マンション建替え時における コンテキスト効果について

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0720_最終_耐震性能検証法チラシ案3種サンプル

調査結果

耐震等級 ( 構造躯体の倒壊等防止 ) について 改正の方向性を検討する 現在の評価方法基準では 1 仕様規定 2 構造計算 3 耐震診断のいずれの基準にも適合することを要件としていること また現況や図書による仕様確認が難しいことから 評価が難しい場合が多い なお 評価方法基準には上記のほか 耐震等

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所得税確定申告セミナー

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表1-表4-2

( 資料 3) 比較検討した住宅 (%) 注文住宅取得世帯分譲戸建住宅取得世帯分譲マンション取得世帯 中古戸建住宅取得世帯 中古マンション取得世帯 ( 資料 4) 住宅の選択理由 (%) 注文住宅取得世帯分譲戸建住宅取得世帯分譲マンション取得世帯 中古戸建住宅取得世帯 中古マンション取得世帯 ( 資

BL住宅金融公庫適合証明手数料案

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横浜市のマンション 耐震化補助制度について

建築物等震災対策事業について

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PowerPoint プレゼンテーション

北栄町耐震改修促進計画の目的等 目的 本計画は 町民生活に重大な影響を及ぼす恐れのある地震被害から 町民の生命 財産を保護するとともに 地震による被害を軽減し 社会秩序の維持と公共の福祉に資するため 建築物の計画的な耐震化を促進することを目的とします 計画の実施期間 本計画の実施期間は 国及び県の実

マンション棟数密度 ( 東京 23 区比較 ) 千代田区中央区港区新宿区文京区台東区墨田区江東区品川区目黒区大田区世田谷区渋谷区中野区杉並区豊島区北区荒川区板橋区練馬区足立区葛飾区江戸川区

Microsoft PowerPoint (確定)【住宅事業者様向け】平成29年度市場動向調査

第18期火災予防審議会地震対策部会

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別表 1 ( 本社 ) 新築一戸建て F35( 通常型 ) の業務手数料 確認申請併用 ( 単位 : 円消費税抜き ) 住宅性能評現場検査価申請併用設計検査設計建設中間検査竣工検査 10,000 13,000 12,000 5,000 8,000 5,000 5,000 8,000 10,000 5

< 調査結果 > 近隣住民の雰囲気も 住宅購入の決め手になった 58.3% 新築購入者では 56.4% 中古購入者では 64.7% Q. 現在の住まいを購入する際 近隣住民の雰囲気も 決め手の一つとなりましたか?( 対象 :600 名 有効回答 :600 名 ) 19.8% 21.0% 15.8%

三鷹市耐震改修促進計画(改定素案)

第 7 章鹿児島県と連携した耐震改修促進法による指導及び助言等 国の基本方針では 所管行政庁はすべての特定建築物の所有者に対して法に基づく指導 助言を実施するよう努めるとともに 指導に従わない者に対しては必要な指示を行い その指示に従わなかったときは 公表すべきであるとしている なお 指示 公表や建


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これだけは知っておきたい地震保険

平成 29 年度税制改正 ( 租税特別措置 ) 要望事項 ( 新設 拡充 延長 ) 制度名既存住宅のリフォームに係る特例措置の拡充 税目所得税 ( 国土交通省 ) 既存住宅流通 リフォーム市場の活性化に向けて 耐震性 省エネ性 耐久性に優れた良質な住宅ストックの形成を促進するため 既存住宅の耐震 省

した 気象庁は その報告を受け 今後は余震確率の公表方法を改めることとしたという 2. 被害状況 被害要因等の分析 (1) 調査方針本委員会は 以下の調査方針で 被害調査と要因分析を行っている 1 極めて大きな地震動が作用し 多数かつ甚大な建築物被害が生じた益城町及びその周辺地域に着目して検討を進め

