九大演報 (Bull. Kyushu Univ. For.),98:25-32, 学術情報 九州大学宮崎演習林における長期森林動態モニタリングプロット 8 年間の推移 緒方健人 *, 菱拓雄, 田代直明, 榎木勉, 内海泰弘 3), 鍜治清弘, 長慶一郎, 山内康平, 久保田勝義 3

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九州大学学術情報リポジトリ Kyushu University Institutional Repository 九州大学宮崎演習林における長期森林動態モニタリングプロット 8 年間の推移 緒方, 健人九州大学農学部附属演習林宮崎演習林 菱, 拓雄九州大学農学部附属演習林宮崎演習林 田代, 直明九州大学農学部附属演習林宮崎演習林 榎木, 勉九州大学農学部附属演習林福岡演習林 他 https://doi.org/10.15017/1805817 出版情報 : 九州大学農学部演習林報告. 98, pp.25-32, 2017-03. 九州大学農学部附属演習林バージョン :published 権利関係 :

九大演報 (Bull. Kyushu Univ. For.),98:25-32, 2017 25 学術情報 九州大学宮崎演習林における長期森林動態モニタリングプロット 8 年間の推移 緒方健人 *, 菱拓雄, 田代直明, 榎木勉, 内海泰弘 3), 鍜治清弘, 長慶一郎, 山内康平, 久保田勝義 3), 壁村勇二, 井上幸子, 椎葉康喜, 馬渕哲也 3), 長澤久視, 村田育恵 4) 九州大学農学部附属演習林宮崎演習林では,3 ヵ所 ( 合戦原, 丸十, 広野 ) に森林動態モニタリングプロット 1ha(100 m 100 m) が設定され,100 年を超える長期的な計画のもと, 胸高周囲長が 15cm 以上の樹木を対象に継続して毎木調査が行われている 継続調査の初期 8 年間の森林動態を調べた結果,3 プロットともに, 立木密度は低下し, 胸高断面積合計と総現存量は増加した 総現存量の年平均増加量は合戦原, 丸十, 広野のそれぞれで 3.3, 3.9, 7.1 Mg/ha/yr で,3 つのプロットの平均は 4.8 Mg/ha/yr であった 立木密度の低下は胸高直径 20cm 以下の小径木で多くみられた また, 胸高周囲長 15cm 以上への新規加入個体はいずれのプロットでも枯損木本数を下回っていた 調査期間中,3 つのプロットとも種構成や多様度指数に大きな変化はなかった 小径木の減少が継続すれば, 現存量や生産量の減少が生じる可能性がある キーワード : 長期観測, 攪乱, 人為インパクト, ニホンジカ, 更新 Three 1 ha monitoring plots, which had named as Kasebaru, Maruju and Hirono, were established at different locations in Shiiba Research Forest. At these plots, the forest dynamics have been monitored under the plan lasting more than 100 years. During 8 years from the starting monitoring, stem densities decreased, and total basal area and total biomass stock increased at the all three plots. Average annual increments of total biomass were 3.3, 3.9 and 7.1 Mg/ha/yr, with the mean of 4.8 Mg/ha/yr, at Kasebaru, Maruju and Hirono, respectively. The decline in stem density was mainly due to mortality of the individuals which have less than 20 cm in stem diameter. The number of recruitment individuals with >15cm in girth at breast height was less than that of dead individuals with >15cm in girth at breast height at the all plots. During the 8 years, species composition and diversity index were not changed at the all plots. The long-lasting decline of small trees may result in the decline of forest biomass and productivity. Keywords: long-term monitoring, disturbance, human impact, Cervus nippon, forest regeneration 1. はじめに気候変動による気温上昇や台風の頻発化, 病虫害などの様々な現象に対して, 森林の生態系は, その影響を長期的に受けることにより将来的に変化することが予想される この変化は短期的な観測では捉えにくいものも多く, 森林動態のメカニズムを解明するためには大面積の調査地において長期間継続してデータの収集を行う必要がある ( 中静 199 このことを踏まえ,2003 年には日本列島の多様な生態系において,1000 ヶ所程度 ( うち森林は 48 ヶ所 ) のモニタリングサイトを設置し, 基礎的な環境情報の収集を長期にわたって継続して行う モニタリングサイト 1000 の計画が環境省により開始された ( 環境省 2016) 九州大学農学附属演習林宮崎演習林 ( 以下, 宮崎演習林 ) では, 宮崎演習林第 5 次森林管理計画書 ( 九州大学農学部 附属演習林 1996) において天然生林の大面積かつ長期的なモニタリングを行うことの重要性が示され, 計画後期の 2004 年度から 2006 年度にかけて, 森林動態モニタリングプロット1ha(100 m 100 m) が3ヵ所 ( 合戦原, 丸十, 広野 ) に設定され,100 年を超える長期的な計画の継続調査が開始された 3つのサイトは, 植生や立地条件などが異なる森林が選ばれている 合戦原 は, 現在も下層植生にスズタケ (Sasa borealis(hack.)makino et Shibata) が残存しており ( 長ほか,2014), 上層にはモミ (Abies firma) を主体とし, アカシデ (Carpinus laxiflora) など広葉樹と混交する針広混交林である 丸十 はニホンジカ (Cervus nippon) の被害によりスズタケが消失しており, 上層にはツガ (Tsuga sieboldii), モミにミズナラ (Quercus crispula) などが混交する針広混交林である 広野 はアカマツ Ogata T., Hishi T., Tashiro N., Enoki T., Utsumi Y., Kaji K., Cho K., Yamauchi K., Kubota K., Kabemura Y., Inoue S., Shiiba Y., Mabuchi T., Nagasawa H., Murata