日本消化器病学会慢性膵炎診療ガイドライン作成 評価委員会 は, 慢性膵炎診療ガイドラインの内容については責任を負うが, 実 際の臨床行為の結果については各担当医が負うべきである. 慢性膵炎診療ガイドラインの内容は, 一般論として臨床現場の意 思決定を支援するものであり, 医療訴訟等の資料となるもので

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1 日本消化器病学会 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ) Evidence-based Clinical Practice Guidelines for Chronic Pancreatitis (2nd Edition) 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

2 日本消化器病学会慢性膵炎診療ガイドライン作成 評価委員会 は, 慢性膵炎診療ガイドラインの内容については責任を負うが, 実 際の臨床行為の結果については各担当医が負うべきである. 慢性膵炎診療ガイドラインの内容は, 一般論として臨床現場の意 思決定を支援するものであり, 医療訴訟等の資料となるものではな い. 日本消化器病学会 年 4 月 1 日 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

3 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

4 日本消化器病学会ガイドラインの刊行にあたって 日本消化器病学会は,2005 年に当時の理事長であった跡見裕先生の発議によって,Evidence- Based Medicine(EBM) の手法に則ったガイドラインの作成を行うことを決定し,3 年余をかけ, 年に消化器 6 疾患のガイドライン ( 第一次ガイドライン ) を完成 上梓した.6 疾患とは, 胃食道逆流症 (GERD), 消化性潰瘍, 肝硬変, クローン病, 胆石症, 慢性膵炎であり, それまでガイドラインが作成されていない疾患で, 日常臨床で診療する機会の多いものを重視し, 財団評議員に行ったアンケート調査で多数意見となったものが選ばれた.2006 年の第 92 回日本消化器病学会総会の際に第 1 回ガイドライン委員会が開催され, 文献検索範囲, 文献採用基準, エビデンスレベル, 推奨グレードなど EBM 手法の統一性についての合意と, クリニカルクエスチョン (CQ) の設定など基本的な枠組みが合意され, 作成作業が開始された.6 疾患のガイドライン作成では, 推奨の強さのグレード決定に Minds(Medical Information Network Distribution Service) システムを一部改変し, より臨床に則した日本消化器病学会独自の基準を用いた. また, ガイドライン作成における利益相反 (Conflict of Interest:COI) が当時, 社会的問題となっており,EBM 専門家から提案された基準に基づいてガイドライン委員の COI を公開した. 菅野健太郎前理事長のリーダーシップのもとに学会をあげての事業として行われたガイドライン作成は先進的な取り組みであり, わが国の消化器診療の方向性を学会主導で示したものとして大きな価値があったと評価できる. 日本消化器病学会は, その後,6 疾患について 患者さんと家族のためのガイドブック も編集 出版し, 治療を受ける側の目線で解説書を作成することによって, 一般市民がこれら消化器の代表的疾患への理解を深めるうえで役立ったと考えている. 第一次ガイドライン作成を通じて, 日本消化器病学会は消化器関連の Common Disease に関するガイドラインの必要性と重要性の認識を強め, さらに整備する必要度の高い疾患について評議員にアンケートを行い,2011 年から機能性ディスペプシア (FD), 過敏性腸症候群 (IBS), 大腸ポリープ,NAFLD/NASH の 4 疾患についても, 診療ガイドライン ( 第二次ガイドライン ) の作成を開始した. 一方では, これら 4 疾患の診療ガイドラインの刊行が予定された 2014 年には, 第一次ガイドラインも作成後 5 年が経過するため, いわゆる Sunset Rule( 日没ルール : 作成から長期経過したガイドラインは妥当性が担保できないため, 退場させる取り決め ) に従い, 先行 6 疾患のガイドラインの改訂作業も併せて行うこととなった.2011 年 11 月 9 日に 6 疾患の第 1 回改訂委員会が開催され, 改訂の基本方針が確認された. 改訂版では第二次ガイドライン作成と同様, 国際的主流となっている GRADE(The Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation) システムの考え方を取り入れて推奨の強さを決定することとした. このシステムは, 単にエビデンスに基づいて推奨の強さを決めるのではなく, 患者さんへの有益性, 費用まで考慮し, たとえ比較対照試験であってもその内容を精査 吟味してエビデンスレベルを決定するなど, アウトカムにとって有用かどうかを重視する立場に立っており, 患者さんの立場により則したガイドライン作成に有用と考えられた. また, 完成後に改訂版は Journal of Gastroenterology に掲載することが予定されており, 世界的趨勢である GRADE システムの考え方を取り入れることで国際的ガイドラインとしての位置づけを強化する狙いもあった. iv 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

5 日本消化器病学会ガイドラインの刊行にあたって 改訂作業の進捗には疾患によって多少差がみられるが, 年 4 月から順次完成し, 秋までに 6 疾患すべての改訂作業が完了する予定である. 最新のエビデンスを網羅した改訂版は, 初版に比べて内容的により充実し, 記載の精度も高まるものと期待している. 最後に, ガイドライン委員会の前担当理事として多大なご尽力をいただいた木下芳一理事, 渡辺守理事, ならびに多くの時間と労力を惜しまず改訂作業を遂行された作成委員会ならびに評価委員会の諸先生, 刊行にあたり丁寧なご支援をいただいた南江堂出版部の皆様に心より御礼を申し上げたい. 年 4 月 日本消化器病学会理事長 下瀬川徹 v 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

6 統括委員会一覧 委員長 木下芳一 島根大学第二内科 副委員長 渡辺 守 東京医科歯科大学消化器内科 委員 荒川哲男 大阪市立大学消化器内科学 上野文昭 大船中央病院 西原利治 高知大学消化器内科 坂本長逸 日本医科大学消化器内科学 下瀬川徹 東北大学消化器病態学 白鳥敬子 東京女子医科大学消化器内科 杉原健一 光仁会第一病院 田妻 進 広島大学総合診療科 田中信治 広島大学内視鏡診療科 坪内博仁 鹿児島市立病院 中山健夫 京都大学健康情報学 二村雄次 愛知県がんセンター 野口善令 名古屋第二赤十字病院総合内科 福井 博 奈良県立医科大学第三内科 福土 審 東北大学大学院行動医学分野 東北大学病院心療内科 本郷道夫 公立黒川病院 松井敏幸 福岡大学筑紫病院消化器科 三輪洋人 兵庫医科大学内科学消化管科 森實敏夫 日本医療機能評価機構 山口直比古 日本医学図書館協会個人会員 吉田雅博 化学療法研究所附属病院人工透析 一般外科 芳野純治 松柏会テルミナセントラルクリニック 渡辺純夫 順天堂大学消化器内科 オブザーバー 菅野健太郎 自治医科大学 vi 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

7 慢性膵炎診療ガイドライン委員会 協力学会 : 日本膵臓学会 作成委員会委員長 下瀬川徹 東北大学消化器病態学 副委員長 伊藤鉄英 九州大学病態制御内科 委員 石黒 洋 名古屋大学総合保健体育科学センター保健科学部 大原弘隆 名古屋市立大学大学院地域医療教育学 神澤輝実 がん 感染症センター都立駒込病院消化器内科 阪上順一 京都府立医科大学消化器内科 佐田尚宏 自治医科大学消化器 一般外科 竹山宜典 近畿大学外科学肝胆膵部門 廣田衛久 東北大学消化器病態学 宮川宏之 札幌厚生病院第 2 消化器科 オブザーバー 片岡慶正 大津市民病院 評価委員会委員長 白鳥敬子 東京女子医科大学消化器内科 副委員長 杉山政則 杏林大学消化器 一般外科 委員 岡崎和一 関西医科大学内科学第三講座 川 茂幸 信州大学総合健康安全センター健康教育学 丹藤雄介 弘前大学大学院保健学研究科 作成協力者 五十嵐久人 九州大学病院臨床教育研修センター 李 倫學 九州大学病態制御内科 藤山 隆 九州大学病態制御内科 肱岡 真之 九州大学病態制御内科 植田圭二郎 九州大学病態制御内科 立花 雄一 九州大学病態制御内科 十亀 義生 京都府立医科大学消化器内科 保田 宏明 京都府立医科大学消化器内科 加藤 隆介 京都府立医科大学消化器内科 vii 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

8 慢性膵炎診療ガイドライン作成の手順 1. 改訂の目的日本消化器病学会は 年に消化器 6 疾患に関する診療ガイドラインを作成し, その後, 市民向けガイドブックも作成し刊行した.6 疾患とは, 胃食道逆流症 (GERD), 消化性潰瘍, 肝硬変, クローン病, 胆石症, 慢性膵炎であり, 慢性膵炎診療ガイドラインの初版出版は 2009 年 10 月 25 日であった. 日本消化器病学会は対象疾患を拡大し,2011 年より機能性ディスペプシア (FD), 過敏性腸症候群 (IBS), 大腸ポリープ,NAFLD/NASH の 4 疾患の診療ガイドライン作成が新たに開始された. これら 4 疾患の診療ガイドラインの刊行が予定された 2014 年には, 先行 6 疾患のガイドラインも作成後 5 年が経過することになるため, 併せて改訂作業を行うこととなった. 初版の慢性膵炎診療ガイドラインは 2001 年に日本膵臓学会が作成した慢性膵炎臨床診断基準に基づいて作成されたが, この診療ガイドラインが発刊された 2009 年には, 早期慢性膵炎の診断基準を含む慢性膵炎臨床診断基準の改訂が行われた. したがって, 診療ガイドラインの今回の改訂では, 慢性膵炎臨床診断基準 2009 に基づいて慢性膵炎の早期病変, 診断にも言及し, また,2009 年以降に本邦で使用可能となった高力価リパーゼ製剤や ESWL の保険適用, 新規糖尿病治療薬,2013 年のアトランタ分類改訂による膵仮性囊胞の定義と治療アプローチなどを含み, 初版以降の新たなエビデンスを吟味 採用して診療ガイドラインとしての精度を高めることを目的とした. 2. 改訂の手順 1) 診療ガイドライン改訂委員会の設立 2011 年 7 月 1 日に日本消化器病学会ガイドライン委員会の第 1 回統括委員会が開催され, 新たな 4 疾患のガイドライン作成と先行 6 疾患の改訂が行われることが決定された. これを受け, 2011 年 11 月 9 日に先行 6 疾患の第 1 回改訂委員会が開催され, 改訂の基本方針が確認された. また, 初版作成時の作成委員長および評価委員長は原則留任としたが, 改訂委員会および評価委員会の構成員には次回改訂を考慮して一部若手を採用することが決定された. この決定により, 初版作成委員会および評価委員会の構成員を見直し, 新しい作成委員会と評価委員会が組織された.2012 年 9 月 6 日に第 1 回 [ 改訂 ] 慢性膵炎作成委員会が開催された. 2) 作成基準一般臨床医を対象とした. 診断基準には, 慢性膵炎臨床診断基準 2009 を新たに採用した. 改訂の基本姿勢として, 初版の内容を尊重しつつ, 問題点 課題を整理し,CQ の見直し, 削除と追加を行うこととした. 初版以降のエビデンスを収集し, 新しい治療法についても言及するよう努めた. また, 改訂版では, 世界的趨勢となっている GRADE システムの考え方を参考とした 推奨の強さ を採用した. 3) 作成方法 初版の構成を踏襲し, 大項目として, 1. 診断, 2. 病期診断, 3. 治療, 4. 予後 を設け, 各大項目中の小項目立ても初版と同様とした. viii 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

9 慢性膵炎診療ガイドライン作成の手順 各項目内の構成要素については, 以下の順に記載することで統一した. 1.CQ, 2. ステートメント ( 推奨の強さ, エビデンスレベル ), 3. 解説, 4. 文献 ( 文献の掲載は CQ 毎に行う ). 保険適用の有無については別記せず, 解説のなかで記述することとした. 初版 CQ の文言を吟味し,GRADE システムの推奨の強さに対応するよう変更した. また, 初版 CQ を一部変更, 削除し, 一部追加した. その結果,CQ は初版では総数 61 であったが, 改訂第 2 版では 65 となった. エビデンス収集には, 英文論文は MEDLINE,Cochrane Library を用い, 日本語論文には医学中央雑誌を用いた. 新規 CQ については 1983 年 2012 年 6 月末, 変更 CQ についても同期間を文献検索の対象期間とし, 初版と同じ CQ については 2008 年 2012 年 6 月末を文献検索の対象期間とした. また,2012 年 7 月以降の重要かつ新しいエビデンスについては, 検索期間外論文として文献に掲載した. 網羅的に検索された論文から重要なものを吟味, 抽出し, 採用論文すべての構造化抄録を作成した. 論文を研究デザインによって分類し, ランダム化比較試験 (RCT) についてはバイアスリスク評価を行い, 最終的なエビデンスの質を A,B,C,D の 4 段階で表した. 推奨の強さの決定は, 作成委員全員のオンライン投票によって行った. 投票にあたっては, 各委員が作成したステートメント, 推奨の強さ, エビデンスレベルならびに採用論文の構造化抄録を全委員に配布して情報を共有した. そのうえで, 投票を行い 70% 以上の賛成をもって最終決定とした.70% に満たない場合, 合意できない理由をコメントとしてオンライン上で共有し, 協議後に投票を繰り返した. 最終合意率を記載した. 第 2 回 [ 改訂 ] 慢性膵炎作成委員会を 2013 年 12 月 3 日に開催し, 作業進捗状況, 作業上の課題, 推奨の強さ決定の方法とその時期, 図 表の作成について討議した. 第 3 回 [ 改訂 ] 慢性膵炎作成委員会は 2014 年 7 月 30 日に開催され, 推奨の強さ決定の投票結果と各推奨の強さの協議および確認, 図 表の作成, 今後の作業について話し合われた. 評価委員会には, まず,CQ 選定後に CQ に関する評価をいただいた. また, 推奨の強さ決定後にも最終草案を評価委員長に上申し, 評価委員のコメントを集約し, 評価委員長からフィードバックしていただいた 年 12 月 10 日 24 日まで, 日本消化器病学会のホームページ上にてパブリックコメントを募集した. 4) 今後の改訂本ガイドラインは, 新たなエビデンスの出現, 新しい治療薬や治療法の出現, 日常診療の変化に合わせて 4 5 年毎に改訂を行う予定である. また, 特に重要な変更が必要な内容については,Annual Review 版として日本消化器病学会のホームページ上でアナウンスする予定である. 3. 使用法本ガイドラインは, 慢性膵炎の診断, 治療, 予後に関する一般的な内容を記載したのもので, 臨床現場での意志決定を支援するものである. 日本消化器病学会慢性膵炎診療ガイドライン作成 評価委員会のコンセンサスに基づいて作成し, 記述内容については責任を負うが, 個々の治療結果についての責任は治療担当医に帰属すべきもので, 日本消化器病学会および本ガイドライン作成 評価委員会は責任を負わない. また, 本ガイドラインの内容は, 医療訴訟などの ix 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

10 資料となるものではない. 4. 診療アルゴリズムの構成本ガイドラインでは, 以下の診療アルゴリズムをフローチャートで示した. 慢性膵炎臨床診断基準 2009( 作成 : 日本消化器病学会, 日本膵臓学会, 厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班 ) による慢性膵炎診断のアルゴリズム ( フローチャート 1) 慢性膵炎患者の治療アルゴリズム ( フローチャート 2) 慢性膵炎の内科的保存的治療のアルゴリズム ( フローチャート 3) 慢性膵炎の外科的治療のアルゴリズム ( フローチャート 4) 年 4 月 日本消化器病学会慢性膵炎診療ガイドライン作成委員長 下瀬川徹 x 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

11 本ガイドライン作成方法 1. エビデンス収集初版で行われた系統的検索によって得られた論文に加え, 今回新たに以下の作業を行ってエビデンスを収集した. それぞれのクリニカルクエスチョン (CQ) からキーワードを抽出し, 学術論文を収集した. データベースは, 英文論文は MEDLINE,Cochrane Library を用いて, 日本語論文は医学中央雑誌を用いた. 新規 CQ については 1983 年 2012 年 6 月末, 変更 CQ についても同期間を文献検索の対象期間とし, 初版と同じ CQ については 2008 年 2012 年 6 月末を文献検索の対象期間とした. また,2012 年 7 月以降の重要かつ新しいエビデンスについては, 検索期間外論文として文献に掲載した. 各キーワードおよび検索式は日本消化器病学会ホームページに掲載する予定である. 収集した論文のうち, ヒトまたは human に対して行われた臨床研究を採用し, 動物実験や遺伝子研究に関する論文は除外した. 患者データに基づかない専門家個人の意見は参考にしたが, エビデンスとしては用いなかった. 2. エビデンス総体の評価方法 1) 各論文の評価 : 構造化抄録の作成各論文に対して, 研究デザイン 1) ( 表 1) を含め, 論文情報を要約した構造化抄録を作成した. さらに RCT や観察研究に対して,Cochrane Handbook 2) や Minds 診療ガイドライン作成の手引き 1) のチェックリストを参考にしてバイアスのリスクを判定した ( 表 2). 総体としてのエビデンス評価は,GRADE(The Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation) システム 3 22) の考え方を参考にして評価し,CQ 各項目に対する総体としてのエビデンスの質を決定し表記した ( 表 3). 2) アウトカムごと, 研究デザインごとの蓄積された複数論文の総合評価 (1) 初期評価 : 各研究デザイン群の評価 xi 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

12 メタ群, ランダム群 = 初期評価 A 非ランダム群, コホート群, ケースコントロール群, 横断群 = 初期評価 C ケースシリーズ群 = 初期評価 D (2) エビデンスレベルを下げる要因の有無の評価 研究の質にバイアスリスクがある 結果に非一貫性がある エビデンスの非直接性がある データが不精確である 出版バイアスの可能性が高い (3) エビデンスレベルを上げる要因の有無の評価 大きな効果があり, 交絡因子がない 用量 反応勾配がある 可能性のある交絡因子が, 真の効果をより弱めている (4) 総合評価 : 最終的なエビデンスの質 A,B,C,D を評価判定した. xii 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

13 本ガイドライン作成方法 3) エビデンスの質の定義方法エビデンスレベルは海外と日本で別の記載とせずに 1 つとした. またエビデンスは複数文献を統合 作成した統合レベル (body of evidence) とし, 表 3 の A D で表記した. 4) メタアナリシスシステマティックレビューを行い, 必要に応じてメタアナリシスを引用し, 本文中に記載した. また,1 つ 1 つのエビデンスに 保険適用あり の記載はせず, 保険適用不可の場合に, 解説の中で明記した. 3. 推奨の強さの決定以上の作業によって得られた結果をもとに, 治療の推奨文章の案を作成提示した. 次に, 推奨の強さを決めるためにコンセンサス会議を開催した. 推奨の強さは,1エビデンスの確かさ,2 患者の希望,3 益と害,4コスト評価, の 4 項目を評価項目とした. コンセンサス形成方法は,Delphi 変法,nominal group technique(ngt) 法に準じて投票を用い,70% 以上の賛成をもって決定とした.1 回目で, 結論が集約できないときは, 各結果を公表し, 日本の医療状況を加味して協議の上, 投票を繰り返した. 作成委員会は, この集計結果を総合して評価し, 表 4 に示す推奨の強さを決定し, 本文中の囲み内に明瞭に表記した. 推奨の強さは 1: 強い推奨, 2: 弱い推奨 の 2 通りであるが, 強く推奨する や 弱く推奨する という文言は馴染まないため, 下記のとおり表記した. また, 投票結果を 合意率 として推奨の強さの下段に括弧書きで記載した. 4. 本ガイドラインの対象 1) 利用対象 : 一般臨床医 2) 診療対象 : 成人の患者を対象とした. 小児は対象外とした. 5. 改訂について本ガイドラインは改訂第 2 版であり, 今後も日本消化器病学会ガイドライン委員会を中心として継続的な改訂を予定している. 6. 作成費用について本ガイドラインの作成はすべて日本消化器病学会が費用を負担しており, 他企業からの資金提供はない. xiii 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

14 7. 利益相反について 1) 日本消化器病学会ガイドライン委員会では, ガイドライン統括委員 各ガイドライン作成 評価委員と企業との経済的な関係につき, 各委員から利益相反状況の申告を得た ( 詳細は 利益相反に関して に記す). 2) 本ガイドラインでは, 利益相反への対応として, 協力学会の参加によって意見の偏りを防ぎ, さらに委員による投票によって公平性を担保するように努めた. また, 出版前のパブリックコメントを学会員から受け付けることで幅広い意見を収集した. 8. ガイドライン普及と活用促進のための工夫 1) フローチャートを提示して, 利用者の利便性を高めた. 2) 書籍として出版するとともに, インターネット掲載を行う予定である. 日本消化器病学会ホームページ 日本医療機能評価機構 EBM 医療情報事業 (Minds) ホームページ 引用文献 1) 福井次矢, 山口直人 ( 監修 ).Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014, 医学書院, 東京,2014 2) Higgins JPT, Green S(eds). Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventions version 5.1.0: The Cochrane Collaboration March 2011)[ 最終アクセス 年 3 月 11 日 ] 3) 相原守夫, 三原華子, 村山隆之, 相原智之, 福田眞作. 診療ガイドラインのための GRADE システム, 凸版メディア, 弘前,2010 4) The GRADE* working group. Grading quality of evidence and strength of recommendations. BMJ 2004; 328: (printed, abridged version) 5) Guyatt GH, Oxman AD, Vist G, et al; GRADE Working Group. Rating quality of evidence and strength of recommendations GRADE: an emerging consensus on rating quality of evidence and strength of recommendations. BMJ 2008; 336: ) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; GRADE Working Group. Rating quality of evidence and strength of recommendations: What is "quality of evidence" and why is it important to clinicians? BMJ 2008; 336: ) Schünemann HJ, Oxman AD, Brozek J, et al; GRADE Working Group. Grading quality of evidence and strength of recommendations for diagnostic tests and strategies. BMJ 2008; 336: ) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; GRADE working group.rating quality of evidence and strength of recommendations: incorporating considerations of resources use into grading recommendations. BMJ 2008; 336: ) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; GRADE Working Group. Rating quality of evidence and strength of recommendations: going from evidence to recommendations. BMJ 2008; 336: ) Jaeschke R, Guyatt GH, Dellinger P, et al; GRADE working group. Use of GRADE grid to reach decisions on clinical practice guidelines when consensus is elusive. BMJ 2008; 337: a744 11) Guyatt G, Oxman AD, Akl E, et al. GRADE guidelines 1. Introduction-GRADE evidence profiles and summary of findings tables. J Clin Epidemiol 2011; 64: ) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al. GRADE guidelines 2. Framing the question and deciding on important outcomes.j Clin Epidemiol 2011; 64: ) Balshem H, Helfand M, Schunemann HJ, et al. GRADE guidelines 3: rating the quality of evidence. J Clin Epidemiol 2011; 64: ) Guyatt GH, Oxman AD, Vist G, et al. GRADE guidelines 4: rating the quality of evidence - study limitation (risk of bias). J Clin Epidemiol 2011; 64: ) Guyatt GH, Oxman AD, Montori V, et al. GRADE guidelines 5: rating the quality of evidence - publication bias. J Clin Epidemiol 2011; 64: ) Guyatt G, Oxman AD, Kunz R, et al. GRADE guidelines 6. Rating the quality of evidence - imprecision. J Clin Epidemiol 2011; 64: ) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; The GRADE Working Group. GRADE guidelines: 7. Rating the xiv 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

15 本ガイドライン作成方法 quality of evidence - inconsistency. J Clin Epidemiol 2011; 64: ) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; The GRADE Working Group. GRADE guidelines: 8. Rating the quality of evidence - indirectness. J Clin Epidemiol 2011; 64: ) Guyatt GH, Oxman AD, Sultan S, et al; The GRADE Working Group. GRADE guidelines: 9. Rating up the quality of evidence. J Clin Epidemiol 2011; 64: ) Brunetti M, Shemilt I, et al; The GRADE Working. GRADE guidelines: 10. Considering resource use and rating the quality of economic evidence. J Clin Epidemiol 2013; 66: ) Guyatt G, Oxman AD, Sultan S, et al. GRADE guidelines: 11. Making an overall rating of confidence in effect estimates for a single outcome and for all outcomes. J Clin Epidemiol 2013; 66: ) Guyatt GH, Oxman AD, Santesso N, et al. GRADE guidelines 12. Preparing Summary of Findings tablesbinary outcomes. J Clin Epidemiol 2013; 66: xv 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

16 利益相反に関して 日本消化器病学会ガイドライン委員会では, ガイドライン統括委員と企業との経済的な関係につき, 下記の基準で, 各委員から利益相反状況の申告を得た. 慢性膵炎診療ガイドライン作成 評価委員には診療ガイドライン対象疾患に関連する企業との経済的な関係につき, 下記の基準で, 各委員から利益相反状況の申告を得た. 申告された企業名を下記に示す ( 対象期間は 2011 年 1 月 1 日から 2014 年 12 月 31 日 ). 企業名は 年 3 月現在の名称とした. 非営利団体は含まれない. 1. 委員または委員の配偶者, 一親等内の親族, または収入 財産を共有する者が個人として何らかの報酬を得た企業 団体役員 顧問職 (100 万円以上 ), 株 (100 万円以上または当該株式の 5% 以上保有 ), 特許権使用料 (100 万円以上 ) 2. 委員が個人として何らかの報酬を得た企業 団体講演料 (100 万円以上 ), 原稿料 (100 万円以上 ), その他の報酬 (5 万円以上 ) 3. 委員の所属部門と産学連携を行っている企業 団体研究費 (200 万円以上 ), 寄付金 (200 万円以上 ), 寄付講座 統括委員会においては日本消化器病学会診療ガイドラインに関係した企業 団体, 作成 評価委員においては診療ガイドライン対象疾患に関係した企業 団体の申告を求めた 統括委員および作成 評価委員はすべて, 診療ガイドラインの内容と作成法について, 医療 医学の専門家として科学的 医学的な公正さを保証し, 患者のアウトカム,Quality of life の向上を第一として作業を行った. 利益相反の扱いは, 国内外で議論が進行中であり, 今後, 適宜, 方針 様式を見直すものである. 表 1 統括委員と企業との経済的な関係 ( 五十音順 ) 1. エーザイ株式会社, 大塚製薬株式会社 2. 味の素製薬株式会社, アステラス製薬株式会社, アストラゼネカ株式会社, アッヴィ合同会社, アボットジャパン株式会社, 株式会社医学書院, エーザイ株式会社,MSD 株式会社, 大塚製薬株式会社, オリンパスメディカルシステムズ株式会社, 杏林製薬株式会社, ゼリア新薬工業株式会社, 第一三共株式会社, 大日本住友製薬株式会社, 大鵬薬品工業株式会社, 武田薬品工業株式会社, 田辺三菱製薬株式会社, 中外製薬株式会社, ファイザー株式会社 3. 旭化成メディカル株式会社, 味の素製薬株式会社, あすか製薬株式会社, アステラス製薬株式会社, アストラゼネカ株式会社, アッヴィ合同会社, アボットジャパン株式会社, エーザイ株式会社,MSD 株式会社, 大塚製薬株式会社, 小野薬品工業株式会社, 花王株式会社, 株式会社カン研究所, 杏林製薬株式会社, 協和発酵キリン株式会社, グラクソ スミスクライン株式会社, 株式会社 JIMRO, 株式会社ジーンケア研究所, ゼリア新薬工業株式会社, センチュリーメディカル株式会社, 第一三共株式会社, 大日本住友製薬株式会社, 大鵬薬品工業株式会社, 武田薬品工業株式会社, 田辺三菱製薬株式会社, 中外製薬株式会社, 株式会社ツムラ, 東レ株式会社, ファイザー株式会社, ブリストル マイヤーズ株式会社, 株式会社ミノファーゲン製薬, 持田製薬株式会社, 株式会社ヤクルト本社, ユーシービージャパン株式会社 表 2 作成 評価委員と企業との経済的な関係 ( 五十音順 ) 1. なし 2. なし 3. アステラス製薬株式会社, アストラゼネカ株式会社, アスビオファーマ株式会社, エーザイ株式会社,MSD 株式会社, 大塚製薬株式会社, 第一三共株式会社, 武田薬品工業株式会社, 田辺三菱製薬株式会社, 中外製薬株式会社 xvi 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

