< 目次 > 1 木造建築物の断熱方法 充填 ( じゅうてん ) 断熱工法と外張り断熱工法 4 2 充填断熱工法の壁構造と熱橋 ( ねっきょう ) や梁や筋交いの間にしか施 できない事で起こる熱橋 ( ねっきょ 熱橋 ( ねっきょう ) と壁内結露 熱

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資料 4 H 検討会 木造庁舎計画 設計基準の熱負荷計算について (1) 木造建築物に使用する材料の熱定数表を下に示す 熱伝導率 容積比熱 材料名 λ cρ [W/(m K)] [kj/(m 3 K)] 複合金属サイディング 55% アルミ- 亜鉛めっき鋼板 45 3,600 + 硬質

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もくじ 1. 表紙 2. もくじ 3. 床施工前 > 透湿防水シート 4. 床施工前 > 断熱材用受け材 5. 床施工前 >ユニットバス人通口 6. 床施工 > 床用透湿防水シートの施工 7. 床施工 >セルローズファイバー吹込み工事 8. 壁施工前 > 横胴縁 気密コンセントカバー 9. 壁施工前

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高断熱住宅を建てるためには 正しい断熱材選びが大切です 断熱するってどういうこと 住まいの 断熱 とは 室内と室外との熱の出入りを少なくすることです 熱の移動が少ないから 冬は暖かく夏は涼しい快適な住まいになります また 少しの冷暖房で快適温度になるので 冷暖房費が抑えられ 省エネ効果も高まります

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第1章第2章第3章第4章36 解説計算の流れ基準の解説取得率の解説得率の計算の流れ得率の基準の解説消費量基準の概要消費量基準の解説資料ロ UHi は 当該部位を熱の貫流する方向に構成している材料の種類及び厚さ 熱橋 ( 構造 部材 下地材 窓枠下材その他断熱構造を貫通する部分であって 断熱性能が周囲

給水管 給湯管又は排水管の維持管理又は更新の容易性を高める工事 木造 鉄骨 RC イ 給水管又は給湯管を維持管理上有効な位置に取り替える工事 ロ 排水管を維持管理上又は更新上有効なもの及び位置に取り替える工事 ハ 給水管 給湯管又は排水管の主要接合部等を点検し又は排水管を清掃するための開 口を床 壁

本試験は 本来は実際の建築物を使用して調査票の作成を行う試験であるが 実際の建築物を確保できない場合のみ 仮想の建築物と写真を使用して行っている 実際の建築物を使用するため 本来は 資料公開できない試験であるが 仮想の建築物と写真を使用する場合には 状況設定及び写真等の一部資料のみを公開する - 1

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3. 線熱貫流率の求め方鉄筋コンクリート造等の住宅の線熱貫流率は 以下の (1) から (3) までの方法により求める 100 分の 1 未満の端数を切り上げた小数第二位までの値とする (1) を含む壁体全体の貫流熱損失 (Qw) を求める { 熱橋長さ (W)=1m} 壁体の長さ (L W ) の

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各家庭の 1 年間の出費のうち約 7% は電気 ガス 灯油といったエネルギーへの支出です 詳しくは 各制度のパンフレット W EB で 市民向け 太陽光発電 燃料電池 ( エネファーム ) HEMS ( ホームエネルギーマネジメントシステム ) 定置用蓄電 太陽熱利用 ガスエンジン木質コージェネバイ

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階の施工方法 1 は, スパン表に従って 支点間距離が許容範囲内となるように施工します 2 根太受け金物は 原則的に床梁用を使用します ( 図 10) 釘打ちには 必ず 金物専用の ZN 釘を使用し 横架材へ ZN65 10 本 Ⅰ 形梁へ ZN40 4 本とします 3 火打梁を省略す

計資料イ 二 ) 断熱ライン 防湿層の連続性 防露 については 79 ページを参照 断熱施工で一番大切なのは 断熱ラインの連続性 です 断熱する空間を決め その境界にキッチリと切れ目無く断熱ラインを作る事が重要です 断熱ライン ( 境界 ) は 断熱材 と 気密層 及び 開口部 で構成されます 室内