設 拡充又は延長を必要とする理由 関係条文 租税特別措置法第 70 条の 2 第 70 条の 3 同法施行令第 40 条の 4 の 2 第 40 条の 5 同法施行規則第 23 条の 5 の 2 第 23 条の 6 平年度の減収見込額 百万円 ( 制度自体の減収額 ) ( - 百万円 ) 東日本大震

北上市住宅・建築物耐震化促進計画

約 6 倍になると予測されており これら高経年マンションが増えていく中 経年による建物 設備の劣化等に対応するための大規模修繕や改修等の資金不足の問題が深刻化している 今後 良質なマンションを維持していくためにも 特にマンション共用部のリフォームについての支援が急務である (4) 賃貸住宅のリフォー

1. プロジェクト研究基本情報 研究領域 ( 該当するものに を付けてください ) ( ) ( ) 研究領域 1 豊かな経済活力を生む社会経済制度の設計研究領域 2 生活の豊かさを生む新しい雇用システムの設計 研究課題名責任機関名研究代表者 ( 所属部署 役職 氏名 ) 研究期間 高質の住宅ストック

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世田谷区

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<調査Ⅱ>住宅所有者への老後生活に関する調査

病院等における耐震診断 耐震整備の補助事業 (1) 医療施設運営費等 ( 医療施設耐震化促進事業平成 30 年度予算 13,067 千円 ) 医療施設耐震化促進事業 ( 平成 18 年度 ~) 医療施設の耐震化を促進するため 救命救急センター 病院群輪番制病院 小児救急医療拠点病院等の救急医療等を担

規制改革会議公開ディスカッション 資料2-1

地震と住まいを考える 大地震が起きる確率 文部科学省が管轄する地震調査研究推進本部によると 日本で起こりう る全ての地震の位置 規模 発生間隔を考慮し 横浜市において 今後 ( 1) 30 年以内に震度 6 弱以上の揺れに見舞われる確率は 78%( 平成 26 年 12 月 19 日公表 全国地震動

4 住宅購入 名称住宅購入に対する各種税金と給付金に関する支援 担当部課 概要新築または中古の住宅を取得するとかかる税金があります また 所得税控除や給付金が支払われる制度もあります 1. 不動産取得税 ( 県税 ) 土地や家屋などの不動産の取得時に 県が課税する税金です お問い合わせ先 神奈川県藤

Microsoft PowerPoint - 調査結果(23年度第2回住宅ローン利用予定者編)

財団法人新潟県建築住宅センター

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215 参考資料

本町二・四・五・六丁目地区の地区計画に関する意見交換会

報道関係者各位 2015 年 9 月 1 日 アットホーム株式会社 トレンド調査 30 代 40 代男女に聞く 実家に対する思い 調査 実家が空き家になる可能性がある 29.1% 実家がなくなるのは寂しい 68.4% 不動産情報サービスのアットホーム株式会社 ( 本社 : 東京都大田区 代表取締役

Microsoft PowerPoint - 調査結果(23年度第3回住宅ローン利用予定者編)

o セメントに対する水の比率を低減するか 鉄筋に対す るコンクリートのかぶりを厚くすること 耐震性 極めて稀に発生する地震に対し 継続利用のための改修の容易化を図るため 損傷のレベルの低減を図ること 大規模地震力に対する変形を一定以下に抑制する措置を講じる [ 層間変形角による場合 ] o 大規模地

西原町 2~4 丁目地区 区域図 西原町 2~4 丁目地区 低密度住宅ゾーン 中密度住宅ゾーン 戸建ての低層住宅地を主体に落ち着いた雰囲気を持った良好な居住環境の形成を誘導します また 都市農地の保全に努め 農地と共存した良好な居住環境の形成を誘導します 低層住宅と中高層住宅が調和した良好な居住環境

Ⅲ 適合証明 一戸建て等 ( 消費税込み ) (1) フラット 35 財形住宅の適合証明料金 中間検査 12, , 4 確認審査および完了検査あり 1 8,200 円 6,800 円 18,000 円 4 8,200 円 ,200 円 8,200 円 3,300

