原著 脂肪乳剤を中心静脈栄養投与ラインに側管投与する方法の安全性 - 脂肪粒子径からの検討 * keywords:t P N 製剤 脂肪乳剤 側管投与 井上善文 1) Yoshifumi INOUE 桂利幸 2) Toshiyuki KATSURA 國場幸史 2) Yukifumi KOKUBA 藤牧巳央 3) Mio FUJIMAKI 梶原賢太 4) Kenta KAJIWARA 1) 大阪大学臨床医工学融合研究教育センター栄養ディバイス未来医工学共同研究部門エイワイファーマ株式会社製品技術センター 2) 3) 4) 味の素製薬株式会社創薬研究所味の素製薬株式会社臨床開発部 Center for Advanced Medical Engineering and Informatics, Division of Nutrition & Medical Engineering, Osaka University 1), Production Technology Center AY Pharmaceuticals Co. Ltd. 2), Research Laboratory Ajinomoto Pharmaceuticals Co. Ltd. 3), Clinical Development Department Ajinomoto Pharmaceuticals Co. Ltd. 4) 目的 脂肪乳剤を TPN(Total Parenteral Nutrition) 製剤投与ラインに側管投与する方法における脂肪粒子の安定性について検証する 対象および方法 TPN 製剤 ( ビタミンおよび微量元素製剤添加 ) に脂肪乳剤を混合して 100mL/ 時で投与する場合と 脂肪乳剤を TPN 製剤投与ライン (100mL/ 時で投与 ) に側管投与 (100mL 50mL 33mL 25mL 20mL 17mL/ 時で送液 ) する場合において 輸液の外観観察 平均粒子径 5μm よりも大きい粗大粒子の体積の測定を行った 結果 混合液では平均脂肪粒子径に変化はなかったが 粗大粒子体積は投与後 2 時間より増加し USP(United States Pharmacopia) 基準の 5μm よりも大きい粒子の体積が全脂肪の 0.05% 未満 を超えた 側管投与では外観にも変化はなく 平均粒子径 粗大粒子の体積にも変化はなく 基準値未満であった 結論 脂肪乳剤を TPN 製剤投与ラインの側管から投与する方法は 平均脂肪粒子径の増大および脂肪粒子の粗大化は認められず USP 基準を満たしており 安全に投与できると考えられた 緒言 三大栄養素の一つである脂肪は 中心静脈栄養法 (Total Parenteral Nutrition; 以下 TPNと略 ) において必須の栄養素である 本邦においては 必須脂肪酸補給あるいはエネルギー源として ダイズ油を乳化した静注用脂肪乳剤が使用されている その投与経路としては 1 T P N 製剤に脂肪乳剤を混合する ( ワンパック方式 ) 2 T P N 製剤との混合を避けるために T P N 製剤投与ラインのほかに脂肪乳剤投与用に末梢静脈投与経路を作成する 3 T P N 製剤投与ラインに脂肪乳剤を側管投与する の 3 経路が用いられている 1 T P N 製剤に脂肪乳剤を混合するという方法は製剤学的な問題 すなわち 一定時間混合すると脂肪粒子が粗大化することは既に証明されている 1) また 2 末梢静脈投与経路を新たに作成して脂肪乳剤を投与するという方法は 静脈投与経路作成という手間がかかる 患者の苦痛を増す 静脈炎等の合併症対策が必要になる などの問題があり 脂肪乳剤の投与を躊躇するという傾向の原因ともなっている 一方 3 T P N 製剤投与ラインに脂肪乳剤を側管投与する方法は 簡便さ という点では優れているが T PN 製剤と脂肪乳剤が一定時間接触することになるという問題がある TPN 製剤と脂肪乳剤が接触すれば 製剤学的に脂肪粒子が粗大化し 2) 肺塞栓という重大な合併症が発生する可能性があるからである 3) 確かに 添付文書の 重要な基本的注意 に 本剤に他の薬剤を混合しない *Can lipid emulsion be administered as secondary piggyback infusion through primary TPN infusion line? Studies for the Changes of Lipid Particle size. 受付日 :2013 年 5 月 31 日採用決定日 :2013 年 8 月 26 日静脈経腸栄養 Vol.29 No.3 2014 67(863)
