実験 M10240L2000 については, 計算機資源節約のため, 実験 M10240L の 1 月 24 日 00 時の第一推定値を初期値とする 1 週間の実験を行った 4. 結果実験 M10240 L は,10240 メンバーによりサンプリング誤差を小さく抑えることに成功し, 局所化なしにもかか

Similar documents
An ensemble downscaling prediction experiment of summertime cool weather caused by Yamase

Microsoft PowerPoint _HARU_Keisoku_LETKF.ppt [互換モード]

2005/11/19 THORPEX

kouenyoushi_kyoshida

2008 年 7 月 28 日に神戸市付近で発生した局地的大雨の観測システムシミュレーション実験 * 前島康光 ( 理研 計算科学研究機構 / JST CREST) 国井勝 ( 気象研究所 / 理研 計算科学研究機構 ) 瀬古弘 ( 気象研究所 ) 前田亮太 ( 明星電気株式会社 ) 佐藤香枝 (

IPSJ SIG Technical Report Vol.2015-HPC-150 No /8/6 I/O Jianwei Liao 1 Gerofi Balazs 1 1 Guo-Yuan Lien Prototyping F

Microsoft Word - 0_0_表紙.doc

2016 年 5 月 17 日第 9 回気象庁数値モデル研究会 第 45 回メソ気象研究会第 2 回観測システム 予測可能性研究連絡会 気象庁週間アンサンブル予報 システムの現状と展望 気象庁予報部数値予報課 太田洋一郎 1

.. 9 (NAPS9) NAPS km, km, 3 km, 8 (GSM) 64 : / 64 : / 64 : / (UTC) (UTC) (, UTC) 3 : 3 / 3 : 3 / 3 : / (, 6, 8UTC) (, 6, 8UTC) (6, 8UTC) 4 km,

2 4 (four-dimensional variational(4dvar))(talagrand and Courtier(1987), Courtier et al.(1994)) (Ensemble Kalman Filter( EnKF))(Evensen(1994), Evensen(

toukei04.dvi

hPa ( ) hPa

予報時間を39時間に延長したMSMの初期時刻別統計検証

PowerPoint プレゼンテーション

スライド 1

論文 河川技術論文集, 第 19 巻,2013 年 6 月 アンサンブルカルマンフィルターを用いた 2011 年台風 12 号 15 号の降雨流出予測実験 ENSEMBLE PREDICTION OF RAINFALL AND STREAMFLOW IN TYPHOON AND 201

風力発電インデックスの算出方法について 1. 風力発電インデックスについて風力発電インデックスは 気象庁 GPV(RSM) 1 局地気象モデル 2 (ANEMOS:LAWEPS-1 次領域モデル ) マスコンモデル 3 により 1km メッシュの地上高 70m における 24 時間の毎時風速を予測し

工学応用の観点からのデータ同化とその特徴 明治大学 中村和幸 1

WTENK8-6_30027.pdf

Microsoft PowerPoint nakagawa.ppt [互換モード]

MIROC5 を用いた季節予測システムによる 2 タイプのエルニーニョの予測可能性 今田由紀子 ( 東工大 ) 木本昌秀 ( 東大 AORI) 石井正好 ( 気象研 ) 渡部雅浩 ( 東大 AORI) and team SPAM 1. はじめに El Niño/Southern Oscillatio

要点は, アンサンブル予報が提供する予報のばらつき ( 標本 ) から予報誤差共分散 ( 母集団 ) を求めて, 近似的にカルマンフィルタを適用することであり, 誤差の空間相関を陽に扱うことが可能である. そこで本研究では, 最新のデータ同化手法であるアンサンブルカルマンフィルタを用いたドップラーレ

WTENK4-1_982.pdf

Global Observing System Observation data (6-h period) (Courtesy of JMA) Aircraft Radar Satellite Weather balloon Ship Buoy World s effort! (no border

Microsoft PowerPoint - ishibasi_ pptx

<4D F736F F D20826D C C835895B681698DC58F4994C5816A89FC322E646F63>

Freak wave estimation by WAVEWATCH III and HOSM

集中理論談話会 #9 Bhat, C.R., Sidharthan, R.: A simulation evaluation of the maximum approximate composite marginal likelihood (MACML) estimator for mixed mu

橡Ⅰ.企業の天候リスクマネジメントと中長期気象情

Microsoft PowerPoint 集い横田.ppt [互換モード]

