経済産業省 平成 23 年度経済連携促進のための産業高度化推進事業 ( 日本 - インドネシア経済連携協定に係るカイゼンミッション受入事業 ) 事業報告書 住所東京都新宿区西新宿 8 丁目 14 番 24 号 名称財団法人日本国際協力センター 代表者役職 氏名理事長 松岡和久 担当者 所属 氏名 海外事業部国際研修センター準備室 伊藤美和 電話番号 (03) 5925-7182 FAX 番号 (03) 5925-7540 財団法人日本国際協力センター
目次 1 調査実施概要 1.1 調査の背景... 1 1.2 調査の目的... 1 1.3 調査実施期間... 1 1.4 本事業の実施業務... 2 1.5 ミッション団員... 2 1.6 研修受入企業... 3 2 調査業務実施内容 2.1 研修の事前準備... 4 2.1.1 ミッション団員の決定 2.1.2 プログラム 日程作成 2.1.3 通訳 ( コーディネーター ) の傭上 2.1.4 事前説明会の実施 2.1.5 査証申請 2.1.6 旅行手配 2.2 調査業務... 7 2.2.1 研修内容 ( 講義 演習 ) 2.2.2 研修内容 ( 視察 ) 2.2.3 ラップアップセッション 2.2.4 交流会の実施 2.2.5 ミッション団員の来日 滞日支援 2.3 研修実施概要... 19 2.3.1 受入企業および講師 / 講義 視察内容 2.3.2 研修期間 配列 密度 2.3.3 資料 機材 施設 2.3.4 ミッション団員 3 総括 21
4 添付資料 1. 研修日程表... 別添 2. ミッション団員リスト... 別添 3. 研修先配布資料... 別添
1. 調査実施概要 1.1 調査の背景日本 -インドネシア両国政府は 2007 年 8 月 20 日に首脳間において日インドネシア経済連携協定 ( 以下 日尼 EPA という ) に署名し 2008 年 7 月 1 日に発効がなされた 日尼 EPAにおいて 自動車分野ではインドネシア側における完成車及び同部品輸入関税の段階的な削減及び撤廃を合意し 一方 日本側からは 自由化されたインドネシア自動車及び裾野産業である同部品産業の国際競争力を向上させるとともに 両国の WIN-WIN の経済連携を強化することを目的として 3 分野 (1 尼機関の研究開発機能強化に向けた実現可能性調査及び調査結果を踏まえての専門家派遣等による協力 2 国連相互認定協定 (1958 協定 ) への加入支援のための政府関係者の専門家派遣による協力 3 専門家によるインドネシア自動車部品企業への巡回型派遣事業の延長 ) の産業協力事業の実施を合意した 当該産業協力事業の実施については 日本経済産業省及びインドネシア工業省間で合意された Initiative for Manufacturing Industry Development Center の主要部分を占めるものに位置付けられている 本調査は 上記 3 分野の産業協力事業のうち 3の 専門家によるインドネシア自動車部品企業への巡回型派遣事業の延長 の一環として行うものであり カイゼン活動を企業全体に行きわたらせるためには 専門家の派遣のみならず 企業経営幹部等の理解と指導力が不可欠であるという考えから インドネシア自動車部品製造企業経営幹部等や関係機関の方を招へいし 日本企業のカイゼン活動を学習 経験させる機会が設けられたものである 1.2 調査の目的本調査では インドネシア自動車部品製造企業経営幹部等や関係機関の方を 10 日間程度日本へ招へいし 日本企業のカイゼン活動を学習 経験させることにより カイゼン活動に対する理解と自社への導入を促進し インドネシア自動車部品製造企業の育成を図ることを目的としている 1.3 調査実施期間平成 23 年 7 月 11 日 ~ 平成 23 年 12 月 31 日 1
ミッション訪日研修期間 : 平成 23 年 10 月 4 日 ~10 月 13 日 (10 日間 ) 1.4 本事業における実施業務下記の内容にて調査を実施した 1 インドネシア側参加者の決定 2 国内の受入企業等の事前調整 3 カイゼン活動の基本的考え方に関する講義 4 カイゼン活動の実践現場の視察 5 交流会の実施 6 成果報告書の作成インドネシアミッション団員については 事前に本件のインドネシア側カウンターパートであるインドネシア工業省を訪問し 本件企画を説明の上 インドネシア自動車部品製造企業のうち カイゼン活動に取り組み また導入可能性の高い企業を選定し 主に経営幹部 カイゼンリーダーや関係機関から20 名の参加者を決定した 上記のとおり選定したミッション団員を日本に招聘し 初日には来日時オリエンテーションを実施し 日程説明や必要事項の伝達および日本語講義を行い 日本での滞在を安全 快適に過ごせるよう配慮した 来日翌日の10 月 5 日から10 月 8 日までは 北九州において カイゼン活動の基本的考え方に関する講義及び演習を実施し カイゼンに対する理解を促進させるとともに 自動車 ( 部品等 ) 製造企業 4 社の訪問を行い カイゼン活動の実践現場の視察を通じてカイゼン活動の導入に向けた動機付けを行った さらに 日本側関係者とのネットワーク構築のための交流会を実施した また 10 月 10 日から10 月 12 日までは 大阪において 専門家によるインドネシア自動車部品企業への巡回型派遣事業の延長 事業においてインドネシアに派遣された専門家に参加頂き 前月 (9 月 ) に行った現地での指導と連動させながら 講義やカイゼン活動実施企業 4 社の視察を実施した また 最終日には 研修のまとめとしてミッション団員が研修を通じて得た気付き等についてディスカッションを行い 企業視察で学んだカイゼン活動の中から自社にてすぐに導入可能な活動をピックアップし 本研修で得た経験を帰国後に自身の業務へ活かす実際的な動機付けを行った 1.5 ミッション団員インドネシア自動車部品製造企業の経営幹部 カイゼンリーダー等や関係機関 20 名 2
1.6 研修受入企業下記の企業において 視察 演習について受入れを依頼 実施した トヨタ自動車九州株式会社 : 福岡県宮若市上有木 1 番地 一井工業株式会社九州工場 : 福岡県鞍手郡小竹町大字勝野 1532-3 三泉化成株式会社九州工場 : 福岡県鞍手郡小竹町御徳 1673-10 株式会社戸畑ターレット工作所 : 福岡県北九州市小倉南区新曽根 11-31 株式会社エクセディ : 大阪府寝屋川市木田元宮 1 丁目 1 番 1 号 枚岡合金工具株式会社 : 大阪府大阪市生野区巽中 2-7-22 明星金属工業株式会社 : 大阪府大東市野崎 4-5-12 株式会社山田製作所 : 大阪府大東市新田中町 2-41 また 下記の専門家にカイゼン活動に係る講義を依頼 実施した 雨澤政材氏 ( 株式会社九州モノづくり研究所代表取締役社長 ) 中島省三氏 (JETRO 専門家 : 自動車産業に係るインドネシア人改善トレーナー指導 ) 3
