目次 1. 胆嚢とはどういうものか 2. 胆石症について 3. 胆石症の原因と症状 4. 胆嚢ポリープについて 5. 胆石症に対する治療について 6. 腹腔鏡下胆嚢摘出術について 7. 腹腔鏡下手術の利点 欠点 8. 単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術について 9. 胆石手術の合併症について 1 0. 麻酔の

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目次 1. 診断名とその説明 ページ 2. 現在の病状...4 ページ 3. 手術方法 ページ 4. 麻酔の方法内容...6 ページ 5. 手術により期待される効果...7 ページ 6. 手術に伴う合併症と後遺症 ページ 7. 手術を行わない場合の予測される経過

私のリビングウィル 自分らしい最期を迎えるために あなたが病気や事故で意思表示できなくなっても最期まであなたの意思を尊重した治療を行います リビングウィル とは? リビングウィルとは 生前に発効される遺書 のことです 通常の遺書は 亡くなった後に発効されますが リビングウィルは 生きていても意思表示

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胆嚢摘出術を受けられる方のための手術に ついての説明書 説明医師 : 同席者 : 日時 : 年月日に以下の通りに説明しました 合志病院 外科 1

目次 1. 胆嚢とはどういうものか 2. 胆石症について 3. 胆石症の原因と症状 4. 胆嚢ポリープについて 5. 胆石症に対する治療について 6. 腹腔鏡下胆嚢摘出術について 7. 腹腔鏡下手術の利点 欠点 8. 単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術について 9. 胆石手術の合併症について 1 0. 麻酔の合併症について 1 1. 麻酔および手術の危険性について 1 2. 手術における輸血の必要性とそれに伴う危険性について 1 3. 肺塞栓症について 1 4. 術後の経過について 1 5. 胆嚢がないことによる問題点 1 6. 手術を受けない という選択をされた場合の経過について 1 7. 同意の撤回 ( セカンドオピニオン ) について 2

胆嚢摘出術を行う原因となる病気は主に胆石症と胆嚢ポリープですが ほとんどの方は胆石症で手術が必要になります この説明書では胆嚢摘出術について詳しく解説していますので 手術を受けられるまでによく読んでおいてください 1. 胆嚢とはどういうものか 胆嚢とは 肝臓の右側の下面にぶら下がっている洋梨型の壁のうすい袋状の臓器です その大きさは個人により異なりますが 直径は 1 0 cm程度で 容量は 3 0 ~ 5 0 m l です 胆嚢の役割は 肝臓で作られた脂肪の吸収を助ける胆汁という消化液を蓄えて 食事をす ると胆嚢が収縮して胆汁を十二指腸内に出し消化を助ける作用があります ただし 胆嚢自体には胆汁を作る機能はありません 肝臓胆嚢 胆管結石 2. 胆石症について 胆石とは胆嚢や胆管のなかに存在する石のことで 胆嚢内にある石を胆嚢結石といい 胆管内にある結石を胆管結石 ( 総胆管結石 肝内胆管結石など ) と呼びます 胆管結石の中には胆嚢内から胆管に落下したものもあります 胆石は最初は砂状のものですが 次第に成長して大きくなり 胆石となります 胆石にはいろいろな種類がありますが コ 3