こと と記載されている しかし T P N 製剤と脂肪乳剤の一定時間の接触が 製剤学的な面で脂肪粒子の粗大化という現象にどこまで影響するのかは明らかではない これまで検討されてきた脂肪乳剤の安定性の指標としては 外観変化の観察と脂肪粒子の平均粒子径の変化を主体とした評価法であった その後 脂肪乳剤の平均粒子径よりも 混合製剤中における粗大粒子の大きさや割合が 安全面での評価基準となった 4) 本邦では 日本薬局方における乳濁性注射剤の粒子は 通例 7μm 以下とされ 米国では 2009 年に脂肪乳剤の粒子径に関する基準として 5μmよりも大きい粒子の体積が全脂肪の 0.05% 未満であることが USP(United States Phamacopia) 32 General Chapters<729> で規定された 5) TPN 施行時の脂肪乳剤の投与方法としては TPN 製剤への脂肪乳剤の直接の混合を避け T PN 投与ラインの側管より脂肪乳剤を投与する方法が望ましいと考えられるが 投与ライン内での両者の混合による脂肪粒子安定性に関する検討は行われていない 今回 TPN 施行時に脂肪乳剤を側管から投与した際の脂肪乳剤の安定性を U S P 基準 5 μ m よりも大きい粒子の体積が全脂肪の 0.05% 未満であること を評価基準として経時的に検討した 実験方法 1. 試料 T P N 製剤は ピーエヌツイン R 2 号 1 1 0 0 m L( 味の素製薬株式会社 ) に ビタミン製剤 ( マルタミン R 注射用 味の素製薬株式会社 ) と微量元素製剤 ( エレメンミック R 注 味の素製薬株式会社 ) の一日量を添加したものを用いた 脂肪乳剤は イントラリポス R 輸液 2 0 %( 1 0 0 m L 袋 大塚製薬工場株式会社 ) およびイントラリピッド R 輸液 2 0 %( 1 0 0 m L 袋 フレゼニウスカービジャパン株式会社 ) を用いた 2. 輸液投与経路 TPN 製剤の投与ラインは ニプロ輸液セット (I SA- 200E00Z) とニプロ CPチャンバーセット (CPC-300) を接続して用いた 側管投与は ニプロ C P チャンバーセット ( C P C - 3 0 1 F C Z Y I ) の Y 字管に ニプロ輸液セット (ISA-200E00Z) ニプロ CP チャンバーセット (CPC- 図 1 投与ラインの模式図 1 群は ビタミン ( マルタミン R 注射用 ) および微量元素 ( エレメンミック R 注 ) を混合した T P N 製剤 ( ピーエヌツイン R 2 号 ) に 脂肪乳剤 ( イントラリポス R 輸液 20%)100mL を混合 100mL/ 時で滴下させ バッグ内輸液の外観観察 滴下した液の解析を行った 2 8 群はビタミンおよび微量元素を混合した TPN 製剤を 100mL/ 時で滴下させ 2 0 % 脂肪乳剤 ( イントラリポス R 輸液 20% およびイントラリピッド R 輸液 20%) を側管投与用 Y 字管部分から投与した 投与速度を 100mL/ 時から 17mL/ 時まで変化させ 滴下した液を解析した 300) ニプロアイセット (I I S - I T30N) を接続して用いた また 輸液ポンプはニプロキャリカポンプ C P300を用いた 投与ラインの模式図を図 1に示す 側管投与用 Y 字管から先端までのラインの長さ ( 脂肪乳剤と T P N 製剤が混合して流れる部分 ) は190cmであった 3. 測定項目および測定機器 ( 1) 外観観察脂肪乳剤を TPN 製剤に混合したバッグ内の薬液は 経時的に肉眼で外観を観察した また 投与ライン先端部から流出する混合液を経時的に検体チューブに採取し 肉眼で外観を観察した (2) 平均粒子径の測定脂肪粒子の平均粒子径を レーザ回析 / 散乱式である粒度分布測定装置 LA-920( 堀場製作所製 ) を用いて測定した ( 3 ) 粗大粒子の測定脂肪粒子の粗大粒子を 光遮断方式である AccuSizer 780(Particle Sizing Systems 製 ) を用いて測定した 粗大粒子の評価は USP32 General Chapters<729 68(864) 原著
