巻頭言

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Applied Therapeutics

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Vol. 6 No. 2, pp 3-7, 2015 YukiNishitani ( ) Keywords : (Correspond - 3 -

TDM研究 Vol.26 No.2

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

ピルシカイニド塩酸塩カプセル 50mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにピルジカイニド塩酸塩水和物は Vaughan Williams らの分類のクラスⅠCに属し 心筋の Na チャンネル抑制作用により抗不整脈作用を示す また 消化管から速やかに

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

者における XO 阻害薬の効果に影響すると予測される 以上の議論を背景として 本研究では CKD にともなう FX および尿酸の薬物体内動態 ( PK ) 変化と高尿酸血症病態への影響を統合的に解析できる PK- 薬力学 (PD) モデルを構築し その妥当性を腎機能正常者および CKD 患者で報告さ

平成 30 年 8 月 10 日 リポバス錠 5, 10, 20 アトーゼット配合錠 LD, MSD 株式会社 HD 競合品目 1 クレストール錠 クレストールOD 錠 アストラゼネカ 競合品目 2 リピトール錠 アステラス製薬 競合品目 3 リバロ錠 リバロOD 錠 興和 自社製品を除いた同効品で

抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

添付文書の薬物動態情報 ~基本となる3つの薬物動態パラメータを理解する~

Vol. 36, Special Issue, S 3 S 18 (2015) PK Phase I Introduction to Pharmacokinetic Analysis Focus on Phase I Study 1 2 Kazuro Ikawa 1 and Jun Tanaka 2

本書の読み方 使い方 ~ 各項目の基本構成 ~ * 本書は主に外来の日常診療で頻用される治療薬を取り上げています ❶ 特徴 01 HMG-CoA 代表的薬剤ピタバスタチン同種同効薬アトルバスタチン, ロスバスタチン HMG-CoA 還元酵素阻害薬は主に高 LDL コレステロール血症の治療目的で使 用

日本化学療法学会雑誌第51巻第2号

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

2.6.4 薬物動態試験の概要文 目次 略語 略号一覧 薬物動態試験の概要文 まとめ 吸収 分布 代謝 ( 動物種間の比較 ) 排泄

オクノベル錠 150 mg オクノベル錠 300 mg オクノベル内用懸濁液 6% 2.1 第 2 部目次 ノーベルファーマ株式会社

スライド 1


添付文書情報 の検索方法 1. 検索条件を設定の上 検索実行 ボタンをクリックすると検索します 検索結果として 右フレームに該当する医療用医薬品の販売名の一覧が 販売名の昇順で表示されます 2. 右のフレームで参照したい販売名をクリックすると 新しいタブで該当する医療用医薬品の添付文書情報が表示され

添付文書がちゃんと読める 薬物動態学 著 山村重雄竹平理恵子城西国際大学薬学部臨床統計学

要望番号 ;Ⅱ-286 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 33 位 ( 全 33 要望

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

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Epilepsy2015

スライド 1

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

A Nutritional Study of Anemia in Pregnancy Hematologic Characteristics in Pregnancy (Part 1) Keizo Shiraki, Fumiko Hisaoka Department of Nutrition, Sc

医薬品の添付文書等を調べる場合 最後に 検索 をクリック ( 下部の 検索 ボタンでも可 ) 特定の文書 ( 添付文書以外の文書 ) の記載内容から調べる場合 検索 をクリック ( 下部の 検索 ボタンでも可 ) 最後に 調べたい医薬品の名称を入力 ( 名称の一部のみの入力でも検索可能

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1)~ 2) 3) 近位筋脱力 CK(CPK) 高値 炎症を伴わない筋線維の壊死 抗 HMG-CoA 還元酵素 (HMGCR) 抗体陽性等を特徴とする免疫性壊死性ミオパチーがあらわれ 投与中止後も持続する例が報告されているので 患者の状態を十分に観察すること なお 免疫抑制剤投与により改善がみられた

CHEMOTHERAPY Fig. 1 Chemical structure of CXM-AX

薬物動態学の最初の発展期である 1960 年代中頃から 1970 年代初めになると Metzler が NONLIN という名の非線形解析プログラムを紹介し ( [Metzler, 1969]) Benet は線 形マミラリーモデル ( 図 8-1) の一般化した解法を初めて発表した ( [Bene

要望番号 ;Ⅱ 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 1) 1. 要望内容に関連する事項 要望 者 ( 該当するものにチェックする ) 優先順位 学会 ( 学会名 ; 日本ペインクリニック学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 2 位 ( 全 4 要望中 )

Fig. 1 Chemical structure of DL-8280

を評価し 治療効果を指標に用いる課題を明らかにした 次に第二部では 第一部で明らかにした知見を踏まえ 新規に開発した抗 HIV 治療薬の PK/PD を考慮し 臨床効果の同等性を評価するバイオマーカーとして血中濃度を選択し 臨床試験のデザイン及び適切な統計手法に基づく評価法を構築した 更に第三部では

CHEMOTHERAPY FEB Table 1 Background of volunteers

<4D F736F F D2082A8926D82E782B995B68F E834E838D838A E3132>

目次 生物薬剤学試験及び関連する分析法 背景及び概観 製剤開発過程 バイオアベイラビリティ メマンチン塩酸塩の絶対バイオアベイラビリティ メマン

2. 改訂内容および改訂理由 2.1. その他の注意 [ 厚生労働省医薬食品局安全対策課事務連絡に基づく改訂 ] 改訂後 ( 下線部 : 改訂部分 ) 10. その他の注意 (1)~(3) 省略 (4) 主に 50 歳以上を対象に実施された海外の疫学調査において 選択的セロトニン再取り込み阻害剤及び

