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EAA アルミニウム自動車マニュアル 接合編 11. 異種材料の接合 目次 : 11. 異種材料の接合 11.0 はじめに 11.1 一般的な課題と制約事項 11.1.1 冶金学的制約 11.1.2 異種金属接触腐食 11.1.3 熱膨張 11.2 アルミニウムと他の金属との接合 11.2.1 溶融アーク溶接プロセス 11.2.1.1 遷移インサートを用いた融接 11.2.1.2 溶接前にコーティングした材料の融接 11.2.1.3 溶融 - ろう接アーク溶接プロセス 11.2.2 その他の融接プロセス ( ビーム溶接 抵抗溶接 ) 11.2.2.1 レーザによるアルミニウムとの接合 11.2.2.2 とアルミニウムを接合するための抵抗スポット溶接 11.2.3 固相接合プロセス 11.2.3.1 摩擦攪拌溶接 11.2.3.2 摩擦攪拌溶接 11.2.3.3 レーザアシスト型摩擦攪拌溶接 11.2.4 ろう付およびはんだ付 11.2.4.1 ろう付 11.2.4.2 はんだ付 11.2.5 機械的接合プロセス 11.2.6 接着接合 11.2.6.1 ヘムフランジ接合 11.2.7 アルミニウムとマグネシウムの接合 11.3 アルミニウムとプラスチックおよび複合材の接合 11.3.1 アルミニウムとプラスチックの接合 11.3.1.1 機械的締結具による接合 11.3.1.2 レーザ支援による金属とプラスチックの接合 11.3.2 アルミニウムと複合材の接合 11.3.2.1 遷移継手 11.3.2.2 接着接合 11.3.2.3 機械的締結具 11.3.2.4 摩擦スポット溶接 11.3.2.5 射出クリンチング接合 1

11.0 はじめに アルミニウム自動車マニュアル アルミニウム合金はますます自動車産業への使用が増えていることから アルミニウムとアルミニウムだけでなく 特にアルミニウムと他の材料との接合の重要性が一層高まっている アルミニウムを他の材料に接合する場合 次の三つの異なる作業に区別することができる - アルミニウムと親和性のある ( 互いにある程度の溶解性を持つ ) 金属との接合 - アルミニウムと親和性のない ( 互いにほとんど もしくはまったく溶解性を持たない ) 金属との接合 - アルミニウムと ( 例えばプラスチックや複合材 セラミックスなど ) 異なる種類の材料との接合 異種金属の接合は 一般に 同じ金属 ( または組成の違いが軽微な合金 ) の接合よりも難しく 適用可能な接合法の数は少なくなる ただし 大部分のケースでは 適切な接合法と適正に調整した加工条件を適用することで 異種材料をうまく接合することができる アルミニウムと他の金属に適用できる接合プロセスには 次のようなものが考えられる 溶融アーク溶接プロセス その他の融接プロセス ( ビーム溶接 抵抗溶接 ) 固相接合プロセス ろう接およびはんだ付 機械的接合プロセス 接着材による接着 ただし アルミニウムを 例えばプラスチックや複合材 セラミックスなどの他の種類の材料と接合しなければならない場合 融接法は適用できない 前節で詳述したプロセスのうちいくつかのものは ほとんど調節せずに異種材料の接合に適用することができるが これらについては本節では詳しく扱わない 本節の主たる重点は 特に追加要件を充足するために考案または修正したプロセスに置くものとする 基本的なルールは すべての材料の組み合わせに最適な あるいはすべての性能要件に適合する単独のプロセスや加工パラメータ集合は存在しないという点にある 個々のプロセスにはそれぞれのメリットと制約事項がある 従って 個々の異種材料接合は 独自の要件を持った特殊な用途として捉えるのが最善である また 新たに考案されている技術の多くはまだ実験室かパイロットプラントの段階であり 大規模な連続用途には承認されていない 広範囲に及ぶ適格性評価試験が必要なことが多く どの接合法が特定の材料の組み合わせを接合するのに最も適正なのかを明らかにするには時間を要する 11.1 一般的な課題と制約事項 異種材料の接合を設計する場合は 例えば次のようないくつかの要素を考慮しなければならない 材料の組み合わせと性能に関する要件継手の設計と材料の厚さ接合時および使用時の熱による膨張 - 収縮の不整合使用時における異種金属接触腐食問題の可能性固定に関する要件と接合応力に関する制約 例えば融接のケースなど 具体的な接合プロセスに応じて 次の付加的な要件についても考慮しなければならない 融点の相違 接合時における脆性金属間化合物の形成 継手の脆弱性につながるおそれがある 加熱率および冷却率が継手の微細構造に及ぼす影響 溶接時および冷却時の応力を最小限に抑制するための事前および事後加熱の必要性 接合時における複合遷移材料または特殊な溶加材の必要性 2

自動車市場に関して言えば 最も重要な作業はアルミニウムとの接合である 結果的に この問題は 異種材料接合の新たな改良法を開発する主たる駆動力になっている 従って 本節の大部分の例は アルミニウム - システムを内容とするものになる ただし 画期的な軽量製品の製造を求める声から アルミニウムとプラスチック ならびに炭素繊維強化複合材との構造的継手の創出に顕著な関心が寄せられるようになった 一方 アルミニウムとセラミックスの接合は むしろニッチ用途に使用されることが多い 11.1.1 冶金学的制約 下表は 融接プロセスによるアルミニウムと他の金属の接合のしやすさを示したものである 下表から アルミニウムは概して他の材料には接合しにくいことがわかる このような理由から 過去には アルミニウムと他の金属の接合は主に融接以外の接合法 ( 特に機械的接合と接着剤による接着 ) を用いて行われてきた しかしながら 新たな方法が開発されたことにより 融接プロセスへの関心が新たに高まっている 優良良好適度不良 融接によるアルミニウムと他の金属の接合性能 アルミニウムを他の金属と接合する場合の重要な問題は 高温 特に液相の存在下では接合面に脆性な金属間化合物が形成され 良好な接合特性が得られなくなるという点にある 例として アルミニウムとの融接では FeAl 2 や Fe 2Al 5 のような金属間相の粒子が形成される また 銅やマグネシウム チタンのような 適度に溶接しやすい 金属をアルミニウムに直接融接した場合も 脆性の金属間相が形成される 11.1.2 異種金属接触腐食 異種金属接触腐食は 一つの金属が別の金属に対して選択的に腐食を起こす電気化学的プロセスである この場合 両方の金属が電解質の存在下で電気的に接触していなければならない 異種の導電材料では電極の電位が異なり 二つ以上が電解質中で接触すると 片方の材料が陽極 別の材料が陰極として作用する場合がある 異種金属における電極電位の差が推進力となり 陽極部材に対する腐食作用が加速する 陽極金属が電解質中に溶解し 腐食生成物が陰極に堆積する この種の腐食を低減あるいは防止するには 次のようないくつかの可能性がある 最も簡易な選択肢は 二つの材料を互いに電気的に絶縁するという方法である 電気的に接触していなければ 電気反応が形成されることはない この絶縁は 電極電位の異なる金属間に非導電物質を使用することで達成することができる ( グリースのような ) 撥水性化合物を使用したり 金属を不透性の保護層 ( 例えば適合性のある塗料やワニス プラスチックなど ) でコーティングすることにより 電解質との接触を防止することができる 両方の材料をコーティングすることができない場合は 電極電位が高い方の材料にコーティングを塗布することが望ましい コーティングをより活性の強い材料のみに塗布する場合 コーティングに破損が生じると大きな陰極部位が生じ 露出したごく小さな陽極部位において これに応じて腐食率が高くなる 電気めっきやその他の金属コーティングも有効である 腐食への耐性が高いため 貴金属の方が一般に使用される傾向にある 亜鉛でめっきした場合 犠牲陽極の作用により の母材を保護することができる 3

