Similar documents
2 政策体系における政策目的の位置付け 3 達成目標及び測定指標 4-5 福島 震災復興 租税特別措置等により達成しようとする目標 政策の達成目標と同じ 租税特別措置等による達成目標に係る測定指標 仮設施設の整備数 8 有効性等 政策目的に対する租税特別措置等の達成目標実現による寄与 東日本大震災で

市町村における住民自治や住民参加、協働に関する取組状況調査

PowerPoint プレゼンテーション

Slide 1

望の内容平成 30 年度税制改正 ( 租税特別措置 ) 要望事項 ( 新設 拡充 延長 ) ( 経済産業省中小企業庁経営支援部創業 新事業促進課 ) 制度名 産業競争力強化法に基づく創業支援事業計画の認定自治体における登録免許税の軽減措置の延長 税 目 登録免許税 ( 租税特別措置法第 80 条第

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

規制 制度改革に関する閣議決定事項に係るフォローアップ調査の結果 ( 抜粋 ) 規制 制度改革に係る追加方針 ( 抜粋 ) 平成 23 年 7 月 22 日閣議決定 番号 規制 制度改革に係る追加方針 ( 平成 23 年 7 月 22 日閣議決定 ) における決定内容 規制 制度改革事項 規制 制度

第28回介護福祉士国家試験 試験問題「社会の理解」

H28秋_24地方税財源

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

(CANACINTRA) 等と連携を図りつつ設置する案を有しており 国家中小企業コンサルタント養成 認定制度を具現化するためにいかにして事業を進めていくかが課題となっている (2) 相手国政府国家政策上の位置づけカルデロン大統領は 近代的かつ競争力のある経済の強化及び雇用の創出 を 治安 貧困撲滅

Microsoft PowerPoint - kobetsuB4-slide-静山.ppt [互換モード]

今回の改正によってこの規定が廃止され 労使協定の基準を設けることで対象者を選別することができなくなり 希望者全員を再雇用しなければならなくなりました ただし 今回の改正には 一定の期間の経過措置が設けられております つまり 平成 25 年 4 月 1 日以降であっても直ちに希望者全員を 歳まで再雇用

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

はじめに 会社の経営には 様々な判断が必要です そのなかには 税金に関連することも多いでしょう 間違った判断をしてしまった結果 受けられるはずの特例が受けられなかった 本来より多額の税金を支払うことになってしまった という事態になり 場合によっては 会社の経営に大きな影響を及ぼすこともあります また

女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針について

女性の活躍促進や仕事と子育て等の両立支援に取り組む企業に対するインセンティブ付与等 役員 管理職等への女性の登用促進 М 字カーブ問題の解消には企業の取組が不可欠 このため 企業の自主的な取組について 経済的に支援する 経営上のメリットにつなぐ 外部から見えるようにし当該取組の市場評価を高めるよう政

企業中小企(2) 所得拡大促進税制の見直し ( 案 ) 大大企業については 前年度比 以上の賃上げを行う企業に支援を重点化した上で 給与支給総額の前年度からの増加額への支援を拡充します ( 現行制度とあわせて 1) 中小企業については 現行制度を維持しつつ 前年度比 以上の賃上げを行う企業について

資料3

活動指標及び 活動指標標準仕様書 導入手順書策定数 ( 改定を含む ) 活動見込 31 活動見込 2 活動指標及び 活動指標 RPA 補助事業の完了数 活動見込 31 活動見込 5 活動指標及び AI 実証地域の完了数 活動指標 活動見込 31 活動見

H28_1 saiketutaido(元データ)

<4D F736F F F696E74202D EF8B638E9197BF82CC B A6D92E894C5816A E >

平成20年2月

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

平成 31 年度 税制改正の概要 平成 30 年 12 月 復興庁

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

概算要求基準等の推移

学生確保の見通し及び申請者としての取組状況

☆表紙・目次 (国会議員説明会用:案なし)

資料9

<4D F736F F F696E74202D DB92B789EF8B638E9197BF C CA8F8A8E7B90DD81458DDD91EE B ED2816A817989DB92B789EF8B638CE38A6D92E894C5817A2E707074>

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

政策体系における政策目的の位置付け エネルギー基本計画 ( 平成 22 年 6 月 18 日閣議決定 ) において 一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合を 2020 年までに 10% とすることを目指す と記載 地球温暖化対策基本法案 ( 平成 22 年 10 月 8 日閣議決定 )