I., Forest dynamics during 8 years at the three monitoring plots for long-term forest dynamics in the Shiiba Research Forest. * 責任者 (corresponding author): E-mail: togata@forest.kyushu-u.ac.jp 883-0402 宮崎県東臼杵郡椎葉村大河内 949 九州大学農学部附属演習林宮崎演習林 Shiiba Research Forest, Faculty of Agriculture, Kyushu University 九州大学農学部附属演習林福岡演習林 Kasuya Research Forest, Faculty of Agriculture, Kyushu University 3) 九州大学農学部附属演習林北海道演習林 Ashoro Research Forest, Faculty of Agriculture, Kyushu University 4) 九州大学大学院生物資源環境科学府森林資源科学専攻 Graduate School of Bioresource and Bioenvironmental Science, Kyushu University

26 緒方健人ら (Pinus densiflora) を中心としてモミ, ツガ, ミズナラなどが混交する若い二次林であり, ここもスズタケは消失している これらのうち, 合戦原プロットはモニタリングサイト 1000 の準コアサイトに位置付けられ,5 年に一度の観測を義務付けているが, 他の2プロットも同様の観測頻度と精度で観測を続けている プロット設置時における第一回目の調査結果については, 榎木ら (2013) の報告がある モニタリングサイト 1000 の森林サイトは, 九州には椎葉 ( 九州大学宮崎演習林 ) のほか, 糟屋 ( 九州大学福岡演習林 ), 綾 ( 森林総研綾リサーチサイト ), 田野 ( 宮崎大学田野演習林 ) に設置されている 糟屋, 綾, 田野は標高 500 m 以下に位置する暖温帯性の常緑広葉樹林であるのに対し, 宮崎演習林は標高 1000m 以上に位置し, ブナ (Fugus crenata), ミズナラ, ヒメシャラ (Stewartia monadelpha) などの落葉広葉樹と, モミ, ツガ, アカマツなどの針葉樹が混交した冷温帯性の森林で, 他のサイトとは気候帯および植生が異なる したがって宮崎演習林における長期観測は, 九州では希少な冷温帯性の針広混交林の変化を把握するため, 重要な資料となりうる 本調査において蓄積されるデータは 100 年後の解析に利用され, 森林動態メカニズムの解明に資するものでなくてはならない しかし大面積の長期継続調査では, データ量は膨大なものとなり, 樹種の同定や測定値の誤記載などの問題も予想される ( 芝野ら 1996) 長期的なモニタリングによる森林動態の把握が大面積調査区で計画されている研究の主たる目的であるが, 調査期間中の定期的な調査結果の開示は, 調査地の短期的な森林動態が報告されると同時に, 収集されたデータの精度が検証されることになり, データの信頼性を担保するものとなる 本報告では, 宮崎演習林の森林動態モニタリング3プロットにおける長期継続調査の初期 8 年間のデータを用いて, その森林動態について報告する 2. 調査地の概要調査地は宮崎県東臼杵郡椎葉村大河内に所在する宮崎演習林である 宮崎演習林は, 津野岳団地, 萱原団地, 三方岳団地の3 団地からなり, 総面積は 2,915ha である いずれの団地も平均標高は 1,000m 以上であり, 地形は急峻で 30 度以上の傾斜地が演習林全体の 30% を占める 三方岳団地 29 林班 ( 標高 1,086m) における 2008 年から 2015 年の気象観測では, 年平均気温 10.8, 年平均降水量 3,208mm であった 天然生林の植生は, ブナ, ミズナラ, シデ類などの落葉広葉樹と, モミ, ツガ, アカマツ等の針葉樹が混交した冷温帯性落葉広葉樹林からなる 2.1. 合戦原プロット合戦原プロット (33 22 35 N,131 05 50 E, 標高 1190 m, 斜面方位北西, 平均傾斜角 16.0 ) は, 津野岳団地 5 林班に設置され,3 回 (2006,2009,2014 年度 ) の調査が実施されている 樹種はモミ, ツガ, アカシデ, シキミ (Illicium anisatum) が優占している ( 榎木ら 2013) 津 野岳団地の林床はスズタケに覆われていたが, ニホンジカの個体数の増加に伴う摂食により,2003 年から 2014 年にかけて大きく衰退した ( 長ら 2016) 合戦原プロット内のスズタケも衰退が進んでいる 本プロットは, 環境省生物多様性センター モニタリングサイト 1000( 自然環境センター 2006) の準コアサイトに登録されている( 石原ら 2010) 2.2. 丸十プロット丸十プロット (32 23 55 N,131 10 21 E, 標高 1100 m, 斜面方位北北西, 平均傾斜角 14.3 ) は, 三方岳団地 35 林班に設置され,3 回 (2005,2008,2013 年度 ) の調査が実施されている 樹種はツガ, モミ, ミズナラ, クリ (Castanea crenata) 等が優占している ( 榎木ら 2013) 林床はスズタケに覆われていたが, ニホンジカの摂食の影響を非常に強く受け,1986 年頃から密度の低下がみられ ( 村田ら 2009), 調査開始時点においては既に消失している 2.3. 広野プロット広野プロット (32 23 55 N,131 10 21 E, 標高 1100 m, 斜面方位南南西, 平均傾斜角 14.6 ) は, 三方岳団地 25 林班に設置され,3 回 (2004,2007,2012 年度 ) の調査が実施されている 隣接する 22,23 林班の境界付近では明治後半から昭和 24 年ごろまで断続的に銅が採掘されており, また, 広野プロットを含む広野地区は大正時代後期に山火事が発生したとされ ( 椎葉 内海 2009), 近年まで人為の影響を強く受けていたと考えられる 樹種はアカマツが優占する二次林である ( 榎木ら 2013) が, これは昭和 20 年代までの人為攪乱後の一斉更新により形成されたと考えられる ( 宮島 2009) 林床はスズタケに覆われていたが, ニホンジカの摂食の影響を強く受け,1986 年頃から密度の低下がみられ,1999 年には広野プロット周辺で大きく減少した ( 村田ら 2009) 調査開始時点においては既に消失している 3. 調査方法 3.1. 毎木調査毎木調査の方法は環境省生物多様性センター モニタリングサイト 1000 の毎木調査マニュアルに準拠した 調査プロット内の胸高周囲長 ( 山側地際から 1.3 mの高さ ) が 15cm 以上の樹幹を対象に, 個体識別, 樹種の同定, 樹木位置および胸高周囲長の測定を行った 調査の間隔は, 当初は宮崎演習林独自に調査を開始し3 年間隔の調査を計画していたが, 合戦原プロットが2 回目の調査時点において モニタリングサイト 1000 の準コアサイトに登録され, 各プロットの調査方法をそのマニュアルに準拠させた そのため各プロットとも1 回目と2 回目の調査は3 年の間隔,2 回目以降は5 年間隔で実施している 3.2. データ解析個体の幹本数とともに, 調査ごとに前回調査と比較して

