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国土技術政策総合研究所 研究資料

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1章

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積雪寒冷地における道路舗装の予防保全に関する研究 積雪寒冷地における道路舗装の予防保全に関する研究研究予算 : 運営費交付金 ( 一般勘定 ) 研究期間 : 平 23~ 平 27 担当チーム : 寒地道路保全チーム研究担当者 : 熊谷政行 丸山記美雄 安倍隆二 吉川敏之 要旨 本研究では 積雪寒冷地での道路の損傷 劣化を早期に予測する道路診断方法と舗装の長寿命化のための予防的対策手法を確立し積雪寒冷地における道路舗装の長寿命化に取り組む まず 積雪寒冷地における舗装の損傷実態を把握した 次に これまで予防保全の取り組みとして実施されてきたシール材施工の追跡調査を行いクラックの種別によっては数年の延命効果があることが確認された 次に 既存の FWD 経年調査データから FWD 散逸仕事量の経年変化と疲労ひび割れ発生時期との関係を検証した その結果 FWD 散逸仕事量は 疲労ひび割れの発生に前後して増加する傾向が確認された 次に 橋面舗装内部に進入した水分のよる舗装混合物や床版コンクリートの損傷状況を非破壊で検知できるか調査を行った その結果 アスファルト混合物の乾燥 浸水など各状況での反射信号が変化することを確認した キーワード : 予防保全 道路診断方法 予防的対策手法 1. はじめに道路予算の縮減に伴い 道路建設のみならず維持管理のコストダウンも強く求められており 既存のストックをより長期的に活用する技術が必要である 舗装の劣化をより早く把握することができれば 予防保全による効率的 効果的な資産管理が可能である そのためには 道路舗装の劣化を未然に または早期に診断する技術が必要である また 舗装の修繕が必要となる前に 未然の対応を取ることで延命化されコスト縮減が可能である 未然の対応方法として ひび割れへのシール材注入や 既設舗装表面上に表面処理や薄層舗装を行う予防保全工法がある これらの工法によって劣化を軽減させることができれば 舗装は延命化され LCC の縮減が可能になると期待される しかし シール材注入や表面処理などの予防保全工法の延命効果や耐久性に関しては明らかになっておらず 検証が必要である また 予防保全のための診断手法として FWD やレーダ探査技術などが考えられるが診断技術は改善の余地がある 本研究では 積雪寒冷地における舗装のシール材注入や表面処理などの予防保全工法の効果や耐久性及び 道路の損傷 劣化を早期に把握する道路診断方法に関する検討を行った結果について報告する 2. 既往の道路施設の損傷実態の検証 2.1 調査研究の方法舗装の損傷 劣化を早期に予測する道路診断方法と舗装の長寿命化のための予防的対策手法を確立するため 積雪寒冷地におけるアスファルト舗装の疲労破損について 舗装下面から上層に向かって伸びるボトムアップクラック 舗装表面から下層に向かって伸びるトップダウンクラックの損傷の形態 特徴について実態調査を行った 2.2 調査研究の成果 2.2.1 アスファルト舗装の破損形態図 -1 に示すとおり北海道の一般国道郊外部においてボトムアップクラックが多く発生していることがわかる また 図 -2 ではトップダウンクラックの発生分布が市外部の幹線道路での発生が多いことがわかる 次に 表 -1 では各疲労ひび割れの発生延長及び全道の一般国道の全延長に対する比率を示す ボトムアップクラックは舗装厚の薄い方に多く発生していることがわかる 一方 トップダウンクラックは舗装厚が厚い方に多く発生している傾向が見られた

積雪寒冷地における道路舗装の予防保全に関する研究 図 -1 ボトムアップクラックの発生分布図 シール材の残存率やひび割れ率などを追跡調査している 1)2) 試験施工は2 種類実施しており 各々の調査箇所の概要を次に述べる 3.1.1 発生形態の異なるひび割れに対するシール材注入工法の追跡調査調査箇所 AおよびB( 図 -3) において 発生形態の異なるひび割れに対して平成 18 年度に施工した 2 箇所の試験施工箇所にて追跡調査を行った 調査箇所 Aは 舗装表面から下層に向かって伸びる トップダウンクラック が発生している また 調査箇所 Bは 舗装下面から上層に向かって伸びる ボトムアップクラック が発生している 試験施工箇所の概要を表 -2に示す 試験施工箇所に使用しているシール材の品質は どちらの工区も高弾性タイプを使用している 図 -3 シール材注入工法の施工箇所図 図 -2 トップダウンクラックの発生分布図表 -1 疲労ひび割れ別延長一覧表 3. 舗装の損傷予防手法の検討 3.1 調査研究の方法ひび割れへのシール材注入による延命効果を検証するために北海道の国道において試験施工を行い 表 -2 調査箇所 A B の概要 調査箇所 A 調査箇所 B 延長 m m 施工時期 26 年 7 月 26 年 8 月 大型車交通量,8 台 81 台 シール材 ひび割れ率 (%) 31.9% 34.6% 注入前の わだち掘れ量 (mm) 13.1mm 13.7mm 路面性状値 平坦性 (mm) 1.2mm 2.4mm 3.1.2 種類の異なるシール材を注入した試験施工箇所の追跡調査について調査箇所 C( 図 -3) において シール材の種類による効果の差を検討することを目的として 同一区間内に種類の異なるシール材を連続的に注入した試験施工を行っている 施工前にひび割れ延長を測定しシール材注入後にシール材延長を測定した そして 経年変化による変化を追跡調査し各種シール材の性状や残存状態を比較検討することとした 試験施工箇所の概要を表 -3 に 試験施工の概要を図 -4

