総説 眼サルコイドーシスの診断と治療 サルコイドーシスに伴うぶどう膜炎の診断と治療 望月 學 要旨 サルコイドーシスは非乾酪壊死性の肉芽腫性病変を全身臓器に生じる原因不明の慢性炎症であるが 眼においても肉芽腫 性炎症を来たし 肉芽腫性ぶどう膜炎を呈する代表的疾患である 本稿ではサルコイドーシスの特徴的といわれているぶど う膜炎の眼病変を解説し 眼科の立場から現行のサルコイドーシス診断基準と眼サルコイドーシス診断の手引きを再検討し その問題点について考察する [日サ会誌 2004;24:11-19] キーワード 肉芽腫性ぶどう膜炎 眼サルコイドーシスの診断基準 Diagnosis and Treatment of Uveitis Associated with Sarcoidosis Manabu Mochizuki ABSTRACT Sarcoidosis is a systemic granulomatous disease of unknown etiology. As granulomatous uveitis is frequently observed in this disease, I discribe some characteristic changes of uveitis associated with sarcoidosis and comment on the guidelines for the diagnosis of ocular sarcoidosis. [JJSOG 2004;24:11-19] keywords ; Granulomatous uveitis, Diagnostic criteria for ocular sarcoidosis 東京医科歯科大学眼科 著者連絡先 望月 学 113-8519 文京区湯島1-5-45 東京医科歯科大学視覚応答調節学 TEL 03-5803-5296 FAX 03-3818-7188 E-Mail m.manabu.oph@tmd.ac.jp Department of Ophthalmology & Visual Science Tokyo Medical and Dental University, Graduate School of Medicine 11
日サ会誌 2004, 24(1) I 緒言 Table 2. Diagnostic Criteria for Clinical Sarcoidosis サルコイドーシスは本邦におけるぶどう膜炎の主要原因 D 1HJDWLYH WXEHUFXOLQ VNLQ WHVW 疾患である 例えば 当科ぶどう膜炎専門外来の臨床統計 ではサルコイドーシスが最も患者数の多い疾患であり全体 E,QFUHDVHG VHUXP ǫ JOREXOLQ の約 15 を占め 次いで Behcet 病 11 Vogt- 小柳 - 原 G,QFUHDVHG VHUXP O\VR]\PH 田病 6 HLA B27 陽性急性前部ぶどう膜炎 6 が続く Table 1 一方 サルコイドーシスという観点か H $EQRUPDO *D XSWDNH F,QFUHDVHG VHUXP DQJLRWHQVLQ FRQYHUWLQJ HQ]\PH $&( I,QFUHDVHG WRWDO FHOO FRXQWV O\PSKRF\WRVLV DQG KLJK &' &' UDWLR LQ EURQFKRDOYHRODU ODYDJH IOXLG %$/) らみると 本症患者の約 50 がぶどう膜炎を合併すると報 告されており ぶどう膜炎はサルコイドーシスという全身 &OLQLFDO VDUFRLGRVLV LV GLDJQRVHG ZKHQ RXW RI V\VWHPLF H[DPLQDWLRQV 疾患の主要病変と言える サルコイドーシスが発見され診 GHVFULEHG DERYH LQFOXGLQJ D RU F DUH SRVLWLYH 断に至るきっかけとなる症状の中で眼症状が最も頻度が高 いが これはぶどう膜炎では霧視 眼の充血 視力低下な ど患者が鋭敏に感じる自覚症状が生じるためにほとんどの 患者が眼科を受診すること 更にその眼内所見に特徴があ るために眼科で本症が疑われ内科への紹介など全身検査が おこなわれ診断に至るケースが多いことなどが要因として 挙げられる サルコイドーシスの診断には本学会が定めた診断基準 Table 2 があり 本邦では内科のみならず眼科でも広く 用いられている また 