レステロールが主な成分となっているものが最も多く胆石症の 8 0 % がこの種類に分類されます さらに ビリルビンを主成分にするものや カルシウムを含む種類の結石もあります 胆石は 1 個のこともありますが 複数個あることも多くみられます 3. 胆石症の原因と症状 胆石症とは胆嚢の収縮機能低下や胆嚢の出口が閉塞することにより 胆嚢の中で胆汁が溜まり結石を作ってしまうために生じる様々な症状をいいます 胆石を持っていても全ての方が症状が出るのではなく 多くの方は無症状で経過します 胆嚢結石では 上腹部の痛み 特にみぞおちの辺りから右にかけての強い痛みが出ることが特徴です 時に背中の痛みを伴ったり 肩に痛みを感じる時もあります 胆嚢の出口である胆嚢管が胆石で詰まってしまうと 胆汁の出口がなくなってしまい 胆汁の中に細菌が増殖し胆嚢炎という状態になると激しい痛みがでて熱もでることもあります また 腫れあがった胆嚢を触れることもあります 胆石による痛みは食後しばらくして起こることが多く これは食事をすると胆嚢が収縮して胆汁を出そうとする作用と関係しています 胆嚢の炎症が強い場合には 胆嚢が破れてしまい腹膜炎を起こすこともあります また 炎症が肝臓に波及して肝臓に膿の溜まりが ( 肝膿瘍 ) ができたり 肝臓関係の血液検査値が悪くなることもあります 胆管の胆石には胆管内でできたものと 胆嚢から胆管に落下した胆石の 2 種類がありますが症状は同じです 胆管の中に胆石があると 胆管の末端を塞いでしまい 胆汁が流れなくなってしまい黄疸がでることがあります さらに 胆管の末端には膵管が合流していますが 胆石がこれを塞いでしまうと急性膵炎という状態となり 重篤な状態となる時もあります 4. 胆嚢ポリープについて 胆嚢ポリープとは胆嚢の壁に小さなイボ状の病変 ( ポリープ ) 4

を認める病気です 胆嚢ポリープは小さいうちにはほとんど症状は無く 他の病気の検査で胆嚢も調べた時にたまたま見つかることがほとんどです 特にお腹の超音波検査で見つかることが多くあります 胆嚢ポリープは小さな良性のポリープが多く治療を必要とすることはほとんどありません しかし 良性が多いからと言ってこのまま 検査をしないのではなく定期的な検査が必要です 特に 1 c m を超える胆嚢ポリープや次第に大きくなる胆嚢ポリープでは悪性の可能性もあり 治療が必要になります また ポリープ状の胆嚢癌が見つかることもあります 超音波やお腹の C T 検査でも良性と悪性の判断は難しく 胆嚢を摘出をしてポリープを直接検査することが 確実に良性 悪性の診断をつける最も良い方法です このため 1 c m を超えるような胆嚢ポリープや次第に大きくなるような胆嚢ポリープでは胆嚢摘出術をすることがよいとされています 術式は胆石症に対する胆嚢摘出術と同じで 特に違いはありません 5. 胆石症に対する治療について 胆石症の治療は内科的治療と外科的治療に分かれますが 内科的治療には内服薬により胆石を溶かしてしまおうとする胆石溶解療法と体外から衝撃波をあてて 胆石を砕いてしまう治療 ( 体外衝撃波結石破砕術 ) に分けられます 外科的治療とはいわゆる胆嚢摘出術です 胆石溶解療法内服薬により胆石を溶かすことを期待する治療法であり 体への負担が一番小さいことが特徴ですが 内服薬で溶ける可能性がある胆石はかなり限定されます しかも 溶けるまでに長い時間を要するため長期間にわたって飲み続けないといけないことが問題です 内服薬の効果が胆石の種類により限定されること 胆石が溶解して無くなっても 胆石を作り出す胆嚢そのものが残るために 再発の可能性がかなり高いため確実な治療法とは言えず 一般的な治療法ではありません 5

体外衝撃波結石破砕術もともと尿管結石を砕くために開発された治療法ですが 胆石にも同様の治療法が有効ではないかとのことで導入されました 体外から衝撃波を結石に集中させて 結石を細かく砕いて治療しようとする方法ですが 胆嚢内の結石が細かく砕かれても胆嚢から自然に排出されず そのための処置が必要になることや 使用できる結石の種類にも限られていることが問題です また 急性膵炎や胆嚢炎などの重篤な合併症が生じる時があるため 現在ではあまり行われなくなってしまいました 胆嚢摘出術胆嚢結石に対する最も確実な治療法は胆嚢摘出術です 症状の原因となっている胆石を胆嚢とともに除去できるということと 胆石は胆嚢の機能不全から生じるためその発生源を取り除けるという意味で根治的な治療法です このため 胆嚢を残して内部の胆石を取り除くということは意味がなく 胆嚢そのものを取り除くことが必要になります この胆嚢摘出術は 1 0 年以上前には全身麻酔で開腹下に胆嚢摘出術を行うことが一般的でしたが 現在では腹腔鏡下胆嚢摘出術が標準的な治療法とされています 開腹胆嚢摘出術 腹腔鏡下胆嚢摘出術 6