積雪寒冷地における道路舗装の予防保全に関する研究 に示す 本箇所は トップダウンクラックが縦断的に連続に発生している箇所で試験施工は下り車線のみ行い 各種シール材を隣接する同一車線に施工を行った シール材注入前の路面性状値 各種シール材を縦列に施工 表 -3 調査箇所 C の概要 延長施工時期大型車交通量 2m 2m 2m 図 -4 調査箇所 C の概要図 調査箇所 C 32m 28 年 月 4,1 台 ひび割れ率 (%) 11.3% わだち掘れ量 (mm) 1.2mm 平坦性 (mm) 2.32mm CL シーしル材無そシー2m のル他)材(高シー弾ル性)材(低シー弾ル性)材(樹脂系シー 瀝ル青材(系)m m 12m 3.2 調査研究の成果 3.2.1 発生形態の異なるひび割れに対するシール材注入工法の追跡調査結果 (1) シール材残存率調査結果図 - に経過月数におけるシール材の残存率の推 CL 移を示す グラフより 施工後 46 ヶ月経過後の残存率は 調査箇所 Aは 7% であったのに対し 調査箇所 Bは 11% の残存率となった 発生形態の異なるひび割れに対しシール材の注入を行った場合に 残存率の減少傾向に差が見られることが分かった トップダウンクラックが発生している箇所 ( 調査箇所 A) においては 緩やかに残存率が減少したが ボトムアップクラックが発生している箇所 ( 調査箇所 B) においては 1 年経過後に半減し 4 年経過後に 9% 程度減少したことが分かった これらの結果より トップダウンクラックに対して注入したシール材は ひび割れ部分における骨材の飛散やアスファルトの剥離を予防し ポットホール等に至ることを防止し シール材としての機能を維持していると言える しかし ボトムアップクラックに対して注入したシール材は これらの機能を維持されず剥離している シール材の残存率 (%) 8 6 4 2 96 2 87 87 47 調査箇所 A( トップダウンクラック ) 調査箇所 B( ボトムアップクラック ) 78 78 76 13 11 6 12 18 24 3 36 42 48 4 シール材注入後の経過月数 ( 月 ) 図 - シール材の残存率推移結果 (2) 経年変化による路面状況の調査結果調査箇所 Aの 46 ヶ月後の現地は ひび割れの伸長は認められたが シール材が注入され残存している部分は ひび割れの角欠けや幅の拡大が抑制されており 路面補修を行うまで破損は進んでいない状況であった 調査箇所 Bにおける 46 ヶ月経過後の路面状況は 破損が進みパッチング等の路面補修が行われていた 図 -6 に調査箇所 Bにおける路面補修および破損状態を面積率に表した円グラフを示す 路面補修が行われている面積は 14 ヶ月後の測定時には % だったのに対し 34 ヶ月後の測定時には 44% まで増加した ボトムアップクラック箇所でのシール材注入は 早期に剥離や飛散を生じ ひび割れ幅の拡大や角欠けを抑制することができないだけでなく ポットホールなどの路面の破損が進行し 路面補修が行われたためであると考えられる 72

なった 調査結果より 各種類のシール材を比較す 14 ヶ月経過 路面補修の必要は無いと判断される面積 74% 路面補修がされている面積 % 路面補修が必要と判断される面積 16% 34 ヶ月経過 路面補修の必要は無いと判断される面積 6% 路面補修が必要と判断される面積 % 路面補修がされている面積 44% ると 低弾性タイプ 常温型樹脂系 瀝青系は 高弾性 フィラー入りアスファルトより残存率がやや優れる値となったが 今後 残存率の推移を継続して確認する必要があると考える 図 -6 路面補修 破損状況割合 ( 調査箇所 B) (3) ひび割れ率調査結果図 -7 に調査箇所 A Bのひび割れ率の測定結果を示す ここで シール材を注入されているひび割れも ひび割れ率に含めて計測している 21 ヶ月経過後のひび割れ率測定結果は 調査箇所 Aが 41% 調査箇所 Bが 4% であった また 44 ヶ月経過後の測定結果は 調査箇所 Aが 44% 調査箇所 Bが 9% であった シール材が注入されたひび割れを含めたひび割れ率は 両工区共に経年変化による増加傾向を示しており この増加分は ひび割れの伸長や新たなひび割れの発生分である ひび割れ率の増加傾向から シール材注入によってひび割れの伸長を抑制することはできないと言える ひび割れ率 (%) 7. 6.. 4. 3. 2. 7. ひび割れ率 ( トッフ タ ウンクラック ) ひび割れ率 ( ホ トムアッフ クラック ) 6. わだち掘れ ( トッフ タ ウンクラック ) わだち掘れ ( ホ トムアッフ クラック ). 4. 3. 2. わだち掘れ量 (mm) 図 -8 シール材の残存率推移結果 (2) ひび割れ累積延長量調査結果図 -9 にひび割れ累積延長の調査結果を示す 12 ヶ月経過後の調査結果は シール無し工区とシール材を注入した工区では ひび割れ累積延長に差が見られた その後 32 ヶ月後までのひび割れ累積延長の推移は どの工区も同様な増加傾向を示している これらの結果から シール材注入を行った直後 1 年程度は シール材注入を行わない場合よりも ひび割れ伸び量を抑制できる傾向にある結果を得た しかし その後のひび割れ量の増加傾向が シール材を注入の有無によって差が見られないことから ひび割れの抑制効果は小さいと言える.... 9 14 21 26 34 38 44 経過月数 ( 月 ) 図 -7 路面補修 破損状況割合 ( 調査箇所 A,B) 3.2.2 種類の異なるシール材の追跡調査結果 (1) シール材残存率調査結果図 -8 にシール材注入延長の残存率調査結果を示す 32 ヶ月経過後の調査において 加熱注入型の高弾性タイプは 3% 低弾性タイプは 3% フィラー入りアスファルトは 17% の残存率となった また 常温注入型の樹脂系が 46% 瀝青系が 4% の残存率と 図 -9 ひび割れ累積延長推移結果

