DNA シークエンス解析受託サービスを効率よく利用して頂くために シークエンス解析は お持ち頂くサンプルの DNA テンプレートの精製度 量 性質によ って得られる結果が大きく左右されます サンプルを提出しても望み通りの結果が返っ てこない場合は 以下の点についてご検討下さい ( 基本編 ) 1.

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DNA シークエンス解析受託サービスを効率よく利用して頂くために 目次 ( 基本編 ) 1. テンプレート DNA プライマーの濃度を確認する 2. テンプレート DNA の精製度を確認する 3. サンプル調製に用いるテンプレート DNA の濃度を上げる 4. プライマーが劣化していないか確認する 5. 溶液を水にかえる 6. アガロース電気泳動を用いて PCR 産物を精製 確認する 7. シークエンス用プライマーを用意するその1 8. シークエンス用プライマーを用意するその2 9. シークエンス用プライマーを用意するその2 ( 応用編 ) 10. カスタム を利用するその1 11. カスタム を利用するその2 12. サンプルに変性剤を加える 13. サンプルに熱処理を施す 14. サンプルに変性剤を加え 熱処理を施す 15.dGTP Big Dye Terminator を使用する 京都大学大学院医学研究科医学研究支援センター DNA シークエンス解析室

DNA シークエンス解析受託サービスを効率よく利用して頂くために シークエンス解析は お持ち頂くサンプルの DNA テンプレートの精製度 量 性質によ って得られる結果が大きく左右されます サンプルを提出しても望み通りの結果が返っ てこない場合は 以下の点についてご検討下さい ( 基本編 ) 1. テンプレート DNA プライマーの量を確認する ご使用のテンプレート DNA の必要量をもう一度ご確認ください テンプレート DNA の長さに比例して必要量は変わってきます 下表に示された量を守ってください テンプレート DNA プライマーの量は多すぎても少なすぎてもシークエンス反応に 支障が出ることがあります *Template 及び Primer 量の目安 (ABI プロトコルより転載 ) Template Quantity PCR product 100-200 bp 1-3 ng 200-500 bp 3-10 ng 500-1000 bp 5-20 ng 1000-2000 bp 10-40 ng >2000 bp 20-50 ng Single-stranded 25-50 ng Double-stranded 150-300 ng Cosmid, BAC 0.5-1.0 μg Bacterial genomic DNA 2-3μg Primer 3.2 pmol 2. テンプレート DNA の精製度を確認する吸光度測定により 230mm,260mm,280mm の吸光度を測定し DNA 溶液の精製度を確認して下さい 260mm/280mm=1.8 以上 260mm/230mm=2.0 以上を推奨しております 精製度の低い溶液では反応が阻害されることがあります 推奨に満たない場合は 溶液をカラム等で精製し直し 精製度を上げることをお勧めします なお フェノール処理によって精製したものはカラムに比べて精製度が劣る場合があります シークエンス解析に用いるサンプルにはカラム精製をお勧めします

3. サンプル調製に用いるテンプレート DNA の濃度を上げるサンプル調製に用いるテンプレート DNA の濃度が低すぎると たとえ最終的にテンプレート量を手引き通りに調製したとしても反応がうまく進まない場合があります 例 ) 長さ 3kbp の Plasmid 溶液を用いて 150ng のテンプレートを準備する ( プライマーは 3.2pmol/ul 使用 ) 1 溶液の濃度が 30ng/ul の場合溶液 5ul+プライマー 1ul+ 水 6ul=12ul 2 溶液の濃度が 150ng/ul の場合溶液 1ul+プライマー 1ul+ 水 10ul=12ul 両者を比べた場合 最終的なテンプレート量 液量は同じですが 2に比べて1のほうが Plasmid 溶液からの溶液の持ち込みが多くなり 結果として2よりも精製度が劣ってしまいます テンプレート溶液からの持ち込みが多くなると そこに含まれる夾雑物がシークエンス反応を妨げる場合があります したがってサンプル調製に用いるテンプレート DNA の濃度はなるべく濃くすることをお勧めします Plasmid の場合でしたら 大腸菌のカルチャーの量を増やしてなるべく多くの Plasmid をとり 最終濃度を高くして下さい Mini-prep より Midi-prep Maxi-prep をお勧めします Mini-prep に用いる溶液を少し多くしてもらうだけでもある程度改善されます また plasmid に限らず テンプレートに用いる DNA 精製の後最後に溶解する液量を減らすことでも最終濃度を高くすることができます すでに溶解したあとならば エタノール沈殿を利用して濃縮する方法もあります 4. プライマーが劣化していないか確認するプライマーを長期保存しているとプライマーが劣化する恐れがあります 劣化していても吸光度では確認できないのですが シークエンス反応には大きく影響します 長期保存のプライマーを用いる場合はご注意ください 劣化が疑われるプライマーは使用しないほうが無難です 5. 溶液を水にかえる DNA 精製にはトリスバッファーではなく水を使用して下さい 濃度を吸光度で確認する場合 トリス自身の光吸収によりテンプレート DNA の濃度を誤判断することがあります 水で精製することで シークエンス反応への余分な試薬の持ち込みを防ぐことができます また 溶液に EDTA が含まれていると反応が大きく阻害されるので EDTA を含む溶液 (TE など ) は絶対に使用しないで下さい 6. アガロース電気泳動を用いて PCR 産物を精製 確認する PCR 産物をシークエンスする場合 アガロースゲルで泳動した後 分量的に可能で あれば目的のバンドをゲルから切り出して精製して下さい これにより PCR 反応か

