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水とエネルギー概要 2014 年国連世界水発展報告書 in support of による支援 国際連合教育科学文化機関

水とエネルギーについて 8 つのメッセージ 2014 年国連世界水発展報告書からの主なメッセージ 1. エネルギーと淡水に対する需要は今後数十年間で大幅に増加する見込みである この増加のために ほぼすべての地域で 大きな課題が発生し 資源が圧迫を受ける 特に開発途上国と新興経済国ではこの傾向が強い 2. 水とエネルギーの供給は相互依存の関係にある 一方で行った選択が良きにつけ悪きにつけ他方に影響する 3. 政策立案者 計画者 実務者は各分野の間に存在する障壁に対応するため 対策を講じることができる 革新的で現実的な国家政策により 水とエネルギー サービスの提供の効率と費用対効果を高めることができる 4. エネルギー サービスと水供給サービスの価格に貧困層と社会的弱者の基本的なニーズを損ねず サービスの提供にかかる費用と社会環境への影響をうまく反映することができる 5. 民間セクターは水とエネルギーのインフラ投資 維持管理 運営でより大きな役割を果たすことができる 6. 研究開発に対する民間セクターの参画と政府の支援は 代替 再生可能及び水集約度が低いエネルギー源の開発に不可欠である 7. 水とエネルギーはともに持続可能な開発の中心であり そのことが認識される必要がある 8. 水とエネルギーの共有 分配 生産 及び配給についての決定は 社会的及び男女間の公平性と密接な関係がある 水とエネルギーの統治はジェンダーに十分配慮する必要がある 2 2014 年国連世界水発展報告書

水とエネルギーは強く結びつき 相互依存が高い 一方で行った選択が他方への直接的 間接的に肯定的または否定的な結果を及ぼす 達成しようとしているエネルギー生産の形式により そのエネルギーの生産に必要な水量が決まる 同時に 淡水資源の利用可能性と配分でエネルギー生産に確保できる水量が決まる 水の利用と管理 エネルギー生産に関する決定には重大で多面的で広範に及ぶ影響を相互に及ぼし この影響は肯定的な面と否定的な面が入り交じっていることが多い 今日の課題 : サービスを受けていない人々にサービスを拡大 淡水とエネルギーは人々の生活と持続可能な社会経済の発展に欠かせない あらゆる種類の開発目標について進歩を遂げるために 水とエネルギーが基幹的な役割を果たすことは今では広く知られている 多くの人の生活を脅かす気候 貧困 飢餓 健康 財政に関する地域的 世界的危機は 水とエネルギーを通じて互いにつながっている 特に 1 日 2.50 米ドル未満で生活する 30 億人への影響が大きい 世界中で 推定 7 億 6,800 万人が改善された水源に依然としてアクセスできずにいる 概算では 水に対する権利が満たされていない人の数は35 億人にも及ぶ可能性があり 25 億人の衛生状態は改善されないままである 13 億人を超える人が今なお電気を使えない生活をしており 約 26 億人が料理に固形燃料 ( 主にバイオマス ) を使用している 以上の数字が同じ人々を表すものであることが多いという事実は 室内空気汚染によって引き起こされる呼吸器疾患と 安全な飲料水がなく不衛生であることが原因で発する下痢と関連する水系感染症の間の密接な関係により明らかである 図 1 国別の一人当たりエネルギー消費量 (2010 年 ) 一人あたりの年間消費量 100 万 BTU 400 超 250~400 150~249 75~149 25~74 10~24 5~9 5 未満 注 :BTU( 英熱量単位 ) 100 万 BTU はガソリン 30 リットルから得られるエネルギーにほぼ等しい 出典 :Burn:An Energy Journal(http://burnanenergyjournal.com/wp-content/uploads/2013/03/WorldMap_ EnergyConsumptionPerCapita2010_v4_BargraphKey.jpg, から引用した出典より )( 2013 年 10 月にアクセス ). Anrica Deb が oundvision Productions のため作成 使用許可済み 水とエネルギー 3

