Microsoft Word - manual40108 ã‡¤ã‡½ã…Łã…©ã…œã…³å‹ƒæž’æ³Ł

Similar documents
土壌溶出量試験(簡易分析)

すとき, モサプリドのピーク面積の相対標準偏差は 2.0% 以下である. * 表示量 溶出規格 規定時間 溶出率 10mg/g 45 分 70% 以上 * モサプリドクエン酸塩無水物として モサプリドクエン酸塩標準品 C 21 H 25 ClFN 3 O 3 C 6 H 8 O 7 :

しょうゆの食塩分測定方法 ( モール法 ) 手順書 1. 適用範囲 この手順書は 日本農林規格に定めるしょうゆに適用する 2. 測定方法の概要 試料に水を加え 指示薬としてクロム酸カリウム溶液を加え 0.02 mol/l 硝酸銀溶液で滴定し 滴定終点までに消費した硝酸銀溶液の量から塩化ナトリウム含有

ウスターソース類の食塩分測定方法 ( モール法 ) 手順書 1. 適用範囲 この手順書は 日本農林規格に定めるウスターソース類及びその周辺製品に適用する 2. 測定方法の概要試料に水を加え ろ過した後 指示薬としてクロム酸カリウム溶液を加え 0.1 mol/l 硝酸銀溶液で滴定し 滴定終点までに消費

(f) メスシリンダー :JIS R 3505 に規定する呼び容量 20 ml 100 ml 200 ml 250 ml 及び 1 L のもので 体積の許容誤差の区分がクラス A のもの又はこれと同等のもの (g) ねじ口瓶 : 容量 100 ml 500 ml 及び 1 L のもの または同等の保

Microsoft Word - ã…žã…‰ã…¥ã‡¢ã…«æł¸å¼‘_ _ç·‘ã…šã…ªã…Łã‡§ã…”ã…¼ã…«[æ‘’å⁄º]

日本食品成分表分析マニュアル第4章

イノベ共同体公募要領

ソバスプラウトのフラボノイド・アントシアニン分析法

土壌含有量試験(簡易分析)

5989_5672.qxd

石綿含有建材分析マニュアル第4章

2 3 測定原理粉砕した茶葉の測定試料から,30 でリン酸 / エタノール混合抽出溶媒によって EGCG3"Me を抽出する 抽出物は, メンブランフィルターでろ過する 紫外可視吸光光度検出器付き高速液体クロマトグラフ ( 以下, HPLC という ) を用いたグラジエント溶離で, 抽出物の中の E

HPLC UPLC JP UPLC システムによる 注入回数 3000 回以上 のルーチン製剤分析の実現 分析スループットの向上と使用溶媒量の削減 分析効率の向上 日本薬局方 (JP) は 薬事法第 41 条第一項の規定に基づき医薬品の品質を適性に担保するための公的な規範書であり 多くの医薬品の分析

ISOSPIN Blood & Plasma DNA

パナテスト ラットβ2マイクログロブリン

表 1. HPLC/MS/MS MRM パラメータ 表 2. GC/MS/MS MRM パラメータ 表 1 に HPLC/MS/MS 法による MRM パラメータを示します 1 化合物に対し 定量用のトランジション 確認用のトランジションとコーン電圧を設定しています 表 2 には GC/MS/MS

4,4’‐ジアミノジフェニルメタン

資料 イミダゾリジンチオン 測定 分析手法に関する検討結果報告書

2-3 分析方法と測定条件ソルビン酸 デヒドロ酢酸の分析は 衛生試験法注解 1) 食品中の食品添加物分析法 2) を参考にして行った 分析方法を図 1 測定条件を表 3に示す 混合群試料 表示群試料について 3 併行で分析し その平均値を結果とした 試料 20g 塩化ナトリウム 60g 水 150m