6. 腹腔鏡下胆嚢摘出術について 開腹による胆嚢摘出術はお腹の真ん中か右の肋骨下のあたりを 1 0 cm以上切開して行っていました 以前はこの開腹の胆嚢摘出術が標準的な治療法でした 開腹手術は胆嚢を直接見れて 手術を行う医師の手で胆嚢や周囲の臓器を触れることができるために 安全に行えることが特徴です しかし 最近の手術技術や手術器具の進歩により 全身麻酔でお腹を二酸化炭素ガスで膨らませて空間を作り カメラと手術器具をお腹の壁にあけた細い穴から入れて 手術を行う腹腔鏡下手術が行われるようになりました 特に胆嚢摘出術はお腹の手術の中でも最も早くから腹腔鏡下手術が導入された術式であり 現在では開腹手術より腹腔鏡下手術が標準的に行われる治療法となっています 腹腔鏡下胆嚢摘出術は 4 個の穴をお腹の壁にあけて手術を行いますが このうちお臍の穴から胆嚢を取り出します ただし 腹腔鏡下胆嚢摘出術は小さな穴から行うという制約があるため 全ての方に適応できるわけではありません 特にこれまで上腹部に手術をうけられた方や胆嚢に他の疾患を合併している方は開腹による手術の方がよいと思われます また 腹腔鏡手術で手術を開始した場合でも 多くの方はそのまま腹腔鏡で手術を終了できるのですが なかには腹腔鏡で手術操作が続行しづらいこともあり その場合には開腹手術へ変更する場合もあります 当院でも胆嚢摘出術は腹腔鏡下胆嚢摘出術を標準的な外科的治療としており 手術が必要なほとんどの胆石症のある患者さんにこの手術を行っております 7. 腹腔鏡下手術の利点 欠点 腹腔鏡下胆嚢摘出術の利点は傷が小さく 術後の傷の痛み 7

が軽いことにあります 傷は小さいことから手術後は目立ちにくく美容上すぐれています さらに 腸を直接触らないため 腸の動きの回復が早いことも利点としてあげられています しかし この手術の欠点としては先ほども書きましたが 小さな穴から手術を行うため 癒着のひどい方や 胆嚢の炎症が非常に強い方 さらに上腹部の手術を受けられたことのある方では行えないことがあげられます さらに カメラでは見れる範囲が限られており 通常の手術と比べて見れる範囲が狭いことと テレビモニターという 2 次元の画像でお腹の中を見ながら手術を行うため 胆嚢以外の臓器損傷が起こりえるということがあげられます 8. 単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術について 従来の腹腔鏡下胆嚢摘出術はお腹にあけた 4 個小さな穴から胆嚢摘出術を行う手術ですが 最近ではお臍にあけた 1 個の穴から全ての手術器具を入れて手術を行う単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われるようになってきました この手術は 従来の腹腔鏡下胆嚢摘出術より操作が制限されるため 手術はやや難しく適応が制限されますが 傷が少なく美容上の利点があることと 痛みが軽いことが特徴です ただし 従来の腹腔鏡下胆嚢摘出術と比較した安全性についてはいまだに明らかではありません 当院でも 2 0 1 0 年 4 月よりこの単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術を導入しており 適応のある方にはお勧めしていますが 従来の腹腔鏡下胆嚢摘出術の方が安全に行えると判断した方には従来の術式をお勧めしています 単孔式腹腔鏡下 胆嚢摘出術 8

