全国シンポジウム いま改めて考えよう地層処分 名古屋会場 ~ 科学的有望地の提示に向けて~ 開催概要 1. 日時 : 2016 年 6 月 2 日 ( 木 )14:30~17:05 2. 場所 : 中日パレスクラウンホール愛知県名古屋市中区栄 4-1-1 3. 主催 : 経済産業省 資源エネルギー庁原子力発電環境整備機構 (NUMO) 4. 後援 : 文部科学省 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 日本経済団体連合会 日本商工会議所 経済同友会 全国商工会連合会 日本原子力学会 電気事業連合会 中部電力株式会社 5. 来場者 : 239 名 6. 当日概要 ( 敬称略 ): (1) 開会あいさつ : 波多野淳彦 ( 中部経済産業局長 ) (2) パネルディスカッション パネリスト 山崎晴雄 ( 首都大学東京名誉教授 総合資源エネルギー調査会地層処分技術ワーキンググループ委員 ) 水谷香織 ( パブリック ハーツ株式会社代表取締役 ) 小林大和 ( 経済産業省 資源エネルギー庁放射性廃棄物対策課長 ) 伊藤眞一 ( 原子力発電環境整備機構理事 ) モデレーター 大東めぐみ ( タレント ) (3) 質疑応答 7. 内容 ( 敬称略 説明順 ) (1) パネルディスカッション ( 概要 ) 自己紹介 1. これまでの経緯 大東昨年 国は最終処分政策の見直しを行った その経緯や内容について教えて欲しい 小林 2000 年に最終処分法が成立して以降 現在に至るまで 最初の調査を実施するに至っていない これを受けて 2 年越しの議論を経て 基本方針を見直した ポイントはいくつかあるが 本日ご紹介したいのは 国が前面に立って取り組む一環として 科学的有望地の提示等の新たなプロセスを追加したということ 1
大東基本方針を改定以降 本日のシンポジウムに至った経緯を紹介して欲しい 小林基本方針の見直し等について全国的な対話活動を行うとともに 審議会において 科学的有望地の要件 基準の検討を行ってきた そうした状況を踏まえ 昨年末 国民や地域の皆さまに冷静に受け止めて頂ける環境を整えた上で 平成 28 年中の提示を目指すことを政府として決定した 今回のシンポジウムでは 科学的有望地とは何か 提示されたらどうなるのか といったことをお伝えしたい 2. 地層処分に今取り組むべき理由 水谷将来世代に負担を先送りしないというところは非常に共感するところがあり 今から考えて行くべきだと思う 放射性廃棄物については 高レベルのもの 低レベルのもの 原発事故由来のもの といろいろあるが 放射性物質の拡散を防ぐため 処分場は1 箇所に集めた方が良いという意見があるがどうか なお 原発を再稼働させるとゴミは増えるが 処分場はいくつ造る予定なのか 小林放射性廃棄物は 放射能のレベルごとに処分方法が異なる また いま存在している場所も異なる そうした中で 事業者ごとにそれぞれ処分する場合もあれば 共同で1 箇所に処分する場合もある 本日のテーマである高レベル放射性廃棄物については 他の国と同様 1 箇所で処分することが適切だと考えている 大東今 なぜ 地層処分に取り組まなければならないのか 改めて説明して欲しい 小林我々が使った電気によって生じたごみの処分について 将来世代に委ねるということではなく 我々自身で解決の道筋をつけるということ 将来 地層処分以外の方法が見つかるかもしれないということは否定しない しかし 見つからないかもしれない 処分場所も確保されていなくて 技術も途絶えてしまい 選択しようにも地層処分ができない ということは絶対に避けなければならないと思う 3. 地層処分を支える地下深部の特徴 大東地層処分を支える地下深部の特徴について 基本的なところを教えて欲しい 山崎地下深部は酸素が少ないため 色々なものが変化しにくい 物の動きが非常に遅い 人間の生活環境から隔離されている という特徴があり 放射性物質を閉じ込める機能と隔離する機能を持っている 2