実験手順 1 試料の精秤 2 定容試料を 5%HPO3 酸で1ml に定容し 試料溶液とする この時 アスコルビン酸濃度は1~4mg/1ml の範囲がよい 3 酸化試験管を試料の (a) 総ビタミン C 定量用 (b)daa( 酸化型ビタミン C) 定量用 (d) 空試験用の3 本 (c) 各標準液

- 2 - 二前号に掲げるもの以外のポリ塩化ビフェニル廃棄物及びポリ塩化ビフェニル使用製品別表第二の第一に定める方法

目次 ページ 1 適用範囲 1 2 引用規格 1 3 測定原理 2 4 試薬 2 5 装置及び器具 4 6 試験用試料の調製 5 7 手順 抽出 希釈 測定 同定 6 8 計算 一般事項 定量 結果の表現 6 9 精

細辛 (Asari Radix Et Rhizoma) 中の アサリニンの測定 Agilent InfinityLab Poroshell 120 EC-C µm カラム アプリケーションノート 製薬 著者 Rongjie Fu Agilent Technologies Shanghai

本品約2g を精密に量り、試験液に水900mLを用い、溶出試験法第2法により、毎分50回転で試験を行う

2009年度業績発表会(南陽)

目次 1 事業で用いた分析法 実験方法 試料 試薬 ) ソルビン酸標準品 ) その他の試薬 装置及び器具 定量方法 ) 抽出 ) HPLC による測定 )

改正RoHS指令の動向と新規対象物質の分析方法について

DNA/RNA調製法 実験ガイド

ポリソルベート 80

IC-PC法による大気粉じん中の六価クロム化合物の測定

プロトコール集 ( 研究用試薬 ) < 目次 > 免疫組織染色手順 ( 前処理なし ) p2 免疫組織染色手順 ( マイクロウェーブ前処理 ) p3 免疫組織染色手順 ( オートクレーブ前処理 ) p4 免疫組織染色手順 ( トリプシン前処理 ) p5 免疫組織染色手順 ( ギ酸処理 ) p6 免疫

異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖の果糖 ぶどう糖 及び砂糖含有率測定方法 ( アミノカラム法 ) 手順書 1. 適用範囲 この測定方法は日本農林規格における異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖に適用する 2. 測定方法の概要試料を 50 % エタノールで希釈した後 メンブランフィルターでろ過し 高速液体

本日の内容 HbA1c 測定方法別原理と特徴 HPLC 法 免疫法 酵素法 原理差による測定値の乖離要因

PowerPoint プレゼンテーション

高速液体クロマトグラフィー(HPLC)

(Microsoft Word - \230a\225\266IChO46-Preparatory_Q36_\211\374\202Q_.doc)

培養細胞からの Total RNA 抽出の手順 接着細胞のプロトコル 1. プレート ( またはウエル ) より培地を除き PBSでの洗浄を行う 2. トリプシン処理を行い 全量を1.5ml 遠心チューブに移す スクレイパーを使って 細胞を掻き集める方法も有用です 3. 低速遠心 ( 例 300 g

LC/MS/MS によるフェノール類分析 日本ウォーターズ株式会社 2015 Waters Corporation 1 対象化合物 Cl HO HO HO フェノール 2- クロロフェノール (2-CPh) Cl 4-クロロフェノール (4-CPh) HO Cl HO Cl HO Cl Cl 2,4

キレート滴定

研究報告58巻通し.indd

[PDF] GST融合タンパク質バッチ精製プロトコール

(Microsoft Word \203r\203^\203~\203\223\230_\225\266)

Microsoft PowerPoint - 薬学会2009新技術2シラノール基.ppt

薬工業株式会社製, 各 20 µg/ml アセトニトリル溶液 ) を使用した. 農薬混合標準溶液に含まれない は, 農薬標準品 ( 和光純薬工業株式会社製 ) をアセトニトリルで溶解して 500 µg/ml の標準原液を調製し, さらにアセトニトリルで希釈して 20 µg/ml 標準溶液とした. 混

