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論文高温乾燥を受けたコンクリートに発生する微細ひび割れに関する検討 篠野宏 *1 Ln Mao *1 *2 丸山一平 要旨 : 本研究は, 高温乾燥下でコンクリートに発生する微細ひび割れ性状を明らかにすることを目的とし, 粗骨材に, 粒径を 3 種に調整したものと, それらを均等に混合したものを使用したコンクリートを作製し,3 種の温度環境 (20 RH60%,40,65 ) で乾燥し, 画像相関法を用いて試験体断面のひずみ分布の測定を行った 実験の結果, 乾燥温度が上昇すると乾燥収縮ひずみはほぼ変化しないにも関わらず, 微細ひび割れは大きくなることが確認された これは, 乾燥が進むとモルタル部の収縮は進行するが, 骨材による拘束効果が卓越し, コンクリート全体の巨視的なひずみが進行せず, 内部のひび割れ拡大をもたらすからであると考察される キーワード : 乾燥収縮, デジタル画像相関法, 高温環境, 微細ひび割れ, 硬質砂岩, ひずみ分布 1. はじめに高温環境下におかれるコンクリートを用いた構造物には, 鉄鋼生産施設, 電力関連施設などの産業施設や, 直接日射を受けるために高温となる一般建築物の外壁など多く存在し, これら構造物の供用期間における力学的特性に及ぼす高温の影響を把握することは重要な課題である 高温環境下におかれたコンクリートの研究には, 若材齢時の高温養生に関するもの 1),2), 十分に水和が進んだコンクリートの高温乾燥に関するもの 3) など多くの報告がされている それらの中には, 骨材とペーストの線膨張係数の差や乾燥収縮によってモルタル部に微細なひび割れが生じ, その結果, コンクリートの力学的な特性が変化するという報告が存在する 2),3) これらの知見から, 高温環境下においてコンクリートに蓄積される微細ひび割れの程度の評価は, コンクリートの力学的特性の評価, 予測に重要な知見を与えるものと考えられる 高温環境と微細ひび割れの関係を調査した既往の研究には,X 線造影撮影法を用いて, 十分水和したコンクリートを高温乾燥させ生じた微細ひび割れを評価したもの 2),AE 法を用いて, 若材齢時に高温養生したコンクリートの微細ひび割れを評価したもの 3) がある これらの研究では, コンクリートに生じた微細ひび割れの程度を評価しているものの, 微細ひび割れ発生メカニズムの説明には至っていない 筆者らはこれまでにデジタル画像相関法 4) を用いて,20 RH60% 環境下で乾燥させたコンクリート断面内において微細ひび割れの進行の評価手法の開発を行うとともに, 骨材周囲に生じるひび割れには 2 種類のものがあることを明らかにした 5),6) 画像相関 法ではコンクリート断面のひずみ分布とその経時変化が 測定できるため, 粗骨材とモルタルの相互作用を観察す ることができる 本論文では 3 種の温度環境下で乾燥さ せた試験体を対象に画像相関法によるひずみ分布の測定 を行い, 乾燥温度が, 乾燥に伴い発生する微細ひび割れ の性状に及ぼす影響とそのメカニズム, 乾燥収縮ひずみ に与える影響についての検討を行った 2. 実験概要 2.1 使用材料 使用した材料を表 -1, セメントの物性と化学成分を 表 -2, コンクリートの調合およびフレッシュ性状試験 の結果を表 -3 に示す 粗骨材には硬質砂岩 (SS) を使用 し, 粒径の違いによる微細ひび割れ性状の差異を観察す 表 -1 使用材料 材料 記号 物理的性質など 普通ポルトランドセメント / 密度 : セメント C 3.16g/cm 3, ブレーン値 :3230cm 2 /g 大井川水産系陸砂 / 表乾密度 :2.59g/cm 3, 細骨材 S 吸水率 :2.08% 硬質砂岩砕石 / 表乾密度 :2.64g/cm 3, 吸 水率 :0.89%, ヤング率 :64.4MPa, ポア 粗骨材 G ソン比 :0.23,20 RH60% 環境下におけ る乾燥収縮ひずみ :-167µ AE 減水剤 AE AE 減水剤標準 I 種 増粘剤 AS セルロース系水溶性高分子化合物 *1 名古屋大学大学院環境学研究科 ( 学生会員 ) *2 名古屋大学大学院環境学研究科准教授 博士 ( 工学 ) ( 正会員 )