17 本ガイドラインの構成 第 1 章診断 (1) 問診 診察 (2) 生化学検査 (3) 画像検査 (4) 機能検査 (5) 病理検査 (6) 鑑別診断 (7) 遺伝子検索 第 2 章病期診断 (1) 病期診断の必要性 (2) 臨床所見 (3) 生化学検査 (4) 画像検査 (5) 機能検査 ( 外分泌 ) (6) 機能検査 ( 内分泌 ) (7) スコア化 第 3 章治療 (1) 治療方針 (2) 生活指導 (3) 疼痛対策 (4) 外分泌不全の治療 (5) 糖尿病の治療 (6) 合併症の治療 第 4 章予後 (1) 病態の進行阻止 (2) 膵癌 その他の癌の危険性 (3) 生命予後 xvii 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

18 フローチャート フローチャート 1: 診断 xviii 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

19 フローチャート フローチャート 2: 治療 xix 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

20 フローチャート 3: 内科的保存的治療 xx 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

21 フローチャート フローチャート 4: 外科的治療 xxi 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

22 クリニカルクエスチョン一覧 第 1 章診断 ❶ 問診 診察 CQ 1-1 病歴聴取, 身体診察は慢性膵炎の診断に必要か? 2 ❷ 生化学検査 CQ 1-2 血中 尿中膵酵素測定は慢性膵炎の診断に有用か? 4 ❸ 画像検査 CQ 1-3 胸 腹部 X 線撮影は慢性膵炎の診断に有用か? 6 CQ 1-4 腹部超音波検査 (US, 造影を含む ) は慢性膵炎の診断に有用か? 8 CQ 1-5 コンピュータ断層撮影法 (CT) は慢性膵炎の診断に有用か? 12 CQ 1-6 腹部 MRI は慢性膵炎の診断に有用か? 15 CQ 1-7 超音波内視鏡検査 (EUS) は慢性膵炎の診断に有用か? 18 CQ 1-8 内視鏡的逆行性胆道膵管造影法 (ERCP) は慢性膵炎の診断に有用か? 21 ❹ 機能検査 CQ 1-9 外分泌機能検査は慢性膵炎の診断に有用か? 24 ❺ 病理検査 CQ 1-10 病理組織学的検索は慢性膵炎の診断に必要か? 26 ❻ 鑑別診断 CQ 1-11 慢性膵炎と膵癌や膵管内乳頭粘液性腫瘍 (IPMN) との鑑別診断は必要か? ( なぜ必要か?) 28 ❼ 遺伝子検索 CQ 1-12 遺伝子検査は慢性膵炎の診断に有用か? 30 第 2 章病期診断 ❶ 病期診断の必要性 CQ 2-1 慢性膵炎の重症度 病期 治療効果の判定は必要か? 34 ❷ 臨床所見 CQ 2-2 臨床徴候 ( 所見 ) による重症度 病期 治療効果の判定は可能か? 36 ❸ 生化学検査 CQ 2-3 血中 尿中膵酵素測定による重症度 病期 治療効果の判定は可能か? 38 ❹ 画像検査 CQ 2-4 画像検査は重症度 病期 治療効果の判定に有用か? 39 xxii 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

23 クリニカルクエスチョン一覧 ❺ 機能検査 ( 外分泌 ) CQ 2-5 膵外分泌機能検査は重症度 病期 治療効果の判定に有用か? 42 CQ 2-6 脂肪便の確認は重症度 病期 治療効果の判定に有用か? 44 ❻ 機能検査 ( 内分泌 ) CQ 2-7 各種耐糖能検査は重症度 病期 治療効果の判定に有用か? 46 ❼スコア化 CQ 2-8 スコア化は重症度 病期 治療効果の判定に有用か? 48 第 3 章治療 ❶ 治療方針 CQ 3-1 成因, 活動性 ( 再燃と緩解 ), 重症度, 病期は慢性膵炎の治療に重要か? 52 CQ 3-2 生活歴の聴取は慢性膵炎の治療に有用か?( アルコール性と非アルコール性で違い はあるか?) 56 ❷ 生活指導 CQ 3-3 禁酒 断酒指導は慢性膵炎の治療に有用か? 58 CQ 3-4 食事脂肪制限は慢性膵炎の腹痛に有用か? 61 CQ 3-5 禁煙は慢性膵炎の治療に有用か? 63 ❸ 疼痛対策 CQ 3-6 鎮痛 鎮痙薬は慢性膵炎の腹痛に有効か? 65 CQ 3-7 消化酵素の大量投与や高力価消化酵素の使用は慢性膵炎の腹痛に有効か? 68 CQ 3-8 蛋白分解酵素阻害薬は慢性膵炎の腹痛に有効か? 70 CQ 3-9 膵石 ( 蛋白栓 ) 溶解療法は慢性膵炎の腹痛に有効か? 72 CQ 3-10 麻薬は慢性膵炎の腹痛治療に必要か? 74 CQ 3-11 抗うつ薬は慢性膵炎の腹痛に有効か? 76 CQ 3-12 ESWL を含む内視鏡的治療は慢性膵炎の腹痛に有効か? 77 CQ 3-13 内視鏡的治療の長期反復は慢性膵炎の腹痛に必要か? 79 CQ 3-14 EUS/CT ガイド下腹腔神経叢 neurolysis(cpn) は慢性膵炎の腹痛に有効か? 81 CQ 3-15 外科的治療は内視鏡的治療 (ESWL 併用を含む ) が無効な腹痛に有効か? 83 CQ 3-16 膵管ドレナージ術は慢性膵炎の腹痛に有効か? 85 CQ 3-17 膵切除術は慢性膵炎の腹痛に有効か? 88 CQ 3-18 膵管ドレナージ術は膵切除術より慢性膵炎の腹痛に有効か? 92 CQ 3-19 膵全摘術は慢性膵炎の難治性腹痛に有効か? 94 CQ 3-20 内臓神経切除術は慢性膵炎の腹痛に有効か? 96 ❹ 外分泌不全の治療 CQ 3-21 適正カロリーと食事内容の指導は慢性膵炎の治療に有用か? 98 CQ 3-22 消化酵素薬は慢性膵炎の治療に有用か? 100 CQ 3-23 胃酸分泌抑制薬は慢性膵炎の治療に必要か? 103 CQ 3-24 脂溶性ビタミン薬は慢性膵炎の治療に必要か? 105 xxiii 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

24 ❺ 糖尿病の治療 CQ 3-25 禁酒 食事指導は膵性糖尿病の治療に有用か? 107 CQ 3-26 経口血糖降下薬は膵性糖尿病の治療に有効か? 109 CQ 3-27 インスリン抵抗性改善薬は膵性糖尿病の治療に有効か? 111 CQ 3-28 インスリン治療開始の指標設定は膵性糖尿病の治療に必要か? 113 CQ 3-29 インクレチン関連薬は膵性糖尿病の治療に有効か? 115 CQ 3-30 血糖コントロールの目標設定は膵性糖尿病の治療に必要か? 118 CQ 3-31 HbA1c は膵性糖尿病の治療効果の判定に有用か? 120 CQ 3-32 糖尿病慢性合併症の診断と治療は膵性糖尿病でも有用か? 122 ❻ 合併症の治療 CQ 3-33 保存的治療は慢性膵炎に合併した膵仮性囊胞に有効か? 124 CQ 3-34 仮性囊胞の大きさはドレナージ治療の適応判断に有用か? 125 CQ 3-35 内視鏡的または経皮的ドレナージは慢性膵炎に合併した膵仮性囊胞に有効か? 127 CQ 3-36 酢酸オクトレオチドは慢性膵炎に合併した膵仮性囊胞に有効か? 129 CQ 3-37 外科手術は慢性膵炎に合併した膵仮性囊胞に有効か? 130 CQ 3-38 膵管ステントは IPF(internal pancreatic fistula, 膵性胸腹水 ) に有効か? 132 CQ 3-39 胆管ステントは慢性膵炎に合併した胆道狭窄に有効か? 134 CQ 3-40 IVR(interventional radiology) は慢性膵炎に合併した仮性動脈瘤 hemosuccus pancreaticus に有効か? 136 第 4 章予後 ❶ 病態の進行阻止 CQ 4-1 内視鏡的治療 (ESWL の併用を含む ) は慢性膵炎の病態進行の阻止に有効か? 140 CQ 4-2 外科手術は慢性膵炎の病態進行の阻止に有効か? 142 ❷ 膵癌 その他の癌の危険性 CQ 4-3 癌のスクリーニング検査は慢性膵炎患者に必要か? 144 ❸ 生命予後 CQ 4-4 アルコール性膵炎を予後不良群として扱うことは慢性膵炎の生命予後改善に有用か? 146 CQ 4-5 長期的経過観察は慢性膵炎患者の生命予後改善に有用か? 148 索引 151 xxiv 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

25 略語一覧 xxv 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

26 1. 診断 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

27 Clinical Question 1-1 病歴聴取, 身体診察は慢性膵炎の診断に必要か? 1. 診断 ❶ 問診 診察 CQ 1-1 病歴聴取, 身体診察は慢性膵炎の診断に必要か? ステートメント 病歴聴取, 身体診察は慢性膵炎の診断に必要であり, 行うことを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (100%) エビデンスレベル C 解説 病歴聴取, 身体診察が慢性膵炎の診断に必要であるという根拠を示すエビデンスレベルの高い論文はない. しかし, 慢性膵炎の主要症候の約 80% が腹痛であり, 腹痛発作は何らかの誘因で起こることが多く, 特に飲酒は重要な要因である. したがって, 飲酒歴の聴取は極めて大切である. また, 家族歴や発病年齢の聴取も必要である. 慢性膵炎では, 膵炎発作を起こすことがあり, 苦悶様顔貌, 前屈位, 黄疸などの視診, 腸雑音の聴診 ( 麻痺性イレウスの有無 ), 肺肝境界, 腹部鼓音のチェックなどの打診, 脱水の有無, 腹水の存在, 触診による圧痛 抵抗 腹膜刺激徴候のチェックなどの身体診察は必要である 1, 2). 典型例では腹痛は心窩部から左側腹部にかけて持続的に出現し, しばしば背部あるいは左右の 2 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

28 1 問診 診察 肩に放散する 3, 4). 腹痛, 背部痛, 食欲不振, 悪心 嘔吐, 腹部膨満感, 腹部重圧感, 口渇 多尿, 下痢, 黄疸, 腹部圧痛, 腹部抵抗は, いずれもアルコール性慢性膵炎で非アルコール性慢性膵炎より有意に多く認められる ( 表 1) 1, 2). 以上より, 病歴聴取, 身体診察は慢性膵炎の診断に必要である. 文献 1) 厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班 ( 竹内正班長 ). 慢性膵炎全国集計調査報告昭和 60 年度研究業績,1986: p5-41( 横断 ) 2) 野田愛司, 伊吹絵里, 泉順子. 診断 EBM に基づいたスクリーニングから確定診断へ. 臨床医のための膵炎, 大槻眞 ( 監修 ), 現代医療社, 東京,2002: p ) 朴沢重成, 佐伯恵太, 宮田直輝. 慢性膵炎.Medicina 2011; 48: ) 山口武人, 須藤研太郎, 中村和貴, ほか. 腹痛の患者をみたときに. 内科 2011; 107: 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

29 Clinical Question 診断 ❷ 生化学検査 血中 尿中膵酵素測定は慢性膵炎の診断に有用か? CQ 1-2 血中 尿中膵酵素測定は慢性膵炎の診断に有用か? ステートメント 血中 尿中膵酵素の測定は, 慢性膵炎の診断に有用なことがあり, 行うことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル C 解説 慢性膵炎では膵外分泌組織の破壊が進むと, アミラーゼやリパーゼの血中値は低下傾向を示す. 慢性膵炎における血中アミラーゼ, リパーゼ, トリプシノーゲン異常低値の診断における特異度は 92 98% と高いが, 感度は 20 32% と低く 1, 2), 軽症の慢性膵炎では異常が認められない 3). 慢性膵炎では血中膵型アミラーゼの測定のほうが総アミラーゼより異常低値を示す率が高い 3 5). 正常な膵臓のエコー像を呈し高アミラーゼ血症が続く 75 例中 20 例が, 経過観察後早期の慢性膵炎であったと報告されている 6). 血中トリプシノーゲン値は, 膵外分泌不全例で低値を示し, 慢性膵炎の診断に有用とされる 4, 7). 血中エラスターゼ 1 値も, 非代償期の慢性膵炎 43 例中 15 例で低下し, 重症な膵外分泌不全例では診断に有用と報告されている 7). 一方, 尿中膵型アミラーゼ / 尿中クレアチニンは慢性膵炎例で低下することがあるが, その頻度は必ずしも高くない 8). また, 尿中の膵酵素値は腎機能の影響を受けるので, 注意が必要である. 以上より, 血中 尿中膵酵素の測定は, 慢性膵炎の診断に有用なことがあるが, 感度は高くないことを理解する必要がある. 文献 1) Dominguez-Munoz JE, Pieramino O, Buchler M, et al. Ratios of different serum pancreatic enzymes in the diagnosis and staging of chronic pancreatitis. Digestion 1993; 54: ( ケースコントロール ) 2) Hayakawa T, Kondo T, Shibata T, et al. Enzyme immunoassay for serum pancreatic lipase in the diagnosis of pancreatic diseases. Gastroenterol Jpn 1989; 24: ( ケースコントロール ) 3) 日野一成, 大海庸世, 山本晋一郎, ほか.EIA による血中膵型アミラーゼアイソザイム定量の慢性膵炎診断における臨床的有用性. 膵臓 1989; 4: 59-66( ケースコントロール ) 4 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

30 2 生化学検査 4) Pezzilli R, Talamini G, Gullo L. Behavior of serum pancreatic enzymes in chronic pancreatitis. Dig Liver Dis 2000; 32: ( ケースコントロール ) 5) Ventrucci M, Gullo L, Daniele C, et al. Comparative study of serum pancreatic isoamylase, lipase, and trypsin-like immunoreactivity in pancreatic disease. Digestion 1983; 28: ( ケースコントロール ) 6) Pezzilli R, Morselli-Labate M, Casadei T, et al. Chronic asymptomatic pancreatic hyperenzymemia is a benign condition in only half of the cases: a prospective study. Scand J Gastroenterol 2009; 44: ( ケースコントロール ) 7) 成瀬達. 診断基準の解説 4. 膵酵素. 膵臓 2009; 24: ) Berk JE, Ayulo JA, Fridhandker L. Value of pancreatic-type isoamylase assay as an index of pancreatic insufficiency. Dig Dis Sci 1979; 24: 6-10( ケースコントロール ) 5 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

31 Clinical Question 1-3 胸 腹部 X 線撮影は慢性膵炎の診断に有用か? 1. 診断 ❸ 画像検査 CQ 1-3 胸 腹部 X 線撮影は慢性膵炎の診断に有用か? ステートメント 腹部 X 線撮影は結石を有する慢性膵炎の診断に有用であり, 行うことを推奨する. 胸部 X 線撮影はごく一部の慢性膵炎症例でしか有用とはいえない. 慢性膵炎の診断を目的としては行わないことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (90%) 2 (100%) エビデンスレベル B C 解説 腹部 X 線撮影は非侵襲的で簡便に検査ができ, 膵石症の診断が可能である ( 図 1). また, 慢性膵炎の結石の経過観察や結石の出現に対しても, 費用対効果から有用である. 正面のみの腹部 X 線では膵石と特定するのが難しい場合もあり, 正面と左右斜位の 3 方向の撮影が有用である 1 3). 慢性膵炎における膵石灰化率は % とされるため腹部 X 線のみで診断可能な症例はこれより少ない 3 6). 現在最も石灰化に診断能の高い X 線 CT で確認できる膵石のうち 68% が腹部 X 線で指摘可能とされ 7), 膵石症すなわち石灰化慢性膵炎の診断には低費用かつ低侵襲であり, 有用な検査と位置づけられる. なお, 腹部 X 線では非石灰化慢性膵炎の診断は困難である. 胸部 X 線撮影は慢性膵炎の急性増悪などで膵管や膵仮性囊胞が破綻し, 胸腔内に膵液成分が漏出すると胸水としてその存在を知ることは可能である. しかし, 胸部 X 線撮影によって慢性膵炎を直接的に診断することは困難である. 文献 1) Ammann RW, Muench R, Otto R, et al. Evolution and regression of pancreatic calcification in chronic pancreatitis: a prospective long-termstudy of 107 patients. Gastroenterology 1988; 95: ( コホート ) 2) Bank S, Chow KW. Diagnostic tests in chronic pancreatitis. Gastroenterologist 1994; 2: ( ケースシリーズ ) 3) Ammann RW, Akovbiantz A, Largiader F, et al. Course and outcome of chronic pancreatitis: longitudinal study of a mixed medical-surgical series of 245 patients. Gastroenterology 1984; 86: ( コホート ) 4) Lankisch PG, Otto J, Erkelenz I, et al. Pancreatic calcifications: no indicator of severe exocrine pancreatic insufficiency. Gastroenterology 1986; 90: ( ケースシリーズ ) 5) Cavallini G, Talamini G, Vaona B, et al. Effect of alcohol and smoking on pancreatic lithogenesis in the course of chronic pancreatitis. Pancreas 1994; 9: 42-46( コホート ) 6 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

32 3 画像検査 図 1 腹部 X 線 a: びまん性小結石 b: びまん性大結石 ( 鋳型状 ) c: びまん性混合結石 d: 限局性小結石 6) Hacken JB, Baer JW. Calcifications within the duct of Wirsung in calcific pancreatitis. Gastrointest Radiol 1978; 3: ( ケースシリーズ ) 7) 春日井政博, 税所宏光, 山口武人, ほか. 膵石灰化からみた慢性膵炎の診断と病態に関する研究. 膵臓 1995; 10: 9-18( 横断 ) 7 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

33 Clinical Question 診断 ❸ 画像検査 腹部超音波検査 (US, 造影を含む ) は慢性膵炎の診断に有用か? CQ 1-4 腹部超音波検査 (US, 造影を含む ) は慢性膵炎の診断に有用か? ステートメント 腹部 US は結石の存在や膵管拡張有無などが描出できる. 慢性膵炎の診断に有用であり, 行うことを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (100%) エビデンスレベル B 解説 腹部超音波検査 (US) は, 血液生化学検査や腹部 X 線診断と同様に簡便で患者への苦痛や侵襲が少なく, 各種画像診断のなかで膵の形態診断が最も容易にできる検査法である ( 巻頭フローチャート 1 参照 ). 慢性膵炎における腹部超音波検査では, 膵全体の大きさ, 辺縁の形態, 石灰化の有無, 囊胞の有無と, さらに膵管系と実質系の大きく 2 つの変化に注目し診断される 1 9). 日本では 2009 年の慢性膵炎臨床診断基準 ( 表 1) の特徴的な画像所見の確診所見のなかに 膵管内の結石 および 膵全体に分布する複数ないしびまん性の石灰化 があり, 両者は腹部エコーにて診断できる項目である. また, 準確診例のなかで US(EUS) において, 膵内の結石または蛋白栓と思われる高エコーまたは膵管の不整な拡張を伴う辺縁が不規則な凹凸を示す膵の明らかな変形 として取りあげられている 10) ( 図 1a,b). 慢性膵炎の腹部超音波検査による診断率は 48 83% であり, 特異度は 75 90% とされる 5 7, 9). ただし, この検査は腹部の脂肪やガスなどに影響され, 膵全体の描出が常に十分できるわけではない. 膵管の描出能も 77% 4) 程度, 膵石の描出率は 74% 11) とされ, 膵全体の評価としては不完全である. また, 加齢による変化として, 実質の萎縮, 高エコー化や膵管拡張が起こるため超音波検査のみでは慢性膵炎の診断は十分ではない. 最近, 膵実質の脂肪沈着や加齢の影響が比較的少ない超音波エラストグラム * により, 膵の線維化による硬度が検討されており, 正常膵より慢性膵炎で硬度が高いと報告されており, 診断に有用な可能性がある 12). * 注 : 超音波エラストグラム : 日本で開発され集束超音波により一定した圧迫を加えることにより, 任意の部位の組織硬度が B モードをみながら相対的に表示可能. 文献 1) 石原武, 山口武人, 税所宏光. 慢性膵炎の合併症とその取り扱い 慢性膵炎の画像診断 US,CT,MRI の役割と最新動向. 消化器の臨床 2004; 7: ) 村木崇, 尾崎弥生, 浜野英明, ほか. 体外式超音波検査による胆すい疾患の拾い上げから診断まで こ 8 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

34 3 画像検査 図 1 腹部 US 像 膵管の不整拡張 ( 矢頭 ) と膵管内の結石を示す音響陰影を伴う高エコー ( 矢印 ). 9 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

35 1. 診断 のエコー所見を見逃すな 自己免疫性すい炎. 胆と膵 2005; 26: ) 馬嶋和雄, 竹田喜信, 板橋司, ほか. アルコール性慢性膵炎における US 所見の解析 ERP 所見との対比による再検討から. 胆と膵 1989; 10: ( 横断 ) 4) 小吉洋文. 慢性膵炎の超音波診断に関する研究 ERP との対比において. 鹿児島大学医学雑誌 1988; 40: ( 横断 ) 5) Manfredi R, Brizi MG, Masselli G, et al. Imaging of chronicpancreatitis. Rays 2001; 26: ) Rosch T, Schusdziarra V, Born P, et al. Modern imaging methods versus clinical assessment in the evaluation of hospital in-patients with suspected pancreatic disease. Am J Gastroenterol 2000; 95: ( ケースコントロール ) 7) Buscail L, Escourrou J, Moreau J, et al. Endoscopic ultrasonography in chronic pancreatitis: a comparative 10 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

36 3 画像検査 prospective study with 8 conventional ultrasonography, computed tomography, and ERCP. Pancreas 1995; 10: ( 横断 ) 8) Shawker TH, Linzer M, Hubbard VS. Chronic pancreatitis: the diagnostic significance of pancreatic size and echo amplitude. J Ultrasound Med 1984; 3: ( ケースコントロール ) 9) Swobodnik W, Meyer W, Brecht-Kraus D, et al. Ultrasound, computed tomography and endoscopic retrograde cholangiopancreatography in the morphologic diagnosis of pancreatic disease. Klin Wochenschr 1983; 61: ( 横断 ) 10) 厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班, 日本膵臓学会, 日本消化器病学会. 慢性膵炎臨床診断基準 膵臓 2009; 24: ( ガイドライン ) 11) 春日井政博, 税所宏光, 山口武人, ほか. 膵石灰化からみた慢性膵炎の診断と病態に関する研究. 膵臓 1995; 10: 9-18( 横断 ) 12) Uchida H, Hirooka Y, Itoh A, et al. Feasibility of tissue elastography using transcutaneous ultrasonography for the diagnosis of pancreatic diseases. Pancreas 2009; 38: 17-22( ケースコントロール ) 11 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

37 Clinical Question 診断 ❸ 画像検査 コンピュータ断層撮影法 (CT) は慢性膵炎の診断に有用か? CQ 1-5 コンピュータ断層撮影法 (CT) は慢性膵炎の診断に有用か? ステートメント 腹部 CT は結石の存在や膵管拡張の有無などが描出できる. 慢性膵炎の診断に有用であり, 行うことを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (100%) エビデンスレベル B 解説 コンピュータ断層撮影法 (CT) は腹部全体の描出に優れ, 侵襲の比較的少ない画像検査である. 被検者の各種条件による影響が少なく, 慢性膵炎の診断にも有用である ( 巻頭フローチャート 1 参照 ). 慢性膵炎の CT 検査では, 膵全体の大きさ, 辺縁の形態, 石灰化や囊胞の有無, 膵管の拡張が確認でき, 合併病変や膵周囲臓器との関連も明瞭となる. 日本では 2009 年の慢性膵炎臨床診断基準 (CQ 1-4 表 1 参照 ) の特徴的な画像所見の確診所見のなかに 膵管内の結石 および 膵全体に分布する複数ないしびまん性の石灰化 があり, 両者は CT 検査にて診断できる項目である. また, 準確診例のなかに CT において主膵管の不規則なびまん性の拡張とともに膵辺縁が不規則な凹凸を示す膵の明らかな変形 として取りあげられ使用されている 1). 慢性膵炎の診断において膵石の確認は極めて重要である.CT は膵石灰化の程度と拡がりの描出能に関して鋭敏であり, 容易に判定可能である 2 4) ( 図 1a,b). 膵の石灰化の 62 96% が慢性膵炎とされる 5, 6). 慢性膵炎以外の症例の剖検膵の検討では, 石灰化が 70 歳代で 4.2%,80 歳代で 7) 7.7%,90 歳代で 16.7% と少なくはなく, 多くは数 mm 台の小さな石灰化である. これらは CT で描出される可能性があり,CT で微小石灰化のみが認められる場合の診断には注意を要する. 他に神経内分泌腫瘍や IPMN や膵癌でも石灰化がみられることがある 6). また, 膵頭部でのリンパ節の石灰化や体尾部での脾動脈の石灰化も膵石と鑑別を要することがある.CT 検査での膵の辺縁の凹凸所見は感度 25.3%, 特異度 92.9% であり偽陽性は少ないが感度が低い 5) ( 図 1c). 慢性膵炎の CT 検査における診断率は, 感度 74 90%, 特異度 % 4, 8 11) とされる. 慢性膵炎に付随した仮性囊胞や脾静脈塞栓の合併症や急性増悪の診断には有用である 12). しかしながら早期の慢性膵炎の変化に対しての診断感度は十分ではない 13, 14). 12 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

38 複製 転載禁止 a ③画像検査 b d c 図 1 腹部 X 線 CT 像 a びまん性混合結石 b c びまん性小結石 d 造影 CT 主膵管の不規則なびまん性の拡張とともに 膵辺縁が不規則な凹凸を示す膵の変形が認められる 文献 1 厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班 日本膵臓学会 日本消化器病学会 慢性膵炎臨床診断基準 2009 膵臓 2009: 24: ガイドライン 2 春日井政博 税所宏光 山口武人 膵石灰化からみた慢性膵炎の診断と病態に関する研究 膵臓 1995; 10: 9-18 横断 3 De Backer AI, Mortele KJ, Ros RR, et al. Chronic pancreatitis: diagnostic role of computed tomography and magnetic resonance imaging. JBR-BTR 2002; 85: Luetmer PH, Stephens DH, Ward EM. Chronic pancreatitis: reassessment with current CT. Radiology 1989; 171: 横断 5 石原 武 山口武人 原 太郎 慢性膵炎 新しい診断基準をめぐって 新しい基準の適応に必要な検査 CT 臨床消化器内科 1998; 13: Campisi A, Brancatelli G, Vullierme MP, et al. Are pancreatic calcifications specific for the diagnosis of chronic pancreatitis? a multidetector-row CT analysis. Clin Radiol 2009; 64: 横断 7 永井秀雄 大坪浩一郎 江崎行芳 高齢者の膵炎並びに関連膵病変 病理と臨床 1992; 10: ケース シリーズ 8 Rosch T, Schusdziarra V, Born P, et al. Modern imaging methods versus clinical assessment in the evaluation of hospital in-patients with suspected pancreatic disease. Am J Gastroenterol 2000; 95: ケースコントロール 9 Buscail L, Escourrou J, Moreau J, et al. Endoscopic ultrasonography in chronic pancreatitis: a comparative prospective study with conventional ultrasonography, computed tomography, and ERCP. Pancreas 1995; 13 慢性膵炎診療ガイドライン 改訂第2版 南江堂