を加え,0.05 mol/l チオ硫酸ナトリウム液で滴定 2.50 する.0.05 mol/l チオ硫酸ナトリウム液の消費量は 0.2 ml 以下である ( 過酸化水素として 170 ppm 以下 ). (4) アルデヒド (ⅰ) ホルムアルデヒド標準液ホルムアルデヒド メタノール液のホルムアルデヒ

注釈 * ここでニッケルジメチルグリオキシム錯体としてのニッケルの重量分析を行う場合 恒量値を得るために乾燥操作が必要だが それにはかなりの時間を要するであろう ** この方法は, 銅の含有量が 0.5% 未満の合金において最も良い結果が得られる 化学物質および試薬 合金試料, ~0.5 g, ある

資料 2-3 ジエタノールアミンの測定 分析手法に関する検討結果報告書 - 1 -

はじめに 液体クロマトグラフィーには 表面多孔質粒子の LC カラムが広く使用されています これらのカラムは全多孔質粒子カラムの同等製品と比べて 低圧で高効率です これは主に 物質移動距離がより短く カラムに充填されている粒子のサイズ分布がきわめて狭いためです カラムの効率が高いほど 分析を高速化で

JAJP

A6/25 アンモニウム ( インドフェノールブルー法 ) 測定範囲 : 0.20~8.00 mg/l NH 4-N 0.26~10.30 mg/l NH ~8.00 mg/l NH 3-N 0.24~9.73 mg/l NH 3 結果は mmol/l 単位でも表示できます 1. 試料の

Taro-試験法新旧

14551 フェノール ( チアゾール誘導体法 ) 測定範囲 : 0.10~2.50 mg/l C 6H 5OH 結果は mmol/l 単位でも表示できます 1. 試料の ph が ph 2~11 であるかチェックします 必要な場合 水酸化ナトリウム水溶液または硫酸を 1 滴ずつ加えて ph を調整


食安監発第 号 食安基発第 号 平成 19 年 11 月 13 日 各検疫所長殿 医薬食品局食品安全部監視安全課長基準審査課長 ( 公印省略 ) 割りばしに係る監視指導について 割りばしに残留する防かび剤等の監視指導については 平成 19 年 3 月 23 日付け食安

PowerPoint プレゼンテーション

31608 要旨 ルミノール発光 3513 後藤唯花 3612 熊﨑なつみ 3617 新野彩乃 3619 鈴木梨那 私たちは ルミノール反応で起こる化学発光が強い光で長時間続く条件について興味をもち 研究を行った まず触媒の濃度に着目し 1~9% の値で実験を行ったところ触媒濃度が低いほど強い光で長

改訂履歴 登録 発行 年月日 文書番号 ( 改訂番号 ) 改訂内容 改訂理由 年月日 エンドトキシン簡便法 2 / 9 日本核医学会

スライド 1

イノベ共同体公募要領

HPLCによるUSP関連物質分析条件のUPLC分析への移管と開発

よくある指摘事項(2)

血漿中ケルセチン代謝物の分析法

有害大気汚染物質測定方法マニュアル(平成23年3月改訂)

ISOSPIN Plasmid

Microsoft PowerPoint ダイオフロック営業資料.ppt [互換モード]

抗体定量用アフィニティークロマトグラフィー

酢酸エチルの合成

Gen とるくん™(酵母用)High Recovery

2,3-ジメチルピラジンの食品添加物の指定に関する部会報告書(案)

生物学に関する実験例 - 生化学 / 医療に関する実験例 ラジオアッセイ法によるホルモン測定 [ 目的 ] 本実習では, 放射免疫測定 (Radioimmunoassay,RIA) 法による血中インスリンとイムノラジオメトリックアッセイ ( 免疫放射定測定 Immunoradiometric ass

pdf エンドトキシン試験法

組織からのゲノム DNA 抽出キット Tissue Genomic DNA Extraction Mini Kit 目次基本データ 3 キットの内容 3 重要事項 4 操作 4 サンプル別プロトコール 7 トラブルシューティング 9 * 本製品は研究用です *

