1 PAF 依存性炎症を特異的に抑える 新規ペプチド性薬剤の開発 いわき明星大学薬学部薬学科 研究助手佐藤陽 教授 蝦名敬一
本技術の概要 皮膚炎 アナフィラキシー 気管支喘息 関節炎 血小板活性化因子 (PAF) 虚血性脳血管障害 抑制 炎症 ビオチニル化ペプチド化合物 ビオチニル化ペプチド化合物は 動物試験において PAF 炎症を劇的に抑制したことから PAF を標的とした全く新しいタイプの抗炎症剤として PAF が関わる炎症性疾患の予防 治療に対し有効な手段を提供することが期待できる 2
3 技術の背景 血小板活性化因子 (PAF) Phosphatidylcholine (PC) Lyso-PAF 結合 Lipid Bilayer PAF 炎症性の脂質メディエーターとして 気管支喘息や皮膚炎など様々な炎症性疾患の病態形成に深く関わっている PAF を標的とした薬剤は未だ実用化されていない 酸化 LDL 認識結合性ペプチド
酸化 LDL 認識結合性ペプチド Peptide name Sequence P29 IKNASLSWGKWYKDGDKDAEITSEDVQQK P4~P29 の計 10 種類 Try-Lys-Asp-Gly (YKDG) 配列を活性中心 酸化 LDL を特異的に認識 結合し その生理活性を顕著に抑制 P24 P21 P16 P15 P11 P9 P7 P6 P4 LSWGKWYKDGDKDAEITSEDVQQK IKNASLSWGKWYKDGDKDAEI LSWGKWYKDGDKDAEI IKNASLSWGKWYKDG WGKWYKDGDKD WGKWYKDGD YKDGDKD WYKDGD YKDG In vivo におけるペプチドの抗 PAF 活性評価を行った 方法 動物 :Wistar 系ラット (5-8 週令 ) ペプチド :P4, P21 とそれらのビオチニル化ペプチド化合物 (BP4, BP21) 各種ペプチド (0-20 nmol/ 匹 ) を皮下又は静脈内投与 直後 ( 皮下 )/ 15 分後 ( 静脈内 ) PAF (C16, 1 nmol/ 匹 ) を後肢肉趾間に皮下投与 60 分後 PAF により惹起される足の浮腫容積を水置換法を用いてミリリットル (ml) 単位で測定 4
時間分解蛍光法を用いたペプチド (P21) と PAF/lyso-PAF の結合解析 (1) PAF Fluorescence intensity change (counts per second) 70000 60000 50000 40000 30000 20000 10000 0-10000 0 5 10 15 20 25 30 PAF (µm) P21 (-) P21 (+) (2) Lyso-PAF Fluorescence intesnity change (counts per second) 20000 16000 12000 8000 4000 0-4000 0 5 10 15 20 25 30 Lyso-PAF (µm) P21 (-) P21 (+) 酸化 LDL 認識結合性ペプチドの一種である P21 が PAF lyso-paf の各濃度に依存した結合性を示した あらかじめ固定化した各濃度の PAF (C16) または lyso-paf (C16) に対し ビオチニル化ペプチド化合物 BP21 (1 µm) を添加 反応後 ユーロピウム (Eu 3+ ) 標識化ストレプトアビジンを用いた DELFIA 解析を行った いずれのデータも 平均値 ± S.D. (n = 3) で示した P < 0.05, P < 0.005, P < 0.001( いずれも BP21 単独と比較 ) 5
ペプチド化合物 (BP21, BP4) による PAF 誘発足浮腫抑制効果 浮腫 (ml) 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 ## BP21, BP4 はともに 劇的な PAF 誘発浮腫抑制を示した 0.1 0 BP21 (10 nmol) BP4 (10 nmol) Each value represents the mean ± S.D. of 3-4 rats. ## P < 0.05 compared to vehicle-treated rats, P < 0.05 compared to PAF alone-treated rats. 6
YKDG 配列を有するペプチドの PAF 活性阻害に対する特異性検討 浮腫 (ml) 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 ## YKDG 配列を有するペプチドは 特異的に抗 PAF 活性を示す Rats were treated by intraplantar injection with BP21 or biotinylated RGDS tetrapeptide derived from fibronectin (10 nmol/rat) 15 min prior to PAF (1 nmol/paw) or the solution. One hour after the PAF stimulus, paw oedema was quantified by measuring the increase in paw volume (ml). Each value represents the mean ± S.D. of 3-4 rats. ## P < 0.05 compared to vehicle-treated rats, P < 0.05 compared to PAF alone-treated rats. 7