これからの課題 需要の高まりへの対応 人口増加 経済成長 ライフスタイルの変化 消費パターンの発展によるニーズを満たすために 淡水と エネルギーの需要は 今後数十年間 大幅に増加を続け 限られた天然資源と生態系に対する既存の 圧力はさらに増大する この結果生じる課題が最も深刻になるのは 市場経済化が加速している国や経 済の急成長を遂げている国もしくは人口の大部分が近代的なサービスを利用できない国だろう 取水量としての 世界の水需要は 主に 製造業 400 火力発電 140 及び生活用水 130 の需要増加のため 2050年までに約55 増となると予想されている その結果 この時期には淡水の供 給力にかかる負担はますます増し 世界の人口の少なくとも40 が2050年まで深刻な水ストレスのある地 域に住むことになると予想されている 地下水供給が減少しているという明らかな証拠があり 推定では 図 2 再生可能な水資源量 1人当たり年間 2011年 深刻な 水不足 0 ストレス 不足 500 1 000 脆弱 1 700 2 500 7 500 15 000 50 000 出典 世界水アセスメント計画 WWAP 国連食糧農業機関 FAO のデータベースAQUASTATからのデータで作成 アンドラとセルビア 外部データ を除く全ての国のデータを集約 2013年10月にウェブサイトにアクセス 及びUN-Waterカテゴリー境界値を使用 4 2014年 国連世界水発展報告書

冷却技術による発電のための水使用 世界の帯水層の 20% が過剰揚水されており 一部は危機的 な状態である 全世界で湿地の劣化が進んでいるため 生 態系の浄水能力が減少している 2035 年までの期間に世界のエネルギー需要は 1/3 以上増え 中国 インド 中東諸国が増加の約 60% を占めると予想され ている 電気需要は 2035 年までに約 70% の増加が見込まれ ている この増加のほぼすべては経済協力開発機構 (OECD) 非加盟国によるものであり インドと中国が全体の増加の過 半数を占めると見込まれている エネルギー需要増大が水にとって意味すること エネルギーはさまざまな形で始まり 複数の方法で生産され それぞれが水資源に対する独自要求があり 影響を与える 従って ある国や地域のエネルギーミックスが例えば化石燃 料から再生可能エネルギーに発展する時には 水に対する 影響と生態系サービスも同様に進展する 世界の発電の約 90% が水集約型である 国際エネルギー機関 (IEA) の推定では 2010 年に世界のエ ネルギー生産に使われた取水量は 5.830 億m3 ( 世界の取水量 合計の約 15%) を占め そのうち 660 億m3を消費した 先進 的な冷却システム ( 取水量減にはなるものの水消費増となる ) を備えた高効率の発電所への移行とバイオマス燃料の生産 増のために 2035 年までに取水量が 20% 増 消費量が 85% 増となる可能性がある バイオマス燃料の生産は燃料生産 の中でも最も水集約型であるため バイオマス燃料が地方や 地域に大きな影響を及ぼす可能性がある 再生可能エネルギーの開発は継続的に進んでいるが 世界 図 3 その他 / なし 乾燥 ガス コンバインドサイクル発電所ガス コンバインドサイクル発電所 ( 二酸化炭素の回収 貯蔵 (CCS)) 冷却塔 冷却槽 貫流型 風力 太陽光発電 集光型太陽熱発電 (CSP)* 地熱 ** ガス コンバインドサイクル発電所 石炭ガス化複合発電石炭ガス化複合発電 (CCS) 化石燃料蒸気 化石燃料蒸気 (CCS) 原子力 ガス コンバインドサイクル発電所 化石燃料蒸気 原子力 ガス コンバインドサイクル発電所 取水消費 化石燃料蒸気 原子力 <1 10 1 10 2 10 3 10 4 10 5 10 6 l/mwh * タワー 乾式 ハイブリッド冷却 スターリング技術を用いたトラフ式 タワー式 フレネル技術を含む ** タワー 乾式 ハイブリッド冷却を用いたバイナリー フラッシュサイクル 高温岩体地熱発電技術を含む 注 : ここに示されている範囲は 発電運用段階のためのもので 清浄 冷却 ニーズに関連するその他のプロセスが含まれている 投入燃料の生産に使われる水を除く 化石燃料蒸気には 蒸気サイクルで運用されている石炭 ガス 石油火力発電が含まれている 発電所の運営から報告されているデータは化石燃料蒸気貫流冷却に使用する その他の範囲は引用出典でまとめられている推定に基づくものである 太陽光発電 集光型太陽熱発電 (CSP) コンバインドサイクル発電 (CCGT) 石炭ガス化複合発電 (IGCC) 二酸化炭素の回収 貯蔵 (CCS) 数値範囲については http://www.worldenergyoutlook.org. 参照 出典 :I E A(2012, p. 510 図 17.4 引用されている出典より ) World Energy Outlook 2012 OECD/IEA IEA( 国際エネルギー機関 ). 2012. World Energy Outlook 2012.Paris, OECD/IEA. 水とエネルギー 5