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PowerPoint プレゼンテーション

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各年の住宅ローン控除額の算出 所得税から控除しきれない額は住民税からも控除 当該年分の住宅ローン控除額から当該年分の所得税額 ( 住宅ローン控除の適用がないものとした場合の所得税額 ) を控除した際に 残額がある場合については 翌年度分の個人住民税において 当該残額に相当する額が 以下の控除限度額の

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問 2. 現在 該当区域内に居住していますか 1. 居住している % 2. 居住していない % 無回答 % % 単位 : 人 1.9% 32.7% 65.4% 1. 居住している 2. 居住していない無回答 回答者のうち 居住者が約 65

SBIAQ確認検査業務手数料規定


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わが国は世界有数の地震大国です 日本周辺では世界の 10 分の 1 の地震が起こると言われています 東日本大震災では 被害は甚大なものとなってしまいました 阪神 淡路大震災では犠牲者の大半が 建物の倒壊 や 火災 により亡くなっています 今までの悲劇を繰り返さないためにも 建築物の耐震化は喫緊の課題

の長嶋修氏 東日本大震災からおよそ 1 年が経過して 震災を一つのリスクと捉えて 冷静に住宅を選ぶ人が増えているようだ また 同時に 購入者の意識の変化に伴い 耐震性や耐久性に対する 業界側の意識も大きく変わった 購入者への情報提供を丁寧に行うことにより 安心感を醸成するよう意識するようになった と

の各種税制優遇を受けやすくする見直しが行われ 入居までに耐震基準に適合するという証明があれば 1 住宅ローン減税 2 住宅取得資金に関する贈与税の非課税措置 3 中古住宅に関する不動産取得税の特例措置の適用が可能となる 耐震基準に適合しない中古住宅を取得し 耐震改修工事を実施した後に入居するような場

補助 Q: A: Q: A: Q: A: Q: A: Q: A: や助対象と : 既に三世 : 新たに三で 補助 : 現在 夫場合 補 : 新たに三で 補助 : 現在 近となりま : 新たに三で 補助 : 現在 夫合 補助 : 新たに三で 補助 : 現在 賃して近居 : 新たに三で 補助やまぐとなる

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静岡市の耐震対策事業

平成13年度分譲マンションアンケート調査(簡易集計結果)

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平成15年度

どこで起きてもおかしくない地震 必ずやってくる東南海地震!! 阪神 淡路大地震以降 日本は 地震活動期に突入 震度 6 以上の地震が日本 世界各地で群発しています 今後 30 年以内に予想される 三大巨大地震 2011 年 3 月 11 日東日本大地震が発生 多くの方々が 家屋倒壊 津波によって尊い

国土交通大臣 太田昭宏殿 平成 27 年 7 月 27 日 一般社団法人プレハブ建築協会 会長樋口武男 平成 28 年度住宅関連税制及び制度改正要望 昨年 政府は経済再生と財政健全化を両立するため 平成 27 年 10 月に予定していた消費税率 10% の引き上げを平成 29 年 4 月に 1 年半

契約をするとき 契約書に貼る印紙税不動産取引で取り交わす契約書は 印紙税の対象となります 具体的には 不動産の売買契約書や建物の建築請負契約書 土地賃貸借契約書 ローン借入時の金銭消費貸借契約書等がこれに当たります 印紙税の額は 契約書に記載された金額によって決定されます 原則として 収入印紙を課税

の範囲は 築 20 年以内の非耐火建築物及び築 25 年以内の耐火建築物 ((2) については築 25 年以内の既存住宅 ) のほか 建築基準法施行令 ( 昭和二十五年政令第三百三十八号 ) 第三章及び第五章の四の規定又は地震に対する安全上耐震関係規定に準ずるものとして定める基準に適合する一定の既存

スライド 1

Microsoft PowerPoint アンケート調査

第 3 号様式 ( 第 3 条関係 ) 不燃化推進特定整備地区整備プログラム 品川区 豊町 丁目 二葉 3 4 丁目及び西大井 6 丁目地区 平成 25 年 11 月第 1 回変更認定平成 27 年 10 月第 2 回変更認定平成 29 年 3 月 品川区