39 1. 診断 10: ( 横断 ) 10) Manfredi R, Brizi MG, Masselli G, et al. Imaging of chronic pancreatitis. Rays 2001; 26: ) Liao Q, Zhao YP, Wu WW, et al. Diagnosis and treatment of chronic pancreatitis. Hepatobiliary Pancreat Dis Int 2003; 2: ( 横断 ) 12)Perez-Johnston R, Sainani NI, Sahani DV. Imaging of chronic pancreatitis (including groove and autoimmune pancreatitis). Radiol Clin North Am 2012; 50: ) Bozkurt T, Braun U, Leferink S, et al. Comparison of pancreatic morphology and exocrine functional impairment in patients with chronic pancreatitis. Gut 1994; 35: ( 横断 ) 14) Remer EM, Baker ME. Imaging of chronic pancreatitis. Radiol Clin North Am 2002; 40: 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

40 Clinical Question 診断 ❸ 画像検査 腹部 MRI は慢性膵炎の診断に有用か? CQ 1-6 腹部 MRI は慢性膵炎の診断に有用か? ステートメント 腹部 MRI は結石の存在や膵管拡張有無などが描出できる. 慢性膵炎の診断に有用であり, 行うことを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (100%) エビデンスレベル B 解説 膵胆管 MRI 検査 (MRCP) は侵襲が少なく, 内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査 (ERCP) に代わりうる検査法として有用性が認められている ( 巻頭フローチャート 1 参照 ). 日本では 2009 年の慢性膵炎臨床診断基準 (CQ 1-4 表 1 参照 ) の特徴的な画像所見の準確診所見で 主膵管の不整な拡張とともに膵全体に不均一に分布する分枝膵管の不規則な拡張 として取りあげられている 1) ( 図 1a,b). 撮影条件は, 磁場強度 1.0 テスラ (T) 以上, 傾斜磁場強度 15 mt/m 以上, シングルショット高速 SE 法で撮像すること, その条件が満足できないときは, 背景信号を経口陰性造影剤の服用で抑制し, 膵管の描出のため呼吸同期撮影を行うことが求められている. MRCP では主膵管と拡張した分枝が描出され, 診断基準の確診所見である膵管内結石も陰影欠損像として描出可能である. さらに仮性囊胞の描出能は高く ( 図 1c), 進行した慢性膵炎の診断能は良好である 2). しかし,ERCP のように慢性膵炎の軽微な分枝の変化を捉えることは難しく 3, 4), 膵実質領域の微細膵管内結石は診断できない. 現在, 慢性膵炎の診断のためだけに ERCP を行うことは偶発症のリスクから考慮を要する. したがって,MRCP は診断のために膵管像を得たい場合や, 術後の ERCP 不能例,ERCP 後膵炎の既往例, 膵管造影不成功または膵管閉塞部より上流膵管像を得たい場合などに, 侵襲がほとんどなく簡単に膵管を描出できる唯一の方法である ( 巻頭フローチャート 1 参照 ). MRI 断層法は組織コントラストが CT よりもよく, 膵実質の信号変化から線維化あるいは残存する浮腫や炎症の程度などの判定にも優れている 5 8). 早期の慢性膵炎では, 造影により動脈早期相での信号強度の変化が少ない 9). また, セクレチンの膵液分泌を促進する作用を利用し, セクレチンを投与した MRCP で早期慢性膵炎にあたる膵管分枝の変化が sensitivity 56 63% 10), 十二指腸への膵液分泌量も膵管変化の軽度から進行したもので段階的に減少した 11) とされ, 早期慢性膵炎診断で MRCP にセクレチンの併用の有用性が示唆されている. なお, 現在のところ日本国内では, セクレチンの入手が困難である. 15 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

41 1. 診断 図 1 MRCP 像 a,b: 主膵管の不整拡張と膵全体に不均一に分布する分枝膵管の不整拡張. c: 主膵管の不整拡張と分枝膵管の不整拡張に加え, 膵尾部に囊胞形成 ( 矢印 ) が認められる. 文献 1) 厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班, 日本膵臓学会, 日本消化器病学会. 慢性膵炎臨床診断基準 膵臓 2009: 24: ( ガイドライン ) 2) 馬淵龍彦, 片田直幸, 西村大作, ほか.MR cholangiopancreatography(mrcp) 画期的胆膵管系撮像法の登場, 進歩と臨床応用の現況 疾患別 MRCP の診断的意義 有用性と限界 膵疾患 慢性膵炎, 急性膵炎. 日本臨床 1998; 56: ( 横断 ) 3) Vitellas KM, Keogan MT, Spritzer CE, et al. MR cholangiopancreatography of bile and pancreatic duct abnormalities with emphasis on the single-shot fast spin-echo technique. Radiographics 2000; 20: ) 竹原康雄, 高橋譲, 一条勝利, ほか. 慢性すい炎診断と MRCP MRCP 所見を含めた日本すい臓学会慢性すい炎臨床診断基準 2001 慢性すい炎診断における MRCP の側枝不整拡張の診断能. 膵臓 2001; 16: ( 横断 ) 5) 内田政史, 内山大治, 品川正治, ほか. 肝胆膵領域の画像診断 膵疾患 慢性膵炎. 臨床放射線 2004; 49: ) Pamuklar E, Semelka RC. MR imaging of the pancreas. Magn Reson Imaging Clin N Am 2005; 13: ) De Backer AI, Mortele KJ, Ros RR, et al. Chronic pancreatitis: diagnostic role of computed tomography and magnetic resonance imaging. JBR-BTR 2002; 85: ) 田島義証, 黒木保, 福田顕三, ほか.Dynamic MRI を用いた Time-signal Intensity Curve による膵疾患の診断と評価. 胆と膵 2002; 23: ) Zhang XM, Shi H, Parker L, et al. Suspected early or mild chronic pancreatitis: enhancement patterns on gadolinium chelate dynamic MRI. Magnetic resonance imaging. J Magn Reson Imaging 2003; 17: ( ケースコントロール ) 16 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

42 3 画像検査 10)Sai JK, Suyama M, Kubokawa Y, et al. Diagnosis of mild chronic pancreatitis (Cambridge classification): comparative study using secretin injection-magnetic resonance cholangiopancreatography and endoscopic retrograde pancreatography. World J Gastroenterol 2008; 14: ( ケースコントロール ) 11)Sanyal R, Stevens T, Novak E, et al. Secretin-enhanced MRCP: review of technique and application with proposal for quantification of exocrine function. AJR Am J Roentgenol 2012; 198: ( 横断 ) 17 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

43 複製 転載禁止 Clinical Question 診断 ❸画像検査 超音波内視鏡検査 EUS は慢性膵炎の診断に有用か CQ 1-7 超音波内視鏡検査 EUS は慢性膵炎の診断に有用か 推奨の強さ エビデンス レベル 合意率 ステートメント EUS は結石の存在や膵管拡張の有無の診断に有用で さらに実質 の線維化の推測ができる可能性もあり 慢性膵炎の診断 特により 早期の診断に有用であり 実施することを推奨する B 解説 超音波内視鏡検査 EUS は 高周波 高解像度の超音波プローブを用いて腹壁の脂肪 筋肉 や腹部ガスの影響を受けることなく 胃壁および十二指腸壁から膵全体さらに中下部胆道や周 囲臓器が観察可能である 巻頭フローチャート 1 参照 EUS による慢性膵炎の診断は CT や ERP よりも優れ 1 4 その診断率は 感度 特異度 とされる 3, 4 最近 注目 されている点として US CT や ERCP で異常のない初期の慢性膵炎の変化を EUS で診断でき る可能性が示唆されている 4 6 EUS における慢性膵炎の所見としては 点状高エコー 図 1 図 1 EUS 像 膵実質の点状高エコー hyperechoic foci とその拡大像 ボックス内 18 慢性膵炎診療ガイドライン 改訂第2版 南江堂

44 3 画像検査 図 2 EUS 像 膵実質の分葉状エコー (lobularity) とその拡大像 ( ボックス内 ). 索状高エコー, 分葉状エコー ( 図 2), 辺縁凹凸など, 研究者により 9 13 所見が報告されている 1, 4 7) 年に国際的な専門家のコンセンサスとして,EUS による慢性膵炎診断基準 (the Rosemont classification) が公表された. このなかで,EUS による慢性膵炎の所見として膵実質の 6 所見と膵管の 5 所見が採用された. これらの所見は major A,major B,minor の 3 つに分類され重みづけされた. この診断基準では, 慢性膵炎を major 所見の有無や minor 所見の数などから consistent with CP, suggestive for CP, indeterminent for CP に分類された 8). 日本の 慢性膵炎臨床診断基準 2009 (CQ 1-4 表 1 参照 ) では, このような背景を踏まえ,EUS による画像診断が取り入れられた. 特徴的な画像所見の確診所見で 膵管内の結石 および 膵全体に分布する複数ないしびまん性の石灰化 があり, 両者は EUS で診断可能である. また, 準確診所見では US(EUS) において, 膵内の結石または蛋白栓と思われる高エコーまたは膵管の不整な拡張を伴う辺縁が不規則な凹凸を示す膵の明らかな変形 として取りあげられている 7). また, 早期慢性膵炎の画像所見としては,the Rosemont classification の minor 所見に矛盾しない 7 所見が取りあげられた 7). 診断の精度に関しては組織との対比が必要である.EUS-FNA(CQ 1-11) で用いられる生検針よりも組織がより多く採集可能な trucut 針による生検 (EUS-guided trucut biopsy) でも,EUS 像や ERCP と組織所見との一致率は低く 9), さらに大きな組織を得ることは難しく,EUS による偽陽性をいかに減らすかが今後の課題である. 近年 EUS エラストグラムが開発され, 組織の硬度を反映した画像から慢性膵炎線維化の診断の可能性が示唆された (Endoscopy 2013; 45: a) [ 検索期間外文献 ]). 慢性膵炎臨床診断基準 2009 (CQ 1-4 表 1 参照 ) では, 早期慢性膵炎の診断は画像所見とともに 反復する上腹部痛発作, 血中または尿中膵酵素値の異常, 膵外分泌障害, 1 日 80 g 以上 ( 純エタノール換算 ) の持続する飲酒 の 4 項目のうち 2 項目以上を満たすことが必要条件であり,EUS 所見のみで早期慢性膵炎と診断されることはない 10). 19 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

45 1. 診断 文献 1) Wiersema MJ, Hawes RH, Lehman GA, et al. Prospective evaluation of endoscopic ultrasonography and endoscopic retrograde cholangiopancreatography in patients with chronic abdominal pain of suspected pancreatic origin. Endoscopy 1993; 25: ( コホート ) 2) Nattermann C, Goldschmit AJW, Dancygier H. Endosonography in pancreatitis: a comparison between endscopic retrograde pancreatography and endscopic ultrasonography. Endoscopy 1993; 25: ( ケースコントロール ) 3) Buscail L, Escourrou J, Moreau J, et al. Endoscopic ultrasonography in chronic pancreatitis: a comparative prospective study with conventional ultrasonography, computed tomography, and ERCP. Pancreas 1995; 10: ( 横断 ) 4)Catalano MF, Lahoti S, Geenen JE, et al. Prospective evaluation of endoscopic ultrasonography, endoscopic retrograde pancreatography, and secretin test in the diagnosis of chronic pancreatitis. Gastrointest Endosc 1998; 48: 11-17( 横断 ) 5) Wallace MB, Hawcs RH, Durkalski V, et al. The reliability of EUS for the diagnosis of chronic pancreatitis; interobserve agreement among experienced endosonographers. Gastrointest Endosc 2001; 53: ( 横断 ) 6) Sahai AV, Zimmerman M, Aabakken L, et al. Prospective assessment of the ability of endoscopic ultrasound to diagnose, exclude, or establish the severity of chronic pancreatitis found by endoscopic retrograde cholangiopancreatography. Gastrointest Endosc 1998; 48: 18-25( 横断 ) 7) Kahl S, Glasbrenner B, Leodolter A, et al. EUS in the diagnosis of early chronic pancreatitis: a prospective follow-up study. Gastrointest Endosc 2002; 55: ( ケースコントロール ) 8) Catalano MF, Sahai A, Levy M, et al. EUS-based criteria for the diagnosis of chronic pancreatitis: Rosemont classification. Gastrointest Endsc 2009; 69: ( ガイドライン ) 9) DeWitt J, McGreevy K, LeBlanc J, et al. EUS-guided Trucut biopsy of suspected nonfocal chronic pancreatitis. Gastrointest Endosc 2005; 62: 76-84( 横断 ) 10) 厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班, 日本膵臓学会, 日本消化器病学会. 慢性膵炎臨床診断基準 膵臓 2009: 24: ( ガイドライン ) 検索期間外文献 a)iglesias-garcia J, Domínguez-Muñoz JE, Castiñeira-Alvariño M, et al. Quantitative elastography associated with endoscopic ultrasound for the diagnosis of chronic pancreatitis. Endoscopy 2013; 45: ( 横断 ) 20 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

46 Clinical Question 診断 ❸ 画像検査 内視鏡的逆行性胆道膵管造影法 (ERCP) は慢性膵炎の診断に有用か? CQ 1-8 内視鏡的逆行性胆道膵管造影法 (ERCP) は慢性膵炎の診断に有用か? ステートメント ERCP は膵管像を極めて明瞭に描出し慢性膵炎を診断することができる. 早期の診断が必要な場合にも有用であり, 適応を慎重に検討したうえで行うことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル B 解説 内視鏡的逆行性胆道膵管造影法 (ERCP) は, 主膵管のみならず膵管分枝が, 他の検査に比べ最も明瞭に描出でき, 比較的早期の慢性膵炎の診断にも有用とされる 1).ERCP 所見で主膵管の拡張がなく, あっても分枝の拡張のみの早期の慢性膵炎の切除材料による検討で,67% に組織学的に相関がみられた 2) ( 巻頭フローチャート 1 参照 ).ERCP による慢性膵炎の診断率は感度 70 93%, 特異度は % とされ良好である 3 6). 慢性膵炎臨床診断基準 (2009 年 )(CQ 1-4 表 1 参照 ) による特徴的な画像所見の確診所見では ERCP 像で, 膵全体にみられる主膵管の不整な拡張と不均等に分布する不均一かつ不規則な分枝膵管の拡張 ( 図 1) および ERCP 像で, 主膵管が膵石, 蛋白栓などで閉塞または狭窄しているときは, 乳頭側の主膵管と分枝膵管の不規則な拡張 ( 図 2), 準確診所見では ERCP 像において, 膵全体に分布するびまん性の分枝膵管の不規則な拡張, 主膵管のみの不整な拡張, 蛋白栓のいずれか. とされている. さらに早期慢性膵炎の画像所見では ERCP 像で,3 本以上の分枝膵管に不規則な拡張が認められる とされている 7). 高齢者では加齢による膵管のびまん性拡張, 囊胞性拡張や石灰化があり鑑別を要する 8). 診断的 ERCP は, 多くの場合膵癌と慢性膵炎を鑑別するために用いられ, 膵管像診断とともに生検や擦過細胞診や膵管内経鼻膵管チューブ留置による細胞診 (J Gastroenterol 2013; 48: a) [ 検索期間外文献 ]) も行われ, 膵癌診断の良好な感度, 特異度, 正診率が得られる. ERCP の膵管所見は慢性膵炎の診断としてケンブリッジ分類や日本の診断基準で用いられてきたが, この検査法の最大の問題点として重篤となる偶発症が起こる場合がある. その頻度は危険因子の度合いにより異なるが,ERCP 後急性膵炎としては 2.6% 4.09% とされる 9 11). 急性膵炎のリスクを考慮して検査を行う前には十分なインフォームドコンセントを必要とする. 21 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

47 1. 診断 図 1 慢性膵炎確診 膵全体にみられる主膵管の不整な拡張と不均等に分布する不均一かつ不規則な分枝膵管の拡張. 図 2 早期慢性膵炎 頭部から体部にかけ分枝膵管の不規則な拡張が認められる. 文献 1) Sahai AV, Zimmerman M, Aabakken L, et al. Prospective assessment of the ability of endoscopic ultrasound to diagnose, exclude, or establish the severity of chronic pancreatitis found by endoscopic retrograde cholangiopancreatography. Gastrointest Endosc 1998; 46: 18-25( 横断 ) 2) Vitale GC, Davis BR, Zavaleta C, et al. Endoscopic retrograde cholangiopancreatography and histopathology correlation for chronic pancreatitis. Am Surg 2009; 75: ( 横断 ) 22 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

48 3 画像検査 3) Buscail L, Escourrou J, Moreau J, et al. Endoscopic ultrasonography in chronic pancreatitis: a comparative prospective study with conventional ultrasonography, computed tomography, and ERCP. Pancreas 1995; 10: ( 横断 ) 4) Rosch T, Schusdziarra V, Born P, et al. Modern imaging methods versus clinical assessment in the evaluation of hospital in-patients with suspected pancreatic disease. Am J Gastroenterol 2000; 95: ( ケースコントロール ) 5) Venu RP, Brown RD, Halline AG. The role of endoscopic retrograde cholangio- pancreatography in acute and chronic pancreatitis. J Clin Gastroenterol 2002; 34: ) Lehman GA. Role of ERCP and other endoscopic modalities in chronic pancreatitis. Gastrointest Endosc 2002; 56: S237-S240( ケースシリーズ ) 7) 厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班, 日本膵臓学会, 日本消化器病学会. 慢性膵炎臨床診断基準 膵臓 2009: 24: ( ガイドライン ) 8) Ikeda M, Sato T, Morozumi A, et al. Morphologic changes in the pancreas detected by screening ultrasonography in a mass survey, with special reference to main duct dilatation, cyst formation, and calcification. Pancreas 1994; 9: ( ケースシリーズ ) 9) Cotton PB, Garrow DA, Gallagher J, et al. Risk factors for complications after ERCP: a multivariate analysis of 11,497 procedures over 12 years. Gastrointest Endosc 2009; 70: 80-88( 横断 ) 10) Zhou W, Li Y, Zhang Q, et al. Risk factors for postendoscopic retrograde cholangiopancreatography pancreatitis: a retrospective analysis of 7,168 cases. Pancreatology 2011; 11: ( 横断 ) 11) Testoni PA, Mariani A, Giussani A, et al. Risk factors for post-ercp pancreatitis in high- and low-volume centers and among expert and non-expert operators: a prospective multicenter study. Am J Gastroenterol 2010; 105: ( 横断 ) 検索期間外文献 a) Mikata R, Ishihara T, Tada M, et al. Clinical usefulness of repeated pancreatic juice cytology via endoscopic naso-pancreatic drainage tube in patients with pancreatic cancer. J Gastroenterol 2013; 48: ( ケースコントロール ) 23 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

49 Clinical Question 1-9 外分泌機能検査は慢性膵炎の診断に有用か? 1. 診断 ❹ 機能検査 CQ 1-9 外分泌機能検査は慢性膵炎の診断に有用か? ステートメント BT-PABA 試験で異常低値を複数回認めれば慢性膵炎の診断に有用であり, 用いることを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (90%) エビデンスレベル C 解説 膵外分泌機能検査は従来から慢性膵炎の診断根拠として重要な役割を果たしてきた. 有管法によるパンクレオザイミン セクレチン (PS) 試験, セルレイン セクレチン (CS) 試験, その後のセクレチン (S) 試験は膵外分泌機能の直接法として感度, 特異度が高く, 慢性膵炎診断基準のひとつ 1) として, 歴史的にその有用性は極めて高かった. これらの試験では, 液量, 重炭酸塩濃度, 膵酵素分泌量の 3 因子を測定し, 最高重炭酸塩濃度を含めた 2 因子以上の異常低下をもっ 2) て確実な診断根拠であるとしてきた. また, セクレチン刺激による内視鏡的純粋膵液採取法, セクレチン刺激下に内視鏡的に採取した十二指腸液中の最高重炭酸濃度を測定し膵外分泌機能を評価する endoscopic pancreatic function test 3), セクレチン刺激下に MRI/MRCP を撮像し十 4) 二指腸液の液量を推定する機能画像検査の有用性も報告されてきた. しかし, ヒトに投与可能なこれらペプチド製剤の入手が困難となり, 日本では実施不可能になった現在, 実施可能な外分泌機能検査は BT-PABA 試験のみである. この試験は BT-PABA 内服後の尿中 PABA 測定により, キモトリプシンの十二指腸内活性を間接的に測定する方法で簡 5) 便法として広く普及している. 本試験で異常低値を認めれば, 確実な膵外分泌機能障害と診断できるが,PABA の代謝経路 ( 腸管吸収, 肝での抱合, 腎排泄 ) の影響や種々の内服薬剤の影響を受けることから, 感度および特異度の面で, その評価には注意が必要である. これらを考慮して, 日本の慢性膵炎診断基準 ) は BT-PABA 試験での複数回異常低値を認める場合を有意な所見として診断項目に取り入れられている. 複数回異常とは, 数ヵ月あけて 2 回以上の異常を認めた場合とされており, 簡便とは言い難い. 簡便な間接法としての膵外分泌機能検査には, 5, 7) 8, 9) 便中キモトリプシン活性測定, 便中エラスターゼ 1 測定, 13 C-ジペプチド (benzoyl-l-tyrosyl-[ ) C]alanine:Bz-Tyr-Ala) 呼気試験などがあり, 慢性膵炎の診断に有用であるという報告がある. また,BT-PABA 試験と便中キモトリプシン活性測定との組み合わせで同時異常を認 5, 7) める場合は, 診断の確実性は高まると報告されている. しかし,BT-PABA 試験以外は日本における保険適用がない ( 表 1). BT-PABA 試験はセクレチン試験で 2 因子以上障害された慢性膵炎の診断には有用性が高い 24 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

50 4 機能検査 が, 軽度な外分泌機能障害の検出は困難であり, また慢性膵炎以外の膵病変においても異常値を示すことから, その診断能には限界がある. 文献 1) 日本膵臓学会慢性膵炎臨床診断基準 膵臓 2001; 16: ( ガイドライン ) 2) 吉岡秀樹, 井上博和, 長谷川毅. 内視鏡的純粋膵液採取法を用いた慢性膵炎の膵外分泌機能の検討. 消化器内視鏡の進歩 1998; 42: ( ケースコントロール ) 3) Pelley JR, Gordon SR, Gardner TB. Abnormal duodenal [HCO3-] following secretin stimulation develops sooner than endocrine insufficiency in minimal change chronic pancreatitis. Pancreas 2012; 41: ( ケースコントロール ) 4) Balci NC, Smith A, Momtahen AJ, et al. MRI and S-MRCP findings in patients with suspected chronic pancreatitis: correlation with endoscopic pancreatic function testing (epft). J Magn Reson Imaging 2010; 31: ( ケースコントロール ) 5) Kataoka K, Yamane Y, Kato M, et al. Diagnosis of chronic pancreatitis using noninvasive tests of exocrine pancreatic function: comparison to duodenal intubation tests. Pancreas 1997; 15: ( ケースコントロール ) 6) Shimosegawa T, Kataoka K, Kamisawa T, et al. The revised Japanese clinical diagnostic criteria for chronic pancreatitis. J Gastroenterol 2010; 45: ( ガイドライン ) 7) 内緑, 小泉勝, 木村憲治, ほか. 無管法の BT-PABA 試験と便中キモトリプシン活性測定試験による膵外分泌機能の評価. 膵臓 1998; 13: 1-8( ケースコントロール ) 8) 竹田昌弘, 白鳥敬子, 林直諒, ほか. 便中エラスターゼ -1 測定を中心とした膵外分泌機能検査の評価. 臨床病理 2002; 50: ( ケースコントロール ) 9) 長崎裕, 水溜浩弥, 柏瀬由紀子, ほか. 便中エラスターゼ Ⅰ による膵外分泌機能の検討. 膵臓 2003; 18: 9-20( ケースコントロール ) 10) 石井敬基, 河野匡, 伊藤あすか, ほか. 13 C- ジペプチド (Benzoyl-L-Tyrosyl-[1-13 C]alanine) 呼気テストによる簡易膵外分泌機能検査法. 消化器科 2004; 39: ( ケースコントロール ) 25 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

51 Clinical Question 1-10 病理組織学的検索は慢性膵炎の診断に必要か? 1. 診断 ❺ 病理検査 CQ 1-10 病理組織学的検索は慢性膵炎の診断に必要か? ステートメント 慢性膵炎の診断に病理組織学的検索は必ずしも必要でない. 診断目的の組織的検索は行わないことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル C 解説 十分な膵組織が得られれば ( 切除例では ), 病理組織学的検索は慢性膵炎の診断の gold standard になりうる (CQ 1-4 表 1 参照 )( 図 1) 1, 2). 生検標本においては, 与えられた組織標本内に確診や準確診所見に相当する所見があれば診断できるが, もし含まれていなければ診断がつかないことになる 3, 4). 臨床上は, 慢性膵炎に対する病理組織学的検索は, 膵癌との鑑別診断のために行われることがほとんどである 5 11). 慢性膵炎の診断のために膵生検を行う必要性を述べた論文はなく, 慢性膵炎の診断に病理組織学的検索は必ずしも必要でない. 文献 1) 福村由紀, 須田耕一. 病理像からみた慢性膵炎. 消化器病セミナー 90 慢性膵炎 診断と治療のコンセンサス, へるす出版, 東京,2003: p ) Forsmark CE. The diagnosis of chronic pancreatitis. Gastrointest Endosc 2000; 52: ) 山口武人, 原太郎, 喜恵美里, ほか. 経皮的膵生検. 胆と膵 2010; 31: ) 須田耕一. 診断基準の解説 3. 組織所見. 膵臓 2009; 24: ) DelMaschio A, Vanzulli A, Sironi S, et al. Pancreatic cancer versus chronic pancreatitis: diagnosis with CA19.9 assessment, US, CT and CT-guided fine-needle biopsy. Radiology 1991; 178: 95-99( ケースコントロール ) 6) Stasi MD, Lencioni R, Solmi L, et al. Ultrasound-guided fine needle biopsy of pancreatic masses: results of a multicenter study. Am J Gastroenterol 1998; 93: ( ケースコントロール ) 7) Lerma E, Musulen E, Cuatrecasas M, et al. Fine needle aspiration cytology in pancreatic pathology. Acta Cytologica 1996; 40: ( ケースコントロール ) 8) Mallery JS, Centeno BA, Hahn PF, et al. Pancreatic tissue sampling guided by EUS, CT/US and surgery: a comparison of sensitivity and specificity. Gastrointest Endosc 2002; 56: ( ケースコントロール ) 9) Fritsch-Ravens A, Knofel LBW, Bobrowski C, et al. Comparison of endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration for focal pancreatic lesions in patients with normal parenchyma and chronic pancreatitis. Am J Gastroenterol 2002; 97: ( ケースコントロール ) 10) Carlucci M, Zerbi A, Parolini D, et al. CT-guided pancreatic percutaneous fine-needle biopsy in differential diagnosis between pancreatic cancer and chronic pancreatitis. HPB Surgery 1989; 1: ( ケースコ 26 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

