2-3-4 評価委員会による評価樫葉林木遺伝資源保存林については ニホンシカの生息数も多く コウヤマキの樹幹の食皮害が認められることから 早急に被害防止策を実施すべき時期にきている 幹の全周に被害が及ぶと リョウブなどとは異なり枯死するため 樹皮保護ネット等で幹を覆う必要がある 2-4 川添林木遺伝

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Transcription:

2-3-3 調査の結果本調査地は太平洋型ブナ林 ( スズタケ-ブナ群落 ) に含まれる樫葉林木遺伝資源保存林で 基礎調査で調査された定点に円形プロットを設定し 植生調査を実施した プロット 1 プロット 1( 標高 1100m) は 南東に延びる尾根部分でブナ ツガを主体とする林分で コウヤマキが高木層に含まれ 一部ツガの老齢木の倒木により小さなギャップが生じている 亜高木層はアセビ ネジキ 低木層はコバノミツバツツジ ハイノキ 草本層はミヤマシキミが占めている 平成 19 年度の基礎調査時に確認されたニホンシカによるミヤマシキミの食害は調査時期等の関係から確認されなかった プロット 2 プロット 2( 標高 1190m) は 東に延びる尾根部の急傾斜地で ツガ コウヤマキが高木層を占め 大円部分にヒメコマツが生育し 全体として樹勢も良く樫葉林木遺伝資源保存林を代表する林分である プロット 3 プロット 3( 標高 1250m) は 平坦な尾根の地形である ブナ ミズナラ コハウチワカエデを主とする林分で 太平洋型ブナ林 ( スズタケ-ブナ群落 ) の代表的林分と考えられるが シカ食害の影響からかスズタケが殆ど枯れた状態で 草本層も皆無に近い状況であった 周辺にシカの糞は非常に多く シカ個体数は非常に過密な状態と判断される 基礎調査時同様 シカの剥皮の害は リョウブ シラキを始めとしてヒメコマツ等にも及んででいて 特に コウヤマキは殆どの個体が被害を受けている状態であり 入り口から山頂に通ずる尾根周辺に多く見られる 特に 保存対象樹種のコウヤマキについては ニホンシカの剥皮害を防止するためネットでの囲い込み等の保護対策が必要と考えられる 写真 26. コウヤマキシカ食皮害 39

2-3-4 評価委員会による評価樫葉林木遺伝資源保存林については ニホンシカの生息数も多く コウヤマキの樹幹の食皮害が認められることから 早急に被害防止策を実施すべき時期にきている 幹の全周に被害が及ぶと リョウブなどとは異なり枯死するため 樹皮保護ネット等で幹を覆う必要がある 2-4 川添林木遺伝資源保存林 2-4-1 保護林の概要川添林木遺伝資源保存林は鹿児島県姶良郡湧水町の栗野岳 (1094m) 北面に位置し 保護林面積 79.26ha 林相はタブノキ イスノキ シラカシ アカガシ スダジイ ミズメ及びクマシデ等の樹種からなる 樹齢 120 年生以上の常緑天然広葉樹林である 昭和 49 年 5 月の森林調査では タブノキの優先する森林が 火山地帯の地温の影響から 照葉樹林の上限 700mに出現したと思われ 比較的原生状況が保たれ 保護に値する第一級の価値がある と報告されている また 林内の巨樹には カタヒバ等の着生植物が豊富に生育し 保護林の価値を更に高めている 2-4-2 調査の概要 森林調査を図 22 に示す 3 箇所で実施した 図 22. 川添林木遺伝資源保存林森林調査位置 40

写真 27. 川添林木遺伝資源保存林林内の様子 2-4-3 調査の結果 プロット 1 プロット 1 は標高 600mに位置し 高木層にイスノキ タブノキ ウラジロガシなどの大径木 亜高木層にヤブツバキ 低木層にサザンカ イヌガシから構成され それらの幼樹が林床に育っている 着生植物としては マメヅタ カタヒバ ヒトツバ イワヤナギシダ シシラン ヒメノキシノブ アオガネシダ シノブが確認できた プロット 2 プロット 2 は標高 800mで火山地帯の地温の影響を強く受けた地点である 高木層はウラジロガシ ミズメ イスノキから成り 低木層ではヤブツバキ シキミが生育し 草本層ではイヌガシ ツルシキミが比較的暗い林床に育っている 着生植物としては マメヅタ セッコク ムギランが確認できた プロット 3 プロット 3 は標高 650m 付近に位置する タブノキの巨木が成育し ホソバタブ スダジイ イスノキの高木層が茂り 活力のある森林を維持している 着生植物としては マメヅタ カタヒバ ヒトツバ イワヤナギシダ シシラン アオガネシダが確認できた 写真 28. ヒトツバ 写真 29. カタヒバ 41