スライド 1

VOL.39 S-3

緒言

(別添様式)

腎薬ニュース第 5 号 (2007 年 6 月 ;2012 年 1 月加筆修正 ) 熊本大学薬学部臨床薬理学分野平田純生 添付文書どおり腎機能に基づいた投与量にしても起こるアシクロビル中毒の原因は? 1. アシクロビル中毒の症状は? 慢性腎臓病 (CKD) 患者に頻発するアシクロビル バラシクロビル

1272 CHEMOTHERAPY MAR. 1975

doi: /jjsnr 研究報告 - 2 Reality Shock in Nurses in their Second Year after Graduation Yoko Suzuki Yoshiko Kawatsu Key Words nurse, r

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

( 様式乙 8) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 米田博 藤原眞也 副査副査 教授教授 黒岩敏彦千原精志郎 副査 教授 佐浦隆一 主論文題名 Anhedonia in Japanese patients with Parkinson s disease ( 日本人パー

untitled

センシンレンのエタノール抽出液による白血病細胞株での抗腫瘍効果の検討

審査結果 平成 23 年 4 月 11 日 [ 販 売 名 ] ミオ MIBG-I123 注射液 [ 一 般 名 ] 3-ヨードベンジルグアニジン ( 123 I) 注射液 [ 申請者名 ] 富士フイルム RI ファーマ株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 22 年 11 月 11 日 [ 審査結果

日本消化器外科学会雑誌第29巻第9号

DRAFT#9 2011


CHEMOTHERAPY MAY 1988

使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

(2) 健康成人の血漿中濃度 ( 反復経口投与 ) 9) 健康成人男子にスイニー 200mgを1 日 2 回 ( 朝夕食直前 ) 7 日間反復経口投与したとき 血漿中アナグリプチン濃度は投与 2 日目には定常状態に達した 投与 7 日目における C max 及びAUC 0-72hの累積係数はそれぞれ

2.0 概要治験情報 : 治験依頼者名 : 武田薬品工業株式会社 大阪市中央区道修町四丁目 1 番 1 号 治験課題名 : 健康成人男性を対象に TAK-536TCH の最終製剤を単回経口投与したときの食事の影響を検討する第 1 相無作為化非盲検クロスオーバー試験 治験課題名の短縮

タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg タペンタ 錠 100mg に係る 販売名 タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 有効成分 タペンタ 錠 100mg 製造販売業者 ヤンセンファーマ株式会社 薬効分類 821 提出年月 平成 30 年

P001~017 1-1.indd

CHEMOTHERAPY APR Fig. 2 The inactivation of aminoglycoside antibiotics by PC-904 Fig. 3 Serum concentration of PC-904 (1) Fig. 4 Urinary recover

(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

D961H は AstraZeneca R&D Mӧlndal( スウェーデン ) において開発された オメプラゾールの一方の光学異性体 (S- 体 ) のみを含有するプロトンポンプ阻害剤である ネキシウム (D961H の日本における販売名 ) 錠 20 mg 及び 40 mg は を対象として

要望番号 ;Ⅱ-183 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者学会 ( 該当する ( 学会名 ; 日本感染症学会 ) ものにチェックする ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 1 位 ( 全 8 要望中 ) 要望する医薬品

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

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医薬品の基礎研究から承認審査 市販後までの主なプロセス 基礎研究 非臨床試験 動物試験等 品質の評価安全性の評価有効性の評価 候補物質の合成方法等を確立 最適な剤型の設計 一定の品質を確保するための規格及び試験方法などの確立 有効期間等の設定 ( 長期安定性試験など ) 医薬品候補物質のスクリーニン

Jan THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS XL-1 Table 1. Outline of administering doses, routes and sampling times *: 4 ml/hr/kg Bacillus subtilis

Amino Acid Analysys_v2.pptx

医療用医薬品最新品質情報集 ( ブルーブック ) 初版有効成分リトドリン塩酸塩 品目名 ( 製造販売業者 ) 後発医薬品 品目名 ( 製造販売業者 ) 先発医薬品 効能 効果用法 用量添加物 1) 解離定数 (25 ) 1) 溶解度 (37 ) 1 ウテロン錠 5mg サンド 2

474 Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi Vol. /-, No.3,.1..2* (,**0) 24 Measurement of Deterioration of Frying Oil Using Electrical Properties Yoshio

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相互作用DB

CHEMOTHERAPY JUNE 1993 Table 1. Background of patients in pharmacokinetic study

用法 用量 発作性夜間ヘモグロビン尿症における溶血抑制 mg mg mg mg kg 30kg 40kg 20kg 30kg 10kg 20kg 5kg 10kg 1900mg mg mg mg

Ⅱ 方法と対象 1. 所得段階別保険料に関する情報の収集 ~3 1, 分析手法

2006 PKDFCJ

Cpk=36.5 μg/ml =0.99 meq/l Cav=27.9 μg/ml =0.75 meq/l Ctr=20.7 μg/ml = 0.56 meq/l 4) 躁病治療の有効血中濃度は 0.3~1.2mEq/L であるが この投与量で治療効果が得られるか? Li は 2 分子含まれているの