52 複製 転載禁止 a ⑤病理検査 b c 図 1 慢性膵炎の特徴的な組織所見 a 膵実質の萎縮 脱落と不規則な線維化 b 分枝膵管内蛋白栓形成 c 石灰化 矢印 ントロール 11 山口武人 石原 武 小林照宗 ほか 経皮的膵生検法の適応と成績 胆と膵 2003; 24: ケースコ ントロール 27 慢性膵炎診療ガイドライン 改訂第2版 南江堂

53 Clinical Question 診断 ❻ 鑑別診断 慢性膵炎と膵癌や膵管内乳頭粘液性腫瘍 (IPMN) との鑑別診断は必要か?( なぜ必要か?) CQ 1-11 慢性膵炎と膵癌や膵管内乳頭粘液性腫瘍 (IPMN) との鑑別診断は必要か?( なぜ必要か?) ステートメント 膵癌の予後は極めて悪く,IPMN は膵癌の発生率が高い疾患である. 慢性膵炎とは予後がまったく異なるため, 両者の鑑別を行うことを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (100%) エビデンスレベル B 解説 慢性膵炎と腫瘍である膵癌や, 腫瘍性のポテンシャルを持つ IPMN とは臨床像や診療方針が異なる別の疾患であり区別しなければならない. 膵病変の診断では, 良悪性の鑑別が一般診療において最も重要である. 膵癌の 5 年生存率は北米では 5 6% 1), 日本では 13%(Pancreas 2012; 41: a) [ 検索期間外文献 ]) とされ, 極めて予後不良である. 慢性膵炎と膵癌の鑑別は難しいことがまれではなく, 特に慢性膵炎を合併した膵癌では診断は難しい 2). 慢性膵炎に膵癌が発生することも知られており 3), これらから慢性膵炎と膵癌を鑑別することが必要であり, また慢性膵炎での膵癌の合併の有無の診断は重要である. 他には限局腫瘤状を呈する自己免疫性膵炎や腫瘤形成性膵炎も膵癌に似た画像を呈する. 一方, 膵癌以外では IPMN も膵管像や囊胞性変化の画像を呈し, 再発する膵炎や黄疸などの臨床像も似ているため注意深い鑑別診断が必要とされる 4). また,IPMN には膵癌の発生が多いことも知られている 5). 鑑別診断には,US,CT,MRI,MRCP,ERCP,EUS などがよく用いられているが, これら診断手段における膵癌診断の感度は比較的良好である 6). 一方, 腫瘤を形成する慢性膵炎の診断に関しては,CT などの横断画像では膵癌と同様の腫瘤像を呈するため鑑別が難しい.ERCP で膵管像による鑑別が行われているが十分ではない 7). 新たに US や EUS のコントラスト造影法による鑑別が行われるようになってきた 8, 9). 18 FDG-PET も膵癌との鑑別診断に用いられている 10). 最近では確定診断を得るために,EUS 時に EUS-FNA( 超音波内視鏡下穿刺吸引生検法 ) として組織診や細胞診を行うことが多くの施設で可能となりつつある. 腫瘤形成型の膵病変では, 膵癌を主とする悪性膵腫瘤の鑑別手段として EUS-FNA は感度や特異度に優れる 11, 12). また, 腫瘤を呈しないものでは膵液細胞診や膵管擦過細胞診が行われている. 28 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

54 6 鑑別診断 文献 1) Siegel R, Naishadham D, Jemal A. Cancer statistics, CA Cancer J Clin 2012; 62: 10-29( ケースシリーズ ) 2) Abraham SC, Wilentz RE, Yeo CJ, et al. Pancreaticoduodenectomy (Whipple resections) in patients without malignancy: are they all chronic pancreatitis? Am J Surg Pathol 2003; 27: ( ケースシリーズ ) 3) Lowenfels AB, Maisonneuve P, Cavallini G, et al. Pancreatitis and the risk of pancreatic cancer: International Pancreatitis Study Group. N Engl J Med 1993; 328: ( コホート ) 4) Kim JH, Hong SS, Kim YJ, et al. Intraductal papillary mucinous neoplasm of the pancreas: differentiate from chronic pancreatits by MR imaging. Eur J Radiol 2012; 81: ( ケースコントロール ) 5) Tanno S, Nakano Y, Koizumi K, et al. Pancreatic ductal adenocarcinomas in long-term follow-up patients with branch duct intraductal papillary mucinous neoplasms. Pancreas 2010; 39: 36-40( コホート ) 6) Rosch T, Schusdziarra V, Born P, et al. Modern imaging methods versus clinical assessment in the evaluation of hospital inpatients with suspected pancreatic disease. Am J Gastroenterol 2000; 95: ( ケースコントロール ) 7) 石原武, 山口武人, 露口利夫, ほか. 膵管像からみた腫瘤形成性膵炎の臨床的考察. 日本消化器病学会雑誌 1996; 93: ( 横断 ) 8) Saftoiu A, Iordache SA, Gheonea DI, et al. Combined contrast-enhanced power Doppler and real-time sonoelastography performed during EUS, used in the differential diagnosis of focal pancreatic masses (with videos). Gastrointest Endosc 2010; 72: ( 横断 ) 9) 祖父尼淳, 森安史典, 辻修二郎, ほか. 膵疾患画像診断における最近の進歩 Sonazoid を用いた造影超音波診断の有用性. 膵臓 2011; 26: 11-22( ケースコントロール ) 10) Rasmussen I, Sorensen J, Langstrom B, et al. Is positron emission tomography using 18F-fluorodeoxyglucose and 11C-acetate valuable in diagnosing indeterminate pancreatic masses? Scand J Surg 2004; 93: ( ケースコントロール ) 11) Tada M, Komatsu Y, Kawabe T, et al. Quantitative analysis of K-ras gene mutation in pancreatic tissue obtained by endoscopic ultrasonography- guided fine needle aspiration: clinical utility for diagnosis of pancreatic tumor. Am J Gastroenterol 2002; 97: ( ケースコントロール ) 12) Krishna NB, LaBundy JL, Saripalli S, et al. Diagnostic value of EUS-FNA in patients suspected of having pancreatic cancer with a focal lesion on CT scan/mri but without obstructive jaundice. Pancreas 2009; 38: ( 横断 ) 検索期間外文献 a) Egawa S, Toma H, Ohigashi H, et al. Japan pancreatic cancer registry; 30th year anniversary: Japan pancreas society. Pancreas 2012; 41: ( 横断 ) 29 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

55 Clinical Question 1-12 遺伝子検査は慢性膵炎の診断に有用か? 1. 診断 ❼ 遺伝子検索 CQ 1-12 遺伝子検査は慢性膵炎の診断に有用か? ステートメント カチオニックトリプシノーゲン遺伝子 (PRSS1) の解析は症状を有する一部の慢性膵炎患者には臨床的有用性が認められ, 検査を行うことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル B CFTR 遺伝子や膵分泌性トリプシンインヒビター遺伝子 (SPINK1) 解析の有用性に関しては十分な根拠がなく, 一般的には行わないことを提案する. 2 (100%) B 解説 2001 年の遺伝性膵炎に関する遺伝子検索のコンセンサス会議では, カチオニックトリプシノーゲン遺伝子 (PRSS1) のみが慢性膵炎において臨床的に有用な遺伝子検索とされた 1).PRSS1 遺伝子変異には p.a16v 変異,p.N29I 変異,p.R122H 変異, コピー数異常 (CNV) があるが, 特に p.r122h と p.n29i は浸透率が 80% と高く, 症状のある患者の診断目的として遺伝子検査を行うことは有用である 2, 3). 有症状例に対する PRSS1 遺伝子検索の適用は,1 原因不明の高アミラーゼ血症を伴った 2 回以上の急性膵炎発作を有する例,2 原因不明の慢性膵炎例,31 親等および 2 親等に膵炎の家族歴がある例,4 小児で入院を要する原因不明の膵炎発作がみられる例で, 遺伝性膵炎を除外する必要がある場合,5 倫理委員会が承認したプロトコールに適合する症例, である. また, 無症状の成人に対する PRSS1 遺伝子診断は, より慎重に行われるべきとされ, 検査前に十分なカウンセリングが受けられ, かつ検査後に十分な患者支援と臨床的な経過観察が行われる場合に限るとされる 1). 16 歳以下の小児では, 臨床的に確実な予防的措置がとれない場合は, 特に無症状例についての予測的検査は妥当ではないとされる. 小児における PRSS1 遺伝子診断の適用は,1 原因不明で入院治療を要するような膵炎発作がある例,2 原因不明の膵炎発作が 2 回以上ある例,3 姻戚者に PRSS1 の遺伝子異常が知られており, 原因不明の腹痛発作を繰り返す例,4 原因不明の腹痛発作を繰り返す小児で, 遺伝性膵炎の可能性が高い例,5 原因不明の慢性膵炎で遺伝性膵炎の可能性が高い例である. 遺伝性膵炎患者を診療する臨床医は, 出生前診断を広く行うことや, 究極的には遺伝性膵炎の妊娠中絶を勧めるようなことは制限されるべきである 1). 遺伝子診断を行う場合に, 遺伝子診断が有用な場合があるものの, 遺伝子診断を行っても遺伝子変異がわからないことが多いことや, 遺伝子変異が判明した場合でも, それに対する特異 30 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

56 7 遺伝子検索 的な治療法は存在しないことを考慮すべきである. また, 遺伝子診断は保険診療が適用されず高価であることや, 遺伝性膵炎は発癌リスクが高いものの, どのような方法で経過観察をすべきなのか方法論が確立されていない, などの問題点にも注意を要する 4). 特発性膵炎における CFTR( 膵囊胞線維症 CF の原因遺伝子 ) と SPINK1( 膵分泌性トリプシンインヒビター PSTI の遺伝子 ) の遺伝子診断の臨床的意義に関するコンセンサスはない. これらの遺伝子診断は膵炎の危険性を予測できるかもしれないが,CFTR の複合ヘテロ接合体や SPINK1 N34S 変異キャリアのほとんどが実際には膵炎を発症せず, キャリアのうち誰が膵炎を発症するか予測できない. そのため, 世界的な趨勢としては CFTR と SPINK1 の遺伝子検査は現在のところ行うだけの根拠にが乏しいとされている 2, 3). 一方,SPINK1 N34S 変異のように明らかに慢性膵炎と関連する遺伝子検査については今後行うことが議論されるべきであるとする意見もある 5, 6). 文献 1) Ellis I, Lerch MM, Whitcomb DC. Genetic testing for hereditary pancreatitis: guideline for indication, counseling, consent and privacy issues. Pancreatology 2001; 1: ( ガイドライン ) 2) Ooi CY, Gonska T, Durie PR, et al. Genetic testing in pancreatitis. Gastroenterology 2010; 138: ) Solomon S, Whitcomb DC. Genetics of pancreatitis: an update for clinicians and genetic counselors. Curr Gastroenterol Rep 2012; 14: ( ガイドライン ) 4) Treiber M, Schlag C, Schmid RM. Genetics of pancreatitis: a guide for clinicians. Curr Gastroenterol Rep 2008; 10: ( ガイドライン ) 5) Derikx MH, Drenth JP. Genetic factors in chronic pancreatitis; implications for diagnosis, management and prognosis. Best Pract Res Clin Gastroenterol 2010; 24: ) Teich N, Mossner J. Hereditary chronic pancreatitis. Best Pract Res Clin Gastroenterol 2008; 22: 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

57 2. 病期診断 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

58 Clinical Question 病期診断 ❶ 病期診断の必要性 慢性膵炎の重症度 病期 治療効果の判定は必要か? CQ 2-1 慢性膵炎の重症度 病期 治療効果の判定は必要か? ステートメント 慢性膵炎の重症度 病期 治療効果の判定は必要であり, 行うことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (80%) エビデンスレベル C 解説 慢性膵炎の重症度を, 膵外分泌機能, 膵管像, 耐糖能, 腹痛のそれぞれについて 5 段階に分け, さらに飲酒の程度と膵炎の合併症の有無を 3 段階に分けて総合点から 5 段階に分類すると, 重症度と performance status(ps) や body mass index(bmi) との間に相関がみられ, 慢性膵炎の重症度は日常生活の障害度や栄養状態を反映したと報告されている 1). 痛みや合併症の有無による慢性膵炎の重症度分類は, 慢性膵炎の経過観察や治療法の評価にも有用とされる 1 4). 慢性膵炎は, 膵内外分泌機能障害の程度から代償期 移行期 非代償期, ないし初期 後期に分けられ, 当初は腹痛が主症状であるが病期の進行とともに腹痛は軽減し, 膵内外分泌機能障害が主症状になる. 慢性膵炎の病期分類は患者の診療に有用である 4 6). 痛みのある膵石症患者を中心に体外衝撃波結石破砕療法 (ESWL) や内視鏡的治療が行われ, 結石の完全除去によって膵管拡張の解除や症状緩和などの良好な成績が認められる 7 10). 痛みが再燃した際は, 画像診断を行い, 内視鏡的再治療が行われる 7). 以上より, 慢性膵炎の重症度 病期 治療効果の判定は必要である. 日本では, 慢性膵炎臨床診断基準 2009 (CQ 1-4 表 1 参照 ) において, 病期を考慮した診療が行えるように早期慢性膵炎の診断基準が定義された 11, 12). 文献 1) 早川哲夫, 北川元二, 成瀬達, ほか. 慢性膵炎の Stage 分類. 膵臓 2001; 16: ( ケースコントロール ) 2) Ramesh H. Proposal for a new grading system for chronic pancreatitis. J Clin Gastroenterol 2002; 35: ( ケースコントロール ) 3) Bagul A, Siriwardena AK. Evaluation of the Manchester classification system for chronic pancreatitis. JOP 2006; 7: ( ケースコントロール ) 4) 大槻眞. 慢性膵炎の診断基準 病期分類 重症度. 内科 2005; 95: 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

59 1 病期診断の必要性 5) Ammann RW. A clinically based classification system for alcoholic chronic pancreatitis: summary of an international workshop on chronic pancreatitis. Pancreas 1997; 14: ) Chari ST, Singer MV. The problem of classification and staging of chronic pancreatitis. Scand J Gastroenterol 1994; 29: ) Gabbrielli A, Mutignani M, Pandolfi M, et al. Endotherapy of early onset idiopathic chronic pancreatitis: results with long-term follow-up. Gastrointest Endosc 2002; 55: ( ケースコントロール ) 8) Rosch T, Daniel S, Scholz M, et al. Endoscopic treatment of chronic pancreatitis: a multicenter study of 1000 patients with long-term follow-up. Endoscopy 2002; 34: ( ケースコントロール ) 9) Costamagna G, Gabbrielli A, Mutignani M, et al. Extracorporeal shock wave lithotripsy of pancreatic stones in chronic pancreatitis: immediate and medium-term results. Gastrointest Endosc 1997; 46: ( ケースコントロール ) 10) Lawrence C, Siddiqi MF, Hamilton JN, et al. Chronic calcific pancreatitis: combination ERCP and extracorporeal shock wave lithotripsy for pancreatic duct stones. Southern Med J 2010; 103: ( ケースコントロール ) 11) 厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班, 日本膵臓学会, 日本消化器病学会. 慢性膵炎臨床診断基準 膵臓 2009; 24: ( ガイドライン ) 12) 下瀬川徹. 診断基準の概要と経緯. 膵臓 2009; 24: 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

60 複製 転載禁止 Clinical Question 病期診断 ❷ 臨床所見 臨床徴候 ( 所見 ) による重症度 病期 治療効果の判定は可能か? CQ 2-2 臨床徴候 ( 所見 ) による重症度 病期 治療効果の判定は可能か? ステートメント 慢性膵炎の重症度 病期 治療効果の判定に臨床徴候 ( 所見 ) は参考となり, 症状や所見を注意深く観察することを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル B 解説 慢性膵炎の重症度は, 臨床的に腹痛と膵内外分泌機能障害から生じる脂肪便や糖尿病を中心として分類される 1 3). 慢性膵炎は, 初期 ( 代償期 ) には腹痛が主症状であり, 病期の進行とともに腹痛は軽減し, 後期 ( 非代償期 ) になると糖尿病 ( 糖質代謝障害 ) や脂肪便 ( 消化吸収障害 ) などの膵内外分泌機能障害の臨床徴候が主体となる ( 図 1) 4 10) (CQ 1-4 表 1 参照 ). 慢性膵炎患者における腹痛の程度や状況は quality of life(qol) と関連する 11, 12). 腹痛を有する慢性膵炎患者における体外衝撃波結石破砕療法 (ESWL) や内視鏡的治療による膵石除去治療および十二指腸温存膵頭切除術 (DPPHR) 後の治療効果の長期判定は, 腹痛の再燃や QOL の評価によりなされる 13 17). 以上より, 臨床徴候 ( 所見 ) による重症度 病期 治療効果の判定は可能である. 図 1 慢性膵炎の病期と臨床症状 ( 文献 10 を一部改変 ) 36 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

61 2 臨床所見 文献 1) 早川哲夫, 北川元二, 成瀬達, ほか. 慢性膵炎の Stage 分類. 膵臓 2001; 16: ( ケースコントロール ) 2) Ramesh H. Proposal for a new grading system for chronic pancreatitis. J Clin Gastroenterol 2002; 35: ( ケースコントロール ) 3) Bagul A, Siriwardena AK. Evaluation of the Manchester classification system for chronic pancreatitis. JOP 2006; 7: ( ケースコントロール ) 4) 大槻眞. 慢性膵炎の診断基準 病期分類 重症度. 内科 2005; 95: ) Ammann RW. A clinically based classification system for alcoholic chronic pancreatitis: summary of an international workshop on chronic pancreatitis. Pancreas 1997; 14: ) Chari ST, Singer MV. The problem of classification and staging of chronic pancreatitis. Scand J Gastroenterol 1994; 29: ) Ammann RW, Muellhaupt B; Zurich Pancreatic Study Group. The natural history of pain in alcoholic chronic pancreatitis. Gastroenterology 1999; 116: ( ケースコントロール ) 8) Ammann RW, Akovbiantz A, Largiader F, et al. Course and outcome of chronic pancreatitis: longitudinal study of a mixed medical-surgical series of 245 patients. Gastroenterology 1984; 86: ( コホート ) 9) Lankisch PG, Lohr-Happe A, Otto J, et al. Natural course in chronic pancreatitis. Digestion 1993; 54: ( コホート ) 10) 早川哲夫, 真辺忠夫, 竹田喜信, ほか. 慢性膵炎の治療指針の改訂について. 厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班 ( 班長 : 斉藤洋一 ), 昭和 62 年度研究報告書,1998: p ) Mullady DK, Yadav D, Amann ST, et al. Type of pain, pain-associated complications, quality of life, disability and resource utilization in chronic pancreatitis: a prospective cohort study. Gut 2011; 60: 77-84( コホート ) 12) Mokrowiecka A, Pinkowski D, Matecka-Panas E. Assessment of quality of life in patients with chronic pancreatitis. Med Sci Monit 2011; 17: CR583-CR588( コホート ) 13) Gabbrielli A, Mutignani M, Pandolfi M, et al. Endotherapy of early onset idiopathic chronic pancreatitis: results with long-term follow-up. Gastrointest Endosc 2002; 55: ( ケースコントロール ) 14) Bloechle C, Izbicki JR, Knoefel WT, et al. Quality of life in chronic pancreatitis-results after duodenum-preserving resection of the head of the pancreas. Pancreas 1995; 11: 77-85( ケースコントロール ) 15) Izbicki JR, Bloechle C, Knoefel WT, et al. Duodenum-preserving resection of the head of the pancreas in chronic pancreatitis: a prospective, randomized trial. Ann Surg 1995; 221: ( ランダム ) 16) Glasbrenner B, Adler G. Evaluating pain and the quality of life in chronic pancreatitis. Int J Pancreatol 1997; 22: ) Seven G, Schreiner MA, Ross AS, et al. Long-term outcomes associated with pancreatic extracorporeal shock wave lithotripsy for chronic calcific pancreatitis. Gastrointest Endosc 2012; 75: ( コホート ) 37 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

62 Clinical Question 病期診断 ❸ 生化学検査 血中 尿中膵酵素測定による重症度 病期 治療効果の判定は可能か? CQ 2-3 血中 尿中膵酵素測定による重症度 病期 治療効果の判定は可能か? ステートメント 血中 尿中膵酵素測定による慢性膵炎の重症度 病期 治療効果の判定は, 多くの例で不可能である. 重症度 病期 治療効果の判定には用いないことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル C 解説 膵外分泌機能不全例では, 血中膵型アミラーゼやリパーゼが異常低値を呈することがあるが 1 9), その頻度は高くない 1 5). 膵アミラーゼ / リパーゼ比の低下は膵管像による慢性膵炎の程度分類と相関し 8), 膵型アミラーゼ / 総アミラーゼ比はセクレチン試験と相関を認めた 9) という報告がある. しかし, 痛みなどの臨床徴候との関連はなく, 治療効果の判定も難しい. よって, 血中 尿中膵酵素測定による慢性膵炎の重症度 病期 治療効果の判定は, 多くの例で不可能である. 文献 1) Berk JE, Ayulo JA, Fridhandler L. Value of pancreatic-type isoamylase assay as an index of pancreatic insufficiency. Dig Dis Sci 1979; 24: 6-10( ケースコントロール ) 2) 日野一成, 大海庸世, 山本晋一郎, ほか.EIA による血中膵型アミラーゼアイソザイム定量の慢性膵炎診断における臨床的有用性. 膵臓 1989; 4: 59-66( ケースコントロール ) 3) 正宗淳, 下瀬川徹. 慢性膵疾患の急性増悪. 救急医学 2011; 35: ) 片岡慶正. 膵機能障害を考慮した慢性膵炎治療の手順.Clinician 2011; 601: ) 成瀬達. 診断基準の解説 4. 膵酵素. 膵臓 2009; 24: ) Ventrucci M, Gullo L, Daniele C, et al. Comparative study of serum pancreatic isoamylase, lipase, and trypsin-like immunoreactivity in pancreatic disease. Digestion 1983; 28: ( ケースコントロール ) 7) Nasrallah SM, Martin DM. Serum isoamylase as a test for pancreatic insufficiency. Gut 1983; 24: ( ケースコントロール ) 8) Dominguez-Munoz JE, Pieramino O, Buchler M, et al. Ratios of different serum pancreatic enzymes in the diagnosis and staging of chronic pancreatitis. Digestion 1993; 54: ( ケースコントロール ) 9) 若杉英之, 船越顕博, 井口東郎, ほか. 血清膵型アミラーゼ値と膵外分泌能の相関. 医療 1991; 45: ( ケースコントロール ) 38 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

63 Clinical Question 病期診断 ❹ 画像検査 画像検査は重症度 病期 治療効果の判定に有用か? CQ 2-4 画像検査は重症度 病期 治療効果の判定に有用か? ステートメント ERCP,EUS などの画像診断は慢性膵炎の重症度 病期 治療効果の判定に有用であり, 行うことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (90%) エビデンスレベル C 解説 ERCP による膵管像からの慢性膵炎の程度分類が試みられてきた 1, 2). 膵管像とセクレチン試験の一致率は 64 74% と報告されている 3, 4). 膵管像の変化には, 膵実質の線維化と炎症性変化による組織障害が反映されるが, 残存する膵腺房細胞などの量とは相関せず, 腹痛などの臨床症状とも一致しない. よって, 膵管像のみで慢性膵炎の重症度や病期を決定するのは困難であるが 5), 他の因子と総合して重症度判定に用いられている 6). 経時的に膵管像の変化をみると, 多くの慢性膵炎例で膵管の不整拡張や不整領域の進行が認められ, 膵管像の変化より慢性膵炎の進行度を知ることができる 7 9). また, 膵管像における初期の慢性膵炎の変化は, 限局した分枝膵管の不整拡張と考えられる 7 9). 一般的に膵管像の変化は膵外分泌障害がかなり進んでから認められるので, 膵管像から初期の慢性膵炎を診断するのは困難である 10). しかし,ERCP 後に切 11) 除された慢性膵炎例の検討では, ケンブリッジ分類で軽度以下の ERCP 所見を呈した 9 例中 6 例が軽度慢性膵炎の組織像であった 12) 慢性膵炎臨床診断基準 (CQ 1-4 表 1 参照 ) では, 早期慢性膵炎の ERCP 所見として ERCP 像で,3 本以上の分枝膵管に不規則な拡張が認められる と定義された 13). 一方,EUS では膵管だけでなく膵実質の微細な変化も捉えられるため, 初期の慢性膵炎の診断に有用な可能性がある 13 17) 慢性膵炎臨床診断基準 (CQ 1-4 表 1 参照 ) では,Rosemont 18) 分類を参考にして早期慢性膵炎の EUS 所見を, (1) 蜂巣状分葉エコー (lobularity,honeycombing type), (2) 不連続な分葉エコー (nonhoneycombing lobularity), (3) 点状高エコー (hyperechoic foci; non-shadowing), (4) 索状高エコー (stranding), (5) 囊胞 (cysts), (6) 分枝膵管拡張 (dilated side branches), (7) 膵管辺縁高エコー (hyperechoic MPD margin) の 7 項目のうち,(1) (4) のいずれかを含む 2 項目以上が認められることと定義した 13, 19, 20). 早期慢性膵炎の診断は, 3 反復する上腹部痛発作, 4 血中または尿中膵酵素値の異常, 5 膵外分泌障害, 61 日 80 g 以上 ( 純エタノール換算 ) の持続する飲酒歴 の 4 つの診断項目のうち 2 項目以上を満たすことが, 画像所見に加えて必要であり,ERCP や EUS の画像所見のみで早期慢性膵炎が診断されることはない 13). 診断項目 3または4の 1 項目のみ有し早期慢性膵 39 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