のエネルギーミックス全体の進展は化石燃料への依存が続くというやや一定の方向にとどまっているようである 石油 ガス抽出により 大量の 随伴水 (Produced Water) が 石油とガスとともに油井とガス井から産出されている 随伴水は通常 取り扱いが非常に難しく 費用がかかる 従来にはなかった石油 ガス生産では 一般的に従来の石油 ガス生産よりも使用する水の量が多い 火力発電所は全世界の発電の約 80% を占めており 大量の水を利用する部門である 発電所冷却は 欧 州における淡水取水合計の 43%(50% を超える国もある ) 米国のほぼ 50% 中国の国全体の保水量の 10% を超える割合を占めている 類似点 差異 相違点 : 水とエネルギーの結び付きを超えて 水資源の利用 ( または濫用 ) 方法の決定は 経済 産業開発 公衆衛生 投資と融資 食料安全保障 そしてこの報告書に最も関係があるエネルギー安全保障に主にかかわる幅広い政策サークルから生じる 21 世紀の統治上の課題は 水の多面性 役割 利点を受け入れ エネルギーなど あらゆる水に依存する部門で水を意思決定の中心に据えることである エネルギーは水に比べると巨大産業であり あらゆる種類の資源を数多く使用できる エネルギー分野の開発では 水資源の管理と水関連サービス ( 給水と衛生 ) の向上に比べて, 市場動向が果たす役割ははるかに重要となる傾向があり そして ( 水関連サービスは ) 歴史的にも公衆衛生と福祉の問題である 水資源は 公共財であるべきであるという考えがあり ( とはいえ 公共財 の経済学上の定義は淡水には当てはまらない ) 安全な水と衛生を利用できることは 人権 と認識されている ( 公共財や人権という ) 考え方は通常はエネルギーには適用されない この経済的 商業的 社会的な差異を反映して ほとんどの国では エネルギーが水よりも政治的関心を引いている 水供給が限られているにもかかわらず 需要が増大しているため 水集約型のエネルギー生産者に対して別のアプローチを探すことを求める圧力が増している 特に エネルギーが他の主な水利用者 ( 農業 製造業 都市の飲料水と衛生サービス ) と競合し 水の利用が健全な生態系の維持に限定される可能性の高い地域では顕著である 例えば従来にはなかったガス源 石油源 バイオマス燃料の発展を通じて 世界のエネルギー生産の増加と発展に関する不確実性が発生し 水資源などの利用者に大きなリスクが生まれている ある分野の利益となる政策は別の分野ではリスクや有害な効果を増す結果になりえるが コベネフィット ( 相乗便益 ) が生まれる可能性もある 複数分野のトレードオフを管理し コベネフィットを最大化する必要性は差し迫った重要な問題となった エネルギー部門の必要水量の評価にかかわる水資源計画者と意思決定者は 発電 燃料抽出技術とこの 6 2014 年国連世界水発展報告書

技術が資源に及ぼす可能性のある影響について適切なレベルの知識が必要である エネルギー計画者と 投資家は計画と投資の評価にあたって 水循環の複雑さと競合する水利用を考慮する必要がある 主題の課題と対応 コベネフィットを最大にし マイナスとなるトレードオフを最小限にする水とエネルギーのインフラと技術の共同開発と管理の機会が多数ある 発電所と淡水化プラントの組み合わせ 熱装置と発電所の組み合わせ 火力発電所の冷却に代替水資源を利用 さらには下水からのエネルギー回収など エネルギー関連サービスと給水の共同生産と相乗効果の利用を実現する機会は多数 存在している 技術的な新たな問題解決方法の追求に加え 部門間の協力と統合計画を推し進めるために 新たな政治 経済の枠組みを設計する必要があるだろう 考えられるシナジーを利用した横断的協力 費用の削減と持続性を目指した水とエネルギーの統合計画 国レベルでのトレードオフの評価 需要側の介入 分権化されたサービスなど支出の効率化に対する革新的なアプローチが エネルギーにとっては重要であるものの 水について考えるとはるかに大きくなるインフラと資金の格差を解消する助けになる可能性がある 火力発電と照らし合わせて考えると 発電 他の水利用者 環境配慮の間で対立が深まる可能性が高まっている 時には技術の進歩によってトレードオフが少なくなることもあるが このような進歩のおかげで独自のトレードオフが生まれる可能性もある 水という視点から見ると 太陽光発電と風力発電が発電源として最もふさわしいのは明らかである しかしながら 多くの場合 太陽光発電と風力発電は断続的なサービスしか提供できないために 