4. 舗装の予防保全のための診断手法の検討積雪寒冷地の道路の損傷劣化を FWD 電磁レーダなど簡易的手法を用いて早期の段階で探知する診断方法を検討した 4.1 FWD 散逸仕事量による診断手法の検討重錘落下式たわみ試験装置 (Falling weight Deflectometer, 以下 FWD という ) によって得られた調査データの解析方法には たわみ量によるもの 逆解析弾性係数によるものなどが広く使用されているが 散逸仕事量 (Dissipated Work) という指標も提案されている FWD による散逸仕事量 ( 以下 FWD 散逸仕事量という ) は 既往の文献において舗装のダメージや損傷状態と密接な関係があるとされており 3)4)) 理論的にも仕事量と疲労ダメージの蓄積との間には関係性が成立することが期待されるものの 実際の道路において FWD 散逸仕事量の経年的な変化傾向や疲労ひび割れ発生との関係を検証した論文は見当たらないのが実態である これまで 1993 年から 27 年までの間 8 種類のアスファルト舗装断面が同一車線上に設けられた国道区間においてわだち部および非わだち部で FWD によるたわみ量の測定を継続的に実施してきた 継続調査の間に 8 つの断面のうち つの断面において疲労ひび割れの発生が確認されている そこで 本研究では これらの FWD 測定データと輪荷重データを用いて FWD 散逸仕事量の経年変化を把握し 疲労ひび割れ発生時期など疲労ダメージとの関係を検証して FWD 散逸仕事量の疲労評価への適用性について検討を試みた 6) 4.1.1 調査研究の方法 (1) 美々新試験道路での FWD 試験方法本研究に用いた FWD 測定データは 美々新試験道路と名づけた国道区間において 1993 年から 27 年までの間に測定したものである 美々新試験道路は 199 年 7 月に構築され それ以降一般の交通に供用しており 図 - に示す 8 種類の舗装断面においてわだち部 (IWP 部 ) および非わだち部 (BWP 部 ) で継続的に FWD 測定を実施している ただし 1993 年から 27 年までの間の同一地点の時系列データがそろっているのは 各舗装断面で IWP 部 1 点 BWP 部 1 点ずつであり 本研究ではそのデータを使用した FWD の測定実施日を表 -4 に示すが 春期と秋期の測定を基本とし 舗装体の温度が異なる様々な時期にも測定を行っている また 輪荷重調査を供用後ほぼ毎年 1 回定期的に 秋期の平日に 24 時間実施して 7) いる 測定手法は舗装調査 試験法便覧 S62 可搬式車両重量計を用いた走行車両の輪荷重測定試験方法 に拠って実施しており FWD 測定日までの累積 49kN 換算輪数も表 -4 に併せて示した 表 -4 FWD 測定年月および輪荷重累積 49kN 換算輪累積 49kN 換算輪測定年月測定年月数 ( 万輪 ) 数 ( 万輪 ) 8 月 39.9 7 月 741.1 1998 年 9 月 412. 月 77.2 1993 年 9 月 424. 月 789.7 1999 年 11 月 461.2 月 814. 12 月 468.7 月 849.2 2 年 2 月 13.4 月 874. 7 月 46.7 6 月 88. 21 年 8 月 49. 月 92.6 1994 年 9 月 3.3 月 1.2 22 年 11 月 7. 11 月 42.4 11 月 6.1 7 月 89. 23 年 2 月 69.6 12 月 1124. 月 83.2 6 月 1163.1 24 年 199 年 7 月 94.2 月 1186.3 9 月 6.9 6 月 1232.9 2 年 月 612.8 月 12. 6 月 63.6 6 月 1294.3 1996 年 26 年 月 672.3 月 1318.7 月 71.7 1997 年 月 714.8 FWD で継続調査を実施している期間の間に 美々新試験道路に設けた 8 種類の舗装断面のうち 種類の舗装断面において疲労ひび割れが発生しており その発生時期は T1-1 断面 旧 A 交通断面 T2-1 断面で供用後 88 万輪 旧 B 交通断面で供用後 1124 万輪 T1-2 断面で供用後 129 万輪の 49kN 換算輪数通過時点であった T1-1 断面 旧 A 交通断面 T2-1 断面 旧 B 交通断面はアスファルト混合物層 ( 以下 混合物層という ) 厚が 12cm または 1cm で かつ 混合物層の最下層がアスファルト安定処理混合物である また T1-2 断面は混合物層厚が 12cm で 混合物層最下層が粗粒度アスファルト混合物で造られた断面である 疲労ひび割れが発生した断面に比べて アスファルト混合物層厚が 26cm と 3cm である旧 C 旧 D 交通断面と 混合部物層最下層が密粒度アスファルト混合物である T2-2 断面には疲労ひび割れの発生は認められておらず 混合物層の厚さと最下層混合物の配合の違いが疲労ひび割れの発生に影響したと推測できることも報告している 8) このような疲労ひび割れの発生状況と FWD 散逸仕事量の関係をつき合わせて検討をすすめた