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外皮については 地域の区分 ( 建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令第 1 条第 1 項第 2 号イ⑴の地域の区分をいう 以下同じ ) に応じ 断熱及び日射遮蔽のための措置を講じた構造 ( 以下 断熱構造 という ) とすること ただし 次のイからヘまでのいずれかに該当するもの又はこれらに類す

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< 目次 > 1 木造建築物の断熱方法 4 1-1 充填 ( じゅうてん ) 断熱工法と外張り断熱工法 4 2 充填断熱工法の壁構造と熱橋 ( ねっきょう ) 5 2-1 や梁や筋交いの間にしか施 できない事で起こる熱橋 ( ねっきょ 5 7 3 熱橋 ( ねっきょう ) と壁内結露 8 3-1 熱橋がある事で起こる恐ろしい壁内結露 8 9 4 充填断熱 法では壁内結露を防げない! 10 4-1 壁内結露発 のプロセス 10 5 壁内結露が及ぼす影響 11 5-1 壁内結露がカビ ダニの原因 11 5-2 壁内結露が建物を弱くする 12 5-3 北海道で起こったナミダダケ事件 13 築 3 年目の住宅の床からキノコが! -2

1 木造建築物の断熱方法 1-1 充填 ( じゅうてん ) 断熱工法と外張り断熱工法 造住宅の断熱 法は 充填断熱工法と外張り断熱工法に大別されます セルローズや発砲系の吹付け断熱工法等もありますが ここでは充填断熱工法と同じ扱いとします 充填断熱工法は 主にグラスウールやロックウール等の繊維系断熱材で施工される事がほとんどで 構造材 ( 梁 間 筋交い等 ) を組み てた後で その構造材の間に充填施工する工法です 写真 1-1-1 グラスウール断熱材写真 1-1-2 繊維系断熱材による充填断熱工法 外張り断熱工法は 主にボード系断熱材をの外側に施工する工法です 図 1-1-3 充填断熱工法と外張り断熱工法のイメージ図 断熱材 r 構造部 = 断熱欠損部分 通常の断熱材施工 アプリによる外張り遮熱断 * 正式には 鉄筋コンクリート造の場合は 外断熱 ( そとだんねつ ) 工法と言い 木造や鉄骨造の建物のそれは 外張り断熱工法と 呼ばれ, 区別されています -3

2 充填断熱工法の壁構造と熱橋 ( ねっきょう ) 2-1 や梁や筋交いの間にしか施 できない事で起こる熱橋 ( ねっきょう ) 外張り断熱 法では 断熱材を連続して施 できますが 充填断熱 法では や梁 間 筋交いの間 に充填する為 断熱材を連続して施 するのは不可能で 途切れ途切れになってしまいます 写真 2-1-1 充填断熱工法の現場写真 との間にしか断熱材を施工出来ない充填断熱工法の様子 その断熱できない断熱欠損部分の事を 熱橋 ( ねっきょう ) といい 木造在来工法の充填断熱の場合は 外壁部分の前途した構造材部分すべてがそれに当たり 外壁面積の約 20% を占めます 太い構造材を使えば使うほど 熱橋が増える事になり 熱橋を減らすためには 細いや梁などの構造材で 造るしかない為 非常に悩めるところです 図 2-1-2 充填断熱 法の外壁部断 詳細イメージ図 ( 間 筋交いは省略 ) 冬 冷たい外気 外壁 仕上げ下地材 室内側 通常 室内側の仕上げ下地材 ( プラスターボード ) に ビニールクロスや珪藻土等で仕上げますが 同じ 壁 でも 部分と断熱材部分とが交互にある為 冷たい と暖かい が出来 表 温度に差が出ます ( 図 2-1-2 図 2-1-3) 参照 当然 壁の中でも温度差が じます この壁の中で温度差の出る事が これから説明する様々な悪い事を 引き起こします -4