負荷のバランスを維持するために他の動力源が必要となり 地熱発電を除くと 他の動力源ではどうしても水が必要になるだろう 世界のエネルギーミックスと 関連する水の需要に大きな変化が生じる前に 化石燃料をはるかに下回るレベルのままである再生可能エネルギーの開発支援を大幅に増やす必要がある 地熱エネルギーの発電利用の開発は不十分で その可能性は正当な評価を受けているとはほど遠い 気候とは関係がなく 温室効果ガスの排出は最小限に抑えられるか ほぼゼロであり 水を消費せず 人類の時間的尺度では可用性は無限である 現在 世界レベルでは 農業が最も多く水を利用しており 取水量全体の約 70% を占める 食料生産とサプライチェーンが世界の全エネルギー消費の約 3 分の1を占める バイオマス燃料向け農業原料に対する需要は数十年間 農業生産の新需要源としては最大のものであり 2007 ~ 2008 年に全世界で発生した物価の急騰の主因となった バイオ燃料も処理段階で水が必要であり かんがい農地作物から製造したバイオ燃料に必要な水の量は化石燃料よりもはるかに多くなる可能性がある エネルギー助成金を提供して 農家が持続不可能な採取率で帯水層からポンプで水をくみ出すようにすることは 地下水源の枯渇につながりつつある 農業食品連鎖に沿って農場とその後の全段階でエネルギー効率化を適用すると 技術的 行動的変化を通じて 間接的な節約 または農業生態学に基づく農業行為を採りいれて獲得したコベネフィットを通じて直接的な節約を達成できる 知識に基づいて正確にかんがいを行うと 融通がきき 信頼性が高く 効率的な水の利用が可能になり かんがいの不足と廃水の再利用により補完することができる 図 4 世界の発電エネルギー源の割合 (2011 年 ) 水力 15.8% 原子力 11.7% 石油 4.8% ごみ 0.4% バイオマス燃料 1.5% 地熱 0.3% 風力 2.0% その他 <0.1% ガス 21.9% 太陽光発電 0.3% 石炭 泥炭 41.3% 注 :PV= 太陽光発電出典 :W WA P I E A データ (2013). より IEA( 国際エネルギー機関 ). 2013. 統計調査ウェブサイト パリ OECD/IEA. http://www.iea.org/statistics/statisticssearch 水とエネルギー 7

図 5 発展途上国の急成長を遂げている都市の多くが水とエネルギー関連する問題にすでに直面しており 対応能力が限られている 通常はエネルギー費用が上下水道にとって最大のコストであり 監査により水 エネルギー損失を明らかにして削減して効率を高めると 相当な省エネとなり 費用を節約できる 新しい都市や拡大中の都市の将来の水とエネルギー消費は 統合した都市の水管理システムにおけるコンパクトな居住と投資を発展させることで 都市計画の早い段階で削減することができる このようなシステムと取組みには 水源の保全 雨水貯留 雨水管理 廃水再利用など複数の水資源の利用 すべての水を飲料水に適した基準で処理するよりも その利用に必要な水質への水処理が含まれる 下水の化学結このバイオガスが化石燃料に代わり 処理しなければならないスラッジ量を削減し 処理場の経費節約を達成する 水とエネルギー両方の効率化を産業界は求めている 水とエネルギーの効率化は 個別にそしてともに様々なトレードオフを伴うものであり 長期的な削減 水とエネルギー利用のバランス 人件費 輸送費 原材料費 市場との位置関係など他の要素との妥協が起こるものの 多くの場合は短期的には費用が増加する 大手企業と多国籍企業 特に食品 飲料部門は しばらくの間 水とエネルギー効率の改善に努めてきた このような企業は効率の価値を金融面と社会面の両方で見ている ( 従業員が20 人以下の ) 中小企業が占める割合は ほとんどの経済圏では企業全体の70% を超えており 集団で見れば 水とエネルギーの効率化に大きな影響を及ぼす潜在力はあるが 資金が乏しく それを行うための自己資金を必要としていることが多い 生態系サービスを考慮することが必要である 環境流量を維持することで このような生態系サービスと持続的経済成長と人類の福祉の基礎となる他の生態系サービスを実現する 生態系サービスは全世界で危険にさらされており エネルギー生産はこの傾向を助長する要因の一つである 天然インフラまたはグ 5 5.0 ネ0.29kWh/ m3 ル4 2.5kWh/ m3 イスラエル 4.0 ギカリフォルニア州 0.53kWh/ m3 GWRS アシュケロンー水プロジェクト消カリフォルニア州淡水化費オレンジ郡 3 (2.5 2.5 2.5 0.35kWh/ m3 2.5 kwh/ 2 オーストリアm3)ストラスWWTP 1.5 1.5 1.4 1.4 1.4 1.1 1.2 1 1.0 0.6 0.24 0.3 0.4 0.5 0.3 0.1 0.2 0.16 0.05 0 0.24 0.25 0.3 0.2 送水水処理配水予備処理散水濾床活性硝化活性膜バイオ水再利用汽水淡水化海水淡水化雨水貯留エスラッジスラッジリアクター 合エネルギーは家庭の調理と暖房 自動車用燃料 発電所 または処理場そのものの運用に利用できる 水とエネルギー効率は常に両立可能というわけではなく 水とエネルギーの効率化プログラムのために 第一の関心事である水とエネルギーを最低価格で確保するという目的からそれてしまう可能性はあるが 十分な水質を備えた適切な量の水を利用できるかどうかは 生態系が健全であるかどうかにかかっており 特定技術を活用する様々な処理場の例とともに示す水循環管理の主要な過程での標準的なエネルギーフットプリント 出典 :Lazarova et al.(2012, p.316 図.23.1 引用されている出典より ) IWA Publishing 転載許可取得済 Lazarova, V., Choo, K. and Cornel, P.(eds). 2012. Water-Energy Interactions in Water Reuse. London, IWA Publishing. 8 2014 年国連世界水発展報告書

発電量(十リーンインフラは従来のエンジニアリングインフラが提供するサービスを補完 増補 または代替し 費用効果 リスク管理 持続可能な開発全体の面で 付加的な利益をもたらす 下流域の水利用者にとっての生態系の経済的価値は 正式に認識され 環境サービス計画に対して対価を支払いを行う この計画では 下流域の水利用者は 生態系サービスの維持及び管理を行い それによって水を保全し利用可能な水の量と水質を確保する優れた経営手法を備えた農家に対して対価の支払いを行うか グリーン ウォーター クレジットを提供する 各地域の優先事項 再生可能エネルギーの主力としての水力発電の拡大は 限られた水資源に対する様々な利害の衝突が激 化する懸念があるため 全世界のほぼすべての地域で重要な課題となっている 欧州と北米では 水不足 水文変動 水利用可能性とエネルギー生産に対する気候変動の影響は ますます重要性を増す関連性の高い問題として認識されるようになっている 再生可能エネルギーが占める割合を増すために設定された目標は 開発中の揚水発電に対するさらなる関心を呼んでいるが 一方で一部の地域 特に中央アジアと南東ヨーロッパを初めとする地域 では 常に他の水利用との両立性がよ 図 6 アフリカを含む最近の世界の発電量傾向 9 000 8 000 中南米欧州 7 000 アフリカ純6 000 アジア及びオセアニア 5 000 4 000 億kWh )北米 3 000 2 000 1 000 0 1990 1992 1994 1996 1998 出典 :UNECA 米エネルギー情報局 International Energy Statistics ウェブページ (http://www.eia.gov/cfapps/ ipdbproject/iedindex3.cfm)(2013 年 9 月アクセス ) 2000 2002 2004 2006 2008 2010 水とエネルギー 9

いとは限らない水力発電を今もなお開発している 従来には存在しなかったガス源 ( 水圧破砕法 ) と 石油源 ( タールサンド ) が開発されているが ともに大量の水を必要とするため 水質 健康 長期的 な環境の持続性についてのリスクに関する不確実性が存続している エネルギー需要の飛躍的な増加に伴い アジア太平洋地域は大きな供給の課題に直面している 石炭はこの地域で最も普及しているエネルギー源製品であり 採炭の影響で水質が悪化し 火力発電所の冷却に大量の水が必要であるという深刻な懸念があるにもかかわらず 引き続き主要エネルギー源であり続けるだろう アジアがバイオマス燃料の主要な市場に発展し かつ輸出地域になる可能性について認識が高まっており 複数の発展途上国で新たな雇用の機会を生み出すことになるという希望が生まれている アラブ地域では 低所得国及び中所得国が給水とエネルギー関連サービスへの増え続ける需要を満たすために苦闘している 水とエネルギー資源の管理に影響する相互依存性に関する理解が限られていることが 水とエネルギーの政策決定者間の調整の障害となっており 水 エネルギー 電力 農業部門間の調整が限られているために 政策と開発の目的に対立が生じている 