各種ペプチド (P21, P4, BP21, BP4) の静脈内投与量と PAF 誘発足浮腫抑制の相関 (1) P21 (2) P4 0.6 P21 0.4 P4 浮腫の変化 (ml) 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 浮腫の変化 (ml) 0.3 0.2 0.1 0 0 P21 (nmol) P4 (nmol) Each value represents the mean ± S.D. (n = 3). P < 0.05, P < 0.01 compared to PAF alone-treated rats. 8
浮腫の変化 (ml) 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 各種ペプチド (P21, P4, BP21, BP4) の静脈内投与量と PAF 誘発足浮腫抑制の相関 (1) P21/BP21 P21 (nmol) BP21 P21 (2) P4/BP4 浮腫の変化 (ml) 0.4 0.3 0.2 0.1 P4 (nmol) BP4 P4 BP4, BP21 0 はその用量に依存した 安定した抗 PAF 活性を示す : ペプチドに結合したビオチンが重要な役割を担っている Each value represents the mean ± S.D. (n = 3). P < 0.05, P < 0.01 compared to PAF alone-treated rats. 9
10 各種ビオチニル化ペプチド化合物 (BP21, BP4) の静脈内投与量と抗 PAF 活性の相関 (1) BP21 (2) BP4 % of control 100 80 60 40 20 0-20 y = -36.715x + 57.673 R² = 0.93 ID 50 = 1.62 (nmol) -0.5 0 0.5 1 1.5 log [BP21 (nmol)] % of control 100 80 60 40 20 0 y = -42.932x + 62.684 R² = 0.9898 ID 50 = 2.00 (nmol) -0.5 0 0.5 1 1.5 ID 50 値 BP4 BP21: ペプチド中のlog YKDG [BP4 配列が (nmol)] ペプチドの抗 PAF 活性に対し重要な役割を担っている 各種ビオチニル化ペプチド化合物の PAF 活性 50 % 阻害量 ID 50 を算出した 横軸には各種ペプチド化合物の投与量 (nmol) を log 対数で示し 縦軸には各対照群の足浮腫容積変化を 100 % としたときの 各投与量における足浮腫容積変化 (%) を平均値 ± S.D. (n = 3) として示した
(A) PAF Fluorescence intensity change 5 4 3 2 1 0-1 トリプトファン蛍光を指標とした P21/BP21 と PAF/lyso-PAF の相互作用解析 0.1 1 10 PAF (µm) (B) Lyso-PAF Fluorescence intensity change 5 4 3 2 1 0-1 0.1 1 10 Lyso-PAF (µm) BP21 P21 PAF/lyso-PAF との相互作用 :BP21 > P21 (A) PAF or (B) lyso-paf was incubated with PBS (ph 7.4) in the absence (open circles) or presence of 0.4 µm BP21 (closed circles) or P21 (closed squares) for 30 min for 37 C, and the fluorescence intensity measurements were performed at an excitation wavelength of 295 nm and an emission wavelength of 348 nm. Each value represents the change in fluorescence compared to the lipid-free sample and is presented as mean ± S.D. (n = 3) P < 0.05, P < 0.005, compared to the intensity of the lipid-free sample. 11