9. 胆石手術の合併症について どのような手術でも全く危険が無いわけではありません しかし 胆嚢摘出術が必要であるということは 今後胆石による様々な危険性を回避するために必要であるということと 手術による危険性より胆石の存在による危険性が上回るということを十分に理解していただきたいと思います 胆石症に対する手術は他の胃や大腸などのお腹の手術と比較した場合は 比較的危険性が低いですが やはりある一定の確率で合併症は生じてきます 胆石に対する手術は 前述のように開腹手術と腹腔鏡下手術があります 合併症に関しては胆嚢を切除するということが共通しているためはほぼ同じでありますが 腹腔鏡下胆嚢摘出術では腹腔鏡特有の合併症が生じる可能があります 術中の合併症 出血 : 多くは術中に止血が可能ですが 腹腔鏡手術で止血困難な場合には開腹手術へ変更することがあります また 輸血が必要になることもあります 胆管損傷 動脈損傷 : 胆嚢周囲には肝臓を栄養する動脈や胆汁の通り道である胆管が近接して存在しています 手術ではこれらの動脈や胆管を避けて手術を行いますが 胆嚢の炎症が強いときや動脈や胆管の先天的な走行異常を持っておられる方もあり 認識が難しいこともあります 腹腔鏡下手術でこれらが生じたときは 開腹手術への変更が必要になります 消化管損傷 : 手術中には小腸や大腸などの消化管をまず胆嚢周囲から排除してから手術を開始しますが 特に腹腔鏡下手術では器具の出し入れの際に消化管損傷を生じる危惧もあります また 手術中にはなかなか診断がつかず 術後になって症状がでることもあり 再度手術が必要になることもあります 9

皮下気腫 : 腹腔鏡下手術ではお腹の中に二酸化炭素ガスを入れてお腹を膨らませて 手術を行いますがこのガスが皮膚の中に入り 皮下気腫という状態になることがあります これは 手術後しばらくすると吸収されて無くなっていきます 術後の合併症 創感染 : 開腹手術でも腹腔鏡下手術でもお腹に傷を作りますので 傷に細菌が感染し創感染を起こすことがあります 腹腔鏡下手術では傷が小さいため 創感染の可能性は低くなるとされています 肺炎 : 胆石の手術で手術後に肺炎が生じる可能性はかなり低いですが 肺の機能がもともと悪い方や喫煙歴のある方では可能性がやや高くなります 多くは抗生物質の投与で治りますが 痰が多くでて呼吸がしにくい場合には気管切開と言って痰を吸い出すための穴を気管に開けて管を留置したり 人工呼吸器が必要になることもあります 術後出血 : 胆嚢を摘出した部位から術後に出血がみられることがあります 手術中に十分に出血が止まったのを確認は行うのですが 術後に再度出血が生じることがあります 多くの場合は自然に止血されますが 出血が多量になり止血が困難な場合には輸血が必要になったり 再度手術を行い止血が必要になることもあります 術後胆汁漏 : 胆嚢が付着していた部位の肝臓から手術後に胆汁が漏れ出すことを言います 胆汁の量が少ない場合には絶食で様子をみれば自然になおることが多いです 胆汁の量が多かったり 経過をみても良くならない場合には再度手術が必要になることもあります 癒着性腸閉塞 : 傷に腸や腹腔内の脂肪が癒着することにより腸閉塞が生じる可能性があります 腹腔鏡手術では開腹手術より可能性は少ないとされていますが 全くないわけではありません この癒着性腸閉塞の特徴は手術後数年経過しても発生する可能性があることです 10

癒着性腸閉塞は多くの方で食事をせずに絶食にしていれば軽快しますが 絶食でも軽快しない場合や繰り返す場合には手術が必要になることもあります 肝機能障害 黄疸 : 胆嚢は肝臓にぶらさがるように付いているため 胆嚢を摘出する際には肝臓にも影響が及ぶことがあります このため 術後には一時的に肝臓の機能障害がでることもあります また 手術中や手術後には抗生物質を含め様々な薬を投与しますが 多くの薬は肝臓で代謝されるため 肝臓に多少の影響を与える可能性があります 時に これらの薬にアレルギーを持っておられる方もあり 肝臓の機能障害や黄疸としてあらわれることがあります 腹腔内膿瘍 : 胆嚢を摘出した部位に細菌の感染がおこり 術後に膿瘍を形成することがあります 術中に胆嚢から胆石がこぼれ落ちた場合にも発生しやすくなります 術中にできるだけ洗い流して 洗浄を行うのですが完全に予防はできません ほとんどの方は抗生物質の投与で治りますが 膿の量が多かったり 抗生物質が効きにくい場合などにはお腹の上から針を刺して 膿を体外に出す治療 ( ドレナージといいます ) が必要になることもあります これらの合併症は起こる可能性は低いですが 一度起こると命にかかわる可能性ものものあります さらに 術後合併症は通常術後数日以内に起こりますが 創感染や癒着性腸閉塞は退院後に起こることもあります 特に癒着性腸閉塞は術後長期にわたって起こる可能性があります これらの合併症以外にも様々な合併症が発生する危険性もありますが 合併症が生じた場合には担当医より説明のうえ適切な処置を開始します 1 0. 麻酔の合併症について 胆嚢摘出術の際の麻酔は全身麻酔で行いますが 全身麻酔では麻酔中には自分の呼吸を止めて人工呼吸器により呼吸を助けてもらいます このために 手術中 11

