各科共通での応用 1 診療開始前の患者の洗口従来 治療開始前に感染予防を目的として 患者にポピドンヨード液 ( イソジン液等 ) で洗口してもらっているが この洗口液に強酸性電解水を使川する 強酸性電解水の殺菌 消毒効果は 2 回の洗口時間の長さよりもむしろ回数が重要である 私共は通常 2 回の洗口時間 mp 秒で 少なくとも 4 回行ってもらう様にしている 前章の洗口 含嗽の所で記述した様にかなり効果があがる 2 手指の消毒 日常 一般診療で行う場合と外科的処置を行う場合とに分けて考える必資がある 一般診療では 流水中で液体の薬用石鹸等を用いて揉み洗い後 強酸性電解水中に手指を浸漬するべースン法で 21~31 秒間 (2 分以上がより望ましいが ) 消毒を行い そして 3 次汚染防止の為にペーパータオル等で拭いた後 滅菌済みのゴム手袋を着用して診療を開始する 他の方法としては同じ方法で揉み洗い後 強酸性電解水を用い さらに両手を揉み洗いするスクラブ法 ( 洗浄法 ) を 21~31 秒間行った 後 ペーパータオルで拭いて 滅菌済みのゴム手袋を着用してから治療を開始する 外科的処置を行う場合は 強酸性電解水の流水下で滅菌ブラシを用いて 4~6 分間かけて手指から肘関節上まで摩擦 洗浄し 再びブラシを取り換えて同じ操作を約 4 分間行った後 滅菌タオルあるいは滅菌ガーゼで水分をよく拭き取る その後 滅菌済みのゴム手袋を着用し 処置を開始する 3ユニット及び診療室内の消毒 清拭 歯科用ユニットのテーブル ライトハンドル スイッチ スビットンキャビネット ヘッドレスト チェアー等は強酸性電解水をスプレーしてからタオル等で清拭する タオルはあらかじめ強酸性電解水中に浸漬後 軽く揉み洗いしたのち 新しい強酸性電解水中に 21~31 分浸漬したものを用いる 床等の清掃にはモップに強酸性電解水を十分含ませたうえで消拭する 但し あらかじめ使うモップを強酸性電解水に浸漬後 絞りこんでおく事が大切である 4 器機 器具の滅菌 消毒 基本セットデンタルミラー 歯科用ピンセット 探針 エキスカベーター ゴム充填器 バキュームチップ 金属コップ ) メス スケーラーや印象用トレー等の様にオートクレープにかけられる器具は使用後 強アルカリ性電解水あるいは水道水の流水下で水洗したのち 強酸性電解水で 21~31 分浸漬 消毒する 更に強アルカリ性電解水等で水洗したのちオートクレープにて滅菌する オートクレープにかけられない器具 例えばラバーボール バー 口角鉤 プライヤー スパチュラ等はグルタール製剤による消毒がなされているが グルタール製剤の代わりに強酸性電解水中に 21~31 分間浸漬した後 強アルカリ性電解水あるいは水道水にて水洗してから保管するとよい 保存科の治療への応用 1 窩洞形成時の歯肉創傷部への消毒 洗浄 インレーあるいはアンレーの窩洞形成時 歯肉縁下迄形成する必要性が生じる事がある その際 細心の注意を払って形成しても辺縁歯肉部の創傷を避ける事は困難であり しかもその為出血も生じてしまう そこで形成終了後 創傷都への消毒 洗浄効果 止血効果を期待して強酸性電解水をシリンジに入れて 創傷部を洗浄するとよい 止血効果については臨床的には有効であると思われるが そのメカニズムについてはいまだ解明されていない しかし QI 酸化還元電位などの影響により血管が収縮する事が考えられるので これらの影響により止血効果が生じる事は十分予測できる 1
タービンのハンドピースから注水される水に強酸性電解水を使用できれば シリンジ等を用いないで更に有効活用できるのであるが 現在発売されている強酸性電解水の生成装置はいずれも医療用機器として厚生省の認可を受けていない その為ターピンのハンドピースからの水として現在は使用できない しかし近い将来は認可される事は間違いない 又タービンのハンドピース内の錆が問題だが これに関 しての研究も進めており 十分解決できると確信している 2 歯髄疾患 根尖性歯周疾患及び感染根管の治療 歯髄治療を行う際 無菌的処置を施すためラバーダム防湿がなされる そしてラバーダム装着後 患歯ならびにその周囲は消毒する この時 通常はヨードチンキで消毒するが そのヨードチンキの代わりに強酸性電解水を適用する事ができる 生活歯髄処置 抜髄処置 感染根管処置では 6~21% 次亜塩素酸ナトリウム液 (ObPDm) と 4% 過酸化水素水液 (I 3 1 3 ) による窩洞あるいは根管内洗浄 消毒が行われる 強酸性電解水をその洗浄液として適用することができる 次亜塩素酸ナトリウムは劇薬であるから ラバーダムと患歯との隙間から漏洩が生じると口腔粘膜を腐蝕させてしまう この様な心配が強酸性電解水を用いると全く生じないのが大きな特徴である また感染根管で口腔粘膜に瘻孔が開いている症例では 根管通過法 (Sppu dbobm Qbttbhf) を行う場合がある その時の洗浄液としても強酸性電解水を用いる事ができる 強酸性電解水を 2 回の治療にどのくらいの量を用いればよいかが問題となるが 症状が重い場合は 31nm~41nm と多くの量を用い 症状が軽くなれば量を減らしていけばよい 治療時に使用した器具 例えばヤングのフレーム ラバーダムパンチ クランプホ-セップス クランプ等は強アルカリ性電解水で洗浄後 強酸性電解水中に浸漬して消毒すればよい ここで実際の臨床応用例を紹介しよう 第 3 回強電解水歯科領域研究会で 臨床現場における強酸性電解水の根管治療への応用 と超して 小柳一哉先生 ( 小柳歯科医院院長 ) が実際に根管洗浄 消毒に強酸性電解水を用いた臨床報告を行っている 被験者は潰瘍性歯髄炎及び急性化膿性歯髄炎の患者 6 名で抜髄 根管治療 根管充填時の窩洞 根管内洗浄に強酸性電解水をそれぞれ約 21nm 使用した ( 表 4-2) 図 4-3 4 6 名の患者中 5 名は強酸性電解水にて根管内洗浄後 GH(GpsnbmjoHvbjbdpm) 貼薬したが 2 名 ( 患者名 N.U) は GH 貼薬を行わず ペーパーポイントのみとした 4-2 抜髄及び感染根管治療の洗浄 消毒方法 1. 潰瘍性歯髄炎及び急性化膿性歯髄炎 抜髄時の洗浄 : 強酸性電解水 10ml をシリンシ にて洗浄 FG 貼薬の場合とヘ ーハ ーホ イントのみの場合 根管洗浄 (n 回 : 強酸性電解水 10ml をシリンシ にて洗浄 (S 培 ) FG 貼薬の場合とヘ ーハ ーホ イントのみの場合 根充時の洗浄 : 強酸性電解水 10ml をシリンシ にて洗浄 2. 急性化膿性根尖性歯周炎及び慢性化膿性根尖性歯周炎 感根処置時の洗浄 : 強酸性電解水 10ml をシリンシ にて洗浄 FG 貼薬の場合とヘ ーハ ーホ イントのみの場合 根管洗浄 (n 回 ): 強酸性電解水 10m をシリンシ にて洗浄 (S 培 ) FG 貼薬の場合とヘ ーハ ーホ イントのみの場合 根充時の洗浄 : 強酸性電解水 10m をシリンシ にて洗浄 2
治療回数及び方法は各患者によりそれぞれ異なるものの 根管充填を行い 治療は終了した 終了後 リコールにより治療した歯の状態を観察した所 ペーパーポイントのみで FG を貼薬しないで治療を行った歯も良好な状態を 図 3-2 抜髄 根管拡大処置が終了 図 3-3 強酸性電解水にて洗浄 保っているとの事である ( 表 3-2) 又急性化膿性根尖性歯周炎及び慢性化膿性根尖性歯周炎の患者 7 名 に対しても 同様に強酸性電解水 10ml を用いて治療を行い 7 名中 4 名はペーパーポイントのみの治療 であったが 4 名の患者の治療した歯は治療終了後 経過は順調であり 異常は認められていないと報 告している ( 表 3-3) これらの結果から 強酸性電解水は根管洗浄作用があり 且つ殺菌 消毒効果も 兼ね備えている事を証明できた事に成るので実際の臨床に使用しても有効であろう. 近年 サブソニック波動根管拡大洗浄装置が根管内の洗浄に使用されている 今後の課題となるが この装置の洗浄液として用いる事が可能となれば治療効果は大きな物となると確信している 3 外科的療法時の洗浄液 歯内治療時 補助療法として外科的処置が行われる 外科的排膿路の確保として膿瘍切開 穿孔法 根尖外科療法として根尖掻爬 根尖切除術など あるいはヘミセクション等が行われる それらの外科 的処置時の洗浄液として強酸性電解水はふさわしい洗浄液である 歯周病科の治療への応用 1 歯石除去前後の消毒スケーリングやルートプレーニング前後の洗浄 消毒に強酸性電解水を使用する 歯石除去には超音波スケーラーが主に用いられている 強酸性電解水を超音波スケーラーから注水できる様にできれば 非常に有効である 現在では強酸性電解水生成装置が医療用器貝として厚生省から認可を受けていないので適用されていないが 近い将来認可されれば適用されることになるだろう 2 