DualPore OPEN使い方のコツ

( 別添 ) ヒラメからの Kudoa septempunctata 検査法 ( 暫定 ) 1. 検体採取方法食後数時間程度で一過性の嘔吐や下痢を呈し, 軽症で終わる有症事例で, 既知の病因物質が不検出, あるいは検出した病因物質と症状が合致せず, 原因不明として処理された事例のヒラメを対象とする

Microsoft Word - 酸塩基

Microsoft PowerPoint - MonoTowerカタログ_ 最終.ppt [互換モード]

豚丹毒 ( アジュバント加 ) 不活化ワクチン ( シード ) 平成 23 年 2 月 8 日 ( 告示第 358 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した豚丹毒菌の培養菌液を不活化し アルミニウムゲルアジュバントを添加したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株 名称豚丹

Taro-02 豆腐.jtd

イオン成分測定方法 ( イオンクロマトグラフ法 ) 目次 1. 概要 装置及び器具 前処理 分析装置 使用器具 試薬 アニオン分析用 カチオン分析用 試験液の調製

JASIS 新技術説明会 最新の高速GPCシステムHLC-8420GPC EcoSEC Eliteの紹介

医療用医薬品最新品質情報集 ( ブルーブック ) 初版有効成分ベンフォチアミン B6 B12 配合剤 品目名 ( 製造販売業者 ) 後発医薬品 品目名 ( 製造販売業者 ) 先発医薬品 効能 効果用法 用量添加物 1) 解離定数 1) 溶解度 1 ダイメジンスリービー配合カプセル

5989_5672.qxd

Microsoft PowerPoint 分析展濡れ水100%.印刷用ppt.ppt

1. 測定原理 弱酸性溶液中で 遊離塩素はジエチル p フェニレンジアミンと反応して赤紫色の色素を形成し これを光学的に測定します 本法は EPA330.5 および US Standard Methods 4500-Cl₂ G EN ISO7393 に準拠しています 2. アプリケーション サンプル

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

札幌市-衛生研究所報37(調査報告05)

目次 1. はじめに 目的 捕集および分析方法 (OSHA Method no. 34 改良 ) ブランク 破過 脱着率 誘導体化条件の検討 検量線... -

PowerPoint プレゼンテーション

Taro-p1_沿革・.施設.jtd

食品中のシュウ酸定量分析の検討

スライド 1

グリホサートおよびグルホシネートの分析の自動化の検討 小西賢治 栢木春奈 佐々野僚一 ( 株式会社アイスティサイエンス ) はじめに グリホサートおよびグルホシネートは有機リン化合物の除草剤であり 土壌中の分解が早いことから比較的安全な農薬として また 毒劇物に指定されていないことから比較的入手が容

プレスハム及びソーセージのでん粉含有率 (2014) プレスハム及びソーセージのでん粉含有率測定手順書 独立行政法人農林水産消費安全技術センター 1. 適用範囲 この測定方法は 日本農林規格に定めるプレスハム及びソーセージに適用する 2. 測定方法の概要試料 5 g から水酸化カリウムエタノール溶液

Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST

内容 1. セミ分取 HPLC システム 応用例 留意点 2. 超臨界流体クロマトグラフィー (SFC) を使用した分取の紹介

キレート滴定2014

基質溶液 ( 脂質成分を含む製品では 本手順はデータの精度に大きく影響します 本手順の記載は特に厳守ください ) 添付の基質溶液は希釈不要です 融解し室温に戻した後 使用直前に十分に懸濁してください (5 分間の超音波処理を推奨いたします ) 解凍後の基質溶液の残りは 繰り返しの凍結融解を避けるため