混合物層 車両通過方向細粒 G13F cm 細粒 G13F 4cm 細粒 G13F 4cm 細粒 G13F 3cm 細粒 G13F 3cm 細粒 G13F 3cm 細粒 G13F 3cm 細粒 G13F 3cm 粗粒度 (2) cm 粗粒度 (2) 4cm 粗粒度 (2) 安定処理 -3 安定処理 -3 粗粒度 (2) 粗粒度 (2) 密粒 13F 12cm cm 12cm 安定処理 -3 6cm 12cm 安定処理 -3 cm 9cm 9cm 安定処理 -3 18cm 下層路盤 4mm 級 6cm 安定処理 -3 12cm 下層路盤切込砂利 4mm 級 cm 1124 万輪通過時疲労ひび割れ発生 下層路盤切込砂利 4mm 級 6cm 88 万輪通過時疲労ひび割れ発生 下層路盤切込砂利 4mm 級 37cm 凍上抑制層切込砂利 8mm 級 3cm 下層路盤切込砂利 4mm 級 37cm 凍上抑制層切込砂利 8mm 級 3cm 88 万輪通過時疲労ひび割れ発生 下層路盤切込砂利 4mm 級 4cm 凍上抑制層切込砂利 8mm 級 3cm 88 万輪通過時疲労ひび割れ発生 下層路盤切込砂利 4mm 級 4cm 下層路盤切込砂利 4mm 級 4cm 凍上抑制層凍上抑制層切込砂利 8mm 級切込砂利 8mm 級 3cm 3cm 129 万輪通過時疲労ひび割れ発生 路床土 路床土 路床土 路床土 路床土路床土路床土 路床土 断面名 旧 D 交通断面 旧 C 交通断面 旧 B 交通断面 T2-1 断面 T2-2 断面 旧 A 交通断面 T1-1 断面 T1-2 断面 舗設延長 6m 6m 6m 3m 3m 6m 3m 3m 図 - 美々新試験道路の舗装断面および疲労破壊状況 (2) FWD 散逸仕事量の定義 FWD 散逸仕事量 (Dissipated Work) とは FWD 測定によって得られる載荷荷重と載荷点直下のたわみ量 D の時系列データを用い 図 -11 のように測定荷重を縦軸に D たわみ量を横軸として時系列順にプロットした際にグラフ上に描かれるヒステリシスループに囲まれた部分の面積と定義される この部分の面積は FWD 衝撃荷重の載荷過程でなされる仕事量と 除荷過程でなされる仕事量の差と考えることができ その仕事量の差は舗装体の挙動に伴ってどこかへ散逸したと見ることができる 仕事量の散逸先は アスファルト混合物層や路盤層 路床層 さらには FWD 載荷版下面のゴム材やゴムバッファや測定装置の機械的摩擦等と考えられ FWD 散逸仕事量はこれら散逸先で散逸した仕事量を全て含んだものと考えられる したがって アスファルト舗装の疲労ダメージ評価に厳密を期すには 各々の部位で散逸した仕事量を個別に定量的に把握した上で アスファルト混合物層や路盤層 路床層において散逸した仕事量を切り出して疲労ダメージとの関係評価を行うのが理想である しかし 以下に挙げる 4 つの観点から 本研究では FWD 散逸仕事量とアスファルト混合物層の疲労破壊現象の間に関係が存在するかに絞った検証を試みた 荷重 (kn) 載荷過程 q1 q2 FWD 散逸仕事量 q1 q2 除荷過程 Dたわみ量 (mm) d1 d2 d2 d1 散逸仕事量 = Σ((q1+q2)*(d2-d1)/2) 図 -11 散逸仕事量の算出方法 1) 混合物層 路盤層 路床層 FWD 載荷版下面のゴム材 ゴムバッファ 測定装置の機械的摩擦等の各々の FWD 散逸仕事量に対する寄与分を切り分ける手法は現在存在しないこと 2) 本研究で用いた FWD データは 同一の FWD 試験機械を用いて 同一試験日に 8 つの舗装断面で測定を実施することを継続して得たものなので 載荷版下面のゴム材やゴムバッファなど機械側の影響程度は同一と扱うことが可能で その場合の FWD 散逸仕事量は アスファルト混合物層や路盤層 路床層における影響程度を反映したものとして比較評価が可能であると考えたこと 3) 4.2.1 で後述するが FWD 散逸仕事量は温度によって変化し 舗装断面構成によってもその値が異なることから アスファルト混合物層の影響を確実に受けていると認められること なお 路盤層や路床層の影響部分は温度によってさほど変化しないものと考えている

4) 室内試験である曲げ疲労試験によって得られる散逸エネルギと混合物の疲労破壊回数との間には両対数紙上で直線の関係が成立することが既に知られている 9)) が 現場試験である FWD 試験によって得られる FWD 散逸仕事量と混合物層の疲労破壊現象の間にも同様の関係が成立するか検証する意義があると考えたこと (3) FWD 散逸仕事量の算定方法美々新試験道路において測定した FWD 時系列データから FWD 散逸仕事量を算定する手順は図 -11 および以下の説明のとおりである すなわち 載荷荷重と載荷点直下のたわみ量 D の時系列データのサンプリング間隔は.2 秒であり 載荷過程においてはサンプリング間隔毎にたわみ量の増加分と荷重の変化分の積を算出して積算し 除荷過程においてはサンプリング間隔毎にたわみ量の減少分と荷重の変化分の積を順次引き算することでヒステリシスループに囲まれた部分の面積に相当する FWD 散逸仕事量を算出した なお FWD の測定は 1 測点につき 4 回の衝撃荷重の載荷を行っているが この内 1 回目のデータを棄却し 2 3 および 4 回目の各々について散逸仕事量を算定し その平均値を 1 測点の FWD 散逸仕事量とした (4) 舗装体温度の整理方法アスファルト混合物の性状は 混合物温度の影響を受けることが知られており 舗装体温度に応じて FWD 散逸仕事量も影響を受けると予想されたことから FWD 散逸仕事量の整理に当たっては 測定時の舗装体温度と対応させた整理を行うこととした 美々新試験道路では 旧 A 交通断面 旧 B 交通断面 旧 C 交通断面および旧 D 交通断面の 4 種類の舗装内部に 表 - に示す深さに熱電対を埋設し FWD 測定時の舗装体温度観測を行なっており そのうち 表 - 中に網掛けで示したアスファルト混合物層における温度測定結果を元に アスファルト混合物層の平均温度を式 (1) によって算定した t = (( t + t ) h 2 + ( t + t )( h h ) / 2 as 1 1 / 1 2 2 1 + 表 - 各舗装断面の温度測定深さ (A,B,C,D 旧交通断面 ) A 交通断面 B 交通断面 C 交通断面 D 交通断面 3 4 4 7 9 9 17 12 1 14 26 32 2 2 3 2 4 26 4 72 6 41 6 82 8 61 8 81 ( 単位 :cm) 4.1.2 調査研究の成果 (1) 舗装体温度と FWD 散逸仕事量の関係舗装体温度と FWD 散逸仕事量の関係を舗装構造別に整理した結果を図 -12 図 -13 図 -14 に示す 図 -12 は TA 法で標準的に設計された混合物層厚が各々異なる A B C D 旧交通断面のグループについて整理したものであり 図 -13 と図 -14 は混合物層厚が各々 12cm と 1cm で混合物層最下層の混合物種が異なるグループについて整理したものである なお 整理対象としたデータは 供用後の年数があまり経過しておらずダメージの累積が少なく かつほぼ通年でFWD 調査を実施している 1993~199 年のデータとした まず図 -12 図 -13 図 -14 から いずれの舗装断面においても 舗装体温度が 2 程度までの範囲では温度の増加に伴い FWD 散逸仕事量が増加し 舗装体温度が 2 以上になると FWD 散逸仕事量は横ばいもしくは低下する傾向があり その傾向は 2 次曲線で近似できるようである また 図 -12 より TA 法で標準的に設計され 混合物層厚が各々異なる場合には FWD 散逸仕事量は異なっていることが分かる 図 -13 からは 同じアスファルト混合物層厚さ 12cm であっても T1-2 断面の FWD 散逸仕事量は小さい傾向がみえる その一方で 図 -14 からは 舗装断面による差は認められない L+ ( tn 1 tn )( hn hn 1 )/ 2)hn (1) t as : アスファルト混合物平均温度 ( ) t: 路面温度 ( ) t: 1 路面から深さ h1の位置の混合物温度 ( ) h: 1 路面から 1番目の熱伝対埋設深さ (cm) t: n 路面から深さ h1の位置の混合物温度 ( ) h: 路面から 1番目の熱伝対埋設深さ (cm) n