歯周外科治療歯周外科治療には歯周ポケット掻爬術 新付着手術 歯肉切除術 フラップ手術 歯周歯槽骨外科手術 根分岐部病変処置 歯肉歯槽粘膜外科手術等がある それらの手術前後の洗浄 消毒に強酸性電解水が使用できる 強酸性電解水の使用により術後疼痛の軽減 感染防止 手術後の早期治癒が期待できる 3 歯肉溝 歯周ポケット内の洗浄 消毒歯周疾患に対する治療は これ迄プラークコントロールに始まりスケーリング ルートプレーニング等による初期治療 そしてこれに続く歯周外科手術等による歯周ポケット内に棲息する細菌魂を量的に除去する機械的治療処置が主体であった 碓かにこれらの処置は非常に有効である しかしながら歯周ポケットが 5mm 以上の根面や解剖学的に複雑な歯根 根分岐部病変部等の部位は機械的な療法だけでは完全に治療効果をあげることは困難である そこでこれらの部位への有効な治療方法として 抗生物質による歯周ポケット局所療法 (Intra-Pocket Antibiotic Therapy:IPAT) が近年行われるようになった この療法は 歯周ポケットの病原細菌 ( グラム陰性嫌気性菌 ) を選択的に抑制あるいは減少させる事により 歯周ポケット内の細菌叢の質的改善を図るものである この療法は外科的侵襲を伴わず かつかなりの効果が期待できる事から 局所的保存療法ではあるが 歯周治療の一手段として広く臨床で使用される様になった また保存療法のーつとして 近年イリゲーションが話題を集めてきている イリゲーションは 歯肉溝あるいは歯周ポケット内を洗浄する事によって その中に存在している遊離プラークや付着プラーク 3
の一部を洗い流す事により歯周病の予防あるいは治療を行う方法である この方法により治療効果をあげるには使用する薬剤とその濃度 そして細菌との接触時間が重要なポイントになる しかし これまで使用されている薬剤は細菌に対しての効果は有効であるが その反面 生体為害性がある為多量に使用する事ができなかった それに反して強酸性電解水は生体に対する効果は強力で 速効性があり さらに良い事は上水から生成され 薬剤は一切使っていないので生体に対してほぼ無害である事である 従って多量に使用できる事から 従来のイリゲーションに使用する薬剤にとって変わる洗浄 消毒薬として強酸性電解水の使用が可能である そこで 当教室の塚崎弘明先生を中心に強酸性電解水が歯周ポケットの内洗浄薬として 応用効果があるかどうかの実験を行った 被験者は歯肉炎 歯周炎を有する患者で 歯周炎患者は歯周ポケットの深さが 3mm 程度 歯肉の炎症が中等度であり 歯周炎患者は歯周ポケットの深さが 5mm 以上 術肉の炎症が中等度以上である ( 表 3-4) 実験方法は歯肉縁上プラーク 唾液を除去した後 3 本の滅菌ペーパーポイントを歯周ポケット内に表 3-4 歯周ポケット内洗浄の被験者と部位 被験者歯肉炎 歯周炎を有する患者 1) 部分床義歯装着者 2 重篤な全身疾患がない者 3) 過去半年間にわたり抗菌剤をしていない者被験部位歯肉炎を有する患者歯周ホ ケット 3mm 程度 歯肉の炎症が中等度 (X 線写真で骨吸収の見られない部位 ) 歯周炎を有する患者歯周ホ ケット 5mm 以上 歯肉の炎症が中程度以上 図 3-5 歯周ホ ケット内洗浄実験の実際 30 秒間挿入し 歯肉緑下 1.3 本の滅菌ヘ ーハ ーホ イントを歯周ホ ケットプラークを採収した 内に挿入採取後ルートキャナルシ 2. シリンシ にて歯周ホ ケット内洗浄リンジを用いて実験菌は 3. 再度 3 本の滅菌ヘ ーハ ーホ イントを歯周強酸性電解水 5ml コンホ ケットに挿入トロール菌は滅菌蒸留水 4. 滅菌ヘ ーハ ーホ イントを中和剤 チオ硫酸ナト 5ml を用いてポケット内リウムの入った輸送用ハ イル中に入れるを洗浄した 3 分後 再び滅菌ペーパーポイントを用いて歯肉緑下プラークを採取し その中に含まれている総細菌数ならぴに歯周病に関与する黒色色素産生性嫌気性桿菌の数を算定し 比較検討を行っている ( 図 3-4 5) その結果 強酸性電解水によるポケット内洗浄では洗浄後の総菌数 黒色色素産生性嫌気性桿菌数が洗浄前に比較して有意に減少した 一方 滅菌蒸留水による洗浄では有為な差異は認められなかった ( 表 3-5) これらの結果から 強酸性電解水は歯周ポケット内の洗浄薬としても有効な効果がある事を示 4