陰極の保護では 保護された金属よりも より活性の高い金属でできた一つまたはそれ以上の犠牲陽極が使用される 犠牲陽極に一般的に使用される金属合金は 例えば亜鉛やマグネシウム 特定のアルミニウム合金などである 陰極保護は 直流 (DC) の電源を腐食性のガルバニ電流と反対に接続するという方法で実施することも可能である 11.1.3 熱膨張 熱膨張とは 物質が温度の変化に反応して体積を変化させようとする傾向のことである 固体の場合 主に懸念されるのは 長さ部分に沿った変化や特定部位の変化である 熱膨張係数は物質に固有のパラメータであり 通常は温度に応じて変動する ただし 一般的な工学固体では 使用を意図して設計されている温度範囲において熱膨張係数があまり大きく変動せず 実質的な計算結果を膨張係数の平均値にもとづいて求めることができる場合が多い 適用する接合法が大きな温度変化を伴う場合は 異種材料の接合作業の段階で熱膨張による影響を考慮しなければならない また 使用段階における温度変化の影響も考慮に入れる必要がある ただし ホワイトボディへの用途の場合 最も重要な接合後の影響が生じるのは 最高で約 180 の温度で行われるラッカー焼付の硬化プロセスである 11.2 アルミニウムと他の金属との接合 これまでに異種金属の接合に用いられてきた技術の大部分 ( 例えば機械的接合プロセスや固相接合法 接着材による接着など ) は 特定の形状にしか対処できなかったり 広範囲に及ぶ制御入力が必要であった このため より柔軟な接合法の産業実践への導入に大きな関心が寄せられている アルミニウムを ( を含む ) 他の金属に接合する場合に最も重要になる要素は 冶金学的問題である 熱の影響下において 溶融混合物の固化の際か もしくは接合界面の拡散プロセスにおいて 二つの材料の界面に金属間相が形成されるのである 熱を加えるほど 金属間相を含むゾーンは大きくなり 接合部の機械的特性は劣化する また 化学的特性や物理学的特性の相違に対しても適切な措置を講じなければならない 二つの材料の熱膨張係数が異なると 接合部の周辺に応力領域が発生する可能性があるからである また 電気化学ポテンシャルの違いから 顕著な腐食傾向が生じる場合もある 以下に詳述する大部分の例はアルミニウム / の接合部に関するものである しかしながら 基本的なプロセス原理は アルミニウムと他の大部分の非鉄金属の接合にも適用することができる 軽量設計における重要性から アルミニウム / マグネシウム接合部のみを特異的に扱う章を追加する 11.2.1 溶融アーク溶接プロセス アーク溶接プロセスをアルミニウムとの接合に適用することのできる最も一般的な二つの方法は 二元金属遷移インサートの使用と 溶接前におけるどちらか一つの金属への適切なコーティングの塗布である ただし より有望なのは 融接の入熱を絶対的に必要な最小限度に抑制し 金属間相の形成を厳密に制御しようという近年の試みである 現在 コールド メタル トランスファ (CMT ) 溶接技術が自動車用途におけるアルミニウム材と材の接合に産業利用されている 11.2.1.1 遷移インサートを用いた融接 二元金属遷移インサートの使用は 現在 造船産業において広く取り入れられている 二元金属遷移インサートの適用は インサートの両側で ( 例えばインサートの一方の側ではと 反対の側ではアルミニウムとアルミニウムの接合のような ) 同種の材料接合を作製できることを意味している すなわち 標準的なアーク溶接を使用することが可能なのである ただし 4

溶接の際にインサートを過熱しないよう注意しなければならない 遷移インサートの界面で脆性の金属間化合物が成長してしまうおそれがあるからである 自動車分野の場合 アルミニウム / の遷移接合は特殊なケースにしか適用されていない 主要な要件は 約 300 の温度を超える時間を制限できるよう 入熱を十分に低く抑えることにより 脆性金属間相の形成を最小限に抑えることにある この場合 アルミニウムとアルミニウムの溶接を最初に実施するのが適正な慣習であると言える このような方法では との溶接を実行する時に より大きなヒートシンクを確保できるからである アルミニウムと 例えばやステンレス 銅などの他の異種材料とを組み合わせた二元金属遷移材料が市販されている 異種材料を接合し それによって二元金属遷移インサートを作製するのに使用される方法は 通常は固相接合プロセス ( 例えば圧接 爆発溶接 摩擦溶接 熱間圧接など ) であることが多い Al/Mg アルミニウム 温度 遷移接合による異種金属の溶接 ( 出典 :Shockwave Metalworking Technologies) 例として 爆発溶接によって作製したアルミニウム / 溶接用の遷移インサート (Triplate ) を上図に示す このインサートは三つの金属 ( EN AW-1050A EN AW-5083) のサンドイッチ構造で構成されている また TWI において別のタイプの遷移接合が開発されている Stir-lock TM 法は 鍛造 / シーム成形による接合法である Stir-lock TM 接合部の一方の側はリベット留めとほぼ同様である 二つまたはそれ以上のプレートの間に機械的インターロックを確保するため リベット頭部を皿孔に成形する 皿孔は より硬度の高い板材の方に作製される インターロック ( すなわち リベット頭部 ) を形成する材料は より柔らかく 成形しやすい板材と一体化することになる アルミニウム押出 考えられる Stir-lock TM 法の異種金属接合への応用 ( 出典 :TWI) 5

片面の Stir-lock TM アルミニウム - 遷移接合 : 溶接軌跡が連続している摩擦処理側 ( 左 ) と 予備加工した孔にアルミニウムを押出した反対側 ( 右 ) ( 出典 : TWI) 11.2.1.2 溶接前にコーティングした材料の融接 もう一つの選択肢が かなりの厚さのあるアルミニウムコーティングを他の材料に塗布するという方法である 例えば圧延接合やディップコーティング ( 溶融アルミニウムめっき ) アルミニウム板材の材表面へのろう接など 材のアルミニウムコーティングには多様な方法を適用することができる コーティング後は 部材をアルミニウム構成部品にアーク溶接することができる アークが材に衝突しないように注意しなければならない この場合の適切な処理には アークをアルミニウム部材の上に誘導し 溶融池から溶融したアルミニウムをアルミでコーティングした材上に流入させるといった方法がある もう一つのアルミニウムとの接合法は 材表面を銀ろうでコーティングするというものである その後 銀ろうのバリア層を溶け落ちさせないように注意しながら アルミニウムの溶加合金を用いて接合部を溶接する これらのコーティング法はどちらも接合部の最大の機械的強度を確保できるものではなく 通常は封止目的でのみ使用されることが多い 11.2.1.3 溶融 - ろう接アーク溶接プロセス 溶融 - ろう接による溶接プロセスでは アルミニウム母材と溶加材が溶融して溶接部を形成すると同時に 溶融したアルミニウム合金が板上面に広がってろう接による材との接合部を形成する 材は溶融しないため 金属間化合物の過剰な形成を効果的に防止することができる アルミニウムとのろう接 - 溶融溶接に使用する熱源は MIG アークでもよいし TIG アークでもよい ただし この目的には 電子ビームまたはレーザビームを使用することも可能である ( 第 11.2.2.1 節を参照 ) 溶融 - ろう接溶接では 材が溶融しないよう 適切に制御された安定したエネルギー入力が必要である アーク溶接にはコストが低いというメリットがあるものの パワー出力が通常は十分に安定しておらず 適用要件が増大することに留意した場合 溶接効率は満足のいくものとは言えない ただし パルス MIG 溶接法 ( 第 3.1.3.2 節を参照 ) を用いることで ある程度の進展が実現している また レーザ MIG ハイブリッド法 ( 第 10.3.1.4 節を参照 ) の適用により 結果に改善が確認されているのである ただし 現在までのところ 自動車業界における実用的な用途が特定されているのは コールド メタル トランスファ (CMT ) 溶接プロセスによって作製されるアルミニウム / の接合のみである a) アークろう接 一例として TIG アークの助けを借り Al-6%Cu ワイヤと非腐食性フラックスを用いて アルミニウム合金とステンレスの突き合わせろう接が実施されている アルミニウム側の境界面は溶接による接合部の特性を示しているのに対し 材側の境界面における特性はろう付による接合部のものである 6

コイル磁場電源 シールドガス ノズル鉄心 タングステン コイルブラケット 溶接電源 軽合金 アーク ワイヤ フラックス 電磁ハイブリッド TIG 溶接 - ろう付 ( 出典 :J. Luo et al.) 溶接線と材の境界面に 平均の厚さが 3~5μm の薄い金属間化合物層が形成された ( この厚さは 一般的に受容されている 10μm の制限値よりも小さい ) 継手の質を決定づける支配的な因子は 材での濡れ作用 ( すなわち 液体溶接ワイヤの広がり性能 ) である また アルミニウム合金 / 低炭素の接合部に縦の電磁ハイブリッド TIG 溶接 - ろう付法を適用することにより 一層の改善が実現した 溶接線における第二相粒子の分布がより均一になり 通常の TIG ろう接継ぎ手の場合よりも粒径がはるかに小さくなっていることが確認されている b) レーザ MIG( または TIG) ハイブリッド接合最初の試みとして 大型のスポットレーザの使用により MIG 溶接プロセスを安定させ MIG アークのエネルギー出力を一定に維持した また 先行の大型スポットレーザが亜鉛めっきを予熱する ( が 溶融させない ) ため 重ね接合のケースでは 材の最表面に対する液体アルミニウム合金の広がりが改善する 溶加材とアルミニウム母材の溶融には MIG アークエネルギー ( 主たる入熱 ) が使用される この場合 レーザエネルギーがろう付 - 溶融溶接において副次的な役割を果たすことになる 同様に レーザ TIG ハイブリッド溶接 ( 第 10.3.1.2 節を参照 ) も適用することができる レーザまたはアーク溶接だけでは異種金属の接合を作製することはできなかったが 処理範囲が比較的広いレーザ支援のハイブリッドプロセスを用いることで 明らかな欠陥がなく 適合に判定できる継手が得られた レーザビームトーチ 溶接線 溶接ワイヤ 溶融 ギャップ フラックス アルミニウム レーザ MIG ハイブリッド接合プロセスの原理 ( 出典 :C. Thomy and F. Vollertsen, BIAS) レーザ MIG ハイブリッド溶接を用いることにより 実験室において 構造用途とテーラード ブランク用途の両方に対するアルミニウム / 接合が適正に作製されている アルミニウム板材および板材は突き合わせ接合の構成に配置され このケースでは レーザビームはアルミニウム側に配置された 接合の際は アルミニウム板材の先端部を溶融させ 溶融した溶接ワイヤと一緒に アルミニウムとの間隙を埋めて を溶融したアルミニウムで濡らす MIG アークの主要な作業は 大きな溶融金属池を作製し 溶加材を溶融池に供給することである レーザビームをキーホールモードで動作させることにより MIG アークを安定させ 溶接速度 7