らの夾雑物を除くと同時に PCR 時に生じる目的以外の産物を除くことができます また 精製後の PCR 産物も再度ゲルに流して確認することをお勧めします この際に各バンドの濃度が既知の DNA サイズマーカーを同時に流してバンドの輝度を比較すれば 簡単な濃度検討もできます 7. シークエンス用プライマーを用意するその1 PCR に用いたプライマーをそのままシークエンスに利用してもうまく読めない場合があります これは PCR の際のアニーリング温度と シークエンス反応の際のアニーリング温度に著しく差がある場合に起こります 当センターでは一律同じプロトコル ( メーカー推奨 ) を使用しており 個々のパターンには対応しかねます その場合はシークエンス確認用のプライマーを別途設計してください 8. シークエンス用プライマーを用意するその2 局所的に偏りのある特殊な配列が含まれている場合 シークエンス反応がうまくすすまない場合があります 配列から二次構造をとることが予測できる場合は プライマーをその配列を避ける位置に設計しなおすと読めることがあります ATG の内側に設計しなければならないが スタートコドンを確認したいという場合は インサート側から逆方向に進むようにプライマーを設計してください 9. クローニングする PCR 産物を直接シークエンスする場合で 上記 7 8でも読めない場合は 一度 Plasmid に導入して Plasmid 中のユニバーサルプライマーを利用する方法もあります 一度 Plasmid に導入すれば PCR よりも容易に十分なテンプレート量が得られるというメリットもあります またヘテロなサンプルから PCR した産物を読む場合は必ずクローニングしてください

( 応用編 ) 1~9は比較的多様なケースに当てはまる項目です しかし上をすべて確認しても読めないシークエンスもあります たとえば目的の DNA が二次構造をとる場合 シークエンス反応が阻害されて反応がうまくすすまない場合があります (GC リッチ配列 Gateway ベクター shrna コンストラクトなど ) これらに対しては上記に加えて別途工夫をする必要があります ここではいくつか方法を紹介しておきます ただし ここで上げる方法はいずれも万能ではありません これをすると読める場合がある ものをいくつか紹介しておきます 通常条件で読めなかった場合 あるいは通常では読めないとわかっている場合にご利用下さい 10. カスタム を利用するその1 通常条件 の反応サイクルでは Extension の温度を 60 に設定しております (ABI 推奨 ) この温度を 70 に変更すると GC リッチ配列や shrna コンストラクトのシークエンス反応がうまくいく場合があります この場合 依頼書のシークエンス反応条件で カスタム を選択し 上記の条件を記入して下さい ただし 推奨温度と比較して反応効率が低下するため 通常条件 で読めるものが逆に読めなくなる場合もあります 最初からカスタムのプロトコルを使用するのはお勧めしません 11. カスタム を利用するその2 通常条件 の反応サイクルではアニーリング温度を 50 に設定しております (ABI 推奨 ) プライマーのアニーリング温度が 50 と異なる場合でも読める場合は多いのですが あまりにもかけ離れている場合はプライマーに合った温度設定にする必要があります ただし 上記 10と同様あきらかに変更が必要な場合以外 最初からカスタムのプロトコルを使用するのはお勧めしません この他 サイクル数を増やす などで改善する例があります いずれの場合も依頼書のシークエンス反応条件の箇所で カスタム を選択し ご自分の希望する反応条件を記入して下さい 12. サンプルに変性剤を加える 提出する溶液 12uL 中に 0.8~1uL の DMSO を添加してください テンプレートの二 次構造が解消されて読める場合があります 13. サンプルに熱処理を施す 提出する溶液を 98 10min で加熱し その後氷水で 5min 急冷してください テ ンプレートの二次構造が解消されて読める場合があります

14. サンプルに変性剤を加え 熱処理を施す 12 13 を両方行うとより効果的な場合があります 15. dgtp Big Dye Terminator を使用する当センターではシークエンス反応に Big Dye v3.1 を使用しておりますが これとは別に dgtp Big dye という G リッチ配列のシークエンス解析に対応した試薬が市販されています こちらを使用すると読める場合があります