寄附文化の醸成に係る施策の実施状況 ( 平成 26 年度に講じた施策 ) 別紙 1 < 法律 制度改正 > 総務省 ふるさと納税の制度拡充 ( 平成 27 年 4 月 1 日施行 ) 学校法人等への個人寄附に係る税額控除の要件の緩和 ( 平成 27 年 4 月 1 日施行 ) 特例控除の上限の引上げ

注 : 平成 年度募集研究種目 国際的に評価の高い研究の推進 研究費の規模 / 研究の発展 H には 新たに基盤研究 (B) 若手研究 (A) の 種目に基金化を導入 若手研究 9 歳以下 ~ 年 (A) 500~,000 万円 (B) ~500 万円 研究活動スタート支援 年以内年間 50 万円以

2. 改正の趣旨 背景給与所得控除額の変遷 1 昭和 49 年産業構造が転換し会社員が急速に増加 ( 働き方が変化 ) する中 (1) 実際の勤務関連経費が給与所得控除を上回っても 当時は特定支出控除 ( 昭和 63 年導入 ) がなく 会社員は実際の勤務関連経費がいくら高くても実額控除できなかった

生産性 イノベーション関係指標の国際比較 平成 29 年 11 月 9 日 財務総合政策研究所酒巻哲朗 1

PowerPoint プレゼンテーション

4-(1)-ウ①

PowerPoint プレゼンテーション

地域子育て支援拠点事業について

××税制(所得税・法人税・法人住民税・事業税)

歳入総額 区分 平成 年度の財政フレーム ( 単位 : 百万円 ) 30 年度 31 年度 合計 構成比 構成比 構成比 263, % 265, % 529, % 一般財源特別区税特別区交付金その他特定財源国 都支出金繰入金特別区債 167

8. 内部監査部門を設置し 当社グループのコンプライアンスの状況 業務の適正性に関する内部監査を実施する 内部監査部門はその結果を 適宜 監査等委員会及び代表取締役社長に報告するものとする 9. 当社グループの財務報告の適正性の確保に向けた内部統制体制を整備 構築する 10. 取締役及び執行役員は

ための手段を 指名 報酬委員会の設置に限定する必要はない 仮に 現状では 独立社外取締役の適切な関与 助言 が得られてないという指摘があるのならば まず 委員会を設置していない会社において 独立社外取締役の適切な関与 助言 が十分得られていないのか 事実を検証すべきである (2) また 東証一部上場

税制について

日韓比較(10):非正規雇用-その4 なぜ雇用形態により人件費は異なるのか?―賃金水準や社会保険の適用率に差があるのが主な原因―

参考資料 5 用語集 SPC( 特別目的会社 ) SPC(Special Purpose Company) は特別目的会社ともいわれ プロジェクトファイナンスにおいては 特定のプロジェクトから生み出されるキャッシュフローを親会社の信用とは切り離す事がポイントであるが その独立性を法人格的に担保すべく

1) 3 層構造による進捗管理の仕組みを理解しているか 持続可能な開発に向けた意欲目標としての 17 のゴール より具体的な行動目標としての 169 のターゲット 達成度を計測する評価するインディケーターに基づく進捗管理 2) 目標の設定と管理 優先的に取り組む目標( マテリアリティ ) の設定のプ

報告事項     平成14年度市町村の決算概要について

確定給付企業年金 DBパッケージプランのご提案


[Q1] 復興特別所得税の源泉徴収はいつから行う必要があるのですか 平成 25 年 1 月 1 日から平成 49 年 12 月 31 日までの間に生ずる所得について源泉所得税を徴収する際 復興特別所得税を併せて源泉徴収しなければなりません ( 復興財源確保法第 28 条 ) [Q2] 誰が復興特別所

Microsoft Word - fcgw03wd.DOC

品質マニュアル(サンプル)|株式会社ハピネックス

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

望の内容平成 28 年度税制改正 ( 租税特別措置 ) 要望事項 ( 新設 拡充 延長 ) ( 経済産業省経済産業政策局産業再生課 ) 制度名産業競争力強化法に基づく事業再編等に係る登録免許税の軽減措置 税 目 登録免許税 ( 租税特別措置法第 80 条 ) ( 租税特別措置法施行令第 42 条の

別紙2

貿易特化指数を用いた 日本の製造業の 国際競争力の推移

個人市民税 控除・税率等の変遷【市民税課】

資料 1 税財政制度を通じた論点 Ⅰ 現状と課題 1. 地方財政の財政の概要 地方財政の平成 23 年度決算は 歳入約 兆円 歳出 97.0 兆円となっている なお 借入金残高は約 兆円と依然と高い水準にある 国と地方における最終支出ベースにおける比率は 42:58 となって