FWD 散逸仕事量 (kn mm ) FWD 散逸仕事量 (kn mm ) FWD 散逸仕事量 (kn mm ) 2 1 2 1 A 断面 :y = -.111x2 +.6869x + 4.32 R 2 =.8613 B 断面 :y = -.88x2 +.6448x + 2.417 R 2 =.8693 C 断面 :y =.12x2 +.3464x +.763 R 2 =.8482 A 断面 B 断面 C 断面 D 断面 D 断面 :y =.3x2 +.1991x R 2 =.7126-1 2 2 3 3 4 舗装体温度 ( ) 図 -12 舗装体温度と散逸仕事量の関係 (A,B,C,D 旧交通断面 ) A 断面 :y = -.111x2 +.6869x + 4.32 R 2 =.8613 T1-1 断面 :y = -.21x2 +.8872x + 2.9894 R 2 =.793 T1-2 断面 :y = -.3x2 +.3867x + 1.994 R 2 =.621 A 断面 T1-1 断面 T1-2 断面 - 1 2 2 3 3 4 舗装体温度 ( ) 図 -13 舗装体温度と散逸仕事量の関係 (As 層厚 12cm) 2 1 B 断面 :y = -.88x2 +.6448x + 2.417 R 2 =.8693 T2-1 断面 :y = -.13x2 +.7779x + 2.391 R 2 =.839 T2-2 断面 :y = -.18x2 +.869x + 2.4812 R 2 =.7316-1 2 2 3 3 4 舗装体温度 ( ) B 断面 T2-1 断面 T2-2 断面 図 -14 舗装体温度と散逸仕事量の関係 (As 層厚 1cm) (2) 舗装断面構成と FWD 散逸仕事量の関係 1) アスファルト混合物層厚さと散逸仕事量の関係アスファルト混合物層厚さと FWD 散逸仕事量の関係を 図 -1 に示す 図 -1 中のプロットは 図 -12 図 -13 図 -14 に示した各舗装断面の回帰式において 舗装体温度が として算定した値としている ここで としたのは 美々新試験道路の年間の平均舗装体温度が概ね であることから の 時の値で代表させたものである アスファルト混合物層が厚くなれば散逸仕事量が小さくなる傾向が確認できる FWD 散逸仕事量 (kn mm) 12 8 6 4 2 A T1-1 T1-2 T2-2 T2-1 B 1 2 2 3 3 4 C アスファルト混合物層厚さ (cm) 図 -1 アスファルト混合物層厚と散逸仕事量 ( ) 2) 基層混合物の種類と散逸仕事量の関係アスファルト混合物層厚さが同じであるが 基層混合物の種類が異なる旧 A 交通 T1-1 および T1-2 と旧 B 交通 T2-1 および T2-2 のアスファルト混合物層厚さと散逸仕事量の関係を整理した結果を図 -16 図-17 に示す なお 図 -16 図-17 中の値は 図 -12 図 -13 に示した各舗装断面の回帰式において 舗装体温度が として算定した値である アスファルト混合物の最下層に粗粒度混合物を使用している T1-2 断面の散逸仕事量が 最下層が安定処理混合物である旧 A 交通断面や T1-1 断面の散逸仕事量にくらべて小さく差が見られる一方 アスファルト混合物層の最下層に密粒度混合物を使用している T2-2 断面の散逸仕事量が 最下層が安定処理である旧 B 断面や T2-1 断面とほぼ同じとなっている アスファルト混合物層の厚さが同一であっても 混合物の種類に応じて散逸仕事量は異なるのではないかと推測していたが 一定の傾向を確認することはできなかった FWD 散逸仕事量 (kn mm) 12 8 6 4 2 A 断面 T1-1 断面 T1-2 断面図 -16 混合物層厚 12cm の断面の FWD 散逸仕事量 ( ) D

