2013 年 2 月 16 日 第 14 回抗悪性腫瘍薬開発フォーラム 個別化医療における薬剤および診断薬開発に向けての課題 診断薬と保険償還に関わる諸問題について 検査センターの立場より 株式会社エスアールエルマーケティング部 蝶野和子
コンパニオン診断を国内導入した経験より 気づいた課題 1/5 体外診断薬も保険償還もされている環境下で発生した事検査材料による不安定要素
セツキシマブ :EGFR(IHC) EGFR pharmdx ダコ 690 点海外の報告ではほぼ 100% 陽性と言われていました が 実際には何度ご依頼があっても陰性しか出ないご施設があり SRL はご批判を頂きました
セツキシマブ :EGFR(IHC) 今では良く知られる事となった ホルマリン過固定の問題 解決に動いてくださったのはメルクセローノさん BMS さん セツキシマブ病理部会の先生方
モガムリズマブ :CCR4(IHC/FCM) クリゾチニブ :ALK 融合遺伝子 (IHC/FISH) 2012 年コンパニオン診断薬は 2000 点問題の壁を越え 治療薬とほぼ同時期に保険適用となりました
モガムリズマブ :CCR4(FCM) 健常者よりも明らかな発現強度の上昇? どうやって判定したいいの? 明らかな だけにしたら SRL は判定保留ばかりでこまる とまたもご批判 判定保留 で投薬機会を逃さないよう 検査結果解釈の認知活動を実施し問題の解決に動いてくださったのは協和発酵キリンさんとポテリジオ研究会の先生方でした
クリゾチニブ :ALK 融合遺伝子 (IHC/FISH) ALK 融合遺伝子の測定には複数の測定法があり どのように検査を進めるかかが検討され以下の 引き が開示されました これらの検査は保険償還されているものといないもの IVD と RUO また FISH の国内処理能力が危惧される等 課題の多い導入でした ファイザー社による薬価収載まで IHC と FISH の同時測定が提供され 2 法の乖離は当初予想と異なるものでもあり 臨床へのアナウンスが必要となりました RUO 試薬 400 点 LDT( 自家製 ) 保険未収載 IVD 試薬 6,520 点 肺癌患者における ALK 遺伝子検査の 引き ( 日本肺がん学会バイオマーカー委員会 )
クリゾチニブ :ALK 融合遺伝子 (IHC/FISH) 問題の解決に動いてくださったのはファイザーさん日本肺癌学会バイオマーカー委員会の先生方
ここで学んだ事 遺伝子検査は体外診断薬が存在していても 検体の取扱いや様々な要因により検査結果に影響が出る 検査センター内の品質保証体制だけでは正しい検査結果を導き出す事ができない
コンパニオン診断を国内導入した経験より 気づいた課題 2/5 保険償還のタイミングや体外診断薬の有無は検査浸透への影響要因となるのか?
セツキシマブ :KRAS 遺伝子変異検査 当初 IVDは存在せず ガイダンスに基づき自家製試薬による解析が進められた ガイダンス開示 1 法のLDT 保険償還 IVD 発売 2,500 100% 2,000 KRAS LDT:DirectSequence IVD は 2011 年 5 月 ScorpionARMS 1,500 50% 1,000 500 0% 0 2008/10 2008/12 2009/02 2009/04 2009/06 2009/08 2009/10 2009/12 2010/02 2010/04 2010/06 2010/08 2010/10 2010/12 2009 年 1 月臨床腫瘍学会 KRAS ガイダンス 2010 年 4 月保険償還
ゲフィチニブ :EGFR 遺伝子変異検査 保険償還はなされ KRAS とは異なり出検しやすい環境であった しかしながら複数の LDT が存在し検査方法 ターゲットとなる Mt 感度のバリデーションまでに約 4 年 IVD 発売までに 6 年を要した 保険償還 複数 LDT ガイダンス バリデーション試験 IVD IVD は 2012 年 9 月 ScorpionARMS 2007 年 6 月より保険償還はされていた 2009 年 6 月日本肺癌学会 EGFR 遺伝子検査解説