資料 o- トルイジンの分析測定法に関する検討結果報告書 中央労働災害防止協会 中国四国安全衛生サービスセンター

酒類総合研究所標準分析法 遊離型亜硫酸の分析方法の一部修正

Transcription:

大豆のイソフラボン分析法国立研究開発法人農業 食品産業技術総合研究機構食品研究部門渡辺純 はじめに ダイズにはゲニステイン ダイゼイン グリシテインをはじめとするイソフラボンアグリコンと それらの配糖体であるゲニスチン ダイジン グリシチンなどが含まれている 日本人の食生活におけるイソフラボンの摂取源の大部分はダイズおよびダイズ食品である イソフラボンおよびイソフラボンの腸内細菌による代謝産物には種々の機能性が報告されており とりわけエストロゲン受容体に結合して種々の生理機能を発揮することが報告されている 1) 一方で 過剰なイソフラボン摂取による安全性への影響を勘案し 食品安全委員会では安全な一日摂取目安量の上限値を大豆イソフラボンアグリコン換算値として 70 75 mg/ 日と定めている 2) 本プロトコールは AOAC 法 (Official Methods of Analysis of AOAC International 2001.10) 3) を改変し 少量のサンプルでも分析でき かつ HPLC による分析時間を短縮したものである 本プロトコールによる分析法は室間共同試験により妥当性を確認している 4) また 添加回収試験により真度の確認をあわせて実施している 4) 本分析法は 総イソフラボン含有量が 50 g/g 以上の粉末試料に適用可能である 分析試料をメタノール- 水 (80:20) 中で 65 2 時間抽出し 抽出液中に含まれるイソフラボンのエステル体をけん化する 中和 ろ過後に 希釈してメタノール- 水の比率を 50:50 とする 遠心分離により得られた上清を HPLC で分析する イソフラボングルコシド類とアグリコン類は メタノール - 水系の移動相を用いて C18 逆相カラムで分離し 検出波長 260 nm として UV 検出器を用いて検出する イソフラボンアグリコン ( ゲニステイン グリシテイン ダイゼイン ) とアグリコン当量で表したグルコシド ( ゲニスチン グリシチン ダイジン ) を合算し アグリコン換算量として含有量を表す 準備するもの 1. 実験器具 機器 HPLC システム : オートサンプラー 2 液グラジエントが可能なポンプ 260 nm に設定可能な UV 検出器 データ処理システムを備えたもの HPLC カラム : 逆相 C18 250 mm 内径 4.6 mm あるいは 200 mm 内径 4.6 mm のもの ( 例えば Shiseido Capcell Pak C18 TypeMGII,4.6 200 mm ( 資生堂 ; Part No. 92545)) 電子天秤 :0.1 mg 単位で測定可能なもの 全量フラスコ :25 ml, 50 ml, 100 ml, 200 ml, 250 ml クラス A メスシリンダー : クラス A 抽出溶媒 移動相等の調製に使用する セラムバイアル :30 ml 内径 13 mm 外径 20 mm( 例 : アズワンバイアル瓶 30 ml, #5-111-06) バイアルキャップ : アルミ製シールつきクリンプキャップ 外径 20 mm( 上記のバイアル瓶には付属 ) シリコンセプタム : テフロン表面加工 外径 20 mm( 例 : アズワンバイアル瓶用パッキン, #5-112-05) - 1 -

