研究集会 8K-6 使える地震予測を目指して - 最近 年間の地震予知研究における成果と展望 - 強震動予測とアスペリティ モデル 入倉孝次郎 26 年 6 月 8 ー 9 日 京都大学宇治キャンパス 木質ホール 強震動研究者
入倉孝次郎 ( いりくらこうじろう ) 所属 : むかし京都大学防災研究所ではたらいていました 愛知工業大学 出身地 : 中国青島市 ( ビールで有名なところ ) 専門 : 強震動地震学 緊急地震速報の高度化の研究 地震災害の軽減のための研究 趣味 : 自転車乗り 時間ができたら故きを温ね新しきを知る旅に出たいと思っています
強震動とは 地震時に構造物 施設 機械設備などに被害をもたらす破壊力のある揺れ そのレベルは 例えば 加速度にして gal 以上 速度にして cm/sec 以上 ただし 減衰の極めて小さい構造物では 小さな揺れでも共振現象により大きな揺れに成長し被害に至る場合もある 強震動として問題となる周期帯域は 構造物 施設等の固有周期から約 2 秒から.5 秒の範囲
ω I. 強震動の観測記録からわかったこと. 震源スペクトル特性 変位震源スペクトルは 長周期 ( 低周波数 ) 域で平坦 すなわち ω 短周期 ( 高周波数 ) 域で ω ー 2 に比例して減衰 一方 加速度震源スペクトルは 長周期域 ( 低周波数 ) 域で ω 2 に比例して増大 短周期 ( 高周波数 ) 域で平坦 すなわち ω ( 高周波限界 f max まで )
. 震源スペクトル特性ーその 2 ー 変位震源スペクトル 加速度震源スペクトル 高周波数域で ω -2 で減衰 高周波数域で平坦 ω
ω 2. 断層破壊過程ー強震動記録を用いた震源の波形インバージョンー 断層すべりは不均質 応力降下量が不均質 断層すべりが大きい領域を一定基準で抽出 すなわち応力降下量が大きい領域を抽出 アスペリティ ここでのアスペリティの定義は応力降下量の大きい領域に対応 地震前に固着しているところが地震時に応力降下が大きい すなわち アスペリティは固着域 地震前にカップリングの強いところ
すべりの不均質と地震モーメントに関するスケーリング
ω 3. 断層破壊の総面積およびアスペリティの総面積は地震モーメントに関して一定のスケーリング則で関係づけられる 震源断層は断層パラメータに関する 2 つスケーリング則 () 巨視的断層パラメータに関するスケーリング則 震源の断層面積と地震モーメントの関係結果として 平均すべり量 平均応力降下量が推定される (2) 微視的断層パラメータに関するスケーリング則 アスペリティ総面積と地震モーメントの関係結果として アスペリティでの応力降下量 アスペリティでの平均すべり量が推定される
Rupture Area (km^2) Somervill et al. (999) Kagoshima(3/26) Yamaguchi Iwate (Miyakoshi et al., 2) Kobe (Sekiguchi et al, 2) Kocaeli (Sekiguchi and Iwata, 2) Chichi (Iwata and Sekiguchi, 2) Tottori (Sekiguchi and Iwata, 2) Relation between Rupture Area and MM Outer Fault Parameters.E+24.E+25.E+26.E+27.E+28 Seismic Moment(dyne-cm) Relation between Combined Area of Asperities and MM Inner Fault Parameters Combined Area of Asperities (km^2) Somervill et al. (999) Kagoshima(3/26) Yamaguchi Iwate (Miyakoshi et al., 2) Kobe (Sekiguchi et al, 2) Kocaeli (Sekiguchi and Iwata, 2) Chichi (Iwata and Sekiguchi, 2) Tottori (Sekiguchi and Iwata, 2).E+24.E+25.E+26.E+27.E+28 Seimic Moment(dyne-cm) Somerville et al. (999) and Miyakoshi et al. (2)
