫計算を実施するケースとしては 解析の条件に応じ想定される最大の浸水状況を再現するように設定する 解説 第 3 章前提条件の設定及び解析方針の決定 で定めた氾濫解析手法に応じ この後に記載する各項を参考に氾濫計算 ( シミュレーション ) モデルを構築する また 氾濫解析にあたっては 想定される最大の浸水状況を再現するために 解析条件に応じた計算ケースを設定し これを実施するものとする 例えば 複数の破堤箇所が存在する場合では 各箇所が単独で破堤するケースを想定し 破堤個所の数だけ実施することになる 参考 : 浸水想定区域図作成マニュアル (pp.5) メッシュによる二次元不定流計算を標準とする 参考 : 中小河川浸水想定区域図作成の手引き (pp.3~6) 氾濫原の地形の特徴を分析し 氾濫ブロック毎に氾濫形態を 流下型か貯留型 に類型化し モデルを選定する 54

7. 7. 氾濫計算モデルの構築及び計算の実施 平面 次元不定流モデルの構築及び計算の実施 7.. 基本構成 氾濫解析のための平面 次元不定流モデルは 河道内の洪水流下を再現する過程 河道から氾濫原への氾濫水の流出を再現する過程 3 氾濫水の氾濫原での挙動を再現する過程に分類される 解説 氾濫解析のための平面 次元不定流モデルは 河道内の洪水流下を再現する過程 河道から氾濫原への氾濫水の流出を再現する過程 3 氾濫水の氾濫原での挙動を再現する過程の 3 過程に分類される 一般的に 河道内の洪水流下を再現する過程では 次元不定流モデル 河道から氾濫原への氾濫水の流出 ( 氾濫流量 ) を再現する過程では 第 6 章氾濫流量の算定 で述べた横越流式 3 氾濫水の氾濫原での拡散や流下を再現する過程では平面 次元不定流モデルが使用される この概念図を図 7. に示す 特に 3 の平面 次元不定流モデルでは 氾濫原に対しメッシュ分割を行い 各メッシュで地盤高及び粗度係数を設定し メッシュ単位での氾濫水の運動を連続の式と運動方程式 ( 次頁参照 ) で再現する さらに この過程では 氾濫原内に存在する道路や鉄道などの連続盛土構造物やポンプ 樋門 水路などの排水施設もモデル化し それらの影響も反映する必要がある 河道内の洪水流下を 次元不定流モデルにより再現する (7.. 参照 ) 盛土 氾濫原 3 氾濫原での氾濫水の挙動を平面 次元不定流モデルにより再現 連続盛土や排水施設の影響も反映する (7..3 参照 ) 河道 H-Q 式により河道からの氾濫流量を算定 ( 第 6 章参照 ) 図 7. 平面 次元不定流モデルの概念図 55

参考 ; 平面 次元不定流モデルにおける基礎式 連続式 H t M N + + = 0 x y x 方向の運動方程式 M t ( MU) ( MV ) + + x y H = gh x τ bx ρ y 方向の運動方程式 N t ( NU ) ( NV ) + + x y H = gh y τ by ρ ここに h : 水深, H : 水位, g : 重力加速度, ρ : 水の密度, M( = Uh) : x 方向の流量フラックス, N( = Vh) : y 方向の流量フラックス,U : x 方向の水深平均流速,V : y 方向の水深平均流速, τ τ bx, by : x, y 方向に作用する底面摩擦力で マニング則を適用すると以下のようになる τ bx gn = ρ h / 3 U U + V τ by gn = ρ h / 3 V U + V ここに n : マニングの粗度係数である 56