0801391,繊維学会ファイバ12月号/報文-01-西川

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アミヴィッド静注 CTD 第 2 部 2.1 第 2 部から第 5 部の目次 富士フイルム RI ファーマ株式会社


要望番号 ;Ⅱ-24 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 8 位 ( 全 33 要望中

H29_第40集_大和証券_研究業績_C本文_p indd

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans


創薬 創剤における探索動態研究の役割と課題 布施英一協和発酵工業株式会社医薬研究センター薬物動態研究所 1. はじめに弊社では 1990 年代初期より探索ステージにおける動態研究の体制を整備してきた 特に 1996 年から探索動態専門のグループを立ち上げ 欧州の製薬会社での経験を有するコンサルタント

< 別紙 1: 検査値等略称 > 略称 名称 A/G 比 アルブミン / グロブリン比 ADI 一日摂取許容量 ALT アラニンアミノトランスフェラーゼ ATPase adenosine triphosphatase アデノシントリフォスファターゼ AUC 血中薬物濃度 時間曲線下面積 Cmax E

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ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ


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アプライド セラピューティクス Vol. 6 No. 2, pp 32-40, 2015 < 総説 > 脂質異常症治療薬の臨床薬物動態に影響を与える因子の解析 Factors influencing the Clinical Pharmacokinetics of Drugs used in the Treatment of Dyslipidemia 川名純一 1) 2) 緒方宏泰 Junichi Kawana 1), Hiroyasu Ogata 2) 1)* 明治薬科大学公衆衛生 疫学 2) 明治薬科大学名誉教授 * 204-8588 東京都清瀬市野塩 2-522-1 Summary The pharmacokinetic parameters of 11 drugs used in the treatment of dyslipidemia in healthy adult subjects, such as the bioavailability, volume of distribution, clearance, free fraction in plasma (serum) and ratio of drug concentration in blood to plasma were collected via secondary source materials and published reports in order to clarify the factors influencing these pharmacokinetic parameters. The factors influencing the pharmacokinetics could be successfully analyzed for 3 drugs for which data on the blood / plasma ratio and the pharmacokinetic parameters could be collected. Out of the 8 drugs for which the information on the blood/plasma ratio could not be collected, the analysis could be successfully completed only for two drugs. The blood/plasma ratio was reconfirmed to be essential for clarifying the factors influencing the pharmacokinetic parameters. Among all the drugs, 9 drugs were shown to have binding-sensitive characteristics (more than 80% bound to plasma protein), showing that the rates of change of the plasma free drug concentrations do not necessarily run in parallel with the observed plasma total drug concentrations in patients with various disease states. 脂質異常症治療に用いられる主な 11 医薬品の健康成人を対象とした臨床薬物動態パラメータ ; バイオアベイラビリティ 分布容積 クリアランス 血漿 ( 血清 ) 中遊離形分率 全血液中薬物濃度 / 血漿 ( 血清 ) 中薬物濃度比 (B/P) 値を研究論文や三次資料から収集し 当該薬物動態の基本パラメータの決定因子の特定を試みた B/P 値が収集できた 3 薬物については 薬物動態の基本パラメータの決定因子の特定を行うことができた B/P 値が収集できなかった 8 薬物の内 薬物動態の基本パラメータの決定因子の特定ができたのは わずか 2 薬物のみであった 薬物動態の基本パラメータの決定因子の特定を行うためには B/P 値が必要であることが再確認できた 種々の疾患時における血中総濃度の変化がそのまま遊離形濃度の変化として捉えることができない薬物である binding sensitive な特徴 ( 遊離形分率が 0.2 以下 ) を示す薬物が 11 薬物中 9 薬物とほとんどの薬剤であった Keywords : clinical pharmacokinetic parameter, drugs used in the treatment of dyslipidemia, blood / plasma ratio, binding-sensitive, 臨床薬物動態パラメータ 脂質異常症治療薬 全血液中薬物濃度 / 血漿中薬物濃度比 蛋白結合依存性 (Received; December 10, 2014, accepted; February 4, 2015) (Correspond author: jun-jun@brown.plala.or.jp) - 32 -