>に準じて 各粒子径における体積と粒子数から 5μm よりも大きい粒子の総体積を求め 各検体の脂肪の総体積に対する割合を算出した なお 各検体の脂肪の総体積は 各検体の脂肪濃度 (w/v%) から比重 0.924を用いて算出した 表 1 脂肪乳剤と TPN 製剤の混合液 側管投与検体の内容検体 1 は脂肪乳剤と TPN 製剤の混合液を 10 0 ml / 時で投与した 検体 1 7 はイントラリポス R 輸液 2 0 % 検体 8 はイントラリピッド R 輸液 20% である 脂肪乳剤としての投与速度は 検体 1 は混合液を 100mL/ 時であるが 検体 2 ~ 8 は 側管より脂肪乳剤を 1 6 時間で投与した 4. 試験方法 (1)T P N 製剤ピーエヌツイン R 2 号液 1 1 0 0 m L に マルタミン R 注射用 1 瓶およびエレメンミック R 注 2m L を混合して T P N 製剤とした なお 混合作業はクリーンベンチ内で実施した ( 2 ) 投与方法 1) バッグ内混合投与 T P N 製剤に脂肪乳剤 1 0 0 m L を注入して 両者をよく混合させた 輸液投与ラインを接続して バッグ中の混合液を 100m L/ 時の速度 ( 混合液を 12 時間持続投与 ) で送液した 輸液投与ライン先端から流出する混合液を検体とした 実験は 同一条件にて 3 回実施した なお 脂肪乳剤は最も汎用されているイントラリポス R を使用した 2 ) 側管投与輸液投与ラインを用いて バッグ中の T P N 製剤を 100mL/ 時の速度で送液した 一方 投与ラインの側管から脂肪乳剤 1 0 0 m L を 1 2 3 4 5 6 時間で投与する速度 ( それぞれ 100mL/ 時 50mL/ 時 33mL/ 時 25mL/ 時 2 0 m L / 時 17m L / 時 ) で送液した 輸液投与ライン先端から流出する混合液を検体として測定に供した なお 側管投与の実験には 最も汎用されているイントラリポス R を使用し イントラリピッド R は 最も投与時間が長く T P N 製剤との混合時に影響を受けやすい条件 ( 検体 7 の条件 ) のみ検討した 側管投与の実験も 同一条件下での比較試験を3 回行った ( 3 ) 各検体の内容 TPN 製剤と脂肪乳剤の混合液 側管投与のそれぞれの投与速度につき 各 3 セットの実験を行い評価した 各検体の内容を表 1に示す 表 2 検体の測定時点混合検体は 0 2 4 6 12 時間後に測定した 検体 2 ~ 8 は 0 2 4 6 時間後に測定したが 投与終了時間にも測定した ( 4 ) 測定時点各検体における測定時点を表 2に示す ( 5 ) 試験環境試験は 室温散光下 室温 ( 2 1. 0 ~ 2 2. 1 ) で実施した なお TPN 製剤は実験期間中 遮光カバーを装着した 結果 1. 外観観察バッグ内の薬液の外観観察の結果を表 3に示す バッグ内の薬液の外観観察では TPN 製剤に脂肪乳剤を混合したバッグ ( 検体 1) において 混合 12 時間後にバッグの液面に軽微なクリーミングが認められた 側管投与を行ったバッグ製剤 ( 検体 2 ~ 8 : T P N 製剤および脂肪乳剤 ) では いずれも変化は認められなかった 混合投与あるいは側管投与後の混合液の外観観察では いずれの検体も均一な乳剤であり 変化は認められなかった 静脈経腸栄養 Vol.29 No.3 2014 69(865)
表 3 バッグ内の薬液の外観観察検体 2 8 は それぞれ TPN 製剤と脂肪乳剤が混合前で単体なので 外観の変化はなかった 混合した検体 1 は 12 時間後に 3 検体とも表面に軽微なクリーミングを認めた 基準内で推移した 検体 7が 側管投与の中で最も TPN 製剤と脂肪乳剤の接触時間が長いので 検体 1および 7 の粗大粒子 (5μm より大きい粒子体積の割合 (%)) の経時的変化の比較を図 2に示す 考察 脂肪乳剤には乳化剤として両性界面活性剤であるレシチンが用いられているため 脂肪粒子の表面は弱く陰性に荷電している このため 特に 2 価以上の陽イオンが存在すると 脂肪粒子相互間の電気的反発力が弱まり 脂肪粒子が凝集からクリーミング 油滴分離と進行し エマルジョンの破壊が起こることになる 6) また 同様にイオン化した物質であるアミノ酸と共存させたときに脂肪粒子の不安定化が起こることも報告されている 7) 表 4 平均粒子径の変化検体 1 ~ 8 のいずれにおいても 平均粒子径には変化はみられなかった 製剤として イントラリポス R 輸液 20% よりもイントラリピッド R 輸液 20% の方が平均粒子径は大きかった 2. 平均粒子径の評価各検体の平均粒子径の経時変化を表 4に示す 脂肪粒子の平均粒子径は 混合投与 ( 検体 1) しても 側管投与 ( 検体 2 ~ 8 ) しても 有意な経時的な変化は認めなかった また 脂肪乳剤の種類 ( 検体 7 と 8 ) により 脂肪粒子の平均粒子径は異なったが いずれも有意な経時的変化は認めなかった 3. 