財団法人 神奈川県建築安全協会

資料 5 公共施設更新コスト試算 1 試算ケース ケース1: 旧耐震基準のうち 築 60 年以上は建替え それ以外は大規模改修 新耐震基準は老朽箇所修繕 耐用年数を 60 年と想定した場合 旧耐震基準の施設のうち 築 60 年以上の施設は 築 60 年が経過した施設から建替える 建替え対象以外の旧耐

PowerPoint プレゼンテーション

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5

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Visio-1401調査データ.vsd

中古マンション概況 212 における首都圏中古マンションの成約は 31,397 件 ( 前比 8.7% 増 ) 3 ぶりに前を上回り 過去最高のとなっています 都県 地域別に見ても すべての都県 地域で増加となっています の 1 m2当たり単価は首都圏平均で 万円 ( 前比 1.9% 下

目次 1. 調査の概要 調査の目的 調査対象 対象地域 調査方法 回収状況 結果の概要 住み替え 建て替え リフォームに関する事項 住み替えに関する意思決定 リフォーム

第 Ⅱ ゾーンの地区計画にはこんな特徴があります 建築基準法のみによる一般的な建替えの場合 斜線制限により または 1.5 容積率の制限により 利用できない容積率 道路広い道路狭い道路 街並み誘導型地区計画による建替えのルール 容積率の最高限度が緩和されます 定住性の高い住宅等を設ける

表紙

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(2) 金沢市の世帯数の動向 350, , ,000 ( 人 世帯 ) ( 人 / 世帯 ) 世帯数 世帯人員 , , , , ,1

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Transcription:

プロスペクト理論とマンションの 耐震性能の選択 中川雅之 齊藤誠

建築物の耐震基準が意味するもの ( 新耐震基準 ) 1982 年から施行 全住宅の 4 割が未だそれ以前の耐震基準に基づくもの 阪神淡路大震災における建物倒壊被害の大部分が この旧耐震基準に基づく建築物 ( 現行の耐震基準は何を保証するのか?) 震度 6 強の地震に対して倒壊しない強度を有しているしかし 大地震に遭遇して倒壊しなかったとしても 相当程度損壊 震度 6 強を超える地震 ( 阪神淡路大震災 新潟県中越沖地震の際の一部地域 ) に遭遇した場合は倒壊

2 つの耐震化政策 1 耐震基準 ( 最低限の基準 ) に適合した耐震化投資の促進 建築基準法など規制 耐震化投資に関する補助金 低利融資 耐震化促進税制 2 耐震基準を超えるレベルの耐震化投資 規制や大きな財政的な支援を行うことは 理論的にも実務的にも理解を得ることが困難? 情報の非対称性の解消

住宅の耐震性能の現状 ( 住宅性能表示制度 ) 流通している住宅は耐震等級 1から3 あるいは免震構造の客観的な評価を受けることが可能 耐震等級 1は建築基準法が定める程度の地震に対して 耐震等級 2はその1.25 倍程度の地震に対して 耐震等級 3はその1.5 倍程度の地震に対して倒壊しない強度 また 免震構造の建築物は 耐震等級 3よりもさらに高い性能 ( 平成 20 年度の新築住宅の耐震等級 ) 戸建住宅は54,838 戸のうち 耐震等級 1が11.3% 耐震等級 2が3.6% 耐震等級 3は85.1% 共同住宅は121,001 戸のうち 耐震等級 1が93.8% 耐震等級 2が3.6% 耐震等級 3が0.8% 免震構造の認定については 2,213 戸がその認定を受けているにすぎない

最低限の水準 標準的経済学に基づく規制 補助等による介 現在の都市の姿 最低限の水準 実現しそうな都市の姿 これで十分か? 新しい都市の姿 行動経済学に基づく緩やかな介入