2. 調査業務実施内容 当センターでは 事務局および 通訳 引率 連絡調整 滞在サポートを行うコーディネーターにより下記の調査を実施した また2 回の現地調査を実施し準備を整えた 2.1 研修の事前準備 2.1.1 ミッション団員の決定事前にミッション団員選考基準や方法 対象企業の範囲などを経済産業省と協議の上 インドネシア側のカウンターパート機関であるインドネシア工業省と調整し ミッション団員を決定した なお 2011 年 8 月 3 日から8 月 6 日の日程にて現地調査としてジャカルタを訪問し インドネシア工業省 インドネシア自動車工業会 インドネシア自動車部品工業会等の関係者に対し 本企画の説明を行うとともに ミッション団員選考の考え方 対象企業範囲について確認し 参加企業の調査 決定に係るとりまとめにつき協力依頼を行った その結果 自動車部品工業会事務長のMohamad Sjaffary 氏を団長とする20 名の参加者が決定した 工業省を通じて参加者情報を入手する等受入準備を進め 先方からの照会事項についても適宜回答し 良好なコミュニケーションの維持に努めた また ミッション団員の個人情報に係る取扱いについては 団員に予め同情報利用目的を説明し 了解を取り付けた上で 参加者リストを作成し受入機関等に配布した 2.1.2 プログラム 日程作成インドネシアにおいては 一般的に企業における社員教育や人材育成は初期段階にあり 自動車関連産業においては カイゼン について認識はあるものの 多くの中小企業では導入が進んでいない状況にあるところ 本ミッションにおいては まずは基本的なカイゼンの考え方についての講義を通して明確に概念を理解頂くと同時に カイゼン活動を行っている企業を訪問し その取り組みについて実際に見学するプログラムを策定した また プログラムの実施場所としては 経済産業省からの助言を受け 九州地方 ( 主に北九州市 ) と関西地方 ( 主に大阪府 ) の2 箇所で実施することとした なお 受入先企業については 参考事例として取り入れ易いように様々な規 4
模の企業を選定し また ユニークな取組みを紹介することで 参加者が自社の状況にあったカイゼンの導入についてヒントを得られるような内容とした ( 別添 1. 日程表参照 ) 2.1.3 通訳 ( コーディネーター ) の傭上通訳は 当センター所属の日尼のコーディネーター ( 研修監理員 )2 名について カイゼンに関する通訳経験の豊富な者を選考し 配置した 本事業は参加者が20 名と人数が多く また様々な個性やバックグラウンドを持つ方が参加されるため コーディネーターは 業務にフレキシブルに対応できることに加え 集団の取扱いに十分な経験のある者が担当し 研修効果の向上に繋がるような対応を心がけた なお 常に事務局担当者が進捗を把握し 適切な指示をコーディネーターに与える体制とした 2.1.4 事前説明会の実施ミッション団員決定後 下記の通りインドネシア ( ジャカルタ ) にて事前説明会を実施した (1) 日時 : 平成 23 年 9 月 15 日 ( 木 )10:00-13:00 (2) 場所 :Hotel Jayakarta 内会議室 (3) 対象者 : ミッション参加予定者 (4) 内容 : 事業説明 日程 訪問企業の説明 各訪問企業で学ぶべき点の説明 フライト情報 宿舎情報 日本到着後の宿舎までの移動 滞在中の移動等の説明 当センターの概要説明 海外旅行傷害保険内容の説明 日本滞在に関する諸注意 食事制限の確認 査証手続きについての説明 必要書類の回収 ( 旅券 査証申請書 Entry Form 等 ) 5
2.1.5 査証申請当センターは 本件の招聘者として査証申請に必要な書類を用意し 申請に際しては 本事業の旅行手配を発注したJTBエイティシーを通じ 日本へのアウトバウンド業務の経験が豊富なJTBジャカルタ支店のサポートを得て行った ミッション団員のうち 工業省からの参加者については 他団員とは別途 工業省が査証申請を行ったが 省内手続きに時間を要したところ 日本大使館への申請 発給が出発直前となった 2.1.6 旅行手配 (1) 航空券手配研修実施場所に鑑み 最も効率的かつ経済的な路線として 往路はジャカルタ- ( シンガポール経由 )- 福岡間 復路は関西 -( シンガポール経由 )-ジャカルタ のエコノミークラス往復航空券を手配した 現地旅行代理店が 出発時にジャカルタのスカルノ ハッタ国際空港にて チェックインサポート等を行い 渡航手続きがスムーズに進むよう配慮した (2) 宿舎手配ミッション団員の宿舎は 市内の繁華街にアクセスが良く 安全で 英語対応可能であり インターネット環境が整った施設を中心に検討した上で 九州地方ではリーガロイヤルホテル小倉 ( 小倉駅隣接 ) 関西地方ではANAクラウンプラザ大阪( 大阪駅付近 ) を選定した ホテル担当者と事前に打合せを行い 本ミッション用に適宜特別な対応をとることができた (3) 移動手配ミッション団員数が多く また 受入企業が広範囲にあるため 空港送迎も含めて大型バスを傭上した (4) 昼食手配研修期間中 9 回の昼食を手配した ミッション団員の宗教上の食事制限に対応するメニューで手配を行った なお 宗教および健康上の食事制限の有無 詳細については 事前に各団員に確認を行い きめ細かい対応を心がけた (5) 海外旅行傷害保険の加入ミッション団員が 日本滞在中に万が一ケガをされた場合や病気になった場合に備え 海外旅行傷害保険に加入した 病気 ケガで医療機関の診療を受ける際は 事務局およびコーディネーターが医療機関へ同行 通訳を行いケアする体制を整えていたが 幸いそのような事態には至らなかった 6
2.2 調査業務 2.2.1 研修内容 ( 講義 演習 ) (1) 講義 改善活動の基本的な考え方 1 講師 : 雨澤政材氏 ( 株式会社九州モノづくり研究所代表取締役社長 ) 2 日時 : 平成 23 年 10 月 5 日 ( 水 )9:00-12:00 3 場所 : トヨタ自動車九州株式会社トレーニングセンター 4 概要 : 同氏は元トヨタ自動車九州株式会社特別顧問であり TPS( トヨタ生産方式 ) の専門家である 1 回目となる講義では トヨタ自動車の創業からトヨタ生産方式のはじまりや今日に至るまでの歴史を 映像を交えて紹介した また 後半部分では JIT( ジャスト イン タイム ) の考え方や労使関係についても言及された 5 質疑応答 ( 問 ) TPS を現場にどのように根付かせ 現場の活性化につなげてゆくのか ( 答 ) 経営トップの役割が重要である 最低でも生産部門を統括する者が主導する必要がある ( 問 ) TPS において 人間を尊重する との思想があるが 実際どのように実現するのか ( 答 ) トヨタでは 過去の労使対立を乗り越え 協定を結んでいる また カイゼン活動とは 現場の声を聞き 現場の人のために行われるもの カイゼン活動そのものが労働者を尊重する方法である ( 問 ) どうしても不良品が出てしまうのだが 解決方法は ( 答 ) 作業標準を作って同じ品質のものを作るのが基本であるが 阻害要因やムダは多くある 例えば 作業中に話しかけると作業が止まる要因となる ( 問 ) 既存機種はすでに経験があり安定供給できるが 新しい機種は不良品が出てしまうがどうすればよいか ( 答 ) 新規のラインを作る前に 試作車の段階からカイゼン活動を進めておくことで 不良品を回避することが出来る ( 問 ) ロット生産で TPS を導入できるのか ( 答 ) ロット生産だから TPS が導入できないわけではない 例として TPS を導入している九州のある工場では 2,500 種の生産品について小ロット生産をしている 7