7.. 河道の洪水流下のモデル化 既往の測量成果や航空測量成果をもとに現況河道を 次元不定流モデルとして再現する 解説 破堤地点からの氾濫流を算定するために 破堤地点における洪水流量 次元を算定する必要がある そのため 既往の測量成果や航空測量成果をもとに現況河道を 次元不定流モデル化する モデル化に際しては 第 6 章氾濫流量の算定 で使用した不等流計算の河道断面や粗度係数 その他の条件とできるだけ整合を図るものとする このようにして構築した 次元不定流モデルに 第 5 章氾濫外力の設定 で設定した洪水流量と 下流端水位 ( 河口潮位または適切と思われる水位 ) を与え河道内の洪水流量の伝播を再現する また 破堤氾濫流量は横流出として扱う なお 氾濫流量の算定においては このモデルから算定される水位ではなく 河道計画との整合を図るため 該当地点の流量を 6. で説明した H-Q 式で変換して求めた河道水位を使用する 参考 : 浸水想定区域図作成マニュアル (pp.) 氾濫流量が河川水位のみによる決まる場合を除き 河道不定流計算と氾濫シミュレーションを一体的に実行する必要がある 参考 : 中小河川浸水想定区域図作成の手引き記述なし 57

7..3 氾濫原のモデル化 ) 氾濫原のメッシュ分割及び地盤高の設定地盤高データは 50m メッシュ 氾濫計算は 50m メッシュを基本とするが 河川や氾濫源の規模等により必要な精度が得られない場合は メッシュを小さくする 解説 氾濫原を 3 次メッシュ を基準にメッシュ分割する 次に 4.. で述べた電子化した地盤高データをもとに 各メッシュの地盤高を設定する 本県が管理している二級河川及び一級河川の指定区間は 河川の規模が小さくそれに比例して氾濫原も小さい 大半が氾濫原の幅が 50m 未満の区間であり 50m 未満の区間も存在する したがって 氾濫計算において 50m メッシュといった大きな単位では計算値に大きな誤差が生じ 浸水想定区域図が地域住民の感覚と乖離したものになりかねない したがって 氾濫計算メッシュを 50m メッシュとするなどの対応が必要である 3 次メッシュ ( 第 3 次地域区画コード ) 数値地図情報等の作成されている 標準地域メッシュシステム で /5,000 地形図の各図画を 0 等分して作られた 00 個の図画で, 図画は 経度差 45 緯度差 30 面積約 km である 各図画には 8 桁のコードが付与されている 平面直角座標系では東西方向が 58.4m 南北方向が 46.m である 0 3 4 5 6 7 8 9 3 4 5 6 7 8 9 /5,000 地形図を 0 等分 約 km km 図 7.3. 3 次メッシュ概念図 参考 : 浸水想定区域図作成マニュアル (pp.5,5) 氾濫計算メッシュは 50m メッシュを基本とするが 必要な精度が得られない場合は 00m メッシュを採用する等 メッシュを小さくする 地盤高データは 50m メッシュとする 参考 : 中小河川浸水想定区域図作成の手引き記述なし 58

) 粗度係数の設定土地利用率 建物占有率 及び水深の関係より粗度係数を設定する 解説 粗度係数については 氾濫シミュレーションマニュアル ( 案 ) に記載されている土地利用率 建物占有率 及び水深の関係より設定する以下の方法を用いる これは 建物以外の底面粗度係数を土地利用別面積の加重平均により求め さらに建物占有率をもとにした建物密度によって合成等価粗度係数を算定したものである ここで 農地とは水田 畑 果樹園などで 道路には沿線の歩道面積も含める 荒地 芝地 湿地などはその他の土地利用と見なす 底面粗度係数 n 0 n A = + n A + n A + A + A ここで A : 農地面積 = 0. 060 A : その他面積 n 3 = 0. 050 3 3 A 3 n 建物密度を考慮した粗度係数 n = n 0 ここで θ : 建物占有率 θ + 0.00* * h 00 θ 3 A : 道路面積 n = 0. 047 4/3 h : メッシュの水深 ただし 場合によっては 過去の洪水実績などから推算した粗度係数を使用することもできる 参考 : 浸水想定区域図作成マニュアル (pp.4) 流域の土地利用に応じて決定 氾濫シミュレーションマニュアル ( 案 ) に記載されている粗度を水深と建物占有率との関数で表す方法も参考とする 参考 : 中小河川浸水想定区域図作成の手引き記述なし 59