眼サルコイドーシスの診断の手引 き Table 3 も本学会で検討され どのような眼所見があ れば本症を疑い全身検査を進めて行くべきかのガイドライ ンがある 本稿ではサルコイドーシスの特徴的といわれているぶど う膜炎の眼病変を解説し 眼科の立場から現行のサルコイ ドーシス診断基準と眼サルコイドーシス診断の手引きを再 Table 3. Guidelines for Ocular Sarcoidosis $QWHULRU XYHLWLV 7UDEHFXODU PHVKZRUN QRGXOHV SHULSKHUDO DQWHULRU V\QHFKLD 3$6 SDUWLFXODUO\ WHVW VKDSHG 3$6 6WULQJ RI SHDUOV VQRZ EDOOV YLWUHRXV RSDFLWLHV 5HWLQDO YDVFXOLWLV SKUHELWLV LQ PDQ\ FDVHV DQG DWUHWLWLV LQ VRPH FDVHV DQG SHULSKOHELWLV &KRULRUHWLQDO H[XGDWHV RU QRGXOHV &KRULRUHWLQDO DWURSKLF OHVLRQV㧔VLPLODU WR DWURSKLF OHVLRQV RI UHWLQDO SKRWRFRDJXODWLRQ㧕 6DUFRLGRVLV LV VWURQJO\ VXVSHFWHG ZKHQ RU PRUH DPRQJ WKH RFXODU V\PSWRPV GHVFULEHG DERYH DUH SRVLWLYH DQG RQH PXVW IROORZ WKH GLDJQRVWLF FULWHULD RI VDUFRLGRVLV 検討し その問題点について考察したい Table 1. Clinical Survey of Uveitis at Tokyo Medical and Dental University Hospital (1999-2003) II サルコイドーシスの眼病変 サルコイドーシスは非乾酪壊死性の肉芽腫性病変を全身 Clinical Entity Patients (%) Sarcoidosis 90 (14.7) Behçet disease 71 (11.5) Vogt-Koyanagi-Harada disease 38 (6.2) Ankylosing spondylitis 36 (5.9) Acute retinal necrosis 17 (2.8) Herpetic iritis 17 (2.8) Tuberculosis 14 (2.3) Toxochariasis 12 (2.0) Cytomegalovirus retinitis 9 (1.5) HTLV-1uveitis 9 (1.5) Toxoplasmosis 6 (1.0) 65 (10.7) Idiopathic 228 (37.4) Total 612 (100.0) Others 12 臓器に生じる原因不明の慢性炎症であるが 眼においても 肉芽腫性炎症を来たし 肉芽腫性ぶどう膜炎を呈する代表 的疾患である 肉芽腫性ぶどう膜炎を呈する疾患はサルコ イドーシスの他には結核 ハンセン病 Vogt- 小柳 - 原田病 の慢性期 Ponser-Shlossman 症候群 HTLV-I ぶどう膜炎 などがあるので その診断にあたっては眼病変だけでなく 全身検査が非常に重要になってくる 以下にサルコイドー シスによくみられる眼病変について解説する ① 前部ぶどう膜炎 炎症のために前房中に細胞が浮遊しフレアがみられれば 臨床的には前部ぶどう膜炎或いは虹彩炎と呼ばれる これ はサルコイドーシスに限らず殆んど全てのぶどう膜炎疾患 で出現する非特異的な病変である しかし 前部ぶどう膜 炎があるということは眼内に活動性炎症が存在することを 示している