九州大学宮崎演習林における長期森林動態モニタリングプロット8 年間の推移 27 周囲長が新たに 15cm を超えた個体数を新規加入木本数として数えた また, 個体の死亡による減少を枯損木本数として数えた 毎木調査から得られた胸高直径と樹種毎の材の気乾比重の値から, 相対成長式 ( 小見山ら 201 を用いて葉を含めた地上部重と直径 5mm 以上の根重をそれぞれ求め, その合計を総現存量とした 気乾比重の値は井上ら (200, Umebayashi et al.(201, 独立行政法人森林総合研究所 (2004), 白澤 (1983) の値を参考にした なお, 気乾比重の値が不明な樹種については, 近縁の樹種の値を採用した 樹木本数, 胸高周囲長, 現存量の複数年での増加量を調査間隔年数で割ったものを年平均変化量とした また, 各プロットの多様度指数 H ( 安田ら 201 を Shannon-Wiener 関数 ( を用いて各樹種の幹数と胸高断面積の値からそれぞれ求めた S H ' = p i l n p ( i= 1 i ここで,S は幹数または胸高断面積の全種の値の合計, pi は幹数または胸高断面積の全種の値の合計のうちで種 i の値が占める割合 ( 相対優占度 ) である 4. 結果 4.1. 合戦原プロット 2006 年度と 2009 年度および 2014 年度の毎木調査の結果について表 1に示す 2014 年度には 50 種,1366 本が確認され, 胸高断面積合計は 34.73 m 2 /ha であった 2006 年度の調査時の種組成と比較すると, イヌガヤ (Cephalotaxus harringtonia), イヌツゲ (Ilex crenata) の2 種が消失し, 立木密度は 173 本 (21.6 本 /ha/yr) 低下した 対して, 胸高断面積合計は1.84m 2 /ha(0.23m 2 /ha/yr), 総現存量は 26.3Mg/ha(3.3Mg/ha/yr) 増加した 多様度指数 ( 表 4) は 3つのプロットの中で最も高く,2014 年度は胸高断面積で 図 2 合戦原プロットにおける枯損木全種及び枯損木本数の上位 3 種の胸高直径 (DBH) の頻度分布 図 1 合戦原, 丸十および広野プロットにおける全種の胸高直径 (DBH) の頻度分布 図 3 丸十プロットにおける枯損木全種及び枯損木本数の上位 3 種の胸高直径 (DBH) の頻度分布

28 緒方健人ら 表 1 2006 年度と 2009 年度および 2014 年度の合戦原プロットに出現した胸高周囲長 15cm 以上の木本種の立木密度, 胸高断面積合計, 現存量 樹種 立木密度 (/ha) 胸高断面積 (m 2 /ha) 現存量 (Mg/ha) 2006 2009 2014 2006 2009 2014 2006 2009 2014 モミ 20 (1.3) 21 (1.4) 20 (1.5) 3.94 (12.0) 4.12 (12.0) 4.37 (12.6) 39.0 (12.7) 41.3 (12.8) 44.4 (13.4) アカシデ 136 (8.8) 134 (8.8) 108 (7.9) 2.27 (6.9) 2.34 (6.8) 2.26 (6.5) 21.8 (7. 22.9 (7. 23.1 (6.9) シキミ 268 (17.4) 259 (17.0) 234 (17. 2.16 (6.6) 2.21 (6.4) 2.09 (6.0) 15.3 (5.0) 15.5 (4.8) 14.7 (4.4) ミズメ 53 (3.4) 52 (3.4) 47 (3.4) 1.94 (5.9) 2.04 (5.9) 2.03 (5.8) 19.6 (6.4) 20.8 (6.5) 21.2 (6.4) ツガ 48 (3. 48 (3. 52 (3.8) 1.92 (5.8) 2.02 (5.9) 2.20 (6.3) 17.2 (5.6) 18.2 (5.6) 19.8 (6.0) イヌシデ 53 (3.4) 53 (3.5) 51 (3.7) 1.85 (5.6) 1.95 (5.7) 1.99 (5.7) 17.9 (5.8) 18.8 (5.8) 19.5 (5.9) ミズキ 36 (2.3) 36 (2.4) 29 (2. 1.80 (5.5) 1.87 (5.5) 1.69 (4.9) 16.1 (5.3) 17.1 (5.3) 15.9 (4.8) ウリハダカエデ 24 (1.6) 23 (1.5) 22 (1.6) 1.62 (4.9) 1.71 (5.0) 1.80 (5. 16.6 (5.4) 17.9 (5.6) 19.1 (5.8) ハリギリ 21 (1.4) 21 (1.4) 20 (1.5) 1.54 (4.7) 1.65 (4.8) 1.80 (5. 13.1 (4.3) 14.1 (4.4) 15.9 (4.8) コハウチワカエデ 178 (11.6) 182 (12.0) 182 (13.3) 1.48 (4.5) 1.55 (4.5) 1.64 (4.7) 14.9 (4.9) 15.7 (4.9) 16.4 (4.9) ブナ 19 (1. 19 (1. 18 (1.3) 1.17 (3.6) 1.21 (3.5) 1.30 (3.7) 13.0 (4. 13.7 (4. 14.7 (4.4) クマシデ 86 (5.6) 86 (5.7) 76 (5.6) 1.10 (3.3) 1.19 (3.5) 1.10 (3. 9.0 (2.9) 9.4 (2.9) 9.2 (2.8) エンコウカエデ 25 (1.6) 24 (1.6) 25 (1.8) 1.07 (3.3) 1.14 (3.3) 1.22 (3.5) 12.5 (4. 13.2 (4. 14.2 (4.3) ヒメシャラ 67 (4.4) 69 (4.5) 66 (4.8) 0.97 (2.9) 0.99 (2.9) 1.03 (3.0) 11.4 (3.7) 11.9 (3.7) 12.2 (3.7) ミズナラ 25 (1.6) 25 (1.6) 20 (1.5) 0.94 (2.9) 0.99 (2.9) 1.08 (3. 9.1 (3.0) 10.1 (3. 11.1 (3.3) アオハダ 39 (2.5) 38 (2.5) 37 (2.7) 0.87 (2.6) 0.88 (2.6) 0.90 (2.6) 8.0 (2.6) 8.2 (2.6) 8.3 (2.5) ヤマザクラ 9 (0.6) 9 (0.6) 9 (0.7) 0.84 (2.6) 0.88 (2.6) 0.91 (2.6) 8.9 (2.9) 9.5 (3.0) 10.0 (3.0) ホオノキ 19 (1. 19 (1. 15 (1. 0.61 (1.9) 0.64 (1.9) 0.65 (1.9) 4.6 (1.5) 5.0 (1.5) 5.2 (1.6) キハダ 9 (0.6) 9 (0.6) 8 (0.6) 0.50 (1.5) 0.55 (1.6) 0.57 (1.6) 3.9 (1.3) 4.1 (1.3) 4.4 (1.3) シラキ 105 (6.8) 105 (6.9) 105 (7.7) 0.45 (1.4) 0.44 (1.3) 0.52 (1.5) 4.1 (1.3) 4.2 (1.3) 4.3 (1.3) イヌザクラ 6 (0.4) 6 (0.4) 6 (0.4) 0.44 (1.3) 0.47 (1.4) 0.54 (1.6) 4.5 (1.5) 4.9 (1.5) 5.6 (1.7) サワグルミ 6 (0.4) 6 (0.4) 4 (0.3) 0.42 (1.3) 0.43 (1.3) 0.32 (0.9) 2.9 (0.9) 3.0 (0.9) 2.3 (0.7) コシアブラ 16 (1.0) 16 (1. 