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

新設 拡充又は延長を必要とする理⑴ 政策目的 地震等の災害からの復旧に際して 公的補助が公立学校に比べて少なく 自主財源の確保が求められる私立学校にとって 寄附金収入は極めて重要な財源である 災害時には 大口の寄附だけでなく 広く卒業生や地域住民を中心に 義援金 募金という形で小口の寄附を集める必要

高齢者住宅施策の現状と今後の方向性

中小法人の地方法人二税の eltax の利用率 70% 以上という目標達成に向けて 下記の eltax の使い勝手改善等の取組を進めるとともに 地方団体の協力を得つつ 利用勧奨や広報 周知等 eltax の普及に向けた取組を一層進める また 中小法人の地方法人二税の eltax の利用率の推移等を踏

5.政府保証民間ローン(FFEL)と政府直接ローン(FDSL)の状況(アメリカにおける奨学制度に関する調査報告書)

ASEAN 包括的投資協定 (ACIA) 修正議定書 ブルネイ ダルサラーム国 カンボジア王国 インドネシア共和国 ラオス人民民主共和国 マレーシア ミャンマー連邦共和国 フィリピン共和国 シンガポール共和国 タイ王国 およびベトナム社会主義共和国の政府 東南アジア諸国連合 ( ASEAN ) の加

平成22年2月●日

2. ハイテク活動とは ハイテクを研究 開発 検索 移転 応用し ; ハイテク人材を育成し ; ハイテク育成 ハイテク企業育成をし ; ハイテク製品を生産する 又はハイテクサービスを提供し ; ハイテク産業を開発する活動である 3. ハイテク製品とは ハイテクで生み出され 優越な品質 性能 付加価値

陳情議決結果一覧 ( 平成 19 年 5 月 ~ 平成 23 年 4 月 ) 番号受理年月日件名付託委員会 議決年月日 結 果 陳情 第 1 号 H 非核日本宣言 を求める意見書の提出要請について 総財委 H 採 択 陳情第 2 号 H 原爆症認定制度の抜本的改

1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

ISO 9001:2015 改定セミナー (JIS Q 9001:2015 準拠 ) 第 4.2 版 株式会社 TBC ソリューションズ プログラム 年版改定の概要 年版の6 大重点ポイントと対策 年版と2008 年版の相違 年版への移行の実務

<4D F736F F D A835E838A F8B7982D18AC48DB85F20534F A68CEB8E9A E9A8F4390B38DCF2

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint 寄附金控除制度概要.ppt

<4D F736F F D208E9197BF E88E68EE58CA C490BA96BE95B62E444F43>

ISO19011の概要について

子ども・子育て支援新制度の解説資料 1.制度概要 その1

特定個人情報保護評価書 ( 基礎項目評価書 ) 評価書番号評価書名 2 個人住民税関係事務基礎項目評価書 個人のプライバシー等の権利利益の保護の宣言 甲府市は 個人住民税関係事務における特定個人情報ファイルの取扱いにあたり 特定個人情報ファイルの取扱いが個人のプライバシー等の権利利益に影響を及ぼしか

年金制度のポイント

福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律 について <1. 特定復興再生拠点区域の復興及び再生を推進するための計画制度の創設 > 従来 帰還困難区域は 将来にわたって居住を制限することを原則とした区域 として設定 平成 29 年 5 月復興庁 地元からの要望や与党からの提言を踏まえ 1 帰還困難区

鳩山政権の経済政策の効果

障財源化分とする経過措置を講ずる (4) その他所要の措置を講ずる 2 消費税率の引上げ時期の変更に伴う措置 ( 国税 ) (1) 消費税の軽減税率制度の導入時期を平成 31 年 10 月 1 日とする (2) 適格請求書等保存方式が導入されるまでの間の措置について 次の措置を講ずる 1 売上げを税

事務連絡 平成 26 年 4 月 23 日 各実施機関実施責任者殿 各実施機関事務連絡担当者殿 文部科学省科学技術 学術政策局 人材政策課 科学技術人材育成費補助金により雇用する研究者等に係る人件費の取扱いについて 旧科学技術振興調整費 ( 以下 旧調整費 という ) の課題を実施する研究者等の人件