データ同化 観測データ 解析値 数値モデル オーストラリア気象局より 気象庁 HP より 数値シミュレーションに観測データを取り組む - 陸上 船舶 航空機 衛星などによる観測 - 気圧 気温 湿度など観測情報 再解析データによる現象の再現性を向上させる -JRA-55(JMA),ERA-Inter

弱コリオリ下でのハリケーンのアンサンブル予報実験 * 吉岡大秋 ( 京都大学大学院理学研究科 ) 榎本剛 ( 京都大学防災研究所 ) 1 はじめに一般に低緯度で台風は発生しない ( 台風強度まで発達しない ) とされている (Anthes, 1982; McBride, 1995) が 台風の発生お

講演の内容 概要部内試験運用中のメソアンサンブル予報システムの概要及び予測事例 検証結果を紹介するとともに今後の開発について紹介する 内容 1. メソアンサンブル予報システムの概要 2. アンサンブルメンバーの予測特性 3. 検証 4. まとめと今後の開発 参考文献 数値予報課報告 別冊第 62 号

景気指標の新しい動向


気象庁の現業数値予報システム一覧 数値予報システム ( 略称 ) 局地モデル (LFM) メソモデル (MSM) 全球モデル (GSM) 全球アンサンブル予報システム 全球アンサンブル予報システム 季節アンサンブル予報システム 水平分解能 2km 5km 約 20km 約 40km 約 40km(1

背景 ヤマセと海洋の関係 図 1: 親潮の流れ ( 気象庁 HP より ) 図 2:02 年 7 月上旬の深さ 100m の水温図 ( )( 気象庁 HP より ) 黒潮続流域 親潮の貫入 ヤマセは混合域の影響を強く受ける現象 ヤマセの気温や鉛直構造に沿岸の海面水温 (SST) や親潮フロントの影響

D D.1 D.1.1 (JST: Japan Standard Time) (UTC: Coordinated Universal Time) UTC JST UTC 9 D.1.2 xx yy TxxLyy 1 ( 2005) TLxxLyy 2 30 TL km TL

Microsoft PowerPoint - 2_6_shibata.ppt [互換モード]

Microsoft Word - 01.docx

図 1 COBE-SST のオリジナル格子から JCDAS の格子に変換を行う際に用いられている海陸マスク 緑色は陸域 青色は海域 赤色は内海を表す 内海では気候値 (COBE-SST 作成時に用いられている 1951~2 年の平均値 ) が利用されている (a) (b) SST (K) SST a

<4D F736F F F696E74202D F F8F7482CC944E89EF8AE989E6835A E6F325F8CF68A4A94C55231>

高解像度 MRI-AGCM アンサンブル実験を用いた日本域の 10 年規模の気温変動に関する要因分析 今田由紀子 ( 気象研 ) 前田修平 ( 気象研 ) 渡部雅浩 ( 東大 AORI) 塩竈秀夫 ( 国環研 ) 水田亮 ( 気象研 ) 石井正好 ( 気象研 ) 木本昌秀 ( 東大 AORI) 1.

PowerPoint プレゼンテーション

JMA Numerical Analysis Systems

統計的データ解析

2011 年度第 41 回天文 天体物理若手夏の学校 2011/8/1( 月 )-4( 木 ) 星間現象 18b 初代星形成における水素分子冷却モデルの影響 平野信吾 ( 東京大学 M2) 1. Introduction 初代星と水素分子冷却ファーストスター ( 初代星, PopIII) は重元素を

Probit , Mixed logit

Microsoft PowerPoint - H17-5時限(パターン認識).ppt

平成14年4月 日

スライド タイトルなし

Microsoft PowerPoint - 時系列解析(11)_講義用.pptx

Microsoft PowerPoint SIGAL.ppt

Microsoft PowerPoint - 報告会_羽角.ppt [互換モード]

カイ二乗フィット検定、パラメータの誤差

Microsoft PowerPoint - データ解析基礎4.ppt [互換モード]

カメラレディ原稿

Kumamoto University Center for Multimedia and Information Technologies Lab. 熊本大学アプリケーション実験 ~ 実環境における無線 LAN 受信電波強度を用いた位置推定手法の検討 ~ InKIAI 宮崎県美郷

Microsoft Word - 01.doc

Microsoft PowerPoint - 資料04 重回帰分析.ppt

境界条件を与えた全球大気モデルによるアンサンブル実験を用いた 日本付近の季節予報可能性について 千葉丈太郎 木本昌秀 ( 東京大学大気海洋研究所 ) 1. はじめに北半球の季節予報可能性についてはこれまで数多くの研究がなされてきたが 中 高緯度では内部変動が大きいため 有効な予測可能性を見出すのは難

