高速基板のパワー インテグリティ ~ シミュレーションによる取り組み ~ Seminar ID(D2-A-3) presented by: EDA テクニカルサポート コンサルティング明石芳雄
Agenda はじめに Power Integrity (PI) による問題とシミュレーション 電磁界解析の検証 PIによる電源ノイズと信号波形への影響 電磁界解析の高速化と時間領域解析 まとめ
ディジタル信号伝送のトレンド 電圧 5V 3.3V 1.8V 高速化 + 低電圧化 ノイズマージンの減尐 時間 シグナル インテグリティパワー インテグリティの問題が顕在化
ディジタル信号伝送における波形品質の劣化 Die Package Card ドライバ Trace PCB Trace 信号劣化の原因は?? 信号配線? 電源配線? Die Package Card レシーバ Connector Backplane
Agenda はじめに Power Integrity (PI) による問題とシミュレーション 電磁界解析の検証 PIによる電源ノイズと信号波形への影響 電磁界解析の高速化と時間領域解析 まとめ
Power Integrity (PI) のシミュレーション PI のシミュレーションでは 電源配線による電源ノイズ それに起因する信号劣化を観察 SI のシミュレーション信号配線による信号劣化を観察 PI のシミュレーション電源配線による電源ノイズ / 信号劣化を観察 電源 ドライバ レシーバ ドライバ レシーバ 電源配線 信号配線
Power Integrity (PI) 簡略化した電源配線モデル 簡略化したモデルによる PI 電源ノイズ発生源クロックに同期して電源電流が流れる回路を想定 電源配線モデル 電源配線モデル 電源ノイズの影響を受ける回路
PI のメカニズム 簡略化したモデルによる PI の発生メカニズム 電源ノイズが観察される 電源配線インピーダンスにより電位差が発生
電源配線モデル 電源配線は 分布定数線路として振舞う 対 GND 間に容量 インダクタンス / 抵抗 / 容量を分割 電源配線 GND 層 PWR GND 容量とインダクタンスによる共振により ノイズが実際より大きく観察される!! 以下の条件を想定したモデル 配線幅 : 2[mm] 配線長 : 25[mm] 誘電率 : 4 誘電体厚み : 0.1[mm]
電源配線モデル 集中定数モデルにおける問題点 LRC の分割数に制限がある 表皮効果を表していない 電源配線 GND 層 伝送線路モデルが必要!! 集中定数によるモデル LRC を分割する必要がある!! 表皮効果による抵抗値 2 1 j, Zs 伝送線路モデル集中定数モデル 配線幅 : 2[mm] 配線長 : 25[mm] 誘電率 : 4 誘電体厚み : 0.1[mm] 伝送線路モデルにより正しい結果が得られる
電源配線モデル 電源配線として 電源層を想定 配線幅が広い パターンが任意 PWR GND 電源層 GND 層 電源配線モデルは??
電源配線モデル 配線幅が広く 電源層の任意の位置にチップの電源端子が接続される 電源層が任意パターンとなる 伝送線路モデルが適用できない 電磁界解析が必要 デバイス 1 電源端子 デバイス 2 電源端子 デバイス 3 電源端子
Agenda はじめに Power Integrity (PI) による問題とシミュレーション 電磁界解析の検証 PIによる電源ノイズと信号波形への影響 電磁界解析の高速化と時間領域解析 まとめ
電源層の評価 電源層モデルを検討するにあたり 測定による評価を実施 図に示すパターンを作成し S パラメータによる評価 測定した S パラメータと ADS Momentum のシミュレーション結果と比較 層構造 PWR GND GND 24.5mm PWR FR4:100um 上面図 いずれか 1 つの PAD に給電 いずれか 1 つの PAD に給電 26mm
HP-IB STATUS 電源層評価パターンの測定と測定ポートの組み合わせ GSG プローブを用い ネットワークアナライザで S パラメータ測定 ACTIVE CHANNEL ENTRY RESPONSE STIMULUS INSTRUMENT STATE T R CHANNEL L1R1 PORT 1 PORT 2 L1R7 GSG プローブ PWR GND PAD 部断面構造 G S G FR4 : 100um FR4 : 200um ステージ
ADS Momentum によるシミュレーション ポート部拡大図プローブの GND PAD には GND Reference を用いる シミュレーション設定電源層 /GND 層をシミュレーションに含める 電源層 GND 層