3) 連続盛土構造物及び排水施設の設定盛土は比高 0.5m 以上をモデル化する 航空測量成果 地形図 道路台帳を参考にする また ポンプ 樋門などの排水施設もモデル化する 解説 計算の対象とする盛土盛土は氾濫水の伝播に大きな影響を及ぼすので 多くを計算条件として取り込む方がよいが モデル化 ( 盛土データの抽出 ) に時間を要するので 盛土は 平均地盤高からの比高が 0.5m 以上のもの を原則とする また 盛土における越流の算定式は 表 7. に示す 堤防二線堤 ( 霞堤を含む ) 鉄道主要な道路その他の盛土 盛土構造物 盛土構造物 高さ :0.5m 以上 平均地盤高 図 7.4 盛土対象構造物 計算の対象とする排水施設ポンプ... 実際のポンプの稼働状況が分からない場合は 仮定する ( 例えば浸水を開始したら 最大排水量で排水するというように仮定する ) 樋門... 土木研究所で提案された表 7. の計算式を用いる カルバート... 樋門と同じ計算式を用いる 水路... 時間的な流量変化が少ない場合は 等流モデル又は不等流モデルを用いるが 水路内の氾濫水の挙動を忠実に再現するには 慣性項を除いた表 7.3 に示す不定流モデルにより計算する 60

表 7. 盛土の算定式 No. 水位の関係 計算式 完全越流 ( / h< / 3 ) 潜り越流 ( h / 3 ) h の時 Q 0.35 h gh B / = h の時 Q =.9 h g( h h ) B 0 表 7. 樋門 カルバートの算定式 No. 水位の関係計算式流量係数 C h H 潜り流出 : Q = CBH g( h h ) 0. 75 h 3 h H 3 h < H 3 H 中間流出 : Q = CBH gh 0. 5 自由流出 : Q = CBh g( h ) h h 3 ただし の場合は h h = h に置き換える 3 0.79 No. 表 7.3 水路の算定式計算式 V g t d H = l d d n V h d V 4 / 3 dm d d : 水路の水理量を表す添字 h : 上下流の平均水深 dm l : 水路長 参考 : 浸水想定区域図作成マニュアル (pp.3~4) 盛土は平均地盤高からの比高が 50cm 以上のものは モデルに組み込むものとする 具体的には堤防 二線堤 ( 霞堤を含む ) 鉄道 主要な道路やその他の盛土等である 盛土は氾濫シミュレーションの計算メッシュ上では 盛土の横切るメッシュ境界に配置する よって 盛土は平面的に見て階段状に配置されることになる なお 盛土の中に大規模なボックスカルバート等の氾濫水を流下させる構造物が存在する場合は オリフィスとして扱うなど氾濫計算において考慮する 水路は中小河川の堤防高を越える規模の氾濫となるような場合は 水路満杯 ( 連続盛土と同じ扱い ) として取り扱う 参考 : 中小河川浸水想定区域図作成の手引き記述なし 6

7..4 氾濫計算の実施 想定される最大の浸水状況を再現するために 破堤などの氾濫の恐れのある箇所数やその他各種の条件に応じ氾濫計算を実施する 解説 浸水想定区域図作成には 想定される最大の浸水状況を再現するために 多数の氾濫想定箇箇所を設定する必要があり 平面 次元不定流モデルでは その氾濫想定箇所毎に計算を実施する ( 例 : 破堤箇所が 6 箇所の場合 氾濫計算は 6 回行う ) また 本川と支川で対象とする洪水流量波形が異なる場合も 条件の数に応じて氾濫解析を実施する なお 氾濫想定箇所より上流の溢水による氾濫や堤内地から河道への流量の氾濫戻しは考慮する 破堤など氾濫の恐れがある地点毎に氾濫解析を行う ただし 溢水による氾濫や堤内地から河道への流量の氾濫戻しは考慮する 凡例 : 氾濫想定箇所 図 7.5 氾濫解析の計算ケース 参考 : 浸水想定区域図作成マニュアル (pp.6) 氾濫想定地点ごとに氾濫シミュレーションにより算定した各区計算メッシュの浸水位が最も高くなる値をその計算メッシュの想定最大水位とする 参考 : 中小河川浸水想定区域図作成の手引き記述なし 6