唆している 又強酸性電解水は これ迄使用されているポケット内洗浄液よりも口腔内組織に対して数段無害であるので ポケット内洗浄液として今後 広く用いられる様になるだろう 歯肉溝及び歯周ポケット内の洗浄法は 2 つの方法がある 1シリンジを用いたイリゲーション実際の臨床ではシリンジを用いて 強酸性電解水の量は 1 歯につき 5ml~20ml を使用し 洗浄する 強酸性電解水は常用しても耐性歯は生じないので 回数 期間は適宜決めればよい事になる 2Perio Pik TM を用いたイリゲーション Perio Pik( ヨシダ社 ) はタービンに直接 ワンタッチで接続して歯周ポケット内をイリゲーションができる装置として発売されている これを利用すれば容易に強酸性電解水によりイリデーションができる Perio Pik を使用する利点としては 1. 歯肉溝あるいは歯周ポケット内にターピンホースの圧力を利用する事により 一定の水圧で定量を正確に簡単に注入する事ができる 3. 歯肉溝あるいは歯周ポケット内への流水量を調節する事ができる 4. 付属のニードルはステンレス製で洗浄に効果的な側孔タイプであり 又 自在に曲げる事ができる 5. ポンプから補充方式をとる事ができるので どの様な薬液 洗浄液でも使用できる 等があげられている 実際に使用してみると QfsjpQjl はシリンジを用いて行う歯肉溝内あるいは歯周ポケット内の洗浄とは異なり 定量を一定の圧力で容易に洗浄できる為 患者に疼痛を与える事なく洗浄できるという利点がある その操作手順 臨床方法を紹介しておく QfsjpQjl はリサーバー プランジャー リトラクター レギュレーター リテイニングリングから構成されており 付屈品としてポンプ 注水ニードル シリコン潤滑剤が含まれている まず強酸性電解水を容器中に入れ 強酸性電解水が各細菌に対して有効であるかどうかをテストペーパー BEWBOUFD)UpzpSptij 社 * で確認する テストペーパーが青色に濃染されれば 各種細菌に有効であり 青色に濃染されなければ 効力が失われている事になる )Q25 図 2-6~8 参照 * 前準備として 通法ではリサーバーとプランジャーをオートクレーフ あるいはケミクレーフ で滅菌するが 私共はそれらの滅菌法の代わりに強酸性電解水の滅菌効果を利用して同器具を強酸性電解水に浸漬した後 使用している プランジャ-とリザーバーを接続後 ( 図 3-7) 強酸性電解水をリサーバーに収引し強酸性電解水をリサーバー内に満たした後 ( 図 3-8) 注水用ニードルとサーーバーを接続する( 図 3-9) プランジャーからりトラクターーとリティニングを除去した後 リテイニングリングとリバーサーとを合体する ( 図 3-10) その合体した物をレギュレーターにしっかり接続後 タービンホーースに接続する ( 図 3-11) そしてエアーの流量調節ノブにより調節後 口腔内に使用する 図 3-7 リサ ーハ ー内にフ ランシ ャー 図 3-8 強酸性水をリトラクターを図 3-9 注水用ニート ルをリサ ーハ ー図 3-10 リテイニンク とリサ ーハ ーを リトラクターを挿入する 引っ張りながらリサ ハ ーに満と固定する 合体差せる たす 図 3-11 レキ ュレターをターヒ ンホースに 接続する 5
図 3-12 763 3567 欠損症例 残存歯図 3-13 金属床ハ ーシャルテ ンチャーを装着図 3-14 Perio Pik と強酸性水を用いて 槽堤の状態は良好である 支台歯の洗浄 臨床での応用例を示す 症例 1:63 歳の男性 7 6 3 3 5 6 7 欠損症である ( 図 3-12) 残存術はすベて鋳造冠が装着されている 通法に従って上顎に金属床のパーシャルデンチャーを製作し 装着した ( 図 3-13) リコ- ル時は 各鉤歯に対して Perio Pik と強酸性電解水を用いて洗浄を行う ( 図 3-14) 洗浄中 歯肉溝内から遊離プラークが流出し 歯肉溝内は無菌状態に近くなる 各鉤歯は動揺もなく 周囲の歯肉の状態にも異常が認められない 症例 2:66 歳の男性 7-3 4-7 欠損症例である 残存歯には連結インレーが合着されていたが 支台歯の骨植状態は必ずしも良好とはいえない ( 図 3-15) 2 1 1 2 3 を支台歯としたコーヌステレスコープデンチャーを製作し 装着した ( 図 3-16~19) コーヌステレスコープデンチャー装着後のメインテナンスとして リコール時に