Validation study of EGFR mutation tests LDT のバリデーションを実施し 問題解決に動いて下さったのは先生方とアストラゼネカさんでした NCCE / Hyogo CC AstraZeneca ESMO meeting October 11 Poster presentation SRL Direct Sequencing & Cycleave Archival Samples Pathology Review MCM PCR-Clamp Request for Information Obtained Request from for Information each vendor Admixture sample Preparation, at AZUK BML PCR-Invader Genzyme Scorpion ARMS DxS RUO 385P Satouchi et al Part 1 Mutation analysis of Admixture DNA extraction Mutation analysis of Admixture DNA extraction Mutation analysis of Admixture DNA extraction Mutation analysis of Admixture DNA extraction Part 2 Mutation analysis of FFPE Tissue material Mutation analysis of FFPE Tissue material Mutation analysis of FFPE Tissue material Mutation analysis of FFPE Tissue material 382P Goto et al Part 3 Mutation analysis of Cytology sample DNA material extraction Mutation analysis of Cytology sample material DNA extraction Mutation analysis of Cytology sample material DNA extraction Mutation analysis of Cytology sample material DNA extraction Part 4 Mutation analysis of Pleural effusion Mutation analysis of Pleural effusion Mutation analysis of Pleural effusion Mutation analysis of Pleural effusion Review by co-researchers & technical advisors Data Reporting to AstraZeneca for Evaluation, Analyses Final Report and / or Publication
ここで気づいた事 保険償還は検査浸透に欠かせない要件である IVD が存在しない場合 LDT の検査方法や感度 QAQC 等の関係学会ガイダンスやバリデーション試験が必要だと考えられる 競合する検査センターの情報提供だけでは医師の信頼は獲得できず 検査を必要とする患者さんへ速やかに検査を提供する事はできなかった
コンパニオン診断を国内導入した経験より 気づいた課題 3/5 体外診断薬と自家製試薬とライセンス
体外診断薬 (IVD) と自家製試薬 (LDT) 保険診療においては体外診断薬承認された試薬使用が原則となっています 平成 22 年診療報酬点数表 ( 抜粋 ) 第 3 部検査 - 通則 2 検査に当たって施用した薬剤の費用は別に算定できるが 第 2 章第 5 部投薬の部に掲げる処方料 調剤料 処方せん料及び調剤技術基本料並びに同第 6 部注射の部に掲げる注射料は 別に算定できない なお 検査に当たって施用される薬剤 ( 検査用試薬を含む ) は 原則として医薬品として承認されたものであることを要する 検体検査の精度管理等に関する委員会報告書 ( 平成 9 年 2 月 ) 4 衛正検査所における精度管理 ( 抜粋 ) (5) 薬事法で未承認の自家調整試薬の使用について 衛生検査所で検査を行う場合 体外診断薬として薬事法で承認された試薬が存在する場合には 精度管理の観点からも 承認試薬を使用するのが望ましく その際には使用方法に従い使用すべきである 薬事法で未承認の自家調整試薬の使用については 体外診断薬として薬事法で承認された試薬が存在しない場合等のやむを得ない場合に限って使用すべきである その場合にあっては 検査データの普遍性 試薬の安定性 精度管理等について管理された試薬を使用すべきである その際には 検査案内書等への記載などにより 医療機関等にその使用を示すことが望ましい また 必要があれば試薬の管理データについて提示できるようにしておくことが望ましい