を上げることができる すなわち 入熱が低減するため 例えば過剰な金属間相が形成されたり 歪みが発生するといった過大な入熱によるマイナスの影響が回避されるのである レーザ MIG ハイブリッドによって溶接した EN AW-6016 と亜鉛コーティングした DC05 板の接合部 ( 出典 :C. Thomy and F. Vollertsen, BIAS) c) コールド メタル トランスファ (CMT ) 溶接 コールド メタル トランスファプロセスの原理は 第 3.1.3.6 節で詳しく説明されている このプロセスは 車体組み立てにも また アルミニウム / のテーラード ブランク製造にも商業的に使用されている CMT プロセスは とアルミニウムの接合から生じる問題の解決に MIG プロセスの持続的な改変から発展したものであり ほとんど電流がなくても物質の移動を生じさせることができる アルミニウムの母材がアルミニウム溶加材と一緒に溶融し 溶融物が亜鉛めっき材を濡らすのである 母材はこのろう付のプロセスでしか濡れず 溶融することはないが アルミニウム母材では常に割れが発生する ただし 溶接継目で割れが起こることはない アルミニウムと亜鉛めっきのコールド メタル トランスファ (CMT ) 溶接 ( 出典 : Fronius) 特殊なガスでシールドするコールド メタル トランスファプロセスは 異種金属の接合プロセスに求められる重大な要件 すなわち低入熱と優れた制御性を充足するものである 材をアルミニウムと接合する場合 溶加材とアルミニウムが亜鉛めっき板を濡らし 溶加材がアルミニウムと融合する 側においては アルミニウムを溶接されることで 結果としてろう付による継手が得られる ろう接用に 特殊なアルミニウム溶加材 (Al-3%Si-1%Mn) が開発されている 8

- アルミニウムのハイブリットブランク ( 出典 :voestalpine Europlatinen) 11.2.2 その他の融接プロセス ( ビーム溶接 抵抗溶接 ) アルミニウムをと接合するための抵抗スポット溶接 ( 第 5.1 節を参照 ) に対して詳細な評価が実施されたのは 明らかにこの接合プロセスの自動車産業での幅広い利用を念頭に置いたステップであった しかしながら 以下に示すように 実験室での試験はほとんど成功していない レーザ ( および電子 ) ビーム溶接は厳密に制御した局所的な入熱の可能性を提供するものであり 境界面における脆性金属間相の形成に対する制御を改善できる可能性がある 実用的な試験では成功が得られているが 現在のところ 連続的な適用は知られていない 業界の試験では 電子ビーム溶接法が適用され ある程度の成功を収めている ただし 次の考慮事項はレーザビーム溶接に限定的に適用されるものである 11.2.2.1 レーザによるアルミニウムとの接合 キーホールレーザ溶接 ( 第 4.1.2.2 節を参照 ) を用いてアルミニウムとを接合する実験的試験が実施されているが 成功は限定的なものであった レーザ溶接時にアルミニウム / の境界面で形成される金属間相の層の厚さを低減するためのいくつかのアプローチが科学文献に詳しく報告されている 様々なレーザ溶接構成や多様な加工条件を用いて現在までに得られている成果は あまり説得力のあるものではない スチールオンアルミニウムの重ね構成を用いたキーホール溶接モードで実施した試験の結果は 金属間化合物を低減させるよう溶接条件を変更した場合 溶け込み深さの不足やスパッタリング キャビティ形成など 不都合な影響も生じてしまうことを示すものであった 一方 熱伝導レーザ溶接 ( 第 4.1.2.1 節を参照 ) を用いた実験室での試験では 極めて有望な結果が明らかになっている 熱伝導レーザ溶接法を用いて異種材料を接合する場合のメリットは 高いプロセス安定性にもとづくものである この安定性により アルミニウムとの相互作用領域における温度制御を改善することができるのである a) レーザ伝導溶接 熱伝導溶接原理をベースに考えられるアプローチが デフォーカスレーザビームの使用である これを板上に誘導し 溶融を起こさずに局所的な加熱を生じさせるのである 熱は板を通して伝導させるため 隣接するアルミニウムでは局所的な溶融が起こる 溶融したアルミニウムが板を濡らし その後に固化することで金属接合が得られる このプロセスは重ね継手と突合わせ継手の両方に適用することができるが 最も適しているのは重ね接合である 実際には このアプローチにおける難しさは の溶融を防止できるように入熱を制御するという点にある ただし 少量でも実際に板の局所的溶融が起これば 金属間相が十分に小さいケースにおいて 比較的強力な接合が形成されることになる 自動車のホワイトボディ製造に使用される Zn 被覆板とアルミニウム板材の接合に この手法が適用されたことがある 境界面に少量の金属間相が形成されたが 適正なプロセス管理措置を適用することで 金属間粒子が継手強度に重大な影響を及ぼさないよう徹底することができる 9

溶接方向 アルミニウム自動車マニュアル レーザ レーザ は加熱されるが固体を維持 アルミニウム アルミニウム アルミニウム溶融物 重ね継手と突合わせ継手の両方に対するレーザ接合プロセスの概略図 ( 出典 : TWI) 上側に 下側にアルミニウムを使用すると 重ね接合を最善の形で作製することができる このような構成の場合 主に両方の材料の熱特性により 継手の品質が向上する アルミニウムを上側に使用した場合 アルミニウムの方が熱伝導率が高いため 影響を受ける境界面の面積がかなり大きくなる 熱は を加熱するよりも むしろアルミニウムに沿って流れる傾向があるからである を上側に使用すれば からアルミニウムへの熱伝導の制御を著しく向上させることができる b) レーザによるロール溶接プロセス レーザによるロール溶接プロセスは 2002 年に開発された その際の基本的な考え方は レーザ溶接プロセスの高い局所的入熱と短いプロセス時間を活用して熱サイクルを短縮し 脆性中間相の形成と成長を制御するというものであった また 加圧ローラにより 熱的接触と 板からアルミニウム合金板への迅速な熱の移動を確保することが求められた これまでに 亜鉛被覆した板とアルミニウム合金板を用いた試験が実施されている その結果 溶接したすべての接合部において金属間化合物の層が確認された ただし 金属間粒子の厚さが 10μm 未満だったケースでは 母材において引張試験の試料が不適合に判定されている ( すなわち 脆性金属間化合物の損傷作用は許容できるということである ) 溶接速度が継手の性能 ( 金属間相の層の厚さと引張剪断強さ ) に及ぼす影響のレベルは ロール圧力の場合よりも大きい CO 2 レーザヘッド 荷重 ローラー レーザビーム 平面ミラー板 スプリング ローラー レーザビーム アルミニウム板 台の移動方向 作業台 アルミニウム レーザによるロール溶接プロセスの概略図 ( 出典 :M. Kutsuna et al.) この方法の開発を進め 冷間成形によるアルミニウム - のハイブリッドブランクを作製した アルミニウム板と板を 5~10mm のオーバラップで収束させ 改修した冷間圧延装置のロールの間に誘導する 接合ロールの一つには溝がつけられているため ロールの力は主に重ね部に作用することになる 接合部をレーザを用いて活性化し 加熱した後 直ちに冷間圧延装置に通す 10

c) レーザ溶接 - ろう付によるプロセス アルミニウム自動車マニュアル 高出力半導体レーザを用いた予備試験の結果は アルミニウムのへの溶接 - ろう付の組み合わせが可能であることを示すものであった 例として アルミニウム / の突合わせ継手を以下に提示する アルミニウム / の接合部は AlSi12 溶接ワイヤを使用し レーザスポットを主としてアルミニウム合金板に誘導することにより CO 2 レーザと固体レーザのいずれを使用しても作製することができる ただし 遷移ゾーンには 比較的大きな脆性の金属間相が形成される レーザ溶接によるアルミニウム / の突合わせ継手 ( 出典 :BIAS) ろう付フラックス (Nocolok ろう付フラックス ) の使用により いくらかの改善が見られた 試料を重ね それと同時に重ね合わせたコーナーにろう材 (EN AW-4043) を導入した フラックスによってろう材の濡れ性が改善され ろう付幅が向上した また 接合境界面における Fe-Al 金属間相の層形成が抑制された ただし フラックスを使用する場合は ろう付の前にフラックスによるコーティングを塗布し ろう付後には残留物を取り除かなければならず 作業の効率や生産性が低減する傾向がある Zn ベースのろう付ワイヤを Zn 被覆と組み合わせて使用すると さらに優れた結果を得ることができた アルミニウム Zn ベースのろう付ワイヤと非腐食性フラックスを使用したアルミニウム / の レーザろう付による接合部 ( 出典 :Novelis) さらに開発を進めた結果 フラックスレスのレーザ溶接 - ろう付による継手が実現した AlSi12 溶接ワイヤを用いて 溶接ワイヤとアルミニウム材の間に通常の溶接を行う その後 溶融した溶加材が板を濡らすことにより 側にろう付による継手が作り出されるのである フラックスレスのレーザろう付 に望ましい継手の構成は T 継手であるが 重ね継手も実現が可能である このろう付法を用いて 溶融と電気の両方の亜鉛めっき板を接合することができる 最高で 4m/ 分のろう付速度において 望ましい結果が得られている 11