目的医薬品を投与した際の効果及び副作用の強度や発現頻度は 全身適用を目的とする医薬品の場合 薬物の血中濃度に依存して変化する その効果 副作用の発現は薬物が効果 作用の発現に関係する構造体に特異的に結合することにより連鎖的な生体内反応を引き起こすことによっているが 結合するのは 一般には その構造体近傍に遊離形で存在する薬物であり 細胞内に存在する蛋白や小器官に結合している薬物ではない しかも 特に血液中蛋白との結合率が高い薬物 ( 遊離形分率が 0.2 以下 ;binding sensitive と表現する ) では 血中遊離形薬物濃度の変化と血中総薬物濃度の変化は 臨床条件では必ずしも平行ではない そのため 特に血液中蛋白との結合率が高い薬物においては 効果 副作用の発現を引き起こす構造体近傍の遊離形薬物濃度と関連性を有する血中遊離形薬物濃度の変化を推定することが重要である しかし 製造販売されている医薬品の臨床薬物動態情報は 臨床試験の検討対象となっている被験者群における血中総薬物濃度の記述にとどまっているため 検討対象ではなかった被験者群への外挿を行うことは難しい また 血中遊離形薬物濃度の変化を推定させる情報量は極めて少なく 血中総薬物濃度に基づいた判断が遊離形濃度の変化を捉えきれていない例も散見される これらの不十分さを補う方法は 該当医薬品の健常成人被験者を対象とした薬物動態試験から薬物動態の基本パラメータ値を収得し その情報から各パラメータを決定している因子の特定を行うことを基礎に 患者を対象とした薬物動態試験による総薬物濃度の変化の測定結果から 血中遊離形薬物濃度の変化の方向を推定することである しかし その推定を可能にするためには 後述するように 対象薬物は静脈内投与がされていなければならず また 血漿あるいは血清中薬物濃度から算出された基本パラメータ値を全血液中薬物濃度から推定される基本パラメータ値に変換しなければならない また 患者の状態においての薬物の血漿中遊離形分率の変化を基礎情報として知っておくことが重要である 1) 緒方は先に 心房細動治療に用いられる 26 医薬品の健康成人を対象とした臨床薬物動態パラメータ値を収集し 薬物動態の基本パラメータの決定因子の特定を試みた 1) 血漿( 血清 ) 中薬物濃度から算出された基本パラメータ値を全血液中薬物濃度から推定される基本パラメータ値に変換するために必要な全血液中薬物濃度 / 血漿 ( 血清 ) 中薬物濃度比 (B/P) 値は 18 の薬物で収集でき 基本パラメータの決定因子を特定できたが B/P 値が収集できなかった 8 薬物の内 furosemide, heparin の 2 つの薬物のみにおいて基本パラメータの決定因子の特定を行う事ができたに過ぎず B/P 値の重要度が確認された 更に binding sensitive な薬物は 16 あり 検討した薬物の過半数を超える 62% が血中総薬物濃度の測定値のみでは 用法 用量の可否を検討できない状態にあることを明らかにし これらの不十分さを補うためには 遊離形分率 B/P 値を加えた薬物動態の基本的パラメータ値の情報が提供されることが重要であることを述べた 本研究では 国内において患者数が 4,000 万人以上 2) と推定されている脂質異常症の治療に用いられる医薬品を対象に 薬物動態の基本的パラメータ値を収集し 血液中遊離形薬物濃度の変化を決定している要因を特定することを試みるとともに 脂質異常症治療薬において薬物動態の基本的パラメータの決定因子を特定するために必要な情報が適切に提供されているか否かについて検討を行うこととした 研究方法脂質異常症治療に用いられる 2) 主な 11 医薬品 ( アトルバスタチン フルバスタチン ピタバスタチン プラバスタチン ロスバスタチン シンバスタチン ベザフィブラート クリノフィブラート クロフィブラート フェノフィブラート エゼチミブ ) について健常成人を対象として算出された薬物動態の基本パラメータ値を収集した 薬物動態の基本パラメータ値を収集するために用いた資料は 該当する医薬品のインタビューフォーム ( 以下 IF と略す ) 厚生労働省審議結果報告書または承認申請者の申請資料概要 ( 以下 application - 33 -

for approval と略す ) (http://www.info.pmda.go.jp/info/syounin_index.html ) 米国の添付文書及び Medline (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed) による検索を行い収集した論文である 更にこれら情報源から静脈内投与後の薬物動態パラメータ値及び B/P 値が得られなかった場合には Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics 12th Edition, Mac Graw Hil, 2011, Appendix II Design and Optimization of Dosage Regimens: Pharmacokinetic Data( 以下 GG と略す ) 緒方宏泰編著 臨床薬物動態学 3) 付表 ( http://pub.maruzen.co.jp/book_magazine/rinsh o_yakubutsu/fuhyo/) 丸善 ( 以下 CPK と略す ) に記載された値を引用することとした 健康成人に薬物を静脈内投与することにより得られている分布容積 Vd 全身クリアランス CLtot 未変化体尿中排泄率 Ae(%) を基本的な情報とし 更に 血漿 ( 血清 ) 中遊離形分率 fub を加えた Vd の値は 血中総薬物濃度の対数値の時間推移が 1 相性を示すか 2 相以上の推移を示すかによって 表現とその内容が異なる 基本的には治療が行われる状態における血中総薬物濃度の動きに主に関与する分布容積を採用した 経口投与時のデータのみが公表されている場合 薬物動態の基本パラメータ値に相当する値は それぞれ Vd/F CLtot/F Ae(%) F となり 静脈内投与することにより得られる Vd CLtot Ae(%) と異なる F は経口投与時のバイオアベイラビリティを表す 市販されている製剤が経口投与製剤であっても 静脈内投与によって得られたパラメータ値が存在する場合にはそれを第 1 選択とし 経口投与後のパラメータのみが得られている薬物で F 値が報告されている場合は その F 値を用いて Vd CLtot Ae(%) を算出した 腎クリアランス CLR 値は測定されている場合はその値を用いた CLR が測定されていないが CLtot Ae(%) で計算できる場合はその計算値をあてた 腎外クリアランス CLeR は CLtot と CLR の差の値 (CLtot CLR) をあて 原則 その値を肝クリアラン ス CLH であると仮定した B/P 値が報告されている場合には 血漿 ( 血清 ) 中総薬物濃度を用いて算出されている薬物動態パラメータ値を全血液中総薬物総濃度に基づく薬物動態パラメータ値 (CLx(b) Vd(b)) に変換でき 血中総薬物濃度および血中遊離形薬物濃度の変化を規定している要因を正確に評価することが可能となる CLx は臓器 x のクリアランスを示す 次式によって変換した CLx(b) = CLx(p)/(B/P) Vd(b) = Vd(p)/(B/P) CLx(p) Vd(p) は血漿 ( 血清 ) 中総薬物濃度を用いて算出されている薬物動態パラメータ値を示す また 血球中総薬物濃度と血漿中総薬物濃度との比 (Bc/P) の値の場合には 次式を用いて B/P 値への変換を行った Hc はヘマトクリット値を示す 本論文では簡略的に Hc = 0.5 とした B/P = Hc {(Bc/P) 1}+ 1 臓器クリアランスを決定している要因の特定は以下の考察により行った 血流によって運ばれてきた薬物濃度の臓器 x を通過することによって引き起こされる低下度 (Ex: 抽出比 ) を推定する Ex = CLx(b)/Qx Qx は臓器 x を通過する血流速度である 腎臓では 1200 ml/min 肝臓では 1600 ml/min を用いた Ex の値から決定因子を特定した Ex<0.3:CLx = fub CLintx 0.3<Ex<0.7:CLx = CLx Ex>0.7:CLx = Qx fub CLintx は それぞれ 薬物の血漿中遊離形分率 臓器 x における薬物の固有クリアランスである 尚 CLx = CLx は 臓器クリアランス値を鋭敏に変動させる因子を有していないことを示す 分布容積を決定している因子の特定は以下の考察により行った Vd(b)<20 L:Vd = Vp 20 L<Vd(b)<50 L:Vd = Vd Vd(b)>50 L:Vd = (fub/fut)vt - 34 -