(2) 講義 改善活動におけるトップの役割 1 講師 : 雨澤政材氏 ( 株式会社九州モノづくり研究所代表取締役社長 ) 2 日時 : 平成 23 年 10 月 7 日 ( 金 )13:00-16:00 3 場所 : リーガロイヤルホテル小倉 ( 松の間 ) 4 概要 : 第 2 回目となる講義では カイゼン活動の方法や具体的な事例を 動画を交えて紹介した また カイゼン活動を行う上での心得についても言及された 後半部分では 経営者に求められる役割についての講義となり 問題の顕在化 課題設定 現場へのフォローの行い方を通じて 経営者が現場に出向くことの必要性を説いた 5 質疑応答 ( 問 ) 人格というのは 次世代にどのように継承していけばよいのか ( 答 ) 上司 ( リーダー ) が次世代への継承では重要な役割を果たす マネージャーの教育システムを整備することが必要 入社してから経営層になるまで教育を行う必要がある ( 問 ) 愛社精神のある社員の育て方とは何か ( 答 ) 経営層の姿勢が非常に大切である (3) 講義 7つのムダ 1 講師 : 中島省三氏 (JETROカイゼン指導専門家) 2 日時 : 平成 23 年 10 月 10 日 ( 月 )9:00-11:30 3 場所 :ANAクラウンプラザ大阪( 桃山 ) 4 概要 : 講義では 終始研修生に質問をし 回答に対してコメントをする方法で進められた はじめに 生産現場におけるムダとは 付加価値を生まない諸要素であると定義づけ 在庫や動作 不良品等が生むムダについて 写真を交えてその原因と対策について言及した 5 質疑応答 ( 問 ) 生産計画に基づいてムダが発生するということは 計画そのものが悪いからか ( 答 ) その通りである 在庫は消費した分だけあればよい そのためには最大在庫量を決めておく必要がある 顧客が会社の生産能力を信用していない場合 在庫は3ヶ月分持っておくのが適当 在庫を減らすには生産の安定化が必要 ( 問 ) 作り過ぎのムダは 生産が安定していてもムダとなるのか ( 答 ) 生産が安定していても 作り過ぎはその他のムダを併発する 8
(4) 講義 演習 TPSの考え方 1 講師 : トヨタ自動車九州株式会社 TPS 推進室 2 日時 : 平成 23 年 10 月 5 日 ( 水 )13:00-16:30 3 場所 : トヨタ自動車九州トレーニングセンター 4 概要 : 冒頭に TPS( トヨタ生産方式 ) に係る基本的な考え方の紹介の後 レゴブロックを使った演習を行った 演習では 自動車を模したレゴブロックを組み立てる工程を 時間を計測しながら実施した 個人対抗 チーム対抗がそれぞれ行われ 最後には模擬コンベアを用いて作業カイゼン演習を行った 5 質疑応答 ( 問 ) 自社にてカイゼン活動を行ったが 結果的に失敗してしまったのだが ( 答 ) カイゼン活動は絶えず続ける必要がある どんどんトライすればよい ただし 標準作業を変える際は上司の判断を仰ぐことが肝要 ( 問 ) ラインの作業員はモノを作ることに必死で カイゼンを考える余裕は無いと思われるが ( 答 ) カイゼン意識を持って作業することを教育している カイゼン= 楽 ではない ( 問 ) どうやって作業員にカイゼンへの気付きを与えるのか ( 答 ) 階層別研修を用意している また効果の高いカイゼンには特別な報酬等のインセンティブを与えている (5) 講義 演習 TPSの考え方 1 講師 : トヨタ自動車九州株式会社 TPS 推進室 2 日時 : 平成 23 年 10 月 8 日 ( 土 )9:00-16:30 3 場所 : トヨタ自動車九州トレーニングセンター 4 概要 : 前半では 標準作業票を作成する演習を行った 演習用のビデオを見ながら 研修生はストップウォッチでサイクルタイムを計測する練習を行った また 模擬ラインを使い 定規やストップウォッチを用いて標準作業組合せ票の作成を行った 後半では 模擬ラインのカイゼン演習を行い 3 班にわかれて各班のアイデアと短縮できる時間を競った 最後には カイゼン活動を行う際の基本的な心構えが紹介された 5 質疑応答 ( 問 ) 正しいサイクルタイムの測り方とは ( 答 ) 10 回計測して最低タイムを取る ( 問 ) 機械の多い複雑な工程の場合のサイクルタイムの測り方とは ( 答 ) 機械の仕事 人の仕事に分けて人の仕事のみを抽出する 9
( 問 ) 複雑な工程で最低タイムを取れば 作業に無理があるのではないか ( 答 ) 困難な工程でも可能な限りカイゼンを行い 作業を平易にする 無理をしない前提で最低タイムを計測するのであり 急がせるためではない 作業者が急いでいないのに作業にムラが出るのは どこかの工程に無理があることが原因である 2.2.2 研修内容 ( 視察 ) (1) トヨタ自動車九州株式会社 1 場所 : 福岡県宮若市上有木 1 番地 2 概要 : 組立てラインをガイドの案内にて見学し ジャストインタイム 自働化 管理板 アンドン 作業改善 ( 楽な作業姿勢等 ) ロボットの活用等について 実際の現場の状況を知ることができた その後 PR 館に移動し まずシアターにて 車ができるまで の流れがダイナミックな映像にて紹介された また 特別に トヨタ九州の立上げに携わったPR 館長の守屋氏との意見交換 質疑応答の時間が設けられた 3 質疑応答 ( 問 ) 組立てにおいて 重い部品は機械を使用するとのことだが 人間が対応する重量はどの程度か ( 答 ) 最大 20KG 但し 連続で作業する場合は異なる基準が設けられている ( 問 ) カイゼンの実施体制はチーム制か ( 答 ) 常に問題を見つける力をつけることが重要と考えている チームでできるカイゼンであれば すぐに対応し 会社として対応すべきもの ( 経費がかかるもの ) は経営判断の上プロジェクトを立ち上げる ( 問 ) 休憩時間はどの程度か ( 答 )2 直生産をしている (1 直 6:00~14:40 2 直 14:55~23:30) 1 直を例に取ると 昼休みが10:15-11:00 小休憩が8:00-8:10 13:00-13:15とあり 7 時間 30 分の勤務時間となっている ( 問 ) カイゼン活動のための時間を設けているか ( 答 )3 直 (22:00-7:00) として 設備保全を行っている (2) 一井工業株式会社 1 場所 : 福岡県鞍手郡小竹町大字勝野 1532-3 10