64 2. 病期診断 炎の画像所見を示す症例のうち, 他の疾患が否定されるものは早期慢性膵炎の疑いがあり, 注意深い経過観察が必要である 13). このような 疑い 症例も含めた早期慢性膵炎の実態については, 長期予後を追跡する必要がある 13). 慢性膵炎の内視鏡的治療の効果判定は, 膵石の除去と膵管拡張の軽減により画像上判断される. さらに, 治療後に腹痛などの再燃が生じた際には画像診断による検索が行われ, 必要に応じて内視鏡的再治療が行われる 21 23). 以上より,ERCP,EUS などの画像診断は慢性膵炎の重症度 病期 治療効果の判定に有用である. 文献 1) Kasugai T, Kuno N, Kizu M, et al. Endoscopic pancreatocholangio- graphy: Ⅱ. The pathological endoscopic pancreatocholangiogram. Gastroenterology 1972; 63: ) Sarner M, Cotton PB. Classification of pancreatitis. Gut 1984; 25: ) Lankisch PG, Seidensticker F, Otto J, et al. Secretin-pancreozymin test (SPT) and endoscopic retrograde cholangiopancreatography (ERCP): both are necessary for diagnosing or excluding chronic pancreatitis. Pancreas 1996; 12: ( ケースコントロール ) 4) 北川元二, 成瀬達, 石黒洋, ほか. 画像診断からみた膵外分泌機能. 胆膵の生理機能 1998; 14: ( ケースコントロール ) 5) 北川元二, 早川哲夫. 慢性膵炎の重症度と Stage 分類. 慢性膵炎 診断と治療のコンセンサス 消化器病セミナー 90, 小川道雄 ( 編 ), ヘルス出版, 東京,2003: p ) 早川哲夫, 北川元二, 成瀬達, ほか. 慢性膵炎の Stage 分類. 膵臓 2001; 16: ( ケースコントロール ) 7) Kasugai T, Tanehiro K, Kurimoto K, et al. Progression of radiological changes in relapsing and chronic pancreatitis. J Gastroenterol Hepatol 1989; 4: ( ケースコントロール ) 8) Kamisawa T, Matsukawa M, Yoshiike M, et al. Chronic pancreatitis progressing from segmental lesions. Hepatogastroenterology 2005; 52: ( ケースコントロール ) 9) Nagata A, Homma T, Tamai K, et al. A study of chronic pancreatitis by serial endoscopic pancreatography. Gastroenterology 1981; 81: ( ケースコントロール ) 10) Otsuki M. Chronic pancreatitis: the problems of diagnostic criteria. Pancreatology 2004; 4: ) Axon ATR, Classen M, Cotton PB, et al. Pancreatography in chronic pancreatitis: international definitions. Gut 1984; 25: ) Vitale GC, Davis BR, Zavaleta C, et al. Endoscopic retrograde cholangiopancreatography and histology correlation for chronic pancreatitis. Am Surg 2009; 75: ( ケースコントロール ) 13) 厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班, 日本膵臓学会, 日本消化器病学会. 慢性膵炎臨床診断基準 膵臓 2009; 24: ( ガイドライン ) 14) Kahl S, Glasbrenner B, Leodolter A, et al. EUS in the diagnosis of early chronic pancreatitis: a prospective follow-up study. Gastrointest Endosc 2002; 55: ( ケースコントロール ) 15) Sahai AV, Zimmerman M, Aabakken L, et al. Prospective assessment of the ability of endoscopic ultrasound to diagnose, exclude, or establish the sensitivity of chronic pancreatitis found by endoscopic retrograde cholangiopancreatography. Gastrointest Endosc 1998; 48: 18-25( ケースコントロール ) 16) Catalano MF, Lahoti S, Geenen JE, et al. Prospective evaluation of endoscopic ultrasonography, endoscopic retrograde pancreatography, and secretin test in the diagnosis of chronic pancreatitis. Gastrointest Endosc 1998; 11: 11-17( ケースコントロール ) 17) Uskudar O, Oguz D, Akdogan M, et al. Comparison of endoscopic retrograde cholangiopancreatography, endoscopic ultrasonography, and fecal elastase 1 in chronic pancreatitis and clinical correlation. Pancreas 2009; 38: ( ケースコントロール ) 18) Catalano MF, Sahai A, Levy M, et al. EUS-based criteria for the diagnosis of chronic pancreatitis: the Rosemont classification. Gastrointest Endosc 2009; 69: ) 宮川宏之, 岡村圭也, 長川達哉, ほか. 診断基準の解説 7. 早期慢性膵炎の画像所見. 膵臓 2009; 24: 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

65 4 画像検査 20) 入澤篤志. 診断基準の解説 8.Rosemont 分類と早期慢性膵炎の EUS 所見. 膵臓 2009; 24: ) Gabbrielli A, Mutignani M, Pandolfi M, et al. Endotherapy of early onset idiopathic chronic pancreatitis: results with long-term follow-up. Gastrointest Endosc 2002; 55: ( ケースコントロール ) 22) Rosch T, Daniel S, Scholz M, et al. Endoscopic treatment of chronic pancreatitis: a multicenter study of 1000 patients with long-term follow-up. Endoscopy 2002; 34: ( ケースコントロール ) 23) Costamagna G, Gabbrielli A, Mutignani M, et al. Extracorporeal shock wave lithotripsy of pancreatic stones in chronic pancreatitis: immediate and medium-term results. Gastrointest Endosc 1997; 46: ( ケースコントロール ) 41 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

66 Clinical Question 病期診断 ❺ 機能検査 ( 外分泌 ) 膵外分泌機能検査は重症度 病期 治療効果の判定に有用か? CQ 2-5 膵外分泌機能検査は重症度 病期 治療効果の判定に有用か? ステートメント 膵外分泌機能検査は慢性膵炎の重症度 病期判定に有用であり, 行うことを推奨する. 慢性膵炎の治療効果判定のために膵外分泌機能検査を行うことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (100%) 2 (100%) エビデンスレベル C C 解説 外分泌機能を把握する方法としては, セクレチンなど消化管ホルモン刺激後の膵液を採取 分析 ( 液量, 重炭酸塩濃度および膵酵素分泌量 ) する有管法により膵外分泌予備能を評価する直接法と, 非刺激下に生理的外分泌機能を間接的に評価する間接法とがある. このうち有管法は, 膵外分泌機能検査を正確に評価できるため, gold standard として慢性膵炎臨床診断基準の有力な診断ツールであった 1, 2) 3). 特にセクレチン試験は膵病理組織障害度や ERCP 4, 5) の形態学的変化とよく相関することから, 重症度, 病期判定に有用と考えられてきた. しかし, ヒトへの投与可能なセクレチン製剤の入手が困難となり, 現在では施行不可能となった. 一方, 無管法には, 便中キモトリプシン活性測定, 便中エラスターゼ 1 測定, 13 C-ジペプチド (benzoyl-l-tyrosyl-[1-13 C]alanine:Bz-Tyr-Ala) 呼気試験,BT-PABA 試験がある 6 8). 無管法は, 有管法に比して簡便で非侵襲的な検査法であるが, 単独では感度, 特異度において劣る. これらのうち現在, 保険診療適用下で実施可能な無管法による膵外分泌機能検査は BT-PABA 試験のみとなっている.BT-PABA 試験は, 腸管吸収や肝臓での抱合, 腎排泄, 種々の薬剤により影響を受けることに留意しなければならないが, 有管法での中等度以上の明らかな膵外分泌機能障害 ( 膵外分泌能からみた重症度評価 ) の検出には優れており 4, 6), 重症度, 病期判定に有用である. なお, 便中キモトリプシン活性測定と BT-PABA 試験との組み合わせで診断精度が上昇す 6) るとの報告や, 便中エラスターゼ 1 と糖尿病合併との組み合わせにより有管法と同程度の感 7) 度が得られるとする報告があり, 重症度や病期の判定への有用性が示唆されている. 現在利用可能な外分泌機能検査である BT-PABA 試験の感度, 特異度を考慮すれば, この検査単独で慢性膵炎の治療効果を判定するのは困難である. 42 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

67 5 機能検査 ( 外分泌 ) 文献 1) Lankisch PG, Lembcke B, Wemken G, et al. Functional reserve capacity of the exocrine pancreas. Digestion 1986; 35: ( 横断 ) 2) 日本膵臓学会慢性膵炎臨床診断基準 膵臓 2001; 16: ( ガイドライン ) 3) Hayakawa T, Kondo T, Shibata T. Relationship between pancreatic exocrine function and histological changes in chronic pancreatitis. Am J Gastroenterol 1992; 87: ( 横断 ) 4) Mee AS, Girdwood AH, Walker E, et al. Comparison of the oral (PABA) pancreatic function test, the secretin-pancreozymin test and endoscopic retrograde pancreatography in chronic alcohol induced pancreatitis. Gut 1985; 26: ( 横断 ) 5) Kitagawa M, Naruse S, Ishiguro H, et al. Evaluating exocrine function tests for diagnosing chronic pancreatitis. Pancreas 1997; 15: ( 横断 ) 6) Kataoka K, Yamane Y, Kato M, et al. Diagnosis of chronic pancreatitis using noninvasive tests of exocrine pancreatic function: comparison to duodenal intubation tests. Pancreas 1997; 15: ( ケースコントロール ) 7) 長崎裕. 便中エラスターゼ Ⅰ による膵外分泌機能の検討. 東北医学雑誌 2005; 117: 73-75( ケースコントロール ) 8) 石井敬基, 河野匡, 伊藤あすか, ほか. 13 C- ジペプチド (Benzoyl-L-Tyrosyl-[l- 13 C]-a; alanine) 呼気テストによる簡易膵外分泌機能検査法. 消化器科 2004; 39: ( ケースコントロール ) 43 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

68 Clinical Question 病期診断 ❺ 機能検査 ( 外分泌 ) 脂肪便の確認は重症度 病期 治療効果の判定に有用か? CQ 2-6 脂肪便の確認は重症度 病期 治療効果の判定に有用か? ステートメント 脂肪便の確認は慢性膵炎の重症度 病期 治療効果の判定に有用であり, 行うことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル C 解説 慢性膵炎の膵外分泌不全の症状には, 鼓腸 下痢 体重減少 脂肪便などがあるが, 脂肪便だけが膵外分泌不全に特異性が高い症状である 1). 脂肪便は慢性膵炎の非代償期に出現し, 便中脂肪量は摂取脂肪量によって程度が異なることが知られている. ただし,Crohn 病, 回腸切除後, など膵以外の消化器疾患においても脂肪便が出現することがある. これらの膵以外の消化器疾患おける脂肪便に比較して, 慢性膵炎における脂肪便は, 便中脂肪排泄量 (g) が同じでも脂肪便濃度 (%) が高いことを示す報告がみられる 2). 臨床的に確認できる脂肪便は, リパーゼ分泌量が正常の 10% を下回らないと出現しないとされるため, 外分泌障害の病期が進行すると出現する症状である 3). また, 臨床的に脂肪便が確認される以前に体重減少が起こるとされ, 慢性膵炎ではその成因によらず脂肪便の早期スクリーニングを推奨する報告がある 4). 脂肪便を有する慢性膵炎に対する消化酵素薬による治療では, 脂肪便は減少するが完全消失は得られないことが示唆されている 5). このため, 治療効果の判定には脂肪便の定量が有用であると考えられるが 6), 現状では脂肪便定量 (van de Kamer 法によるガスクロマトグラフィーを用いての脂肪便の定量など ) を実施できる施設は限定されている. 脂肪便定量に代わる検査法として, 呼気テスト 7) 8) 9), テスト食, 便中エラスターゼ 1 定量などが報告されているが, いずれも一般的とはいえない. 専門家による便の観察を述べた報告では, 便の肉眼所見と臭いの性状をみることで, 脂肪便への感度 89.3%, 特異度 91.1% と良好な相関関係がみられている ( 相関係数 0.843,p<0.01) 10, 11). 文献 1) Mossner J, Keim V. Pancreatic enzyme therapy. Dtsch Arztebl Int 2010; 108: ) Bo-Linn GW, Fordtran JS. Fecal fat concentration in patients with steatorrhea. Gastroenterology 1984; 87: 44 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

69 5 機能検査 ( 外分泌 ) ( ケースコントロール ) 3) Dobrilla G. Management of chronic pancreatitis: focus on enzyme replacement therapy. Int J Pancreatol 1989; 5 (Suppl): ) Dumasy V, Delhaye M, Cotton F, et al. Fat malabsorption screening in chronic pancreatitis. Am J Gastroenterol 2004; 99: ( コホート ) 5) Waljee AK, Dimagno MJ, Wu BU, et al. Systematic review: pancreatic enzyme treatment of malabsorption associated with chronic pancreatitis. Aliment Pharmacol Ther 2009; 29: ) Hammer HF. Pancreatic exocrine insufficiency: diagnostic evaluation and replacement therapy with pancreatic enzymes. Dig Dis 2010; 28: ) Benini L, Scuro LA, Menini E, et al. Is the 14C-triolein breath test useful in the assessment of malabsorption in clinical practice? Digestion 1984; 29: 91-97( コホート ) 8) Schuette SA, Janghorbani M, Cohen MB, et al. Effect of triglyceride structure on fecal excretion of 13Clabeled triglycerides. J Am Coll Nutr 2003; 22: ( コホート ) 9) Sonwalkar SA, Holbrook IB, Phillips I, et al. A prospective, comparative study of the para-aminobenzoic acid test and faecal elastase 1 in the assessment of exocrine pancreatic function. Aliment Pharmacol Ther 2003; 17: ( コホート ) 10) Nakamura T, Tando Y, Terada A, et al. Can pancreatic steatorrhea be diagnosed without chemical analysis? Int J Pancreatol 1997; 22: ( コホート ) 11) Rault A, SaCunha A, Klopfenstein D, et al. Pancreaticojejunal anastomosis is preferable to pancreaticogastrostomy after pancreaticoduodenectomy for longterm outcomes of pancreatic exocrine function. J Am Coll Surg 2005; 201: ( コホート ) 45 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

70 Clinical Question 病期診断 ❻ 機能検査 ( 内分泌 ) 各種耐糖能検査は重症度 病期 治療効果の判定に有用か? CQ 2-7 各種耐糖能検査は重症度 病期 治療効果の判定に有用か? ステートメント 慢性膵炎患者において, 耐糖能異常の有無の判定は臨床的に有用であり, 行うことを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (90%) エビデンスレベル C 解説 慢性膵炎は病期により代償期, 移行期, 非代償期に分類され, 一般に反復する腹痛で始まり徐々に膵内外分泌能が低下してくる疾患である. 慢性膵炎に伴う耐糖能異常は膵性糖尿病と呼ばれ, 慢性膵炎の進展の結果, 膵ランゲルハンス島の破壊や減少のため, 膵 β 細胞からのインスリン分泌低下により糖尿病が出現してくる. さらにインスリン分泌能の低下のみでなく, 膵 α 細胞からのグルカゴン分泌低下も伴ってくる 1). その結果, 通常の 1 型および 2 型糖尿病と異なった病態や臨床像を呈し, 高血糖と低血糖を繰り返すなどの血糖値の日内変動が大きく, さらに低血糖に陥りやすい. まず, 慢性膵炎患者において施行すべき耐糖能異常の有無の判定は, 経口糖負荷試験 (OGTT) が推奨される 1 3).OGTT は慢性膵炎の形態学的異常の程度と相関は認められないが 2), 外分泌機能検査であるセクレチン試験と相関を認める 1) と報告されている. 慢性膵炎に伴う耐糖能異常では, まず β 細胞の障害によりインスリンの分泌反応が低下してくる. 次いで α 細胞も障害を受けるため, グルカゴンの分泌反応も低下してくる 1). したがって, 慢性膵炎に伴う膵性糖尿病の重症度および病期は,β 細胞のインスリン分泌能, および α 細胞のグルカゴン分泌能をみることで評価できる. インスリン分泌能の評価には OGTT による血中インスリン値および尿中 C-ペプチド (CPR) 測定などが用いられる. さらに, グルカゴン試験は内因性インスリン分泌能を評価できる有用な検査であり, その際は ΔC-ペプチド (ΔCPR) を評価することが推奨される 4, 5) 4). 慢性膵炎の進行の程度と, 形態学的異常および外分泌機能障 5) 害の程度とも相関を認めると報告されており, グルカゴン試験による ΔCPR は慢性膵炎の重症度 病期 治療効果の判定に有用である. さらに, アルギニン負荷試験では α 細胞からのグルカゴン分泌能の評価が可能であり, 膵性糖尿病の重症度, 治療方法の選択に有用である 6, 7). 付記 : a) 膵性糖尿病膵性糖尿病は膵疾患の進展に伴って膵内分泌機能が低下して糖尿病が出現するもので, 原疾患である膵炎や膵癌の進展と密接な関係がある. 内分泌学的にみるとインスリン分泌反応の低 46 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

71 6 機能検査 ( 内分泌 ) 下のみでなく, グルカゴン分泌反応も原疾患の影響を受け低下するため, 通常の 1 型および 2 型糖尿病と異なった病態や臨床像を呈することが多く, 治療も異なってくる. 膵性糖尿病の診断基準は現在まで明確なものはないが, 日本糖尿病学会糖尿病診断基準検討委員会 糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告 ( 糖尿病 2010; 53: ) では, 分類 B. 他の疾患, 病態に伴う種々の糖尿病のなかの (1) 膵外分泌疾患 ( 膵炎, 膵外傷, 膵摘出術, 膵腫瘍, 膵ヘモクロマトーシス, その他 ) と位置づけられており, その他とは先天性形成不全, 自己免疫性膵炎などが含まれる. しかしながら, 厳格には膵疾患に伴って出現した糖尿病 ( 真の膵性糖尿病 ) のことであるが, 通常型糖尿病または境界型が先行していても, 明らかに膵疾患に伴って血糖コントロールが悪化したものも広義の膵性糖尿病と考えられる. b) グルカゴン試験グルカゴン試験 (glucagon infusion test) はグルカゴン 1 vial(1 mg) 静注の前,5 または 6 分, および 10 分後の C-ペプチドを測定し, 頂値と前値の差 (ΔCPR) でインスリン分泌能を評価する.ΔCPR 値が 4.0 mg/ml 以上を正常,1.5 ng/ml 以下をインスリン分泌能の著しい低下とする. c) アルギニン試験アルギニン試験 (arginine infusion test) は 10% アルギニン溶液 300 ml( 塩酸 L-アルギニン 30 g) を 30 分間で点滴静注し, 前,10 分,20 分,30 分,40 分,50 分,60 分および 90 分後の血中グルカゴン値を測定し, 頂値が 170 pg/ml 以下, または頂値と前値との差が 150 pg/ml 以下をグルカゴン分泌の低下とする. 文献 1) Koizumi M, Yoshida Y, Abe N, et al. Pancreatic diabetes in Japan. Pancreas 1998; 16: ) Maartense S, Ledeboer M, Masclee AA. Chronic pancreatitis: relation between function and morphology. Dig Liver Dis 2004; 36: 61-67( ケースコントロール ) 3) Cavallini G, Vaona B, Bovo P, et al. Diabetes in chronic alcoholic pancreatitis: role of residual beta cell function and insulin resistance. Dig Dis Sci 1993; 38: ( ケースコントロール ) 4) 内海真, 高砂子憲嗣, 武藤英二. 慢性膵炎における膵管障害と耐糖能異常 グルカゴン負荷試験の有用性. 膵臓 1989; 4: ( ケースコントロール ) 5) Cavallini G, Bovo P, Zamboni M, et al. Exocrine and endocrine functional reserve in the course of chronic pancreatitis as studied by maximal stimulation tests. Dig Dis Sci 1992; 37: 93-96( ケースコントロール ) 6) 石塚達夫, 安田圭吾, 梶田和男. 慢性膵炎における ERCP( 内視鏡的逆行性膵胆管造影 ) による膵管像の変化とインスリンおよびグルカゴン分泌能との関係. 糖尿病 1986; 29: ( ケースシリーズ ) 7) von Tirpitz C, Glasbrenner B, Mayer D, et al. Comparison of different endocrine stimulation tests in nondiabetic patients with chronic pancreatitis. Hepatogastroenterology 1998; 45: ( ケースコントロール ) 47 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

72 Clinical Question 病期診断 ❼ スコア化 スコア化は重症度 病期 治療効果の判定に有用か? CQ 2-8 スコア化は重症度 病期 治療効果の判定に有用か? ステートメント 慢性膵炎の重症度 病期 治療効果の判定に適した標準的スコアリングシステムは確立されていない. 解説 慢性膵炎の重症度 病期をスコア化する標準的スコアリングシステムに関する科学的根拠の高い報告はなく, スコア化は確立していない 1). また, スコア化による治療効果の判定が可能かどうかを評価するのに適切な科学的根拠のある報告もない. いくつかのスコア化試案のなかで, 慢性膵炎患者を 5 つの指標 [ERCP, 脂肪刺激後の pancreatic polypeptide(pp) 反応,BT-PABA 試験,72 時間便中脂肪量,OGTT] で評価すると,PP 反応低下が慢性膵炎の重症度, すなわち軽症, 中等症, 重症および膵内外分泌機能の障害程度と最もよく相関するという報告がある 2). また,ERCP/MRCP/CT, 腹痛, 鎮痛薬, 膵内外分泌機能, 膵周囲合併症の程度から評価 分類 (Manchester 分類 ) された軽症, 中等症, 終末期の慢性膵炎患者の経年的変化を 年まで追跡した研究では, 慢性膵炎の進展過程を評価するのに有用性が高く, 慢性膵炎診療の経過観察に適しているという報告がある 3). 近年では, 過去の診断基準, 分類法を新たな知見を加味して改変し, 危険因子分類, 診断基準および病期, 重症度 ( スコア化 ) を総合的に評価するシステムが提案されている 4). このうち重症度スコアは, 疼痛, 鎮痛薬の使用, 外科的治療の有無, 外分泌機能, 内分泌機能, 膵形態, 合併症の 7 項目につき評価するもので, 少数例を提示しスコアリングが臨床経過をよく反映していると報告している. 日本における慢性膵炎確診患者 278 例の検討から作成された重症度分類 ( 表 1) では, 日常生活の障害度 (PS) と BMI の低さが重症度スコアと相関することが報告されている 5). 従来から慢性膵炎は進行性で非可逆性と考えられてきたが, 治療法の進歩により可逆的な症例もあり, 進展阻止と治療効果判定を目的としたスコア化の実現が望まれる. 文献 1) Ammann RW. A Clinically Based Classification System for Alcoholic Chronic Pancreatitis: Summary of an International Workshop on Chronic Pancreatitis. Pancreas 1997; 14: ) Nealon WH, Townsend CM Jr, Thompson JC. The time course of beta cell dysfunction in chronic ethanolinduced pancreatitis: a prospective analysis. Surgery 1988; 104: ( 非ランダム ) 48 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

73 7 スコア化 3) Bagul A, Siriwardena AK. Evaluation of the Manchester classification system for chronic pancreatitis. JOP 2006; 7: ( コホート ) 4) Schneider A, Löhr JM, Singer MV. The M-ANNHEIM classification of chronic pancreatitis: introduction of a unifying classification system based on a review of previous classifications of the disease. J Gastroenterol 2007; 42: ) 早川哲夫, 北川元二, 成瀬達, ほか. 慢性膵炎の Stage 分類. 膵臓 2001; 16: ( 横断 ) 49 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

74 3. 治療 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

75 Clinical Question 治療 ❶ 治療方針 成因, 活動性 ( 再燃と緩解 ), 重症度, 病期は慢性膵炎の治療に重要か? CQ 3-1 成因, 活動性 ( 再燃と緩解 ), 重症度, 病期は慢性膵炎の治療に重要か? ステートメント 成因, 活動性, 重症度, 病期を考慮した治療を行うことを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (100%) エビデンスレベル C 解説 成因, 活動性, 重症度, 病期を考慮した慢性膵炎の治療研究はないが, 日本の専門家はこれらを考慮した治療を推奨している 1 6). 一方, 欧米では腹痛の治療, 膵外分泌機能不全の治療, 糖尿病の治療, 合併症の治療など, 問題ごとに扱われている. ここでは成因, 活動性, 重症度および病期の項目ごとにエビデンスの有無を述べる. 1) 成因を考慮した治療成因に基づく慢性膵炎の分類としては,TIGAR-O 分類 ( 表 1), すなわち Toxic-metabolic( アルコール, 喫煙, 高カルシウム血症, 脂質異常症など毒物 代謝産物 ),Idiopathic( 特発性 ), Genetic( 遺伝性 ),Autoimmune( 自己免疫性 ),Recurrent and severe acute pancreatitis( 再発性膵炎および重症急性膵炎 ),Obstructive( 閉塞性 ) が有名である 7). 日本では, 慢性膵炎をアルコール性と非アルコール性に分類することが提唱されている. アルコール性慢性膵炎では特発性慢性膵炎に比べ発症から確診までの平均期間が短いこと, 腹痛, 膵管像の変化, 膵外分泌機能不全および糖尿病の進展が早いことが知られている 8 10). 喫煙は慢性膵炎の成因にかかわらず膵石および糖尿病の進行を早める 11, 12). これらの疫学データは禁酒および禁煙が慢性膵炎の進行を抑制できる可能性を示唆している. 短期的には, 禁酒により腹痛や膵外分泌機能が改善する 9, 10, 13, 14) という報告と腹痛や膵管像には関係ないという報告がある 8, 15). しかし, 長期的には飲酒は生命予後に関与するので (CQ 4-4 参照 ), 禁酒の指導は治療のうえで重要である (CQ 3-3 参照 ). また, 喫煙は成因にかかわらず慢性膵炎の生命予後を悪くする因子なので, 禁煙も治療のうえで必要である. 2) 活動性 ( 再燃と緩解 ) を考慮した治療慢性膵炎の初期には急性膵炎の反復が主な病態であり, 急性膵炎の治療が中心となる. Ammann らによれば, 急性膵炎発作の間は数ヵ月から数年にわたる腹痛のない時期 ( 緩解期 ) がある患者群 (A 型と呼ばれる ) と腹痛が毎日もしくは 2 ヵ月ぐらい持続し, 繰り返す入院また 52 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

76 1 治療方針 は外科手術が必要な患者 (B 型の腹痛 ) が存在する 15).B 型の腹痛は発症初期では仮性囊胞や膵管内圧亢進を伴い, ドレナージ術が奏効するとされている. 緩解期の治療および膵炎発作の予防法に関する研究は行われていない. 緩解期には, 飲酒制限, 喫煙制限 (CQ 3-3,3-5 参照 ), 食事の脂肪制限 (CQ 3-4 参照 ) など再燃の予防が期待できる生活習慣の指導が基本とされている. 3) 重症度を考慮した治療 慢性膵炎の重症度は腹痛の程度, 膵内外分泌機能障害の程度ならびに外科的治療を要する合 53 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