には肺に酸素を送り込むために気管内にチューブを入れておきますが このチューブを入れる際に歯が欠けたり抜けたりすることがあります また 手術中には歯が抜けなくても 手術終了後に強く噛みしめたりすると 知らない間に歯が抜けて飲み込んでしまい 胃の中で歯が見つかることもあります また 非常にまれな麻酔の合併症として 悪性高熱という特殊な病気があります 全身麻酔中に高熱が出て 全身が硬直してしまい 不整脈や腎機能低下などを来す非常に重篤な命にかかわる病気です この病気は麻酔前の予測はできませんが 身内の方に同じ病気の方がおられると危険性が高いので 手術に伴う麻酔でこれまで身内の方に問題があった場合は手術前に申し出てください 1 1. 麻酔および手術の危険性について 我々は担当医として可能なかぎり 手術および麻酔で生じる合併症は避ける努力をしますが あらゆる手術および麻酔はある程度の率で合併症が生じるもので 1 0 0 % 安全ということはありません しかし 我々はできるだけ安全に手術および麻酔を行って 合併症を避けるべく努力します 1 2. 手術における輸血の必要性とそれに伴う危険性について 通常の胆石の手術では輸血を必要とすることはまずありません 術前より貧血が強い方 手術中の出血が多い場合や手術後の出血が見られた方には輸血が必要になることがあります 輸血は血液中の赤血球 血小板 血漿蛋白などが不足した時その成分を補う治療法で 次の場合輸血や血液製剤の投与が行われます ( 1 ) 造血機能の低下により 自分では必要な血液量を十分には造れない ( 2 ) 大量の出血があり 生命の安全に危険が生ずる [ 下の ( 3 ) を含む ] 12

( 3 ) 手術の出血量が一定量を越え 手術の継続困難か術後経過が悪化する恐れ ( 4 ) それ以外の方法で 組織の接着や止血が困難輸血や血液製剤の投与を行わない場合の危険性貧血の強い時や 大量出血時では血液循環が悪くなり脳 心臓 肝臓 腎臓などの生命の維持に重要な臓器の働きに支障をきたします また 血小板や凝固因子が不足すると出血しやすくまた血が止まらなくなり 同様な病態をきたします 輸血以外の治療法 自己血輸血 輸血の種類について ( 1 ) 増血剤で改善が期待でき 時間的な余裕のある場合はその方法を選べます ( 2 ) 患者さんの病状と術式などにより医師が可能であると判断した場合は 自己血輸血という方法もありますが 進行がんや輸血の可能性の少ない場合は行いません ( 3 ) 上記 ( 1 ) ( 2 ) 以外の場合 原則として日本赤十字血液センターから供給されている検査済みの血液 ( 赤血球 血小板 血漿など ) を必要最小限の輸血や 血液製剤の投与を行います 輸血の副作用アレルギー性の反応として蕁麻疹程度のものから 発熱 溶血性反応 ( 1 / 1 2 万人位の頻度 ) ショック ( 1 / 4 万人位の頻度 ) などの重篤な副作用が起こることがあります まれに輸血血液中のリンパ球により引き起こされる移植片対宿主病 ( G V H D ) という重篤な副作用もありますが ( 1 / 6 0 万人位の頻度 ) 成分輸血と放射線照射により予防策をとっており 減少傾向にあります 肝炎ウィルス ( 1 / 6-1 8 万人位の頻度 ) やエイズウィルス ( 1 / 1 2 0 万人位の頻度と予想される ) などの混入は厳重な検査で除外してありますが 完璧ではなく また未知の病原体混入の可能性も否定はできません 長期かつ頻回の赤血球輸血は全身の鉄沈着により主要臓器の障害を起こす可能性があります 13

