第 2 章マクロ経済学のデータ 経済原論 Ⅱ(4/141 マンキュー第 2 章 1 2-1. 経済活動の価 ( 値 額の測定 :GDP(Gross Domestic Product ある経済で一定期間に生産された財 サービスの価値額 所得支出とフロー循環 (Circular Flow Diagram 賃金 地代 利子 ( 配当 労働 土地 資本 家計 企業 財 サービス 支出 カネの流れ モノ ( 財 サービス の流れ GDP= 経済の全構成員の所得総額 = 経済で生産された財 サービスに対する支出総額 GDP はフローの概念である フロー : ある時点では評価できずある時間区間ではじめて意味を持つ量 : 変量ストック : ある一時点で評価できる量 : 蓄積量現存量 GDP の計算例 リンゴ リンゴ 3 リンゴ 2 ジュース 18 兆円 1 ジュース 15 兆円 家計 兆円 リンゴ農家 リンゴ スーパー ジュース 製造企業
経済原論 Ⅱ(4/142 マンキュー第 2 章 2 GDP 計算上のルール 1 すべてを市場価格で評価し計算する 2 中古品の売買は GDP には含まれない 3 生産物の在庫は GDP に組み込まれる すべてを市場価格で評価し計算する 4 付加価値の合計として計算する 即ち GDP=( 全企業の 付加価値の総計 5 市場で評価されないものも可能な限り帰属計算を行う 例 農家の自家消費家賃 ( 及びその差額 公務員の給料 = 帰属価値例外 家事労働耐久消費財のサービス * 日常個人にとっての所得と考えられるものと国民所得 (GDP や GNP とは必ずしも一致しない 例 年金 恩給等の 移転所得 実質 GDP と名目 GDP リンゴとオレンジだけを生産している経済を考える リンゴの 2009 年価格を 9 生産量を 9 オレンジの 20 年価格を q 生産量を y とする (2009 年の場合は添え字を 9 20 年の場合は添え字を にする 以下同様 2009 年の 名目 GDP = 99 + q9 y9 20 年の 名目 GDP = + q y 20 年の 名目 GDP = + qy [ 例 1] = 2 q = 2q = y = y とする 20 年の名目 GDP は 20 年の名目 GDP の 2 倍になる 経済的豊かさを測るという点では名目 GDP はあまり望ましくない尺度 実質 GDP: ある年 ( 基準年 の価格を不変価格 (constant rice としてそれによって各年の GDP を評価したもの 20 年を基準年とすると 2009 年の 実質 GDP = 9 + q y9 20 年の 実質 GDP = + q y 20 年の 実質 GDP = + q y [ 例 1] では 20 年の実質 GDP=20 年の実質 GDP GDP デフレーター ( 一つの価格変動の目安 GDP デフレーター = 名目 GDP/ 実質 GDP + qy 上の記号を用いると 20 年の GDP デフレーター = + q y 名目 GDP= 経済の産出量を当該年の価格で評価したもの実質 GDP= 経済の産出量を一定価格 ( 基準年の価格 で評価したもの GDP デフレーター = 生産物の現在価格の基準年価格に対する比 ( 物価の変動
経済原論 Ⅱ(4/143 マンキュー第 2 章 3 連鎖 ( チェイン ウェイト指数を用いた実質 GDP 価格は変化するのでそれに対応して基準年を変更 ( アメリカ 従来は 5 年ごとに基準年を変更して物価の変動を考慮 1995 年 : 連鎖ウェイト (chain weighted 指数の導入連続した 2 年の平均価格を用いて実質化例 20 年から 20 年の GDP の変化を測る際には 2009 年と 20 年の平均物価を使用 ( 総 支出 (= 需要 の構成要素消費 (C 投資 (I 政府購入 (G 純輸出 (NX ( NX= 輸出 (EX- 輸入 (IM GDP=Y=C+I+G+NX ( 国民所得会計上の恒等式 消費 (C= 非耐久消費財 + 耐久消費財 + サービス投資 (I= 企業固定投資 + 住宅投資 + 在庫投資政府購入 (G= 中央及び地方政府による財 サービスの購入 ( 公共投資警察教育等々 * 但し ( 政府から家計への 移転支出は含まれない ( 生産に対する対価ではないため NX= 純輸出 = 輸出 (EX- 輸入 (IM 三面等価の法則生産面, 分配面, 支出面 ( 需要面 から見た GDP はすべて等しくなる 生産面から見た GDP: 付加価値の合計 分配面から見た GDP: 各生産要素に支払われる報酬 ( 要素所得 の合計 支出面から見た GDP: 最終生産物に対する総需要 (= 国内総支出 他の所得概念国民総生産 (GNP=Gross National Product = 国民総所得 (GNI=Gross National Income とも呼ばれる GNP=GDP+ 海外からの ( 要素 所得受取り - 海外への ( 要素 所得支払い国民純生産 (NNP=Net National Product NNP=GNP- 減価償却減価償却 = 固定資本減耗 (Consumtion of Fied Caital 国民所得 (National Income NNP( データ ソースが異なるために一致しないが同じもの 個人所得 (Personal Income = 国民所得 - 間接法人税 - 法人企業利潤 + 配当 利子所得 +( 政府等からの 移転所得個人可処分所得 = 個人所得 - 個人の税金 年金等の支払い 季節調整実質 GDP やその他の所得データは規則的な季節変動を繰り返す例えば第 1 四半期の実質 GDP は一番小さい等単純に前の四半期や前の月と比較してもダメ 季節調整 (Seasonal Adjustment を行うあるいは前年同期 前年同月と比較する
