日本基準基礎講座 有形固定資産

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財剎諸表 (1).xlsx

国家公務員共済組合連合会 民間企業仮定貸借対照表 旧令長期経理 平成 26 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 円 ) 科目 金額 ( 資産の部 ) Ⅰ 流動資産 現金 預金 311,585,825 未収金 8,790,209 貸倒引当金 7,091,757 1,698,452 流動資産合計 3

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平成28年度 第144回 日商簿記検定 1級 会計学 解説

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従って IFRSにおいては これらの減価償却計算の構成要素について どこまで どのように厳密に見積りを行うかについて下記の 減価償却とIFRS についての説明で述べるような論点が生じます なお 無形固定資産の償却については 日本基準では一般に税法に準拠して定額法によることが多いですが IFRSにおい

IFRS基礎講座 IAS第12号 法人所得税

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10 解説 p1 ⑵⑶ ⑷ 11

第4期電子公告(東京)

回答作成様式

固定資産管理規程

有形固定資産シリーズ(7)_資産除去債務②

貸借対照表 ( 平成 25 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目金額科目金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 14,146,891 流動負債 10,030,277 現金及び預金 2,491,769 買 掛 金 7,290,606 売 掛 金 9,256,869 リ

198 第 3 章 減価償却資産の取得価額 キーワード ソフトウエアに係る取得価額購入したソフトウエアの取得価額は 1 当該資産の購入の代価と 2 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用との合計額とされています 引取運賃 荷役費 運送保険料 購入手数料 関税 その他の当該資産の購入のために要

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『学校法人会計の目的と企業会計との違い』

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第1章 財務諸表

法人単位貸借対照表 平成 29 年 3 月 31 日現在 第三号第一様式 ( 第二十七条第四項関係 ) 法人名 : 社会福祉法人水巻みなみ保育所 資産の部当年度末前年度末 増減 負債の部当年度末前年度末 流動資産 23,113,482 23,430, ,370 流動負債 5,252,27

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平成18年度注記事項

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図 1図 1 期間損益 (P/L) (1) 発生費用 (2) 期間費用 期間収益 収益獲得の 財貨 用役の 選択 ための犠牲 費消 (80 個分の費用 ) 因果関係 (100 個製造 ) 発生主義 費用収益対応の原則 当期の収益 ( 成果 ) (80 個販売 ) 実現主義 当期に発生した発生費用 (

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財務諸表に対する注記

資産除去債務の会計処理(コンバージェンス)

地方公営企業会計基準の見直しについて(完成)

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第4期 決算報告書

貸借対照表 平成 29 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 百万円 ) 資産の部 負債の部 流動資産 13,610 流動負債 5,084 現金 預金 349 買掛金 3,110 売掛金 6,045 短期借入金 60 有価証券 4,700 未払金 498 商品 仕掛品 862 未払費用 254 前

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営業報告書

第28期貸借対照表

第 21 期貸借対照表 平成 29 年 6 月 15 日 東京都千代田区一番町 29 番地 2 さわかみ投信株式会社 代表取締役社長澤上龍 流動資産 現金及び預金 直販顧客分別金信託 未収委託者報酬 前払費用 繰延税金資産 その他 固定資産 ( 有形固定資産 ) 建物 器具備品 リース資産 ( 無形

連結貸借対照表 ( 単位 : 百万円 ) 当連結会計年度 ( 平成 29 年 3 月 31 日 ) 資産の部 流動資産 現金及び預金 7,156 受取手形及び売掛金 11,478 商品及び製品 49,208 仕掛品 590 原材料及び貯蔵品 1,329 繰延税金資産 4,270 その他 8,476

問題 12 取替法 次の取引の仕訳を示しなさい ⑴ 取替資産である鉄道のレールの一部を新品に取替えた 代金 480,000 円は月末に支払う ⑵ 円で20 個を取替えた 代金は小切手を振出して支払った ⑴ ⑵ 問題 12 問題 13 設備投資