2 概要 : 九州工場長である井川秀樹氏により 会社概要 製品紹介が行われた後 担当作業員を9 名から2 名に減少させたプレス工程のカイゼンについてのプレゼンテーションが行われた その後 工場内見学が行われ 現場で取り組まれているカイゼン活動を視察した 視察コースには先に紹介されたプレス工程もあり 研修生は積極的な質問を行った 3 質疑応答 ( 問 ) プレス工程のカイゼン (9 人 2 人 ) にいくら費用がかかったのか ( 答 ) 既存の設備を利用したため 合計 10 万円以下でカイゼンできた ( 問 ) ( 上記に関し )10 万円の投資を行ったリターンはどのくらいか ( 答 ) 7 人減となったので その分の人件費が浮いた ( インドネシアでは人件費が安価なため 大きなリターンとは思えない旨のコメント有 ) ( 問 ) プレス工程のカイゼンにより 製品の価格を下げるのか ( 答 ) 顧客から求められる毎年 5% のコストダウンへの対応となる ( 問 ) 工場内にスクラップが見当たらなかったが ( 答 ) 全て工場の床の下で集積されている ( 問 ) カンバン方式を導入して何年経つか ( 答 ) 4 年経過している オーダーによってカンバンを使えるもの 使えないものがある クライアントがカンバンの場合はカンバンにする ( 問 ) プレス機のメンテナンスの時期はどのように設定しているか ( 答 ) ショット数が多いものは メンテナンスまでの期間も短い 1 万 2 千ショットに一度行うようにしている ( 問 ) 段取りの頻度は ( 答 ) 6 回 /8 時間 12 回 / 日 (3) 三泉化成株式会社 1 場所 : 福岡県鞍手郡小竹町御徳 1673-10 2 概要 : 九州工場長である古賀博之氏による会社概要 会社沿革にはじまり 自動車部品産業に参入するに至った経緯が紹介された また 会社の特徴としてプラスチック成形技術に関する資格保有者が多いことを上げ 他社とは技術力で差をつけていると述べられた その後工場見学に移り カンバンやアンドンで制御されている様子や 工場内各所で行われているカイゼンへの取り組み 水圧転写など高度な塗装技術を視察した 11
3 質疑応答 ( 問 ) 自社では塗装工程の前に 成型品を磨く工程があるが そのような工程が見られなかったが ( 答 ) 成型した後に改めて磨く工程があるのは金型の品質に問題があるのであろう 高品質の金型を使うだけではなく 定期的にメンテナンスを行い清潔に保つ必要がある ( 問 ) インジェクションについて段取り後の不良はあるか ( 答 ) 1~2ショット目は使わないようにしている ( 問 ) 金型の清掃の頻度は ( 答 ) 毎ロット 生産が終ったら清掃している また 日々の点検と1~2ヶ月毎に行うオーバーホールがある ( 問 ) 近いうちに実行予定のカイゼン活動はあるか ( 答 ) 毎日 5Sを行っている また 毎朝前日の問題等について協議を行っており 従業員が提案したことについて カイゼンに繋げていくようにしている ( 問 ) 成形には金型のメンテナンスが重要だが そのための設備はあるか ( 答 ) 設備もあり 専門の技術者もいる (4) 株式会社戸畑ターレット工作所 1 場所 : 福岡県北九州市小倉南区新曽根 11-31 2 概要 : 代表取締役社長である清永誠氏により会社概要や 経営についての講話があり インドネシアとの関係性にも触れられた 特にカイゼン活動については 会社の成長のためには 従業員に考える習慣を身につけさせ 知恵を出すこと 工夫をすることが重要だとし 年に2,000 件のカイゼン提案を行っていること 優秀なものは発表会で表彰していることも紹介された また 一流企業との取引を行う上での心構えとして モノを作るだけでなく ヒトを作る会社にしてこそ 将来性への期待を取引先に与えるとし そのためには有志勉強会などを通じて経営者と従業員が考え方を共有し 共に業務にあたることが重要だと述べられた 質疑応答の後に工場見学に移り 視察を終了した 3 質疑応答 ( 問 ) JUMP3(Joyful, Unique, Moral, Profession) とは何か ( 答 ) 中小企業は 大口の顧客の方針に従う必要があり これまで中 長期的な戦略をもつ必要が無かった しかし 今般においては自力で経営を行うことが必要となっており 9カ年計画を立てた その指針がJUMP3であ 12
る ( 問 ) 顧客から毎年のコストダウンを求められた時の対応について ( 答 ) 初年度からのコストダウンを意識している 毎年定率のコストダウンをするよりもその分利益が増加する ( 問 ) どのようにカイゼンの知識を得たのか ( 答 ) まず 必ずコストダウンすることを顧客に約束をする 一方で 人材がまだ整っていない 技術力が無いことを認める その中で 顧客の協力を得ていく 大企業のリソースを活用し 直接の指導を求めた (6) 株式会社エクセディ 1 場所 : 大阪府寝屋川市木田元宮 1 丁目 1 番 1 号 2 概要 : 執行役員である西垣敬三氏から歓迎の言葉があり 会社概要の説明が続いた 女性専用製造ラインや会社敷地内に託児所を設置し 女性が働きやすい環境を整備する取り組みについて取材を受けた際のテレビ映像の放映や QCサークル大会優秀者による発表実演も行われた 工場見学では 上述の女性専用ラインをはじめ 託児所や隣接する障がい者を雇用している株式会社エクセディ太陽の視察も含まれ 研修生はカイゼン活動に加え 我が国の企業が取り組む社会的な活動 ユニークな取り組みについても学習を行った 3 質疑応答 ( 問 ) QCサークルの実演があったが 発表会は各地から選抜されたチームが出場するのか ( 答 ) 5つのブロックから代表を決め 10のチームが出場する ( 問 ) アジアに研究開発の拠点をおく予定はあるか ( 答 ) タイにブレーキ関係の研究開発施設がある ( 問 ) インドネシアでの事業について 今後拡大する予定はあるか ( 答 ) 近年 2 輪と4 輪を扱う会社を分けたのはまさに拡大と認識 ( 問 ) 研究開発の設備をインドネシアに作る予定はあるか ( 答 ) 現時点で予定はないが 製造に近いところで開発を行う必要性は感じている ( 問 ) Focus on Basics というスローガンの意味は 社員に向けられたものか ( 答 ) 何事にもルールやスタンダードが存在する 全社員がその基本を振返って仕事をしようというメッセージ 13
( 問 ) 勤務シフトは ( 答 ) 工場は2 直 (8:10-17:00 20:30-5:20) ( 問 ) 勤務時間中にカイゼン活動に割り当てられる時間があるか ( 答 ) 週に30 分の活動が勤務時間中に認められている ( 問 ) 新規雇用者に対する研修はどの程度行われているか ( 答 ) トルクコンバーター工程の場合 2 日間の安全教育と トレーニングルームでの作業学習併せて10 日間行われる ( 問 ) 障がい者雇用 ( エクセディ太陽 ) の取り組みは 企業の社会的貢献という視点に基づくものか また 障がい者雇用に関する法律があるか ( 答 ) 社長の強い信念の表れ 働いてよかったと従業員に思ってもらえる企業づくりを目指しており その一環である 日本では 雇用する労働者の1.8% に相当する障がい者を雇用することが義務付けられている ( 満たさない場合は相応の金額を国に納める ) ( 問 ) 託児所を利用する料金は また 怪我などへの対応は ( 答 ) 夫婦のどちらかが従業員であれば利用でき 保育料は月額 2 万円 (4 歳以上 ) 園内での怪我であれば 保険でまかなう 口まわりの治療では 会社に常駐している歯科衛生士に来てもらうこともある ( 問 ) 売り上げが2009 年に大きく下がり 2010 年には急増しているが ( 答 ) リーマンショックの影響を受けたものである ( 問 ) TPM(Total Productive Maintenance) について どう対応しているか ( 答 ) 長期休暇 ( 夏期休暇 年末年始 GW) の際に まとめて大掛かりなメンテナンスを行っている その他 ライン毎に計画的にメンテナンスしている ( 問 ) 標準作業票がラインに掲示していなかったが ( 答 ) 見苦しいので掲示していないが 各ラインですぐに取り出せるところに格納している ( 問 ) ラインを良好な状態に保つために 稼働率はどの程度にしているか ( 答 ) 90% (7) 枚岡合金工具株式会社 1 場所 : 大阪府大阪市生野区巽中 2-7-22 2 概要 : 代表取締役である古芝義福氏より会社概要と 町工場の生産革新事例として 徹底トコトンの3S 活動がもたらしたものとは というタイトルで3S 活動に取り組んだ経緯とその効果についての講話が行われた また3S 活動を行う 14