経済原論 Ⅱ(4/171 マンキュー第 2 章 4 2-2. 生活費の測定 : 消費者物価指数 財のバスケットの値段 = 消費者物価指数 (CPI Consumer Price Inde 消費のバスケット : 代表的な家計が購入している財 サービスのセット ある年 ( 基準年 でバスケットの中身を固定して そのバスケットの値段を他の年 ( 比較年 と比べることによって物価の動向を調べる このように固定バスケットを用いる指数を ラスパイレス (Laseyres 指数 と呼ぶ 例 :20 年 ( 基準年 にリンゴを 2 個オレンジを 5 個消費していたとすると 比較年 (20 年 の CPI は次のようになる ( 前と同様にリンゴの価格を オレンジの価格を q で表す ( 2 + ( q 5 CPI= あるいは同様に CPI= ( 2 + ( q 5 + qy これに対して GDP デフレーター = + q y GDP デフレーターの場合は比較年でバスケットの中身 ( y を変更する + q + q y y GDP デフレーターのように可変バスケットを用いる指数を パーシェ (Paasche 指数 と呼ぶ * パーシェ指数は可変バスケットを用いるので代替効果を考慮しているが代替行動に伴う効用の変化を考慮していない ( 消費したいものを消費できない影響を無視 * ラスパイレス指数は固定バスケットを用いるので代替効果を無視している ( ある財の価格が上昇した場合その財の消費を減らすという効果を無視 物価の動向を調べるもう一つの指数に生産者物価指数 (PPI Producer Price Inde がある ( これもラスパイレス指数である 数量価格基準年 ( の価格 q 比較年 ( の価格 q 基準年 ( の数量 y 基準年の名目 (= 実質 GDP( Y Y = + q y 固定バスケットの価格 ( L L = + q y 比較年 ( の数量 y 比較年の実質 GDP( P P = + q y 比較年の名目 GDP( Y Y = + q y CPI= L Y GDP デフレーター =Y P
価格 経済原論 Ⅱ(4/172 マンキュー第 2 章 5 数量 基準年 ( の価格 = q = 比較年 ( の価格 = q = 20 基準年 ( の数量 = y = 基準年の名目 (= 実質 GDP( Y Y = 200 固定バスケットの価格 ( L L = 300 ラスパイレス指数 比較年 ( の数量 =12 y = 4 比較年の実質 GDP( P P =160 比較年の名目 GDP( Y Y = 200 パーシェ指数 CPI= L Y 0 150 GDP デフレーター =Y P 0 125 = = 上の数値例 : 基準年の名目所得 ( Y = 比較年の名目所得 ( Y = = = : の価格は比較年と基準年で同じ q = 20 > q ( : y の価格は比較年の方が高い ( = 比較年の効用 ( 生活水準 は基準年の効用 ( 生活水準 より低い 比較年の効用 ( 生活水準 が基準年の効用 ( 生活水準 と同じであるためには比較年の名目所得はもっと高くなくてはならない * ラスパイレス指数基準年 (20 年 のバスケットの価格を 0 とした場合の基準年 (20 年 のバスケットの比較年 (20 年 での価格問題点代替効果を無視している ( しかしバスケットが同じなので効用水準は同じ q & y となるはず ( 数値例ではそうなっている ラスパイレス指数は物価の変動を高めに評価する傾向 ( 効用 ( 生活水準 が等しいというのに重点を置きすぎているため!! * パーシェ指数比較年 (20 年 のバスケットの基準年 (20 年 での価格を 0 とした場合の比較年 (20 年 のバスケットの比較年 (20 年 での価格代替効果は考慮している q & y の結果として選択された ( = 12 y = 4 を使用 よって代替効果によってバスケットの価格が低下する効果は考慮 q 代替の発生 基準年の名目所得と比較年の名目所得が同じであれば効用は低下 効用 ( 生活水準 を同じにするためには比較年により多くの所得が必要であった!! ( より多く買うことができなければならなかった!! つまり同じ効用 ( 生活水準 を得るためには ( y よりも多い必要がある!! 同じ効用 ( 生活水準 という基準から見るとパーシェ指数は物価の変動を低めに評価する傾向 ( 代替効果に重点を置きすぎているため!! * 真の価格指数はパーシェ指数とラスパイレス指数の間に!!