77 3. 治療 併症の有無により判断できる. しかし, 腹痛と膵の画像所見や膵機能が必ずしも一致するわけ 16) ではないので, 総合的に判断することになる. 厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班の提案に従えば, 重症度は膵外分泌機能の低下, 膵管像の異常, 耐糖能の低下, 腹痛, 飲酒および合併症の有無により点数をつけ, 軽症 :0 3( 要観察 ), 中等症 :4 7( 外来治療 ), 重症 Ⅰ:8 11 ( 外来治療 + 時々入院 ), 重症 Ⅱ:12 15( 外来治療 + 時々入院 ), 最重症 :16 20( 入院加療 ) の 5 段階に分けられる (CQ 2-8 参照 ). この重症度分類は患者の performance status(ps) で評価される日常生活の障害度および body mass index(bmi) で評価される栄養障害の程度と相関していたと報告されている 17) 18). この他にも膵管像および超音波または CT 像による重症度分類と膵 19) 外分泌機能の比較研究がある. 治療の選択もしくは評価に用いられた報告はないが, 麻薬の使用や外科的治療などの選択に腹痛の重症度を考慮すべきとされている (CQ 3-10 参照 ). 4) 病期を考慮した治療日本では, 慢性膵炎の病期は, 代償期, 移行期, 非代償期に分類され, 各病期の治療指針が定められている 20). しかし, 国際的には初期 (early stage), 後期 (late stage) と記載されることが多く, 病期による治療指針はない. 腹痛の治療, 消化吸収障害の治療, 糖尿病の治療, 合併症の治療など問題ごとに扱われている 21 23). 初期 ( 代償期 ) の慢性膵炎では, 反復する急性膵炎と腹痛の治療が中心である. 膵外分泌機能が保たれるこの時期に, 膵石 (CQ 3-12,3-13 参照 ) や仮性囊胞などの合併症 (CQ 参照 ) も好発する. 腹痛の自然経過に関しては, 長期的に 15) は自然消失する という報告が有名である. 日本でも腹痛の自然消失が確認されているが 9, 10), 14) 約 10 年で腹痛が消失するのは半数に過ぎないという報告もあり, 病期により判断を下せない場合もある. 進行した慢性膵炎 ( 非代償期 ) では, 消化吸収障害に対して消化酵素薬が必要となる (CQ 3-22 参照 ). また, 膵内分泌 β 細胞の減少に起因する膵性糖尿病の治療 (CQ 参照 ) も必要となる. この時期の栄養状態と糖尿病の管理の善し悪しが生命予後を左右することが知られている (CQ 4-4 参照 ). 食事療法も病期により異なる 24). 代償期では, 膵を刺激しないように, 高脂肪食と香辛料を避け, 炭水化物を多めに接種することが推奨されている. 非代償期では, 食事回数を増やすことにより総摂取カロリーを増やすこと, 脂溶性ビタミン, ビタミン B 12, 葉酸, 微量元素, 抗酸化物質の摂取が推奨される. 文献 1) 中村光男, 長谷川範幸, 小川吉司, ほか. 膵炎 膵癌 膵石 慢性膵炎 病期からみた治療方針. 綜合臨床 1999; 48: ) 早川哲夫.EBM に基く臨床データブック 疾患データ 肝, 胆, 膵 慢性膵炎. 臨床医 2001; 27: ) 片岡慶正, 阪上順一, 十亀義生, ほか. 消化器病と栄養学 膵疾患栄養管理.G.I.Research 2002; 10: ) 下瀬川徹. 慢性膵炎 診断と治療のコンセンサス 慢性膵炎の治療方針. 消化器病セミナー 2003; 90: ) 岡崎和一. 膵疾患 診断と治療の進歩 慢性膵炎 治療と予後. 日本内科学会雑誌 2004; 93: ) 大槻眞. 内科疾患の診断基準病型分類 重症度 肝 胆 膵 慢性膵炎の診断基準 病型分類 重症度. 内科 2005; 95: ) Etemad B, Whitcomb DC. Chronic pancreatitis: diagnosis, classification, and new genetic developments. Gastroenterology 2001; 120: 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

78 1 治療方針 8) Nagata A, Homma T, Tamai K, et al. A study of chronic pancreatitis by serial endoscopic pancreatography. Gastroenterology 1981; 81: ( ケースコントロール ) 9) Miyake H, Harada H, Ochi K, et al. Prognosis and prognostic factors in chronic pancreatitis. Dig Dis Sci 1989; 34: ( ケースコントロール ) 10) Hayakawa T, Kondo T, Shibata T, et al. Chronic alcoholism and evolution of pain and prognosis in chronic pancreatitis. Dig Dis Sci 1989; 34: 33-38( ケースコントロール ) 11) Imoto M, DiMagno EP. Cigarette smoking increases the risk of pancreatic calcification in late-onset but not early-onset idiopathic chronic pancreatitis. Pancreas 2000; 21: ( コホート ) 12) Maisonneuve P, Lowenfels AB, Müllhaupt B, et al. Cigarette smoking accelerates progression of alcoholic chronic pancreatitis. Gut 2005; 54: ( コホート ) 13) Gullo L, Barbara L, Labo G. Effect of cessation of alcohol use on the course of pancreatic dysfunction in alcoholic pancreatitis. Gastroenterology 1988; 95: ( コホート ) 14) Lankisch PG. Natural course of chronic pancreatitis. Pancreatology 2001; 1: ) Ammann RW, Muellhaupt B. The natural history of pain in alcoholic chronic pancreatitis. Gastroenterology 1999; 116: ( コホート ) 16) 早川哲夫, 小川通雄, 松野正紀, ほか. 慢性膵炎の重症度分類の提案. 膵臓 1999; 14: ) 早川哲夫, 北川元二, 成瀬達, ほか. 慢性膵炎の Stage 分類. 膵臓 2002; 16: ( 横断 ) 18) Axon AT, Classen M, Cotton PB, et al. Pancreatography in chronic pancreatitis: international definitions. Gut 1984; 25: ( ケースシリーズ ) 19) Bozkurt T, Braun U, Leferink S, et al. Comparison of pancreatic morphology and exocrine functional impairment in patients with chronic pancreatitis. Gut 1994; 35: ( 横断 ) 20) 早川哲夫, 真辺忠雄, 竹田喜信, ほか. 慢性膵炎の治療指針の改訂について. 厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班昭和 62 年度研究報告書,1988: p23-27( ガイドライン ) 21) Gupta V, Toskes PP. Diagnosis and management of chronic pancreatitis. Postgrad Med J 2005; 81: ) Pfutzer RH, Schneider A. Treatment of alcoholic pancreatitis. Dig Dis 2005; 23: ) Ammann RW. Diagnosis and management of chronic pancreatitis: current knowledge. Swiss Med Wkly 2006; 136: ) 丹藤雄介, 今昭人, 近澤真司, ほか. 石灰化慢性膵炎患者の食事療法 薬物療法. 胆と膵 2009; 30: 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

79 Clinical Question 治療 ❶ 治療方針 生活歴の聴取は慢性膵炎の治療に有用か?( アルコール性と非アルコール性で違いはあるか?) CQ 3-2 生活歴の聴取は慢性膵炎の治療に有用か?( アルコール性と非アルコール性で違いはあるか?) ステートメント 治療方針を決めるために飲酒歴と喫煙歴の聴取は重要であり, 行うことを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (100%) エビデンスレベル B 解説 慢性膵炎の成因としては飲酒によるものが最も多く,35 年以上飲酒継続の慢性膵炎発症の危険率は, オッズ比 (OR)4.0,95%CI と報告されている 1). システマティックレビューによるメタアナリシスでも, アルコール摂取量が 36 g/ 日では慢性膵炎の相対危険度 (relative risk:rr) は 1.2(95%CI ) であるのに対して,96 g/ 日では 4.2(95%CI ) とアルコール摂取量と慢性膵炎発症リスクには明らかな因果関係があることが示されている 2). 喫煙に関しては, アルコール性膵炎では喫煙者群は非喫煙者群と比べ,OR 7.8(95%CI ) であり,1 日喫煙量の検討では,20 本未満の喫煙で OR 14.7(95%CI ),20 39 本で OR 5.5(95%CI ),40 本以上で,OR 12.2(95%CI ) との報告がある 3). また, 喫煙群での膵石灰化の危険率はハザード比 (HR)4.9(95%CI ) であった 4). 一方, 非アルコール性慢性膵炎 ( 特発性慢性膵炎 ) は, 膵炎の既往のないコントロール群に比較して有意に喫煙者の割合が高く (58.6% vs. 49.7%,p<0.05), 多変量解析でも喫煙は特発性慢性膵炎発症の独立した危険因子であることが報告されている 5). また, 喫煙による膵石灰化の危険率は HR 2.93(95%CI ) 6) で,35 歳以降発症の特発性慢性膵炎では喫煙群は, 非喫煙群より早く, 高頻度に膵石灰化をきたす (83% vs. 13%,p<0.001) 報告がある 7). 以上より喫煙が飲酒とは独立した慢性膵炎の危険因子であることが示唆される. 一方,ESWL を含む内視鏡的治療および外科手術後の飲酒や喫煙の継続は, 治療後の腹痛の再燃や糖尿病の悪化を促進し,QOL を低下させる 8 10). また, 慢性膵炎に膵癌が高頻度に発症するとの報告が認められ, 慢性膵炎は膵癌の危険因子と考えられている 11 13). したがって, 禁酒 禁煙による生活習慣の改善が慢性膵炎の発症危険率の減少とともに, 治療後に改善した QOL の維持および膵癌予防に寄与するという観点から, 飲酒歴と喫煙歴の聴取は極めて重要である. 慢性膵炎における適正カロリーと食事内容に関しては,CQ 3-21,CQ 3-25 を参照, 脂肪制限食については,CQ 3-4を参照されたい. 56 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

80 1 治療方針 文献 1) Lin Y, Tamakoshi A, Hayakawa T, et al; Research Committee on Intractable Pancreatic Diseases. Associations of alcohol drinking and nutrient intake with chronic pancreatitis: findings from a case-control study in Japan. Am J Gastroenterol 2001; 96: ( ケースコントロール ) 2) Irving HM, Samokhvalov AV, Rehm J. Alcohol as a risk factor for pancreatitis: a systematic review and meta-analysis. JOP 2009; 10: ( メタ ) 3) Lin Y, Tamakoshi A, Hayakawa T, et al. Cigarette smoking as a risk factor for chronic pancreatitis: a casecontrol study in Japan: Research Committee on Intractable. Pancreas 2000; 21: ( ケースコントロール ) 4) Maisonneuve P, Lowenfels AB, Mullhaupt B, et al. Cigarette smoking accelerates progression of alcoholic chronic pancreatitis. Gut 2005; 54: ( ケースコントロール ) 5) Coté GA, Yadav D, Slivka A, et al. Alcohol and smoking as risk factors in an epidemiology study of patients with chronic pancreatitis. Clin Gastroenterol Hepatol 2011; 9: ( ケースコントロール ) 6) Maisonneuve P, Frulloni L, Mullhaupt B, et al. Impact of smoking on patients with idiopathic chronic pancreatitis. Pancreas 2006; 33: ( ケースコントロール ) 7) Imoto M, DiMagno EP. Cigarette smoking increases the risk of pancreatic calcification in late-onset but not early-onset idiopathic chronic pancreatitis. Pancreas 2000; 21: ( ケースコントロール ) 8) Seven G, Schreiner MA, Ross AS, et al. Long-term outcomes associated with pancreatic extracorporeal shock wave lithotripsy for chronic calcific pancreatitis. Gastrointest Endosc 2012; 75: ( ケースコントロール ) 9) Wang W, Guo Y, Liao Z, et al. Occurrence of and risk factors for diabetes mellitus in Chinese patients with chronic pancreatitis. Pancreas 2011; 40: ( ケースコントロール ) 10) van Loo ES, van Baal MC, Gooszen HG, et al. Long-term quality of life after surgery for chronic pancreatitis. Br J Surg 2010; 97: ( ケースコントロール ) 11) Lowenfels AB, Maisonneuve P, Cavallini G, et al. Pancreatitis and the risk of pancreatic cancer: International Pancreatitis Study Group. N Engl J Med 1993; 328: ( ケースコントロール ) 12) Talamini G, Falconi M, Bassi C, et al. Incidence of cancer in the course of chronic pancreatitis. Am J Gastroenterol 1999; 94: ( ケースコントロール ) 13) Otsuki M, Tashiro M. Chronic pancreatitis and pancreatic cancer, lifestyle-related diseases. Intern Med 2007; 46: 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

81 Clinical Question 3-3 禁酒 断酒指導は慢性膵炎の治療に有用か? 3. 治療 ❷ 生活指導 CQ 3-3 禁酒 断酒指導は慢性膵炎の治療に有用か? ステートメント アルコール性慢性膵炎は断酒により腹痛の軽減, 合併症の抑制および生命予後の改善が期待できる. アルコール性慢性膵炎患者には断酒を指導することを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (100%) エビデンスレベル B 解説 飲酒は慢性膵炎発症の危険因子と考えられるが 1), 病態の進行を促進する重要な因子でもある. アルコール性慢性膵炎と非アルコール性慢性膵炎の臨床経過と予後を比較検討したコホート研究によると, アルコール性では慢性膵炎の発症年齢がより若年であり, 進行しても腹痛の軽減は得られにくく, 膵石灰化が早く出現し, 石灰化や糖尿病合併の頻度が高い 2, 3). 日本の膵性糖尿病の全国調査においても, 膵性糖尿病患者に飲酒を継続しているアルコール性慢性膵炎患者が多く, 報告された 7 例の死亡患者全員がアルコール性慢性膵炎であった 4). 非アルコール性慢性膵炎患者と比較してアルコール性の患者では生存率が低く, 死亡年齢が若く, 飲酒継続例では特に生活の質 (QOL) が悪いと報告されている 2, 3, 5). アルコール性慢性膵炎患者が断酒をした場合の効果を観察したコホート研究によると, 断酒成功例では腹痛消失率が高く 2, 3, 5 7), 糖尿病合併率が低く 3, 6), 死亡率が低下する 2, 7). また, 飲酒継続例では失業率が高いことが示されている 5). 膵外分泌機能については, 断酒により機能障害の進行を抑制するとする報告があるが 5, 6), 差がないとする報告もあり評価は定まっていない 3). いずれにせよ, 断酒を行うことにより症状軽減効果, 糖尿病発症の抑制効果および生命予後改善効果が期待できることで, これらのコホート研究の結果は一致している. アルコール性慢性膵炎患者には, アルコール依存症と同様に永続的な禁酒を意味する 断酒, を指導することが原則である. 実際に, アルコール性慢性膵炎はアルコール依存症を背景としている場合が多い. アルコール依存症の診断に関しては, 簡易型診断基準として,1 自己抑制のつかない飲み方をする. たとえば飲酒量や, 飲み方をコントロールできない異常な飲み方をする ( ブラックアウトや隠れ飲み, 昼酒, 連続飲酒などはアルコール依存症の進展課程でみられる, 偏った飲酒行動として捉えることができる ).2 酒の飲み過ぎによる病気がある. また酒がないとイライラする, 眠れない, 手が震えるなど離脱症状がある.3 酒による社会的な問題 ( 家庭不和, 無断欠勤, 経済的困窮, 飲酒運転など ) がある, 家族や周りの人が酒をやめさせたいと思っている. これら 3 項目すべてに合致するものとして診断される 8). 58 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

82 2 生活指導 図 1 断酒指導フローチャート 慢性膵炎患者では断酒指導を徹底的に行うと同時に, 経過観察中に再度飲酒がみられた場合には, アルコール依存症の専門治療施設を受診させることをあらかじめ家族同伴のもとで約束させておくことが重要とされる. 具体的には, 飲酒量, 飲酒期間からアルコール性慢性膵炎が疑われた場合, 家族同伴のもとで患者に 4 週間の断酒を指示し,2 週ごとに外来を受診させる. 断酒の継続状態と血清膵酵素や肝機能検査を行い, 症状や検査値の異常が改善された場合にアルコール性と診断する. このような患者には, 慢性膵炎が飲酒によること, また, アルコール依存症の可能性についてもよく説明し, 原則として完全断酒を勧める. 完全断酒に対して抵抗が強く不可能な場合には, 一度だけ節酒の機会を与えることを考慮してもよく, 節酒できない場合にはアルコール依存者の専門施設への受診, 入院を説得するとしている. 専門施設への紹介 受診に際しては, 具体的な治療法について患者によく説明することも大切である ( 図 1) 8). 59 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

83 3. 治療 文献 1) Lin Y, Tamakoshi A, Hayakawa T, et al; Research Committee on Intractable Pancreatic Disease. Associations of alcohol drinking and nutrient intake with chronic pancreatitis: findings from a case-control study in Japan. Am J Gastroenterol 2001; 96: ( ケースコントロール ) 2) Hayakawa T, Kondo T, Shibata T, et al. Chronic alcoholism and evolution of pain and prognosis in chronic pancreatitis. Digestion 1993; 54: ( コホート ) 3) Lankisch PG, Lohr-Happe A, Otto J, et al. Natural course in chronic pancreatitis. Digestion 1993; 54: ( コホート ) 4) Ito T, Otsuki M, Igarashi H, et al. Epidemiological study of pancreatic diabetes in Japan in 2005: a nationwide study. Pancreas 2010; 39: ( 横断 ) 5) Miyake H, Harada H, Kunichika K, et al. Clinical course and prognosis of chronic pancreatitis. Pancreas 1987; 2: ( コホート ) 6) Gullo L, Barbara L, Labo G. Effect of cessation of alcohol use on the course of pancreatic dysfunction in alcoholic pancreatitis. Gastroenterology 1988; 95: ( コホート ) 7) Strum WB. Abstinence in alcoholic chronic pancreatitis: effect on pain and outcome. J Clin Gastroenterol 1995; 20: 37-41( コホート ) 8) 下瀬川徹, 伊藤鉄英, 中村太一, ほか ; 厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業難治性膵疾患に関する調査研究班. 慢性膵炎の断酒 生活指導指針. 膵臓 2010; 25: ( ガイドライン ) 60 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

84 Clinical Question 治療 ❷ 生活指導 食事脂肪制限は慢性膵炎の腹痛に有用か? CQ 3-4 食事脂肪制限は慢性膵炎の腹痛に有用か? ステートメント 有痛時や腹痛発作を繰り返す慢性膵炎患者では脂肪制限が食事療法の基本と考えられる. 腹痛対策として食事脂肪の制限を指導することを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル C 解説 慢性膵炎における腹痛に対して脂肪制限が有効であるかどうかについて, エビデンスレベルの高い報告はない. しかし, 脂肪は膵外分泌刺激作用が最も強い栄養素であり, 実地診療の場での高脂肪食後の膵炎発作誘発の事象から, 慢性膵炎急性再燃対策や代償期にある慢性膵炎患者の腹痛軽減対策として, 食事中の脂肪制限が患者指導のうえで基本とされている. 有痛性の慢性膵炎患者に対して中鎖脂肪酸 (MCT) を主成分とした栄養剤を 10 週間投与し, 腹痛緩和効果を検討した報告では, 疼痛スコアで評価した食後腹痛の軽減効果が明らかであったという報告がある 1). しかし, 慢性膵炎に伴う腹痛は個人差も大きく, 各種鎮痛薬や内視鏡的あるいは外科的処置を必要とする症例もあり, そのコントロールは必ずしも容易ではない 2). したがって, 脂肪制限は腹痛対策や急性再燃阻止対策のひとつとして推奨される 3) が, その効果が明らかでない症例に対しての長期にわたる過度な脂肪制限は必須脂肪酸欠乏や微量元素を含めた免疫栄養の観点からも好ましくない 4). 低栄養状態の慢性膵炎患者を対象として, 患者ごとに算出した必要摂取カロリーを目標に, 腸溶性膵酵素製剤の投与下に食事療法を行った RCT が報告されている. 専門の栄養士によるカウンセリングを行い家庭食で食事療法を行った群 ( 炭水化物 60%, 蛋白質 10 15%, 脂質 25 30%) と市販の栄養剤 ( 炭水化物 16%, 蛋白質 33%, 脂質 33% を含み, 脂質の 25% は MCT) でカロリー不足分を補って食事療法を行った群とを比較した場合,3 ヵ月後の評価で両群とも栄養状態や疼痛スコアなどが改善し, 両群で有意な差を認めなかった. 専門栄養士によるカウンセリングを行って, 少量ずつの食事を頻回に摂取することが重要であり, 栄養剤の使用は必ずしも必要としないと結論づけているが, 本研究では脂肪制限を行っておらず, 必ずしも脂肪制限が必須ではない可能性が示唆されている 5). なお, 近年では脂肪をほとんど含まない成分栄養剤の投与により腹痛の改善がみられたとの報告もあり, 慢性膵炎患者の腹痛に対する治療手段のひとつとなりうることが示されている 61 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

85 3. 治療 (Pancreas 2014; 43: a) [ 検索期間外文献 ]). 脂肪摂取量の目安については,CQ 3-21 を参照されたい. 文献 1) Shea JC, Bishop MD, Parker EM, et al. An enteral therapy containing medium-chain triglycerides and hydrolyzed peptides reduces postprandial pain associated with chronic pancreatitis. Pancreatology 2003; 3: 36-40( ケースシリーズ ) 2) Giger U, Stanga Z, DeLegge MH. Management of chronic pancreatitis. Nutr Clin Pract 2004; 19: ) Pitchumoni CS. Chronic pancreatitis: pathogenesis and management of pain. J Clin Gastroenterol 1998; 27: ) 幣憲一郎. 慢性膵炎の栄養管理. 栄養 - 評価と治療 2005; 22: ) Singh S, Midha S, Singh N, et al. Dietary counseling versus dietary supplements for malnutrition in chronic pancreatitis: a randomized controlled trial. Clin Gastroenterol Hepatol 2008; 6: ( メタ ) 検索期間外文献 a) Kataoka K, Sakagami J, Hirota M, et al. Effects of oral ingestion of the elemental diet in patients with painful chronic pancreatitis in the real-life setting in Japan. Pancreas 2014; 43: ( ケースシリーズ ) 62 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

86 Clinical Question 治療 ❷ 生活指導 禁煙は慢性膵炎の治療に有用か? CQ 3-5 禁煙は慢性膵炎の治療に有用か? ステートメント 喫煙は慢性膵炎の発症リスクと膵石灰化のリスクを高める. 禁煙は慢性膵炎の進行を抑制する可能性があり, 禁煙指導を行うことを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (100%) エビデンスレベル C 解説 ケースコントロール 10 報, コホート研究 2 報からなる慢性膵炎 1,705 例からなるメタアナリシスでは, 喫煙は慢性膵炎のリスク因子 [RR 2.8(95%CI )( 全体 ),RR 2.5(95%CI )( 飲酒補正後 )] であると報告されている 1). また, 同報告では禁煙により, 慢性膵炎の発症リスクが低下すると報告されている 1). 喫煙者では非喫煙者に比して, アルコール性 特発性の慢性膵炎に対する膵石灰化発症リスクが上昇するという報告がある 2, 3). イタリアの膵石灰化がない慢性膵炎 360 例の追跡調査 ( 平均観察期間 19.0 年 ) では, 非喫煙者 既喫煙者は喫煙者に比して有意に膵石灰化の発症が低いことを示した. また, 喫煙の程度によって膵石灰化の発症リスクは変わらなかったので, 膵石灰化リスクを低下させるためには完全な禁煙が必要とする結果を示している 4). ニコチンの膵に対する影響を調べた基礎的データはほとんどみられない. また, 禁煙により慢性膵炎の進行を遅らせる直接的な証明をした報告はない. しかし, 喫煙者の慢性膵炎は早期発症であること, 膵石灰化や糖尿病が喫煙者ではより早期に発症することから, 慢性膵炎の治療に禁煙が必要であると考えられている 5). ESWL や内視鏡的治療を行った慢性膵炎症例においては, 禁煙が腹痛コントロールや長期予後改善に有効であったと報告されている 6, 7). また, 禁煙は喫煙関連発癌や心血管イベントのリスク低下をもたらすという慢性膵炎治療以外の健康利得がある. 文献 1) Andriulli A, Botteri E, Almasio PL, et al. Smoking as a cofactor for causation of chronic pancreatitis: a meta-analysis. Pancreas 2010; 39: ( メタ ) 63 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

87 3. 治療 2) Cavallini G, Talamini G, Vaona B, et al. Effect of alcohol and smoking on pancreatic lithogenesis in the course of chronic pancreatitis. Pancreas 1994; 9: 42-46( コホート ) 3) Imoto M, DiMagno EP. Cigarette smoking increases the risk of pancreatic calcification in late-onset but not early-onset idiopathic chronic pancreatitis. Pancreas 2000; 21: ( コホート ) 4) Talamini G, Bassi C, Falconi M, et al. Smoking cessation at the clinical onset of chronic pancreatitis and risk of pancreatic calcifications. Pancreas 2007; 35: ( コホート ) 5) Jupp J, Fine D, Johnson CD. The epidemiology and socioeconomic impact of chronic pancreatitis. Best Pract Res Clin Gastroenterol 2010; 24: ) Delhaye M, Arvanitakis M, Verset G, et al. Long-term clinical outcome after endoscopic pancreatic ductal drainage for patients with painful chronic pancreatitis. Clin Gastroenterol Hepatol 2004; 2: ( ケースコントロール ) 7) Seven G, Schreiner MA, Ross AS, et al. Long-term outcomes associated with pancreatic extracorporeal shock wave lithotripsy for chronic calcific pancreatitis. Gastrointest Endosc 2012; 75: , e1( 横断 ) 64 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

88 Clinical Question 治療 ❸ 疼痛対策 鎮痛 鎮痙薬は慢性膵炎の腹痛に有効か? CQ 3-6 鎮痛 鎮痙薬は慢性膵炎の腹痛に有効か? ステートメント 慢性膵炎の腹痛には, 非ステロイド抗炎症薬 (NSAIDs) の内服または坐薬を用いることを提案する. NSAIDs が無効な場合には, 弱オピオイドの使用を考慮することを提案する (CQ 3-10 参照 ). 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) 2 (100%) エビデンスレベル C C 解説 慢性膵炎の頑固な腹痛には NSAIDs の内服または坐薬の頓用が一般的に有効とされている. この他,Oddi 筋の緊張を除くために catechol-o-methyl transferase(comt) 阻害薬などの鎮痙薬, 迷走神経を介する膵外分泌刺激を抑制するために抗コリン薬, コレシストキニン (CCK) を介する膵外分泌を抑制するために消化酵素薬 (CQ 3-7 参照 ), 膵炎による痛みを抑制するために蛋白分解酵素阻害薬 (CQ 3-8 参照 ) が用いられる ( 巻頭フローチャート 2,3 参照 ). 麻薬および中枢性鎮痛薬であるペンタゾシンは依存症が生じやすいので高度の腹痛時に限り最小限の使用とされる 1). 米国消化器病学会の慢性膵炎の腹痛治療に関するガイドライン 2) ( 図 1) では, 具体的な対策が段階的に示されている. また, ドイツでは,WHO の癌性疼痛への対応に準じて慢性 3) 膵炎の腹痛に対する段階的治療法が発表されている. しかし, このような治療の効果が系統的に検討されたことはない. 慢性膵炎患者の頑固な腹痛にはしばしばモルヒネなどの麻薬が必要になることがあるが, 薬物依存や消化管運動に対する副作用が問題となる. 少なくとも 2 週間の NSAIDs 投与で腹痛が改善しなかった慢性石灰化膵炎症例を対象とした海外の RCT では, コデインの誘導体トラマドール ( 弱オピオイド ) は有意に疼痛スコアを減少させ, 両者の効果に差はなかったと報告されている 4). トラマドールはペンタゾシンに比べて薬物乱用の危険性が少ないとされている. トラマドール塩酸塩およびアセトアミノフェンとの配合剤は, 非がん性慢性疼痛に適応があるが, 慢性膵炎は国内治験の対象外であった. 国内でトラマドールの効果を検討した報告はない. ロイコトリエン受容体拮抗薬であるモンテルカスト 5), 抗酸化作用のあるクルクミンとピペリンの組み合わせ 6) で, 腹痛に対する効果が検討されたが, どちらも効果はみられていない. しかし, 最近, 抗酸化薬の組み合わせ投与 ( 有機セレン, アスコルビン酸,β -カロテン,α -トコフェロール, メチオニン ) が,1 ヵ月あたりの疼痛を起こした日数, 鎮痛薬の使用数, 入院回数を減らしたという RCT が報告された 7). 65 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

89 3. 治療 図 1 慢性膵炎腹痛の治療ガイドライン (AGA 1998) (American Gastroenterological Association Medical Position Statement: Treatment of pain in chronic pancreatitis. Gastroenterology 1998 ; 115 : ) 神経障害性疼痛のガイドラインでは, 三環系抗うつ薬と Ca 2+ チャネル α 2δ リガンド ( プレガバリンなど ) が第一選択とされている 8). 米国では, 麻薬を必要とする慢性膵炎患者の多くに, 抗うつ薬や Ca 2+ チャネル α 2δ リガンドが併用される 9). 最近, プレガバリンが, 慢性膵炎の腹痛を軽減し, 全般的な満足度を上げたという RCT が報告された 10). 66 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