FWD 散逸仕事量 (kn mm) 12 8 6 4 2 B 断面 T2-1 断面 T2-2 断面図 -17 混合物層厚 1cm の断面の FWD 散逸仕事量 ( ) (3) ひび割れ発生後の散逸仕事量の変化ひび割れの発生前後の混合物温度と散逸仕事量の関係について整理した結果を図 -18 に示す 舗装に損傷の生じていない 1993 年 ~199 年のデータを用いた混合物温度と散逸仕事量の散布図に 最初に疲労ひび割れが発生した前後のデータ (2 年 月 ~21 年 月 ) およびオーバーレイ後 リフレクションクラックが発生する前後のデータ (23 年 7 月 ~26 年 6 月 ) をプロットし損傷に伴う舗装体温度と散逸仕事量の関係について整理した 旧 A 交通断面においては 直接荷重の影響を受ける IWP の散逸仕事量は 舗装の損傷に伴い損傷前の混合物温度と散逸仕事量の関係から乖離する傾向が見られる 旧 B 交通断面においても 直接荷重の影響を受ける IWP の散逸仕事量は 舗装の損傷に伴い損傷前の混合物温度と散逸仕事量の関係から乖離する傾向が見られる 一方 旧 C 交通断面は 調査期間中に疲労ひび割れは発生しておらず 散逸仕事量と温度の関係に乖離は見られない 旧 D 交通断面も 調査期間中に疲労ひび割れは発生しておらず 概ね散逸仕事量と温度の関係に乖離は見られない 以上のことから 疲労ダメージの蓄積や疲労ひび割れの発生に伴って散逸仕事量は健全な状態における値よりも大きくなる傾向を示すと推測される (4) FWD 散逸仕事量と疲労破壊時 49kN 換算輪数 FWD 散逸仕事量と疲労ひび割れ発生時点までの累積 49kN 換算輪数との関係および 疲労ひび割れ発生時点までの散逸仕事量の総和と疲労ひび割れ発生時点までの累積 49kN 換算輪数との関係について 疲労破壊が生じた つの舗装構造 ( 旧 A T1-1 T1-2 旧 B T2-1 断面 ) を対象に整理を行なった結果を図 -19 図-2 に示す 図 -19 における単位散逸仕事量とは 舗装体温度が の時の 1 回の FWD 載荷による散逸仕事量と定義したものである の時の FWD 散逸仕事量で代表させたのは 美々新試験道路の年間の平均舗装体温度が概ね であるためで 各々の舗装断面の の時の 1 回の FWD 載荷による散逸仕事量 (= 単位散逸仕事量 ) は図 -12 図-13 図 -14 に示した回帰式から算定した また 図 -2 における総散逸仕事量とは 単位散逸仕事量 49kN 輪での 1 回走行当りの散逸仕事量とみなして 疲労ひび割れ発生までに通過した累積 49kN 換算輪数を単位散逸仕事量に乗じて得られる 疲労ひび割れ発生までの散逸仕事量の総和と定義したものである なお 図中には 現段階では疲労ひび割れの発生 に至っていない 旧 C 交通断面 旧 D 交通断面 T2-2 断面に対しても 疲労破壊までの年数を予測し た筆者らの研究結果 11) を用いて 疲労ひび割れ発生 予測時期までの累積 49kN 換算輪数を計算して 併 せて白抜き表示でプロットした また アスファルト混合物層の最下層が安定処理混合物の断面のデータ群 ( 旧 A 旧 B 旧 C 旧 D T1-1 T2-1 断面 ) に対して回帰線を求めた結果も表示しておいた 図 -19 に示すとおり これまでに疲労ひび割れの発生が確認された舗装断面のデータだけでは 傾向がつかめないものの 予測値まで含めると 単位散逸仕事量と疲労ひび割れ発生時の累積 49kN 換算輪数は 両対数紙上で直線の関係が明確となる また 図 -2 からは 総散逸仕事量と累積 49kN 換算輪数の間にも両対数紙上で直線となる関係が認められる 室内での疲労曲げ試験より得られる散逸エネルギは 試験方法等によらず疲労破壊回数と両対数紙上で直線関係にあることを姫野らや Van Dijik が報告している 9)) FWD 散逸仕事量と疲労破壊回数の間においても同様の関係が成立するものと類推できる結果が得られたと考えており FWD 散逸仕事量は舗装体の疲労ダメージの評価を行う際に有用な指標になりうると思われる しかし 図 -19 図 -2 において 混合物層の最下層に粗粒度混合物を使用した T1-2 断面と 密粒度混合物を用いた T2-2 断面は 混合物層の最下層に安定処理混合物を使用した断面から得られる回帰線とは離れた位置にプロットされており これらのデータも含めて矛盾なく説明できる結果とはなっていない 以上のように FWD 散逸仕事量は疲労破壊時期との関連を説明できる有用な指標となりうるものの まだ今後も様々な現場におけるデータを蓄積し 検証を行ったうえでの判断が必要なものと考えられる

1993 年 ~199 年 2//~21//1(IWP) 2//~21//16(BWP) 23/7/1~26/6/1(IWP) 23/7/1~26/6/1(BWP) 1993 年 ~199 年 2//~21//1(IWP) 2//~21//16(BWP) 23/7/1~26/6/1(IWP) 23/7/1~26/6/1(BWP) 2 2 ( 旧 A 交通断面 ) ( 旧 B 交通断面 ) 2 2 散逸仕事量 (kn mm ) 1 散逸仕事量 (kn mm ) 1 y = -.111x 2 +.6869x + 4.32 R 2 =.8613-1 2 2 3 3 4 舗装体温度 ( ) y = -.88x 2 +.6448x + 2.417 R 2 =.8693-1 2 2 3 3 4 舗装体温度 ( ) 2 2 1993 年 ~199 年 2//~21//1(IWP) 2//~21//16(BWP) 23/7/1~26/6/1(IWP) 23/7/1~26/6/1(BWP) ( 旧 C 交通断面 ) ( 旧 D 交通断面 ) 1993 年 ~199 年 2//~21//1(IWP) 2//~21//16(BWP) 23/7/1~26/6/1(IWP) 23/7/1~26/6/1(BWP) 2 2 散逸仕事量 (kn mm ) 1 散逸仕事量 (kn mm ) 1 y =.12x 2 +.3464x +.763 R 2 =.8482 1 2 2 3 3 4 舗装体温度 ( ) y =.3x 2 +.1991x R 2 =.7126 1 2 2 3 3 4 舗装体温度 ( ) 図 -18 疲労ひび割れ発生後の FWD 散逸仕事量変化 (A,B,C,D 旧交通断面 ) 単位散逸仕事量 (kn mm) A T1-1 T2-1 B T1-2 T2-2 C 実測値予測値 y = 4694.4x -.3881 R 2 =.998 D 1.E+9 9 総散逸仕事量 (kn mm) 1.E+8 8 実測値予測値 A T1-1 T2-1 B T1-2 T2-2 C D y = 8798.8x.787 R 2 =.984 1 1.E+6 6 1.E+7 7 1.E+8 8 1.E+9 9 疲労ひび割れ発生時の累積 49kN 換算輪数 ( 輪 ) 1.E+7 7 1.E+6 6 1.E+7 7 1.E+8 8 1.E+9 9 疲労ひび割れ発生時の累積 49kN 換算輪数 ( 輪 ) 図 -19 FWD 散逸仕事量 ( ) と疲労破壊輪数の関係 図 -2 総散逸仕事量と疲労破壊輪数の関係