表 -2 セメントの物性と化学成分 セメント 密度 ブレーン LOI 化学成分 (mass%) 種類 (g/cm 3 ) 比表面積 (cm 2 /g) (%) SO 2 Al 2 O 3 Fe 2 O 3 CaO MgO SO 3 Na 2 O K 2 O Cl - N 3.16 3230 2.3 20.04 5.21 2.87 64.9 1.46 2.21 0.14 0.34 0.019 表 -3 試験体の調合とフレッシュ試験結果 記号 w/c (%) 調合 s/a 単位量 (kg/m 3 ) (%) W C S G AE AS スランプ (cm) 空気量 (%) 練上り温度 ( ) SS_S 6.5 2.6 20 SS_M 55 51.8 177 322 940 892 3 1.3 8.5 2.6 21 SS_L 9.5 2.5 21 SS_mx 9.0 2.6 21 るため, 粒度を 5-10mm(S: 実積率 58.0%),10-15mm(M: 58.2%),15-20mm(L: 実積率 58.6%) に調整したものと, それらを均等に混合し通常の粒度分布を持つ粗骨材に近づけたもの (mx: 実積率 62.5%) をコンクリートに用いた ブリーディングを低減させるため増粘剤を使用した 試験体はφ100 200mm のサミットモールドに打設し, 材齢 1 日および 2 日に脱型, その後, 試験開始まで約 10 ヵ月間, 飽和水酸化カルシウム溶液中で 20 ±1 一定下で標準水中養生をした 2.2 試験体の寸法試験体はφ100 200mm のコンクリートをダイヤモンドカッターで厚さ 9mm に切断し,φ100 9mm として使用した 本検討では骨材とモルタルの相互作用を二次元的な分布としてとらえる目的で, 試験体を薄く切断した 2.3 試験体の乾燥条件試験体の乾燥条件は,20 RH60%,40,65 の 3 パラメータとした 試験体は 24 時間の質量変化が 0.03%/day 以下となった後に, 長さ測定と画像相関法に使用する画像を取得した また, 質量の測定に際して, 40,65 乾燥の試験体では, 恒温チャンバーから試験体を取り出し, 吸湿を防ぐためアルミバッグに入れて 20 となるまで冷却した後, 質量を測定した 2.4 長さ変化測定試験乾燥時の試験体全体の挙動を把握するため, マイクロメータヘッド MHN3-25MB(Mtsutoyo 社製, 最小読み取り値 0.001mm, 精度 ±0.003mm) を用いた測定器によって, 長さ変化を測定した 基長には長さが既知のセラミックを用意し, セラミックと試験体の長さの差を測定することにより, 試験体の長さを求めた 基長となるセラミックの温度ひずみを考慮するため, 室内の温度を合わせて測定し, 線膨張係数を用いて基長の補正を行った セラミックの線膨張係数は 9.3±0.5µ/ である なお, 室内 -1400-900 -800-700 図 -1 乾燥終了後の乾燥収縮ひずみの温度変化は ±2 の範囲であった 測定は各試験体 3 方向の直径で行い, それら 3 つのひずみの平均をとり, 試験体の乾燥収縮ひずみとした 2.5 デジタル画像相関法によるひずみ分布測定 2.4 節と同様の試験体を用いて, デジタル画像相関法により, 試験体表面に生じたひずみ分布を測定した デジタル画像相関法とは, ランダムな模様をつけた試験体の変形前後のデジタル画像を比較することにより, 変形後の試験体表面の変位量を定量し, さらに 2 点間の変位量を用いてひずみ分布を算出するというものである 乾燥収縮により損傷が生じる過程で, 骨材とモルタルがどのように力学的に相互作用するか観察するため測定を行った デジタル画像相関法には,CCD カメラ Atk383L+(ATIK 社製,3326 2504 ピクセル ), カメラレンズ A AF Nkkor 35mm f/2d(nkon 社製 ) を使用した 試験体までの距離は約 450mm とし, 照明には LED 照明を使用した また, デジタル画像の 1pxel の幅は約 0.043mm である 画像相関法の解析パラメータは,subset:25 25px,step:5px, stran wndow sze:9 9 とした