Perio Pik を用いて 図 3-15 7~3 4~7 欠損症例 残存歯図 3-16 支台歯にメタルコアーを合着後 図 3-17 完成したコーヌステレスコーフ テ ンチャー は連結固定され 骨植状態は不良 支台歯形成を行った 図 3-18 内冠を合着した口腔内図 3-19 コーヌステレスコーフ テ ンチャーを装着した図 3-20 リコール時 内冠合着した支台歯口腔内の歯肉溝内を強酸性水で洗浄強酸性電解水による歯肉溝内の洗浄を行う ( 図 3-20) 私共の実験結果から 強酸性電解水の貴金属に対する腐蝕作用は全くないと考えられるので 内冠を合着した支台歯のイリゲーションには最適な洗浄薬である コーヌステレスコープデンチャー製作後 約 4 年を経過するが 支台歯の骨植状態及び支台歯周囲の歯肉の状態は全く良好である 症例 3:53 歳の女性 7 6 欠損症例である 可撤性の義歯を嫌った為 インプラントによる補綴処置を行うことにした インプラント処置は当教室で行っているブローネマルクインプラントを用いた 同欠損部位にフィクスチャーを 3 本埋入 約 4 ケ月経過後 アバットメントを連結した 通法に従って 6
上部構造を完成し 口腔内に装着した ( 図 3-21~23) 口腔内装着後 約 1 年 10 ケ月後の口腔内であるが 植立状態及び辺緑歯肉には異常は認められない 約 3 ケ月に 1 回リコールしてその度毎に洗浄を行っている ( 図 3-24) 図 3-21 印象用コーヒ ンク を装図 3-22 模型上で完成した上図 3-23 装着したインフ ラント義歯図 3-24 リコール時 強酸性水で 着した口腔内部構造物洗浄 補綴科の治療への応用 1 支台歯形成後の洗浄 消毒 補綴科ではクラウンあるいはブリッジの支台歯形成は通常 歯肉縁下まで行うことが多い 歯肉縁下 までの形成は 辺縁歯肉の創傷 出血が生じる 強酸性電解水は創傷治癒促進 止血効果 除痛効果が あるといわれている 形成後 強酸性水で洗浄すると止血効果により印象を短時間で採得出来る利点が ある 臨床術式は 5ml のシリンジに強酸性電解水を入れ 洗浄すればよい 強酸性電解水の量は辺縁歯 肉の状態により決めるとよいが 通常 1 歯あたり 2ml~5ml 用いれば十分である 2アルジネート印象材の練和液としての応用 私共は アルジネート印象材の練和水として強酸性電解水を用いて印象採得を行ってみた 印象面及 び石膏面を精査した所 歯面の微細部の形態が良好に印象採得されている様に思われた そこで アルジネート印象材としてアルマーファイン DFⅡノー マルセット ( ジーシー社 ) 変色性ハイテクニコール( ジーシー社 ) 石膏としてニュープラストーン ( ジーシー社 ) ニューフジロック ( ジーシー社 ) を 練和水として強酸性電解水と水道水を用いて 石膏面の表面粗さを比較検討してみた ( 表 3-25) その結果 いずれの印象材と石膏を組み合わせても強酸性電 解水の方が表面粗さが小さく 滑沢な模型が得られる事が判明 した ( 表 3-6) 又 同時に石膏模型の素肌の荒れをみるスキン マイクロスコープ Q scope(takara BELMONT 社 ) を用いて 石膏面を 100 倍 500 倍に拡大し 石膏面 表 3-6 石膏表面粗さ ( ) 内は標準偏差 の荒れを撮影して比較検討してみた その結果 10 点平均粗さ 100 倍拡大では差異が認められなかったが ( 図 3-26 ニューフ ラストーン ニューフシ ロック 左右)500 倍拡大では強酸性電解水の方がこころも アロマファイン DFⅡ ち面荒れの程度が小さかった ( 図 3-27 左右 ) 水道水 11.2(1.6) 18.1(1.7) これらの結果から判断すると 水道水で練和するよ アクア酸化水 9.6(1.1) 17.9(1.8) りも多少良好な印象が採得できる様に思われる 変色性ハイテクニコール 強酸性電解水で練和する事により 印象材中に殺菌 水道水 13.9(1.9) 20.0(3.5) 消毒効果を期待する向きもあるが 今の所殺菌 消 アクア酸化水 12.2(1.9) 16.3(2.1) 毒効果は現れていない それは 強酸性電解水中の残 留塩素が練和と同時にアルジネート印象材中のアルギン酸ナトリウムあるいは石膏中のカルシウムと 7