cm 電磁波レーダ 真水含水状態 塩水含水状態 乾燥状態 6cm 6cm 6cm 1 2 3 4 6 金属板 供試体 (3 3 cm) 6 枚表層 : 細粒度混合物 cm 基層 : 粗粒度混合物 cm 図 -21 反射波測定概要図 4.2 電磁波レーダを利用した診断手法の検討橋面舗装内部に浸入した水分は 舗装混合物のはく離や床版コンクリートの耐久性を低下させる原因になると考えられる 積雪寒冷地ではさらに 冬期間路面に凍結防止剤として塩化ナトリウムを散布することがあり 水分に溶けた塩化ナトリウムが橋面舗装内部に浸入し 混合物や床版コンクリートに悪影響を及ぼす可能性もある 橋面舗装内部の水分や塩分の存在を非破壊で検知できれば 混合物層のはく離損傷やコンクリート床版への影響評価を行う際に有用と考えられる そこで本研究は 水分や凍結防止剤 ( 本研究では塩化ナトリウムに限る ) を含んだアスファルト混合物が電磁波レーダの比誘電率や反射波特性に与える影響について 基礎的な実験によって検証を試み 電磁波レーダによる水分や塩分検知の可能性を探った 12) 橋面舗装の基層混合物に使用されることの多い粗粒度混合物が 乾燥状態 真水含水状態 塩水含水状態にあるときに各々の比誘電率やレーダ反射波の測定を行った 実験方法や実験条件を以下に述べる 4.2.1 調査研究の方法 (1) 比誘電率測定方法 3cm 3cm cm の粗粒度混合物試料からφ4cm 厚 1cm の円柱状試料を切り出し その中心を φ1.cm くり抜いて 同軸管による S パラメータ反射法で周波数域 4~3MHz の比誘電率を計測した (2) 反射波測定方法図 -21 に示すように 表層に細粒度ギャップアスファルト混合物 cm 基層に粗粒度アスファルト混合物 cm を配した縦 3cm 横 3cm 厚さ cm の供試体を金属板の上に 6 枚並べ ( 乾燥状態 2 枚 真水含水状態 2 枚 塩水含水状態 2 枚 ) その表面上を周波数 ~2MHz の電磁波レーダで通過計測して反射波を比較した 真水含水状態や塩水含水状態とするためには試験前約 1 週間水槽に浸漬し 試験の際に供試体表面の水分または塩水をふき取り計測を行った 浸漬した塩水の濃度は 2% と飽和に近い濃度 水温は約 2 とした 4.2.2 調査研究の成果 (1) 比誘電率計測結果比誘電率の測定結果を図 -22 に示す 粗粒度混合物が乾燥状態と真水含水や塩水含水状態の比誘電率を比較すると MHz 以下では比誘電率に明らかな差が見られる MHz 以上では乾燥と真水含水または 乾燥と塩水含水の間では若干の差が見られるものの 真水含水と塩水含水の間では大きな差がみられない 比誘電率は周波数に応じて変化しており 周波数が高くなると乾燥と真水含水および塩水含水の比誘電率の差は小さくなる傾向にあるのが分かる 路面から数 cm から数 cm の範囲の損傷検知を目的とした場合 一般的には使用するレーダの周波数は MHz 以上の高周波数を用いるのが適当で それよりも低い周波数では損傷部位の検知精度が低下するとされる 水分検知を目的とする場合は MHz 以上でかつ 比誘電率の差が認められる周波数を調査に用いる必要があるといえる 表 -6 には レーダの周波数が 122MHz の時の比誘電率測定結果を示す 乾燥と真水含水 乾燥と塩水含水の比誘電率には若干の差があるが 真水含水と塩水含水の比誘電率は差がないことが分かる なお 参考として既往文献においてアスファルト ( 乾燥 ) の比誘電率は 2~4 真水 81 海水 81 空気は 1 とされている 13) のと比べ 本試験で得られた結果は概ね妥当なものと考えられる εr'( 比誘電率実数部 ) 図 24 比誘電率計測結果 粗粒度乾燥状態粗粒度真水含水状態粗粒度塩水含水状態 表 6 比誘電率の値 (122MHz の場合 ) 周波数 (MHz) 図 -22 比誘電率計測結果

表 -6 比誘電率の値 (122MHz の場合 ) 試験条件真水水供試体乾燥状態含水状態含水状態粗粒度 (st8-) 3.6 3.8 3.8 乾燥状態表面 プレート面 (2) 反射波測定結果反射信号の遅れに着目した比較結果を図 -23 に示す 厚さ mm の供試体の下に設置した金属板からの反射信号の深度 ( 枠で囲んだ部分 ) について 乾燥状態の供試体において金属板からの反射信号の深度を mm とした場合 真水および塩水含水状態の反射信号は ともに深度 mm 程度の位置で反射信号が確認された これは 図 -22 と表 -6 でも判明しているように 乾燥状態と真水および塩水含水状態では比誘電率が異なり 電磁波が入射する際に水分の影響で伝播速度が低下したため 本来 mm の位置で得られる反射信号が 見かけ上約 mm 程度深い位置で得られたものと考えられる 反射信号の強度の変化に着目した比較結果を図 -24 に示す 乾燥状態の供試体では金属板の反射信号 ( 枠で囲んだ部分 ) は強い強度振幅で捉えられており 真水含水状態の供試体も乾燥状態とほぼ同様の強度振幅で反射信号を捉えている 一方 塩水含水状態の供試体では 他に比べて著しく反射信号の強度振幅が弱い状況が確認された これは 真水に比べて塩水は電解質で電気伝導性をもつ物質のため その影響を受けたものと推測され 電磁波レーダによって塩分の存在を検知できる可能性を示唆している 表面表面表面 mm 程度の遅れ乾燥状態真水含水状態塩水含水状態 : 金属板面からの反射波 : 乾燥状態時 金属板表面位置 : 含水状態時 金属板表面位置 図 -23 反射波信号の遅れ比較結果 : 金属板面からの反射波 : 乾燥状態時 金属板面の反射強度 ( 振幅 ) : 塩水含水状態時 金属板面の反射強度( 振幅 ) 真水含水状態表面プレート面塩水含水状態表面プレート面図 -24 反射波信号強度の比較. まとめ.1 舗装の損傷予防手法の検討予防保全工法について シール材注入の延命効果を調査した結果は 以下のとおりである (1) 発生形態の異なるひび割れに対して行ったシールの残存率の減少傾向に差が見られた トップダウンクラック箇所において 残存率は緩やかに減少し 残存しているシール材はシール材としての機能を維持し ひび割れの角欠けやひび割れ幅の拡大を抑制することで 路面補修を必要としない路面状態を保持している 一方 ボトムアップクラック箇所においては シール材の残存率が悪く剥離している (2) トップダウンクラックに対してはシール材注入による破損の進行を抑制する効果が認められ 2 ~3 年程度の延命効果が得られた ボトムアップクラックに対する延命効果は認められていない