溶接 ろう付 フラックスレスレーザろう付 の原理 ( 出典 :Aleris) アルミニウム合金板を亜鉛めっき ( 亜鉛被覆 ) した板にフラックスレスレーザ溶接 - ろう付法で接合するため 亜鉛ベースの溶加合金 (Zn-2wt% Al) を使用したところ Al ベースワイヤの場合よりも良好な結果が得られた その理由は 亜鉛めっきと溶接ワイヤに同種の材料を使用したことと 亜鉛中でのアルミニウムの高い混和性にある 溶接方向 レーザ :4.4 KW Nd:YAG シールドガス ヒューム抽出ノズル ワイヤ 同軸溶接ワイヤ / 不活性ガスノズル レーザビーム アルミニウム板 板 アルミニウム板 レーザビーム 板 レーザ溶接 - ろう付によるプロセス ( 出典 :H.Laukant et al., Science & Technology of Welding and Joining, 10 (2005) 219) 充填した重ね溶接形状では レーザビームをアルミニウム板材に誘導した 従って 形成された溶接金属の組成では アルミニウムが豊富である 充填したフランジ型形状のケースでは レーザは二つのフランジの間に配置した 溶融するアルミニウム板の量はこちらの方が少ない いずれの形状においても 金属間相は レーザがに最も高いエネルギーを移動させるわずかな部位に限定される 金属間相が示している最大の厚さは 5µm である すなわち 継手の機械的特性は 使用されたアルミニウム母材 (ENAW-6016, T6) に対して最高 80% の引張強度と 40% の伸びを示している 12

溶接金属 溶接金属 金属間相 金属間相 レーザ溶接 - ろう付の継手 : 充填重ね形状 ( 左 ) と充填フランジ形状 ( 右 )( 出典 : H.Laukant et al., Science & Technology of Welding and Joining, 10 (2005) 219) このプロセスの重要なメリットは レーザ出力 ろう付速度 溶接ワイヤ速度を互いに関係なく自由に選択できるという点にある レーザビーム使用の場合と同様に ろう付プロセスも電子ビームを用いて実施することが可能である 11.2.2.2 とアルミニウムを接合するための抵抗スポット溶接 標準的な抵抗スポット溶接法を用いてとアルミニウム合金板を接合する場合 境界面に形成される非常に脆弱な金属間相によって継手強度が著しく低下する 実施可能な解決策による アルミ溶融めっきした板が得られている これは 特に従来の溶接機器を用いてアルミニウムと接合することを目的に 神戸製と日新製が開発したものである この板には母材とアルミニウム被覆層の境界面に窒素の豊富な層が形成されており 鉄とアルミニウム原子の相互拡散を効果的に防止する すなわち 境界面における脆性金属間相の形成が防止されるのである 結果的に得られる継手強度は 抵抗スポット溶接によるアルミニウム / アルミニウム継手とほぼ同等である 技術的な手段によって脆性金属間相の問題を克服するためのもう一つのアプローチとして 板を両端に配置させ 三層の重ね接合構成としてアルミニウム ( およびマグネシウム ) をに抵抗スポット溶接で接合した 溶接の際 ( 大部分はの内部で発生する ) 熱が十分にアルミニウム ( またはマグネシウム ) 板を溶融させるよう スポット溶接作業における電流と電極加圧力を制御した 電極加圧力によって封じ込められる溶融金属が表面を濡らすことで 二つの材料の境界面に接合を形成するものと予想した Al または Mg 抵抗加熱によるアルミニウム ( またはマグネシウム ) との接合 ( 出典 : TWI) 異なる電極加圧力と溶接電流を用いて実施した実験的試験の結果は とマグネシウム合金の境界面に何らかの接合を形成できることを示唆している ただし 接合が確保できるのは あらかじめ設定した電極加圧力において中央のマグネシウム板のみを溶融させるように溶接電流を調整した場合だけであった また 剥離試験を実施したところ ナゲットの中心部において重篤なポロシティと凝固割れが生じ 溶接部は弱く脆性の強い界面不具合を示した 同じアプローチを適用してアルミニウムをと接合したところ の表面層も溶融したため 境界面に 13

金属間相の連続層が形成された 剥離試験を実施したところ 溶接部には 境界面において強度の不足と脆性に関わる形態での不具合が生じた 二回目の集合的実験では アルミニウム / の遷移片を用いてアルミニウムをに接合した このケースでは 従来の抵抗スポット溶接の場合と同様に 側で溶接ナゲットが形成された また 発生した熱により 遷移片と外側のアルミニウム板の境界面においてアルミニウムが溶融した Al Al/ のインサート Al Al/ のインサート 遷移材料を用いたアルミニウムとの抵抗スポット溶接 ( 出典 : TWI) 継手の内部におけるアルミニウムのヒートシンク効果が が完全に溶融してアルミニウムと接触するのを防止する ただし の境界面において収縮欠陥が確認された ナゲットのこの部分は最後に凝固するからである また 遷移片の内部では 境界面において金属間相が形成された 結果的に 得られた接合部は 剥離試験において 遷移材料の薄いアルミニウム層から栓抜けによる脆性に関わる形態での不具合を生じた ただし ある程度の継手を実現することは可能であった 11.2.3 固相接合プロセス 固相接合プロセスは 一般に 異種金属の接合に適合性が高い 回転摩擦溶接 ( 第 7.1.1.1 節を参照 ) 摩擦スタッド溶接 ( 第 7.1.4 節を参照 ) などの摩擦溶接プロセス 超音波溶接 ( 第 7.3 節を参照 ) 電磁パルス溶接 ( 第 7.2.4 節を参照 ) は 特定の自動車構成部品の製造に日常的に使用されている 従って 次節以降では 摩擦攪拌溶接技術に関連するいくつかの新しい進展のみを詳しく取り上げるものとする 11.2.3.1 摩擦攪拌溶接 線状の摩擦攪拌溶接 ( 第 7.1.2.1 節を参照 ) は アルミニウムとの接合に適用することができる この場合 回転ピンをアルミニウムに押し込む その後 回転ピンをの接合面に向かって押していくと 回転ピンの摩擦動作によって酸化被膜が接合面から機械的に取り除かれる 回転ツールのショルダー部の摩擦から発生する熱により 可塑化状態になったアルミニウムが 結果的に活性化したの接合面に接着する すなわち とアルミニウムの接合が確保される 回転ピンは より柔らかいアルミニウム側に押し込まれ とは接触しないことから 回転ピンにはほとんど摩耗は見られない 回転ピンを標準的な位置 ( 境界面の中心部付近 ) に挿入したケースでは 回転ピンの過剰な摩耗により 継手を形成することはできなかった 14

横断方向 前進側 回転ツール 回転ピン 再処理側 ショルダー 回転ツール 塑性流動ゾーン 推力 回転ピン 回転ピンの位置を示す概略図 ( 出典 :K. Kimapong and T. Watanabe) とアルミニウム合金の境界面には 金属間化合物は確認されなかった ただし 回転ツールのショルダーによって付加的な熱が発生するため 温度が高くなる摩擦攪拌溶接の上部領域では 少量の金属間化合物が観察された 11.2.3.2 摩擦攪拌溶接 摩擦攪拌スポット溶接技術 ( 第 7.1.3.1 節を参照 ) のいくつかの派生法は アルミニウムとの接合に適合性が高い この技術が初めて使用されたのは マツダ MX-5 スポーツカーのトランクリッドとボルトリテーナーの接合を試みた 2005 年の密閉用途であった とアルミニウムの摩擦攪拌スポット溶接 (MX-5 のトランクリッドとボルトリテーナー ) ( 出典 : マツダ ) 亜鉛めっきしたは 二種類の金属の接触から生じる異種金属接触腐食を防止するのに役立つ 接合ツールによって亜鉛めっきが脇に押しのけられ その後 熱によって二つの金属が接合される 亜鉛の残留層が二つの金属の接合部位を取り囲む金属上にとどまることにより 金属の局所的な腐食を防止することができる また 線状の摩擦攪拌溶接プロセス ( 第 7.1.2 節を参照 ) の一つの派生法も 連続するアルミニウム / の構造継手を形成するのに適用することが可能である 高圧での上に重ねたアルミニウムの上部で回転ツールを動かすことにより とアルミニウムの安定した金属接合が確保される この技術は 実際に アルミニウム / のサブフレームの製造に使用されている 15

回転 ツール 圧力 アルミニウム アルミニウム 金属接合 アルミニウムとの摩擦攪拌溶接 ( 出典 : ホンダ ) 11.2.3.3 レーザアシスト型摩擦攪拌溶接 摩擦攪拌溶接によってアルミニウム - のハイブリッドなテーラードブランクを作製しようという試みにおいて 材料の流動抵抗を低減させるため レーザビームを用いてブランクを予熱した ダイオードレーザスポットは ツールの溶接方向の前に直接配置させた その結果は レーザアシスト型摩擦攪拌溶接によって約 1mm の板厚に接合した / アルミニウムのテーラード ハイブリッド ブランクの高い可能性ろうを示すものであった 同時に 溶接速度も 2000mm/ 分まで大幅に上昇させることができた 断面 I 断面 II 上面図 断面 III 断面 (I~III) および上面図で示した溶接継目の外観 ( 出典 :M. Merklein et al., University of Erlangen) 11.2.4 ろう付およびはんだ付 ろう付 ( 第 6.1 節を参照 ) およびはんだ付 ( 第 6.4 節 ) には 他の溶融金属接合手法に比べて著しいメリットがある 融点の低いろう付合金やはんだを使用することで 脆性の金属間化合物の生成を大幅に阻害することができる このため 異種金属だけでなく 時には非金属 ( 例えばメタライズセラミックなど ) もアルミニウムに接合することができるのである セラミックを金属に接合する場合 接合プロセスを簡易化するため ろう付の前に 薄い金属層をセラミック部の上に蒸着させることが多い 16