D004-2: 悪性腫瘍組織検査 1 悪性腫瘍遺伝子検査イ EGFR 遺伝子検査 2,100 点 EGFR 遺伝子検査の保険適用状況 2012 年 9 月現在 2012 年度以前 留意事項 (1) 1 の悪性腫瘍遺伝子検査は 固形腫瘍の腫瘍細胞を検体とし PCR 法 SSCP 法 RFLP 法等を用いて 悪性腫瘍の詳細な診断及び治療法の選択を目的として悪性腫瘍患者本人に対して行った 肺癌及び大腸癌における EGFR 遺伝子検査又は K-ras 遺伝子検査 膵癌における K-ras 遺伝子検査 悪性骨軟部組織腫瘍における EWS-Fli1 遺伝子検査 TLS-CHOP 遺伝子検査又は SYT-SSX 遺伝子検査 消化管間葉系腫瘍における c-kit 遺伝子検査 家族性非ポリポージス大腸癌におけるマイクロサテライト不安定性検査又は悪性黒色腫センチネルリンパ節生検に係る遺伝子検査について 患者 1 人につき 1 回に限り算定する ただし 肺癌における EGFR 遺伝子検査につ いては 再発や増悪により 2 次的遺伝子変異等が疑われ 再度治療法を選択する必要がある場合にも算定できる また Scorpion-ARMS 法を応用したリアルタイム PCR 法を用いて EGFR 遺伝子検査を実施した場合は 2 の抗悪性腫瘍剤感受性検査の所定点数を算定する D004-2: 悪性腫瘍組織検査 1 悪性腫瘍遺伝子検査 2,000 点 1) 保険点数 2,000 点 2,100 点 (H24 年度診療報酬改定 ) 2) 肺癌における EGFR 遺伝子検査の頻度制限が緩和 (H24 年度診療報酬改定 ) 3) 新法として Scorpion-ARMS 法 2500 点 (H24 年 9 月 1 日 ) 留意事項 (1) 1 の悪性腫瘍遺伝子検査は 固形腫瘍の腫瘍細胞を検体とし PCR 法 SSCP 法 RFLP 法等を用いて 悪性腫瘍の詳細な診断及び治療法の選択を目的として悪性腫瘍患者本人に対して行った 肺癌及び大腸癌におけるEGFR 遺伝子検査又はK-ras 遺伝子検査 膵癌におけるK-ras 遺伝子検査 悪性骨軟部組織腫瘍におけるEWS-Fli1 遺伝子検査 TLS-CHOP 遺伝子検査又は SYT-SSX 遺伝子検査 消化管間葉系腫瘍におけるc-kit 遺伝子検査 家族性非ポリポージス大腸癌におけるマイクロサテライト不安定性検査又は悪性黒色腫センチネルリンパ節生検に係る遺伝子検査について 患者 1 人につき1 回に限り算定する ( 平成 22 年 3 月 5 日保医発 0305 第 1 号より抜粋 )
EGFR ライセンス : 日本で登録されています 18
ロイヤリティー 検査費用内訳とロイヤリティー 検査費用 研究検査 (Home-brew) 臨床検査 ( キット ) 人件費経費材料費減価償却費 ( 機器 システム ) 試薬代 遺伝子基本特許 遺伝子変異特許 変異のアフ リケーション特許 検出方法特許 検出方法アフ リケーション特許 トータルコスト (L&R) (L&R) (L&R) (L&R) (L&R) >>2.1 万円 キット代に含まれる >>2.1 万円 : 該当する場合 (L&R): License 料 + Running Royalty 19
特許登録後に発生する問題 発明の公開 出願公開 審査 設定登録 登録までは自由に実施可能 ( 警告状送付!!) 補償金請求権 * 差止請求 * 損害賠償請求 警告時期あるいは検査開始時に遡った補償金請求の可能性 20
同じ検査項目で 2 つの保険償還枠? 例えば遺伝子検査に 2100 点の他に IVD 試薬の 2500 点の点数が償還 EGFR が 2 種類? いったいどちらの検査をオーダーすればいいのかな? 同じ検査なのに病院によって検査料金が違うらしい? 1 つは体外診断薬でもう一方は自家製の試薬で もごもご 今迄通りで満足 患者負担が少なく検査結果がちゃんと出れば何でもいいよ IVD 承認もライセンスもとったのに自家製止めてくれないのだろうか! ライセンス侵害じゃないの! 診断薬メーカー 検査会社または院内検査室
同じ検査項目で2つの保険償還枠? 検査センターが自家製を中止しIVD 試薬で検査を継続したら IVD 試薬を採用致しましたがこちらは保険点数が 2500 点で試薬代も高額でもごもご 新しい IVD の方法が良いけど患者さんの負担は大きくなるし そんなの困るよ 今までと同じ価格で検査してよ! IVD 試薬を使ってもらえてよかった 開発したかいがあった コンパニオン診断は必要な医療だ! 検査会社または院内検査室 診断薬メーカー 赤字販売では QAQC の担保や いい検査を提供し続けるのは難しい ちゃんと医事や先生の了解を頂いてこい!!