ω 3. 強震動のシミュレーションと観測記録との比較 し震源断層面内のアスペリティから強い揺れ 強震動 が生成されている 結果として 震源近傍域でアスペリティのサイズに対応するディレクティビティ パルス ( キラー パルス ) が生成される 例.995 年兵庫県南部地震 25 年福岡県西方沖地震 など
Rupture Directivity Pulse: Landers and Kobe Rupture propagation Somerville et al. (997) Irikura et al. (998)
経験的関数法およびハイブリッド法による強震動のシミュレーション (Kamae and Irikura, 998; Kamae et al., 998) 3 つのアスペリティをもつ震源モデル
25 年福岡県西方沖地震 情報は気象庁の HP Kamae et al., 25
(25 年福岡県西方沖地震 ) 経験的グリーン関数法を用いたフォワードモデリング アスペリティ ( 青 ) を配置した震源モデル 破壊はアスペリティ内の から円状に伝播 用いた KiK-net 観測点 (FKOH3 SAGH) と本震 余震の震央位置 K-NET 観測点 (FKO6: 福岡 ) は震源モデルの有効性検証のために用いた Kamae et al., 25
(25 年福岡県西方沖地震 ) 合成結果 FKOH3( 地中 ) 5 観測 Max = 47. 加速度 ( cm/s 2 ) -5 5 合成 Max = 5.7 加速度 ( cm/s 2 ) -5 7 観測 Max = 6.8 速度 ( cm/s ) -7 7 合成 Max = 5.6 速度 ( cm/s ) (cm/s 2 ) -7 3 観測 Max = 2.2 変位 ( cm ) -3 3 合成 Max = 2.5 Velocity (cm/s). 変位 ( cm ) -3 5 5 2 25 3 35 4 45 5 Time (sec) 時刻歴波形 観測合成.. Period (sec) (cm) 応答スペクトル (h=5%) Kamae et al., 25
ω II. 強震動生成の理論的背景 強震動で取り扱う周期範囲は 地震研究の中では短周期 (2 秒以下 ) にあたる 従って 短周期地震波がどのように生成されるかについて理論的検討が必要 断層運動に伴う短周期地震波の生成について Madariaga(977; 983) Boarwright and Quin(986) Das and Kostrov (986) Boartwright (988) Irikura and Kamae (994) 中村 宮武 (2) などの研究で以下のことがわかっている
Asperity Crack Stress change Slip Boatwright (988)
ω. 破壊速度の不連続による短周期の地震波の生成 断層破壊の進行中に 破壊速度が急激に変化する すなわち Δv R = H(x-x ) ここで H(x) はステップ関数 そのとき そこから生成される変位地震波は短周期域で ω -2 の周期特性をもつ 加速度地震波は短周期域で ω の周期特性をもつ クラック モデル バリアで破壊が止まるケース
2. 応力降下の不連続による短周期の地震波の生成 断層破壊の進行中に 破壊速度は変化せずに応力降下のみ急激に変化する すなわち Δσ= H(x-x ) ここで H(x) はステップ関数 そのとき そこから生成される変位地震波は短周期域で ω -2.5 の周期特性をもつ 加速度地震波は短周期域で ω -.5 の周期特性をもつ アスペリティ モデルでは 断層破壊はすでに破壊された領域から未破壊のアスペリティ内部に進行する そのとき 破壊の先端部に応力集中 Δσ= (x-x ) -/2 が生じ その応力が解放されるとすると そこから生成される加速度地震波は短周期域で ω の周期特性をもつ アスペリティ モデルもクラック モデルと同様の短周期が生成される (Madariaga, 983).