11.2.4.1 ろう付 しかしながら 炉内ろう付では 必要な短時間のプロセスサイクル ( 高速加熱 / 冷却 ) を確保するため いくつかの問題が発生する トーチろう付に関連する具体的な問題には 例えば高いレベルの技術的技能が必要になるという点がある アークと 特にレーザによるろう付は こういった問題を解決できる可能性を提供するものである アルミニウムは 例えばニッケルやチタン また 多少の制約は伴うが などといった他の金属に容易にろう付することができる また 形成される金属間相の層も薄いもののみである ただし マグネシウムや銅 すなわち 状態図が低共晶融点を示す金属とアルミニウムをろう付する場合は はるかに粒子の大きな脆性金属間相が形成される このため アルミニウムと Mg や Cu のろう付は実質的には不可能である ろう付プロセスでは 溶加合金と適正なフラックス剤を使用しなければならない 例として アルミニウムをステンレスにろう付する場合の適正な選択肢には次のようなものがある - NOCOLOK フラックスと Al-Si 溶加合金 もしくは - CsAlF 複合フラックス ( 融解範囲は 420 ~480 ) と 85%Zn-15%Al 溶加合金 NOCOLOK フラックスを用いたアルミニウムとステンレスの接合は 自動車産業以外の非構造継手のため 多様な大規模用途において実施されている NOCOLOK フラックスと Al- Si ろう付合金を併用する場合でも NOCOLOK Sil フラックスを使用する場合でも良好な結果を得ることができる フラックスが溶融し 酸化物が取り除かれた後で 薄い金属間相が形成され この層がとアルミニウムの冶金学的接合として機能するのである 脆性金属間相の厚さはろう付の時間と温度の関数である 従って 迅速に加熱し 最高温度での保持時間をごく短くした短時間のろう接サイクルが必要になる 11.2.4.2 はんだ付 はんだ付は アルミニウムと他の金属やセラミック材料の接合を含め 多様な材料の接合に適合性が高い 従来のはんだ付では 鉛やスズベースのはんだのほか 銀や銅 ニッケル あるいは接合しようとする材料のどちらかよりも低い温度で溶融する他の貴金属や合金が使用される はんだ合金が接合しようとする材料の表面に融合することにより 二つの材料のどちらも大きく溶融させることなく 冶金学的接合を形成するのである 空気中ではんだ付を行う場合 フラックスを用いて酸化物の表面層と反応させ 接合部位を遮蔽する 異種材料のはんだ付を行う場合 適切なはんだ付のシステムを選択する際には 次の側面を考慮しなければならない はんだと両方の境界面との組成上の適合性 二つの材料間における熱膨張係数の違い 融点の相違 アルミニウムは熱膨張係数が高いため ろう付よりもかなり低い温度で行われるはんだ付は 多くの用途において望ましい解決策になる場合がある EWI により 異種金属に対する先進的なはんだ付の技術が開発されている EWI の SonicSolder は 超音波によるはんだ付プロセスとの併用によって機能する 超音波はんだ付には フラックスの使用量が少なく 鉛を含まないはんだ付によって 濡らしにくい材料を接合する能力が得られるというメリットがある 鉛を含まない Sn-Al の二元はんだ合金によって アルミニウムや銅 チタン ガラス セラミック および接合の難しいその他の材料を適正に接合することができる 11.2.5 機械的接合プロセス 近年まで 機械的接合はアルミニウムと製構成部品の接合に使用されていた主要な技術であった 全体として 自動車産業で使用されているあらゆる多様な機械的接合 ( 第 8 節を参照 ) も異種金属の接合には適している しかしながら 材料の組み合わせ ( 接合する両方の材料の強度と延性 ) に応じて いくつかの制約が存在する場合がある 特に 成形や切削をベースとする機械的接合手法 ( 例えばクリンチングやセルフピアスリベット フロードリルスクリューなど ) では このような制約が大きい 17

アルミニウム 2.45mm 1.4mm アルミニウムとのクリンチング ( 左 ) およびセルフピアスリベット留め ( 右 ) ( 出典 : ベルホフ ) また 設計と組み立て工程の両方において 熱膨張による影響を考慮しなければならない ( 例えばラッカーで被覆したホワイトボディの焼付硬化時など ) その後の熱影響により 剛性の構造に機械的接合したアルミニウム製の車体パネルが重大な歪みを生じる場合がある 熱膨張係数の違いを補償するための適切な措置を講じなければならない 接着剤 アルミニウム 1.2mm 1.0mm アルミニウム 1.2mm 接着剤 アルミニウム Audi TT におけるアルミニウムとの接合技術 ( 出典 : アウディ ) 大部分のケースでは 機械的接合手法を接着剤による接着と組み合わせることにより 継手の静的強度や疲労強度を高め 異種金属間の接触によって生じる継手の耐食性の劣化を防止する 11.2.6 接着接合 接着接合 ( 第 9 節を参照 ) は 異種材料に対する標準的な接合技術である 先に述べたように 接着接合も異種金属の接合における異種金属接触腐食の緩和を目的に使用されることが多い 接着剤は両方の金属に親和性のあるものでなければならない また 特殊なケースでは 適切な電着プライマーの塗布を含め 両方の金属に何らかの形態の表面処理を行わなければならない場合もある さらに アルミニウムを例えばやマグネシウムなどの別の金属に接合する場合 それぞれの熱膨張係数の違いが重大な懸念になる 接着接合は 自動車産業においてをアルミニウムに接合するための重要な技術である しかしながら 熱膨張係数の違いによる結果として これまで均一な設計において機能してきた剛性の接合に対し 今日では何らかの柔軟性が求められる場合がある 弾性による接合法では 凝集破壊や接着破壊を起こすことなく 接着剤によって接合した継手に必要な量の柔軟性を確保することができる 弾性接着剤の特性により 熱膨張係数の異なる材料を適正に接合し 使用時における強度と完全性の両方を維持することが可能である また これらの種類の接着剤は 接合のリードスルーを最小限に抑制するのに役立つ すなわち 表面における接合線が外観的に目立つのを防止するのである 18

弾性接合は車両の設計にとって新しい概念ではない ポリウレタンやシラン変性ポリマー製剤など 多様なタイプの接着剤が市販されており トラックやバス用途において実績が証明されている 11.2.6.1 ヘムフランジ接合 アルミニウムとの密閉パネルの接合では ヘムフランジ接合が標準的な解決策である アルミニウム製の外側パネルと製の内側パネルの異種金属接触腐食や熱変形に関わる問題を防止するため ホンダは最近 新たに開発した次の三つの技術を公開した - 3D 抱え継目 ( ロックシーム ) 構造の採用 この構造では 板とアルミニウム製パネルが一緒に積層され 2 回縁曲げされる - 内側パネルへの極めて耐食性の高い材と 異種金属接触不良を防止するため 接着剤によってギャップを完全に充填する新しいフランジ形状の採用 - 弾性係数の低い接着剤と 熱変形の抑制を目的に最適化した継目位置の採用 従来技術 新しい形状 封止剤 封止剤 接着剤 接着剤溜まり アルミニウムの外側パネルとの内側パネルを接合するために最適化したヘムフランジ接合法 ( 出典 : ホンダ ) 11.2.7 アルミニウムとマグネシウムの接合 アルミニウム構成部品とマグネシウム構成部品は 興味深い新たな軽量ソリューションを提供してくれる / アルミニウム合金のような異種接合のケースでは 融点の低い方の金属のみが融解する二つの金属の接合境界面で固相 / 液相反応を実現することは可能であるが 融点の差が小さいため この方法をマグネシウム / アルミニウム合金の接合に適用することは難しい マグネシウムとアルミニウムを接合するため アーク溶接や抵抗スポット溶接を用いて数多くの試みが行われてきたが これらは例外なく失敗に終わっている 二つの金属の反応によって溶融域に脆性の金属間化合物が形成され 溶接が文字通り崩壊してしまうのである ただし 実験室でのレーザ溶接の試みにより 重ね接合において溶融金属の溶け込み深さを制御できる可能性が実証されている 19