マイクロピペット :200~1000 L が分注可能なもの 実験室用オーブン :65 に設定可能なもの 温度計 : 少なくとも 50-100 の温度が測定できるもの 遠心分離器 :1.5 ml のマイクロチューブおよび 15 ml コニカルチューブを 7000 g で遠心分離可能なもの 超音波洗浄槽 : 標準的なもの 温調の有無は問わない 粉砕機 : ダイズ種子を粉末化可能なもの 例えば Retsch GM-200 凍結乾燥機 : 水分を多く含むダイズ食品を分析する場合 マイクロチューブ :1.5 ml ディスポーザブル バイアル : ガラス製のオートサンプラー用 テフロン製セプタムのついたもの ポジティブディスプレイスメント方式プッシュボタン式液体用微量体積計 ( ピストンマイクロピペッター ):100~1000 L 用のもの ( 例えば ギルソン M-1000, #F148506) 2. 試薬 イソフラボン標準品 : ダイジン ゲニスチン グリシチン ダイゼイン ゲニステイン グリシテイン メタノール : 高速溶媒クロマトグラフィー用 アセトニトリル : 高速溶媒クロマトグラフィー用 酢酸 : 特級試薬 水酸化ナトリウム : 特級試薬 水 :JIS 規格 (JIS K0557:1998) で規定されているクラス A3 以上のもの 3. 調合 調整 1) 標準液保存液 : 標準液保存液は以下の方法により調製する 標準液保存液は室温で保存し 調製 6 ヶ月以内に使用する 0.1 mg 単位で秤量可能な電子天秤を用いて ダイジン約 10 mg を薬包紙に秤量し 精確な重量を記録した後 100 ml 全量フラスコに移し 薬包紙をメタノールで洗った洗液も全量フラスコに移す ( 他のイソフラボンについても同様 ) ゲニスチン : 約 10 mg を秤量し 100 ml 全量フラスコに移す グリシチン : 約 10 mg を秤量し 250 ml 全量フラスコに移す ダイゼイン : 約 10 mg を秤量し 25 ml 全量フラスコに移す ゲニステイン : 約 20 mg を秤量し 50 ml 全量フラスコに移す グリシテイン : 約 10 mg を秤量し 100 ml 全量フラスコに移す グリシテイン以外のイソフラボンを添加した全量フラスコにはメタノールを加えて内容物を溶解させ メタノールでメスアップする グリシテインを添加した全量フラスコには約 10 ml のジメチルスルホキシドを加えて内容物を溶解させた後 メタノールでメスアップする 蓋をして転倒混和し ガラス容器に移す 混和による溶解が困難な場合は超音波処理を行う - 2 -

2) イソフラボン標準液 標準液保存液を用い 表 1 に示した 5 段階の標準液を全量フラスコを用いて調製する 表 1 に記載された容量の水を加え メタノール- 水 (1:1) で希釈し よく混合した後にガラス容器に移す 各イソフラボンのおおよその濃度は表 2 に示したとおりとなる 表 1 イソフラボン標準保存液からの標準液の調製標準液標準液保存液, ml 水, ml *1 最終容量, ml 1 1.0 6.0 200 2 1.0 6.0 100 3 2.0 12.0 100 4 4.0 24.0 100 5 4.0 24.0 50 *1 6 種類のイソフラボン標準液保存液をそれぞれ規定の分量ずつ添加する 表 2 イソフラボン標準液中の各イソフラボンのおおよその濃度 標準液 ダイジン グリシチ ゲニスチ ダイゼイ グリシテ ゲニステ g/ml ン ン ン イ ン イ ン g/ml g/ml g/ml g/ml g/ml 1 0.5 0.2 0.5 2.0 0.5 2.0 2 1.0 0.4 1.0 4.0 1.0 4.0 3 2.0 0.8 2.0 8.0 2.0 8.0 4 4.0 1.6 4.0 16.0 4.0 16.0 5 8.0 3.2 8.0 32.0 8.0 32.0 正確な各イソフラボンアグリコン 配糖体の濃度は 計り取った各イソフラボンアグリコ ン 配糖体の重量で補正する 3) 抽出溶媒メタノール - 水 (80:20) 200 ml の抽出溶媒を調製する場合 200 ml 三角フラスコに 160 ml のメタノー ルを入れる 40 ml の水を加え 攪拌混合する 抽出溶媒は用時調製する 4) 移動相 A: 水 -アセトニトリル-メタノール- 酢酸 (865:100:30:5) 1 L の移動相 A を調製する場合 865 ml 水 100 ml アセトニトリル 30 ml メタノール 5 ml 氷酢酸を混合する 超音波洗浄槽を用いて脱気する 移動相 A は用時調製する - 3 -