図 2-1-3 外壁 の表 温度の違い ( イメージ図 ) 冬 断熱材 断熱材 冷たい面 暖かい面 冷たい面 暖かい面 冷たい面 間仕切り壁 実際の建築現場では 電気の配線やコンセント部分等が 壁の中にある事も多い為 その部分も断熱欠損 ( 熱橋 ) となる事がほとんどです 写真 2-1-4 電気配線による断熱欠損部分また 壁の中に隙間なく布団を入れる事が出来ないように 隙間なく断熱材を充填する事は まず不可能で 等の構造材と断熱材の間には わずかながら少しずつ 隙間が空く事になり このわずかな隙間も熱橋となります 先述したように 外壁部分の構造材 ( 梁 筋交い等 ) の表 積は 外壁 積の 20% 前後にもなり それ以外にも先述した部分すべてが 断熱欠損 ( 熱橋 ) となります 私たちが寝る時に 20% 程度が破れた が開いている布団をかぶっているのと同じような事ですから これでは 建物の中を充分に保温する事すら出来ないようです -5

図 2-1-5 充填断熱工法と外張り断熱工法の対比イメージ図 断熱材 断熱材 断熱材 室内 室内 は断熱できないから寒い まで すっぽりと包めるから暖かい 等の間に断熱材を施工する充填断熱工法 梁 筋交いの構造部は 断熱欠損となります の外側に断熱材を施工する外張り断熱工法 の外側で施工するため 断熱欠損なし -6

3 熱橋 ( ねっきょう ) と壁内結露 3-1 熱橋がある事で起こる恐ろしい壁内結露 熱橋がある事で 単純に寒かったり暑かったりという事だけであれば 少しの我慢 ところですが そんな訳にはいかないようです で乗り切ってもらう 熱橋がある事で 壁内結露 ( 内部結露 ) が発生します この壁内結露が 建物や住む 々に さまざまな悪い事を 引き起こします 図 3-1-1 結露発 原因 結露は 温度差と 蒸気量の 2 つの条件が一定水準を超え 飽和 蒸気量に達すると 必ず発 します 図 3-1-2 飽和 蒸気量曲線 充填断熱 法では 壁の中に温度差がある為 壁内結露を防ぐには 壁や天井の中に 蒸気を侵 させない方法が 唯一の方法です 繊維系断熱材の施工説明書には 断熱材は連続して施工し 壁の中に水蒸気を侵入させない為に 断熱材の 室内側には 防湿層 ( ペーパーバリア ) を設ける事 とあります や梁 筋交いがある為 連続して施 するのは最初から無理な話であり 気密 コンセントボックスやスイッチボックスで 配線 をふさいで 防湿層の施 をすれば 理屈では 壁内への 蒸気の侵 を防ぐ事が出来ますが 実際の建築現場では < 絵に描いた餅 >で 現場で施工している人の誰一人として 壁や天井の中に 水蒸気の侵入を完全に防げるとは思っていません 数年後には下の写真 ( 写真 3-1-3 写真 3-1-4 写真 3-1-5) のように カビ が発 し く変 する だろう事は建築現場での常識となっています 写真 3-1-3 壁グラスウールカビ ( 弊社解体現場より ) 写真 3-1-4 天井グラスウールカビ ( 弊社解体現場より ) -7

写真 3-1-5 築 7 年目の住宅の壁断熱材 ( 弊社解体現場より ) 外壁通気 法による乾式 法 -8

4 充填断熱 法では壁内結露を防げない! 4-1 壁内結露発 のプロセス 住宅の中では 当然 間が 活をします その 間が 1 に 3 4 リットルの 蒸気を出します 4 家族で考えると 毎 15 20 リットル以上の 蒸気を発 させ 炊事 お風呂等でも 蒸気を出す為 室内の水蒸気をなくすことは出来ません 水蒸気は 非常に小さな分子で 化学式ではH2Oと水と同じですが その大きさは水が10μ( ミクロン ) に対して 蒸気の きさは0.004μで 昔は 蒸気機関 を動かしていた程運動量が豊富で圧 も強く 小さなすき間でも 簡単に透過します それだけに 壁や天井の中に その侵入を止める事は簡単ではありません 結局 << 充填断熱 法では 断熱材を連続して施 するのも無理で 完全な防湿層をつくるのも無理 >> という事は その結果 図 4-1-1 のようなプロセスをたどってしまいます 図 4-1-1 壁内結露発 のプロセスとその影響 室内で水蒸気が発生 冷たい外気が 壁の表面温度を下げる 水蒸気を含んだ室内の空気が 壁の中へ侵入 水蒸気が断熱材の無い冷たい等に触れる 結露発生 冬 冷たい外気 カビ カビ 水蒸気 カビ ダニの発生 ダニ アトピーやぜんそくの発症 前ページまでの各写真を てもわかる通り 断熱材の 部が く変 しています これは すべて カビ です 例えれば 温度差のある壁の中に 布団をずっと れているようなもので 蒸気が侵 すれば 布団は 当然 カビてきます あなたの寝ている横の壁の中も いつかはこんな感じになってしまいます -9