レーザビーム 金属間化合物の層 溶融金属 重ね継手のレーザ溶接 ( 出典 :R. Borrisutthekul et al., Science & Technology of Advanced Materials 6 (2005) 199) エッジラインを溶接する重ね継手により 下部プレートに対して求められる溶融金属の浅い溶け込み深さを確保し 二つの金属間の反応 すなわちより大きな金属間化合物の形成を効果的に抑制できることが確認された また マグネシウム合金とアルミニウム合金の接合に対する摩擦攪拌溶接プロセスの基本的な実現可能性を実証するため ある研究が実施されている 初期の結果は有望なものであった 二つの材料は可塑化はするが 溶融しないからである 継手は複雑な機械的連動機構であり 金属間化合物形成の形跡は確認されていない マグネシウム合金 (AZ91) とアルミニウム合金 (EN AW-2219) の摩擦攪拌溶接 (FSW) ( 出典 : TWI) マグネシウムと他の材料を接合する最も有力な方法は 機械的締結システムである ( 一般的にはマグネシウム部にあらかじめ作製した孔を用いた ) 接着接合と組み合わせて適用されることが多い ただし 近年では セルフピアスリベットやクリンチング方が適用され かなりの成功を収めている 最も大きな難しさは 周辺大気温度ではマグネシウムの延性が十分でないという点にある このため 継手を作製する前に 少なくともマグネシウム構成部品を加熱しなければならない このプロセスの産業化を成功させるには 許容可能なレベルの短時間で適正な温度条件を確保できる工作機械の開発が必要である 20

アルミニウム合金 ( 厚さ 1mm) とマグネシウム合金 ( 厚さ 3mm) のセルフピアスリベット ( 左 ) およびクリンチング ( 右 ) ( 出典 : TWI) 11.3 アルミニウムとプラスチックおよび複合材の接合 以下に述べる考慮事項は アルミニウムと繊維強化複合材の接合に適したプロセスに特化したものである アルミニウム - プラスチック継手は 通常は構造接合でないことが多い 実際に 大部分のケースでは 接着材による接合と 特にこの目的のために考案された機械的接合法が適用されている もう一つ別の最も興味深い可能性は 射出成形プロセスにおいて 適切な形状にしたアルミニウム構成部品を直接接合するというものである ただし この方法については本節では扱わないものとする 射出成形プロセスによる金属プレス加工とプラスチック構造の組み合わせ ( 出典 :Lanxess) 11.3.1 アルミニウムとプラスチックの接合 接着剤による接合は おそらく 最も安価に恒久的な接着が得られる接合法である 接着接合では 特にプラスチック部品を他の材料と接合するために処方されている市販の材料が使用される 11.3.1.1 機械的締結具による接合 特に限られた回数の分解を必要とする組立品の場合 機械的締結具 ( 例えばネジやボルト リベットなど ) が最も安価で信頼性が高く 一般的に使用されている接合法である その部品が定期的に分解されることになる場合は プラスチックへの金属インサートを検討することが望ましい リベットによって確保されるシンプルで自動化しやすい設置プロセスは 特にプラスチックと金属薄板の継手に適用することができる 21

熱可塑性部品用のインサート : ねじ込み ( 左 ) もしくは超音波溶接による接合 ( 右 ) ( 出典 :Tappex Ltd.) 動きが制限されるプラスチックと金属の一般的な大型組立品では 大きな圧縮もしくは引張応力が発生する可能性がある プラスチックの膨張率は 4 倍から 6 倍高いからである このような問題を避けるため 温度の影響を受けやすい設計では プラスチック部品にネジ用の長穴を使用することが望ましい はめ合い部品の形状に設計されているスナップフィットは 極めて安価で 迅速かつ効率的な接合方法を提供する プレスフィットは 組立品における過剰な応力を防止できるよう 細心の注意を払って設計しなければならない ハイブリッド自動車のフロントエンド組立品を作製するため 特殊な機械的方法が考案されている このアプローチは 金属板に突出する環状のカラーを形成し その後にこれらのカラーをプラスチック部品に冷間圧縮するというものである 金属製カラーのアンダカットが鉤爪として作用し 金属薄板と成形したプラスチックをしっかりと組み合わせる カラー接合によるアプローチは ナイロンやポリブチレンテレフタレート (PBT) ポリプロピレンなど いくつかの強化材料や非強化材料に効果を発揮するが これまでのところ 大部分の作業は 30% のガラス充填ナイロンの 6 および 66 を用いて行われている 金属製のカラーをプラスチックに圧入する際 重大なクレージングや割れが起こることはない カラーのパンチング - 成形 カラー圧入 顕微鏡写真 金属薄板 完成したハイブリッド アンダカット プラスチック部品 金属薄板から穿孔したカラーのプラスチック部品への冷間圧縮 ( 出典 :BASF) また クリンチングも 金属と短繊維強化ポリマーの接合に有望な技術であると考えられている 材料に対する熱の影響がなく 表面仕上げに求められるプロセス要件が少ないからである 適切なクリンチングプロセスの設計における重要な課題の一つは これら二つの材料の剛性 塑性挙動 成形限界におけるかなり大きな違いを考慮しなければならないという点にある 11.3.1.2 レーザ支援による金属とプラスチックの接合 レーザ支援による金属とプラスチックの接合は 金属 ( 例えばやチタン アルミニウム合金など ) とプラスチック ( 例えばポリエチレンテレフタレート [PET] やポリアミド [PA] ポリカーボネート [PC] など ) の数多くの組み合わせに適用が可能である レーザビームが重ね継手のプラスチック側あるいは金属側から金属を加熱し 継手境界面付近のプラスチックを溶融させる 重要なポイントは ( 直径が 0.5mm 以下の ) 小さな気泡の形成である これらの気泡は溶融したプラスチック内に高圧を誘発する このため 溶融したプラスチックが金属表面に押し出される 表面形状のくぼみにおける投錨効果 物理的なファンデルワールス力 酸化被膜を通じた化学的接合により 強力な継手が作製される 22

レーザビーム プラスチック金属 熱伝達 急速な膨張による蒸気圧の上昇 プラスチック 熱伝達 溶融部位 フロー 金属 気泡 気泡 レーザによる加熱ゾーン ( 拡大図 ) レーザビーム 高温気泡の生成高圧 溶融物の流動による緊密な接合 レーザ支援による金属とプラスチックの接合メカニズム ( 出典 :S. Katayama, Osaka University) プラスチック板と金属板の表面をアルコールで浄化する この他の表面処理は不要である プラスチック板の透明度が 60% を超える場合は これを上側に配置してもよい 透過したレーザビームは吸収されて金属表面を加熱する このため 金属から伝えられた熱によって接合部近くのプラスチックを溶融させ 気泡を形成することができる プラスチック板の上面を清潔かつ低温に維持するため シールドガスを使用することが望ましい 不透明のプラスチック ( 例えばレーザ吸収率の高いガラス繊維強化プラスチック [GFRP] や炭素繊維強化プラスチック [CFRP] など ) の場合は 金属薄板を上側に配置させる 金属に厚みがある場合は 部分溶け込み溶接を作製して 継手境界面に近いプラスチックを加熱することが望ましい 重ね継手に近い金属境界面は溶融しないが 金属板上のプラスチックが溶融し 必要な小気泡が形成される a) 透明プラスチック LD ビーム出力 P:170 W 波長 λ:807nm プラスチック :PET シールドガスラインの形状 N2:35 l/min 溶接方向 溶接速度 v:1.0-3.5mm/s 焦点位置 f d=0 mm 金属 : タイプ 304 b) 不透明プラスチック ファイバレーザ (λ:1.07μm) レーザ出力 P:2 kw 移動速度 v:10mm/s 金属 (AISI 304) N 2 ガス :40 l/min プラスチック ( 繊維強化 PA) レーザ支援による金属とプラスチックの接合 ( 出典 :S. Katayama, Osaka University) 11.3.2 アルミニウムと複合材の接合 複合材は高分子マトリクス樹脂で構成され 繊維強化材を組み合わせ材料に接合するのに用いられる 繊維の種類 体積分率 長さ 積層によってその機械的特性が決定づけられる 複合 23

材は 面内および面外の配向によって異なる複雑な方向上の機械特性を示す場合がある 繊維方向では 引張強度や弾性率 降伏強度などの特性がかなり高い これらは樹脂マトリクスと繊維の接着の度合いによって決まる 繊維に対して垂直方向では 特性はマトリクス樹脂だけの場合の特性に近くなる 複合材はマトリクス樹脂をベースに二つの主要な区分に分類することができる 熱硬化性複合材と熱可塑性複合材である 熱硬化性の高分子マトリクス複合材は 加熱されると硬化し 架橋する 加熱によって再形成することはできない その例には ガラス繊維か炭素繊維で強化したエポキシ アクリル ウレタンなどの樹脂がある 一方 熱可塑性マトリクスの複合材は加熱によって軟化し 加熱されるたびに継続的に軟化する やはりガラス繊維や炭素繊維で強化したポリプロピレンやナイロン樹脂などがその例である これらは 何らかの形態の熱や圧力を使用することで 成形したり溶接することができる 熱硬化性と熱可塑性のどちらの複合材も 積層した含浸繊維構造になっている場合がある 一般的な積層炭素繊維複合材では 体積で 50~60% の強化材を含有している可能性が考えられる 特に 熱可塑性複合材の場合 短繊維または長繊維のランダム配向強化材をバルクに混合し その後に成形するという形状を取ることが多い これらは体積で 50% もの強化材を含有している場合があり このようなケースでは 樹脂量の多い表面を除いて 擬似等方挙動を生じさせることになる アルミニウムと熱硬化性または熱可塑性複合材の継手は 一般的に 接着接合か もしくは接着接合と機械的締結具の組み合わせによって確保される ただし 複合材パネルとアルミニウムの接合にはいくつかの問題がある 設計においては 接合領域における複合材の機械的異方性を考慮に入れなければならない 剪断負荷の加わる継手では 接合面に最も近い繊維を 接合部に沿って 予想される最大剪断方向に配向させることが望ましい すなわち 予想される荷重の負荷に応じて 繊維の方向は接合部の長軸または短軸と平行になる場合がある 接合部に最も近い層は 最大応力方向において最高の強度性能を確保できるよう配向させることが多い 接合面における複雑な負荷に対処するため バイアスを加えた繊維層を最も近い位置に配向させ 平均的な方向応力分布を確保してもよい また 熱的不整合を考慮することも必要である エポキシベースの部品における熱膨張係数は アルミニウムの熱膨張係数とかなり整合性が高い これに比べて ガラス繊維ポリプロピレンのような熱可塑性複合材では熱膨張係数が高くなるため 接合線において熱ひずみが発生する可能性がある また 炭素繊維複合材がアルミニウムと接触するケースでは 異種金属接触腐食が懸案になる このような場合 接着剤が異種金属接触腐食のバリアになるとともに 電着層によってさらに付加的な防護を確保することが可能である ただし ( 例えばリベット留めのための ) 貫通孔には特別に注意を払わなければならない 11.3.2.1 遷移継手 遷移継手は 金属と複合材を接合するための重要な補助手段である 通常は 部品製造の際に 金属エレメントが複合材に組み込まれる その後 従来の接合法を用いて金属部品への取り付けが可能になるのである アルミニウムと炭素繊維強化複合材の遷移構造を実現するため 多様なコンセプトに対する評価が行われている 例えば Stir-lock TM 手法 ( 第 11.2.1.1 節を参照 ) を用いて 遷移によって強化した継手を作製することができる 複合材を使用するための骨組となるステンレス製のメッシュを 摩擦溶接によってアルミニウムエレメントに接合するのである 24