仮訳 日本と ASEAN 各国との二国間金融協力について 2013 年 5 月 3 日 ( 於 : インド デリー ) 日本は ASEAN+3 財務大臣 中央銀行総裁プロセスの下 チェンマイ イニシアティブやアジア債券市場育成イニシアティブ等の地域金融協力を推進してきました また 日本は中国や韓国を

3 平成 25 年 4 月に給与の支給規程を改訂し 平成 24 年分 10 月にまでさかのぼって実施する こととなり 平成 25 年 4 月の給与支給日に支払うこととなった平成 24 年 10 月から平成 25 年 3 月までの給与改訂差額 A 3 1 給与所得の収入金額の収入すべき時期は 契約又は

目 次 (1) 財政事情 1 (2) 一般会計税収 歳出総額及び公債発行額の推移 2 (3) 公債発行額 公債依存度の推移 3 (4) 公債残高の累増 4 (5) 国及び地方の長期債務残高 5 (6) 利払費と金利の推移 6 (7) 一般会計歳出の主要経費の推移 7 (8) 一般会計歳入の推移 8

PowerPoint プレゼンテーション

II. 課税標準の確定申告と納付 ( 地 税法第 103 条の23) 1. 申告期限 各事業年度の終了 が属する の末 から4ヶ 以内 ( 連結法 は5ヶ 以内 ) に納税地管轄の地 治 団体の に申告 納付しなければなりません 法 地 所得税の申告納付期限は下記のとおり 部変更されました 区分 従

三ケ島工業団地周辺地区 第一回勉強会

1c_本文118号.indb

<4D F736F F D2093F797708B8D95E28AAE97768D6A B95B6816A2E646F6378>

(0830時点)PR版

道州制基本法案(骨子)

1 制度の概要 (1) 金融機関の破綻処理に係る施策の実施体制金融庁は 預金保険法 ( 昭和 46 年法律第 34 号 以下 法 という ) 等の規定に基づき 金融機関の破綻処理等のための施策を 預金保険機構及び株式会社整理回収機構 ( 以下 整理回収機構 という ) を通じて実施してきている (2

平成20年度税制改正(地方税)要望事項

P10 第 2 章主要指標の見通し 第 2 章主要指標の見通し 1 人口 世帯 1 人口 世帯 (1) 人口 (1) 人口 平成 32 年 (2020 年 ) までの人口を 国勢調査 ( 平成 7 年 ~22 年 ) による男女各歳人口をもとにコーホー 平成 32 年 (2020 年 ) までの人口

平成21年6月23日

Transcription:

4. ドイツにおける地域振興に係る支援 特例の事例 ~ ジョイント スキーム (Gemeinschaftsaufgabe<Joint Responsibilities>)~ 1) 施策の狙い 1 施策制定の背景 ドイツは 歴史的に各州の権限が大きく 1969 年にドイツ連邦共和国基本法 ( 憲法 ) を改正する以前は 所得税 法人税 売上税などは全て州の財源であった また 経済政策 地域政策も各州が握っており国家全体の統一的な政策を打つことができなかった 国家の発展のために各地域のレベルを一定水準に向上させることが必要なため 州の権限を抑え連邦政府による普遍的な経済政策を可能とする制度的基盤が必要とされた 2 施策制定の狙い 制定以前は各州の権限が大きくドイツ全体の生活水準にばらつきがあった このバラツキを解消して国家全体の経済水準を向上させること つまりは都市部 農村部の停滞地域を復興させることが目的 東西ドイツ統合後は 特に旧東ドイツ地域の経済水準向上のために使われている側面がある 3 法的根拠 1969 年 ドイツ連邦共和国基本法 ( 以下 基本法 ) 改正により連邦と州の共同事務 および連邦の州に対する特定補助金制度が導入された 基本法第 8 章 Gemeinschaftsaufgabe(Joint Responsibilities) の 91a 条と 91b 条に基づいている 同時に それまでは州の財源であった所得税 法人税 売上税などの 50% が連邦に移管された これにより連邦政府の権限が強まった 一連の法改正により 本来的には州が行うべき事項であっても 連邦国家全体の発展に重要なものでありそれが生活環境の改善にとって必要なものであれば 連邦はその任務への参加が基本法により認められた 47