にあたって 社内の協力をどのように得たのか 活動を継続させるためのヒントが紹介された 毎朝行われている清掃活動の体験も行われ 研修生も雑巾と洗剤を手に持ち参加した 実例見学として工場 事務所見学を行い 整理 整頓が徹底的におこなわれている様子を視察した 3 質疑応答 ( 問 ) 工具や備品に色つきのシールが用いられているが その意味は ( 答 ) 対応する色の収納先があり きちんと元に戻すことが出来る ( 問 ) 始めたばかりの整理や整頓についてはどのように浸透させるのか ( 答 ) 繰り返し周知をする 3S 活動を始めた当初は社長が現場を牽引した (8) 明星金属工業株式会社 1 場所 : 大阪府大東市野崎 4-5-12 2 概要 : 代表取締役社長である上田幸司氏より歓迎の挨拶と会社概要の説明があった後 生産 環境 効率 安全に関するカイゼン活動の仕組みの紹介がなされた 独自のシート ( 明星気付きシート ) を用い 全社員から問題点を抽出し共有する方法や 社員へのインセンティブ 継続した人材育成の方法について述べられた 品質改善はIT 技術 (CADやCAM) を駆使して行われており 動画を用いて実例の紹介があった これまでのインドネシアとの関連についても述べられ 同社が引き続きインドネシアとの関係を強化したい旨が述べられた その後 工場 事務所見学を行い 質疑応答となった 3 質疑応答 ( 問 ) 設計段階で様々なIT 技術が駆使されているが それぞれのシステムの統合はどのようになされているか ( 答 ) 自動車会社からのデータについては変換の必要があるが その他の工程ではCADシステムの中で動いており 問題は無い ( 一気通貫フロー図にて説明 ) ( 問 ) 工場見学では具体的なカイゼン事例について見えづらい部分があったが ( 答 ) プレス用の金型は一品一様であり ラインの生産改善や標準作業を改善することが難しい 毎回受注した物件ごとに生産作戦会議を開き 要件や受給材料 その時点での生産状況を考慮し 負荷の無いよう作り方を変化させている ( 問 ) 環境改善に関連し 社員の健康管理についての取り組みについて ( 答 ) 朝礼を行い 顔色の確認やヒアリングを上司との間で行う また 体温測 15
定するなどチェックした上で 適宜病院へ行かせている なお 健康診断は定期的に受診させている (9) 株式会社山田製作所 1 場所 : 大阪府大東市新田中町 2-41 2 概要 : 同社は前述の枚岡合金工具株式会社と共に3S 活動に取り組んでおり その理念を共有している 代表取締役社長の山田茂氏による会社概要説明の後 業績の悪化していた会社を3S 活動によって立て直した経緯や歴史についての講話があった 取り組みの契機から社員への浸透 さらには継続した活動へと発展させた経緯が実話を交えて紹介され 3S 活動における経営者の役割について述べられた その後質疑応答にうつり 最後に若手社員の案内により工場見学を行い 3S 活動の実例について視察を行った 3 質疑応答 ( 問 ) 3Sの目的は 安全 快適 効率的 か ( 答 ) その通り 枚岡合金工具と同様である ( 問 ) 労災事故の防止方法については ( 答 ) 労災事故は緊張がゆるんだ時におきやすい 工場内の白線を踏まない という工場のルールは一定の緊張感となり 予防に繋がる ( 問 ) 3S 活動の成功で売り上げが伸びたか ( 答 ) 3Sは業績回復の特効薬ではないが 選ばれる企業になれた 新規顧客が増え 依頼も受ける企業に代わることが出来た ( 問 ) 3S 活動に反対する人に対しての対応は ( 答 ) 反対する人は 自分の意見をじっかりと持てる人でもある 理解 納得してもらえれば 一番の協力者になる ( 問 ) 3S 活動で大切なのは会社の体質を変える人を育てるという事か ( 答 ) その通り 3S 活動は社長から新人まで共同で取り組み 一緒に出来る 共に学びあうことが出来る活動である ( 問 ) 現場での監督者の役割とは ( 答 ) 工程管理から営業 品質管理まで行う 30 歳代のリーダーが成長している 2.2.3 ラップアップセッション研修最終日に行われたラップアップセッションでは JETROカイゼン指導専門家の中島省三氏によって進められ 主に大阪での訪問企業を事例に参加各社のカイゼン 16
活動にどのように活かすかという視点から本ミッションがまとめられた 企業訪問時に発見したカイゼン事例を取り上げ ホワイトボードに訪問各社での気付きを参加各社が記入し それに対して同氏より質問 コメントが付され 導入できる事例か 導入する際の留意点を議論する方法で実施された 研修生はそれぞれの考えを活発に議論しあい 本ミッションを振返って自社でのカイゼン活動に対する取り組みを再考するよい機会となった セッション終盤では中島氏作成の資料 ( 街の5S ) を用いて 駅の構内や路上 スーパーマーケット等 日常的な生活の中で発見できる5Sに関わる工夫について 何を目的に導入されている工夫かを研修生に問いかけ カイゼンするポイントを見抜くための学習が行われた 最後にアンケートの記入を行い 研修の締め括りであるラップアップセッションは終了した 2.2.4 交流会の実施下記の通り 受入先関係者等を招待した交流会を開催し ミッション団員とのネットワーク構築の機会を設けたところ 非常に和やかな雰囲気で交流を深めることができた また ミッション団長の挨拶では 受入関係者への謝意が表明されるとともに 研修を通して 講義や演習を通じてカイゼンの基本について理解を深めることができたこと また各訪問先企業においてカイゼン活動の実践現場を視察し 非常に参考になった旨述べられた 1 日時 : 平成 23 年 10 月 7 日 ( 金 )18:30~20:00 2 場所 : リーガロイヤルホテル小倉 ( シャンボール ) 3 出席者 : ミッション団員 受入先関係者等 ( 計 33 名 ) 2.2.5 ミッション団員の来日 滞日支援 (1) 来日 帰国対応来日の際は 福岡国際空港においてコーディネーターが出迎え 傭上バスに乗せこみ宿舎への案内を行った 宿舎到着後はチェックイン補助を行い また 宿舎周辺情報を配布した 入国審査において ミッション団員のうち1 名が パスポートの記載内容 ( 印刷 ) が不鮮明 不明瞭であるとの理由にて留め置かれたところ 同人と団長およびコーディネーター 1 名を残し 他の団員はプログラム進行のため 先に宿舎に移動した 空港でのトラブル対応は団長より説明を加えることにより解決し 時間短縮のため新幹線等を利用し宿舎にてミッションに合流した 帰国に際しては 傭上バスにて宿舎から関西国際空港へ案内し チェックイン補助 17