反応して消失してしまうからである 図 3-26 石斉面の荒れ a: アルシ ネートと強酸性電解水 ( 100) b: アルシ ネートと水道水 ( 100 差異は認められない 図 3-27 石膏面の荒れ a: アルシ ネートと強酸性電解水 ( 500) b: アルシ ネートと水道水 ( 500) 強酸性電解水で練和した方 が荒れは少ない 又練和後の ph を測定した所 水道水で練和すると ph は 8.8 であり 強酸性電解水で練和すると ph は 9.1 と水道水よりもアルカリ性になってしまった PH は 2.7 以下に保たれていないと殺菌効果は失われるという事を追記しておく 3 印象の消毒口腔内で採得した印象には唾液 血液が付着している これに石膏を注入し 模型を製作すると 模型が感染源となり 院内技工室あるいは院外の技工所が感染する恐れが十分考えられる 又印象用トレーから印象材を除去する際にはスタッフに感染するかもしれない この為印象の消毒は必須事項であるのだが 今日まで印象材の寸法精度や表面荒れに影響を及ぼさない的確な消毒法は 残念ながら未だ見つかっていない 強酸性電解水をうまく利用したい物である 今日用いられている方法を列挙してみる 1アルジネート印象一般的な方法としては印象採得後 流水下で約 2 分間水洗後 0.07% ポビドンヨード溶液中に約 10 分間浸漬するか あるいは 0.07% ポビドンヨード液をスプレー後 ビニール袋等にいれ 約 15 分間密閉保存後 水洗してから石膏を注入する方法がある もし明らかに感染源による汚染がある場合には 水洗後 1% 次亜塩素酸ナトリウム溶液中 ( 但し金属が腐蝕しやすいので注意を要する ) に約 5~10 分間浸漬後 水洗してから石膏を注入する方法を推奨している しかし 印象の寸法変化 表面荒れの問題はまだ解明されていない 2ラバー系印象ラバー系印象材は硬化後化学的に安定している為 印象内部への微生物の侵入は通常認められていないとされ 又浸透液からの影響も受けにくい その上 硬化時あるいは経時的な法変化が少ないので 消毒時間が多少長くなっても影響を受けにくいと言う特徴を有している 8
それゆえに印象に付着した血液あるいは唾液を流水下で完全に洗い流した後 2% グルタールアルデヒド溶液中に約 30 分浸漬すれば ほぼ完璧に微生物を除去出来る 3 酸化亜鉛ユージノール印象この印象材は流動件がよく 細部の再現性も優れており 硬化時および経時的な寸法変化も殆ど認められていない この印象はラバー系印象と同様の方法で消毒を行うとよいとされている 浅井昭士郎先生ら ( 朝日大学歯学部 口腔細菌学 ) は直接口腔内で印象採得したアルギン酸印象材 ( ジーシー社 ) に付着した微生物に対する殺菌効果を強酸性電解水とグルタールアルデヒド 2% 生理食塩水で比較検討している その結果によると殺菌効果は生理食塩水 0% 強酸性電解水 31.6% グルタールアルデヒト 100% であり 強酸性電解水の殺菌効果は効果的な作用を示さなかった この事実は口腔液中の有機物が影響している可能性が考えられたと報告している ( 表 3-7) 強酸性電解水は唾液等に含まれている有機物にアッタクして その効力を減少させる事が知られている 本実験も印象採得後 流水下で印象を水洗した後行えば 違った結果が出てくると私共は解釈する また強酸性電解水の量も関係してくる アルジネートをはじめ全ての印象の消毒について私共で現在検討中であり より効果的な方法が見つけられるものと考えている 4 咬合床 メタルフレームワーク 義歯の消毒咬合採得が終わった咬合床 あるいはメタルフレームワーク試適 義歯試適が終わった補綴物は流水下で水洗後 強酸性電解水中に浸漬し 消毒した後 技工室に送る 技工室の院内感染を防ぐ為に効果があがる この際 使用した咬合平面板 プライヤー ノギス トーチランプ スパチュラ等も強酸性電解水中に浸漬した後 強アルカリ電解水あるいは水道水で洗浄してから消拭 保管するとよい 5 義歯装着後の顎堤粘膜の病変への応用 1 炎症性と潰瘍性病変義歯装着後 義歯床辺緑部の過延長あるいは義歯の不適合により 顎堤粘膜に軽度な炎症から重症な慢性潰瘍迄 種々の病変が生じる この様な病変に対して強酸性電解水は有効である 強酸性電解水をシリンジに入れ 病変部に注水するとよい 強酸性電解水の量は多く用いた方が効果的である ( 図 3-28) また義歯の調整を行う際は 義歯を強アルカリ性電解水で洗浄後 強酸性電解水で消毒して 切削を行うとよい 