11 (0.8) 0.40 (1. 0.42 (1. 0.32 (0.9) 2.7 (0.9) 2.8 (0.9) 2.2 (0.7) アサガラ 12 (0.8) 12 (0.8) 12 (0.9) 0.40 (1. 0.40 (1. 0.45 (1.3) 2.4 (0.8) 2.5 (0.8) 2.7 (0.8) リョウブ 37 (2.4) 33 (2. 22 (1.6) 0.27 (0.8) 0.23 (0.7) 0.16 (0.5) 2.3 (0.7) 1.9 (0.6) 1.3 (0.4) クリ 4 (0.3) 4 (0.3) 4 (0.3) 0.26 (0.8) 0.30 (0.9) 0.32 (0.9) 2.5 (0.8) 2.7 (0.8) 3.0 (0.9) エゴノキ 19 (1. 15 (1.0) 5 (0.4) 0.23 (0.7) 0.19 (0.6) 0.09 (0.3) 1.6 (0.5) 1.3 (0.4) 0.7 (0. ユクノキ 12 (0.8) 12 (0.8) 10 (0.7) 0.23 (0.7) 0.24 (0.7) 0.20 (0.6) 1.8 (0.6) 1.9 (0.6) 1.7 (0.5) カナクギノキ 7 (0.5) 7 (0.5) 7 (0.5) 0.20 (0.6) 0.21 (0.6) 0.23 (0.7) 1.3 (0.4) 1.3 (0.4) 1.4 (0.4) ハイノキ 59 (3.8) 58 (3.8) 49 (3.6) 0.19 (0.6) 0.20 (0.6) 0.18 (0.5) 1.3 (0.4) 1.3 (0.4) 1.2 (0.3) アワブキ 33 (2. 33 (2. 28 (2.0) 0.15 (0.5) 0.15 (0.4) 0.15 (0.4) 1.2 (0.4) 1.3 (0.4) 1.2 (0.4) コハクウンボク 27 (1.8) 25 (1.6) 15 (1. 0.14 (0.4) 0.15 (0.4) 0.06 (0. 0.9 (0.3) 0.9 (0.3) 0.3 (0. シナノキ 12 (0.8) 12 (0.8) 10 (0.7) 0.12 (0.4) 0.12 (0.3) 0.11 (0.3) 0.6 (0. 0.6 (0. 0.6 (0. ウラジロガシ 2 (0. 2 (0. 2 (0. 0.11 (0.3) 0.12 (0.3) 0.13 (0.4) 1.4 (0.4) 1.5 (0.5) 1.7 (0.5) タムシバ 1 (0. 1 (0. 1 (0. 0.09 (0.3) 0.09 (0.3) 0.10 (0.3) 0.8 (0.3) 0.8 (0.3) 0.9 (0.3) クマノミズキ 1 (0. 1 (0. 1 (0. 0.06 (0. 0.06 (0. 0.06 (0. 0.6 (0. 0.6 (0. 0.6 (0. カヤ 4 (0.3) 4 (0.3) 5 (0.4) 0.04 (0. 0.04 (0. 0.04 (0. 0.2 (0. 0.2 (0. 0.3 (0. オニイタヤ 1 (0. 1 (0. 1 (0. 0.03 (0. 0.04 (0. 0.04 (0. 0.3 (0. 0.3 (0. 0.3 (0. ヤマグワ 1 (0. 1 (0. 1 (0. 0.03 (0. 0.03 (0. 0.04 (0. 0.3 (0. 0.3 (0. 0.3 (0. ヤマグルマ 1 (0. 1 (0. 1 (0. 0.01 (0.0) 0.01 (0.0) 0.02 (0. 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) タンナサワフタギ 4 (0.3) 4 (0.3) 4 (0.3) 0.01 (0.0) 0.01 (0.0) 0.01 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) オオモミジ 2 (0. 2 (0. 2 (0. 0.01 (0.0) 0.01 (0.0) 0.01 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) イヌガヤ 2 (0. 2 (0. - - 0.01 (0.0) 0.01 (0.0) - - 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) - - カマツカ 8 (0.5) 8 (0.5) 4 (0.3) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) ヒナウチワカエデ 7 (0.5) 7 (0.5) 7 (0.5) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) シロモジ 5 (0.3) 6 (0.4) 3 (0. <0.01 (0.0) 0.01 (0.0) <0.01 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) <0.1 (0.0) ツリバナ 3 (0. 3 (0. 2 (0. <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) ツクシイヌツゲ 2 (0. 2 (0. 2 (0. <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) マルバアオダモ 2 (0. 2 (0. 1 (0. <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) イヌウメモドキ 1 (0. 1 (0. 1 (0. <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) ヤハズアジサイ 1 (0. 1 (0. 1 (0. <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) イヌツゲ 1 (0. 1 (0. - - <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) - - <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) - - 計 1539 1521 1366 32.89 34.31 34.73 306.1 322.5 332.4 変化量 (3 年 5 年 ) -18-155 1.42 0.42 16.4 9.9 括弧内は調査地合計に占める割合 (%) を示す