粗大粒子の評価各検体の脂肪の全体積に対する5μm より大きい粒子の体積の割合 ( % ) を表 5に示す バッグ内混合投与を行った検体 1 では 粗大粒子の割合が経時的に上昇し 混合 2 時間後より USP General chapters<729> の基準である 0.05% 以上となった 一方 側管投与を行った検体 2 ~ 8は US P 表 5 各検体の脂肪の体積に対する 5μm より大きいの粒子の体積の割合検体 2~ 7 はいずれも 0.05% 未満であり 時間経過に影響されなかった 検体 1 は混合後 2 時間で 0.05% を超え 時間経過とともに粗大粒子の割合が上昇し 12 時間後には 0.181% まで上昇した 70(866) 原著
図 2 滴下液中の 5μm 以上の粗大粒子の割合光遮断方式である AccuSizer780 を用いて粒子径を測定し 5μm より大きい粗大粒子の割合を求めた TPN 製剤に脂肪乳剤を混合した検体 1 では 時間経過とともに粗大粒子の割合が上昇し 2 時間後には USP 基準値を超えた 脂肪乳剤を側管投与した検体 7( 最も脂肪乳剤と T P N 製剤の接触時間が長い ) では 観察期間中 粗大粒子の割合に変化はなく U S P 基準値未満であった TPN 製剤中における脂肪粒子の粗大化は 共存する 2 価の陽イオンやアミノ酸 ( 特に塩基性アミノ酸 ) の濃度に強く影響されると推測されることより 脂肪乳剤の側管投与に際しても 投与ライン中での TPN 製剤と脂肪乳剤の混合割合を正確に調整して評価する必要がある そこで 本試験では 臨床使用実態に即した輸液投与方法と脂肪乳剤の投与時間を考慮して実験を行った すなわち 用いた 1100m L の T PN 製剤を 12 時間で投与する条件下に 汎用濃度の 20% 脂肪乳剤 100mLが投与ライン内で 臨床使用時間 (6 時間が上限 ) 内で接触するように輸液ポンプを用いて混合した また 投与ライン先端から流出する混合液を静止状態で泡立てないように注意しながら 経時的に検体チューブに採取して 肉眼での外観観察と平均粒子径および粗大粒子の割合を評価した 本試験の陽性対照として TPN 製剤に脂肪乳剤を混合した製剤 ( ワンパック方式 ) を作成し バッグ中での外観変化と投与ラインの先端から流出する混合液を評価し 実験系の検証を行った その結果 脂肪乳剤を混合した TPN 製剤では混合後 12 時間でバッグの液面に軽微なクリーミングが認められた また 脂肪乳剤の平均粒子径はいずれの時点においても変化はみられなかったが 粗大粒子の体積の割合は混合後 2 時間目より USP 基準値の 0. 0 5 % を超え 経時的に上昇し 混合後 1 2 時間目で 0.181% となった 馬庭らは 本試験と同様に ピーエヌツイン R 2 号 110 0 m L にイントラリポス R 輸液 20% 100mLを混合すると 外観上 3 時間後より乳剤粒子の凝集 6 時間後より油滴の分離を認め 光学顕微鏡的観察でも脂肪粒子は経時的に粗大化したと報告している 8) 外観変化の経時的な推移は異なるが ワンパック方式の TPN 製剤において脂肪粒子が不安定になることについては同様の結果であったことからも 本試験系は脂肪粒子の変化を検出できる評価系であることが確認された 経時的な推移の違いは 本試験では高カロリー輸液用総合ビタミン剤を混合しているのに対し 馬庭らの検討ではピーエヌツイン R 2 号に総合ビタミン剤が混合されていないためであろうと推察される TPN 製剤に配合したビタミンの脂肪乳剤の安定化に及ぼす影響については 山岡らが総合ビタミン剤の配合により脂肪粒子の凝集化が抑えられることを示し これは脂溶性ビタミンの可溶化剤として含まれている H C O - 6 0やプロピレングリコールが影響していると報告している 9) 患者の良好な栄養状態の維持および回復という栄養学的観点から 13 種類のビタミンの添加も必須であり 同時に 微量元素の不足も補う必要がある 本試験においても 基本の TPN 製剤は 13 種のビタミンと 5 種の微量元素を配合した組成として脂肪粒子径の変化を検討した 一般に ある程度以上大きな粒子である粗大粒子は 生体内で毛細血管への塞栓などが懸念され 乳化破壊によって粗大粒子が増大することは安全性の面で大きな問題となる 粒子径の測定法に関しては 従来 光散乱法が用いられてきた しかし 脂肪乳剤の粒子径やワンパック輸液処方の安定性を論じる際には 光散乱法では 1μm 以上のコロイド粒子の検出に難点があることが報告されている 近年 米国では 脂肪乳剤の粒子に関する基準は5μm より大きな粒子の体積が全脂肪体積の 0. 