ビオチニル化ペプチド化合物 (BP21) と既知 PAF 受容体拮抗剤の抗 PAF 活性の比較 0.7 0.6 0.5 0.4 浮腫 (ml) 0.3 0.2 0.1 0 ## Vehicle - 20 nmol BP21 BP21 は 既知 PAF 受容体拮抗剤の 150-300 分の 1 の投与モル量 ( 約 40 分の 1 投与量 ) と 低用量で顕著な抗 PAF 活性を示した 3.4 µmol CV-3988 6.5 µmol Alprazoram 前処置 Each value represents the mean ± S.D. of 3 rats. ## P < 0.05 compared to vehicle-treated rats. P < 0.05 compared to PAF alone-treated rats. 12
13 ビオチニル化ペプチド化合物と PAF 受容体拮抗剤の PAF 活性阻害機構の違い 1. 結合 PAF 2. 遮断 ビオチニル化ペプチド化合物 拮抗 PAF 受容体拮抗剤 PAF 受容体 炎症活性
14 従来技術とその問題点 現在 PAF を対象とした薬剤として PAF 受容体拮抗剤などが多く開発 研究されているが 局所投与では効果を示すが 全身投与では効果不十分である PAF 以外のリゾリン脂質 / 酸化リン脂質の受容体にも結合し 予期しない副作用を有する可能性がある などの問題点を有している PAF を対象とした薬剤は未だ実用化されるまでには至っていない
15 新技術の特徴 従来技術との比較 本ビオチニル化ペプチド化合物は 1. 既知 PAF 受容体拮抗剤の 150~300 分の 1 の投与モル量 ( 約 40 分の 1 の投与量 ) と 非常に低用量で劇的かつ用量依存的な抗 PAF 作用を有する 2. 局所投与のみならず全身投与でも抗炎症効果を発揮できる 3.PAF 分子を標的とした全く新しいタイプの抗炎症剤として期待できる
16 産業界へのアピールポイント 1. ビオチニル化ペプチド化合物は 極めて少ない投与量 ( 既知 PAF 受容体拮抗剤の 150~300 分の 1 投与モル量 ) で局所 全身投与いずれにおいても 有効で安全に抗炎症効果を発揮する 2.PAF を標的とした薬剤は未だ実用化されていない 本技術の実用化により 非常に大きな市場規模が期待される 3.PAF が深く関わる様々な炎症性疾患で苦しむ患者さんの QOL 向上に大きく貢献できる
17 想定される用途 本ビオチニル化ペプチド化合物は PAF により誘発される炎症に対して確実な抗炎症効果を発揮する 本技術は 以下に示す各事業への用途で利用されることが期待される 1. 医療用医薬品事業 2. 一般医薬品事業など :OTC 医薬品 化粧品 健康食品など 3. 動物用医薬品事業
18 実用化に向けた課題 本化合物はペプチドであることから 生体内で の安定性が問題となる ドラッグデリバリーシステム (DDS) や特殊ペプチド合成などの様々な技術を用いて 生体内での安定性に優れたビオチニル化ペプチド化合物を創出する必要がある
19 企業への期待 企業 実用化のための企業の研究 開発力 : 開発パイプライン 製品化システム 臨床開発力など 私達 ビオチニル化ペプチド化合物の 抗炎症剤シーズとしての提供 実用化されることを強く希望します
20 本技術に関する知的財産権 発明の名称 : 抗 PAF 活性を有する ビオチニル化ペプチド化合物 出願番号 : 特願 2012-035530 優先権主張番号 : 特願 2011-041833 公開番号 : 特開 2012-193166 ( 公開日 :2012 年 10 月 11 日 ) 出願人 発明者 : 学校法人明星学苑 : 佐藤陽 蝦名敬一
21 産学連携の経歴 1 2010 年度 :JST 研究最適展開支援事業 A-STEP FSステージ探索タイプに採択 ( 研究責任者 : 佐藤陽 ) 2011 年 2 月 : 特許出願 2011 年 ~( 現在 ): 東京大学医学部アレルギー リウマチ内科 ( 医師 ) と共同研究 2012 年 1 月 : みやぎ産学官連携フェアへの出展 2012 年 2 月 : 優先権特許出願 2012 年 2 月 :JST A-STEP 技術移転シーズ紹介集に掲載
22 産学連携の経歴 2 2012 年 6 月 : 本技術に関する論文が Eur. J. Pharmacol. に掲載された 2012 年 9 月 : 本技術に関する論文が Chem. Biol. Drug Des. に掲載された 2012 年 9 月 27-28 日 :JSTイノベーションジャパン2012 大学見本市 JSTショートプレゼンテーションでの発表 2012 年 10 月 11 日 : 出願特許公開 2012 年 12 月 18 日 : 大学知的財産 産学連携担当者ネットワーク新技術説明会で発表
23 お問い合わせ先 1 いわき明星大学薬学部薬学科衛生薬学部門佐藤陽 TEL: 0246-29-5401 FAX: 0246-29-5414 E-mail: a-sato@iwakimu.ac.jp ホームページ :http://www.iwakimu.ac.jp
24 お問い合わせ先 2 いわき明星大学 産学連携研究センター TEL: 0246-29-7184 FAX: 0246-29-7184 E-mail: sangaku@iwakimu.ac.jp