九州大学宮崎演習林における長期森林動態モニタリングプロット 8 年間の推移 29 表 2 2005 年度と2008 年度および2013 年度の丸十プロットに出現した胸高周囲長 15cm 以上の木本種の立木密度, 胸高断面積合計, 現存量 樹種 立木密度 (/ha) 胸高断面積 (m 2 /ha) 現存量 (Mg/ha) 2005 2008 2013 2005 2008 2013 2005 2008 2013 ツガ 227 (25.4) 222 (25. 218 (25.5) 11.40 (25.6) 11.91 (25.9) 12.77 (27.3) 94.3 (22.7) 99.3 (22.9) 108.0 (24. モミ 58 (6.5) 57 (6.4) 55 (6.4) 10.22 (22.9) 10.54 (23.0) 11.05 (23.6) 94.2 (22.6) 98.3 (22.7) 104.2 (23.3) ミズナラ 70 (7.8) 69 (7.8) 66 (7.7) 4.65 (10.4) 4.86 (10.6) 5.07 (10.8) 49.4 (11.9) 52.0 (12.0) 55.2 (12.3) クリ 30 (3.4) 29 (3.3) 23 (2.7) 3.11 (7.0) 3.16 (6.9) 2.63 (5.6) 31.2 (7.5) 32.5 (7.5) 27.3 (6. アカマツ 10 (1. 10 (1. 10 (1. 2.65 (5.9) 2.78 (6. 2.99 (6.4) 28.2 (6.8) 30.2 (7.0) 32.8 (7.3) ミズメ 41 (4.6) 39 (4.4) 34 (4.0) 2.25 (5.0) 2.24 (4.9) 2.19 (4.7) 25.3 (6. 25.3 (5.9) 24.8 (5.6) アカシデ 63 (7. 59 (6.7) 52 (6. 1.81 (4. 1.78 (3.9) 1.65 (3.5) 17.5 (4. 17.3 (4.0) 16.4 (3.7) アオハダ 45 (5.0) 45 (5. 45 (5.3) 1.31 (2.9) 1.36 (3.0) 1.40 (3.0) 12.1 (2.9) 12.7 (2.9) 13.5 (3.0) ホオノキ 27 (3.0) 28 (3. 26 (3.0) 0.89 (2.0) 0.98 (2. 0.98 (2. 6.0 (1.4) 6.5 (1.5) 6.8 (1.5) リョウブ 47 (5.3) 42 (4.7) 33 (3.9) 0.78 (1.7) 0.69 (1.5) 0.56 (1. 6.5 (1.6) 5.8 (1.3) 4.8 (1. コハウチワカエデ 21 (2.4) 20 (2.3) 20 (2.3) 0.69 (1.5) 0.66 (1.4) 0.69 (1.5) 6.9 (1.7) 6.5 (1.5) 7.1 (1.6) アセビ 43 (4.8) 42 (4.7) 42 (4.9) 0.62 (1.4) 0.61 (1.3) 0.61 (1.3) 4.3 (1.0) 4.2 (1.0) 4.2 (0.9) ブナ 10 (1. 10 (1. 11 (1.3) 0.54 (1. 0.57 (1. 0.62 (1.3) 5.7 (1.4) 6.1 (1.4) 6.5 (1.5) ネジキ 32 (3.6) 32 (3.6) 29 (3.4) 0.46 (1.0) 0.46 (1.0) 0.45 (1.0) 3.4 (0.8) 3.5 (0.8) 3.4 (0.8) アカガシ 5 (0.6) 5 (0.6) 5 (0.6) 0.42 (0.9) 0.45 (1.0) 0.49 (1.0) 6.0 (1.4) 6.4 (1.5) 7.1 (1.6) タムシバ 14 (1.6) 14 (1.6) 12 (1.4) 0.38 (0.9) 0.39 (0.8) 0.28 (0.6) 2.7 (0.7) 2.9 (0.7) 2.1 (0.5) イヌシデ 8 (0.9) 8 (0.9) 6 (0.7) 0.34 (0.8) 0.35 (0.8) 0.33 (0.7) 3.4 (0.8) 3.5 (0.8) 3.3 (0.7) コシアブラ 5 (0.6) 5 (0.6) 4 (0.5) 0.29 (0.7) 0.31 (0.7) 0.27 (0.6) 2.1 (0.5) 2.3 (0.5) 1.9 (0.4) ソヨゴ 21 (2.4) 19 (2. 19 (2. 0.25 (0.6) 0.24 (0.5) 0.23 (0.5) 2.5 (0.6) 2.4 (0.6) 2.4 (0.5) ハリギリ 4 (0.4) 4 (0.5) 4 (0.5) 0.23 (0.5) 0.25 (0.5) 0.28 (0.6) 1.8 (0.4) 1.9 (0.4) 2.2 (0.5) ウリハダカエデ 2 (0. 2 (0. 1 (0. 0.21 (0.5) 0.22 (0.5) 0.11 (0. 2.2 (0.5) 2.3 (0.5) 1.2 (0.3) ヒメシャラ 21 (2.4) 26 (2.9) 36 (4. 0.17 (0.4) 0.18 (0.4) 0.20 (0.4) 2.1 (0.5) 2.4 (0.6) 2.8 (0.6) ウラジロガシ 5 (0.6) 5 (0.6) 5 (0.6) 0.17 (0.4) 0.17 (0.4) 0.20 (0.4) 1.9 (0.5) 2.0 (0.5) 2.2 (0.5) ヤブツバキ 8 (0.9) 8 (0.9) 8 (0.9) 0.14 (0.3) 0.16 (0.3) 0.16 (0.3) 1.3 (0.3) 1.4 (0.3) 1.6 (0.3) ヤマザクラ 1 (0. 1 (0. 1 (0. 0.10 (0. 0.11 (0. 0.13 (0.3) 1.0 (0. 1.1 (0.3) 1.4 (0.3) シラキ 13 (1.5) 14 (1.6) 15 (1.8) 0.10 (0. 0.10 (0. 0.10 (0. 0.7 (0. 0.7 (0. 0.8 (0. ミズキ 3 (0.3) 3 (0.3) 3 (0.4) 0.07 (0. 0.07 (0. 0.10 (0. 0.6 (0. 0.6 (0. 0.8 (0. シキミ 8 (0.9) 14 (1.6) 17 (2.0) 0.07 (0. 0.07 (0. 0.06 (0. 0.5 (0. 0.6 (0. 0.6 (0. マルバアオダモ 3 (0.3) 3 (0.3) 2 (0. 0.05 (0. 0.05 (0. 0.03 (0. 0.4 (0. 0.4 (0. 0.2 (0.0) タカノツメ 1 (0. - - - - 0.05 (0. - - - - 0.4 (0. - - - - カナクギノキ 18 (2.0) 18 (2.0) 17 (2.0) 0.04 (0. 0.04 (0. 0.04 (0. 0.2 (0. 0.3 (0. 0.3 (0. エゴノキ 11 (1. 13 (1.5) 15 (1.8) 0.04 (0. 0.04 (0. 0.02 (0.0) 0.4 (0. 0.4 (0. 0.4 (0. ノリウツギ 2 (0. 2 (0. 1 (0. 0.03 (0. 0.03 (0. 0.01 (0.0) 0.2 (0.0) 0.2 (0.0) 0.1 (0.0) コハクウンボク 1 (0. 1 (0. 1 (0. 0.02 (0.0) 0.02 (0.0) 0.02 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) ヒサカキ 4 (0.4) 4 (0.5) 4 (0.5) 0.01 (0.0) 0.01 (0.0) 0.01 (0.0) 0.1 (0.0) 0.2 (0.0) 0.2 (0.0) カマツカ 3 (0.3) 3 (0.3) 3 (0.4) 0.01 (0.0) 0.01 (0.0) 0.01 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) ハイノキ 2 (0. 2 (0. 1 (0. 0.01 (0.0) 0.01 (0.0) 0.01 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) イヌツゲ 1 (0. 1 (0. 1 (0. 0.01 (0.0) 0.01 (0.0) 0.01 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) コバノミツバツツジ 1 (0. 1 (0. 1 (0. 