第 5 章グラフィックス, スレッドとマウスイベントによる描画処理 描画処理およびマルチスレッドの基礎についてそれぞれ理解し,Java を用いてイベント処理を組み合わせたプログラムを作成する 5.1 描画処理 最初に, パネル上にグラフィックス描画を行う方法について説明する グラフィックスを表示するにはフレームにパネルを配置し, 処理内容を paintcomponent メソッド内に記述する paintcomponent メソッドは java.awt.graphics クラスのオブジェクト g に対して, グラフィックスメソッド (drawline は線,drawRect は四角, など ) を使用する public paintcomponent(graphics g){ super.paintcomponent(g); g.drawline(0, 0, 200, 200); // グラフィック処理を記述 グラフィック処理は座標 ( ピクセル ) による指定で行われる パネルの座標原点はタイトルバー下 ( 枠内 ) の左上隅となり,x 座標 ( 水平 ) 右方向,y 座標 ( 垂直 ) 下方向がそれぞれ+となる 5-1
以下に java.awt.graphics クラスの主なメソッドを示す (Graphics クラスの ) メソッド drawline(int x1, int y1, int x2, int y2) drawrect(int x, int y, int width, int height) fillrect(int x, int y, int width, int height) clearrect(int x, int y, int width, int height) drawroundrect(int x, int y, int width, int height, int arcwidth, int archeight) fillroundrect(int x, int y, int width, int height, int arcwidth, int archeight) drawoval(int x, int y, int width, int height) filloval(int x, int y, int width, int height) Color getcolor() setcolor(color c) 説明 直線を描く (x は水平方向,y は垂直方向 ) (x1, y1) 始点の座標 (x2, y2) 終点の座標 矩形 ( 四角 ) の輪郭を描く (x, y) 矩形の左上隅の座標 width 矩形の幅 height 矩形の高さ 矩形 ( 四角 ) を塗りつぶして描く 引数は上記と同様 矩形 ( 四角 ) を ( 現在の描画表面の ) バックグラウンドカラーで塗りつぶして消す 引数は上記と同様 丸いコーナー付きの矩形 ( 角丸四角 ) の輪郭を描く (x, y) 矩形の左上隅の座標 width 矩形の幅 height 矩形の高さ arcwidth 4 隅の弧の水平方向の直径 archeight 4 隅の弧の垂直方向の直径 丸いコーナー付きの矩形 ( 角丸四角 ) を塗りつぶして描く 引数は上記と同様 楕円の輪郭を描く (x, y) 楕円の左上隅の座標 width 楕円の幅 height 楕円の高さ 楕円を塗りつぶして描く 引数は上記と同様 現在の色を java.awt.color クラスのオブジェクトで返す現在の色を java.awt.color クラスのオブジェクト ( 引数 ) で指定された色に設定 5-2
また,java.awt.Color クラスでは下表のような基本色がフィールドで定義されており,java.awt. Graphics クラスのオブジェクトにおいて描画色を設定することができる ( ちなみに初期状態は black である ) フィールド名説明 ( 色 ) black cyan gray lightgray orange red yellow blue darkgray green magenta pink white 黒シアングレイライトグレイオレンジ赤黄青ダークグレイ緑マゼンタピンク白 さらに, この java.awt.color クラスにはいくつかのコンストラクタが定義されているが, その代表的なものを下表に示す コンストラクタ 説明 Color(int rgb) ビット 16~23 の R 部分, ビット 8~15 の G 部分, ビット 0~7 の B 部分より合成された RGB 値を使って, 不透明な srgb カラーを生成 Color(int r, int g, int b) 0~255 の範囲で指定された R,G,B の値を使って, 不透明な srgb カラーを生成 Color(int r, int g, int b, int a) 0~255 の範囲で指定された R,G,B の値, およびアルファ値を使って, srgb カラーを生成 5-3
5.1.1 描画の色指定 java.awt.color クラスで色を生成する場合, 前述の通り色を表す定数を指定する方法以外に RGB 法による red,green,bule の各成分を 0~255 の値で指定する方法がある RGB 値 (16 進表記 ) (R, G, B) (10 進表記 ) 説明 ( 色 ) 00 00 00 (0, 0, 0) 黒 ff ff ff (255, 255, 255) 白 ff 00 00 (255, 0, 0) 赤 00 ff ff (0, 255, 255) シアン 00 ff 00 (0, 255, 0) ライム ff 00 ff (255, 0, 255) マゼンタ 00 00 ff (0, 0, 255) 青 ff ff 00 (255, 255, 0) 黄 詳細は, 前章 ( 第 4 章 ) を参照のこと 5-4