切削による粉塵の拡散は院内感染の原因ともなるからである 2 義歯性口内炎義歯床下粘膜全体が浮腫状を呈し 発赤炎症を起こしている状態を義歯性口内炎という これは義歯床下に残留した食物残査等に細菌が増殖して感染を起こすのである デンチャープラーク中の細菌が主な原因の一つにあげられ 口腔ガンジダ症が表れている事が多い 口腔ガンジダ症は酵母様真菌類の Candida albicans が原因に関与しているといわれている 強酸性電解水は Candida albicans に対して殺菌力が非常に優図 3-28 義歯装着後の炎症部位の強酸性れている 口腔内は強酸性電解水を用いて洗浄 消毒を行うと同電解水による洗浄時に 義歯を強アルカリ性電解水で洗浄後 強酸性電解水に浸漬 殺菌 消毒後 使用させると効果的に治癒する 3レジンアレルギー義歯床用レジンに対するアレルギー反応は残留モノマーや付加物によって生じる 9
口腔内粘膜組織の発赤 かゆみ 灼熱感が生じるが 強酸性電解水を用いて洗浄 消毒する事で回復に向かう 但し義歯は再製作しなければならない 6 強アルカリ性電解水の洗浄効果ここで強アルカリ性電解水の洗浄効果について記述しておく 私共は義歯床にアクリリックレジン 維持装置に金銀パラジウム合金を用いたレジン床部分床義歯を想定し 強アルカリ性電解水の洗浄効果について検討した 10mm 角のレジンプレートと金銀パラジウム合金のプレートを作製し これらのプレートにタパコのヤニを沈着させ プレートの下半分を 10 分 30 分 60 分 PH8.0 9.0 10.0 11.0 の各アルカリ性電解水中に浸漬した そして表面を軽く綿棒で拭き取った後 肉眼でその状態を観察した所 レジンプレートと金銀パラジウム合金の両方で PH が高くなるに従って 浸漬しない部分と比較して洗浄効果が高くなることがわかった ( 表 3-8) この結果から 強アルカリ性電解水は義歯の洗浄に使用できると判断した 又 5 人の被験者にそれぞれ ph7.0 8.0 9.0 10.0 11.5 のアルカリ性水 20ml で洗口させ そのアルカリ性水中に含まれている蛋白質を蛋白質測定法であるローリー法により定量した所 アルカリ性水に溶解するタンパク質の濃度はアルカリ性水の ph が 7 0 の時 5.10 mg/dl PH8.0 の時 5.92 mg/ dl PH9.0 の時 8.11mg/dl PHl0.0 の時 11.20mg/dl PHll.5 の時 21.50mg/dl と PH がアルカリ性になるに従って溶解する蛋白質が多くなり 洗浄効果が増大する可能性が示唆された ( 表 3-9) 小佐々晴夫先生 ( 小佐々歯科診療所所長 ) は強アルカリ性電解水はユニフォームに付着した血液の除去 インスツルメントに付着した蛋白質凝固物の除去 バキュームパイプの通し水 バキュームチップの内壁の清掃等に活用の道があると報告しているが 強アルカリ性電解水の活用も今後の課題である 7ティッシュコンディショナーの殺菌 消毒ティッシュコンディショナーは不適合義歯により生じた床下粘膜の歪みの修正や粘膜創傷の治療 疼痛の緩和等に用いられると同時に義歯の維持 安定を改善に寄与する為 臨床で頻用されている 又 Candida albicans 等の細菌が付着し それは時間と共に増加し その増加は 12 時間後では著明となる この Candida albicans が義歯性口内炎を生じさせる原因となるのである ティッシュコンディショニングを施した義歯の強酸性電解水への浸漬は義歯性口内炎の予防につながる 堺誠先生ら ( 朝日大学歯学部 第 1 補綴 ) は 6 種類の粘腰調整材を強酸性電解水 義歯洗浄剤 ( ステラデント 武田薬品 ) 硬質レジン専用義歯洗浄剤( クリーンソフト 亀水化学 ) 中に浸漬し 硬さ 表面性状の影響について検討している その結果 強酸性電解水は粘膜調整剤の表面性状には殆ど影響を及ぼさず 又他の義歯洗浄剤よりもゴム硬度への影響が少ない事から 粘膜調整材を使用している義歯のプラークコントロールヘの使用可能性が示唆されると報告している これらの結果から ティッシュコンディショニングを施した義歯の殺歯 消毒に強酸性電解水は有効であるといえる 口腔外科治療への応用 強酸性電解水は消毒液として使用可能なので 全ての口腔外科処置前後の口腔内外の消毒 洗浄に応 10