0.01 (0.0) 0.01 (0.0) 0.01 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) シロモジ 3 (0.3) 4 (0.5) 6 (0.7) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) 0.1 (0.0) シロダモ - - 1 (0. 1 (0. - - <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) - - <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) ツタウルシ - - - - 1 (0. - - - - <0.01 (0.0) - - - - <0.1 (0.0) 計 892 885 854 44.60 45.90 46.77 416.1 432.7 446.9 変化量 (3 年 5 年 ) -7-31 1.30 0.87 16.6 14.2 括弧内は調査地合計に占める割合 (%) を示す は 3.182 であった プロット全体の胸高直径の頻度分布 ( 図 では, 直径階 10cm 以下においてモードを示したことは同様であるが, 主に直径階 20cm 以下の幹数が著しく減少した 枯損木を樹種別に確認すると, シキミとアカシデの減少が顕著であり, 特に直径階 10cm 以下で多くみられた ( 図 4.2. 丸十プロット 2005 年度と 2008 年度および 2013 年度の毎木調査の結果について表 2に示す 2013 年度には 41 種,854 本が確認され, 胸高断面積合計は 46.77 m 2 /ha であった 2005 年度と比較すると, シロダモ (Neolitsea sericea) とツタウルシ (Toxicodendron radicans) が新規に出現し, タカノツメ (Gamblea innovans) が消失した 立木密度は 38 本 (4.8 本 /ha/yr) 低下したが, 胸高断面積合計は 2.17 m 2 /ha(0.27 m 2 /

30 緒方健人ら 表 3 2004 年度と2007 年度および2012 年度の広野プロットに出現した胸高周囲長 15cm 以上の木本種の立木密度, 胸高断面積合計, 現存量 樹種 立木密度 (/ha) 胸高断面積 (m 2 /ha) 現存量 (Mg/ha) 2004 2007 2012 2004 2007 2012 2004 2007 2012 アカマツ 131 (12.0) 129 (12.0) 121 (11.7) 21.06 (40.4) 21.63 (39.7) 22.07 (38.5) 207.8 (45.8) 215.6 (45. 222.4 (43.6) モミ 199 (18. 199 (18.5) 195 (18.8) 12.47 (23.9) 13.43 (24.6) 14.69 (25.6) 98.7 (21.8) 107.4 (22.5) 119.2 (23.4) ツガ 289 (26.5) 286 (26.6) 279 (26.9) 9.74 (18.7) 10.27 (18.8) 11.12 (19.4) 70.8 (15.6) 75.7 (15.8) 83.5 (16.4) ミズナラ 164 (15.0) 149 (13.8) 130 (12.5) 3.52 (6.8) 3.48 (6.4) 3.5 (6. 30.9 (6.8) 31.3 (6.6) 32.6 (6.4) クリ 79 (7. 78 (7. 75 (7. 3.12 (6.0) 3.39 (6. 3.62 (6.3) 28.4 (6.3) 30.5 (6.4) 33.4 (6.6) コシアブラ 21 (1.9) 21 (2.0) 18 (1.7) 0.39 (0.7) 0.43 (0.8) 0.41 (0.7) 2.2 (0.5) 2.4 (0.5) 2.4 (0.5) イヌシデ 28 (2.6) 28 (2.6) 27 (2.6) 0.34 (0.7) 0.36 (0.7) 0.39 (0.7) 2.4 (0.5) 2.6 (0.6) 2.9 (0.6) エゴノキ 52 (4.8) 53 (4.9) 48 (4.6) 0.32 (0.6) 0.32 (0.6) 0.26 (0.5) 1.8 (0.4) 1.9 (0.4) 1.7 (0.3) アカシデ 22 (2.0) 22 (2.0) 21 (2.0) 0.32 (0.6) 0.35 (0.6) 0.39 (0.7) 2.8 (0.6) 3.2 (0.7) 3.6 (0.7) ヤマザクラ 8 (0.7) 8 (0.7) 7 (0.7) 0.24 (0.5) 0.25 (0.5) 0.24 (0.4) 2.0 (0.4) 2.1 (0.4) 2.1 (0.4) ホオノキ 19 (1.7) 19 (1.8) 19 (1.8) 0.23 (0.4) 0.24 (0.4) 0.26 (0.5) 1.2 (0.3) 1.4 (0.3) 1.5 (0.3) コハウチワカエデ 6 (0.5) 6 (0.6) 7 (0.7) 0.14 (0.3) 0.14 (0.3) 0.15 (0.3) 1.7 (0.4) 1.7 (0.4) 1.8 (0.3) イヌツゲ 2 (0. - - - - 0.05 (0. - - - - 0.5 (0. - - - - リョウブ 15 (1.4) 14 (1.3) 13 (1.3) 0.05 (0. 0.04 (0. 0.04 (0. 0.4 (0. 0.4 (0. 0.3 (0. フカギレオオモミジ 4 (0.4) 4 (0.4) 4 (0.4) 0.04 (0. 0.04 (0. 0.04 (0. 0.3 (0. 0.3 (0. 0.4 (0. アオハダ 3 (0.3) 3 (0.3) 3 (0.3) 0.02 (0.0) 0.03 (0. 0.03 (0. 0.2 (0.0) 0.2 (0.0) 0.2 (0.0) ミズメ 1 (0. 1 (0. 1 (0. 0.02 (0.0) 0.02 (0.0) 0.02 (0.0) 0.2 (0.0) 0.2 (0.0) 0.2 (0.0) アセビ 1 (0. 2 (0. 3 (0.3) 0.02 (0.0) 0.02 (0.0) 0.02 (0.0) 0.1 (0.0) 0.2 (0.0) 0.2 (0.0) ハリギリ 1 (0. 1 (0. 1 (0. 0.02 (0.0) 0.02 (0.0) 0.02 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) タムシバ 4 (0.4) 6 (0.6) 7 (0.7) 0.02 (0.0) 0.02 (0.0) 0.02 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) 0.2 (0.0) ネジキ 12 (1. 9 (0.8) 9 (0.9) <0.01 (0.0) 0.01 (0.0) 0.02 (0.0) 0.2 (0.0) 0.1 (0.0) 0.2 (0.0) コバノミツバツツジ 15 (1.4) 19 (1.8) 22 (2. <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) 0.01 (0.0) 0.2 (0.0) 0.2 (0.0) 0.3 (0. ハイノキ 3 (0.3) 4 (0.4) 5 (0.5) <0.01 (0.0) 0.01 (0.0) 0.01 (0.0) <0.1 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) カマツカ 2 (0. 