Stir-lock 法によるステンレスメッシュ強化材とアルミニウムの接合 ( 出典 : TWI) もう一つの可能性が 小型化したループ接続の平行な配置を特徴とする ワイヤ のコンセプトである このワイヤは炭素繊維とチタンワイヤのテキスタイルで構成され アルミニウム板に接合される 炭素繊維ループは一方ではチタンワイヤのループに通され 反対側では チタンワイヤのループがアルミニウム構成部品に接合される フォイル のコンセプトは ハイブリッド積層板として特性付けることができる フォイルは炭素繊維で強化したプラスチック層で構成され チタニウムフォイルと互い違いに配置される その後 積層板のうち チタニウムフォイルのみで構成されている部位をアルミニウムに溶接するのである CFRP- アルミニウム構造を接合するためのチタンワイヤ ( 左 ) とフォイルコンセプト ( 右 ) ( 出典 :Fraunhofer IFAM) レーザビーム溶接プロセスを用いてアルミニウムをチタンに接合する場合 どちらの接合構成も 原則的には荷重を支持する炭素繊維強化プラスチック - アルミニウム構造の作製に適していると言える 11.3.2.2 接着接合 熱硬化複合材は 表面の濡れ性が高いため 熱可塑性複合材よりも接着剤で容易に接合することができる エポキシ ウレタン アクリル接着剤は いずれもアルミニウムとの接着接合に使用することが可能である 特にエポキシ接着剤をエポキシベースの複合材と併用する場合は 優れた信頼性を発揮する どちらも流動特性が類似しているからである 質の高い接着接合を実現するためには 両方の材料の表面を慎重に前処理することが不可欠である 複合材による構成部品に必要な表面処理は 複合材のタイプと使用する接着剤に応じて異なる 多様な複合材に対して推奨されている前処理には ( 緩んだ表面の汚れや油類を除去するための ) 溶媒での拭き取り洗浄や研磨作業などがある 研磨は 複合材表面の繊維を損傷しないよう 慎重に行うことが望ましい ケースによっては 接着剤を塗布する前に プライマーを使用して複合材を被覆しなければならない場合もある 熱可塑性複合材は接着剤との濡れ性が十分でないため 何らかの形態の表面活性化が必要になることが多い この場合の活性化は 表面を酸化して濡れ性を高めるため 火炎処理の場合もあれば コロナやプラズマによる処理の場合もある また プライマーでも濡れ性を改善することができる ポリマー表面が接合に許容できる状態になれば システムを接着剤で接合して 25

もよいし リベット接合してもよい 熱可塑性プラスチックと金属を溶接接着するための取り組みが行われている これまでのところ これらの取り組みの大部分はヒートシール接合によるものであり 接着剤も組み込まれる場合がある ただし この技術は明らかに 今後注視していかなければならない領域である 複合材をアルミニウムに接着接合するためのもう一つの可能性は プライマー ( できれば電着プライマー ) を塗布したアルミニウム構成部品の使用である その後 プライマーと複合材の間に接合を形成するのである その場合 通常は 連結が弱いのはプライマー / アルミニウムの境界面であると想定して継手を設計することができる 適正な接着が確保された複合部材との接合部とは 接着剤による接合部ではなく 複合材に破壊が起こるような接合部である 一般に 層間剪断破壊の現象下では 最初のプライと 2 番目のプライの間に積層複合構造の破損が生じる このような状況では ( 材料が組物に組まれていない限り ) 樹脂だけでファブリックの層が接合された状態に維持され 二つの層の間の樹脂に欠陥が発生すると これがファブリックの境界面に沿って伝播していくことになる 複合材料と金属の間を接着接合と機械的インターロックで組み合わせることにより 機械的性能を強化した接合部を作出することができる 最適化した機械的インターロックのための金属表面形状を作製するには 多種多様な選択肢がある 例として Surfi-Sculpt 表面形状は TWI が開発した 専有権のある Comeld 法のベースになっている Surfi-Sculpt 表面処理 ( 上 ) と二段ステップによる Comeld 継手 ( 下 ) ( 出典 : TWI) Comeld 継手は 様々な加工処理手法を用いて 極めて多様な金属と複合材から作製することが可能である 上記に示した継手では 複合材のマトリクスを接着剤として使用した ただし 複合材と金属の間の境界面に追加の接着層を使用してもよい 11.3.2.3 機械的締結具 機械的締結具は 接着剤との組み合わせによる多くのケースにおいて アルミニウムとプラスチックや複合材の接合にしばしば使用されている 様々な標準的機械接合法 ( 例えばステンレスやアルミニウム製のリベット ツーピースボルト ブラインドファスナーなど ) では アルミニウム部品と複合材部品の両方に予め穿孔した孔が使用される 適用可能な機械的締結具を指定する際には 次のいくつかの要素を考慮しなければならない 接合される材料中での締結具の熱膨張 ( アルミニウムと複合材に対する締結具の熱膨張の違い ) 穿孔が構成部品の構造的完全性に及ぼす影響と 荷重下の締結具によって生じる可能性のある繊維の層間剥離締結具とアルミニウム / 複合材の間に水 ( 湿気 ) が侵入する可能性アルミニウム / 複合材の接合に起こりうる異種金属接触腐食の影響 複合材のための締結具は 大きなヘッド部を有しており より大きな表面部位に荷重を分布させることにより 複合材の圧座を低減できるものであることが望ましい また 締結具はでき 26

るだけ緊密に嵌合し 切りくず穴におけるフレッティング影響を低減できるものであることが望ましい 締まり嵌めによって複合材の層間剥離が起こる場合がある このような欠陥は防止することが望ましい 締まり嵌めが必要な場合は 特殊なスリーブを装着した締結具によって 切りくず穴に破損が起こる可能性を抑制することができる 接着剤を用いて締結具を所定の位置に固定することにより フレッティングを軽減することも可能である また 炭素繊維強化複合材では 締結具の収縮と膨張によって締め付け荷重に変化が生じる可能性がある 穿孔や機械加工は複合材を破損させる 一つの構造において認められる欠陥 ( 例えば層間剥離や樹脂のエロージョン 繊維の破断など ) の数と大きさは用途によって異なる 例えば 炭素繊維複合材の用途では 層間剥離は繊維破断よりもはるかに深刻な欠陥である 適用可能な穿孔手法とツールは 樹脂 樹脂内の繊維 ( または繊維の組み合わせ ) のほか 樹脂の構成方法によって決まる 炭素繊維複合材を切断すると 繊維が露出するため 水分を吸収して材料を弱らせるおそれがある 局所的に封止剤を使用することで水分の吸収は防止することができるが この場合 プロセスが複雑になるとともに 複合材の繊維と締結具の間の電気的導通の維持が妨げられる また アルミニウム製の締結具を使用した場合 炭素繊維複合材が異種金属接触腐食を起こす場合がある この場合の解決策は 締結具に適切なコーティング剤を塗布することである また もう一つの可能性として アルミニウム製締結具をチタン製やステンレス製の締結具に置き換えるという方法がある それぞれが独自に孔を形成する接合エレメント ( 例えばフロードリルスクリュー セルフクリンチング機能エレメント セルフピアスリベットなど ) の場合も 複合材における予備穿孔と同様の問題について考慮しなければならない 切断された繊維によって荷重支持能力が低減するのである また 自己切断型の接合エレメントと繊維強化した複合材の間の摩擦影響 導入される軸力によって 層間剥離やその他の破損影響が生じる さらに 複合材には圧座が発生している それぞれの破損メカニズムと適切な対処策については 現在も調査が行われている それでもやはり これらの種類の機械的接合プロセスには 将来の軽量自動車の設計に向けて高い関心が寄せられている アルミニウム合金板 (EN AW-6181A) とガラス繊維強化複合材 (a c e f) および ABS プラスチック (b d) の接合に使用されたセルフピアスリベット ( 出典 : パダボーン大学 ) 繊維強化熱可塑性合金板 (2mm) と 3mm のアルミニウム合金板 (EN AW-6181A) を接合している孔およびねじ山形成型ねじ ( 出典 : パダボーン大学 ) 27