プロスペクト理論に基づく新しいタイプの政策の可能性 ( 標準的な経済理論 ) 予算制約と 財の消費水準に依存する効用関数が財の選択を決定 選択肢の提示の仕方などのコンテキストはその選択に影響を与えない 税制 補助 規制的な手段による介入が必要 ( プロスペクト理論 ) 人々にとっての 価値 は 財の 水準 ではなく 評価の基準である参照点からの変化によって決定 参照点依存性 損失回避性 感応度逓減 保有効果 現状維持バイアス ( インプリケーション ) 設定されている最低限の基準の参照点化? 人々の耐震性能の選択構造をコントロールする政策 ( より高い水準の耐震性能の参照点化による高次な耐震性能への誘導 )

価値 耐震性能が w だけアップするなら 5 万円払ってもいい 市場価格 w の耐震性能は 10 万円でやりとりされている 現在の住宅の耐震性能 5 万円 - w + w 耐震性能が w だけダウンするなら 20 万円ほしい 20 万円

マンション居住者の耐震性能に関す ( 目的 ) 人々の耐震性能の選択の実験的把握 る意識調査 ( 対象 ) 2010 年 1 月に首都圏のマンションに居住する 4000 名 ( 調査項目 ) 1 回答者の属性 ( 家族構成 職業 世帯年収 危険回避度 ) 2 回答者の居住するマンションの属性 ( 分譲価格 マンションの広さ 建替えの検討状況 マンションの耐震性に関する認識 居住地の地震に対する安全性の認識 ) 3 回答者のマンションの耐震性能に関する選好 4 仮想的な出発点 ( 現在居住しているマンションのタイプ ) を与えた上で 建替え投資のタイプ ( 実現される耐震性能が異なる ) の選択 ( 特徴 )= リアルな選択環境の確保建築士資格を有する専門家に図面の作成 構造計算をしてもらい 現実的な耐震性能 価格の対応関係を確保

どちらを選択するか? 耐震性能アップ価格アップ居住性能ダウン

耐震性能の選好に関する質問 耐震性能が異なるマンションの居住性能 価格などの情報を与えた上で 好ましい耐震性能を選択 耐震性能分譲価格空間上の制約 タイプ 1 耐震等級 1 5000 万円 タイプ 2 耐震等級 2 5050 万円制約がある タイプ 3 耐震等級 3 5100 万円制約がある タイプ 4 免震構造 5250 万円 むしろ改善する

耐震性能の選好に関するアンケート調査結果 正確な情報を与えた場合に思った以上に高い耐震性能を選択する者が多い 選好タイプ 1 選好タイプ 2 選好タイプ 3 選好タイプ 4

今耐震性能が低い住宅に住んでいる ( 参照点 ) 人は どのような耐震性能の住宅を選択するか? 今耐震性能が高い住宅に住んでいる ( 参照点 ) 人は どのような耐震性能の住宅を選択するか?

元々 高い耐震性能を好む人が 耐震性能が低い住宅に住んでいる ( 参照点 ) 場合 どのような耐震性能の住宅を選択するか? 元々 低い耐震性能を好む人が 耐震性能が高い住宅に住んでいる ( 参照点 ) 場合 どのような耐震性能の住宅を選択するか?