Vp VT fut は それぞれ 細胞外液容量 細胞内液容量 薬物の細胞内遊離形分率である 尚 Vd = Vd は 分布容積値を鋭敏に変動させる因子を有していないことを示す B/P 値の報告値がない場合には以下の推定も加えた Hc 値を 0.5 と仮定すると 薬物が血球に分布していない場合に B/P 値は 0.5 となり 薬物が血球に分布すればするほど B/P 値は 0.5 より大きくなる そのため CLR(p) 値が 180 ml/min より小さい場合 CLH(p) 値が 240 ml/min より小さい場合は消失能依存性とした また Vd(p) が 10 L 以下の場合には Vp とした 肝消失型の薬物が経口投与され F>0.7 である場合 F = Fa Fg Fh であることから Fh>0.7 となる そのため EH<0.3 と推定することができ 肝クリアランスは消失能依存性の特徴を示すと推定できる Fa Fg Fh はそれぞれ 経口投与後の吸収率 小腸上皮細胞での消失回避率 肝臓における消失回避率を示す 経口クリアランス CLpo を決定している因子は以下のように考察した 主に肝消失する場合 EH の大きさに関係なく 以下の式で特定される CLHpo = fub CLintH/Fa 主に腎排泄により消失している場合 ER の値に従って 以下の式で特定される ER<0.3: CLRpo = fub CLintR/Fa 0.3<ER<0.7:CLRpo = CLR/Fa この場合 腎クリアランス値を鋭敏に変動させる因子を有していないので CLR と表現しておく ER>0.7: CLRpo = QR 肝消失と腎排泄の両経路で消失する場合 以下の式で特定される CLpo = (fub CLintH + CLR)/Fa ER<0.3: CLpo = fub (CLintH + CLintR)/Fa 0.3<ER<0.7:CLpo = (fub CLintH + CLR)/Fa ER>0.7: CLpo = (fub CLintH + QR)/Fa また CLR について決定因子が特定できない場合にも 以下の表現を行った CLpo = (fub CLintH + CLR)/Fa 活性代謝物のパラメータ値が得られた薬物では 当該パラメータ値を用いて 活性代謝物の血中遊離形薬物濃度の決定因子を検討することとした 遊離形薬物濃度によって定義される臓器クリアランス CLxf 分布容積 Vdf の決定因子は 血液中総濃度によって定義された臓器クリアランス CLx 分布容積 Vd の決定因子から 次式を用いて推定した CLxf = CLx/fuB CLtotf = (CLR + CLH)/fuB Vdf = Vd/fuB 消失速度定数 kel は次式とした kel = Vd/CLtot = Vdf/CLtotf なお 脂質異常症治療薬のうち HMG-CoA 還元酵素阻害薬について 薬物の肝細胞への取り込み段階が肝臓における代謝の律速過程であると報告されているが 4 ) 5) 本論文では全身循環血中に到達した薬物が全身から消失する速度を考察し 薬物の消失臓器 x までの運搬過程が律速となる血流速度依存性であるか 消失臓器 x における消失過程 ( 細胞への薬物の取り込み段階及び消失段階 ) が律速となる消失能依存性であるかに大きく分類し評価した 結果脂質異常症の治療に用いられる主な 11 医薬品 ( アトルバスタチン フルバスタチン ピタバスタチン プラバスタチン ロスバスタチン シンバスタチン ベザフィブラート クリノフィブラート クロフィブラート フェノフィブラート エゼチミブ ) の健康成人を対象とした薬物動態の基本的パラメータ値及び B/P 値を確認することができた情報源とそれぞれの値を Table 1 に示した IF に薬物動態の基本的パラメータ値が記載されていたのは 9 薬物 ( アトルバスタチン 6) フルバスタチン 7) ピタバスタチン 8) プラバスタチン 9) ロスバスタチン 10) シンバスタチン 11) ベザフィブラート 12) クリノフィブラート 13 ) エゼチミブ 14 ) ) であった なお シンバスタチン クロフィブラート及びフェノフィブラートについては それぞれの活性代謝物 ( シンバスタチンβ ヒドロキシ体 p-クロロフェノキシイソブチル酸及びフェノフィブル酸 ) のパラメータ値である IF から F 値が得られなかったピタバスタチン及びフェノフィブル酸 - 35 -