技術資料 JARI Research Journal OpenFOAM を用いた沿道大気質モデルの開発 Development of a Roadside Air Quality Model with OpenFOAM 木村真 *1 Shin KIMURA 伊藤晃佳 *2 Akiy

PowerPoint プレゼンテーション

講義「○○○○」

<4D F736F F F696E74202D E738A5889BB8BE688E68A4F82CC926E89BF908492E882C98AD682B782E98CA48B862E707074>

図 1: 抽出事例での時間最大雨量の頻度分布. 横軸は時間最大雨量 (mm/h), 縦軸は頻度 (%). のと考えられる. メソ現象の環境場の解析においてメソ客観解析値を使った研究には, 宮崎県における台風時の竜巻環境場を調べた Sakurai and Mukougawa (2009) や関東平野で

NLMIXED プロシジャを用いた生存時間解析 伊藤要二アストラゼネカ株式会社臨床統計 プログラミング グループグルプ Survival analysis using PROC NLMIXED Yohji Itoh Clinical Statistics & Programming Group, A

4

日心TWS

はじめに 動機 IGModel プロジェクトとは 目次 IGModel プロジェクトの構成 構造 現在の開発状況 IGMBaseLib, IGMTool IGModel-SW( 正二十面体格子全球浅水モデル ) IGModel-SW のテスト計算の結果 ( 一部 ) まとめ, 今後の展望

TitleMIROC における雲の海面水温変化に対する応答の評価 Author(s) 出本, 哲 ; 渡部, 雅浩 ; 釜江, 陽一 Citation 週間及び1か月予報における顕著現象の予測可能性 (2013): Issue Date URL

0 21 カラー反射率 slope aspect 図 2.9: 復元結果例 2.4 画像生成技術としての計算フォトグラフィ 3 次元情報を復元することにより, 画像生成 ( レンダリング ) に応用することが可能である. 近年, コンピュータにより, カメラで直接得られない画像を生成する技術分野が生

DVIOUT

PowerPoint Presentation

数値計算法

情報工学概論

ファイナンスのための数学基礎 第1回 オリエンテーション、ベクトル

                                       一休デイサービスセンター

: (1:, 2:, 3:, 4: ) 1 (Stratospheric Sudden Warming; SSW),, 1 (Displacement), 2 (Splitting) 2 (Charlton and Polvani 2007)., (Mi


2017 年 3 月 27 日の那須雪崩をもたらした低気圧の予測可能性 Predictability of an Extratropical Cyclone Causing Snow Avalanche at Nasu on 27th March ), 2) 吉田聡 A. Kuwano-

数値予報とは 2

0 部分的最小二乗回帰 Partial Least Squares Regression PLS 明治大学理 学部応用化学科 データ化学 学研究室 弘昌

梅雨 秋雨の対比とそのモデル再現性 将来変化 西井和晃, 中村尚 ( 東大先端研 ) 1. はじめに Sampe and Xie (2010) は, 梅雨降水帯に沿って存在する, 対流圏中層の水平暖気移流の梅雨に対する重要性を指摘した. すなわち,(i) 初夏に形成されるチベット高現上の高温な空気塊

2016年2月27日11s感性工学会パンフレット

( 第 1 章 はじめに ) などの総称 ) の信頼性自体は現在気候の再現性を評価することで確認できるが 将来気候における 数年から数十年周期の自然変動の影響に伴う不確実性は定量的に評価することができなかった こ の不確実性は 降水量の将来変化において特に顕著である ( 詳細は 1.4 節を参照 )

スライド 1

第 1 章新しい数値予報モデル構成とプロダクト 1.1 モデル構成 1 数値予報課では 2006 年 3 月のスーパーコンピュータシステムの更新時に メソ数値予報モデルの解像度を水平格子間隔 10km から 5km に また 鉛直層数を 40 から 50 に向上させ また 週間アンサンブル予報モデル

10_08.dvi

報道資料

55-1

Microsoft PowerPoint - ã…⁄ㅼㇿ咄儌ç€fl究ä¼ı_æ‘’å⁄º.pptx

専門.indd


Microsoft PowerPoint - 測量学.ppt [互換モード]

Title2011 年タイ洪水とその被害 : 実地調査に基づく報告 Author(s) 木口, 雅司 ; 中村, 晋一郎 ; 小森, 大輔 ; 沖, 一雄 ; 沖, 治, 光一郎 第 7 回南アジアにおける自然環境と人間活動に関する研 Citation 究集会 : インド亜大陸 インドシナの自然災害