を行い 出発を見送った (2) 来日時オリエンテーションの実施来日後に 下記の内容についてオリエンテーションを行った 既にジャカルタでの事前説明会にてプログラム概要等の説明は済んでいるため プログラム前半の北九州でのプログラムについて協力を得た ( 財 ) 北九州国際技術協力協会よりプログラムの詳細や北九州市についての説明があり また当センターより日本滞在に係る留意事項等について説明を行った オリエンテーションでは 当センターの規定に基づき ミッション団員に日当の支払いを行い 研修資料や視察時に必要な物品 ( 作業服 帽子 安全メガネ 軍手 ) を支給した 1 北九州国際技術協力協会 北九州市の紹介 2 ミッション団員自己紹介 同行者紹介 3 日程説明 確認 4 配付物の確認 5 滞在中の注意事項等 6 質疑応答 7 インドネシア側挨拶 (3) 日本語講義の実施来日時オリエンテーションに続き 当センターの日本語指導員による日本語講義を行った 研修における使用言語は日本語及びインドネシア語であるが 日本の文化 習慣を少しでも理解することにより 訪問先の日本企業での視察や滞日生活が円滑になるよう 日本語の挨拶や自己紹介 便利なフレーズ等について学習した 研修期間中 訪問先において 日本語で挨拶 自己紹介を実践しているミッション団員も多く 打ち解け易い雰囲気が醸成されていた 18
2.3 研修実施概要 2.3.1 受入企業および講師 / 講義 視察内容本研修は前半を北九州 後半を大阪にて実施した 北九州においては トヨタ自動車のカイゼンの考え方を基本に 座学 演習 企業視察を組み合わせて行った 基礎となる講義については トヨタ自動車に長年籍を置いた雨澤政材氏より カイゼンの基本のみならず カイゼン活動におけるトップの役割についても言及があり これからカイゼン活動を自社にて浸透させていくミッション団員にとって有益なものとなった 大阪においては 現地 ( インドネシア ) においてカイゼン指導を行っている日本人専門家 (JETROより派遣) の中島省三氏より 現場目線でのカイゼンへの取り組み方等について講義頂き また 特に町工場を含む自動車部品を扱う複数の中小企業を視察したところ 類似点や相違点を比較しながら 自社に取り入れ易いアイデア等を発見するなど 多くの気付きがあった なお 同中島専門家による取りまとめにより 今回の本邦研修において得た知識 経験について 次回の現地 ( インドネシア ) におけるカイゼン指導へ繋ぐことができ 事業全体としても有機的な構造となった 2.3.2 研修期間 配列 密度 10 日間の研修であったが 研修目的に適うよう充実した内容となっていた 基本的に 研修前半において カイゼンに係る講義や演習を行い 基本的な知識や実習を済ませてから 各企業での視察を行ったところ 効率的 効果的なプログラム構成となった 視察先では 概要説明 工場見学 質疑応答の時間配分が細かく設定されていたが ミッション団員が非常に積極的であったため 質疑応答の時間が若干不足するような場面があった 但し 今回の研修期間を考えると 効率よく研修テーマを網羅するよう日程を調整した結果として妥当であった 2.3.3 資料 機材 施設各視察先の概要資料については 事前にオリエンテーションにてミッション団員に配布し 訪問時には各社にてパンフレット等が配られた 講義資料についても 適宜紙媒体で配布され 理解促進に役立つものであった また 工場見学の際は 安全上の理由により 適宜保護具 ( 帽子 眼鏡 作業服 ) を身に着ける場面があり 当センターにて全員分の必要品を準備の上対応した 19
2.3.4 ミッション団員ミッション団員については 全体的に本研修に真面目に取り組む姿勢が見られ 学ぶ意欲が十分にあった また カイゼンに関してある程度の専門知識を持ち 自社でのカイゼン活動導入推進という目的意識も明確であった 一方で 各団員のレベルに差があることが見受けられた また 密度の濃いタイトな日程 かつインドネシアとは異なる気候であったため 多少の疲労は見られたが 特に体調を崩すこともなく また イスラム教徒であることを考慮し食事等に留意したため 健康状態は大事に至ることなく無事に研修を終えることができた 本研修においては 様々な企業の現場でのカイゼン取組みを知ることができ 自社への導入について役立つとの意見が多く聞かれ また 受入企業の丁寧な対応に謝意が表明された 20
3. 総括 本カイゼンミッション受入事業は 多くの関係者や受入企業の協力によって無事に完了することができた トヨタ自動車九州株式会社のトレーニングセンターにおける講義および演習は 研修前半の導入研修として極めて有効であった トヨタ生産方式 (TPS) についての分かり易い解説とともに レゴや模擬ラインを用いた カイゼン の実践研修を体験することにより ミッション団員にとって ムダ ムラ ムリの発見と同時に陥りやすいミスなども提示されるなど観察 改善力をつけ 管理監督者として自ら改善し部下にも改善を指導できる力をつける基礎となったものと思料する また 北九州および大阪において 中小企業を中心に自動車部品製造現場等を見学したところ 生産ラインの比較のみならず 作業者の動きや経営者の考え方 カイゼンへの取組みの相違点等について気付き 理解するに至った 特に 3S 活動等について 徹底した取組みを実践している現場を見学することができ ミッション団員が自社にカイゼン活動を導入 浸透させるにあたり 大いに参考になった様子であった ミッション団員については 本事業の目的について十分に理解し 日本で得た知識や経験を カイゼン活動を取り入れた自社の運営 ひいてはインドネシア自動車業界の発展に活かすために 積極的に研修に取り組んでいた カイゼンについての基礎的な知識は持ち合わせていたものの 本研修プログラムにおいて カイゼン活動の真髄 より良いモノづくりに向かって努力し続ける姿勢について 講師諸氏の豊富な経験に基づいた座学と工場での現場見学により 理解 体感したものと考える また 日本の受入関係者の温かく真摯な対応に対し敬意を表し 当方の研修運営にも非常に協力的であった なお インドネシア側のカウンターパート機関であるインドネシア工業省 インドネシア自動車工業会 インドネシア自動車部品工業会からは団長を含め 5 名がミッションに参加していたが 本事業を日本とインドネシアの自動車産業分野の協力関係の推進における重要な要素のひとつと位置づけ カイゼン活動をはじめ日本の優れたシステムをインドネシアに取り入れたいとの期待を強く持って取り組んでいた 本事業においては 関係者の尽力ならびにミッション団員の真摯な態度が多くの成果をもたらしたと思われる 我が国での本研修が 今後ミッション団員がインドネシアに帰国後 自社の経営に貢献できることを大いに期待する一方 一時的な成果とならずにインドネシアの自動車業界においてカイゼン活動が拡大していくよう継続的な協力が望まれる 21
4. 添付資料 別添 1. 研修日程表別添 2. ミッション団員リスト別添 3. 研修先配布資料 22