延性のアルミニウム部品を下部層に使用すると すなわち接合エレメントが最初に炭素繊維複合材を切断するように配置させると 通常は接合が容易である 従って アルミニウム板を炭素強化複合材の上に配置させる接合部において アルミニウム製のカウンターピースを使用するというのは興味深いアプローチである 接着接合し RIVTAC タック硬化によって固定した CFRP/ アルミニウムハイブリッド特性の接合部 ( 左 ) と フローフォーミングスクリュー ( 右 ) をアルミニウムのカウンターピースと併用した接合部 ( 出典 : ベルホフ / フォルクスワーゲン ) カウンターピースコンセプトの開発をさらに進めたのが パダボーン大学が提唱する案である このケースでは 複合材側に ソリッドのセルフピアスリベットが適切な閉止エレメントとともに使用される ソリッドのセルフピアスリベットを閉止エレメントと併用する接合の原理 11.3.2.4 摩擦スポット溶接 ( 出典 : パダボーン大学 ) 摩擦スポット接合 ( 第 7.1.3 節を参照 ) は アルミニウム合金と高性能熱可塑性複合材を接合することによってハイブリッド構造を作製できる手法である 非消耗型の 3 部品式ツールを用いて摩擦熱を発生させる ツールは 固定式のクランプリングと それぞれ別々に回転させ 動かすことのできるピンおよびスリーブで構成されている ピンスリーブクランプリング 摩擦スポット接合ツール ( 出典 :Helmholtz Research Center, Geesthacht) 金属材料をポリマーの上に配置させるか 複合材をバッキングプレートを背にして配置させる重ね構成で 接合する材料どうしをクランプ締めする スリーブとピンが同じ方向に回転を始 28

めると スリーブがあらかじめ定義した深さまで金属板に嵌め込まれ ピンが上方に後退する スリーブと金属の摩擦により 温度が局所的に上昇し ピンの後退によって後に残されたリザーバに可塑化した金属が押し込まれる 第二段階では ピンが軟化した金属に向かって押し出され キーホールが再充填される この時点でスリーブとピンはもとの位置に復帰する 最後にツールが引っ込められ 接合部が加圧下で凝固する ピン スリーブ クランプリング 金属 ポリマー ナブ ポリマー - 金属接合のための摩擦スポット接合法 ( 出典 :Helmholtz Research Center, Geesthacht) 接合プロセスの際 伝導によって金属部品から複合材に熱が流れ 境界面で高分子マトリクスの薄層を溶融させる このプロセスに関与する熱機械現象により 二つの接合メカニズムが得られる 一つは金属 - 複合材の境界面に形成された金属ナブによる機械的インターロック そしてもう一つは 粘度の低さから スポット領域で生成された溶融高分子の薄層が重ね合わせ部位の全体に広がることによる接着接合である 摩擦リベット締め (FricRiveting) は ポリマー - 金属のハイブリッド構造に対するもう一つの画期的な接合コンセプトで ドイツの Helmholtz Research Center Geesthacht が開発し 特許を取得している 基本的な構成は 回転する円柱状の金属製リベットをポリマーのベースプレートに挿入したものである 高い回転速度と軸圧力によって熱が発生し 局所的に温度が上昇することで 回転リベットの先端周辺に溶融したポリマーの層が形成される ポリマーの熱伝導率が低いことから 局所的にさらに温度が上昇することにより 金属製のリベットの先端が可塑化する 回転は減速するのに対して軸圧力は上昇し 可塑化したリベット先端が変形して ポリマープレートに固定される 加圧下で凝固した後 接合部は 変形したリベット先端に関わる固定力と ポリマー / 金属境界面の接着力によって保持されることになる 金属製リベット ポリマーベースプレート FricRiveting プロセスの概略図 ( 出典 :Helmholtz Research Center, Geesthacht) 29

アルミニウム EN AW-2024 とポリカーボネートの FricRiveting ( 出典 :Helmholtz Research Center, Geesthacht) この技術は 金属 - ポリマー 金属 - 複合材 複合材 - 複合材の接続の間に 十分にリベット留めによるオーバラップ接合を作製することができる 熱可塑性ポリマーや さらには繊維強化複合材まで接合が可能である 主要なプロセスパラメータには次のようなものがある - 回転速度 ( 回転リベットの角速度 ) 熱の生成とこれに伴う現象において重要になる - 接合時間 接合速度だけでなく 溶融したポリマー被膜に供給される熱エネルギーの量も制御することにより 熱機械処理に関連する体積欠陥のレベルに影響を及ぼす - 接合圧力 このプロセスパラメータの主な役割は リベットの鍛造と凝固段階の制御であるが 摩擦面の通常の圧力分布と加熱にも関連がある 11.3.2.5 射出クリンチング接合 射出クリンチング接合は 熱可塑性ベースの片方の材料と金属製または熱硬化性の他方の材料で構成されるハイブリッド構造のための新しい接合プロセスである (Helmholtz-Research Center, Geesthacht が特許を取得 ) 作用原理は ポリマー材料側に一体化した円柱状のスタッドなど 熱可塑性エレメントの加熱と変形を通じて接合部を作製するというものである この熱可塑性エレメントは あらかじめ金属製 / 熱硬化性構成部品の穿孔に挿入されるため 構造そのものからのリベットが作り出されることになる 射出クリンチング接合による接合部は 接合対象の材料の貫通孔における特殊設計のキャビティ特性を利用したものである 溶融 / 軟化したポリマーがキャビティを充填し 接合部が冷却して凝固した後も固定されたままになるのである 固定性能が付加されることで 機械的性能が向上する プロセスが終了するまでには緊密な接合を得ることができ 接合する材料以外には追加の部品は不要である 考えられるキャビティ特性には 面取りのほか 例えばねじ状やダブテールなどといった特性がある 電気加熱による射出クリンチング接合のプロセスを下図に提示する 突出したスタッドを有するポリマーベースの部品を スタッドが穿孔に収まるように あらかじめ穿孔した接合対象材料と事前に組み立てておく ツールシステムはホットケースで構成され 一体型のパンチ - ピストンがあらかじめ組み立てた部品に接近する ( ステップ a) スタッドが既定の処理温度まで加熱され ( ステップ b) その後 パンチ - ピストンが溶融 / 軟化したポリマーをキャビティに押し込む ( ステップ c) ポリマーの熱緩和時間を短縮するため システムを加圧下で冷却すると 接合部が凝固する ( ステップ d) ホットケースを使用することで リベットの体積全体に適正に熱を分布させ キャビティ充填を助長できるというメリットがある このプロセスにおける主要なパラメータは 加熱時間と加熱温度であり 接合部は数秒から数分で作製することができる 30

パンチ一体型ピストン ホットケース 接合対象部品 ポリマーベースの部品 (a) ツールがあらかじめ組み立てた部品に接近 (b) ホットケースがポリマーベ (c) ピストンがスタッドに鍛造ース部品のスタッドを加熱圧力を印加 (d) 接合された部品 接合時間 電気加熱による射出クリンチング接合プロセスの手順 ( 出典 :Helmholtz Research Center, Geesthacht) この技術の派生法が 簡易な円柱状ツールを使用する摩擦ベースの射出クリンチング接合である 最も簡易な構成の場合 回転ツールがポリマースタッド ( 下図の手順 a を参照 ) に接近し 摩擦と圧力を通じてポリマー層を溶融させる ( 手順 b) 必要な量の摩擦熱を印加した後 軸圧力を上昇させ ツールの回転を減速させる ( 手順 c) 最終的に ツールが後退して接合部が凝固する ( 手順 d) 最終的なリベット形状の設計は もとのスタッドの高さを定義することによって調整することが可能である 短いスタッドでは 浅く より外観に配慮したリベットヘッドが作出される これに対し スタッドを高くすると より大きくて抵抗性の高いリベットヘッドに変形する このプロセスの主要なパラメータは 回転速度 接合圧力 接合時間である この手法はスピーディ ( サイクル時間は数秒 ) でエネルギー効率に優れている スタッドが短い場合の設計 : 浅いリベットヘッド (a) ツールの回転と接近 (b) スタッドの摩擦加熱 (c) 鍛造圧力の印加 (d) ツールが後退し 接合が完成 接合時間 スタッドが長い場合の設計 : 大きなリベットヘッド 摩擦ベースの射出クリンチング接合プロセスの手順 ( 出典 :Helmholtz Research Center, Geesthacht) 射出クリンチング接合は 特にプラスチック部材を異種材料と接合する場合をはじめ 二次構造の金属リベットに代わる可能性のある候補技術である 射出クリンチング接合 :EN AW-2024/PA 66-GF 接合部のマルチスポットにおけるハイブリッド構造 ( 左 ) と断面 ( 右 ) ( 出典 :Helmholtz Research Center, Geesthacht) 31