7.3 次元不等流モデルの構築及び計算の実施 7. 氾濫解析モデルの構築及び計算の実施 7.3. 基本構成 氾濫解析のための 次元不等流モデルは 河道と氾濫原を一括して河道として扱い 洪水流量に対する河道水位を算定することで 浸水区域や浸水深を設定するものである 解説 氾濫解析のための 次元不等流モデルは 河道と氾濫原を一括した河道に対する水位を算定する過程の 過程で構成される簡便な手法である この概念図を図 7.6 に示す 基礎式は以下に示すとおりである 河道 氾濫原を一括して河道として扱い 次元不等流で算定 (7.3. 参照 ) 氾濫原河道図 7.6 次元不等流モデルの概念図 参考; 基礎式 流量一定で質量の保存則が成立する場合 不等流の運動方程式は下図に示す記号に従い 距離 X だけ離れた断面 I 及び II について差分形で表すと次式のようになる エネルギー式 Q Q H H + = ΔE g A g A + Q: 流量,H : 水位 (=h+z),h : 水位,z : 河床高,A: 河積,R : 径深, S : 潤辺, n : マニングの粗度係数, x : 断面間距離, 添字 I : 上流側断面, 添字 : 下流側断面 63

7.3. 河道及び氾濫原のモデル化 ) 氾濫原を含めた河道のモデル化既往の測量成果や航空測量成果 地形図により 氾濫原も含んだ河道を作成する 築堤区間は左右岸別に堤防がない状態とし氾濫原を含んだ河道モデルとする ただし 掘込み河川では 両岸一体のものとする 解説 航空測量成果や地形図をもとに 対象氾濫原における地盤高を整理し 図 7.7 に示すような氾濫原を含めた河道モデルを作成する その場合の河道のモデル化には 築堤区間は左右岸別に堤防がない状態とし氾濫原を含んだものとする ただし 掘込み河川では 両岸一体のものとして氾濫解析を行う 左右岸別堤防が無い状態を想定 図 7.7 氾濫原を含めた河道のモデル化 64

なお 氾濫原を河道の一部に含める場合に 河道横断面を設定するための測線を定める必要がある その測線については 基本的に河川横断測量の測線を横断方向に延長するが 堤内地の状況により適宜調整しながら設定するものとする その際 地形図から読み取れる区域で低平地部の最遠点を包絡するように微調整を行う また 延長した測線が交差する場合は 交差しないように地形コンターに直角な方向で測線を設定する なお 堤内地を含んだ横断データに急拡 急縮がある区間では射流の発生などにより高い水位が計算されることがあるため 計算水位を精査して必要に応じて死水域を設定するか内挿断面を加えるなどの修正を行う 河川 低平地部境界線 : 横断測線 最遠点を包絡するように横断測線 図 7.8 河道のモデル化の留意点 参考 : 浸水想定区域図作成マニュアル記述なし 参考 : 中小河川浸水想定区域図作成の手引き (pp.7) 流域横断は 都市計画図や航空レーザー測量データを利用して作成する 作成方法は 氾濫流の流下方向に対して直角となるように断面を設定する 河道の曲がりが大きく氾濫原の幅が広い場合 河道横断を延伸して流域横断を作成すると 流域横断が交差することがある 予め断面が交差しないように地形コンターに直角な方向で流域横断を設定する必要がある 65

) 粗度係数の設定 氾濫原と河道部分の粗度係数を設定し 井田法により合成粗度係数を設定する 解説 氾濫原と河道部分に粗度係数を設定する 氾濫原は 土地利用状況に応じ 市街地 n=0.3 水田 畑などその他 n=0.5 とし設定する 市街地 水田などが複合する場合は 距離加重平均により算定する N( 氾濫原粗度 )=(L n( 水田 畑など )+L n( 市街地 ))/L 河道部分は 河川整備基本方針で設定した粗度係数を用いる事を基本とする 河川整備基本方針が策定されてない場合は 他の事業 ( 工事実施基本計画 全体計画など ) で策定された河道計画の粗度係数を用いる また 河道計画が策定されてない河川は 河川砂防技術基準調査編 の第 6 章 6 節に記載されている粗度係数を河道形状に応じて設定する 氾濫原と河道部分の粗度係数を井田法により合成粗度係数として設定する N 氾濫域 N 河道部 N3 氾濫域 n L 水田 畑等その他 L n L 市街地 N: 各部の粗度 n: 土地利用毎の粗度 L: 距離 図 7.9 粗度係数の算定区分図 66