スペリテクA ィ短周期レベルラックアスペリティ モデルとクラック モデル Case 単一アスペリティを想定 アA asperity = 4πβv RΔσ a a 応力降下量 Δσa = (7/6) Mo t /(Rr 2 ) 短周期レベル 長周期レベル M total = 6 7 Δσ aa 2 R 長周期レベル crack = 4πβv RΔσ c a 6 M = Δσ crack ca 7 3 Da r R D(x) Da(x) 応力降下量 7π Δσ c = 6 3 / 2 Mo S a 3 / 2 a r<<r 単一アスペリティの Δσ(=9.5ΜPa) = 単一クラックの Δσ(=9.6ΜPa)
アスペリティ モデルとクラック モデル Case 2 複数のアスペリティを想定短周期レベル長周期レベル応力降下量多重アスペリティモデル多重クラックモデルa v a v A i a R N i i ai R asperity N σ πβ σ πβ Δ = Δ = = 4 ) (4 2 2 R a R a M i a N i i i ai N 2 2 7 6 ) 7 6 ( σ σ Δ = Δ = = a v a v A i c R N i i ci R crack N σ πβ σ πβ Δ = Δ = = 4 ) (4 2 2 N) < ( < 7 6 ) 7 6 ( 3 3 α σ α σ a a M i c N i i ci crack N Δ = Δ = = R a M ai a 2 6 7 = = Δ Δ σ σ crack crack N crack crack N c ci M M A A α σ σ = = Δ Δ 短周期レベル長周期レベル応力降下量
振幅スペクトルレベル アスペリティモデルとクラックモデル アスペリティモデルクラックモデル変位振幅スペクトル加速度振幅スペクトル Miyake et al. (23)
4. 短周期地震波はアスペリティの縁部のみでなく内部からも生成される 応力降下が一様なクラックからは加速度地震波はクラック端部でのストッピング パルスしか生成されない これは観測とは一致しない 応力降下が一様なアスペリティからも同じような加速度地震波が生成される これも観測とは一致しない アスペリティの内部から短周期地震波の生成を考える必要がある
Composite Faulting Model クラックの内部がアスペリティで埋め尽くされている場合 つの大きなクラックからの短周期地震波の生成に等価 Boartwright (988)
フラクタル アスペリティ モデル 瀬野 (22) アスペリティの内部に小さなアスペリティがフラクタルに分布 特定の周期特性を持たないために小さなアスペリティはフラクタルなサイズをもつ 結果として 短周期地震波はアスペリティの内部から生成せされる
巨視的断層パラメータ 強震動予測レシピのまとめ Step Step2 Step3 断層全体の長さを与える 断層長さから断層幅を与え, 断層総面積を求める 断層総面積から地震モーメントを推定する 微視的断層パラメータ Step4 アスペリティの個数と位置を与える Step5 Step6 Step7 アスペリティの面積を求める アスペリティの応力降下量を推定する すべり速度時間関数のパラメータを設定する
強震動生成域を考慮した特性化震源モデルの構築 - 997 年 3 月鹿児島県北西部地震の例 - Miyake et al. (23)
地震モーメントに対するアスペリティ領域 ( すべり大 ) と地震モーメントに対する強震動生成域 ( すべり速度大 ) の関係 Somerville et al. (999) and Miyakoshi et al. (2) Kamae and Irikura (998, 2), Kamae et al. (999), and Miyake et al. (2)
震源過程 : 23 年と 952 年の十勝沖地震 山中 (24), Yamanaka and Kikuchi (23)
23 年十勝沖地震 強震 Honda et al. (24, EPS) inversion 強震 防災科研 & 推本 (24) forward 強震 Kamae and Kawabe (24, EPS) forward Vel. 5-5 sec (.2-.2 Hz) Acc. Vel. Disp. -. sec (.- Hz) Acc. Vel. Disp. -. sec (.- Hz)
Applicability of Characterized Source Model for the 23 Tokachi-oki oki Earthquake (Mw 8.) 6km 2km 2km 8km TKCH7 HDKH7 KSRH2 3 2 2km 6km 2 6km 28km 24km 6km 56km 3 56km 8km 2 28km Rupture starting point Vs = 4. km/s Vr = 3.6 km/s Epicenter of mainshock Epicenters of aftershock as empirical Green s function Kamae and Kawabe (24) Asp- Asp-2 3 sec delay Asp- Asp-3 7 sec delay
加速速度変位5 合成 観測観測記録 ( 上 ) と推定された強震動 ( 下 ) の比較 TKCH7 度-5 2 3 4 5 Obs-NS Max : 49.5gal Obs-EW Max : 39.57gal Obs-UD Max : 68.29gal 2-2 TKCH7 Syn-NS Max : 6.7gal Syn-EW Max : 29.83gal Syn-UD Max : 67.9gal 43 Obs-NS Max : 39.5cm/s Obs-EW Max : 22.9cm/s Obs-UD Max : 4.54cm/s Syn-NS Max : 43.28cm/s Syn-EW Max : 22.23cm/s Syn-UD Max :.7cm/s -43 25 Obs-NS Max : 8.53cm Obs-EW Max : 7.23cm Obs-UD Max : 5.2cm Syn-NS Max : 24.86cm Syn-EW Max : 7.86cm Syn-UD Max : 6.8cm -25 8 6 s