経済原論 Ⅱ(4/174 マンキュー第 2 章 6 2-3 失業中の人の数の測定労働力人口 = 就業者数 + 失業者数失業率 =( 失業者数 / 労働力人口 0(% 労働市場参加率 =( 労働力 / 成年人口 0(% オークンの法則 (Okun s Law GDP の変化率と失業の変化率の間の経験的法則アメリカの場合 : 実質 GDP の変化率 (%=3%-2 ( 失業率の変化率 Yt Yt 1 Yt t 年の実質 GDP をY t で表すと実質 GDP の変化率 = 0 = 0 である Y Y t 1 t 1 2-4. 結論 : 経済統計から経済モデルへ経済統計 (GDP CPI 失業率= 経済の現状を数量的に把握する指標 ( 人間の健康状態を数量的に把握する指標 = 身長 体重 血圧等々に類似 経済モデル=これらの諸変数の決定関係経済政策がこれら諸変数に与える影響の分析
経済原論 Ⅱ(4/173 マンキュー第 2 章 7 * 補論 : 日本経済に関する基本的なデータ (1 人口 人口 (2014 年 万人 合計 :12708 男性 :6180 女性 :6528 一世帯当り人数 (20 年 2.42 人合計特殊出生率 (2013: 1.43 (2 GDP(2013 年国内総支出 名目 GDP( 兆円 : 483 名目 GDP 成長率 ( 対前年比 : 1.8% 実質 GDP 成長率 ( 対前年比 基準年 =2005 年 : 2.1% GDP デフレータ ( 基準年 =2005 年 : 91.1 GDP デフレータ成長率 ( 対前年比 : -0.3% 一人当たり名目国民所得 ( 千円 :2013 年 : 2845 一人当たり名目国民所得成長率 (2013 年 : 対前年比 : 3.0% (3 GDP の構成 (2013 年 兆円 (C 家計最終消費支出 =289 (I 総資本形成 8( 民間住宅投資 =16 民間企業設備投資 =68 公的資本形成 =24 (G 政府最終消費支出 =99 (NX 純輸出 =-15 輸出 =80 輸入 =96 * 合計が名目 GDP と等しくないのは在庫及び ( 家計以外の 民間最終消費支出を明示していないため (4 CPI(2000 年 =0 1989 年 =89.3 1990 年 =92.1 1991 年 =95.1 1992 年 =96.7 1993 年 =98.0 1994 年 =98.6 1995 年 =98.5 1996 年 =98.6 1997 年 =0.4 1998 年 =1.0 1999 年 =0.7 2000 年 =0.0 2001 年 =99.3 2002 年 =98.4 2003 年 =98.1 2004 年 =98.1 2005 年 =97.8 (2005 年 =0 2006 年 =0.2 2007 年 =0.3 2008=1.7 2009 年 =0.3 (20 年 =0 20 年 =0 20 年 =99.7 2012=99.7 2013=0.0 2014=2.8 (5 労働力 ( 万人 2015 年 2 月 15 歳以上人口 074 労働力人口 6548 就業者 6322 完全失業者 226 非労働力人口 4520 就業状態不詳 6