写真 30. シシラン 写真 31. セッコク 全てのプロットにおいて 高木層を形成するタブノキ等の大径木には 着生植物の繁茂が見られ 標高の高いプロット2 周辺ではセッコクが着生植物の主となっている 保護林としては 外来種の進入も見受けられず 人の立ち入りも尐ないことから 適正に保全されている 他にニホンシカの剥皮等の被害については 顕著では無いものの 林床のアオキの約 7 割程度が食皮害を受け枯損しており 枯損していない木でも食害が顕著なことから 林床のアオキの消失が懸念される状況である 2-4-4 評価委員会による評価川添林木遺伝資源保存林は 照葉樹林帯の上限にタブノキの優占する林分が存在するという特異性を有する 一方でウチワゴケ等の樹上植生が多く 変化に富むことで保護林に指定された経緯も有るため 着生植物の同定を重視して 今後調査を実施する必要があると指摘がなされた 保護林としては ニホンシカによる被害も特になく 健全であるため特に必要な措置は無い 2-5 背振山植物群落保護林 2-5-1 保護林の概要脊振山植物群落保護林は 佐賀県と福岡県の県境に位置する脊振山 1055mの南面に位置し 下部から上部へ登山道が整備されている 林相は スギ シデ カエデ アラカシ ブナ等の天然針広混交林で 標高の高い地点はブナ等の落葉樹が多く スギが僅かに点在し 下部域に達するほどスギの大径木が多く見られるなど 林相は標高により変化に富んでいる 2-5-2 調査の概要森林調査を図 23 に示す 2 箇所実施した 背振山植物群落保護林は 標高 700mから 900mの範囲に位置し 700m 付近までが照葉樹林帯でその上部にブナを代表とする夏緑樹林帯が分布する 42

図 23. 脊振山植物群落保護林森林調査位置 写真 32. 背振山植物群落保護林の夏緑広葉樹 2-5-3 調査の結果 プロット 1 プロット 1( 標高 900m) は アカガシ ブナ クマシデが高木層を シキミ リョウブ タンナサワフタギが亜高木層をなし そしてシロモジを主とした低木層からなり 草本層はミヤコザサ トウゲシバが茂っている 43

プロット 2 プロット 2(820m) は スギを主とする林分で アカガシの大径木を含み 背振山のスギ 大径林の代表的林分である スギの樹勢は良好で 健全な森を形成しているが プロット1へと向かう登山道筋では 風害によるスギの根返りが数本確認された ( 写真 33) 地質が花崗岩のため 根張りが浅く 風による抵抗力は弱いと考えられる また 脊振山頂上まで自動車道が整備されていることから 保護林内の登山道利用は尐なく林内は保全されている 写真 33. スギの風倒木 2-5-4 評価委員会による評価 当保護林のスギについては 風により根倒れが発生したものもあるが スギ材の活用も検討す べきである 2-6 萱瀬スギ植物群落保護林 2-6-1 保護林の概要萱瀬スギ植物群落保護林は長崎県大村市の北東の山腹の中腹に位置し 緩傾斜地の 3.73ha のスギ老齢木の人工林である 長崎では最も古い人工林と言われ 藩政時代に植林され樹齢は 240 年以上で 森の巨人 100 選 に選ばれたスギ巨木 萱瀬スギ がある 2-6-2 調査の概要 森林調査は図 24 に示す 2 箇所を実施した これらの調査地点は平成 19 年度基礎調査地点であ る 44

図 24. 萱瀬スギ植物群落保護林森林調査位置 写真 34. 萱瀬スギ林遠景 写真 35. スギの巨木 2-6-3 調査の結果 プロット 1 プロット 1 ではスギの老齢木が安定した林分を構成し 高木層の植被率 80% はスギによるものである 草本層にはアオキ サツマイナモリなどスギ適地と判断される植生が健全に育っている 気象 病虫害等も見受けられなかった プロット 2 プロット 2 は調査区域内に平成 12 年 4 月 森の巨人たち 100 選 に選ばれた大名スギが含 45