5) 移動相 B: 水 -アセトニトリル-メタノール- 酢酸 (465:500:30:5) 1 L の移動相 B を調製する場合 465 ml 水 500 ml アセトニトリル 30 ml メタノール 5 ml 酢酸を加え 混合する 超音波洗浄槽を用いて脱気する 移動相 B は用時調製する 6) 水酸化ナトリウム溶液 :2 M 200 ml を調製する場合 200 ml 全量フラスコに水酸化ナトリウム 16 g を量り取る 水で溶解させ 室温まで冷ます 水で 200 ml に定容する プラスティック容器中で室温にて保存し 調製 6 ヶ月以内に使用する 7) HPLC 分析条件溶媒 : 表 3 の条件のグラジエントを基本とし 移動相 B の割合あるいはグラジエントの時間は全 6 ピークが分離するように必要に応じて変更する 流速 : 1.5 ml/min 検出 : 260 nm 表 3 HPLC のグラジエントパターン ステップ 開始時間 ( 分 ) 終了時間 ( 分 ) 終了時間における溶媒組成 %A %B 初期条件 87.5 12.5 2 0 10 67.5 32.5 3 10 12 32.5 67.5 4 12 14 0 100 5 14 16 0 100 6 16 16.5 87.5 12.5 7 16.5 23 87.5 12.5 全てリニアグラジエントとする プロトコール 1. ダイズおよびダイズ食品粉末の調製 試料を必要に応じて凍結乾燥する 新鮮重量あたりのイソフラボン含有量を算出したい場合は 乾燥前後の重量を測定して含水量 (%) を求める 粉砕機を用いて粉末化し 測定まで冷凍保存する 2. ダイズ粉末からのイソフラボンの抽出およびけん化 セラムバイアルに 約 500 mg の試料を精秤する 抽出溶媒 16 ml を加えてセプタムおよびキャップをした後 ボルテックスミキサーで混合し さらに超音波洗浄槽で室温 5 分間超音波処理して 試料を抽出溶媒中に均等に分散させる - 4 -

65 ± 2 となるように設定した実験室オーブン中 ( 庫内温度を温度計で確認すること ) で 2 時間加熱する (15 分程度ごとに容器を振り混ぜて混合する ) 室温まで冷まし 2 M 水酸化ナトリウムを 1200 L 添加する 室温で 10 分間ゆるやかに振とうした後 酢酸 400 L を加える バイアル瓶を振り混ぜて内容液を懸濁し 25 ml 全量フラスコに移す バイアル瓶は少量の抽出溶媒で洗い その洗液も 25 ml 全量フラスコに移す 抽出溶媒を用いて 25 ml となるようにメスアップし よく混合した後に一部をとって 15 ml コニカルチューブに移す 7000 g で 5 分間遠心分離し 得られた上清の 250 L をピストンマイクロピペッターを用いて 1.5 ml マイクロチューブに移す なお 遠心分離による上清が清澄でない場合は 溶液を直径 15 cm の JIS 定量ろ紙 5 種 B を扇形にしたものでろ過し 清澄にしてから用いる マイクロチューブにメタノール 300 L と水 450 L をピストンマイクロピペッターを用いて加えて ボルテックスミキサーでよく混合する 7000 g で 5 分間遠心分離し 得られた上清をサンプルバイアルに移す 得られた抽出液は室温で保存し 調製日を含めて 5 日以内に 3. 抽出液中のイソフラボンの定量に示した方法でイソフラボン濃度を測定する 3. 抽出液中のイソフラボンの定量 試料を注入せずに 1 回グラジエント溶出を行い 平衡化する 標準液 3 を 20 L 注入し 表 3 に示した条件でグラジエント溶出を複数回行い 6 種類のスタンダードのピークが全てベースラインで分離しており 連続した3 回の分析で得られる保持時間とピーク面積の相対標準偏差 (RSD) が 2.5 % 以下となることを確認する 移動相 B の割合あるいはグラジエントの時間は全 6 ピークが分離するように必要に応じて変更する 全ての標準液 および抽出液を 20 L 注入して分析を行う 各イソフラボンピークの面積を得る プロトコールのポイント 注意点 1. 計算 各イソフラボン標準品について検量線を作成する 5 段階の標準液について濃度 (x 軸 ) とピーク面積 (y 軸 ) をプロットして直線近似し 近似直線の傾き (m) と切片 (b) をそれぞれ求める 以下の式により 試料中の各イソフラボン含有量を計算する Isoflavone, g/g = (((As -b) / m) 25) / (Ws 0.25) ただし As は試料抽出液中のイソフラボンのピーク面積 m は検量線の傾き b は検量線の切片 Ws は抽出に用いた試料の重量 (g) であり 25 は 2. ダイズ粉末からのイソフラボンの抽出およびけん化において定容した容量 0.25 は 2 段階目の希釈で用いた試料の分注量である - 5 -