血液製剤の副作用輸血と同じように アレルギーや蛋白質を介した病原体混入の可能性 ( 狂牛病など ) 未知の病原体混入の可能性は否定できません ウイルス混入のリスクはほとんどないと考えられています 合併症の予防と治療輸血や血液製剤の投与は これらの治療に伴う危険性 ( 副作用 ) を上回る効果が期待される場合に 同意のもとに行います 副作用防止のため 前もって患者さんの血液型 不規則抗体 血液製剤の交差試験などを行い 放射線照射やフィルターなど可能な予防策をとっています また副作用発生時には適切に対処いたします なお 予期できない急な出血 手術中の不測の事態で緊急に輸血や血液製剤の投与を必要とする際は 医師の判断に任せていただくことがあります 1 3. 肺塞栓症について 頻度は低いですが 非常に重篤な合併症として 足の静脈内に血液の塊ができて これが静脈の流れにのって流れていくことで肺の静脈に詰まってしまう 肺塞栓症 という病態が起こりえます これは 飛行機に乗って長い時間にわたり足を動かさないでいると 起こりやすくなることから 旅行者血栓症 とも呼ばれています 日本ではもともと頻度は低いとされていましたが 近年増加してきているとされています 肺の太い血管に詰まってしまうと 呼吸ができなくなったり 心臓に急激に負担がかかり心停止にまで至ってしまうという 非常に怖い合併症です 骨盤内に大きな腫瘍がある方や 肥満 高齢の方 悪性腫瘍がある方や大きな手術をうけられた方 さらに輸血が必要であった方などに発症しやすいとされていますが 正確な頻度は不明です 胆石症の手術では肺塞栓症の頻度は少ないですが 突発的に発症するため発症すると治療が間に合わずに死亡されることも多く 発症予防が非常に重要になります その予防のひとつとして術後歩行されるまで弾性ストキングという下腿を軽く圧迫するストッキングを着用していただきます また 早期に歩行を開始することで予防できるため 術後は早期に離床していただ 14

きます また 発症の危険性が高いと判断した場合には術後血液を固まりにくくする薬剤を投与することもあります ( 術後早期には出血の危険性があるため 出血の危険性が少なくなってから投与を開始します ) 1 4. 術後の経過について 手術前には検査で胆管内に胆石の無いことを確認はしておりますが 非常にまれですが手術中に胆嚢内の胆石が胆管内に脱落することもあります この場合でも多くは胆管内を流れていき十二指腸へ自然に排出されますが まれに内視的に胆石を取り除く処置が必要になることもあります 手術後に問題がなければ 手術の翌日から食事が始まります また 数日で入浴も可能になり 1 週間以内には退院が可能となります ただし これには個人差も大きく さらに手術が開腹手術へ変わらずに腹腔鏡手術で終了したかにもよって変わってきます 1 5. 胆嚢がないことによる問題点 胆嚢は前述したように消化液である胆汁を一時的に溜めておき 食事をすると胆嚢が収縮し胆汁を消化管内に出すことで 消化 吸収を助けることことにあります 胆嚢が無くなっても胆汁は分泌されるため 消化や栄養の吸収には特に問題はありませんが 脂肪分の多い食事をとると下痢気味になる方もおられます ただし ほとんどの方は日常生活は手術前と変化ありません 1 6. 手術を受けない という選択をされた場合の経過について 胆嚢摘出術を受けないという選択もあります ただし 胆石による急性胆嚢炎で手術をうけられる方は 手術をしない場合には抗生物質で軽快する可能性もありますが 胆嚢の壊死を起こして胆嚢が穿孔を起こし腹膜炎を起こしたり 細菌 15

が増加し腹腔内の膿瘍を作ったり 菌血症という非常に重篤な状態になる可能性もあります また 胆石により胆嚢炎を繰り返している方では 胆嚢周囲の炎症が繰り返しおこるため癒着が強くなり 腹腔鏡で手術を行うことが難しくなる可能性があります 1 7. 同意の撤回 ( セカンドオピニオン ) について これまでの説明で不明な点があれば 担当医になんでも相談してください 他院の医師に相談されるというセカンドオピニオンという方法もあります 説明に納得していただきましたら 同意書に署名 捺印をお願いします ただし 一旦署名していただいた後でも 同意はいつでも取り消すことができますので申し出て下さい 16