4. 科学的有望地の位置づけと検討状況 大東地下ならどこでも大丈夫というわけではないと思うが NUMO はどのような対応をするのか 伊藤実際の適性の確認のためには 現地で岩盤の特徴や地下水の動き等の地質環境を詳しく調査する必要がある 具体的には 文献調査や概要調査 精密調査により段階的に精度を上げながら評価していく 大東そうした調査の前に国が科学的有望地を提示するとしているが その要件 基準に関する現在の検討状況について教えて欲しい 小林安全性の確保を第一に 処分後の長期の安全性 建設 操業時の安全性 輸送時の安全性 という3つの視点から検討した 処分後の長期の安全性の観点からは 火山活動や断層活動等の影響が大きいところは避けようだとか 建設 操業時の安全性の観点からは 軟弱な地盤は避けようだとか 輸送時の安全性の観点からは 海上輸送を前提にして港湾からの陸上輸送の距離は短い方が好ましい といった議論になっている 水谷国が科学的有望地を提示するということは納得できる まずはここは危険だろうということを示すことは合理的だと思う その上で 地下深部の特徴について メリットだけでなく デメリットの話も聞きたい また 処分後の長期安全性について 海面上昇によって処分場が海に沈んだらどうなるのか 山崎いま知られていない断層であっても あるかもしれないので 実際に現地で調べていかなければならない これが課題 なお 処分場は地下深いので 上が陸地であろうが 海であろうが 関係ない 大東科学的有望地については 社会科学的な観点からも議論されているとのことだが どのような議論が行われているのか 小林社会科学的観点については様々な意見が出ている 全国一律ではなく地域の方々と一緒に具体的に検討するものといった意見や 早い段階から決めておくべきといった意見もある 今後 どのように取り扱うか検討したい 大東科学的有望地について 改めて皆さんに何を一番知って欲しいか 小林科学的有望地の提示により 日本では地層処分はできないのではないかという疑問や不安の解消に役立ち この問題について考えていただくきっかけとなることを期待 3
している ただし これまで法律で決まっていた処分地選定プロセスをショートカットして進めようとしているわけではない 国民や地域の方々の理解なしに自治体に判断を求めても 上手くいかないというのがこれまでの教訓 科学的有望地を提示することと 自治体の方々に調査の受入れをお願いすることは全く別であり 提示後も国民や地域の方々と丁寧な対話を積み重ねていく考え 5. 科学的有望地提示後の対話活動 大東科学的有望地提示後の対話活動について どのような活動を進めるのか 伊藤地層処分事業の内容や 私どもがこの事業を行うに当たって地域と共に生きる組織 信頼される組織となって進めていくという決意 さらには 地域の持続的発展こそが事業の安定的な推進に不可欠であるという認識を 全国の皆さまに丁寧に説明していく そうした中で 関心を持っていただき 主体的に学習活動を進めていただけるグループが生まれ その活動が地域の中で広がっていくことを期待している 水谷対話活動は素晴らしいが 説明の前に 聞く というステップが大事 相手が何を知りたいか 何を必要としているのか 把握して情報を伝えることが大事 また 関心があり参加してくださる方が 気持ち良く議論できるように配慮して欲しい ところで 補償は対象地域だけでなく 周辺地域にも配慮されるのか 小林リスクとして放射性物質が地下深くで徐々に出てくることは想定しているが 極めて長い時間をかけて出てくるものであり その間に放射能レベルは大幅に下がって 普段の生活レベルと変わらない状態になる そもそもウランやプルトニウムを取り除いた安定した物であり 爆発することはないので 避難計画のようなものは想定されない 影響は非常に狭い範囲に閉じる話 また 先日来日いただいたスウェーデンの候補地の市長は 処分場の受入れがマイナスイメージにつながるよりむしろ ステータスの向上につながると考えたと言っていた そういう認識の下では 風評被害というものがなくなる 日本でもそういうように受け止められるよう 処分事業の性質を共有していきたい (2) 会場との質疑応答質問者 1 (1) 地層処分は 原発をやる やらないにかかわらず 既に使ったものの話なので必要 マスコミをもっと上手く利用して PR すべき (2) 候補地を1 箇所決めるのに そんなに時間をかける必要はないのではないか 伊藤 (1) 様々なメディアの機能を活用しながら 女性や若い方にも訴求できるよう 引き続 4