基本法第 91a 条 [ 連邦法に基づく連邦の協力 ] 基本法 91b 条 [ 協定に基づく連邦と諸ラントの協力 ] (1) 連邦は 以下の分野において 諸ラントの任務が全体にとって重要な意味をもち かつ 連邦の協力が生活関係の改善のために必要なときは 諸ラントの任務の遂行に協力する ( 共同の任務 ) 1. 大学付属病院を含む大学の拡充および新設 2. 地域的経済構造の改善 3. 農業構造および沿岸保護の改善 (2) 共同の任務の詳細は 連邦法が連邦参議院の同意を得て定める その法律には 任務遂行のための一般原則が規定されなければならない (3) その法律は 共同の大綱計画の手続および組織について規律する 大綱計画にある企画を採用するためには 実施される地域のラントの同意が必要である (4) 連邦は 1 項 1 号および 2 号の場合には 各ラントにおける支出の半額を負担する 1 項 3 号の場合には 連邦は 少なくともその半額を負担するが その際 分担の割合は すべてのラントに対して均一に定めなければならない 詳細は 法律で定める 資金の提供は 連邦およびラントの予算における確定にまつものとする (5) 連邦政府および連邦参議院は 共同の任務の実施について 要求に基づいて 情報を得る権利を有する 連邦および諸ラントは 協定に基づいて 教育計画について ならびに超地域的意義を有する科学研究の施設および企画の促進について協力することができる 費用の分担は 協定で定める 法的根拠 基本法 91a 条 基本法 91b 条 ジョイント スキーム制定の背景 地域計画は各州個別に行っており 経済水準にばらつきがあった 国家全体の経済水準を一定以上に高める必要があった ジョイントスキームの狙い 創設以来 経済水準の低い地域を活性化させようとしてきた 東西ドイツ統一後は 特に旧東ドイツ地域の経済活性化に活用されている 理論的根拠 州や地域に限定されない政策を打つことで 経済効果を高めることができる 4 沿革 1969 年 ドイツ基本法改正に伴いジョイントスキーム制度創設 1991 年 東西ドイツ統一後は旧東ドイツの経済復興に活用される 1995 年 州は 州独自のプログラム ( 職業訓練 企業活動支援 人材のマッチング R&D の支援策 ) を強化するためにジョイントスキームを活用できるようになった 1998 年 ジョイントスキームを 統一 EU の制度に適合するように修正すべきであると EU が発表 2000 年 市町村レベルによる地域計画政策のためにジョイントスキームを適用できる ようになった 48

2) 施策の内容 1 施策の概要 ジョイント スキームの仕組み ジョイントスキーム基金は計画委員会により配分されている 計画委員会は連邦政府と各州代表により構成されており ジョイントスキーム全体を運営している 計画委員会とは別途 小委員会が開催されており主要な産業団体 商工会 省庁の代表者により 地域振興政策に関する産業界からの意見を集めている 小委員会によりまとめられた意見は計画委員会に反映されている 計画委員会により決定された配分により基金は各州に配分される 各州には 支援の受け皿として State Assistance Bank という機関が設置されており ここを通して各事業に資金が供給される 事業は Commercial Investment および地方自治体レベルを対象とした Public Infrastructure Investment という 2 種類に分けて考えることができる 2 施策のプロセス プロセス 1~ 計画委員会による資金配分の決定 地域振興政策の大枠は 連邦と州が合同で組織して毎年開催される計画委員会によって決 定される まず 旧西ドイツ 204 旧東ドイツ 76 に分割した 労働市場地域 (Arbeitsmarktregion)(3 郡程度の大きさ ) において 4 種の指標 ( 地域の失業率 地域所得 地域インフラ整備状況 地域人口の将来予測 ) を算出し それらの重み付け合計値から全労働市場地域の数値リスト を作成して地域を区分し 支援を必要とする対象地域を決定する 細かい変更は毎年 大き な変更は 3~4 年毎に行われる 計画委員会では連邦が 16 票 各州が各 1 票ずつ 合計 32 票があり 意思決定には連邦政 府の合意と各州票のうち 9 票以上が必要である これは 意思決定のためには 1 連邦政府 内部における協議 2 各州間における協議 3 両者の意見を持ち寄った委員会における協議 が必要だということを意味している さらには 小委員会を通して産業界の意見も考慮して おり 極端に調整重視になっているということである つまり アメリカの連邦制に比べる と 中央政府と地方政府の権限が明確に分離されておらず 逆に 地域振興施策の意思決定 のためには中央政府と地方政府の協議が義務付けられていると言える 支援地域の決定方法 ジョイントスキームは雇用を最重視しており 地理的な地域により区分される よりも 交通インフラによって規定される通勤エリアとして区分されている 4 指標のウエイトは 失業率 40% 地域所得 40% インフラ整備状況 10% 人口予測 10% で重み付けされ 計算される 上記計算方法により労働市場地域は以下に 5 区分され A~D の 4 区分に対して 地域指標段階に応じた資金支援がなされる A: 旧東ドイツ内の人口が多い地域 B: 旧東ドイツ内の人口の少ない地域 C: 旧西ドイツ内の農村 産炭地域 D: 旧西ドイツ内の中小企業 インフラ援助地域 E: その他の地域 49