S M L mx 65 40 20 RH60% 図 -2 試験体の最小主ひずみ分布 試験体には, 前処理として表面に白色と黒色のアクリル顔料スプレーを吹き付け, まだら模様を作製した これは, 画像相関の探査精度向上のためと, 乾燥による試験体表面の輝度変化の影響を軽減するためである スプレーの乾燥後, 試験体を再び水中に戻し再度飽水状態としてから基長を撮影, その後乾燥させた 3. 実験結果 3.1 乾燥収縮ひずみ図 -1 に質量変化が 0.03%/day 以下となった時点での試験体の乾燥収縮ひずみを示す 本研究において, 収縮のひずみを負とし, 膨張のひずみを正とした すべての試験体において乾燥温度が高くなるほど乾燥収縮ひずみの値が大きくなった また, 乾燥温度が上昇するほど各試験体間の収縮量の差は小さくなった またすべての乾燥条件において,SS_S,SS_M,SS_L の試験体では 骨材の粒径が大きくなるほど収縮が小さくなった SS_mx の試験体は,20 RH60% においては SS_L と同程度の収縮であるが,40 においては,SS_M と同程度の収縮となり,65 ではすべての試験体の中で最も収縮が大きくなった 3.2 画像相関法図 -2,3 に画像相関法によって得られた乾燥後の試験体断面の最小主ひずみと最大主ひずみの分布をそれぞれ示す 図 -2 の最小主ひずみ分布では, 粗骨材の部分の収縮量とモルタル部の収縮量の差が明確に表れた また, すべての試験体で乾燥温度が高くなるにつれ, モルタル部の収縮が大きくなっていることが確認された 粗骨材の収縮は 40 と 65 でほぼ一定であった 図 -3 は最大主ひずみと試験体表面の骨材を重ねた図であり, 薄くグレーになっている部分が粗骨材を表している 著者らの研究により, 画像相関法によって測定さ れた膨張ひずみの位置と蛍光エポキシ樹脂含浸法 7) によ って確認された微細ひび割れの位置が良好な対応を示すことが確認されている 5),6) このことから, 本論文では, 膨張を示すひずみの箇所に微細ひび割れが生じたものと考え 最大主ひずみの図中に赤色で示される部分 (810µ ~1000µ) をひび割れが生じた個所と評価した すべての試験体において, 乾燥温度の上昇につれ, 図 -3 に赤色で示される膨張ひずみの部分が増加しているのが確認された この膨張ひずみの面積の増加には,2 つの要因が考えられる 1 つ目は, 新たに微細ひび割れ

S M L mx 65 40 20 RH60% 図 -3 試験体の最大主ひずみ分布と骨材の配置 が生じたためであり,2 つ目は, ひび割れ幅が拡大したためである さらに, このひび割れには粗骨材界面に垂直なものと, 粗骨材界面に沿ったものが確認され,2 種類のひび割れに着目して観察をすることとした RH60% ではすべての試験体において, 粗骨材界面から垂直方向に伸びるひび割れが, 生じたひび割れの多くを占めている 40 以上では SS_S,SS_M,SS_L の試験体において, 粗骨材界面に沿ったひび割れが多く確認された この粗骨材界面に沿ったひび割れは, 骨材粒径が大きくなるほど多くの骨材に確認される 一方,SS_mx では乾燥温度が上昇しても, 骨材から垂直方向のひび割れが多数を占め, 骨材に沿ったひび割れは他の試験体と比べて少ない SS_mx の試験体は SS_S,SS_M,SS_L と異なる傾向であることから, 骨材の粒度分布や実積率の変化によって, 骨材間の平均距離, 配置が変化したため生じたものと考えられる 4. 