90 3 疼痛対策 文献 1) 早川哲夫, 真辺忠夫, 竹田喜信, ほか. 慢性膵炎の治療指針の改定について. 厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班昭和 62 年度研究報告書,1988: p23-27( ガイドライン ) 2) American Gastroenterological Association. American Gastroenterological Association medical position statement: treatment of pain in chronic pancreatitis. Gastroenterology 1998; 115: ( ガイドライン ) 3) Mössner J, Keim J, Niederau C, et al. Guidelines for therapy of chronic pancreatitis: Consensus Conference of the German Society of Digestive and Metabolic Diseases. Halle November Z Gastroenterol (in German) 1998; 36: ( ガイドライン ) 4) Wilder-Smith CH, Hill L, Osler W, et al. Effect of tramadol and morphine on pain and gastrointestinal motor function in patients with chronic pancreatitis. Dig Dis Sci 1999; 44: ( ランダム ) 5) Cartmell MT, O Reilly DA, Porter C, et al. A double-blind placebo-controlled trial of a leukotriene receptor antagonist in chronic pancreatitis in humans. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2004; 11: ( ランダム ) 6) Durgaprasad S, Pai CG, Vasanthkumar, et al. A pilot study of the antioxidant effect of curcumin in tropical pancreatitis. Indian J Med Res 2005; 122: ( ランダム ) 7) Bhardwaj P, Garg PK, Maulik SK, et al. A randomized controlled trial of antioxidant supplementation for pain relief in patients with chronic pancreatitis. Gastroenterology 2009; 136: ( ランダム ) 8) 日本ペインクリニック学会神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン作成ワーキンググループ ( 編 ). 神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン, 真興交易医書出版部, 東京,2011( ガイドライン ) 9) Chauhan S, Forsmark CE. Pain management in chronic pancreatitis: a treatment algorithm. Best Pract Res Clin Gastroenterol 2010; 24: ( ガイドライン ) 10) Olesen SS, Bouwense SA, Wilder-Smith OH, et al. Pregabalin reduces pain in patients with chronic pancreatitis in a randomized, controlled trial. Gastroenterology 2011; 141: ( ランダム ) 67 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

91 Clinical Question 治療 ❸ 疼痛対策 消化酵素の大量投与や高力価消化酵素の使用は慢性膵炎の腹痛に有効か? CQ 3-7 消化酵素の大量投与や高力価消化酵素の使用は慢性膵炎の腹痛に有効か? ステートメント 慢性膵炎の腹痛には, 消化酵素薬の大量投与あるいは高力価の消化酵素薬を使用することを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル B 解説 ラットやブタでは, 十二指腸内に蛋白質分解酵素 ( トリプシンやキモトリプシン ) を投与すると膵外分泌が抑制される. このネガティブフィードバック機構による慢性膵炎患者の腹痛改善作用を期待して消化酵素薬の投与が行われてきた. 消化酵素薬の慢性膵炎患者の腹痛改善効果に関して, 海外ではこれまでに 10 件の RCT が行われている. 海外の 5 文献と 1 学会抄録のデータを用いたメタアナリシス (1997 年 ) 1), および 10 文献を解析したコクラン レビュー (2009 年 ) 2) の結果, 消化酵素薬の投与には慢性膵炎の腹痛改善効果を認めなかった. 消化酵素薬には酵素の胃内での失活を防ぐため, 胃のなかでは溶けないようにコーティングされた腸溶製剤 (enteric coated enzymes) と非腸溶製剤 (non-enteric coated enzymes) がある. 解析に用いられた論文のなかで, 軽症から中等症の膵障害がある慢性膵炎を対象に非腸溶製剤を使用した場合,75% に有効性が認められている 3). 同様に,19 例に非腸溶 4) 製剤を投与したところ 15 例 (79%) に腹痛軽減作用を認めたという報告がある. 一方, 腸溶 5 9) 製剤を使用した研究では, いずれも消化酵素薬による腹痛改善効果を認めていない. しかし, 腸溶製剤でも, 服薬量を常用量ではなく症状に応じて自分で決めた (ad lib) 群では, 常用量群に比べ有意に腹痛改善効果を認めたという報告がある 10). 最近, 慢性膵炎患者 70 例において膵外分泌機能不全に対応して消化酵素薬 ( 腸溶製剤 ) の投与量を調整したところ,22 24% の症例に腹痛緩和効果を認めたとする報告もみられる 11). 脂肪吸収障害のある慢性膵炎患者に常用量の腸溶製剤を 6 ヵ月間投与すると腹痛が軽減したとする報告があるが, ネガティブフィードバック機構によるものではなく, 鼓腸や便通の改善による間接的な効果であると思われる 12). 日本では慢性膵炎の腹痛に対する消化酵素薬の効果は検討されていない. 海外の研究でも消化酵素薬の大量投与が慢性膵炎の腹痛を改善するか否かについて結論は得られていない. しかし, 腹痛軽減効果は非腸溶製剤に認められる可能性が高く, 常用量の腸溶製剤では効果は低い ( 巻頭フローチャート 2,3 参照 ). 今後, 十二指腸内に十分量の酵素活性が存在する条件で, 消化酵素薬の腹痛改善効果を評価する必要がある. 国内で 2011 年 8 月に販売開始になった高用量 68 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

92 3 疼痛対策 パンクレリパーゼ製剤は, 腸溶製剤である. 消化酵素薬の大量投与あるいは高力価の消化酵素薬は, 慢性膵炎患者の栄養不良, 腹部症状,QOL を改善させ (CQ 3-22 参照 ), 患者のベネフィットが大きい. 文献 1) Brown A, Hughes M, Tenner S, et al. Does pancreatic enzyme supplementation reduce pain in patients with chronic pancreatitis: a meta-analysis. Am J Gastroenterol 1997; 92: ( メタ ) 2) Nusrat S, Surinder R, Deepak B, et al. Pancreatic enzymes for chronic pancreatitis. Cochrane Database Syst Rev 2009; 4: CD006302( メタ ) 3) Slaff J, Jacobson D, Tillman CR, et al. Protease-specific suppression of pancreatic exocrine secretion. Gastroenterology 1984; 87: 44-52( ランダム ) 4) Isaksson G, Ihse I. Pain reduction by an oral pancreatic enzyme preparation in chronic pancreatitis. Dig Dis Sci 1983; 28: ( ランダム ) 5) Halgreen H, Pedersen NT, Worning H. Symptomatic effect of pancreatic enzyme therapy in patients with chronic pancreatitis. Scand J Gastroenterol 1986; 21: ( ランダム ) 6) Mössner J, Secknus R, Meyer J, et al. Treatment of pain with pancreatic extracts in chronic pancreatitis: results of a prospective placebo-controlled multicenter trial. Digestion 1992; 53: 54-66( ランダム ) 7) Malesci A, Gaia E, Fioretta A, et al. No effect of long-term treatment with pancreatic extract on recurrent abdominal pain in patients with chronic pancreatitis. Scand J Gastroenterol 1995; 30: ( ランダム ) 8) Larvin M, McMahon MJ, Thomas WEG, et al. Creon (Enteric coated microspheres) for the treatment of pain in chronic pancreatitis: a double-blind, randomized, placebo-controled, cross-over study. Gastroenterology 1991; 10: A283 (Abstract)( ランダム ) 9) Armbrecht U, Svanvik J, Stockbrugger. Enzyme substitution in chronic pancreatitis: effects on clinical and functional parameters and on the hydrogen (H2) breath test. Scand J Gastroenterol Suppl 1986; 126: ( ランダム ) 10) Ramo OJ, Puolakkainen PA, Seppala K, et al. Self-administration of enzyme substitution in the treatment of exocrine pancreatic insufficiency. Scand J Gastroenterol 1989; 24: ( ランダム ) 11) Czako L, Takacs T, Hegyi P, et al. Quality of life assessment after pancreatic enzyme replacement therapy in chronic pancreatitis. Can J Gastroenterol 2003; 17: ( コホート ) 12) Gubergrits N, Malecka-Panas E, Lehman GA, et al. A 6-month, open-label clinical trial of pancrelipase delayed-release capsules (Creon) in patients with exocrine pancreatic insufficiency due to chronic pancreatitis or pancreatic surgery. Aliment Pharmacol Ther 2011; 33: ( コホート ) 69 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

93 Clinical Question 3-8 蛋白分解酵素阻害薬は慢性膵炎の腹痛に有効か? 3. 治療 ❸ 疼痛対策 CQ 3-8 蛋白分解酵素阻害薬は慢性膵炎の腹痛に有効か? ステートメント 早期慢性膵炎が疑われる患者の腹痛に対しては, 蛋白分解酵素阻害薬を使用することを提案する. メシル酸カモスタットの経口剤は, 慢性膵炎における急性症状の緩解に適応があるが, 慢性膵炎の確診例あるいは準確診例への有効性についてはデータが乏しい. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル C 解説 蛋白分解酵素阻害薬は, 膵酵素の活性化抑制作用により膵の炎症を抑制する可能性がある. 1, 2) 蛋白分解酵素阻害薬 ( メシル酸カモスタット ) は慢性膵炎の腹痛に有効との報告がある. 慢性膵炎 50 例において, メシル酸カモスタット 1 日 600 mg 内服後,2 週間 3 ヵ月の間に 20 例 (54%) で腹痛が消失,13 例 (35%) で軽減,4 例 (11%) で無効であった 1). 確診例 69 例, 準確診例 86 例, 疑診例 321 例にメシル酸カモスタット (1 日 600 mg) を 4 週間投与したところ, いずれの群でも 2 週後から心窩部痛, 背部痛などの症状が有意に軽減し, 血清膵酵素レベルが有意に低下した 2). これらの研究では対照 ( 非投与 ) 群が設定されていないので, 腹痛に対する効果がどこまでメシル酸カモスタットによるものか不明である. 腹部の不定愁訴があり, 慢性膵炎の診断基準を満たさないが, 慢性膵炎が疑われる症例を対 3) 象とした研究では, メシル酸カモスタット 1 日 600 mg,4 週間服用群 (8 例 ) では心窩部痛の消失は 57% であった. 一方, 非投与群 (9 例 ) でも消失率は 33% と有意差はなかった. しかし, 背部痛に関しては非投与群では消失しなかったのに対し, 投与群では消失率は 87% と有意な効 4 6) 果を認めた. 慢性膵炎疑診例に対し, 同様の研究が繰り返されているが, いずれも対照群もしくは比較薬が設定されていない. メシル酸カモスタット (1 日 600 mg,4 週間 ) 投与群 121 例と非投与群 34 例の比較では, 症状の改善率に差はなかったが, 投与群の血清アミラーゼ値の改善率 (82.6%) は, 非投与群 (50%) に比べて有意に高かった 2). 機能性ディスペプシアの患者において, メシル酸カモスタット (1 日 600 mg,4 週間 ) はファモチジン (1 日 40 mg,4 週間 ) に比べ, 有意に腹痛を軽減させた 7). これらの研究の対象患者に慢性膵炎が含まれている可能性はあるが, 効果があった症例が慢性膵炎患者である証拠はない. 飲酒歴のない疑診例の前向き研究では, 超音波内視鏡検査で慢性膵炎に合致する所見の項目数が多いほど, メシル酸カモスタット投与による腹部症状の改善度が高かった 8). 海外ではカモスタットに関する研究はない. また, 現時点では本設問に関する適切な RCT な 70 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

94 3 疼痛対策 らびに対照研究がない. 旧診断基準で慢性膵炎疑診に相当する症例の腹痛に対しては蛋白分解酵素阻害薬を使用することを提案するが, 慢性膵炎の確診例あるいは準確診例への有効性については, データが乏しい. 慢性膵炎の腹痛に対する蛋白分解酵素阻害薬の有効性は今後の課題である ( 巻頭フローチャート 2,3 参照 ). 文献 1) Kanoh M, Ibata H, Miyagawa M, et al. Clinical effects of camostat in chronic pancreatitis. Biomed Res 1989; 10 (Suppl 1): ( 横断 ) 2) 伊藤敏文, 鎌田武信. 蛋白分解酵素阻害薬 予後への影響. 肝 胆 膵 2006; 53: ( 横断 ) 3) 堀江義則, 加藤眞三, 山岸由幸, ほか. 腹部不定愁訴に対するメシル酸カモスタット ( フオイパン錠 ) の効果についての検討 潜在性慢性膵炎についての考察. 新薬と臨牀 2003; 52: ( ケースコントロール ) 4) 刈屋憲次, 土田明, 佐々木民人, ほか. 慢性膵炎に対するメシル酸カモスタットの有用性の検討. 現代医療 2002; 34: ( 横断 ) 5) 村上晶彦, 鈴木一幸, 中村光男, ほか. 腹部不定愁訴の実態調査と慢性膵炎に対するメルシ酸カモスタット ( フオイパン錠 ) の効果の検討 東北地区におけるアンケート集計結果より. 現代医療 2002; 34: ( 横断 ) 6) 伊藤敏文, 鎌田武信. 潜在的慢性膵炎患者の臨床的検討. 消化器科 2003; 36: ( 横断 ) 7) Ashizawa N, Hashimoto T, Miyake T, et al. Efficacy of camostat mesilate compared with famotidine for treatment of functional dyspepsia: is camostat mesilate effective? J Gastroenterol Hepatol 2006; 21: ( ケースコントロール ) 8) Sai JK, Suyama M, Kubokawa Y, et al. Efficacy of camostat mesilate against dyspepsia associated with non-alcoholic mild pancreatic disease. J Gastroenterol 2010; 45: ( コホート ) 71 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

95 Clinical Question 治療 ❸ 疼痛対策 膵石 ( 蛋白栓 ) 溶解療法は慢性膵炎の腹痛に有効か? CQ 3-9 膵石 ( 蛋白栓 ) 溶解療法は慢性膵炎の腹痛に有効か? ステートメント 膵石や蛋白栓に対する溶解療法は慢性膵炎の腹痛に有効とするだけの根拠に乏しく, 行わないことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル C 解説 数施設から石灰化膵石や蛋白栓に対する溶解療法は慢性膵炎の腹痛に有効とする報告がみられる 1 7). 膵石の溶解目的にはトリメタジオンまたはクエン酸が用いられ, 多くの報告はトリメタジオンに関するものである. トリメタジオンはてんかん小発作の治療薬であり, その脱メチル化物質のジメタジオンは有機弱酸のため, 石灰化膵石の主成分である炭酸カルシウムを溶解する作用を有する.30 例の膵石症に g/ 日のトリメタジオンの内服治療を行った報告では, 平均観察期間 32 ヵ月の間に 21 例において膵石の消失または減少効果が得られ, 腹痛の消失を 73% に認めている 1) ヵ月とさらに長期間の観察でも, 膵石の溶解効果を 41 例中 29 例 (71%), 腹痛の消失を 81% に認め, 溶解療法を施行しなかった 41 例の膵石症と比べ,1 膵石の消失,2 腹痛の消失,3 外分泌機能の改善の 3 項目において溶解療法を行った症例において有意に良好な結果を得たとしている 2). また, 体外衝撃波結石破砕療法 (ESWL) や内視鏡的治療が不成功であった 5 例でも, 全例に膵石溶解を,4 例に腹痛の消失を認め, 単独療法のみならず ESWL や内視鏡的治療との併用療法としても有用であったと述べている 2). クエン酸による溶解療法に関しては,2 例の石灰化特発性慢性膵炎症例に内視鏡的に膵管内に留置した経鼻的カテーテルから, クエン酸溶液を持続的に注入し, それぞれ 48 時間後,120 時間後に膵石はすべて溶解, 消失し,2 症例とも慢性の腹痛が消失したとの報告がみられる 5). 一方, 蛋白栓の溶解には塩酸ブロムヘキシンの内服が行われている. 飲酒を中止できないアルコール性慢性膵炎 12 例に 6 ヵ月間塩酸ブロムヘキシンの内服を行ったところ,12 例中 8 例 (67%) に症状の改善がみられ, 全例において血清膵酵素値の改善が認められている 6 8). また, 蛋白栓が膵管内に充満した慢性膵炎患者では, 膵管内の蛋白栓は消失し, 臨床症状, 血清膵酵素値および膵外分泌機能の改善が得られている 7, 8). 他にも蛋白栓を伴う慢性膵炎 4 例中 3 例に, 塩酸ブロムヘキシンの有効性を認めた報告がある. 以上のように, 石灰化膵石や蛋白栓に対する溶解療法は慢性膵炎の腹痛に有効とする報告が散見されるが, 限られた数施設からの報告のみであり, 推奨するには根拠に乏しいものと考えられる. 今後, 多施設での検討が待たれる. なお, 膵石 ( 蛋白栓 ) 溶解療法は, 現在日本では慢 72 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

96 3 疼痛対策 性膵炎の腹痛に対して保険適用はなく, 臨床治験として行われるべき治療である. 文献 1) Noda A, Okuyama M, Murayama H, et al. Dissolution of pancreatic stones by oral trimethadione in patients with chronic pancreatitis. J Gastroenterol Hepatol 1994; 9: ( コホート ) 2) 濱野浩一, 野田愛司, 伊吹恵里, ほか. 経口膵石溶解療法単独および combination therapy. 胆と膵 2005; 26: ( コホート ) 3) 野田愛司, 伊吹恵里, 竹内一浩. トリメタジオンを用いる経口膵石溶解療法の効果的施行方法 内服の一時的中断ないし完全中止とその後の経過からみた検討. 膵臓 1997; 12: ( ケースコントロール ) 4) 山本真紀子, 野田愛司, 伊吹恵里, ほか. 石灰化膵石症及び蛋白栓や粘調膵液に対する経口膵石溶解療法の効果. 愛知医科大学医学会雑誌 2001; 30: ( コホート ) 5) Guitron A, Loya HG, Barinagarrementeria R, et al. Dissolution of pancreatic lithiasis by direct citrate application into the pancreatic duct in two patients with chronic idiopathic pancreatitis. Dig Dis 1997; 15: ( ケースシリーズ ) 6) Tsujimoto T, Tsuruzono T, Hoppo K, et al. Effect of bromhexine hydrochloride therapy for alcoholic chronic pancreatitis. Alcohol Clin Exp Res 2005; 29: 272S-276S( コホート ) 7) Tsujimoto T, Tnakano T, Tsuruzono T, et al. Mediastinal pancreatic pseudocyst caused by obstruction of the pancreatic duct was eliminated by bromhexine hydrochloride. Intern Med 2004; 43: ( コホート ) 8) Tsujimoto T, Kawaratani H, Yoshiji H, et al. Recent developments in the treatment of alcoholic chronic pancreatitis. Curr Drug Abuse Rev 2008; 1: ( コホート ) 73 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

97 Clinical Question 3-10 麻薬は慢性膵炎の腹痛治療に必要か? 3. 治療 ❸ 疼痛対策 CQ 3-10 麻薬は慢性膵炎の腹痛治療に必要か? ステートメント 十分な量の NSAIDs が無効な腹痛に対しては, 内視鏡的治療と外科的治療の適応を確認する. 適応がない症例には, 医療用麻薬などの中枢性鎮痛薬を使用することを考慮してよい. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (90%) エビデンスレベル B 解説 慢性膵炎の腹痛治療における麻薬の必要性を検証した研究はないが, しばしば麻薬性の鎮痛薬を必要とすることがある. 日本の慢性膵炎における麻薬の使用頻度は不明であるが, デンマークでは癌性疼痛以外に使用されるオピオイドの 7% は慢性膵炎の腹痛コントロールに用いられていた 1). また, コペンハーゲンの慢性膵炎患者 (1979 年の有病率 13.0/ 人口 10 万 ) の 20% が麻薬を使用していたが 2),27% は腹痛に対して一度も鎮痛薬を使用していなかった. 慢性膵炎の腹痛は個人差も大きく, 腹痛の程度は病期により異なり, 多くは自然消失する 3) が, 一部に持続する症例もある. したがって, 腹痛の原因, 程度, 他の治療法の効果および病期を無視して麻薬の必要性を決めることはできない. 4) 日本の慢性膵炎治療指針では急性再燃時の鎮痛薬としてオピオイドの使用が適応とされている. しかし, 同時に連用による薬物依存の危険性も指摘されており, 使用にあたって注意が必要である. 米国消化器病学会の慢性膵炎の腹痛治療に関するガイドライン (CQ 3-6 図 1 参照 ) 5) では,1 低脂肪食, 禁酒, 非麻薬性鎮痛薬,2 高力価膵酵素薬と制酸薬,3 内視鏡的治療, に次いで,4 麻薬性鎮痛薬があげられている. 麻薬の使用にあたっては, その効果と薬物依存のリスクおよび外科的治療の効果とそのリスクを患者と議論することを推奨している. また, ドイツのガイドライン 6) では癌性疼痛に対する WHO の 3 段階除痛ラダーに準じて,1 禁酒, 食事指導,2アセトアミノフェン,3+ 中枢作用性鎮痛薬 ( トラマドールなど ),4+ 抗うつ薬あるいは精神安定薬と段階的に上げ, 最後に5 麻薬を用いるとされている. 慢性膵炎の腹痛治療における麻薬の役割を系統的かつ前向きに検討した報告はない. 少なくとも 2 週間以上の非ステロイド抗炎症薬 (NSAIDs) および弱オピオイドにより腹痛改善の認められない 30 例の患者を対象とした RCT 7) では, トラマドールの鎮痛効果はモルヒネと同等であったと報告されている. また, この研究では, トラマドールの消化管運動に対する副作用はモルヒネより少なかった 7). トラマドールは, 乱用の危険性がペンタゾシンに比べて少ないとされている. トラマドール塩酸塩およびアセトアミノフェンとの配合剤は, 非がん性慢性疼痛に 74 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

98 3 疼痛対策 適応があるが, 慢性膵炎は国内治験の対象外であった. 国内でトラマドールの効果を検討した報告はない. トラマドールなどのオピオイドを増量しても効果のない場合, 強オピオイドとして, モルヒネより副作用が少なく作用時間の長いブプレノルフィン ( レペタン ) が有用である 8). しかし, ブプレノルフィンにも薬物依存性があるので, 使用期間を限定して長期の使用は避ける必要がある. フェンタニルの経皮的投与はモルヒネに比べて鎮痛効果は同等であり, 錠剤の服用が難しい場合には有用である. しかし, 副作用の皮膚炎の頻度が高く, 即効性モルヒネによるレスキューの必要量も多いため, モルヒネ徐放剤より有効とはいえない 9). 現時点のコンセンサスとしては, 禁酒や低脂肪食などの生活指導のうえ (CQ 3-3,3-4 参照 ), 膵消化酵素薬, 制酸薬, 抗コリン薬, 蛋白分解酵素阻害薬に加え, 十分な量の NSAIDs(CQ 参照 ) が無効な腹痛の場合, 内視鏡的治療 (CQ 3-12,3-13 参照 ) や外科的治療 (CQ 参照 ) の適応と薬物依存の危険性を十分配慮したうえで, 医療用麻薬などの中枢性鎮痛薬を使用することが望ましい ( 巻頭フローチャート 2 参照 ). 文献 1) Sorensen HT, Rasmussen HH, Moller-Petersen JF, et al. Epidemiology of pain requiring strong analgesics outside hospital in a geographically defined population in Denmark. Dan Med Bull 1992; 39: ( 横断 ) 2) Copenhagen pancreatitis study. An interim report from a prospective epidemiological multicentre study. Scand J Gastroenterol 1981; 16: ( コホート ) 3) Ammann RW, Muellhaupt B. The natural history of pain in alcoholic chronic pancreatitis. Gastroenterology 1999; 116: ( コホート ) 4) 早川哲夫, 真辺忠夫, 竹田喜信, ほか. 慢性膵炎の治療指針の改定について. 厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班昭和 62 年度研究報告書,1988: p23-27( ガイドライン ) 5) American Gastroenterological Association. American Gastroenterological Association medical position statement: Treatment of pain in chronic pancreatitis. Gastroenterology 1998; 115: ( ガイドライン ) 6) Mössner J, Keim J, Niederau C, et al. Guidelines for therapy of chronic pancreatitis: Consensus Conference of the German Society of Digestive and Metabolic Diseases. Halle November Z Gastroenterol (in German) 1998; 36: ( ガイドライン ) 7) Wilder-Smith CH, Hill L, Osler W, et al. Effect of tramadol and morphine on pain and gastrointestinal motor function in patients with chronic pancreatitis. Dig Dis Sci 1999; 44: ( ランダム ) 8) 成瀬達. 慢性膵炎の疼痛緩和薬 レペタン. 肝 胆 膵 2010; 61: ) Niemann T, Madsen LG, Larsen S, et al. Opioid treatment of painful chronic pancreatitis. Int J Pancreatol 2000; 27: ( ランダム ) 75 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

99 Clinical Question 3-11 抗うつ薬は慢性膵炎の腹痛に有効か? 3. 治療 ❸ 疼痛対策 CQ 3-11 抗うつ薬は慢性膵炎の腹痛に有効か? ステートメント 慢性膵炎患者の腹痛に対して安易に抗うつ薬を用いないことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (90%) エビデンスレベル D 解説 慢性膵炎疑診例や準確診例では, 軽症うつ病 うつ状態を合併している場合がある. うつ状態では, 耐糖能の異常やアミラーゼの異常が多く, このような場合には抗うつ薬によって痛みのコントロールが可能になると報告されている 1, 2). 一般的に三環系抗うつ薬は慢性疼痛の補助治療薬として用いられている. 麻薬が必要となる慢性膵炎患者の多くは, 三環系抗うつ薬, 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI), セロトニン ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 (SNRI) などを併用する場合が多い 3). ドイツの慢性膵炎の腹痛治療に関するガイドライン 4) では, アセトアミノフェンにトラマドールなど中枢作用性鎮痛薬を加えても効果のない腹痛に対し, 麻薬を用いる前に, 抗うつ薬あるいは精神安定薬を加えるとされている. しかし,SSRI,SNRI を含め, 慢性膵炎の腹痛に対する RCT は国内, 海外ともに行われておらず, 推奨されるだけの根拠がない 5). 文献 1) 神原憲治, 福永幹彦, 中井吉英. 内科臨床における こころ と からだ 臓器 疾患別にみた心身医療 機能性腹痛, 慢性膵炎.Medicina 2002; 39: ) 谷口功一, 中井吉英. 知っておきたい心療内科的対応 慢性膵炎. レジデントノート 2002; 4: ) Chauhan S, Forsmark CE. Pain management in chronic pancreatitis: a treatment algorithm. Best Pract Res Clin Gastroenterol 2010; 24: ) Mössner J, Keim J, Niederau C, et al. Guidelines for therapy of chronic pancreatitis: Consensus Conference of the German Society of Digestive and Metabolic Diseases. Halle November Z Gastroenterol (in German) 1998; 36: ( ガイドライン ) 5) Singh VV, Toskes PP. Medical therapy for chronic pancreatitis pain. Curr Gastroenterol Rep 2003; 5: 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