太陽発電による淡水化と廃水からのエネルギー回収は 特に地域に適した期待の二大技術である 南米とカリブ海地域では バイオマス燃料と 水の効率的 ( かつエネルギー集約的 ) なかんがい方法と農業家に対する電気助成金が帯水層の持続可能性に対してどのような影響をあたえるかについて関心が高まっている 同地域の水道事業者の圧倒的多数が 自己調達を達成するため奮闘しており エネルギーが運営経費のうち 最大部分を占めることが多いため (30 ~ 40%) エネルギー費用増はサービスの手頃な価格での提供及び水部門の資金調達に対して 直接影響を及ぼしている サハラ以南のアフリカの農村人口の大部分は伝統的なエネルギー供給 ( 主に未処理のバイオマス ) に依存しており そういったバイオマスを燃焼すると大きな汚染源となり 健康問題を引き起こしている 世界でこの地域のみ 電気を利用できない人の絶対数が増えている アフリカは大きな可能性のある水力発電がかなりの部分で未開発なので 他の国が経験した水力発電の実践により発生する否定的な面だけではなく肯定的な面を学ぶ機会がある 実現に向けた環境 水とエネルギーの相互関連性の認識により 一部のオブザーバーが二つの領域の統合を進めることを求 めるようになった ある状況ではこの統合は可能であり有益であるかもしれないが 協力と連携を進める 10 2014 年国連世界水発展報告書

と ほぼすべての状況で好ましい結果がでると思われる 効果的な協力といっても 水とエネルギーに対 する責任を同じ制度内にまとめることが必ずしも要求されるわけではなく 一貫した協力を確実に実施で きるわけでもない 水業務の実務者とエネルギー業務の実務者は完全に理解しあって協力しあう必要が ある 両方の領域は伝統的に それぞれ独自の目的を達成し 目標に向けた独自の責任を果たす時には 限られた権限に集中することを期待されてきた 部門をまたがる方針の調整または統合を開始し 追求す るというインセンティブは皆無といっていい状態であることが多い 水とエネルギーの政策決定者 計画者 及び実務者は 自分たちの領域の間に存在する障壁を明 らかにして乗り越える手段を講じる必要がある この第 5 版国連世界水発展報告書に示されているジレン マ リスク 機会に対する最も一般的な対応は 水とエ ネルギーの使用における効率と持続可能性の改善 両方 の節約を生み出すようなお互いに有利な選択肢の発見に 関するものであり 互いを補完しあう ( 相乗効果を生む ) 可能性がある とはいえすべての状況でこのような機会 が提供されているというわけではない 資源を巡る競争 が発生するか 水とエネルギーの目的の間の純粋な対立 があり ある程度のトレードオフが必要になる状況があ る トレードオフの処理 特に国際問題にかかわる場合 には 交渉が必要であり 交渉による利益が生じる 異 なる資源の領域の競争が激化する見込みである場合 熟 考した上でのトレードオフを行う必要が生じ できれば協 力を通じて 協調的に このトレードオフを管理し抑える 必要がある このためには よりよい ( そして時には新しい ) データが必要である この二つの領域が直面している効率性を増すというインセ ンティブは不均衡である エネルギー消費者が 無料ま たは低価格であるために節水のインセンティブを持つこと は皆無に等しいが 一方 価格に対する補助金がでてい る場合もあるが 水消費者は通常はエネルギーの費用を 支払う 水とエネルギーの料金は 農業と工業のような 主要部門を支援する政治判断と助成金からの強い影響を 図 7 km 3 世界の水需要 ( 取水量 )2000 年と 2050 年基準年を設定したシナリオ 6 000 5 000 4 000 3 000 2 000 1 000 0 2000 2050 OECD かんがい 製造 2000 2050 BRIICS 2000 2050 ROW 生活用水 電気 2000 2050 World 畜産 注 :BRIICS(Brazil, Russia, India, Indonesia, China, South Africa ): ブラジル ロシア インド インドネシア 中国 南アフリカ六カ国の総称 OECD: 経済協力開発機構 ROW(rest of the world): その他の地域このグラフは ブルーウォーター ( 湖沼水 河川水 地下水 ) の需要のみ測定し 天水農業は考慮されていない 出典 :O E C D(2012 p.217 図 5.4 output from IMAGE からの図 )OECD Environmental Outlook to 2050 OECD. O E C D( 経済協力開発機構 ) 2012.OECD Environmental Outlook to 2050: The Consequences of Inaction. Paris, OECD. http://dx.doi.org/10.1787/9789264122246-en 水とエネルギー 11