考察 4.1 微細ひび割れと乾燥収縮の関係収縮ひずみと微細ひび割れの関係を考察するため, 式 (1),(2) のように微細ひび割れの程度を示す値 ( 損傷度 ) 5) を定めた n n δ ε ε (1) D = ΔA ΔA ε 1( ε > 0) δε = 0( ε 0) (2) ここで,D ε : 損傷度 (µ) ε: 最大主ひずみ分布におけるひずみの値 (µ) ΔA : 画像相関法のパラメータより決定する面積 (mm 2 ) n: コンクリート断面中のひずみ測定点の数 (-) ΔA は画像相関法のパラメータである step 数によって決定する値であり, その面積は step 数 step 数 (px) となる 本研究では,step:5px,1 ピクセルの一辺の長さが, 0.043mm のため,ΔA は 0.046mm 2 となる 最大主ひずみにおける膨張ひずみは微細ひび割れを示すため, 損傷度は値が大きいほど微細ひび割れの量または幅が大きいことを意味する つまり, 単位面積当たりのひび割れ開口量を示しているといえる 図 -4 は各乾燥条件における損傷度の値を示したものである 損傷度は, どの粒径においても乾燥温度が高く

なるほど値が大きくなり, どの乾燥条件においても粒径が大きいほど損傷度が大きくなる傾向が確認された 図 -5 は損傷度と乾燥収縮ひずみの関係を示したものである 図 -5 の損傷度と収縮ひずみの傾きに注目すると,20 RH60% から 40 の間の傾きよりも 40 から 65 への傾きが小さい このことは,40 から 65 では, 20 RH60% から 40 に比べ, コンクリート全体の収縮に対して微細ひび割れの幅や量が増大することを意味する 4.2 微細ひび割れ発生のメカニズム 4.1 節における損傷度と乾燥収縮ひずみの関係は, 微細ひび割れの生じるメカニズムと関係があると考え, 以下ひび割れの発生メカニズムについての考察を行う 図 -6(a),7(a) は図 -3 の 65 乾燥の拡大図であり, 図中の赤色の部分が微細ひび割れを示している 3.2 節で述べたように微細ひび割れには 2 種類のものが確認された 1 つは骨材の界面から垂直かつ放射状に生じたひび割れ ( 図 -6) であり, もうひとつは骨材周囲のひび割れ ( 図 -7) である 骨材に直交するひび割れは骨材がモルタルの収縮を拘束するため生じ, 骨材周囲のひび割れは骨材がモルタルを取り囲む個所でモルタルが収縮しようとするため, モルタルが粗骨材から剥離するように生じたものであると考えられる このとき後者のひび割れでは, 粗骨材はリング状の骨格を形成していると見ることができ, 骨格に囲まれたモルタル部は微細ひび割れが生じた後, 粗骨材から離れた状態となる そのため, 乾燥が進行しても骨材の骨格の内部でモルタルが収縮し, 粗骨材界面のひび割れ幅が増大するものの, コンクリート全体の収縮には寄与しないと推察される このことから, 図 -5 のように 40 から 65 の乾燥において乾燥収縮ひずみは変化が小さく, 損傷は大きくなる現象を説明することができる 4.3 収縮ポテンシャルの分配図 -8 は, 図 -5 の損傷度と乾燥収縮の関係を乾燥温度ごとに示したものである 各乾燥温度において, 損傷度が大きくなるほど乾燥収縮ひずみの値が小さくなった 本研究のコンクリートの調合 材料はすべての試験体で同一であるため, コンクリートに生じる収縮ポテンシャル ( モルタル 粗骨材を収縮させるポテンシャル ) は乾燥温度ごとに一定と考えると, 図 -8 は, コンクリートの巨視的な乾燥収縮ひずみは, 収縮ポテンシャルがコンクリート全体の収縮か, 試験体の損傷の増加 ( ひび割れ幅を広げる, もしくは新たにひび割れを生じさせる ) に分配された結果といえる つまり, 乾燥条件が一定であれば, 微細ひび割れが多い, もしくは微細ひび割れ幅が拡大するほど, ひび割れの開口に収縮ポテンシャルが分配され, 結果として巨視的なコンクリートの乾燥収縮が低減されるといえる 700 600 500 400 300 200 100 50 0 図 -4 損傷度 -900 SS-M -800 20 RH60% SS-mx 100 200 300 400 40 65 図 -5 乾燥収縮ひずみと損傷度の関係 (a) 画像相関法の最大主ひずみ分布 (b) モデル図図 -6 粗骨材界面に垂直に生じたひび割れ (SS_L 65 乾燥 ) (a) 画像相関法の最大主ひずみ分布 (b) モデル図図 -7 粗骨材界面に沿ったひび割れ (SS_L 65 乾燥 )