はそれぞれ米国の添付文書 15) 及び文献 16) から F 値を得ることができた また フルバスタチン 17) 及びプラバスタチン 18) については それぞれ一次資料である文献においても薬物動態の基本的パラメータを確認することができた IF や文献などから薬物動態の基本パラメータが得られなかった 2 薬物 (p-クロロフェノキシイソブチル酸 フェノフィブル酸 ) については GG データも含めてリストされている CPK から当該パラメータ値を得た ベザフィブラート クリノフィブラート エゼチミブを除く 8 薬物で静脈内投与後の全てもしくは一部の薬物動態の基本的パラメータ値を収集することができた そのうち 3 薬物 ( ピタバスタチン p-クロロフェノキシイソブチル酸及びフェノフィブル酸 ) については 経口投与後のパラメータ (Vd/F CLtot/F Ae(%) F) のみ得られた また 11 薬物のうち B/P 値が収集できたのは 3 薬物 ( ピタバスタチン プラバスタチン ロスバスタチン ) であった 緒方の方法に従い 1) 各薬物の血中薬物総濃度および血中薬物遊離形濃度の変化を規定する因子の推定を行い その結果を Table 2-1~3 に 示した 健康成人被験者を対象に薬物動態の基本パラメータの評価が可能な情報の収集ができた薬物は 8 薬物 ( アトルバスタチン フルバスタチン ピタバスタチン プラバスタチン ロスバスタチン シンバスタチンβヒドロキシ体 p-クロロフェノキシイソブチル酸 フェノフィブル酸 ) であった (Table 2-1~3) しかし シンバスタチンβヒドロキシ体の F 値は 5% 未満と活性代謝物であるにもかかわらず非常に低値が示されており その値の信頼性が乏しいため 適正な F 値は得られていないものと評価し 薬物動態の基本パラメータの決定因子の特定には至らなかった また ベザフィブラート クリノフィブラート及びエゼチミブは薬物動態の基本パラメータを評価するために必要な静脈内投与後のパラメータが得られておらず Ae(%) CLtot 及び Vd の評価ができなかった (Table2-1~3) なお エゼチミブについては難溶性のため静脈内投与が行うことが出来なかったことがわかっている 19) Table 1 Pharmacokinetic parameters and blood to plasma ratio value - 36 -

Table 2-1 Factors determining pharmacokinetic parameters with B/P ratio value Drug elimination route a) binding b) B/P Vd Vdf atorvastatin H S - d) c) d) c) fluvastatin H S 0.71 Vd Vdf pitavastatin H S 0.58 (fub/fut)vt VT/fuT pravastatin H R (52:48) IS 0.55 (fub/fut)vt VT/fuT rosuvastatin H R (64:36) S - d) c) d) c) simvastatin beta-hydroxy acid (active metabolite of simvastatin) H S - - - bezafibrate - S - - - clinofibrate - - - - - p-chlorophenoxy isobutyric acid (active metabolite ofclofibrate) H S - Vp c) Vp/fuB c) fenofibric acid (active metabolte of fenofibrate) H S - Vd c) Vdf c) ezetimibe - S - - - Table 2-2 Factors determining pharmacokinetic parameters with B/P ratio value Drug CLR CLRf CLH CLHf atorvastatin - - d) c) d) c) fluvastatin - - QH QH/fuB pitavastatin - - fub CLintH CLintH pravastatin QR QR/fuB CLH CLHf rosuvastatin d) c) d) c) d) c) d) c) simvastatin beta-hydroxy acid (active metabolite of simvastatin) - - d) c) d) c) bezafibrate d) c) d) c) d) c) d) c) clinofibrate - - - - p-chlorophenoxy isobutyric acid (active metabolite ofclofibrate) - - fub CLintH c) CLintH c) fenofibric acid (active metabolte of fenofibrate) - - fub CLintH c) CLintH c) ezetimibe d) c) d) c) d) c) d) c) Table 2-3 Factors determining pharmacokinetic parameters with B/P ratio value Drug CLpo CLpof kel atorvastatin fub CLintH/Fa CLintH/Fa d) c) fluvastatin fub CLintH/Fa CLintH/Fa QH/Vd pitavastatin fub CLintH/Fa CLintH/Fa fut CLintH/VT pravastatin (QR + fub CLintH)/Fa (QR/fuB + CLintH)/Fa fut (QR + CLH)/(fuB VT) rosuvastatin (fub CLintH + CLR d) )/Fa (CLintH + CLRf d) )/Fa d) c) simvastatin beta-hydroxy acid (active metabolite of simvastatin) fub CLintH/Fa CLintH/Fa d) c) bezafibrate (fub CLintH + CLR d) )/Fa (CLintH + CLRf d) )/Fa d) c) clinofibrate (fub CLintH + CLR d) )/Fa (CLintH + CLRf d) )/Fa - p-chlorophenoxy isobutyric acid (active metabolite ofclofibrate) fub CLintH/Fa CLintH/Fa fub CLintH/Vd c) fenofibric acid (active metabolte of fenofibrate) fub CLintH/Fa CLintH/Fa fub CLintH/Vd c) ezetimibe (fub CLintH + CLR d) )/Fa (CLintH + CLRf d) )/Fa d) c) a) H: mainly via hepatic elimination R: mainly via renal elimination H R: eliminated via hepatic and renal routes(ratio) b) S: binding sensitive IS: binding insensitive c) speculated from B/P ratio>0.5 d) can not be specified - 37 -

