第 12 回目押出し加工, 引き抜き加工 工具のくぼみまたは穴の中に挿入した材料を加圧して, 工具に設けたすきまから流出させ, 一定断面をもつ形状をつくる. 圧縮応力下での加工のため破断する危険が少ない. 複雑な断面形状の成形が可能であり, ステンレス鋼 (SUS), 銅, アルミニウム合金,Ti 合金などの線, 棒, 管, 異形材の成形に利用される. 生命医科学部医工学科バイオメカニクス研究室 ( 片山 田中研 ) IN116N 田中和人 E-mail: 内線 : 6408 圧力容器 ( コンテナ ) 素材 ( ビレット ) 工具 ( ダイス ) 教科書 p.163 図 7.9 材料加工 Ⅱ Biomechanics Laboratory 押出し加工 (Extrusion) とは 素材, 工具ともに加工時には高い圧縮応力 Ao 押出し比 = = ビレット断面積長所 Ae 押出し品断面積材料の変形能向上加工しやすい 押出し比アルミニウム 500, 鋼 40 高張力 Al,Mg,Ti,Be,SUSも可能材料の密着性が良好精度良好 工具と材料 : ビレットの自由度大 異種材料 : 複合材料が成形可能短所耐圧の装置が必要 ( 高温になる ) 密閉容器が必要 1 回の押出量および押出速度に制限 圧力容器 ( コンテナ ) 素材 ( ビレット ) 工具 ( ダイス ) 18C 末 手動ねじや手動ポンプを使い鉛の銃弾, ビール管 1820 機械化された鉛管用押出しプレス 1863 内面にすずをクラッドした鉛管 ( 複合材料 ) 19C 末 黄銅の熱間押出し 1910 代 アルミニウムの熱間押出し 1930 頃 鋼の熱間押出し 1941 ガラス潤滑剤の発明 ( 鋼の押出し普及 ) 1950 静水圧押出し 1960 連続押出し 軟らかい金属 硬い金属 / 手動作業 機械化作業 バッチ作業 連続的作業 押出し加工の特徴 押出し加工の歴史
ビレット : 素材片コンテナ : 圧力容器ダイス : 型ラム : 加圧, 加圧板 : ラムを熱から守るマンドレル : 心金穴をあけることが出来る前方押出し : 加圧方向と材料流れが同一方向 ( 直接押出, 正押出 ) 後方押出し : 反対方向 ( 間接押出, 逆押出 ) プリント No.10 右図 1 参考文献図 8.1 教科書 p.164 図 7.10 前方押出法, ラムの進行方向と製品の進行方向が同一製品長さ, 形状に対する制約 : 少摩擦抵抗 : 大, ビレット長さ : 大の場合, 大きな押出圧が必要 押出し加工 直接押出し加工 後方押出法, ラムの進行方向と製品の進行方向が逆摩擦力の損失, 動力損失 : 少, くず金 : 少製品の長さに制約, 小物部品の押出に限定 ラム + 圧力媒体の中で素材を加圧, 押し出し摩擦の発生 : 無, 押出力 : 小設備 : 複雑, 材料 : 均一に押し出し超伝導線の押出にも利用 ( 圧力が低いために有利 ) 間接押出し加工 静水圧押出し加工
低融点非鉄金属材料低変形能金属材料断面の複雑な製品生産量の比較的少ないもの 押出し圧力に及ぼす断面形状の影響同じ断面減少比ならほぼ同じ A 断面減少比 (r) = = o A ビレット断面積 - 押出し品断面積ビレット断面積 o A e p Y m m 1 = C + D n = C + D nr 1 r プリントNo.10 右表 1 参考文献表 8.1 R: 押出し比と呼ばれる理想変形ならば,C=0,D=1 プリントNo.10 右図 3 参考文献図 8.12 応用分野 押出しの材料学 押出し圧力に及ぼす温度と速度の影響同じ速度に対して 予熱温度 : 高 押出し圧力 : 小押出し初期 速度 : 速 圧力 : 高変形抵抗 : ひずみ速度とともに増加 プリントNo.10 右 2 参考文献図 8.13 材料中の空洞はつぶされる結晶粒は伸ばされる不均一変形のため, 再結晶して微粒化する部分粗大化する部分発熱による表面欠陥 押出しの材料学 押出し材の特徴