総説 眼サルコイドーシスの診断と治療 ② 角膜の病変 豚脂様角膜後面沈着物 mutton-fat keratic precipitates mutton-fat KP ぶどう膜炎では角膜後面に炎症細胞が付着して角膜後面 沈着物を形成する サルコイドーシスなどの肉芽腫性ぶど う膜炎では マクロファージなどの炎症細胞が集簇して大 型の沈着物を形成し豚脂様角膜後面沈着物 豚脂様 KP Figure 1 とよばれ 一方 Behcet 病など非肉芽腫性ぶど う膜炎では細かな細胞が角膜後面沈着物全体に均一に付着 する Figure 2. Figure 1. Iris nodules Mutton-fat keratic precipitate (KP) ③ 虹彩の病変 虹彩結節 iris nodules Figure 2 サルコイドーシスでは瞳孔縁や虹彩実質に小さな類上皮 細胞肉芽腫が形成され虹彩結節として観察される 瞳孔縁 の結節は Koeppe 結節と呼ばれ 虹彩実質の結節は Busacca 結節と呼ばれる ④ 前房隅角の病変 隅角結節 trabecular meshwork nodules Figure 3. Trabecular meshwork (TM) nodules テント状周辺虹彩前癒着 tent-shaped peripheral anterior synechia tent-shaped PAS 虹彩と角膜があわさる部分は前房隅角と呼ばれ 房水が 眼内から眼外へ流出する線維柱帯という組織がある 隅角 鏡という特殊なコンタクトレンズと用いて観察すると 肉 芽腫性ぶどう膜炎の活動期には線維柱帯に小さな白色の隅 角結節 Figure 3 がみられることが多い また これら の隅角結節が虹彩根部と癒着するとテント状あるいは台形 状の小さな周辺虹彩前癒着 テント状 PAS Figure 4 が 形成される 生じた癒着はそのまま残存するのでテント状 PAS は炎症が消退しても観察される ⑤ 硝子体の病変 塊状混濁 雪玉状混濁 snow ball opacity 数珠状混濁 Figure 5 硝子体はコラーゲン線維と水分からなる無色透明なゲル 状の組織で 眼球の中央に存在する ぶどう膜炎には炎症 細胞が房水中のみならず硝子体にも浸潤することが多い Figure 4. Tent-shaped peripheral anterior synechia (PAS) 13
日サ会誌 2004, 24(1) サルコイドーシスなどの肉芽腫性ぶどう膜炎では硝子体中 に類上皮肉芽腫を形成し雪玉状硝子体混濁 それが連なっ て数珠状あるいは真珠の首飾りと呼ばれる独特の硝子体混 濁を形成する ⑥ 網 脈 絡 膜 の 病 変 網 脈 絡 膜 滲 出 物 お よ び 結 節 chorioretinal exudates 広範囲萎縮病巣 chorioretinal atrophic lesions サルコイドーシスでは網膜と脈絡膜に類上皮細胞肉芽腫 が形成され 多発性の黄白色斑状病巣として観察され Figure 6 下方の眼底周辺部によく出現する また 結 節が網膜血管周囲 或いは視神経乳頭上 Figure 7 に出 現することもしばしばある これらの網脈絡膜滲出病巣は 炎症が活動性の時期にみられるが これらの病巣が瘢痕化 すると広範囲の網脈絡膜萎縮病巣 Figure 8 となる ⑦ 網膜静脈周囲炎 periphlebitis Figure 9 Figure 7. Optic disc nodules サルコイドーシスでは網膜血管炎 特に静脈周囲炎がみ られる 網膜静脈に沿って竹の節のように白色の細胞浸潤 が生じる Figure 9 同様の所見は結核性の網膜血管炎で もみられる Figure 8. Chorioretinal atrophic lesions Figure 5. Snowball vitreous opacity Figure 6. Chorioretinal exudates 14 Figure 9. Retinal periphlebitis
総説 眼サルコイドーシスの診断と治療 III サルコイドーシス診断基準および眼サルコ イドーシス診断の手引きの再評価 面沈着物と虹彩結節も サルコイドーシスでの陽性率が対 サルコイドーシスの診断基準に挙げられている検査項目 と 眼サルコイドーシス診断の手引きに挙げられている眼 る しかし 網脈絡膜滲出物や網膜静脈周囲炎の陽性率は 両群間で有意差がなかった これは 対照群のベーチェッ 臨床所見について ぶどう膜炎を有するサルコイドーシス ト病でもサルコイドーシスとは多少違うものの網脈絡膜滲 出物といえるものがしばしば観察されること また結核で 照群に比べて有意に高く 本症を特徴付ける眼所見といえ 患者 組織診断群 とその対照としてサルコイドーシス以 外のぶどう膜炎患者の間で比較検討した サルコイドーシ はサルコイドーシスと同じような網膜静脈周囲炎が高頻度 ス患者は当院呼吸器内科で経気管支肺生検などで診断が確 定した組織診断群の 67 名で 対照群はベーチェット病 に出現することが影響している サルコイドーシス群と対照群における各眼所見の陽性率 