電源層評価パターン Momentum との比較 L1R1 L1R7 Momentum 測定 測定結果と良好に一致している
電源層評価パターン電源層にスリットが設けられている場合 電源層にスリットを設けたパターンにて検証実施 PWR GND 電源層に流れる電流がスリットにより阻害される様子を観察 ADS Momentum と比較 / 検証 L1R1 電源層に Slit を設けるスリット幅 : 0.1, 0.5, 1.0[mm] L7R7
電源層評価パターンの特性 ( スリットあり ) L7R7 Slit なし ( 測定 ) W=0.1mm ( 測定 ) W=0.5mm ( 測定 ) W=1.0mm ( 測定 ) W が広いほうがインダクタンスが大きい Slit 面積が大きいほうが容量が小さい スリットの有無により大きく特性が異なる
電源層評価パターンの特性 ( スリットあり ) インダクタンスの変化 スリットの幅が広いほどインダクタンスが増加するその理由は以下の通り スリットの両側に相対する電流が流れるそこに相互インダクタンスが作用し インダクタンスを減尐させる 幅が広いほど相互インダクタンスが尐ないため インダクタンスが増加 M Slit なし W=0.1mm W=0.5mm W=1.0mm
電源層評価パターン Momentum との比較 L1R1( スリット W=0.1mm) L7R7( スリット W=0.5mm) Momentum 測定 測定結果と良好に一致している
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電源ノイズのシミュレーション 周波数領域データ 時間領域シミュレーション ADS Momentum S パラメータ 時間領域シミュレーション (IFFT + Convolution)
電源ノイズのシミュレーション ADS Momentum で求めた S パラメータを用い 電源ノイズのシミュレーションを実施 電圧波形を観察 クロックに同期して電源電流が流れる回路を想定
電源ノイズのシミュレーション各端子での電圧波形 V2 V1 V3 V0 電源からの距離に応じてノイズ電圧が大きくなる V1 と V3 は電源からの距離がほぼ同じであるため 同様な波形となる
電源ノイズのシミュレーションスリットがある場合の電圧波形 スリット幅 :0.1mm スリットありスリットなし V1 V2 V3 V0 スリットがある場合 ノイズ電圧が大きくなる スリットにより電源電流の流れる経路が長くなり インピーダンスが上昇 スリットによりノイズ電圧が上昇するが 大きな差は認められない
バイパスキャパシタ バイパスキャパシタを配置し 電源ノイズ波形を観察 スリットのないモデルで検討 バイパスキャパシタは電圧を観察する端子の隣に配置 バイパスキャパシタ
バイパスキャパシタの検討 電圧を観察する全ての端子の隣に C を配置 バイパスキャパシタありバイパスキャパシタなし V2 V1 V3 V0 バイパスキャパシタの効果を観察できる
バイパスキャパシタの検討 電源ノイズ発生源付近に C を配置 電圧を観察する全ての端子付近に C を配置電源ノイズ発生源付近に C を配置 V1 付近に C を配置 V1 付近に C を配置 バイパスキャパシタが多いほうがその効果が高い 電源ノイズ発生源付近に C を配置したほうが効果が高い
IBIS モデルを用いた PI のシミュレーション S パラメータ IBIS モデル ドライバ レシーバ ADS Momentum S パラメータ IBIS モデル + S パラメータによるシミュレーション
IBIS モデルを用いた PI のシミュレーション 電源電流 電圧波形を観察 電源ノイズの影響を受ける回路 電源ノイズを発生する回路と同一信号で駆動 PN7 信号源 電源ノイズを発生する回路の電源電流を 16 倍 16 個の回路が並列していることを想定 SSN を想定し 同一信号で駆動
IBIS モデルを用いた PI のシミュレーション PI モデルあり V1 V2 電源電圧波形 信号波形 PI モデルなし 比較 PI モデルあり PI モデルなし PI による信号への影響が大きい!!
IBIS モデルを用いた PI のシミュレーション信号線も含めた解析 信号線を配線 信号線 GND 層電源層 電圧波形を観察 信号線がない場合と比較
IBIS モデルを用いた PI のシミュレーション 信号線あり 信号線あり信号線なし 比較 信号なし 信号線の有無による差は PI モデルの有無ほど大きくない PI による信号への影響が大きい!!