(a)20 RH60% -900 SS-M SS-mx -800 50 100 150 200 250 (b)40 SS-M SS-mx 140 160 180 200 220 240 (c)65 SS-M SS-mx 200 300 400 図 -8 損傷度と乾燥収縮の関係 ( 各乾燥条件 ) この考察よりコンクリートの巨視的な収縮の抑制とは, 内部に微細ひび割れを生じさせる, または, ひび割れの幅を拡大させることを意味する 図 -3 に示されるように, 粗骨材に S,M,L を用いた試験体では, 骨材に垂直に生じるひび割れに加え,SS_mx と比較して骨材周囲の割れが多く確認される 本研究において S,M,L の粗骨材は mx の粗骨材より実積率が小さいと考えられるため, 実積率の小さい骨材を用いると, 骨材間を充填するモルタルの収縮ポテンシャルは骨材周囲方向のひび割れ, および, 粗骨材界面から放射状に伸びるひび割れによって解放されるといえる このことから, 粗骨材の実積率は微細ひび割れ性状を変化させ, コンクリートの巨視的な乾燥収縮を変化させる要因の一つと考えられる また粗骨材の実積率がコンクリートに生じる微細ひび割れ性状を変化させ, 収縮量に影響を及ぼすことから, コンクリートの流動性を検討するときに考慮される余剰モルタルがもつ収縮ポテンシャルがコンクリートの巨視的な収縮の問題の検討に有用であることが示唆される 5. まとめ本研究によって得られた知見は以下のとおりである (1) 高温履歴を受けたコンクリートの乾燥収縮ひずみと, 画像相関法により測定した, 単位面積当たりのひび割れ開口量を示す値 ( 損傷度 ) を比較したところ, 乾燥温度が高くなると乾燥収縮ひずみはほぼ変化しないにも関わらず, 損傷度は増大することが確認された (2) 粗骨材界面に沿ったひび割れが生じた部分では, 粗骨材はリング状の骨格を形成しているとみなすことができ, その骨格に囲まれたモルタル部は微細ひび割れが生じた後, 粗骨材から離れた状態となる そのため, 乾燥が進行しても, 粗骨材による骨格の内部でモルタルが収縮するだけで, コンクリート全体の収縮には寄与しないと推察される (3) 各乾燥温度においてコンクリートの微細ひび割れの幅や量が多くなるほど, コンクリートの乾燥収縮ひずみは小さくなった これは, コンクリートを収 縮させるポテンシャルが, 微細ひび割れに分配されたためと考えられる 謝辞本研究の一部は, 平成 24 年度高経年化技術評価高強度事業の一貫として実施した 参考文献 1) 笠井芳夫, 松井勇, 川崎三十四 : コンクリートの加圧拘束高温用蒸気養生について, 日本建築学会大会学術講演梗概集, 構造系,Vol.48,pp.137-138, 1973.8 2) 田澤栄一, 南和孝, 影山智, 渡辺恭史 : 高温の影響を受けるコンクリートの力学的特性に及ぼす骨材種類の影響, コンクリート工学年次論文集, Vol.9,No.1,pp.13-18,1987 3) 閑田徹志, 市川禎和, 紺谷修, 武田三弘, 大塚浩司 : 高温および低湿度環境下におけるコンクリート物性の変化と損傷の定量化に関する実験検討, 日本建築学会構造系論文集,No.615,p.15-22, 2007.5 4) T.C.Chu,W.F.Ranson,M.A.Sutton,W.H.Peters : Applcaton of dgtal-mage-correlaton technques to expermental mechancs,expermental Mechancs, Vol.25,No.3,pp.232-244,1985 5) 篠野宏, 堀口直也, 丸山一平 : コンクリートの乾燥により生じるひずみ分布と微細ひび割れ性状の評価, コンクリート工学年次論文集,Vol.34, No.1,pp.454-459,2012.7 6) 篠野宏, 丸山一平 : 骨材種類 粒径が乾燥を受けるコンクリート中のひずみ分布と骨材周辺のひび割れに及ぼす影響の評価, 第 66 回セメント技術大会講演要旨,Vol.66,pp.210-211,2012.5 7) 手塚喜勝, 朝倉啓仁, 中村眞一, 佐々木元茂 : 蛍光エポキシ樹脂含浸法によるコンクリートコアサンプルの微細ひび割れの可視化手法, 土木学会北海道支部論文報告集,Vol.61,No.2,2005