- 2 -

平成 29 年度連結計算書類 計算書類 ( 平成 29 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日まで ) 連結計算書類 連結財政状態計算書 53 連結損益計算書 54 連結包括利益計算書 ( ご参考 ) 55 連結持分変動計算書 56 計算書類 貸借対照表 57 損益計算書 58 株主

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2. 基準差調整表 当行は 日本基準に準拠した財務諸表に加えて IFRS 財務諸表を参考情報として開示しております 日本基準と IFRS では重要な会計方針が異なることから 以下のとおり当行の資産 負債及び資本に対する調整表並びに当期利益の調整表を記載しております (1) 資産 負債及び資本に対する

128 Z E I K E I T S U S H I N 10. 3

精算表 精算表とは 決算日に 総勘定元帳から各勘定の残高を集計した上で それらに修正すべき処理 ( 決算整理仕訳 ) の内 容を記入し 確定した各勘定の金額を貸借対照表と損益計算書の欄に移していく一覧表です 期末商品棚卸高 20 円 現金 繰越商品 資本金 2

第 36 期決算公告 浜松市中区常盤町 静岡エフエム放送株式会社代表取締役社長上野豊 貸借対照表 ( 平成 30 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 資産の部 負債の部 Ⅰ. 流 動 資 産 909,595 Ⅰ. 流 動 負 債 208,875 現金及び預金 508,

有形固定資産シリーズ(2)_有形固定資産の会計処理の概要 固定資産の取得・減価償却

平成19年度 法人の減価償却制度の改正のあらまし

財務の概要 (2012 年度決算の状況 ) 1. 資金収支計算書の概要 資金収支計算書は 当該会計年度の教育研究活動に対応するすべての資金の収入 支出の内容を明らかにし かつ 当該会計年度における支払資金の収入 支出の顛末を明らかにするものです 資金収支計算書 2012 年 4 月 1 日 ~201

貸借対照表 ( 平成 20 年 3 月 31 日 ) ( 厚生年金勘定 ) ( 単位 : 円 ) 科 目 金 額 資産の部 Ⅰ 流動資産 現金及び預金 11,313,520,485 有価証券 13,390,000,000 販売用不動産 93,938,423,482 未収金 389,813,000 未

<4D F736F F D2081A F838D815B836F838B8F5A94CC81408C768E5A8F9197DE8B7982D1958D91AE96BE8DD78F F

①別紙様式第13号 貸借対照表

IFRS ネットワーク第 11 回セミナー IAS36 号が求める減損会計 ~ 経営管理とのつながりを中心に ~ 2011 年 12 月 9 日株式会社アヴァンティアコンサルティング公認会計士木村直人 c 2011 Avantia All rights reserved.

1. 国際財務報告基準に準拠した財務諸表 ( 抜粋 翻訳 ) 国際財務報告基準に準拠した財務諸表の作成方法について当行の国際財務報告基準に準拠した財務諸表 ( 以下 IFRS 財務諸表 という ) は 平成 27 年 3 月末時点で国際会計基準審議会 (IAS B) が公表している基準及び解釈指針に

営業活動によるキャッシュ フロー の区分には 税引前当期純利益 減価償却費などの非資金損益項目 有価証券売却損益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目 営業活動に係る資産 負債の増減 利息および配当金の受取額等が表示されます この中で 小計欄 ( 1) の上と下で性質が異なる取引が表示され

第1章 簿記の一巡

( 資産の部 ) ( 負債の部 ) Ⅰ 特定資産の部 1. 流動負債 366,211,036 1 年内返済予定 1. 流動資産 580,621,275 特定社債 302,000,000 信託預金 580,621,275 事業未払金 2,363, 固定資産 6,029,788,716 未払

未収入金 未収収益 その他の流動資産 固定資産 有形固定資産 建 物 器具 備品 土 地 建設仮勘定 投資その他の資産 投資有価証券 出資金 長期貸付金 長期差入保証金 長期前払費用 73 4, その他 , 賞与引当金 ,

N 譲渡所得は 売却した土地や借地権 建物などの所有期間によって 長期譲渡所得 と 短期譲渡所得 に分けられ それぞれに定められた税率を乗じて税額を計算します この長期と短期の区分は 土地や借地権 建物などの場合は 売却した資産が 譲渡した年の1 月 1 日における所有期間が5 年以下のとき 短期譲