ここで気づいた事 悪性腫瘍の遺伝子と疾患を繋ぐライセンスは数多く存在し 殆ど特許申請されている 遺伝子検査には IVD(In Vitro Diagnostics 体外診断薬 ) と LDT(Laboratory Developed Test 自家製試薬 ) の 2 種類が存在する LDT を検査センターや医療機関で検査実施するためにはライセンスが必要となり検査費用に上乗せせざる得ない 検査センターは今後 次々に登場するバイオマーカー ( 遺伝子検査 ) に対し ライセンス侵害を回避するため ステークホルダーと交渉し 高額なロイヤリティー ランニング料を払いラインナップし続けられるのだろうか
コンパニオン診断を国内導入した経験より 今後推測される課題 4/5 同じ遺伝子変異を測定するのに複数の IVD? 医療機器?
BRAF ライセンス : 日本で登録されています 25
PLX4032 (Vemurafenib):BRAF V600E
Trametinib :BRAF V600E Flaherty KT, et al.: N Engl J Med. 2012[Epub ahead of print]
コンパニオン診断を国内導入した経験より 今後推測される課題 5/5 マルチプルな解析の導入
Oncotype Dx 高額なマルチ検査について 乳がんの治療方針選択に利用される Oncotype Dx は体外診断薬 (IVD; In Vitro Diagnostics) はありません しかし CLIA(Clinical laboratory Improvement Amendment) による規制の下 単一検査機関で検査することを条件に保険償還され 年間約 10 万検査が実施されています
マルチ検査要望の多い NSCLC と関連遺伝子 肺癌の患者さんのわずかな検体を何回薄切して どの遺伝子から測定していけばいいのでしょう
Pan-Cancer Multi-Gene Cancer Panel 他がん腫の driver/actionable gene にも対応可能 第三世代 NGS によるターゲットシーケンス 46 genes, 739 mutations KRA BRAF EGFR TP53 PIK3CA CSF1R JAK2 S NRA PTPN ERBB SRC FGFR3 NPM1 CDKN S 11 2 2A RET HNF1 A PTE N FGFR 2 HRA S SMA D4 FLT3 STK1 1 GNAS SMARC B1 PDGFR A KIT RB1 JAK3 VHL KDR SMO AKT1 ALK MLH1 FBXW7 ERBB4 ATM CDH1 IDH1 CTNNB 1 APC FGFR1 MPL ABL1 MET NOTC H1 31
NGS とご報告書 NGS からの大量の個人情報をオーダリングでお返しできるのだろうか valiant call Report のみでいいのだろうか? 紙 ( 報告書 ) で 400 遺伝子 1000 もの変異情報を冊子にしてお返しするのだろうか?? 電子的に送信した場合 サーバー管理はどうすればいいのだろうか サイバー攻撃にあったら医療機関も SRL も危機に曝される 測定機器の解析ソフトはバージョンアップの度にすべてのネットワークを切断しなければならない
ここで気づいた事 海外ではマルチ解析は CLIA による規制の下 認証を受けた検査機関で検査することを条件に保険償還され 広く診療に普及している 今後 CoDx はマルチ解析や NGS へと移行するかもしれない 検査センターは増え続けるマルチな遺伝子解析に対し 国内導入 臨床への提供をし続けられるのだろうか 臨床検査の歴史を振り返れば 素晴らしい技術の進歩があり 多くの課題を乗り越えてきています 全く予想もつかない 安価で迅速で正確な技術がどんどん開発され ベッドサイドへご提供できています コンパニオン診断も特別なものではなく 臨床の Needs がある限り同じ進化をしていくと考えます 検査センターも実現のお 伝いをしたいと願っております
Close communication and mutual understanding is crucial!! 検査センターの事も忘れないでください