0 5% 未満であることが USP32 General Chapters<729> に記載され 規定された また USP32 General Chapters <729> の M E THOD Ⅱには粗大粒子の測定法も記載されている 本試験でも 脂肪粒子の粗大粒子の測定法は 本測定法と同じ 光遮断方式である A c c u S i z e r 7 8 0 (Particle Sizing Systems 製 ) を用いて測定した TPN 製剤 ( ピーエヌツイン R 2 号輸液 マルタミン R 注射用 エレメンミック R 注 ) に脂肪乳剤 ( イントラリポス R 輸 静脈経腸栄養 Vol.29 No.3 2014 71(867)
液 2 0 % ) を直接混合すると 混合後 1 2 時間でバッグ内の液面に軽微のクリーミングが認められた 輸液投与ラインからの流出液の評価において 脂肪粒子の平均粒子径には大きな変化は認められないものの USP32 General Chapters<729> の基準による脂肪の体積に対する粗大粒子 (5μm より大きい ) の割合は経時的に上昇し 混合後 2 時間目より基準値を超えた この方法で脂肪乳剤を投与すれば 粗大粒子による塞栓という合併症が発生する危険があることを示唆していると考えられる 10) また 脂肪粒子の粗大化とともに ワンパック輸液における塞栓が危惧される重要な原因として リン酸カルシウムの沈殿の問題がある 11) ワンパック輸液中に沈殿が生じた場合 脂肪乳剤の濁度により沈殿が可視できないことが最も問題となる点であり 1994 年の FDA sa fet y a ler tにおいて 脂肪乳剤を混合したワンパック高カロリー輸液における肺塞栓の危険性 12) を回避するために 脂肪配合 TPN 施行時には1.2μm の輸液フィルターを使用するように勧告されている 13) T P N 施行症例に脂肪乳剤を投与する場合には この点に関する注意も必要である 一方 今回の実験において 脂肪乳剤 ( イントラリポス R 輸液 20%) を TPN 製剤投与ラインの側管より投与した場合 脂肪乳剤の投与速度 ( 投与時間 ) にかかわらず 脂肪粒子の平均粒子径に大きな変化は認められず USP 基準値を超える粗大粒子の増加も認められなかった また 異なる脂肪乳剤 ( イントラリピッド R 輸液 2 0 % ) を側管から投与した場合も 同様の傾向であった 脂肪乳剤の側管からの投与方法は 脂肪粒子の粗大化という問題を起こすことなく 安全に実施可能であることを意味している 脂肪乳剤を T P N 製剤投与ラインに側管から投与する場合の両者の接触時間は 非常に短い 本研究で用いた投与ラインの側管投与用 Y 字管から先端までの長さは 190cmで その容量は 2.8m Lであった TPN 製剤の投与速度は100mL/ 時 1.67mL/ 分である 脂肪乳剤の投与速度が遅くなればなるほど脂肪乳剤と T P N 製剤の接触時間は長くなる 本研究において最も遅い脂肪乳剤の投与速度は 17mL/ 時で これは 0.28mL/ 分に相当する T P N 製剤と脂肪乳剤の液量の和が投与ライン内容量を満たすことになるので 脂肪乳剤は 2.8mL (0.28mL/ 分 +1.67mL/ 分 ) と計算すると 1.44 分となる すなわち TPN 製剤と脂肪乳剤の接触時間は 1.44 分 という計算される 一方 最も早い場合の脂肪乳剤の投与速度は100mL/ 時で これは1.67mL/ 分に相当し T P N 製剤と脂肪乳剤の接触時間は 0. 8 4 分となる このように T P N 製剤への脂肪乳剤の混合とは異なり 側管から投与する場合には T P N 製剤と脂肪乳剤の接触時間が非常に短いため 脂肪粒子の粗大化が起こらないのではないかと考えられる なお 本検討条件における脂肪負荷量は 成人体重 60kgにおいて脂肪乳剤の投与速度により 0.33~ 0.057g/kg/ 時となる 結論 TPN 施行時 脂肪乳剤を TPN 製剤投与ルートの側管から投与しても 脂肪粒子の粒子径に大きな変化は認められず 安全に投与できるものと推察される 謝辞 本試験において 実験実施に多大なご協力と指導をいただきました ニプロ株式会社松尾浩氏 味の素製薬株式会社梅田篤氏 エイワイファーマ株式会社鈴木茂幸氏に深謝いたします 72(868) 原著