(3) 種類の違うシール材を注入し調査を行った結果 シール材の残存率の経年変化は 加熱注入型低弾性タイプと常温型は 加熱注入型高弾性タイプとフィラー入りアスファルトより比較的 残存率が高い値で推移している このことより 加熱注入型低弾性タイプと常温型は ひび割れ幅の拡大や角欠けを抑制する効果に優れると言える.2 舗装の予防保全のための診断手法の検討 (1) FWD 散逸仕事量による診断手法の検討疲労ひび割れの発生に伴って FWD 散逸仕事量は健全な状態における値よりも大きくなる傾向が確認された 舗装が健全な時点の混合物温度と FWD 散逸仕事量の関係を求めることにより 舗装の構造的破壊の評価指標に用いることが可能と考えられる (2) 電磁波レーダを利用した診断手法の検討アスファルト混合物の乾燥時 真水含水時 塩水含水時の比誘電率を把握した さらに 反射波測定によって 真水 塩水ともに含水状態では反射信号の遅れが発生し 塩水含水状態では反射信号の強度が乾燥状態や真水含水状態と比較して弱くなることを確認した そして 電磁波レーダによって 舗装内の水分滞留状態や 滞留している塩分の存在を検知できる可能性があることがわかった 参考文献 1) 金子雅之 田高淳 丸山記美雄 : 舗装における予防的修繕工法に関する調査検討 第 1 回 ( 平成 19 年度 ) 北海道開発局技術研究発表会 28.2 2) 金子雅之 田高淳 丸山記美雄 : 舗装における予防的修繕工法に関する調査検討 第 2 回 ( 平成 2 年度 ) 北海道開発局技術研究発表会 29.2 3 ) Harold Von Quintus and Brian Killingsworth.: Analysis Relating To Pavement Material Characterization And Their Effects On Pavement Performance, FHWA-RD-97-8, 1998.1. 4) 東滋夫, 金井利浩, 岡部俊幸, 林信也, 松井邦人 :FWD による時系列データの舗装構造評価への適用, 土木学会舗装工学論文集, 第 3 巻,pp.31-38,1998.12. ) 阿部長門, 関口幹夫 : 小型 FWD による道路橋鉄筋コンクリート床版健全度評価への適用性の検討, 土木学会第 9 回年次学術講演会,pp.1237-1238,24.9. 6) 丸山記美雄 熊谷政行 :FWD 散逸仕事量によるアスファルト舗装の疲労ダメージ評価 土木学会論文集 E1( 舗装工学 ),Vol67,No.3( 舗装工学論文集 16 巻 ),I_27-I_3 4,211. 7) 日本道路協会 : 舗装調査 試験法便覧,27. 8) 丸山記美雄, 田高淳, 笠原篤 : 美々新試験道路におけるアスファルト舗装の長期供用性, 土木学会論文集 E, 62 巻 3 号,pp.19-3,26. 9) 姫野賢治, 渡辺隆, 丸山暉彦 : 低スティフネス状態におけるアスファルト混合物の疲労破壊特性に関する研究, 土木学会論文集,V-4 第 366 号,pp.143-11, 1986. )Van Dijk, W.: Practical Fatigue Characteristics of Bituminous Mixes, Proc. of AAPT, Vol. 44, pp. 38-74, 197. 11) 丸山記美雄, 田高淳, 笠原篤 : アスファルト舗装の疲労ひび割れ発生予測に関する研究, 土木学会論文集 E, 64 巻 3 号,pp.416-426,28. 12) 丸山記美雄 熊谷政行 : 水分と凍結防止剤の影響を受けたアスファルト混合物の電磁波レーダ特性, 日本道路会議論文集,29 th,rombunno.272,211 13) 社団法人物理探査学会編 : 物理探査用語辞典,2 年

A STUDY ON PREVENTIVE MAINTENANCE OF PAVEMENTS IN COLD,SNOWY REGIONS Budged:Grants for operating expenses general account Research Period:FY211-21 Research Team:Road Maintenance Research Team Author: KUMAGAI MASAYUKI MARUYAMA Kimio ABE Ryuji YOSHIKAWA Toshiyuki Abstract :This study was conducted to establish a road diagnosis method for early prediction of damage and deterioration of roads in cold, snowy regions and a precautionary method for prolonging the service life of the pavement on such roads. First, the damage status in cold, snowy regions was identified. Next, a follow-up survey of sealing material applications which have been conducted as a means of preventive maintenance was conducted, confirming that the life prolongation effect of several years can be achieved dependingon the types of cracks. Then, based on the existing falling weight deflectometer (FWD) data, the relationship between yearly changes in the dissipation workload of the FWD and the time of formation of fatigue cracks was verified. The results confirmed that the workload tended to increase before and after the crack formation. A survey was then conducted to determine the possibility of detecting the status of damage to the paving mixture and concrete slab caused by water infiltrated into the bridge surface pavement. As a result, the tendencies of reflected signals depending on asphalt mixture conditions (e.g., dry, immersed) were confirmed. Key words : Preventive maintenance, road diagnosis method, precautionary method