5.2 スレッド処理 スレッド (thread) とは, プログラムにおける処理の流れの単位のことを示す このスレッド処理が複数並行しておこなわれるとき, 実際に働いているのは 1 つのプログラムであるが, 複数のプログラムが動いているかのように異なる処理を同時に行う処理をおこなっている これをマルチスレッド処理という スレッド状態説明 (state) 新規状態 new 演算子などによって生成された状態 実行開始は startメソッドを呼び出す 実行可能状態 start メソッドが呼び出されると実行可能状態となる スレッドの実行順序は,OS に任される ブロック状態スレッドを一時停止したり, スレッドが何かに対して待機すると, スレッドは待機状態となる 終了状態スレッドの run メソッドが最後まで実行され, 正常終了した場合, または, 途中で何らかのエラーによって異常終了した場合には, スレッドは終了状態となる このようなスレッドの機能を実現する元のインタフェースは Runnable であり, インスタンスを 1 つのメソッドで実行するすべてのクラスには, このインタフェースの実装が必要である Runnable の中には run というメソッド ( 引数は無し ) が定義されている これはスレッドを実行するために必要であり, この中にアクティブな処理を追加する この Runnable を実装した Java API のクラスとして,Thread がある (Runnable のサブクラスではない ) Thread では run が呼び出せる他, その run を呼び出してスレッドの実行を開始する start, 実行中のスレッドを指定された引数の時間 ( ミリ秒 ) で中断させる sleep といったメソッドが使用できる 5-5
5.2.1 再描画処理 前述の通り, スレッドでは run メソッドの中でアクティブな処理を追加することができるが, この中で, 既に描画された結果をその処理後の結果で再描画するためのメソッドとして, java.awt.component クラス ( もしくは javax.swing.jcomponent クラス, すなわちこれまでの演習でも使用していた JPanel のスーパークラス ) の中に定義された repaint が使用できる メソッド repaint() repaint(int x, int y, int width, int height) 概要および記述コンポーネント ( 全体 ) を再びペイントコンポーネントの指定された場所の矩形領域を再びペイント 5-6
5.3 マウスのイベント処理 javax.swing コンポーネントにおけるマウスイベント処理は, 書式が下のようになり, 次項に示すクラス メソッドを用いておこなう イベント処理 ( 書式例 ) add イベントリスナークラス名 (new アダプタークラス名 ()){ public イベント処理メソッド名 ( イベントクラス名 e){ // イベント処理の内容 各イベント処理メソッドで使用する引数 (e) には,MouseEvent クラスのオブジェクトを使用する このクラスで使用できるメソッド getx,gety により, イベントが発生した位置の x( 幅方向 ),y( 高さ方向 ) の各座標をそれぞれ, 発生元のコンポーネントに対する相対位置で返すことができる ( 例 ) int x = e.getx(); int y = e.gety(); これら ( イベントの種類 ) をまとめると, 下記の表のようになる イベント イベントリスナー アダプター イベント処理 クラス名 クラス名 クラス名 メソッド名 MouseEvent MouseListener MouseAdapter mouseclicked ( クリック系イベント用 ) mouseentered mouseexited mousepressed mousereleased MouseMotionListener MouseMotionAdapter mousedragged ( ドラッグ系イベント用 ) mousemoved 5-7
上記の各イベントに対する書式例は以下のようになる ( 各イベントとも, すべてのメソッドの記述が空の場合であれ必要にある ) イベント処理 MouseListener ( クリック系イベント用 ) 書式例 public class クラス名 extends JFrame implements MouseListener{ // JFrame クラスに MouseListener クラスの機能を提供 addmouselistener(this); public mouseclicked(mouseevent e){ // マウスクリック ( 押してから離す ) 時の処理 public mouseentered(mouseevent e){ // マウスコンポーネントに入った時の処理 public mouseexited(mouseevent e){ // マウスコンポーネントから出た時の処理 public mousepressed(mouseevent e){ // マウスプレス ( 押し続ける ) 時の処理 MouseMotionListener ( ドラッグ系イベント用 ) public mousereleased(mouseevent e){ // マウスのボタンを離した時の処理 public class クラス名 extends JFrame implements MouseMotionListener{ // JFrame クラスに MouseMotionListener クラスの機能を提供 addmousemotionlistener(this); public mousedragged(mouseevent e){ // ドラッグ操作時の処理 public mousemoved(mouseevent e){ // ムーブ操作時の処理 5-8