2 (0. 3 (0.3) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) ソヨゴ 2 (0. 2 (0. 2 (0. <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) シキミ 3 (0.3) 6 (0.6) 11 (1. <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.1 (0.0) 0.1 (0.0) 0.1 (0.0) シラキ 2 (0. 2 (0. 5 (0.5) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) 0.1 (0.0) カヤ 1 (0. 1 (0. 1 (0. <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) シロモジ 1 (0. 1 (0. - - <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) - - <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) - - タンナサワフタギ 1 (0. 1 (0. - - <0.01 (0.0) <0.01 (0.0) - - <0.1 (0.0) <0.1 (0.0) - - 計 1091 1076 1037 52.13 54.50 57.33 453.2 478.0 509.7 変化量 (3 年 5 年 ) -15-39 2.37 2.83 24.8 31.7 括弧内は調査地合計に占める割合 (%) を示す ha/yr), 総現存量は 30.8Mg/ha(3.9Mg/ha/yr) 増加した 多 様度指数 ( 表 4) は,2013 年度は胸高断面積では 2.355 で あった 胸高直径の頻度分布 ( 図 では,2005 年度, 2013 年度ともに直径階 10-20cm においてモードを示した また, この直径階では幹数の減少が最も多くみられた 最も枯損木が多いリョウブ (Clethra barbinervis) が直径階 10cm 以下の枯損がみられなかったのは,2005 年度の調査において幹数が3 本と少なく,8 年間で枯損が生じなかったためであった ( 図 3) 図 4 広野プロットにおける枯損木全種及び枯損木本数の上位 3 種の胸高直径 (DBH) の頻度分布 4.3. 広野プロット 2004 年度と 2007 年度および 2012 年度の毎木調査の結果について表 3に示す 2012 年度には 27 種,1037 本が確認され, 胸高断面積合計は 57.33 m 2 /ha であった 2004 年度と比較すると, イヌツゲ, シロモジ, タンナサワフタギ (Symplocos coreana) の3 種が消失した 立木密度は 54 本 (6.8 本 /ha/yr) 低下したが, 胸高断面積合計は 5.20 m 2 / ha(0.65 m 2 /ha/yr), 総現存量は 56.5Mg/ha(7.1Mg/ha/yr) 増加した 多様度指数 ( 表 4) は,3つのプロットで最も低

九州大学宮崎演習林における長期森林動態モニタリングプロット 8 年間の推移 31 表 4 合戦原, 丸十および広野プロットにおける林分諸因子の変化 合戦原 丸十 広野 2006 2009 2014 2005 2008 2013 2004 2007 2012 種数 52 52 50 40 40 41 30 29 27 立木密度 (/ha) 1539 1521 1366 892 885 854 1091 1076 1037 枯損木本数 (/ha) 35 171 24 58 31 57 新規加入木本数 (/ha) 17 16 17 27 16 18 年平均変化量 (3 5 年 ) -6.0-31.0-2.3-6.2-5.0-7.8 年平均変化量 (8 年 ) -21.6-4.8-6.8 胸高断面積 (m 2 /ha) 32.89 34.31 34.73 44.60 45.90 46.77 52.13 54.50 57.33 年平均変化量 (3 5 年 ) 0.47 0.08 0.43 0.17 0.79 0.57 年平均変化量 (8 年 ) 0.23 0.27 0.65 総現存量 (Mg/ha) 306.1 322.5 332.4 416.1 432.7 446.9 453.2 478.0 509.7 地上部重 (Mg/ha) 253.1 267.0 276.0 348.3 362.7 375.3 380.2 401.4 428.8 根重 (Mg/ha) 53.1 55.5 56.4 67.8 70.0 71.6 73.0 76.6 80.9 蓄積量 (Mg/ha) 16.4 9.9 16.6 14.2 24.8 31.7 枯損量 (Mg/ha) 1.9 11.7 4.7 16.0 2.5 8.5 年平均変化量 (3 5 年 ) 5.5 2.0 5.5 2.8 8.3 6.3 年平均変化量 (8 年 ) 3.3 3.9 7.1 多様度指数 H'( 幹数 ) 3.114 3.114 3.062 2.889 2.917 2.915 2.263 2.282 2.311 多様度指数 H'( 胸高断面積 ) 3.212 3.209 3.182 2.423 2.407 2.355 1.603 1.602 1.601 く 2012 年度は胸高断面積では 1.601 であった 胸高直径の頻度分布 ( 図 では,2004 年度,2012 年度ともに直径階 10-20cm においてモードを示した 直径階 20cm 以上は成長に伴う上位直径階への進界により増加したが, 直径階 20cm 以下は減少し, その中では, ミズナラが突出して多かった ( 図 4) 5. 考察各プロットの立木密度の8 年間の推移から, すべてのプロットで枯損木が新規加入木を上回り, 幹数の減少が生じる結果となった ( 表 4) 合戦原プロットでは, 榎木ら (2013) は合戦原プロットの直径頻度分布が L 字型を示していたことから, 小径木が逐次更新されていたことを示唆していたが,8 年が経過した調査結果からは小径木の減少がみられた 胸高直径の頻度分布を比較すると, 直径階 20cm 以下の幹数が顕著に減少した ( 図 これは直径階 20cm 以下の小径木の枯損による減少が生じたことと, 新規加入個体が少なかったことが大きく影響したと考えられた この8 年間の小径木の減少の理由の一つには, 近年のニホンジカの個体数の増加による影響が考えられたが, 枯損した原因については明確な枯損状態の記録がないため直接的な影響は不明であった また, 新規加入個体の減少については周囲長 15cm 未満の個体において成長が阻害されていた可能性が示唆されたが, これらの個体は測定の対象から外れており, 周囲長 15cm に至るまでの過程において, いかなる現象が生じているか明らかにできなかった 丸十, 広野プロットにおいても直径階 20cm 以下の幹数の減少および, 新規加入個体の成長が阻害されていた可能性が示唆されたが, 合戦原プロットと同様に記録が不足しており, ニホンジカとの関連は不明であった 今後, 小径木の幹数 減少の要因を明らかにするには, 枯損の状態を記録する必要がある また測定対象サイズへの新規加入個体の減少について, その過程を理解するためには, 周囲長 15cm 未満の個体の動態を観測する必要があるだろう 3つのプロットの種数と多様度指数の8 年間の推移は, 