き努力していきたい (2) 海外の例を取っても 十分に時間をかけて対話したところが成功している 合意形成は 一部の方だけで分かりましたというわけにはいかない 時間をかけた対話活動に傾注したい 小林 (2) 分かっていることはたくさんあるが 分からないこともたくさんある 安全性を確認するためには その場所に行って 時間をかけて徹底的に調査する必要があることは分かって欲しい 質問者 2 エネルギー自給率が5% しかない 新たに石油やガスを買うために何兆円も出ている そういう簡単なことだけで良いから もっと日本はエネルギーがないということをPRすべき 小林今一番問われているのは 安全のところ それは工学上安全かということではなく 本当に安全を追求できるだけの事業者 規制当局か 我々のようなエネルギー当局が信頼できるのかというところが一番問われているのだろう 情報の提供の仕方は いろいろな知恵もいただきながら 工夫していきたい 質問者 3 専門家の話を聞き納得したが 福島で結果的に 想定外 となったことを踏まえれば 反対する人の意見も聞いてみたい また 将来世代に押し付けてはいけないことは分かるが 前提としてこれ以上廃棄物を出さないという議論も必要 原発を何千年も続けたら そのうち日本中がゴミ捨て場だらけになってしまうことを危惧する 伊藤 絶対に安全だ ということではなく どんなリスクがあるかを示し そのリスクを減らす方法を開発し 皆さまに伝えることで信頼性を高めていきたい 小林政府として 2030 年度までの原発の利用のあり方は示しているが それ以降はこれからの議論 その議論が進まないと廃棄物処分の議論ができないということだと 時間だけが経っていく 今後の原発の利用にかかわらず 処分に向けた議論を進めていくことが重要だと考えている 質問者 4 輸送容器にはガラス固化体が何本入っているのか 輸送容器の回りの放射能の状態も 分かったら教えて欲しい また このまま原発を続けていくとすれば その分ゴミを将来に押し付けることになるのではないか 5
伊藤輸送容器には ガラス固化体が 20 本入るタイプと 28 本入るタイプがある ガラス固化体の輸送については 既に海外に処理を委託していた分について返還されてきた実績があり 輸送容器は放射能を遮へいする仕様で 人体に即座に影響があるものではない 小林廃棄物の問題について 将来世代に負担を先送りしない という言い方をしているが 処分事業は 100 年にわたる事業であり 長い時間をかけて利益も得れば負担もしていくという話 いまできることに最善を尽くすことが重要 なお 今後の原発の利用のあり方については議論が必要だと思う いまゴミの話だけをしているし もう原子力に頼りたくないという人もいるが 原子力は重要な技術であり しっかりと将来にバトンを渡したいというご意見の方もたくさんいる 原発の利用によって 将来世代に対し 経済的な豊かさや CO2 を削減した良い環境を残せることもあると思う そうしたことをみんなで議論していくことはとても重要 質問者 5 文献調査等を受け入れた場合の交付金はどうなっているのか 交付金による地域振興は反対 また 海岸から 20km 以内が科学的有望地という話があったが 漁業権はどうなるのか 小林文献調査に応じていただいたところに年間 10 億円 最大 20 億円 概要調査に応じていただいたところに年間 20 億円 最大 70 億円 という予算を用意している これは 日本全体が裨益する事業を受け入れていただける地域に対し 利益を返していこうという考えに基づいている また 漁業権については その場に行ってみないと分からない もし漁業権をお持ちの方と調整が必要であれば しっかり対応していくことが必要と考えている 質問者 6 NUMO の話は以前に比べて分かりやすくなり 進歩を感じたが 技術面は進歩しているのか 候補地が出てきても挫折をくり返し 日本ではやはり無理ではないか 小林地層処分の研究は国の研究機関である JAEA を中心に研究しており 着実に進んでいる 研究成果はホームページで公表している 研究施設もご覧いただけるので 是非足を運んでみて欲しい 処分ができる できないというのは技術の話ではなく 私たちの判断にかかっている 他国では既に進んでいる国もある 日本人の私たちにできないことだとは全く思わない 6 以上