まれる林分で プロット 1 同様に健全な森を形成している 保護林全体として 樹齢 240 年以上と言われるスギの胸高直径は約 1m 樹高 35m 程である 亜高木層にはタブノキ ウラジロガシ ヤブニッケイが生え 低木層にアオキ ウリノキ 草本層にイワガネ サツマイナモリなどといった林床植生があることからもスギに適した土壌となっている また 凹地地形のため 風の影響を受けにくいと思われることから 林分自体の健全さを維持している 歩道からの人の踏み入れもなく土地の攪乱はなく林齢相応の森となっており 安定しているので 原則として人手を加えず自然の推移に委ねるべきと考える 2-6-4 評価委員会による評価 健全な状態を維持しており 特に実施すべき施業等は無いと思われる 2-7 萱瀬ヒバ植物群落保護林 2-7-1 保護林の概要萱瀬ヒバ植物群落保護林は長崎県大村市の北東の山腹の中腹に位置し 緩傾斜地の 0.30ha のアスナロ ( ヒバ ) 老齢木の人工林である 藩政時代に植林され樹齢は 150 年以上で 九州で唯一古いヒバ人工林と言われているが 本数は尐なくイヌマキが混生した状態にある 2-7-2 調査の概要 森林調査を図 25 に示す 1 箇所で実施した 46

図 25. 萱瀬ヒバ植物群落保護林森林調査位置 写真 36. ヒバ林内の状況 2-7-3 調査の結果調査プロットは 北東緩斜面 ( 標高 400m) に位置し 高木層にヒバ ( 胸高直径 66cm 樹高 25m) イヌマキ 亜高木層にヤブニッケイ カゴノキ 低木層にアオキ イヌビワ等が生育し 草本層にイワガネ フユイチゴ サツマイナモリなどがあり 森林としては極相を呈し ヒバの生育に適した地となっている 風の影響かと思われるヒバの倒木が数本確認でき さらに2~ 3 本のヒバが傾斜木となって 強い風を受ければ倒れる可能性が高いと思われる 壮齢の森林で管理上特に問題は無いが ヒバの生育面積が小さいため 毎木調査はヒバ全木を対象に実施される方が好ましい 47

2-7-4 評価委員会による評価 風害による傾斜木が有り 他の健全木に影響を与えるようであれば 伐採等適切な措置を講ず る方が好ましいと考えられる 2-8 野岳植物群落保護林 2-8-1 保護林の概要野岳植物群落保護林は長崎県島原半島のほぼ中央部に位置し 国道 57 号線から仁田峠循環道を上がって行く道路沿いにあり 保護林面積 80.31ha の急傾斜地である 林相は イヌツゲを主としてモミ ニシキウツギ シロドウダン等が生育し 樹齢は150 年以上と言われ イヌツゲ巨大化の原因は不明であると言われている 平成 3 年長崎県の国指定天然記念物 ( 樹木 ) にイヌツゲ群落が指定された 2-8-2 調査の概要 森林調査を図 26 に示す 2 箇所で実施した 図 26. 野岳植物群落保護林森林調査位置 48

写真 37. 野岳植物群落保護林遠景 写真 38. イヌツゲ 2-8-3 調査の結果 プロット 1 プロット 1( 標高 1100m) は モミを高木層として 野岳を代表するイヌツゲ その他ヤマボウシ コハウチワカエデ ネジキが占めているが モミの樹高も 10m 未満と生育状況は余り良くない また モミの立ち枯れが目立つ 低木層はツクシイヌツゲ ネジキ カナクギノキ ミヤマキリシマ イヌシデ ケクロモジ等が見られケクロモジの株立ちが多い 林床は ツクシイヌツゲ ナガバモミジイチゴ ヤマツツジが藪状になっており 全面にウンゼンザサが茂った状態になっている プロット 2 プロット 2( 標高 1000m) は モミが上層を形成し樹齢は 150 年以上と見られるが 立ち枯れが目立つことから世代交代が行われていると考えられる また 下層はミズキ ノリウツギが多く 草木層にはモミ-コガクウツギ群集を代表するコガクウツギがケクロモジに次いで多く生育する この保護林を代表するイヌツゲの生育は健全であるが モミの樹勢の衰えが気懸かりであり 推移を把握する必要があると思われる 2-8-4 評価委員会による評価普賢岳噴火の影響を受け 過去にイヌツゲの葉の枯れ等が発生したとされるが イヌツゲは健全に生育していると思われるので 特に必要な措置等は無いと考えられる また モミの枯損についても 普賢岳噴火災害の影響が強いと思われるが それ以前に現象が見られていたか検証する必要がある 特に酸性雨の影響であれば 位置的にも大陸からの影響を受けやすいため 追跡調査が必要と考える 49