RX501NC_LTE Mobile Router取説.indb

( Xi X )( A i A ) ACC ( Xi X ) 2 ( Ai A ) 2 X i = x i c i, A i = a i c i, X = 1 A = 1 ( 1 ACC 1) (D.2.6) X i A i (D.2.7) (D.2.8) x i a i c i D.2

1-2 4

第5回東京都廃棄物審議会

Transcription:

10240 メンバーを用いたアンサンブルデータ同化実験 近藤圭一, 三好建正 ( 理研, 計算科学,JST CREST) 1. はじめにデータ同化は, 数値モデルと観測を高度に融合させることで, より精緻な初期値 解析値を得る手法であり, 数値予報モデルの予報精度に大きく影響を与える 大気の流れを考慮した高度なデータ同化手法にアンサンブルカルマンフィルタ (EnKF; Evensen 1994) があり, さまざまな研究が行われている なかでも局所アンサンブル変換カルマンフィルタ (LETKF; Hunt et al. 2007) は,LEKF (Ott et al. 2004) に ETKF (Bishop et al. 2001) のアルゴリズムを適用し, 並列計算効率が高く, 様々な数値予報モデルに適用されている 大気モデルを用いた EnKF では,100 メンバー以下程度のアンサンブルを用いるのが一般的である 少ないアンサンブルメンバー数に起因するサンプリング誤差が共分散行列に混入し悪影響を抑えるため, 観測の影響範囲を格子点近傍に限定する局所化 (Houtekamer and Mitchell 1998) が必要となる Miyoshi and Kondo (2013) 及び Kondo et al. (2013) は, マルチスケールを考慮したアンサンブルデータ同化手法を新たに考案し, 大きな局所化スケールを用いることで, より遠くの観測を同化し解析精度が大幅に改善することを確認した Miyoshi et al. (2014) は, 従来までの計算機資源の制約上極めて困難であった 10240 ものアンサンブルメンバーを用いて LETKF による実験を, 京コンピュータ及び高性能固有値分解ソルバー EigenExa (Imamura et al. 2011) を用いることにより実現し, 大気が本来持つ誤差共分散の構造を明らかにした 本研究では,Miyoshi et al. (2014) をさらに発展させ, 大気モデルを用いながら局所化を適用しない アンサンブルデータ同化実験を行い, はるか遠 方の観測を同化する影響について調査した なお 本要旨は現在執筆中の論文 Kondo and Miyoshi (2015) を日本語訳したものである 2. 局所化 Miyoshi et al. (2014) では,10240 メンバーを 用いたものの,2000 km の局所化スケールを用 いていた しかしながら, それ以上に局所化ス ケールを大きくすることは, 計算機資源, 特に メモリ使用量がシステム上限を上回るため, 実 験不可能であった そこで, 本研究では鉛直方 向の局所化をなくすことにより, 計算量及びメ モリ使用量を大幅に削減することに成功した これにより, 水平方向の局所化も除去した実験 が実施可能となった 3. 実験設定 本研究では, 低解像度の全球大気モデル SPEEDY (T30L7, Molteni 2003) に LETKF を適 用した SPEEDY-LETKF システム (Miyoshi 2005) を用いた 主な実験設定は以下の通りで ある なお,10240 メンバーの場合は鉛直の局 所化を適用しない ラジオゾンデ観測網 (Miyoshi 2005) を模した観測を 6 時間毎に同化 し,1 月 1 日 00 UTC を初期値とする 1 ヶ月間 の実験を行った 実験名 メンバー数 局所化スケール M20 L700 20 700 km M80 L1400 80 1400 km M10240 L2000 10240 2000 km M10240 L 10240 11