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Can lipid emulsion be administered as secondary piggyback infusion through primary TPN infusion line? Studies for the Changes of Lipid Particle size. Keywords:TPN, Lipid emulsion, Piggyback administration Yoshifumi INOUE 1) Toshiyuki KATSURA 2) Yukifumi KOKUBA 2) Mio FUJIMAKI 3) Kenta KAJIWARA 4) Purpose: The purpose of this study is to examine the stability of lipid particles in a lipid emulsion administered as a secondary piggyback infusion through primary TPN infusion line. Methods: Gross-and-micro observation was performed, and the mean droplet size and large diameter tail (over 5 µm)were evaluated in a mixture of lipid emulsion and TPN fluid (supplemented with vitamins and minerals) administered at 100 ml/h, and in a lipid emulsion given by piggyback administration (at 100, 50, 33, 25, 20, and 17 ml/h)through TPN infusion line (at 100 ml/h). Results: In the mixture, the mean particle size was not changed, but the volume of the large diameter tail increased after 2 h and exceeded the USP reference standard that percentage lipid over 5 µm should not exceed 0.05% of the total lipid. However, piggy administration of the lipid emulsion did not cause changes in the appearance, mean particle size of droplets, and extent of large diameter tails, enabling it to be kept under the reference value. Conclusion: The results of the study showed that piggyback administration of lipid emulsion through primary TPN infusion line did not significantly change the mean particle size or coarsen the lipid particles, suggesting that the lipid emulsion meets the proposed USP standard and can be safely administered by this method. Center for Advanced Medical Engineering and Informatics, Division of Nutrition & Medical Engineering, Osaka University 1), Production Technology Center AY Pharmaceuticals Co. Ltd. 2), Research Laboratory Ajinomoto Pharmaceuticals Co. Ltd. 3), Clinical Development Department Ajinomoto Pharmaceuticals Co. Ltd. 4) 74(870) 原著