Agenda はじめに Power Integrity (PI) による問題とシミュレーション 電磁界解析の検証 PIによる電源ノイズと信号波形への影響 電磁界解析の高速化と時間領域解析 まとめ
電磁界シミュレータ : ADS Momentum モーメント法による 3D-Planar 電磁界シミュレータ 3D planar metallization z Air Layer [1], Layer [2] h 2 2, 2 2 Gnd multilayered medium e, e 1 1, 1 h 1 T Z I V ground plane [S] S-parameters
Memory usage ADS Momentum シミュレーションテクノロジー パフォーマンス改善 Multi-threading Multi-CPU における並列処理 Matrix load Matrix solve (optimized Lapack solvers) 分散シミュレーション Job 毎の分散処理 周波数毎の分散処理 N log(n) solver の導入 (matrix compression) より尐ないメモリー使用量 シミュレーションの高速化 省メモリ 高速化による精度への影響なし!! EM Layout pre-processing メッシュ生成前のレイアウト処理 レイアウトのクリーンアップ / 簡略化 / 修正 O(N^2) O(N logn) Unknown currents (N)
Momentum : 分散シミュレーション ADS Compute cluster controller LSF PBSPro SunGrid Compute cluster Distributed Simulation Controller ジョブ毎 周波数ポイント毎
Momentum : マルチコアにおける並列処理 Shared Memory Parallel Computing multi CPU computer CPU CPU CPU CPU RAM 1 process multiple threads RF Board Unknowns: 4114 Matrix size: 4114 Load Time: 2m40s (Serial) 44s (Parallel) 速度改善 3.64 倍 BGA Package Unknowns: 9817 Matrix size: 5504 Load Time: 18m16s (Serial) 5m15 (Parallel) 速度改善 3.48 倍 HP Proliant DL 145 Server 4 AMD Opteron (single core) Processors
Momentum : Matrix compression Multi-level compression による省メモリ (N logn) 効果 N メモリー使用量 - dense matrix : order(n 2 ) - compressed matrix : order (N logn) Mesh density = 200 cells/wavelength Matrix size = 58.236 Dense matrix requires 50.53 GB Compressed matrix requires 1.25 GB logn dense matrix (N 2 ) compressed matrix (NlogN)
Spectrum impulse_response S パラメータを時間領域で使用する際の問題 Causality Sパラメータの外挿 1: 帯域制限のあるSパラメータ 2: インパルス応答 1.0 30 0.8 0.6 20 10 0 秒より前から現象が発生! 0.4 結果が異なる! 0 0.2-10 0.0 0 1 freq, Hz -20 3: 得られたインパルス応答より S パラメータに変換すると -2 0 2 4 6 8 10 time, sec 帯域制限されたデータを使用すると Causality 問題が発生する可能性がある
TDT_D_1, TV S パラメータを時間領域で使用する際の問題 Passivity S パラメータの外挿 60 40 20 0-20 -40-60 0 20 40 60 80 100 120 データーがノイジー time, nsec 誤った時間領域応答波形となる帯域制限のあるデータを使用するとPassivity 問題が発生
ADS の新しい時間領域エンジン 集中定数モデル 帯域制限された S パラメータ (0~1 Hz のデータを含まない ) 0-1Hz での誤差はほとんど見られない 帯域制限された S パラメータ使用集中定数モデル 外挿された結果が一致 帯域制限されたデータをインテリジェントな外挿を行うとにより精度の高いインパルスレスポンス応答を得ることが可能
ADS の新しい時間領域エンジン S パラメータデータの取り扱いを強固にした解析エンジン Causal 問題を検出し精度の高い解析が可能 Passibity 問題を検出し補正
まとめ 電源層のような任意の形状をもつパターンのシミュレーションには精度の高いシミュレーションが必要 ADS による時間領域解析エンジンにより S パラメータを用いた時間領域シミュレーションが正確に可能 IBIS モデルのサポート Passivity/Causality 問題への対策 ADS Momentum および ADS による回路シミュレーションにより PI による電源ノイズ 信号波形への影響をシミュレーションすることが可能 バイパスコンデンサの位置を最適化することが可能 信号配線による影響 電源配線による影響をシミュレーションにより切り分けることができる
謝辞 測定基板作成 測定結果の御提供をいただきました松下電器産業株式会社 PE 技術開発室 EMC デザイン第二チーム瓜生一英様に感謝いたします