実験 M10240L2000 については, 計算機資源節約のため, 実験 M10240L の 1 月 24 日 00 時の第一推定値を初期値とする 1 週間の実験を行った 4. 結果実験 M10240 L は,10240 メンバーによりサンプリング誤差を小さく抑えることに成功し, 局所化なしにもかかわらず 1 ヶ月間正常に動作することを確認した 図 1 は,1 月 24 日 00 時における (a) 実験 M10240L2000 の解析インクリメント,(b) 実験 M10240L の解析インクリメント,(c) 実験 M10240L2000 の解析誤差,(d) 解析インクリメントの差 (a)-(b) である M10240L2000 の解析誤差をさらに修正するように M10240L のイン クリメントが計算されていることがわかる 図 2 は,1 月 24 日 00 時の実験 M10240L2000 と実験 M10240L の第一推定値の誤差自己相関を示しており, 変数 U,V,T,Ps には, およそ 4000 km 程度の空間スケールが見られる Q には大陸規模に伝播する波列のような空間構造が見られる 自己相関は観測の影響と対応するため, 観測の影響範囲は局所化スケール 2000 km よりはるかに大きく, はるか遠方の観測を同化可能であることを示している 図 3 は各実験における解析 Root Mean Square Error (RMSE) 及び Spread を表している 10240 メンバーを用いることで, 解析 RMSE は観測誤差の 1/10 にまで小さくなっている さらに実験 M10240L2000 と実験 M10240L を比較すると, 同じ 10240 メンバーであるにもかかわらず,M10240L2000 の解析誤差は増大傾向にあ 図 1 1 月 24 日 00 時における (a) 実験 M10240L2000 の解析インクリメント,(b) 実験 M10240L の解析インクリメント,(c) 実験 M10240L2000 の解析誤差,(d) 解析インクリメントの差 (a)-(b) である 変数はモデル最下層の V( 南北風 ) Kondo and Miyoshi (2015) より引用 12

図 2 実験 M10240 L2000( 左列 ) 及び実験 M10240 L ( 右列 ) の 1 月 24 日 00 時におけるモデル 4 層目 (~ 500 hpa) 及び地上気圧の黄色い星を基準とした自己相関の水平分布 Kondo and Miyoshi (2015) より引用 る これはまさに遠方の観測を同化しなかった結果であり, これまで考慮されていなかった遠方の観測が同化に与える影響は大きいものであることを示している 5. まとめ本研究では, サンプリング誤差の影響を可能な限り抑えるため,10240 メンバーからなる巨大アンサンブルデータ同化実験を局所化なしで行い, その影響を調査した その結果 LETKF は局所化なしでも正常に安定動作することが確認された 大気の持つ誤差相関スケールは大陸間規模であることが確認されていたが, 本研究ではその誤差総観スケールをそのまま同化 に活用することにより, はるか遠方の観測が解析に大きな影響を与えることを示した その影響は観測の少ない海洋上で特に大きい ( 図略 ) 今後は, より現実的なモデル及び実際の観測を用いて, 現実大気の流れに依存した確率密度関数を調査する また, 誤差共分散の構造を加味した最適な局所化アルゴリズムについて検討を進める 13

supercomputer system. Progress in 図 3 各実験の解析 RMSE( 太線 ) 及び Spread( 細線 ) の時系列 (a) モデル 4 層目 (~500 hpa) の U(m s -1 ), (b) モデル 2 層目 (~850 hpa) の T (K),(c) モデル最下層の Q (g/kg),(d) 地上気圧 (hpa) Kondo and Miyoshi (2015) より引用 References Bishop, C. H., B. J. Etherton, and S. J. Majumdar, 2001: Adaptive sampling with the ensemble transform Kalman filter. Part I: Theoretical aspects, Mon. Wea. Rev., 129, 420-436. Evensen, G., 1994: Sequential data assimilation with a nonlinear quasi-geostrophic model using Monte Carlo methods to forecast error statistics. J. Geophys. Res., 99C5, 10143-10162. Hunt, B. R., E. Kostelich, and I. Syzunogh, 2007: Efficient data assimilation for spatiotemporal chaos: A local ensemble transform Kalman filter. Physica D, F230, 112-126. Houtekamer, P. L., and H. L. Mitchell, 1998: Data assimilation using an ensemble Kalman filter Technique. Mon. Wea. Rev., 126, 796 811. Imamura, T., S. Yamada, and M. Machida, 2011: Development of a high performance eigensolver on the peta-scale next generation NUCLEAR SCIENCE and TECHNOLOGY, 2, 643-650. Ott, E., and Coauthors, 2004: A local ensemble Kalman filter for atmospheric data assimilation. Tellus, 56A, 415 428. Kondo, K., T. Miyoshi and H. L. Tanaka: Parameter sensitivities of the dual-localization approach in the local ensemble transform Kalman filter. SOLA, 9, 174 178. Miyoshi, T. and K. Kondo, 2013: A multi-scale localization approach to an ensemble Kalman filter, SOLA, 9, 170-173. Miyoshi, T., K. Kondo, and T. Imamura, 2014: 10240-member ensemble Kalman filtering with an intermediate AGCM. Geophys. Res. Lett., 41, 5264 5271. Molteni, F., 2003: Atmospheric simulations using a GCM with simplified physical parametrizations. I: model climatology and variability in multi-decadal experiments. 14

Clim. Dyn., 20, 175-191. 15