リリース

第 29 期決算公告 平成 26 年 4 月 1 日 平成 27 年 3 月 31 日 計算書類 1 貸借対照表 2 損益計算書 3 個別注記表 中部テレコミュニケーション株式会社

川田建設株式会社 貸借対照表 平成 29 年 3 月 31 日現 在 ( 単位 千円 ) 資 産 の 部 負 債 の 部 科 目 金額 科目 金額 流 動 資 産 14,127,204 流 動 負 債 12,186,885 現金及び預金 2,287,353 支払手形 3,598,174 受取手形 4

PowerPoint プレゼンテーション

損金経理と積立金経理の違い ( 圧縮超過額がない場合の基本構造 ) 例 A 社は 50の国庫補助金を得て 100で機械を取得した なお A 社の経常利益は 100 である * 仕訳の違い ( 単位 : 百万円 ) 損金経理積立金経理 補助金受贈と機械取得時の仕訳 ( 両者とも同じ ) 現金預金 50

N 譲渡所得は 売却した土地や借地権 建物などの所有期間によって 長期譲渡所得 と 短期譲渡所得 に分けられ それぞれに定められた税率を乗じて税額を計算します この長期と短期の区分は 土地や借地権 建物などの場合は 売却した資産が 譲渡した年の1 月 1 日における所有期間が5 年以下のとき 短期譲

2 事業活動収支計算書 ( 旧消費収支計算書 ) 関係 (1) 従前の 消費収支計算書 の名称が 事業活動収支計算書 に変更され 収支を経常的収支及び臨時的収支に区分して それぞれの収支状況を把握できるようになりました 第 15 条関係 別添資料 p2 9 41~46 82 参照 消費収入 消費支出

野村アセットマネジメント株式会社 平成30年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

2. 減損損失の計上過程 [1] 資産のグルーピング 減損会計は 企業が投資をした固定資産 ( 有形固定資産のほか のれん等の無形固定資産なども含む ) を適用対象としますが 通常 固定資産は他の固定資産と相互に関連して収益やキャッシュ フロー ( 以下 CF) を生み出すものと考えられます こうし

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自己株式の消却の会計 税務処理 1. 会社法上の取り扱い取得した自己株式を消却するには 取締役会設置会社の場合は取締役会決議が必要となります ( 会 178) 取締役会決議では 消却する自己株式数を 種類株式発行会社では自己株式の種類及び種類ごとの数を決定する必要があります 自己株式を消却しても 会

初心者のための管財業務入門 -学校会計の資産とは-

3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

営 業 報 告 書

新旧対照表(計算書類及び連結計算書類)

野村アセットマネジメント株式会社 2019年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

第 14 期 ( 平成 30 年 3 月期 ) 決算公告 平成 30 年 6 月 21 日 東京都港区白金一丁目 17 番 3 号 NBF プラチナタワー サクサ株式会社 代表取締役社長 磯野文久

3. 基本財産及び特定資産の財源等の内訳 基本財産及び特定資産の財源等の内訳は 次のとおりです 科目当期末残高 ( うち指定正味財産からの充当額 ) ( うち一般正味財産からの充当額 ) ( うち負債に対応する額 ) 基本財産投資有価証券 800,000,000 (662,334,000) (137

営 業 報 告 書

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財務諸表に対する注記 1. 継続事業の前提に関する注記 継続事業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況はない 2. 重要な会計方針 (1) 有価証券の評価基準及び評価方法 満期保有目的の債券 償却原価法 ( 定額法 ) によっている なお 取得差額が少額であり重要性が乏しい銘柄については 償却原価


SSC経理のしくみ

第 16 回ビジネス会計検定試験より抜粋 ( 平成 27 年 3 月 8 日施行 ) 次の< 資料 1>から< 資料 5>により 問 1 から 問 11 の設問に答えなさい 分析にあたって 連結貸借対照表数値 従業員数 発行済株式数および株価は期末の数値を用いることとし 純資産を自己資本とみなす は