Vogt-小柳 -原田病 結核によるぶどう膜炎患者 111名である に基づいて それぞれの眼所見のサルコイドーシスにおけ る感度と特異度を解析した 隅角結節を例にとって感度と 1 眼サルコイドーシスの眼所見 眼サルコイドーシス診断の手引き に挙げられている眼 特異度の計算方法を Table 4 に示す 感度は真の陽性率 true 所見 前部ぶどう膜炎 隅角結節 テント状 PAS 硝子体 の数珠状 雪玉状混濁 網脈絡膜滲出斑 網脈絡膜の広範 positive または positive in disease を示し 具体的にはそ の疾患における所見或いは検査の陽性率を示すものである 一方 特異度は真の陰性率 true negative または negative in control で 対照群でその所見や検査が陰性である確率 を示すものである 当然 感度と特異度がともに高い所見 や検査が疾患の診断に有用であることになる サルコイドーシスにおける各眼所見の感度と特異度を算 出した Table 5 Figure 11 には これらの感度と特異度 を二次元座標にプロットした Receiver Operating Curve ROC を示す 前述のように 感度と特異度がそれぞれ 100 の原点が最も診断に有用な所見ということになり そ の原点からの距離が離れるほど診断における有用性が低い と考えられる また この図で感度 0 と特異度 0 を結ぶ 囲萎縮病巣 の他に 豚脂様角膜後面沈着物と虹彩結節も 解析対象に加え サルコイドーシス患者群と対照群でこれ Figure 10 か らの各所見の陽性率を調査した Figure 10 ら明らかなように 前部ぶどう膜炎はサルコイドーシスで も対照群でも陽性率が高く ぶどう膜炎であればほぼ全例 にみられる非特異的所見でありことがわかる 一方 隅角 結節 テント状 PAS 塊状硝子体混濁 広範囲網脈絡膜萎 縮病巣はサルコイドーシス患者群での陽性率は対照群に比 べて極めて高く 統計的有意差も非常に大きくサルコイドー シスに特異的な眼所見と考えられる また 眼サルコイドー シス診断の手引きでは取り上げられていない豚脂様角膜後 Positivity (%) Ocular symptom 20 40 60 80 NS Anterior uveitis Mutton-fat KP P䋼.0001 Iris nodules P=.018 TM nodules P䋼.0001 P䋼.0001 Tent-shaped PAS Vitreous opacity P䋼.0001 Chorioretinal exudates Chorioretinal atrophy Retinal periphrebitis NS P=.008 NS Figure 10. Ocular symptoms in patients with sarcoidosis (upper column) and controls (lower column) 15
日サ会誌 2004, 24(1) 45 度の線上あるいはそれよりも右下にプロットされる項目 は 診断における有用性はないものと考えられる このよ うな方法で眼所見の解析結果をみると テント状 PAS が最 も原点から近く診断に有用と考えられ 次いで塊状硝子体 混濁 隅角結節 広範囲網脈絡膜萎縮病巣 豚脂様角膜後 面沈着物 虹彩結節 網脈絡膜滲出病巣と続き 前部ぶど Table 4. う膜炎は最も原点から離れた位置にある所見である また 感度 0 特異度 0 を結ぶ 45 度の線よりも右下にプロット されている眼所見は 解析した項目の中で前部ぶどう膜炎 だけであった このようなことからも 前部ぶどう膜炎を サルコイドーシスの特徴ある眼所見として診断の手引きに 含むのは検討の余地があると考えられる Table 5. Sensitivity and Specificity Symptoms Sensitivity㧔㧑㧕 Specificity㧔㧑㧕 Disease TM nodules* + Sarcoidosis Control 32 Total 67 Anterior uveitis 81 11 Mutton-fat KP 36 94 4 Iris nodules 31 85 107 TM nodules 52 96 Tent-shaped PAS 35 㧙 Sensitivity and Specificity of Ocular Symptoms 111 ( *TM: trabecular meshwork) 67 87 Snow ball vitreous opacities 79 61 Chorioretinal exudates 58 42 Chorioretinal atropic lesions 52 68 Periphlebitis 62 45 Formula of sensitivity and specificity: 1. Sensitivity㧔true positive㧕㧩(35 / 67)x100㧩53% 2. Specificity㧔true negative㧕㧩(107 / 111)x100㧩94% Sensitivity (%) 100 80 60 100 40 3 20 0 5 7 1 80 Specificity (%) 4 6 2 60 8 40 20 9 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. Tent-shaped PAS Snow ball vitreous opacities TM nodules Chorioretinal atrophioc lesions Mutton-fat KP Retinal periphrebitis Iris nodules Chrioretinal exudates Anterior uveitis 0 Figure 11. Receiver Operating Curve of Ocular Symptoms 2 サルコイドーシスの診断基準の検査項目 同様の解析をサルコイドーシス診断基準に挙げられてい る検査項目についておこなった Figure 12 しかし 67Ga シンチと気管支肺胞洗浄液検査は対照疾患患者で全くおこ 16 なわれていないので今回の解析対象から除外した また 診断基準の検査項目には含まれていまいが 眼科を受診し ているぶどう膜炎患者にとって胸部 X 線検査は重要な全身 検査と考えられるので BHL も解析対象に含めた
BHL 82 67 64 62 24 ROC 0 0 45 Figure 13 X BHL Table 6 Table 6. Sensitivity and Specificity of Systemic Examinations Examinations Sensitivity Specificity Negative tuberculin test 71 89 Increased serum ACE* 63 95 Increased serum lysozyme 67 94 Increased serum -globulin 27 96 Positive BHL** 82 97 * ACE: angiotensin converting enzyme **BHL: bilateral hilar lymphademopathy Positivity (%) Examinations 20 40 60 80 Negative tuberculin test Incresed serum ACE Incresed serum lysozyme Increased serum globulin Positive BHL Figure 12. Systemic Examinations in patients with sarcoidosis (upper column) and controls (lower column) Sensitivity (%) 100 80 60 40 20 0 100 1 3 2 4 5 80 Specificity (%) 60 40 20 1. Positive BHL 2. Negative tuberculin test 3. Inreased serum lysozyme 4. Increaed serum ACE 5. Increased serum -globulin 0 Figure 13. Receiver Operating Curve of Systemic Examinations 17