工具材料 Mo,W,V,Co,Ni などを含むもの プリントNo.10 右図 4 参考文献図 8.16 素材の加熱アルミニウム :400-500 銅 :700-900 プリントNo.10 右図 5 鋼 :1050-1150 参考文献図 8.19 潤滑アルミニウム合金 : なし銅 : グラファイト, 油鋼, ニッケル, チタン : ガラス粉末溶融して潤滑と断熱の役割 押出し工具 熱間押出し作業の工程 BC20-30C: 細い金線 8-9C: 種々の線 12C: 職業として引抜き屋 13C 半 : 水力引抜き機 引抜き加工の定義工具にすきまから材料を引き出し, 断面積の減少と形状変化をさせる加工法 引抜き加工の定義工具にすきまから材料を引き出し, 断面積の減少と形状変化をさせる加工法 プリント No.9 図 1 引抜き加工の歴史と定義 引抜き加工
穴ダイス : 引抜き品断面にあわせた穴ダイの材質超硬合金 (WC-TiC-Co 合金など ) ダイヤモンドダイス鋼 穴ダイス引抜き引抜き断面形状を有する穴を持つローラダイス引抜き自由回転する 2 個のローラーの間を通すタークスヘッド引抜き 4 個のローラー プリント No.9 図 2 プリントNo.9 図 3 参考文献図 9.1 引抜き加工の工具 引抜き加工の分類 空引き肉厚制御が困難心金引き ( マンドレル引き ) 内面寸法が決まる, 小径, 薄肉管玉引き ( 固定心金引き ) 内, 外径をきれいに仕上げる浮きプラグ引き材料からの反力と引き込み力とのバランス, 細く長い管押抜き法底付き素管を用いて, マンドレルを後方から押し込む 断面形状 : 丸, 角, 異形 棒材と線材 : 直径によって分ける 直径 5 mm以下 : 線引き プリント No.9 図 4 参考文献図 9.2 中空材の穴ダイスによる引抜き 中実材 ( 棒 線 ) の引抜き
内部に心金を用いずに引き抜く方式, 外径減少だけが目的 管とマンドレルを一緒に引抜く 管からマンドレルを取り除く工程があり, 面倒 内外径寸法や肉厚精度の向上が顕著 空引き マンドレル引き ( 心金引き ) 心金 : 心金棒で外部に固定, 肉厚と外径の両方を減少させる 長い管の製造には不適 引抜き中プラグ ( 心金 ): 力のつり合いでダイ孔中に安定 長い細管の引抜き, 数千 m の銅細管も製造可能 固定心金引き 浮きプラグ引き
特徴長さ方向 : 引張応力横方向 : 圧縮応力断面が長さ方向に次々と定常的に成形される長所寸法精度がよいプリントNo.9 図 1 表面仕上げがよい断面が小さな長尺物に適す ( 銅,Al:Φ10μm, ステンレス : Φ 0.5μm) ダイスの交換で, 異なる断面が加工可能冷間加工硬化による製品の弾性限向上 短所 1 パスによる加工度が小さい (20-60%), 工程が多くなる 引抜きを繰り返すと表面に割れが発生比較的簡単な形状しか作れない ( 円形, 多角形, 長方形, スプライン ) 加工度が大きいときは中間焼きなましが必要利用状況直径 5-10mm 以下の大部分の金属線, 管 引抜き鋼線 釘, 鋲, ねじ, ボルト, 針金, ワイヤーロープ, プレストコンクリート用鋼線銅, アルミニウム線 電線プリント No.9 図 1 引抜き加工の特徴 引抜き加工の特徴 冷間引抜き : 加工硬化が進行硬さ分布 : 表面ほど硬い残留応力 : 表面に引張応力があると疲労強度低下 シェブロンクラック : 内部割れ軸方向引張応力が最も高くなる プリント No.9 図 12, 13, 14 プリント No.9 図 15 参考文献図 9.7, 8, 9 参考文献図 9.10 引抜きの材料学 引抜きによる欠陥
単式伸線機比較的寸法の大きな線生産量の少ない線中間焼きなまし線異形断面一回のみで引抜き完了するもの連続伸線機鋼,Al, 銅, 合金中, 細線キャプスタン : 動力駆動ドローベンチ引抜き後巻き取れないもの 連続自動ライン引抜き - 中間焼きなまし - 表面処理 プリント No.9 図 9, 10, 11 プリント No.9 図 8 参考文献図 9.11, 12, 14 参考文献図 9.13 引抜き機械とライン 電線製造における連続自動ライン ダイレスドローイングダイスを使わず変形抵抗を小さくして加工加熱 強制潤滑引抜き摩擦を減らしてダイス寿命を延ばす発熱を押さえて速度を高くできる製品表面を滑らかにする 引抜きの将来潤滑, ダイス材料の改善変形過程の力学的, 材料学的解析摩擦機構の解明 流体力学的高圧力発生 プリントNo.9 図 6, 7 参考文献図 9.16, 18 引抜きの新技術