プロセス 2~State Assistance Bank による資金供給 プロセス 1 における計画委員会の意思決定により決定された各州への配分資金は State Assistance Bank を通して実際の事業に供給される 事業には 商業ベースの側面が強い Commercial Investment 公共投資 インフラ整備の側面強い Public Infrastructure Investment に分けられる また 各州は ジョイントスキームによる支援策を超える独自の支援は行えないことになっている これにより 地域格差是正における連邦の主導性が確保される 一方 地域振興政策への EU の関与が大きく EU がドイツに割り当てた支援可能な対象人口を ジョイントスキームで地域振興政策の対象地域とした合計人口が上回ることができない なお 1991 年から 1998 年までの連邦政府の予算に占めるジョイントスキームの割合は 単独だと 2% EU の補助金も含めると約 4% に達する また 対象事業の約半分は地方農村部で行われている 残りの約半分は都市部である 地方の対象エリアの住民は 1600 万人である ( ドイツの総人口の約 20%) これらの対象エリアのほとんどは EU 地域基金の交付対象になっている 図表ジョイントスキームによる資金供給額 ( 単位 : 百万 DM) 1997 1998 1999 2000 2001( 計画 ) New States Federal 2,850 2,923 2,561 2,276 1,977 State 2,850 2,923 2,561 2,276 1,977 EU 1,636 1,610 1,746 906 514 Original States Federal 350 200 230 237 280 State 350 200 230 237 280 EU 18 19 20 111 116 Total Federal 3,200 3,123 2,791 2,513 2,257 State 3,200 3,123 2,791 2,513 2,257 EU 1,654 1,629 1,766 1,017 630 Together 8,054 7,875 7,348 6,043 5,144 出所 ) ドイツ政府資料より抜粋 資金供給の特徴 (1) 適用の考え方 特に経済的に弱い地域にフォーカスしなければならない 地域の経済発展と雇用創出にフォーカスしなければならない 他の制度とのシナジーが生まれるよう最大限努力すること (2) 旧東ドイツ地域の経済水準向上に活用 旧東ドイツ地域は 全体が最優先の対象地域に指定されており 産業 企業の近代化 再教育等通じた雇用対策 企業立地条件整備等が重点事業として行われている ジョイントスキームに基づく旧東ドイツ地域への資金支援実績 (1997~99 年 ) は 対象プロジェクト 562 億マルクに対して 155 億マルクが支援されており プロジェクト資金の 28% が支援されている 50

一方で 旧西ドイツ地域では 対象プロジェクト 156 億マルクに対して 18 億マルク (12%) が支援されるに留まっており 東西格差の是正が強力に進められていることが窺える 旧東ドイツ地域では 中小規模ビジネスに対する補助金の上限が 50% 大企業に対する補助金の上限が 35% を占める 旧西ドイツ地域では 中小規模に対する補助金の上限は 28% 大規模ビジネスに対する補助金の上限は 16% である 旧東ドイツ地域では小規模事業者に対する支援に多くの補助金を投入していると考えられる プロセス 3~ 事業の評価 ジョイント スキームの対象事業は三つの方法によりモニタリングされている (1) 連邦経済省と州の監査機関によるモニタリング ~ 事業ベース連邦経済省と各州の監査機関は State Assistance Bank を通して各州の資金運用状況を確認している (2) 支援地域の決定プロセスによる評価支援地域の区分は 細かい修正は毎年 大幅な見直しは 3~4 年ごとに行われている このプロセスにより 支援対象であった地域が非支援対象となる あるいは経済水準が向上したという結果になる場合がある こうした地域区分の再定義プロセスによりジョイントスキームによる支援効果が測定されている (3) データによる経済分析三つ目の評価スキームは データによる経済性評価である 一つは マクロ経済分析による包括的な評価 もう一つは 個別事業について 支援した場合と支援しなかった場合についてデータを比較しどのような効果があったのかを測定する評価である 3 具体的な内容 支援メニューは補助金 税制上の優遇措置 公的資金の貸与 債務保証の 4 つである 51

52