建替え計画の選択に関する質問 あなたは 現在タイプ 1 のマンションにお住まいです しかし老朽化が進んだため 現在 マンションの建て替え計画が持ち上がっています 議論されている 耐震等級の変わらない標準的なタイプの建替え計画 A は 現在の建物が使用していない容積率を積極的に活用する結果 マンション全体の戸数を 50 戸から 70 戸へと 20 戸分増加させることができます これを分譲した代金の土地分 ( 上の表から 1750 万円 20 戸 =3 億 5 千万円 ) を 現在のマンション所有者 (50 戸 ) の間で均等に分配することで 戸当たりの建替え費用が軽減します 一戸当たりでみた金額は 1750 万円 20 戸 50 戸 =700 万円に相当します マンション所有者は 建て替えられるマンションの分譲価格の建物分 ( 上の表から 3250 万円 ) から差し引いた分を 負担すればよいことになりますから 3250-700=2550 万円の自己負担が必要になります ただし 今追加的な 3 つの建て替え計画が提案されました このうち 計画 B 及び計画 C は耐震性能が向上するのと引き換えに 柱とはりが太くなるため ポーチ バルコニーの面積が図のように制約されるのと 天井から梁が 20cm 程度突き出します ただし 免震構造の計画 D では 構造上の制約が生じず むしろ改善されています 計画 B 計画 C 計画 D を選んだ場合は追加的な負担をして頂くことになります 建て替え後のマンション 建て替えのための負担金 計画 A 現状のタイプ1( 耐震等級 1) のマンション 2550 万円 計画 B タイプ2( 耐震等級 2) のマンション 2600 万円 計画 C タイプ3( 耐震等級 3) のマンション 2650 万円 計画 D タイプ4( 免震構造 ) のマンション 2800 万円

デフォルトを与えない状態で表明された耐震性能に関する選好 が 建替え計画の選択にどのような影響を及ぼしているか 0.8 0.7 0.6 タイプ 1 を選好した者 ( 選好タイプ 1) が選んだ建替え計画 0.5 0.4 0.3 0.2 割り当てタイプ1 割り当てタイプ2 割り当てタイプ3 割り当てタイプ4 0.1 0 計画タイプ 1 計画タイプ 2 計画タイプ 3 計画タイプ 4 自らの選好に従って整合的な選択を行うケースが多い 自らの選好よりも高い参照点が与えられた場合 選好を変更 割り当てられたタイプが選考タイプよりも耐震性能を劣化させるものである場合には 参照点依存性は明確には観察されない

選好タイプ 2 の者が選んだ建替え計画 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 割り当てタイプ1 割り当てタイプ2 割り当てタイプ3 割り当てタイプ4 0.1 0 計画タイプ 1 計画タイプ 2 計画タイプ 3 計画タイプ 4

選好タイプ 3 の者が選んだ建替え計画 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 割り当てタイプ1 割り当てタイプ2 割り当てタイプ3 割り当てタイプ4 0.1 0 計画タイプ 1 計画タイプ 2 計画タイプ 3 計画タイプ 4

選好タイプ 4 の者が選んだ建替え計画 1 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 計画タイプ 1 計画タイプ 2 計画タイプ 3 計画タイプ 4 割り当てタイプ1 割り当てタイプ2 割り当てタイプ3 割り当てタイプ4

今耐震性能が低い住宅に住んでいる ( 参照点 ) 人は どのような耐震性能の住宅を選択するか? 参照点効果あり 今耐震性能が高い住宅に住んでいる ( 参照点 ) 人は どのような耐震性能の住宅を選択するか? 参照点効果あり

元々 高い耐震性能を好む人が 耐震性能が低い住宅に住んでいる ( 参照点 ) 場合 どのような耐震性能の住宅を選択するか? 参照点効果なし 元々 低い耐震性能を好む人が 耐震性能が高い住宅に住んでいる ( 参照点 ) 場合 どのような耐震性能の住宅を選択するか? 参照点効果あり

新しいタイプの政策とは? わかりやすく + 高質な選択を促す選択構造の提示? 現行の表示方法 等級 1の建物は 極めて稀に発生する地震に対して 崩壊 倒壊等しないとされる耐力をもつ 震度 6 強の地震の揺れで倒壊する確率は 等級 1 の建物では 1.3% ~ 等級 3 の建物では 0.021%( 等級 1 の約 65 分の 1)

現行の耐震等級の表示方法耐震等級 1 が参照点となっている可能性 耐震等級 1 耐震等級 2 耐震等級 3 標準耐震等級 -2 標準耐震等級 -1 等級 新しい耐震等級の表示方法より高いレベルを参照点として提示する 参照点効果及び損失回避性向から低い耐震性能の選択が回避される可能性が高い 標準耐震