人工水路 改修河川 表 7.4 河道形状に応じた粗度係数 河川や水路の状況 マニングのnの範囲 コンクリート人工水路 0.04~0.00 スパイラル半管水路 0.0~0.030 両岸石張小水路 ( 泥土床 ) 0.05( 平均値 ) 岩盤掘放し 0.035~0.05 岩盤整正 0.05~0.04 粘土性河床 洗堀のない程度の流速 0.06~0.0 砂質ローム 粘土質ローム 0.00( 平均値 ) ドラグライン掘しゅんせつ 雑草少 0.05~0.033 平野の小流路 雑草なし 0.05~0.033 平野の小流路 雑草 灌木有 0.030~0.040 自平野の小流路 雑草多 礫河床 0.040~0.055 然山地流路 砂利 玉石 0.030~0.050 河山地流路 玉石 大玉石 0.040 以上川大流路 粘土 砂質床 蛇行少 0.08~0.035 大流路 礫河床 0.05~0.040 ( 出典 : 河川砂防技術基準調査編 H9 日本河川協会編集 建設省河川局 ) 参考 : 浸水想定区域図作成マニュアル記述なし 参考 : 中小河川浸水想定区域図作成の手引き (pp.7) 氾濫原の土地利用に応じ 市街地 n=0.3 水田 畑などその他 n=0.5 とし 河道部分を含めて井田法により合成粗度係数を設定する 67

7.3.3 氾濫計算の実施 氾濫が予想される一連区間の個数に応じ それぞれの区間で堤防がない状態を想定し氾濫計算を実施する 解説 次元不等流モデルにおける計算ケースとしては 氾濫が予想される一連区間の個数に応じ それぞれの区間で堤防がない状態を想定し設定する この際 左右岸両方に氾濫が予想される場合は それぞれ別の一連区間として扱い 左右岸別に堤防がない場合を想定する また 掘込み河道や無堤部においては 左右岸を区別せず同時に氾濫解析を行う 参考 : 浸水想定区域図作成マニュアル記述なし 参考 : 中小河川浸水想定区域図作成の手引き (pp.6) 築堤区間における流下型氾濫区域では 左右岸別に堤防がない状態を想定して氾濫解析を行うことを基本とする ただし 掘込み河川では 両岸を一体のものとして氾濫解析を行う 68

7.4 池モデルの構築及び計算の実施 7. 氾濫計算モデルの構築及び計算の実施 7.4. 基本構成 氾濫解析のための池モデルは 河道内の洪水流下を再現する過程 河道から氾濫原への氾濫水の流出を再現する過程 3 氾濫水が氾濫原内で貯留する状況を再現する過程に分類される 解説 氾濫解析のための池モデルは 河道内の洪水流下を再現する過程 河道から氾濫原への氾濫水の流出を再現する過程 3 氾濫水の氾濫原での貯留を再現する過程の 3 過程に分類される 一般的に 河道内の洪水流下を再現する過程では 次元不定流モデル 河道から氾濫原への氾濫水の流出 ( 氾濫流量 ) を再現する過程では 第 6 章氾濫流量の算定 で述べた横越流式 3 氾濫水の氾濫原での貯留を再現する過程では池モデルが使用される この概念図を図 7.0 に示す 特に 3 の池モデルでは 氾濫原を水位が同一とみなせる領域 ( 池 と呼ぶ ) として扱い 地形特性 ( 水位 ~ 容量 ~ 面積 ) を設定する必要がある なお 氾濫原内に連続盛土構造物が存在し それが浸水区域や浸水深に影響をおよぼす可能性がある場合は 盛土の分布などに基づき池を区分し 多池モデルとして設定する必要がある この際 池を区分する盛土構造物の標高なども設定し 各池での氾濫水の収支量を算定することで氾濫解析を実施する 氾濫原 河道内の洪水流下を 次元不定流モデルにより再現する (7.4. 参照 ) 3 氾濫原での氾濫水の挙動を池モデルにより再現 連続盛土や排水施設の影響も反映する (7.4.3 参照 ) 河道 H-Q 式により河道からの氾濫流量を算定 ( 第 6 章参照 ) 図 7.0 池モデルの概念図 69