また B/P 値は 文献 20) から 1 薬物 ( フルバスタチン ) application for approval 21) から 1 薬物 ( ピタバスタチン ) と CPK から 1 薬物 ( プラバスタチン ) 総計 3 薬物で得られ B/P 値を用いることにより 当該 3 薬物の薬物動態の基本パラメータの決定因子を特定することができた 一方 多くの薬物で B/P 値の収集が困難なのが現状であった (Table 2-1) B/P 値が不明な場合には ヘマトクリット値が 0.5 と仮定した際の B/P の最低値の 0.5 を用いることにより 2 薬物 (p-クロロフェノキシイソブチル酸 フェノフィブル酸 ) で薬物動態の基本パラメータの決定因子を特定できた 主に肝消失する 1 薬剤 ( シンバスタチンβヒドロキシ体 ) については 経口投与後の CLpo 及び CLpof は EH の大きさによらず fub CLintH/Fa 及び CLintH/Fa であるため 決定因子を特定することができた 一方 未変化体尿中排泄率 Ae(%) が不明のため CLpo における CLR の寄与が推定できなかった 3 薬剤 ( ベザフィブラート クリノフィブラート エゼチミブ ) については CLR 及び CLRf の決定因子を特定することができなかった また Ae(%) は得られているものの B/P の最低値の 0.5 を用いた場合に ER が 0.3 以上となる 1 薬剤 ( ロスバスタチン ) についても CLR 及び CLRf の決定因子を特定することができなかった (Table 2-3) なお HMG-CoA 還元酵素阻害薬について 薬物の肝細胞への取り込み段階が律速過程であると報告されているが 4 ) 5) 本論文では CLpo の決定因子の検討において 薬物の肝細胞への取り込み段階及び肝細胞における代謝段階に分け そのうちの律速を規定する因子を明らかにする解析的評価は行わず まとめて 固有クリアランスとして表現した 主な脂質異常症治療薬である 11 薬物中 binding sensitive な特徴を示す薬物は プラバスタチン以外の 9 薬物 ( クリノフィブラートは不明 ) であった (Table 2-1) 考察主な脂質異常症治療薬である 11 薬物 ( アトルバスタチン フルバスタチン ピタバスタチン プラバスタチン ロスバスタチン シンバスタチン ベザフィブラート クリノフィブラート クロフィブラート フェノフィブラート エゼチミブ ) について 健康成人を対象とした薬物動態の基本的パラメータ値を確認することが可能であった情報源は IF が最も多く有用な情報源であることが確認できた 本邦において静脈内投与製剤が市販されていない等の理由により IF から F 値が得られなかった薬物では 原著論文の検索 海外の添付文書または CPK などの 3 次資料を参照することにより F 値が得られる場合があることが判明した また B/P 値は IF に記載されている事例は認められず 3 薬物のみ 原著論文 application for approval 又は CPK を参照することにより B/P 値を得ることができた 薬物動態の基本的パラメータの特徴付けに必要な情報である B/P 値が多くの薬物で収集困難であった 結果として CLx Vd の決定因子を推定できた医薬品は 検討した 11 薬物中 5 薬物 ( フルバスタチン ピタバスタチン プラバスタチン p-クロロフェノキシイソブチル酸 フェノフィブル酸 ) のみであり (Table 2-1~3) 薬物動態の基本パラメータ値及び B/P 値の測定もしくは公開されていない可能性が示唆された 11 薬物中プラバスタチン以外の 9 薬物が binding sensitive な特徴を示す薬物であったが 脂質異常症治療薬のほとんどは 血中総薬物濃度の変化がそのまま遊離形薬物濃度の変化として捉えることが出来ず 総薬物濃度の変化の程度から用法用量の変更を判断することは危険な薬物であることが分かった 血中総薬物濃度ではなく 遊離形薬物濃度が効果及び副作用の発現に関連すると考えられるにもかかわらず 現実には その殆どの場合 血中遊離形薬物濃度が測定されていない あるいは それに関連する情報が収集されないまま 血中総薬物濃度の変化をもとに 用法用量の変更の可否が検討されている傾向が強いと考えられる binding sensitive な 9 薬物の内で 2-38 -