3プロットともにほぼ横ばい傾向で, 林分構造には大きな変動は確認されなかった ( 表 4) 胸高断面積の多様度はプロット間で明確な差が生じたが, 幹数ではプロット間の多様度の差は小さかった 広野プロットは 80 年程度前のアカマツの一斉林であるため ( 宮島 2009), 大径のアカマツの優占度が高いことで胸高断面積の多様度が最も低かった 一方, 低木層の構造が相対的に大きく反映される, 幹数による多様度指数においては, 広野プロットで小径木に多くの種が含まれたため ( 榎木ら 2013), 幹数の多様度が胸高断面積のものに比べて相対的に高くなった 丸十プロットにおいても大径のモミ, ツガが多く, 優占度がこの 2 種に偏ったことから, 幹数の多様度が胸高断面積に比べて相対的に高くなった 合戦原で胸高断面積による多様度が高かったのは, 高木の大径木針葉樹が少なく, 様々な高木性の広葉樹が優占していたためであった いずれのサイトにおいても将来的に小径木の減少が続けば, 断面積, 幹数の双方で多様度の低下が予想される 毎木調査によって樹木群集の現存量やその増加量を把握することは, 土壌炭素動態や蓄積と合わせて森林の炭素固定や貯蓄機能を把握するために重要である 胸高断面積合計と総現存量の8 年間の推移は, すべてのプロットで蓄積量が枯損量を上回り, 総現存量は増加した これは調査期間内に自然攪乱などによる大規模な枯損が生じなかったともいえた 広野プロットの総現存量とその年平均変化量は 3つのプロットで最も高かった また, 優占しているアカ

32 緒方健人ら マツは先駆樹種であり成長が早く, 加えて大径のモミ, ツガの増加量が, 年平均変化量の多さに寄与していた 3つのプロットの総現存量を平均すると 430Mg/ha であった 温帯落葉樹林の植物現存量の範囲は 60 ~ 600 Mg/ha, 平均は 300 Mg/ha であり (Whittaker 1975), 宮崎演習林の樹木の総現存量はこの平均より高い結果となった また, 仮にこの値が宮崎演習林全体の樹木現存量平均と等しいと仮定すると, 宮崎演習林の天然生林面積は 2,345ha であるので, 宮崎演習林全体の総現存量は約 1.01Tg と概算された また,3つのプロットの現存量変化量の平均は約 4.8Mg/ha/yr の増加で, 仮にこの値が宮崎演習林全体の天然生林現存量増加量平均と等しいと仮定すると, 宮崎演習林天然生林全体の樹木現存量増加量は約 11.26Gg/yr と推定された いずれのプロットも現存量は増加傾向にあったが, 小径木は減少傾向にあった 最後に, 本報告の作成の過程では, 長期動態の観測データが, 後世 100 年以上経過しても耐えられるデータ精度を保証できるかどうかを検討した 本報告で初めて複数年度の調査データを集計した結果, 測定ミス, データの入力ミスが散見され, 加えて立木の幹数と新規加入本数 枯損木本数が一致しなかった また, 備考欄などの記載事項について モニタリングサイト 1000 の調査マニュアルが順守されていなかった 膨大な観測データが蓄積される本研究において, これらの事項が顧みられないことは, 観測データを使用し解析に用いることが困難になる恐れがある 調査の遂行においてマニュアルに則し, かつミスの軽減を図るためには, 従来の紙野帳の電子化を行い調査データの入力項目を明瞭にし, データの蓄積に専用のデータベースソフトを用いるなど, データ管理のシステムを構築することが一案である しかし長期間, 多くの人間が携わる本研究では調査上のミスが生じることは止むを得ないことである 定期的に集計し報告を行うことが, 必然的に観測データを顧みて修正されることになり, 現状では最も有効な方法であると思われた 謝辞九州大学農学部森林計画学研究室には調査プロットの設置に際して協力していただいた 心よりお礼申し上げます 引用文献長慶一郎 榎木勉 鍜治清弘 山内康平 緒方健人 椎葉康喜 (2016) ニホンジカの摂食圧増加にともなうスズタケの動態 九州大学宮崎演習林における 2003 年と 2014 年の比較. 九州大学農学部演習林報告 97:7-10 独立行政法人森林総合研究所 (2004) 改訂 4 版木材工業ハンドブック pp.63-64 榎木勉 久保田勝義 鍜治清弘 壁村勇二 椎葉康喜 井上幸子 内海泰弘 (2013) 九州大学宮崎演習林の長期森林動態モニタリングプロット. 九州大学農学部演習林報告 94:40-47 井上晋 内海泰弘 大槻恭一 岡野哲郎 古賀信也 田代直明 中井武司 (200 九州大学の森と樹木, 政府刊行物普及株式会社, 福岡 177p 石原正恵 石田健 井田秀行 伊東明 榎木勉 大久保達弘 金子隆之 金子信博 倉本恵生 酒井武 斉藤哲 崎尾均 寄元道徳 芝野博文 杉田久志 鈴木三男 高木正博 高嶋敦史 武生雅明 田代直明 田中信行 徳地直子 並川寛司 新山馨 西村尚之 野口麻穂子 野宮治人 日浦勉 藤原章雄 星野大介 本間航介 蒔田明史 正木隆 吉岡崇仁 吉田俊也 (2010) モニタリングサイト 1000 森林 草原調査コアサイト 準コアサイトの毎木調査データの概要. 日本生態学会誌 60:111-123 環境省 : モニタリングサイト 1000 http://www.biodic.go.jp/ moni1000/index.html 2016 年 9 月 30 日参照小見山章 中川雅人 加藤正吾 (201 冷温帯林樹木の個体重に関する共通相対成長式. 日林誌 93:220-225 九州大学農学部附属演習林 (1996) 宮崎演習林第 5 次森林管理計画書.p.34 宮島裕子 (2009) アカマツの個体サイズの地形による違い 定着初期の成長速度と森林構造の影響. 九州大学大学院生物資源環境科学府修士論文村田育恵 井上幸子 矢部恒晶 壁村勇二 鍜治清弘 久保田勝義 馬渕哲也 椎葉康樹 内海泰弘 (2009) 九州大学宮崎演習林におけるニホンジカの生息密度と下層植生の変遷. 九州大学農学部演習林報告 90:13-24 中静透 (199 森林動態の大面積長期継続研究について. 日本生態学会誌 41:15-53 芝野伸策 岡村行治 高橋康夫 渡辺定元 (1996) 森林の動態解明のための針広混交林帯での大面積長期継続調査地設定の手法. 日本生態学会誌 46:155-168 椎葉康喜 内海泰弘 (2009) 九州大学宮崎演習林の地名. 九州大学農学部演習林報告 90:99-111 白澤保美 (1983) 日本森林樹木図譜. 講談社, 東京 397p Umebayashi T, Koga S, Utsumi Y, Inoue S, Shiiba Y, Nagasawa H, Osaki S, Katsuyoshi K, Inoue S, Matsumura J, Oda K(201Green moisture content and basic density of 95 woody species growing in Kyushu University Forest,Japan. Bull.Kyushu Univ.For 92:33-44 Whittaker(1975)Communities and Ecosystems, 2nd Ed. The MacMillan Company.( ホイタッカー宝月欣二 ( 訳 ) (1979). 生態学概説 生物群集と生態系 ( 第 2 版 ) 培風社 p.205) 安田弘法 野田隆史 八木橋勉 梶本卓也 (201 生物群集とその分布.( 生態学入門. 日本生態学会編. 東京化学同人. 東京 )p.18 (2016 年 10 月 20 日受付 :2017 年 2 月 13 日受理 )