別添 1. 研修日程表平成 23 年度経済連携促進のための産業高度化推進事業 ( 日本 -インドネシア経済連携協定に係るカイゼンミッション受入事業) 月日時間プログラム研修場所宿泊 10/3 ( 月 ) 20:25 ジャカルタ発 23:00 シンガポール着 (SQ967) 1:00 シンガポール発 (SQ656) 8:10 来日福岡空港着 10/4 ( 火 ) 10:20-12:00 オリエンテーション日程 プログラム 日本での生活等について説明 12:00-13:00 昼食 リーガロイヤルホテル小倉 (4F サファイヤ ) リーガロイヤルホテル小倉 (5F サファイヤ ) 13:00-14: 30 日本語講座 簡単な挨拶等の日本語を学ぶ リーガロイヤルホテル小倉 (4F サファイヤ ) 9:00-12:00 講義 改善活動の基本的な考え方 講師 : 九州モノづくり研究所雨澤政材社長 トヨタ自動車九州研修センター (101 号室 ) 10/5 ( 水 ) 12:00-13:00 昼食お弁当研修センター内 13:00-16:30 講義 演習 TPS の考え方 講師 : トヨタ九州 TPS 推進室山下主幹 トヨタ自動車九州研修センター (101 号室 ) 8:55-11:30 トヨタ自動車九州訪問 概要説明 & 工場見学展示館見学 トヨタ自動車九州 10/6 ( 木 ) 12:00-12:50 昼食レストラン GA 倶楽部グローバルアリーナ 13:30-14:50 一井工業株式会社訪問 15:00-17:00 三泉化成株式会社訪問 会社概要説明 改善活動取組事例の説明 工場見学 Q&A 会社概要説明 改善活動取組事例の説明 工場見学 Q&A 一井工業九州工場 三泉化成九州工場 リーガロイヤルホテル小倉 ( 北九州市 ) 9:00-11:30 株式会社戸畑ターレット工作所訪問 会社概要 会社あげてのカイゼン活動の取組み説明 工場見学 Q&A 戸畑ターレット工作所 10/7 ( 金 ) 12:10 昼食フラミンゴカフェ 13:00-16: 00 講義 改善活動におけるトップの役割 講師 : 九州モノづくり研究所雨澤政材社長 リーガロイヤルホテル小倉 (4F 松の間 ) 18:30-20:00 交流会関係者ネットワーキング リーガロイヤルホテル小倉 (28F シャンボール ) 10/8 ( 土 ) 9:00-12:00 演習 カイゼンの進め方 講師 : トヨタ九州 TPS 推進室山下主幹 12:00-13:00 昼食お弁当 トヨタ自動車九州研修センター (201 号室 ) トヨタ自動車九州研修センター 13:00-16: 30 演習 カイゼンの進め方 講師 : トヨタ九州 TPS 推進室山下主幹 トヨタ自動車九州研修センター (201 号室 ) 10/9 ( 日 ) 北九州 大阪 11:00 福岡空港発 12:15 伊丹空港着 (ANA1676) 12:55-13:45 昼食レストランくれべ 9:00-11:30 講義 7 つのムダについて 講師 : 中島省三氏 ( カイゼン指導専門家 ) ANA クラウンプラザ大阪 (4F 桃山 ) 10/10 ( 月 ) 12:00-12:50 昼食 Bali-Asian Kitchen Ubud Suci 13:30-16:45 株式会社エクセディ 会社概要説明 TV 番組上映 カイゼン事例紹介 工場見学 ( トルコンバーター工場 障害者用工場 ) Q&A エクセディ
9:20-12:00 枚岡合金工具株式会社 講義 徹底トコトンの 3S 活動 ( 整理 整頓 清掃 ) がもたらしたものとは 清掃活動体験 工場内 事務所内見学 (3S 活動の改善事例 ) 枚岡合金工具 別添 1. 研修日程表 ANAクラウンプラザホテル大阪 ( 大阪市 ) 10/11 ( 火 ) 12:20-13:00 昼食がんこ寿司桃谷店 14:00-16:00 明星金属工業株式会社 9:00-12:00 山田製作所 会社概要説明 ISO に係る取組み 工場見学 Q&A 会社概要説明 3S 活動の案内 工場見学 社長による講和 明星金属工業 山田製作所 10/12 ( 水 ) 12:40-13:20 昼食低カロリーバイキング悦 14:30-17:00 ラップアップセッション 質疑応答および総括 街の 5S について ( 講師 : 中島省三氏 ) ANA クラウンプラザ大阪 (4F 末広の間 ) 10/13 ( 木 ) AM 離日関西空港発 (11:00 SQ619 16:40 シンガポール着 18:40 シンガポール発 SQ966 19:25 ジャカルタ着 )
別添 2. ミッション団員リスト 平成 23 年度経済連携推進のための産業高度化推進事業 ( 日本 - インドネシア経済連携協定に係るカイゼンミッション受入事業 ) ミッション参加者リスト No 氏名 ( カタカナ ) 所属 肩書 主要生産物 設立年 資本金 従業員数 主要顧客 1 Mr. Siswijono ( シスウィヨノ ) Mr. Tommy Robert Hardenberg ( トミー ロベルト ハルデンベルグ ) PT Menara Terus Makmur - MTM PT Menara Terus Makmur - MTM Plant Director Plant Division (Kaizen Leader) Forging Parts; Mecanical Jacks; Hand Tools 1986 IDR.15.000.000. 000 977 Automobile : Toyota; Daihatsu; Mitsubishi; Isuzu; Honda; General Motors; Hyundai; Nissan; Peugeot; KIA Component Maker : Showa Ind.; IGP Group; Denso Ind.; Kayaba Ind.; Aisin Ind.;AT Indonesia; Yasunaga Ind.; Jibuhin Bakrie Ind.; Aichi Forging Ind. Motorcycle : Honda; Kawasaki; Suzuki; Yamaha 2 3 Mr. Wahyu Rahardjo ( ワハユ ラハルジョ ) Mr. Budi Utomo ( ブディ ウトモ ) PT Bakri Tosan Jaya - BTJ PT Bakri Tosan Jaya - BTJ Operational Manager Staff Jishuken (Kaizen Leader) Automotive : Brake Drum, Flywheel, Disc Brake, Flywheel, Hub, General Engneering Parts for Heavy Duty, Constructions, Agriculture 1976 IDR. 47.000.000.000 742 PT Kramayudha Tiga Berlian Motor, PT Hino Motor Mfg. Indonesia, PT Isuzu Astra Motor Indonesia, PT Astra Daihatsu Motor, PT Astra Nissan Diesel Indonesia,, PT Astra Multi Truck Indonesia, PT Toyota Motor Manifacturing Indonesia, PT United Tractor, PT Braja Mukti Cakra, PT Belton Axel Component SDN.BHD, Sapura Machining Corp. 4 5 Mr. Adnan Syaifudin ( アドナン シャイフディン ) PT Braja Mukti Cakra - BMC Quality Improvement Staff (Kaizen Leader) Brake Drum, Flywheel, Disc Brake, Hub, Pressure Plate, Bracket