株式会社 新潟国際貿易ターミナル 貸借対照表 資産の部負債の部 平成 30 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 千円 ) 科目金額科目金額 流動資産 596,379 流動負債 109,826 現金及び預金 511,403 未払金 89,379 売掛金 64,884 未払法人税等 6,068 貯蔵

1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

株 主 各 位                          平成19年6月1日

貸借対照表 (2019 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目 金額 科目 金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 3,784,729 流動負債 244,841 現金及び預金 3,621,845 リース債務 94,106 前払費用 156,652 未払金 18,745

に相当する金額を反映して分割対価が低くなっているはずですが 分割法人において移転する資産及び負債の譲渡損益は計上されませんので 分割法人において この退職給付債務に相当する金額を損金の額とする余地はないこととなります (2) 分割承継法人適格分割によって退職給付債務を移転する場合には 分割法人の負債

第11期決算公告

様式3

計算書類 貸 損 借益 対計 照算 表書 株主資本等変動計算書 個 別 注 記 表 自 : 年 4 月 1 日 至 : 年 3 月 3 1 日 株式会社ウイン インターナショナル

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Transcription:

有形固定資産 のモジュールを始めます

Part 1 は有形固定資産の認識及び当初測定を中心に解説します Part 2 は減価償却など 事後測定を中心に解説します

有形固定資産とは 原則として 1 年以上事業のために使用することを目的として所有する資産のうち 物理的な形態があるものをいいます 有形固定資産は その性質上 使用や時の経過により価値が減少する償却資産 使用や時の経過により価値が減少しない非償却資産 完成前の一時的な未決算勘定である建設仮勘定と 大きく 3 つに分類することができます 償却資産の代表例としては 建物 機械装置などが挙げられます また非償却資産の代表例としては 土地が挙げられます

有形固定資産の取得価額の決定方法は その取得方法によって異なります まず 最も典型的な方法である購入の場合について 取得価額を考えてみましょう 有形固定資産を購入によって取得した場合は 購入代価に 買入手数料 運送費 据付費 荷役費 試運転費等の付随費用を加えて 取得価額を決定します さらに 有形固定資産を除去する際に 法令又は契約で要求される法律上の義務がある場合には これらの除去費用も取得に付随して不可避的に発生する費用として取得価額に加えられます この除去費用に係る債務は 資産除去債務といい 会計処理については 別のモジュールで取り上げます 取得した有形固定資産は 会計帳簿に 取得価額 をもって計上します 取得価額は 有形固定資産の帳簿価額の基礎となる数値であるため 適切に算定することが重要です なお 取得価額 と類似する用語に 取得原価 があります 取得価額 とは 資産の取得又は製造に要した金額のことをいい 購入の場合は 購入代価に付随費用等を加算した金額をいいます 他方 取得原価 とは 取得価額 に基づき計算された金額をいいます 有形固定資産の場合 取得価額に基づいて 減価償却費を計算し 取得価額から 減価償却累計額を差し引いた金額をもって 貸借対照表に計上します このように計算された金額を 取得原価 といいます 減価償却については Part2 で解説します

有形固定資産を取得する際に 国や地方自治体から資本助成を目的とする国庫補助金や工事負担金の交付を受けることがあります この場合は 国庫補助金などに相当する額を取得価額から控除することが認められています これを圧縮記帳といいます

そのほか 交換や 贈与によっても 有形固定資産を取得することがあります 自己所有の固定資産と交換に有形固定資産を取得した場合には 交換に供された自己資産の適正な簿価をもって取得価額とします 自己所有の株式ないし社債等と有形固定資産を交換した場合には 当該有価証券の時価または適正な簿価をもって取得価額とします 有形固定資産を贈与された場合には その有形固定資産の時価などを基礎として 公正に評価した額をもって取得価額とします これで 有形固定資産 Part 1 の解説を終わります