用できる 1 抜歯前後の消毒抜歯前の消毒 抜歯後の消毒 洗浄に強酸性電解水を用いる 小柳一哉先生の報告によると 症例によっては抜歯前後の洗浄 消毒に強酸性電解水を用いた所 抜歯後の疼痛が無く また抜歯後の治癒も早くなったとのことである ( 図 f3-29) 但し 抜歯後の出血の少ない症例では過度の洗浄によりドライソケットが生じたとの報告もある 抜歯後の強酸性電解水による洗浄 消毒は 床例によってその量を変えて使用した方がよい 2インプラント処置時の洗浄 消毒インプラント植立に際して フィクスチャーを埋入するためガイドドリル ツイストドリル パイロットドリルを用いて穿孔し 埋入部の拡大 形成を行う ( 図 3-30) その際 骨を過熱させない様生理生食塩水の流水下で手術を行う その生理食塩水の代わりに強酸性電解水を用いるという手がある その後アパットメントの植立後 ( 図 3-31) 縫合を行う( 図 3-32) 強酸性電解水は止血効果があるので 出血が少なくなるので手術が行いやすく その上消毒効果があるので感染予防ができ 又除痛効果があるので 術後の疼痛が少ない等良い事ずくめである 止血効果 除痛効果については実際の症例では認められているけれども そのメカニズムの解析はこれからである 図 3-29 抜歯後の強酸性水による洗浄 図 3-30 フィクスチャー埋入のためのインフ ラント窩の形成 図 3-31 フィクスチャー埋入 図 3-32 粘膜弁の縫合閉鎖 図 3-33 口内炎部を強酸性水にて洗浄 3 口内炎の治療口内炎には局所的原因による原発性口内炎と 全身疾患の部分症状として現われる症候性口内炎があるが 臨床的には分類不可能な事が多い この口内炎の治療に強酸性電解水を用いるとよい シリンジを用いて患部に直接強酸性電解水を注ぎ 洗浄すればよい ( 図 3-33) 原発性口内炎は特にこの方法により疼痛が軽減し 治癒が促進されるのは実証済みである 4その他 11
その他 外傷 歯槽堤などの手術 また口唇の炎症 口角びらんなどの洗浄 消毒に用いると効果が期待できる 又顎関節腔内 鼻 副鼻腔内検査 鼻咽腔検査に用いる内視鏡の洗浄に強酸性電解水を用いる事もできる 小児歯科の治療への応用 1 歯髄炎の治療乳歯の歯髄炎の処置法はその徴候により歯髄保存療法と歯髄除去療法の 2 つに大別できる 1 歯髄保存療法この療法は歯髄鎮痛療法と歯髄覆髄療法の 2 つに分類される 歯髄鎮痛療法では窩洞形成終了後 強酸性電解水を用いて窩洞内の消毒 洗浄を行う 歯髄覆髄療法である 間接歯髄覆髄法では軟化象牙質 遊離エナメル質除去後の窩洞内の消毒 洗浄に強酸性電解水を用い 直接覆髄法では露髄面を通常 生理食塩水で洗浄するが その代わりに強酸性電解水を用いる いずれの場合も強酸性電解水は 10ml~ 20ml あるいはそれ以上の量を用いるとよい 2 歯髄除去療法この療法は歯髄切断法 ( 断髄法 ) と抜髄法に分類されている 歯髄切断法のうち失活歯髄切断法では失活させた冠部歯髄を除去 根管内で切断後 通常生理食塩水での洗浄 次亜塩酸ナトリウムと過酸化水素水での歯髄溶解部の除去を行うが この処置に強酸性電解水を用いる 生活歯髄断絶法 ( 水酸化カルシウム法 ) で FC(Formalin Cresol) による歯髄切断法では 歯髄切断後の生理食塩水での洗浄 次亜塩酸ナトリウムと過酸化水素水での歯髄溶解部の除去を行う この処置に強酸性電解水を用いる これらの処置も強酸性電解水は量を多く用いた方がよい 又抜髄法は保存科の歯髄処置と同様に行うとよい 2 乳歯根尖性歯周疾患の治療この処置は保存科の感染根管の治療と同様に行うとよい 3 小児歯周疾患の処置小児歯周疾患も基本的には歯周病科の治療の処置と基本的には同じであるから 歯周病科の治療と同様に行うとよい 4 小児の外科的処置乳歯の抜歯 外傷 口唇炎 口内炎等に強酸性電解水を用いる場合の目的 方法は口腔外科の処置と同じと考えてよい 歯料矯正科の治療への応用 強酸性電解水が歯科矯正科特有の治療に応用されるものはない ワイヤーカッター ホウプライヤー ペンディングプライヤー等の器具の消毒 床矯正装置等の口腔外に取り出した矯正装置の洗浄 消毒が考えられる 歯科放射線科への応用 歯科放射線科ではⅩ 線写真撮影に関わる消毒 清拭である (1) 撮影前後のレントゲンフィルムの消毒 (2) フィルムをホールドした患者の手指の清拭 (3) フィルムホルダーの消毒 (4) レントゲンコーンの清拭などである 12