Fr Shock Absorber, Spacer, Holder Inj 1986 IDR. 2.000.000.000 231 PT Kramayudha Tiga Berlian Motor, PT Mitsubishi Kramayudha Motors, PT Exedy, PT HMMI, PT IAMI Mr. David Matondang ( ダフィッド マトンダン ) PT Subur Jaya Teguh - SJT Supervisor 6 Mr. Hari Budiarto ( ハリ ブディアルト ) PT Subur Jaya Teguh - SJT Operation Manager (Kaizen Leader) Spare Part Components Automotive; Press; Machining/Stamping 1984 IDR.2.000.000.0 00 1,475 PT Yamaha Indonesia Motor Mfg., PT Indomobil Suzuki International 7 8 Mr. Fatkhur Rohman ( ファックル ロフマン ) PT Frina Lestari Nusantara - FLN PPIC Section Head Mr. Mega Irawan ( メガ イラワン ) PT Frina Lestari Nusantara - FLN Kaizen Leader Bonnet Guard; Side Visior; Front Bumper Guard; Side Step; Mud Guard; Bumber Corner Protector; Side Body Moulding; RR Bumper Guard; Cover Spare Wheel; Roof Rack; RR Upper Spoiler 2000 IDR.800.000.00 0 257 PT Astra Daihatsu Motor, PT Honda Prospect Motor, PT Pantja Motor, PT Nissan Motor, PT Kia Motor Indonesia, PT Krama Yudha Tiga Berlian Motor, PT Toyota Manufacturing Indonesia 9 10 Mr. Purwantoro ( プルワントロ ) Mr. Deddy Risdianto ( デディ リスディアント ) PT Indo Karlo Perkasa - IKP PT Indo Karlo Perkasa - IKP QA Dept.Head Kasie Prod Molded (Kaizen Leader) Automotive Components for 2 Wheel & 4 Wheel; Non-Automotive Components; Hose Products; - - 1,807 Honda; Yamaha; Suzuki; Kawasaki; Piaggio; Toyota; Hino; Daihatsu; Mitsubishi Motors; GM; Nissan; Nissan Diesel 11 12 13 Mr. Nelson Tampubolon ( ネルソン タンプボロン ) Mr. Jumari ( ジュマリ ) PT FSCM Manufacturing Indonesia -Production Dept.Head Kaizen Leader PT FSCM Manufacturing Indonesia - Drive Chain; Engine Chain 1984(PT Federal Superior Chain Manufacturin g) 2004 (change its name) IDR.59.419.500. 000 835 Honda, Yamaha, Suzuki. Kawasaki, ASKI 14 Mr. Iskandar Dinata ( イスカンダル ディナタ ) PT Nandya Karya Perkasa - NKP Manager (KAIZEN Leader) Metal Stamping Parts 1985-821 - 15 Mr. Sudarsono ( スダルソノ ) PT Laksana Teknik Makmur - LTM Manager Manufacturing & Car Accessories 2006 - - - 16 Mr. Budi Prasetyo Soesilo ( ブディ プラセティヨ スシロ ) GAIKINDO Staff Ahli Gaikindo 17 Mr. Mohamad Sjaffary ( モハマッド シャファリ ) GIAMM Office Manager 18 Mr. Agust Juvenly Purba ( アグス ジュフェンリ プルバ ) Ministry of Industry Section Head 19 20 Mr. Lumadi Prawiro Dikromo ( ルマディ プラウィロ ディクロモ ) Mr. Mahardi Tunggul Wicaksono ( マハルディ トゥングル ウィチャクソノ ) Ministry of Industry Ministry of Industry Section Head Directorate
別添 3 配布資料リスト 日本 インドネシア経済連携協定に係る カイゼンミッション受入事業 研修先配布資料 1. Toyota Production System ( パワーポイント資料 ) (10/5 雨澤政材講師 ) 2. Welcome to Toyota Motor Kyusyu トヨタ自動車九州へようこそ (10/6 トヨタ自動車九州株式会社 ) 3. 一井工業株式会社会社案内 (10/6 一井工業株式会社 ) 4. Schedule トレーニングスケジュール (10/8 トヨタ自動車九州株式会社 ) 5. 標準作業組合せ票, Standardization Work Combination Table Making support sheet, Standardized Work Chart, Standardization Work Combination Table ( 標準作業組合せ票作成補助資料 ) (10/8 トヨタ自動車九州 ) 6. 7つのムダについて ( パワーポイント資料 )(10/10 中島省三専門家 ) 7. Corporate Profile ( パワーポイント資料 ) (10/10 株式会社エクセディ ) 8. 近畿地区発表会報文集 (QCサークル事例発表用エクセル資料) (10/10 株式会社エクセディ ) 9. 徹底トコトンの 3S 活動がもたらしたものとは ( パワーポイント資料 )(10/11 枚岡合金工具株式会社 ) 10. Company Profile ( パワーポイント資料 ) (10/11 明星金属工業株式会社 ) 11. 会社パンフレット (10/11 明星金属工業株式会社 ) 12. カイゼン活動 ( パワーポイント資料 ) (10/11 明星金属工業株式会社 ) 13. ようこそ日本へ ようこそ山田製作所へ ( パワーポイント資料 ) (10/12 株式会社山田製作所 )