償却資産の取得原価から残存価額を控除した金額は その償却資産を使用する期間にわたり費用配分されます この手続きを減価償却といいます 減価償却の目的は 資産を使用する期間の収益と 使用による減価償却費を対応させることにより 毎期の損益計算を適正に行うことにあります なお 償却資産の取得時には現金支出があるものの 各年度に配分する減価償却費には現金支出がありません 減価償却費に対応する収益がそのまま現金収入となるため 減価償却には 償却資産の取得に要した資金の回収や 減価償却費分の資金の内部留保といった効果があるといわれています

減価償却の計算要素として 取得原価 耐用年数 残存価額の 3 つがあげられます 取得原価とは Part 1 で解説したように 取得価額に基づき算定した金額であり 減価償却の基礎となります 耐用年数とは 償却資産の取得原価から見積残存価額を控除した金額を 規則的 合理的に費用として配分する期間をいいます 耐用年数は 単なる物理的使用可能期間ではなく 陳腐化を考慮した経済的使用可能予測期間であり 原則として各企業が見積ります 残存価額とは 固定資産の耐用年数到来時において予想される当該資産の売却価格または利用価格から解体 撤去 処分等の費用を控除した金額であり 原則として各企業が見積ります 耐用年数 残存価額については 企業が見積るものとされていますが 法人税法に定める耐用年数 残存価額が 企業の状況に照らし不合理と認められる事情のない限りは それらを用いることも妥当なものと考えられています

減価償却方法には 期間を主な配分基準とする方法と 生産高を主な配分基準とする方法があります 定額法とは 毎期一定の額の減価償却費を算定する方法です 定率法とは 毎期末の未償却残高に一定の率を乗じて減価償却費を算定する方法です なお 実務上は 期間を主な配分基準とする方法である 定額法または定率法が採用されることが一般的です

定額法と定率法の計算例をみてみましょう 取得原価は 100 万円 耐用年数は 10 年 残存価額は 0 とします 定額法の場合は 取得原価から残存価額を控除した償却可能価額を耐用年数で除して減価償却費を算定します この例では 毎年定額の 10 万円が減価償却費として計上されます 定率法の場合は 毎期首の帳簿価額に一定の率を乗じて減価償却費を算定します この例では 10 年の場合の償却率は 0.2 とすると 100 万円 0.2=20 万円が 1 年目の減価償却費となります 次年度の償却費は 期首の帳簿価額である 100 万円 -20 万円 =80 万円に 0.2 を乗じた 16 万円となります このように 定率法を採用した場合には 初期の減価償却費は大きく 後期の減価償却費は小さくなります

減価償却方法は 会計方針とされています 減価償却方法を変更する場合には 正当な理由が必要です また 変更の影響については 会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合 として取り扱い 遡及適用は行わず 残存耐用年数にわたりその変更の影響を認識します 耐用年数及び残存価額は 会計上の見積りとされています 対象の有形固定資産を取り巻く状況の変化に応じて 耐用年数 残存価額の見積りを変更する場合 残存耐用年数にわたりその変更の影響を認識します

企業活動にほとんど使用されていない状態にある資産のことを遊休資産といいます 遊休資産についても 通常の有形固定資産と同様に 減価償却が行われますが この場合の減価償却費は 企業の営業活動に貢献していない資産に係るものであるため 原則として営業外費用として処理します ただし 将来の使用が見込まれていない遊休資産については 別途減損の検討が必要となります 減損については 別のモジュールで解説します

有形固定資産を取得した後に生じた支出の取扱いについて 実務上は 法人税法の定めを参考にすることが一般的です 税務上は 通常の維持 管理または原状回復のための収益的支出を修繕費 耐用年数を延長させる または資産価値を増加する支出を資本的支出として区分します 修繕費については発生時に費用処理し 資本的支出は有形固定資産の取得原価に算入して 減価償却を行います

有形固定資産の売却は 一般に 対象となる有形固定資産を引渡した時点で認識します 多額で非経常的な固定資産売却損益は特別損益として計上されることが多いようです なお 売却した不動産を引き渡さず引き続き賃借する場合や 買戻し条件付きの特別目的会社に対する不動産の売却の場合については リスクと経済価値のほとんどすべてが買手に移転しているかについて 特別な検討事項が定められているため 留意が必要です これで 有形固定資産の解説を終わります