日サ会誌 2004, 24(1) IV サルコイドーシス診断基準 および 眼サル コイドーシス診断の手引き の問題点 V サルコイドーシスに伴うぶどう膜炎の治療 サルコイドーシスの診断は依然として病理組織診断が診 断の黄金律である しかし 生検が出来ない場合や 生検 がどこにあるかにより 前部ぶどう膜炎 中間部ぶどう膜 炎 硝子体の炎症が主体 後部ぶどう膜炎 網脈絡膜炎 が陰性の場合には臨床診断の検査項目が非常に重要になっ てくる ぶどう膜炎を発病して眼科を受診する患者の多く は たとえサルコイドーシスが強く疑われても経気管支肺 サルコイドーシスに伴うぶどう膜炎は眼内の炎症の主座 が主体 に大別され 抗炎症治療はそれぞれ異なる 1 前部ぶどう膜炎 サルコイドーシスに伴うぶどう膜炎が前部ぶどう膜炎だ 生検や気管支肺胞洗浄液検査などの侵襲の大きい検査に同 意する患者は多くなく またそのような検査自体が出来な けであれば 治療は余程強い前部ぶどう膜炎でない限りは 副腎皮質ステロイド薬点眼と散瞳薬点眼を中心とした局所 い施設も多い 一方 眼科領域のぶどう膜炎患者にとって 治療でよい まれに 隅角結節が多くある場合に 眼圧上 胸部 X 線検査はそれ自体が全身検査と位置付けられる 眼 科領域におけるサルコイドーシスの診断には国際的な基準 昇がみられることがあるが その場合には緑内障治療薬点 眼を併用する 2 中間部ぶどう膜炎 はない 生検が診断の黄金律であることは本邦と同じであ るが 大きく異なる点は 海外ではサルコイドーシスが疑 われるぶどう膜炎患者に対して 経気管支肺生検や気管支 肺胞洗浄液検査はおこなわれることは殆んどなく 血清 ACE 値 胸部 X 線検査 67Ga シンチで済まされている こ のような海外の診断法は安易に過ぎるとも考えられるが しかし 眼科の立場からすると 本邦の診断基準の検査項 目に胸部 X線検査による BHL陽性を加えてもよいのではな いかと考える 眼サルコイドーシス という用語は 海外で用いられ ている ocular sarcoidosis と混同され眼科の現場で誤解 を招いている 海外では 肉芽腫性ぶどう膜炎の所見があ り患者に血清 ACE 値 胸部 X 線検査 67Ga シンチのいず れかが陽性であれば それ以上詳しい検査は何もしないで ocular sarcoidosis と診断している 一方 本邦の 眼 サルコイドーシス の手引きに記載されている眼所見は あくまでもサルコイドーシス臨床診断群を疑って全身検査 をおこなうきっかけとなる眼所見にすぎず 診断はあくま でも全身検査の結果に基づいてなされることになっている それにもかかわらず 眼科医の多くは 全身検査で臨床診 断群の診断基準を満たさないが肉芽腫性ぶどう膜炎を呈し ている患者に対して 海外の ocular sarcoidosis と混同 して 眼サルコイドーシス という呼び方をしている 一 方で サルコイドーシス組織診断群患者の中には 眼サル コイドーシス診断の手引きに記載されている眼所見を満た さない患者が少なからずいる このようなことを考慮する と 診断基準の中から 眼サルコイドーシス という誤解 を招く用語自体をなくし 単に サルコイドーシスに合併 するぶどう膜炎 とした方がよいと考えられる 硝子体混濁が強い場合には 副腎皮質ステロイド薬点眼 だけでは充分な治療効果が得られないことが多い その場 合は 副腎皮質ステロイド薬の局所注射 結膜下注射 テ ノン嚢内注射など を併用する 3 後部ぶどう膜炎 網膜 脈絡膜に軽度の炎症しかない場合は経過観察でよ い しかし 炎症が強い場合や病巣が眼底後極に近く視力 低下を来たしている場合 あるいは眼底周辺の活動性病変 が広範囲である場合には副腎皮質ステロイド薬の経口投与 をおこなう 通常 成人でプレドニゾロン 30mg/ 日を初期 投与量として 2 4 週間連日投与し その後ゆっくりと減量 しんがら 6 9ヶ月間で中止する 経口投与が副作用でおこ なえない場合は 副腎皮質ステロイド薬のデポ製剤を後部 テノン嚢内注射をおこなう 4 眼合併症の治療 サルコイドーシスに伴うぶどう膜炎は慢性の経過をとる ので 種々の眼合併症を生じ これらに対する治療も臨床 的に重要である ① 併発白内障 眼内の炎症 加齢 副腎皮質ステロイド薬 の副作用など種々の要因が重なって生じる 薬物治療は できないので ぶどう膜炎が鎮静化している時期に白内 障手術と眼内レンズ挿入術を行う ② 続発緑内障 サルコイドーシスでは 隅角結節などの炎 症によるもの 副腎皮質ステロイド薬治療が誘因となる もの ステロイド緑内障 隅角癒着によるものなど色々 な機序で眼圧上昇をきたす 治療法は 第一に薬物治療 β ブロッカー薬点眼 プロスタグランディンズ製剤点 眼 炭酸脱水酵素阻害薬など それが無効であれば手 術療法をおこなう 18
. 結語 19