薬物 ( フルバスタチン ピタバスタチン ) では B/P 値を収集することができ 薬物動態の基本パラメータの決定因子を特定することができた また B/P 値を収集できなかった 7 薬物のうち 2 薬物 (p-クロロフェノキシイソブチル酸 フェノフィブル酸 ) についても すべて CLx 及び Vd の決定因子を特定することができた これらの薬物については 病態時の血中総薬物濃度の測定値をもとに 遊離形薬物濃度の変化の有無は推定できる条件にある なお 添付文書及び IF において 腎臓または肝臓の機能障害を有する患者において血中遊離形濃度の測定されている あるいは fub が測定されている もしくは 血中遊離形薬物濃度の変化について考察の有無を確認したところ 1 薬剤 ( エゼチミブ ) の IF において 肝機能障害や腎機能障害による血漿蛋白結合率への影響は認められていない との記載が確認できた 14),19) 測定された総薬物濃度の変化をそのまま遊離形薬物濃度の変化と判断しても乖離がない binding insensitive な 1 薬物 ( プラバスタチン ) については B/P 値が収集でき 薬物動態の基本パラメータの決定因子を特定することができた 以上のことから 薬物動態の基本パラメータの決定因子の特定には B/P 値が重要であることから 薬物動態の基本パラメータ値を適切に活用するためにも 脂質異常症治療薬にかかわらず B/P 値の測定及び公開が必要と考える 結論脂質異常症の治療に用いられる主な 11 医薬品の健康成人を対象とした臨床薬物動態パラメータ値を収集し 薬物動態の基本パラメータの決定因子の特定を試みた B/P 値は 3 薬物で収集でき いずれも薬物動態の基本パラメータの決定因子を特定できたが B/P 値が収集できなかった 8 薬物のうち 薬物動態の基本パラメータの決定因子の特定ができたのは 2 薬物のみであった binding insensitive な薬物は 1 薬剤のみであり 検討した薬物の 91% が血中総薬物濃度の測定値を基には 用法 用量の可否を検討できないことが分かっ た 心房細動治療薬と同様に 血中総薬物濃度から遊離形薬物濃度を推定するための考え方の普及と推定に必要な情報の測定と公開が望まれる なお 本論文の一部は 日本アプライド セラピューティクス学会第 4 回科学的 合理的に薬物治療を実践するためのワークショプ 症例解析& 文献評価ワークショップ 2013 課題疾患 : 脂質異常症 (2013 年 10 月 13 日 ) にて発表した 利益相反本発表に関連して 開示すべき COI 関連にある企業等はない 引用文献 1) 緒方宏泰 : 心房細動治療に用いられる医薬品の臨床薬物動態に影響を与える因子の解析. アプライド セラピューティクス, 2013, 5, 43-59. 2) 2 ページで理解する標準薬物治療ファイル 日本アプライド セラピューティクス学会編 東京 南山堂 2013 pp.44-45 3) 緒方宏泰編著 増原慶壮 松本 木島慎一 高橋晴美著 臨床薬物動態学薬物治療の適正化のために 第 2 版 東京 丸善 2007 pp.2-76 4) T Watanabe, H Kusuhara, K Maeda, H Kanamaru, Y Saito, Z Hu, Y Sugiyama.: Investigation of the rate-determining process in the hepatic elimination of HMG-CoA reductase inhibitors in rats and humans. Drug Metab. Dispos., 2010, 38, 215-22. 5) K Maeda, Y Ikeda, T Fujita, K Yoshida, Y Azuma, Y Haruyama, N Yamane, Y Kumagai, Y Sugiyama: Identification of the rate-determining process in the hepatic clearance of atorvastatinin a clinical cassette microdosing study. Clin. Pharmacol. Ther., 2011, 90, 575-81. 6) インタビューフォームリピトール錠 2014 年 4 月 - 39 -

改訂第 23 版ファイザー株式会社 7) インタビューフォームローコール錠ノバルティスファーマ株式会社 2014 年 6 月改訂第 6 版 8) インタビューフォームリバロ錠 2014 年 2 月改訂第 19 版興和株式会社 9) インタビューフォームメバロチン錠第一三共株式会社 2013 年 10 月改訂第 10 版 10) インタビューフォームクレストール錠 2014 年 7 月改訂第 12 版アストラゼネカ株式会社 11) インタビューフォームリポバス錠 2014 年 8 月改訂第 22 版 MSD 株式会社 12) インタビューフォームベザトールSR 錠キッセイ薬品工業株式会社 2010 年 11 月改訂第 5 版 13) インタビューフォームリポクリン錠 2013 年 9 月第 1 版大日本住友製薬株式会社 14) インタビューフォームゼチーア錠バイエル薬品株式会社 2010 年 10 月改訂第 5 版 15) Product Information: LIVALO oral film coated tablet, pitavastatin oral film coated tablet. Patheon Inc., Cincinnati, OH, 2009. 16) T Zhu, JC Ansquer, Maureen TK, Darryl J, Rajendra SP.: Comparison of the gastrointestinal absorption and bioavailability of fenofibrate and fenofibric acid in humans. J Clin Pharmacol., 2010, 50, 914-21. 17) Tse FL, Jaffe JM, Troendle A.: Pharmacokinetics of fluvastatin after single and multiple doses in normal volunteers. J Clin Pharmacol., 1992, 32, 630-8. 18) Singhvi SM, Pan HY, Morrison RA, Willard DA.: Disposition of pravastatin sodium, a tissue-selective HMG-CoA reductase inhibitor, in healthy subjects. Br J Clin Pharmacol., 1990, 29, 239-43. 19) Kosoglou T, Statkevich P, Johnson-Levonas AO, Paolini JF, Bergman AJ, Alton KB.: Ezetimibe: a review of its metabolism, pharmacokinetics and drug interactions. Clin Pharmacokinet., 2005, 44, 467-94. 20) Tse FL, Nickerson DF, Yardley WS.: Binding of fluvastatom to blood cells and plasma proteins. J Pharm Sci., 1993, 82, 942-7. 21) リバロ錠申請資料概要平成 15 年 7 月承認日産化学工業株式会社 興和株式会社 (http://www.info.pmda.go.jp/shinyaku/p200 300016/index.html) - 40 -