5 壁内結露が及ぼす影響 5-1 壁内結露がカビ ダニの原因 カビの胞子やダニの死骸やフンは アレルゲンと呼ばれ アトピー性の皮膚炎や気管支炎 ゼンソクなど の疾病の原因となる事が 知られています 特に ダニは 2 3 ヶ の寿命の間に 50 100 個以上を産卵し 約 10 週間程で 何と 1 万匹近くにも 繁殖すると言われています そのフンや死骸が アレルギーの原因となってしまいます の喘息では 2/3 程度 児喘息では約 90% がアレルギー性と われており そのアレルギーの原因の 中で 最も多いのがダニによるアレルギーと言われています 安全でなければならないはずの住宅が カビ や ダニ の温床となり 快適に暮らせると夢 て やっと手に入れたマイホームに住んだ事が原因で 家族の健康が脅かされる事になります それでも い住宅ローンは払い続けなければいけません 写真 5-1-1 壁断熱材のカビ写真 5-1-2 ダニ写真 近年頻繁に にするようになった アトピー という 葉は RC の断熱不 の集合住宅建設と 多くの 住宅に繊維系断熱材を充填する 法が始まった昭和 50 年 (1975 年 ) 時期以降とオーバーラップし 断熱材 の歴史と無関係ではない様です しかしながら 木造の建築物は 鉄骨や鉄筋コンクリート造の建物と比較すると 熱橋があってもその影響が少ない為 深刻に考えないばかりか グラスウールの半分以下の熱伝導率しかない そのものが断熱すると考える建築業者も多く 予算第一主義の建築業界では 実際の現状から目を背けているのが 現状のようです -10

5-2 壁内結露が建物を弱くする 壁内に結露が起こった場合 壁の中の結露 は だんだんと下側へ移動し やがては床や 台などに影響を 及ぼします 台や根太 床下地 床仕上げ材と 年々その影響部位は広がっていきます 新築した時には 建築基準法に基づき 規定通りの 物や材料で施 した家も 壁内結露の影響で 材が 分を含む事により 物や釘等の 持 が落ちていき 少しづつ弱くなっていきます その上 シロアリや腐朽菌が好む環境になってしまい さらに耐久性は低くなります 写真 5-2-1 壁断熱材周辺部材写真 5-2-2 腐った土台 写真 5-2-3 腐った土台 -11

5-3 北海道で起こったナミダダケ事件 築 3 年目の住宅の床からキノコが! 昭和 50 年 (1975 年 ) 北海道で 築 3 年目の床からキノコが えてきて 当時 NHK 等でも取り上げられた 通称 ナミダダケ事件 の写真です 写真 5-3-1 土台に付着するカビとキノコの胞子写真 5-3-2 床下のナミダダケ ナミダダケは 北海道では最も警戒しなくてはならない腐朽菌の つだそうで その腐朽 は 極めて強く 材の繊維質を分解しその部分に を排出し 被害部分は まるで涙を流しているように えることで その名前が付いたそうです これは 北海道という 地柄もありますが 当時では珍しい 断熱住宅で 暖かい快適な住宅を提供しようと した前向きな 務店さんが 施 された住宅なのですが 築 3 年目には床からナミダダケが え 床が落ちて きたという事です 薄い布団をかぶるより 厚い布団をかぶったほうが暖かいように より厚い断熱材を単純に床 壁 天井へ充填すれば 暖かくて快適な環境を造る事が出来るだろうと温熱環境だけを考え 水蒸気の動きを全く考えなかった為に起こった 代表的な事例です 最近でも 蒸気の動きを考えていない 危ない施 例がたくさんあります -12