イソフラボングルコシドであるゲニスチン グリシチン ダイジンは以下の式によってアグリコン当量に変換する Cae = MWa/MWg Cg ただし C ae はイソフラボンアグリコン当量 ( g/g) MWa はアグリコンの分子量 ( 表 4 に記載 ) MWg はグルコシドの分子量 ( 表 4 に記載 ) Cg はゲニスチン グリシチンあるいはダイジン濃度 ( g/g) である 総イソフラボン ( g/g アグリコン当量 /g) は ダイゼイン グリシテイン ゲニステイン濃度 およびアグリコン当量に変換したダイジン グリシチン ゲニスチン濃度を全て足しあわせて求める Ta = Ca (daidzein) + Ca (glycitein) + Ca (genistein) Tae = Cae (daizin) + Cae (glycitin) + Cae (genistin) ただし Ta はアグリコン濃度の和 Tae は各グルコシドのアグリコン当量の和である 総イソフラボン ( g アグリコン当量 /g)= Ta + Tae - 6 -

表 4 アグリコン変換係数イソフラボングルコシド MWa MWg MWa/MWg ゲニスチン 270 432 0.625 グリシチン 284 446 0.637 ダイジン 254 416 0.611 おわりに 本プロトコールでは 分析試料からイソフラボンをメタノール- 水で抽出し 抽出液を NaOH 存在下でけん化する さらに イソフラボンアグリコン ( ゲニステイン グリシテイン ダイゼイン ) とアグリコン当量で表したグルコシド ( ゲニスチン グリシチン ダイジン ) を合算するため イソフラボン含有量はアグリコン換算量となる点に注意が必要である 本実験プロトコールは 農林水産省委託プロジェクト 農林水産物 食品の機能性等を解析 評価するための基盤技術の開発 の助成による成果の一部である 参考文献 1) M, Messina, Soy and health update: Evaluation of the clinical and epidemiologic literature, Nutrients, 8, 754 (2016). 2) https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc_isoflavone180309_4.pdf (Jan. 6,2017) 3) http://img.21food.cn/img/biaozhun/20100729/177/11294162.pdf (Jan. 6,2017) 4) T, Ogita, J, Watanabe, M, Wakagi, K, Nakamichi, S, Komiyama, J, Takebayashi, J, Mano, K, Kitta, S, Koyano, and Y, Takano-Ishikawa, Evaluation of a method to quantify isoflavones in soybean by single and muti-laboratory validation studies, Food Sci. Technol. Res., 21, 473-477 (2015). - 7 -