受けており この助成金のために水とエネルギーの本当の経済関係がゆがんでしまうことが多い 特に水 の場合 価格が本来の全体費用を反映することはめったにない 供給費用さえ下回ることが多い 一貫した政策 ( 水 エネルギー 関連分野の相互関連性に対するいわゆる公共の対応 ) には 行動の階 層化が必要である この中に含まれるものは次の通りである 異なる領域に影響する一貫した国家政策の開発 この一貫した政策を推し進める法的 制度的枠組みの策定 政策決定を行い その結果をモニターするため 信頼性の高いデータと統計の確保 教育 訓練 公共情報メディアを通じた意識向上 技術開発に向けた技術革新と研究の支援 資金調達の確保 市場と事業の発展促進 以上の行動をあわせると 持続可能で両立した水とエネルギーの開発のために求められる変化の実現を可能にする環境が生まれる 国際社会は関係主体をまとめるとともに 水とエネルギーの結び付きが国家と地方レベルでどのように展開するかについて大きな役割を果たす供給事業者のみならず 政府 地方政府 地方自治体に対する支援を促進することができる 水とエネルギーの異なる政治経済 (political economy) はそれぞれの領域の変化の範囲 速度 方向性に影響を与えるため 各々の政治経済を認識する必要がある 一般にエネルギーには大きな政治的影響力があるが 水にはほとんどの場合影響は小さい その影響もあって それぞれの変化のスピードも著しく異なる 変化のスピードは市場と技術の発展によっても異なる 水に関する責任者が自らの統治体制の改革に向けた努力を強化しない限り エネルギー領域の開発から生じる圧力にますます拘束されるようになり 水分野の計画者が抱える課題の解決や水が安定的に確保された未来を築くという目的の達成がさらに難しくなる 水部門での失敗は エネルギー部門や開発に欠かせない他の部門の失敗に直結しうる 編集 : 世界水アセスメント計画 (WWAP) Richard Connor Photo credits/copyrights Cover top-left: Dominic Chavez/World Bank; cover top-right: Ingram Publishing/Thinkstock; cover bottom-left: UN Photo/Kibae Park; cover centre: Temistocle Lucarelli/iStock/ Thinkstock; cover bottom-right: Peter Prokosch/UNEP/GRID-Arendal; p. 2 left: Iuoman/ istock/thinkstock; p. 2 right: StevanZZ/iStock/Thinkstock; p. 4 left: DAJ/Thinkstock; p. 4 centre: Richard Semik/iStock/Thinkstock; p. 4 right: UN Photo/Kibae Park; p. 6 left: Evgeny Bashta/iStock/Thinkstock; p. 6 right: FAO/FO-0099; p. 9 left: Falk Kienas/iStock/Thinkstock; p. 9 right: Tanuki Photography/iStock/Thinkstock; p. 10: FAO/P. Johnson; p. 11 left: FAO/ Sean Gallagher; p. 11 right: leungchopan/istock/thinkstock; back cover left: luoman/istock/ Thinkstock; back cover right: Allison Kwesell/World Bank. 本報告書は ユネスコの許可を得て 国土交通省にてユネスコ 世界水アセスメント計画が作成した 世界水発展報告書 2014 概要版 の日本語訳を作成したものであり ユネスコによる公式の日本語訳ではありません 公式の英語版については下記で入手できます http://www.unesco.org/new/en/natural-sciences/environment/water/ wwap/wwdr/2014-water-and-energy/ UNESCO 2014