7.4. 河道の洪水流下のモデル化 既往の測量成果や航空測量成果をもとに現況河道を 次元不定流モデルとして再現する 解説 破堤地点からの氾濫流を算定するために 破堤地点における洪水流量 次元を算定する必要がある そのため 既往の測量成果や航空測量成果をもとに現況河道を 次元不定流モデル化する モデル化に際しては 第 6 章氾濫流量の算定 で使用した不等流計算の河道断面や粗度係数 その他の条件とできるだけ整合を図るものとする このようにして構築した 次元不定流モデルに 第 5 章氾濫外力の設定 で設定した洪水流量と 下流端水位 ( 河口潮位または適切と思われる水位 ) を与え河道内の洪水流量の伝播を再現する また 破堤氾濫流量は横流出として扱う なお 氾濫流量の算定においては このモデルから算定される水位ではなく 河道計画との整合を図るため 該当地点の流量を 6. で説明した H-Q 式で変換して求めた河道水位を使用する 参考 : 浸水想定区域図作成マニュアル (pp.) 氾濫流量が河川水位のみによる決まる場合を除き 河道不定流計算と氾濫シミュレーションを一体的に実行する必要がある 参考 : 中小河川浸水想定区域図作成の手引き記述なし 70

7.4.3 氾濫原のモデル化 ) 氾濫原の取り扱い及び地形特性の設定氾濫原における盛土構造物の存在状況を考慮し 単一の池として扱えるか複数の池に区分すべきか検討する 複数の池に区分する場合は 航空測量成果や地形図 道路台帳などを参考に盛土構造物の分布状況などにより区分を行う 各池毎に標高 (H)~ 面積 (A)~ 容量 (V) の関係を作成する 解説 氾濫原における盛土構造物の存在状況を考慮し 単一の池として扱えるか ( 一池モデル ) 複数の池に区分すべきか ( 多池モデル ) 検討する 複数の池に区分する場合は 航空測量成果や地形図 道路台帳などを参考に盛土構造物の分布状況などにより区分を行う 次に各池毎に標高 (H)~ 面積 (A)~ 容量 (V) の関係を作成する なお 多池モデルの場合の 各池間の氾濫水の収支は 地形や氾濫特性に応じて 越流として扱う場合 管路として扱う場合 開水路として扱う場合 などの算定手法があるので 適切な手法を選定する 参考 : 浸水想定区域図作成マニュアル記述なし 参考 : 中小河川浸水想定区域図作成の手引き (pp.0) 都市計画図 数値地図データ及び航空レーザー測量データを利用して対象とする氾濫ブロックの標高 (H)~ 面積 (A)~ 容量 (V) の関係を作成する ) 排水施設の設定ポンプ 樋門などの排水施設もモデル化する ( 詳細 :7..3 参照 ) 前述した 7..3 を参考に 氾濫原内の排水施設をモデル化する 参考 : 浸水想定区域図作成マニュアル記述なし 参考 : 中小河川浸水想定区域図作成の手引き記述なし 7

7.4.4 氾濫計算の実施 想定される最大の浸水状況を再現するために 破堤などの氾濫の恐れのある箇所数やその他各種の条件に応じ氾濫計算を実施する 解説 浸水想定区域図作成には 想定される最大の浸水状況を再現するために 多数の氾濫想定箇箇所を設定する必要があり 平面 次元不定流モデルでは その氾濫想定箇所毎に計算を実施する ( 例 : 破堤箇所が 6 箇所の場合 氾濫計算は 6 回行う ) また 本川と支川で対象とする洪水流量波形が異なる場合も 条件の数に応じて氾濫解析を実施する なお 氾濫想定箇所より上流の溢水による氾濫や堤内地から河道への流量の氾濫戻しは考慮する 参考 : 浸水想定区域図作成マニュアル (pp.6) 氾濫想定地点ごとに氾濫シミュレーションにより算定した各区計算メッシュの浸水位が最も高くなる値をその計算メッシュの想定最大水位とする 参考 : 中小河川浸水想定区域図作成の手引き記述なし 7