100 Clinical Question 治療 ❸ 疼痛対策 ESWL を含む内視鏡的治療は慢性膵炎の腹痛に有効か? CQ 3-12 ESWL を含む内視鏡的治療は慢性膵炎の腹痛に有効か? ステートメント ESWL を含む内視鏡的治療は, 慢性膵炎の腹痛に対して短期的には極めて有効であり, 長期的にも有効性を示すため, 行うことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (80%) エビデンスレベル B 解説 体外衝撃波結石破砕療法 (ESWL) による膵石治療が広く普及してからは, 膵石の砕石は主に ESWL で行われることが多く, 内視鏡的砕石術を単独で行うのは 5 mm 未満の比較的小さな結石例に限られている (Endoscopy 2012; 44: [ a) 検索期間外文献 ]). 現在行われている膵石症の内視鏡的治療には, 砕石術の他に乳頭切開術, 膵管口切開術, 膵管狭窄部の拡張術, 膵管ステント留置術などがあげられる. 実際には主膵管または副膵管内の膵石を対象として, 個々の症例の病態に合わせてこれらの手技と ESWL を組み合わせた治療が行われている 1 11, a), (Pancreas 2013; 42: b) [ 検索期間外文献 ]). 一方, 膵管の強い狭窄や屈曲蛇行などにより内視鏡的治療が容易ではないと予測される症例では, 起こりうる偶発症や治療期間も考慮に入れたうえで, 当初より外科的治療を含めて治療方針を慎重に検討する必要がある. ESWL を併用した内視鏡的治療の慢性膵炎の腹痛に対する効果に関しては, 短期的には % に効果が認められており, 極めて有効とする報告が多い 1 3). 単一施設で最も多数例を治療した報告では,1,006 例中 76% の症例において膵石が完全消失し, 腹痛も有意に減少している 4). また, 治療前後の腹痛の程度,1 年あたりの膵炎による入院回数および 1 ヵ月あたりの鎮痛薬の使用量を比較検討し, いずれも治療後に有意な改善が得られたという報告もみられる 2).17 の論文を用いたメタアナリシスでもその有効性が明らかにされている 5). 一方, 長期経過における効果に関しては, 平均観察期間 40 ヵ月で 79% に症状の改善が得られたが, 治療成功例と不成功例の腹痛の改善率に統計学的な差がみられなかったことより, ESWL を含む内視鏡的治療は慢性の腹痛の改善に有効であることを証明できなかったとする報告がみられる 7). しかし, 日本の 11 施設 555 例の検討では膵石の消失が 72.3% にみられ, 平均観察期間 48.7ヵ月で症状の緩和が78 100%, 平均 91.9% に認められ, 外科的治療への移行例は 4.7% のみであった 8).1,018 例と最も多数例 ( 多施設 ) での検討では, 観察期間 2 12 年 ( 平均 4.9 年 ) で, 腹痛に対する有効率は 65% であり, 治療成功例に症状が緩和する症例が多い傾向がみられている 11). 平均 14.4 年と最も長く経過観察された報告では, 約 2/3の症例に臨床症状の 77 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

101 3. 治療 改善が得られ, 入院回数は有意に減少したとしている 9). 比較的長期に観察した成績 1 11, b) から, ESWL と内視鏡を併用した治療は慢性膵炎の腹痛に対して, 長期的にも比較的良好な消失, ま たは緩和効果が得られると考えられる. 今後, さらに長期間での検討が望まれる. 文献 1) Sauerbruch T, Holl J, Paumgartner G. Extracorporeal lithotripsy of pancreatic stones in patients with chronic pancreatitis and pain: a prospective follow up study. Gut 1992; 33: ( コホート ) 2) Delhaye M, Vandermeeren A, Baize M, et al. Extracorporeal shock-wave lithotripsy of pancreatic calculi. Gastroenterology 1992; 102: ( ケースコントロール ) 3) Kozarek RA, Brandabur JJ, Ball TJ, et al. Clinical outcomes in patients who undergo extracorporeal shock wave lithotripsy for chronic calcific pancreatitis. Gastrointest Endosc 2002; 56: ( ケースコントロール ) 4) Tandan M, Reddy DN, Santosh D, et al. Extracorporeal shock wave lithotripsy and endotherapy for pancreatic calculi: a large single center experience. Indian J Gastroenterol 2010; 29: ( ケースコントロール ) 5) Guda NM, Partington S, Freeman M. Extracorporeal shock wave lithotripsy in the management of chronic calcific pancreatitis: a meta-analysis. JOP 2005; 6: 6-12( メタ ) 6) Ohara H, Hoshino M, Hayakawa T, et al. Single application extracorporeal shock wave lithotripsy is the first choice for patients with pancreatic duct stones. Am J Gastroenterol 1996; 91: ( コホート ) 7) Adamek HE, Jakobs R, Buttmann A, et al. Long term follow up of patients with chronic pancreatitis and pancreatic stones treated with extracorporeal shock wave lithotripsy. Gut 1999; 45: ( ケースコントロール ) 8) Inui K, Tazuma S, Yamaguchi T, et al. Treatment of pancreatic stones with extracorporeal shock wave lithotripsy. Pancreas 2005; 30: 26-30( ケースコントロール ) 9) Delhaye M, Arvanitakis M, Verset G, et al. Long-term clinical outcome after endoscopic pancreatic ductal drainage for patients with painful chronic pancreatitis. Clin Gastroenterol Hepatol 2004; 2: ( ケースコントロール ) 10) Gabbrielli A, Pandolfi M, Mutignani M, et al. Efficacy of main pancreatic-duct endoscopic drainage in patients with chronic pancreatitis, continuous pain, and dilated duct. Gastrintest Endosc 2005; 61: ( ケースコントロール ) 11) Rosch T, Daniel S, Scholz M, et al; the European Society of Gastrointestinal Endoscopy Research Group. Endoscopic treatment of chronic pancreatitis: a multicenter study of 1000 patients with long-term followup. Endoscopy 2002; 34: ( ケースコントロール ) 検索期間外文献 a) Dumonceau JM, Delhaye M, Tringali A, et al. Endoscopic treatment of chronic pancreatitis: European Society of Gastrointestinal Endoscopy (ESGE) Clinical Guideline. Endoscopy 2012; 44: ( ガイドライン ) b) Suzuki Y, Sugiyama M, Inui K, et al. Management for pancreatolithiasis: a Japanese multicenter study. Pancreas 2013; 42: ( ケースコントロール ) 78 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

102 Clinical Question 治療 ❸ 疼痛対策 内視鏡的治療の長期反復は慢性膵炎の腹痛に必要か? CQ 3-13 内視鏡的治療の長期反復は慢性膵炎の腹痛に必要か? ステートメント 慢性膵炎における膵管ステント治療の継続期間は 1 年前後をひとつの基準とし, 無効例や腹痛が再燃する症例では外科的治療を考慮することを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (90%) エビデンスレベル C 解説 慢性膵炎に対する膵管ステント術の技術的な成功率は 85 98% であり, 臨床効果は短期的には 65 95%,14 58 ヵ月の観察期間でも 32 68% に腹痛の改善が得られている (Endoscopy 2012; 44: a) [ 検索期間外文献 ]). 一般に, 膵管ステントにはプラスチックステントが用いられるが,8 週までに 66% が,9 週間以上留置した場合は全例ステントが閉塞するとされている 1). 長期のステント治療を行う場合には, 短期間での入れ替えが必要であり, 閉塞による症状がなくても最低でも年 1 回の交換が必要と報告されている a). また, ステント留置が長期にわたると, 膵管に器質的変化を及ぼすとも報告されている 2). 膵管ステント治療を終了する基準として, 内視鏡的に膵管狭窄部より尾側に充満させた造影剤が 1 2 分後に適切に十二指腸に流出していること,6 Fr のカテーテルが容易に膵管狭窄部を通過することなどがあげられている 3 5). 6) ステント治療の継続期間に関しては,6 ヵ月以内の短期間では効果が少ないとする報告もあるが, 腹痛が早期に (6 ヵ月以内 ) 軽快した症例 (74%) は長期的にも ( 平均 5.9 年 ) 良好な臨床効果が得られている 5). 腹痛のある狭窄を有する慢性膵炎患者に対して, バルーン拡張後,10 Fr のステント治療を 2 ヵ月ごとに入れ替えて 6 ヵ月継続した結果,6 ヵ月後は 74%,1 年後は 52% の患者に鎮痛薬の中止が可能となり, 短期間の検討では有効であったとの報告がみられる 6). 膵石を砕石後, 膵管に狭窄を有する症例に対して 1 年間のステント治療後の腹痛, 膵炎の発作の回数は, 膵管に狭窄を有しない群とほぼ同等で, 挿入前に比較して主膵管の拡張が有意に軽減したと報告されている 7). また,1 年以内にステント治療を終了し得た症例の治療後の再入院率, 入院期間, 医療費は外科的治療を行った症例と同等であったが,1 年以上のステント治療を要した症例は外科的治療例に比べて明らかに治療後の予後は不良であったとの報告もみられる 8). 一方, 内視鏡的治療と外科的治療を比較した RCT は現在 3 つ報告されており, いずれも外科的治療が優れている. 治療直後は両群に差がなかったが,5 年後の腹痛の完全消失は内視鏡的治 79 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

103 3. 治療 療群 14% に対して外科的治療群は 37% と報告されている 9). また,2 年間の経過観察期間において Izbicki pain score と health summary score は外科的手術例のほうが低く, また 2 年後に腹痛を訴える患者は外科的手術例のほうが少なく, 長期的には外科的手術のほうが優れた治療法であると報告されている 10). さらにその 5 年後の検討では, 内視鏡的治療例の 47% に外科手術が付加されていたと報告している 11). 一般的に, 内視鏡的治療は外科的治療に比べて侵襲が少ないため, 最初の治療として考慮さ 12) れることが多いが, 具体的に膵管ステントのよい適応である慢性膵炎のタイプも報告されており, 膵管の強い狭窄や屈曲蛇行などにより内視鏡的治療が容易ではないと予測される症例では, 当初より外科的治療も含めて治療方針を慎重に検討する必要がある. 一方, 膵管ステント治療を行う場合, その治療継続期間は 1 年前後をひとつの基準として, ステントを挿入しても有効でない症例, 治療後も腹痛が再燃する症例に対しては内視鏡的治療に固執せずに外科的治療を考慮する必要がある 7). 文献 1) Ikenberry SO, Scherman S, Hawes RH, et al. The occlusion rate of pancreatic stents. Gastrointest Endosc 1994; 40: ( ケースコントロール ) 2) Morgan DE, Smith JK, Hawkins K, et al. Endoscopic stent therapy in advanced chronic pancreatitis: relationships between ductal changes, clinical response, and stent patency. Am J Gastroenterol 2003; 98: ( ケースコントロール ) 3) Smits ME, Badiga SM, Rauws EA, et al. Long-term results of pancreatic stents in chronic pancreatitis. Gastrointest Endosc 1995; 42: ( ケースコントロール ) 4) Eleftherladis N, Dinu F, Delhaye M, et al. Long-term outcome after pancreatic stenting in severe chlonic pancreatitis. Endoscopy 2005; 37: ( ケースコントロール ) 5) Binmoeller KF, Jue P, Seifert H, et al. Endoscopic pancreatic stent drainage in chronic pancreatitis and a dominant stricture: long-term results. Endoscopy 1995; 27: ( ケースコントロール ) 6) Ponchon T, Bory RM, Hedelius F, et al. Endoscopic stenting for pain relief in chronic pancreatitis: results of a standardized protocol. Gastrointest Endosc 1995; 42: ( コホート ) 7) Sasahira N, Tada M, Isayama H, et al. Outcomes after clearance of pancreatic stones with or without pancreatic stenting. J Gastroenterol 2007; 42: 63-69( コホート ) 8) Hirota M, Asakura T, Kanno A, et al. Long-period pancreatic stenting for painful chronic calcified pancreatitis required higher medical costs and frequent hospitalizations compared with surgery. Pancreas 2011; 40: ( ケースコントロール ) 9) Dite P, Ruzicka M, Zboril V, et al. A prospective, randomized trial comparing endoscopic and surgical therapy for chronic pancreatitis. Endoscopy 2003; 35: ( ランダム ) 10) Cahen DL, Gouma DJ, Nio Y, et al. Endoscopic versus surgical drainage of the pancreatic duct in chronic pancreatitis. N Engl J Med 2007; 356: ( ランダム ) 11) Cahen DL, Gouma DJ, Laramée P, et al. Long-term outcomes of endoscopic vs surgical drainage of the pancreatic duct in patients with chronic pancreatitis. Gastroenterology 2011; 141: ( ランダム ) 12) Cremer M, Deviere J, Delhaye M, et al. Stenting in severe chronic pancreatitis: results of medium-term follow-up in seventy-six patients. Endoscopy 1991; 23: ( ケースコントロール ) 検索期間外文献 a) Dumonceau JM, Delhaye M, Tringali A, et al. Endoscopic treatment of chronic pancreatitis: European Society of Gastrointestinal Endoscopy (ESGE) Clinical Guideline. Endoscopy 2012; 44: ( ガイドライン ) 80 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

104 Clinical Question 治療 ❸ 疼痛対策 EUS/CT ガイド下腹腔神経叢 neurolysis(cpn) は慢性膵炎の腹痛に有効か? CQ 3-14 EUS/CT ガイド下腹腔神経叢 neurolysis(cpn) は慢性膵炎の腹痛に有効か? ステートメント EUS/CT ガイド下 CPN は慢性膵炎の腹痛に短期的には有効である. しかし, 長期的には効果が乏しく,NSAIDs やオピオイドによる薬物療法で除痛が困難な症例に行うことを考慮してよい. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (90%) エビデンスレベル B 解説 慢性膵炎による難治性の腹痛に対しては,NSAIDs, オピオイドによる薬物療法が用いられるが, その効果には限界があり, 膵管ドレナージや外科的治療が行われてきた. また以前から内臓悪性腫瘍による腹痛に対して CPN が行われ, 有効な成績が報告されており, 近年, 慢性膵炎による難治性の腹痛に対しても CPN が行われるようになってきた 1 8). 従来, 慢性膵炎に対する CPN は CT ガイド下に行われていたが, 最近では EUS ガイド下 CPN(EUS-CPN) の報告が増加している.EUS-CPN については 2 つのメタアナリシスの報告がみられ, その有用性が明らかにされている 1, 2).6 文献 221 例の解析では腹痛の改善が 51.46% にみられ 1),9 文献 376 例の解析でも 59.5%(95%CI ) に症状の改善を認めている 2). 慢性膵炎の腹痛に対する EUS-CPN に関しては,2 つの RCT が報告されている 3, 4).EUS-CPN の 10 例と CT-CPN の 8 例の検討では,EUS-CPN のほうが腹痛スコアの変化率, 腹痛スコアともに有意に優れていた 3).EUS-CPN の 27 例と X 線透視下 CPN の 29 例の検討でも,EUS-CPN において有意に高い腹痛スコアの改善が認められた (70% vs. 30%,p=0.044) 4). 一方,27 例の慢性膵炎に EUS-CPN を行った報告では, 治療直後には 26 例 (97.3%) で腹痛が改善したが,12 週間後には 8 例 (29.6%) に低下していた 4). 単一の施設で 90 例の慢性膵炎に EUS-CPN を行った前向き研究でも, 治療直後には 55% に腹痛の軽減を認めたが,24 週間後には 10% に低下している 5). これらの報告のように, 他の報告でも EUS-CPN は短期的には良好な腹痛抑制効果を示すが, 現在のところ長期的な効果は期待できない 1 8). したがって,EUS-CPN は患者本人にこの治療の現状を十分に説明し, 同意のうえで施行すべき処置と考えられる. また EUS-CPN は, 現在日本では慢性膵炎の腹痛に対して保険適用はなく, 臨床治験として行われるべき処置である. 81 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

105 3. 治療 文献 1) Kaufman M, Singh G, Das S, et al. Efficacy of endoscopic ultrasound-guided celiac plexus block and celiac plexus neurolysis for managing abdominal pain associated with chronic pancreatitis and pancreatic cancer. J Clin Gastroenterol 2010; 44: ( メタ ) 2) Puli SR, Reddy JB, Bechtold ML, et al. EUS-guided celiac plexus neurolysis for pain due to chronic pancreatitis or pancreatic cancer pain: a meta-analysis and systematic review. Dig Dis Sci 2009; 54: ( メタ ) 3) Gress F, Schmitt C, Sherman S, et al. A prospective randomized comparison of endoscopic ultrasoundand computed tomography-guided celiac plexus block for managing chronic pancreatitis pain. Am J Gastroenterol 1999; 94: ( ランダム ) 4) Santosh D, Lakhtakia S, Gupta R, et al. Clinical trial: a randomized trial comparing fluoroscopy guided percutaneous technique vs. endoscopic ultrasound guided technique of coeliac plexus block for treatment of pain in chronic pancreatitis. Aliment Pharmacol Ther 2009; 29: ( ランダム ) 5) Gress F, Schmitt C, Sherman S, et al. Endoscopic ultrasound-guided celiac plexus block for managing abdominal pain associated with chronic pancreatitis: a prospective single center experience. Am J Gastroenterol 2001; 96: ( コホート ) 6) Stevens T, Costanzo A, Lopez R, et al. Adding triamcinolone to endoscopic ultrasound-guided celiac plexus blockade does not reduce pain in patients with chronic pancreatitis. Clin Gastroenterol Hepatol 2012; 10: ( コホート ) 7) Abedi M, Zfass AM. Endoscopic ultrasound-guided (neurolytic) celiac plexus block. J Clin Gastroenterol 2001; 32: ( ケースコントロール ) 8) Levy MJ, Topazian MD, Wiersema MJ, et al. Initial evaluation of the efficacy and safety of endoscopic ultrasound-guided direct Ganglia neurolysis and block. Am J Gastroenterol 2008; 103: ( ケースコントロール ) 82 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

106 Clinical Question 治療 ❸ 疼痛対策 外科的治療は内視鏡的治療 (ESWL 併用を含む ) が無効な腹痛に有効か? CQ 3-15 外科的治療は内視鏡的治療 (ESWL 併用を含む ) が無効な腹痛に有効か? ステートメント 外科的治療は内視鏡的膵管ステント留置が無効であった症例に対しても除痛効果を示すことが多く有用であり, 行うことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル B 解説 内視鏡的膵管ステント術は, 低侵襲で除痛効果の高い治療法として, 主として膵頭部主膵管の狭窄を伴う慢性膵炎有痛例に対して広く行われている. しかし, 腹痛のある主膵管閉塞を伴う症例を, 内視鏡的治療と外科的治療に分けて解析した RCT の結果では, 除痛効果, 体重増加ともに 1 年後の短期成績では差はないものの,5 年後には両者とも外科的治療群のほうが有意に良好であったことが報告されており 1), 内視鏡的治療のみでは長期にわたって腹痛を制御することはできないことが示されている. 膵管ステント挿入例 96 例の長期経過観察中に,41% の症例に手術 (22 例 ) または再ステント挿入 (17 例 ) が必要となり, 除痛効果, 体重増加, 社会復帰のすべてで, 手術群が再ステント群より良好であったとの結果が報告されている 2). さらに, 長期観察を行った RCT によると, 平均観察期間 79 ヵ月で, 外科的治療を最初に施行した外科的治療群では腹痛緩解率が 80% と内視鏡的治療群の 38% に比較して有意に良好で, 内視鏡的治療群では期間中に平均 8 回の治療を必要とし, そのうち約半数が観察期間中に外科的治療を施行されていたと報告されている 3). さらに, 内視鏡的膵管ステント術を行い除痛が不十分であった 24 例に膵切除術 (17 例 ), 膵管空腸側々吻合術 (5 例 ), 膿瘍ドレナージ術 (2 例 ) を行い, そのうち 15 例 (62.5%) に腹痛消失を認めたとの報告があり 4), 内視鏡的膵管ステント挿入術が無効であった症例における外科手術の有効性も示されている. つまり, 内視鏡的膵管ステント挿入術は膵管狭窄がある症例に限っても長期成績には限界があり, 外科的治療がそれらの症例にも有効であることが他の報告でも示されている 5). 一方, 術前の内視鏡的治療が手術成績に影響があるかどうかも検討されている. 術前の膵管ステントの有無が, 膵管空腸側々吻合術 27 ヵ月後の遠隔成績に及ぼす影響を解析したところ, 術後合併症, 除痛効果, 活動度に差がなかったと報告されている 6). つまり, 膵管ステント挿入は膵管空腸側々吻合術の術前治療として問題なく行える結果であった. しかし,Frey 手術を行った症例の解析結果で, 術後感染性合併症発生に対して術前の内視鏡的膵管ステント挿入が有意 83 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

107 3. 治療 な危険因子であることが示されている 7). この報告の感染性合併症の発生率は 39% と非常に高く, 安易な膵管ステント挿入を戒める結果である. 膵管ステント挿入後の二次治療の必要性はステント挿入前の腹痛の程度と治療後のアルコール摂取に有意に相関していた 2). また, 最近, 2 つの RCT,111 例の結果のメタアナリシスでも, 膵管拡張を示す閉塞性膵炎では, 除痛効果は外科的治療が優れており, 合併症発生率も差がなかったという 8). 膵頭部実質の石灰化などステント治療困難例に対しては, 膵管ステント挿入は行わず, そのまま外科手術を考慮すべきである. 文献 1) Dite P, Ruzicka M, Zboril V, et al. A prospective, randomized trial comparing endoscopic and surgical therapy for chronic pancreatitis. Endoscopy 2003; 35: ( ランダム ) 2) Farnbacher MJ, Muhldorfer S, Wehler M, et al. Interventional endoscopic therapy in chronic pancreatitis including temporary stenting: a definitive treatment? Scand J Gastroenterol 2006; 41: ( ケースシリーズ ) 3) Cahen DL, Gouma DJ, Laramée P, et al. Long-term outcomes of endoscopic vs surgical drainage of the pancreatic duct in patients with chronic pancreatitis. Gastroenterology 2011; 141: ( ランダム ) 4) Binmoeller KF, Jue P, Seifert H, et al. Endoscopic pancreatic stent drainage in chronic pancreatitis and a dominant stricture: long-term results. Endoscopy 1995; 27: ( ケースシリーズ ) 5) Smits ME, Badiga SM, Rauws EA, et al. Long-term results of pancreatic stents in chronic pancreatitis. Gastrointest Endosc 1995; 42: ( ケースシリーズ ) 6) Boerma D, van Gulik TM, Rauws EA, et al. Outcome of pancreaticojejunostomy after previous endoscopic stenting in patients with chronic pancreatitis. Eur J Surg 2005; 168: ( コホート ) 7) Chaudhary A, Negi SS, Masood S, et al. Complications after Frey s procedure for chronic pancreatitis. Am J Surg 2004; 188: ( ケースシリーズ ) 8) Ahmed Ali U, Pahlplatz JM, Nealon WH, et al. Endoscopic or surgical intervention for painful obstructive chronic pancreatitis. Cochrane Database Syst Rev 2012; 18: CD007884( メタ ) 84 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

108 Clinical Question 治療 ❸ 疼痛対策 膵管ドレナージ術は慢性膵炎の腹痛に有効か? CQ 3-16 膵管ドレナージ術は慢性膵炎の腹痛に有効か? ステートメント 膵石などによる膵管狭窄, 閉塞によって体尾部に膵管拡張を伴う症例では, 膵管空腸側々吻合術を行うことを提案する. 膵頭部膵石などの膵頭部病変を伴う膵管拡張例の難治性腹痛には Frey 手術を行うことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) 2 (100%) エビデンスレベル B B 解説 慢性膵炎の難治性腹痛に対する膵の直達術式は, 膵切除術と膵管ドレナージ術に大別される. 歴史的には, 膵管ドレナージ術には, 膵管空腸側々吻合術 (longitudinal pancreaticojejunostomy:lpj,puestow-gillesby 1),Partington-Rochelle 2) ), 経十二指腸的膵管口形成術 (Nardi) 3), 尾側膵切除後に行う尾側膵管空腸吻合術 (Du Val) 4) などが膵管ドレナージ術として考案され, その成績が報告されてきた 5 22). そのまとめを表 1 に示す. 尾側膵管空腸吻合術 (Du Val) の長期成績は, 除痛率が 50% 以下である. 多くの症例が再手術となっており, いまや行うべき手術ではない. また, 経十二指腸的膵管口形成術 (Nardi) は膵管口付近に結石が集中しているような症例に選択されたが, 今日ではそのような症例には内視鏡的治療で十分に目的が達成されるので, 行われることはまずない. 一方,LPJ は周術期合併症発生率は 10% までで, 遠隔時の除痛率が 50% から 100% である. Sakorafas らが 2001 年までの LPJ の報告をまとめた総説でも,LPJ 609 例の腹痛緩解率は 73% である 23). 最近の報告でも遠隔時の除痛効果も良好でかつ,QOL の改善効果も持続することが報告されている. しかし,LPJ では膵頭部の分枝を含む膵頭部膵管のドレナージが不十分になることが弱点である. 膵管狭窄から主膵管拡張をきたした症例には膵管ドレナージ術のみで良好な遠隔成績が得られるが, アルコール性膵炎など経過中に膵頭部の分枝膵管内に膵石を生じるような症例では遠隔期に腹痛が再燃することが報告されている.Frey は, この問題に対して LPJ に膵頭部のくり抜きを追加する Frey 手術を考案し 24),LPJ の改良術式として広く行われるようになっている. その長期成績の報告を表 2 に示す 25 31), (J Gastrointest Surg 2012; 16: a) [ 検索期間外文献 ]).Frey 手術は遠隔時でも, ほとんどの報告で 90% の症例で腹痛が完全に消失するという良好な成績を示している. また, 最近では, 腹腔鏡下で行う試みもなされているが, いまだ一般的ではない. 85 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

109 3. 治療 文献 1) Puestow CB, Gillesby WJ. Retrograde surgical drainage of pancreas for chronic relapsing pancreatitis. Arch Surg 1958; 76: ( ケースシリーズ ) 2) Partington PF, Rochelle REL. Modified Puestow procedure for retrograde drainage of the pancreatic duct. Ann Surg 1960; 152: ( ケースシリーズ ) 3) Nardi GL. Technique of sphincteroplasty in recurrent pancreatitis. Surg Gynecol Obstet 1960; 110: ( ケースシリーズ ) 4) Du Val MK Jr. Caudal pancreaticojejunostomy for chronic relapsing pancreatitis. Ann Surg 1954; 110: ( ケースシリーズ ) 5) Prinz RA, Greelee HB. Pancreatic duct drainage in 100 patients with chronic pancreatitis. Ann Surg 1981; 194: ( 横断 ) 86 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

110 3 疼痛対策 6) Taylor RH, Bagley FH, Braash AW, et al. Ductal drainage or resection for chronic pancreatitis. Am J Surg 1981; 141: 28-33( ケースシリーズ ) 7) Hart MJ, Miyashita H, Morita N, et al. Pancreaticojejunostomy: report of a 25 year experience. Am J Surg 1983; 145: ( ケースシリーズ ) 8) Brinton MH, Pellegrini CA, Stein SF, et al. Surgical treatment of chronic pancreatitis. Am J Surg 1984; 148: ( ケースシリーズ ) 9) Cooper MJ, Williamson RC. Drainage operations in chronic pancreatitis. Br J Surg 1984; 71: ( 横断 ) 10) Morrow CE, Cohen JI, Sutherland DE, et al. Chronic pancreatitis: long-term surgical results of pancreatic duct drainage, pancreatic resection, and near-total pancreatectomy and islet autotransplantation. Surgery 1984; 96: ( ケースコントロール ) 11) Holmberg JT, Isaksson G, Ihse I. Long-term results of pancreaticojejunostomy in chronic pancreatitis. Ann Surg 1985; 160: ( ケースシリーズ ) 12) Sato T, Miyashita E, Yamauchi H, et al. The role of surgical treatment for chronic pancreatitis. Ann Surg 1986; 203: ( ケースシリーズ ) 13) Bradley EL 3rd. Long-term results of pancreatojejunostomy in patients with chronic pancreatitis. Am J Surg 1987; 153: ( ケースシリーズ ) 14) Drake DH, Frey WJ. Ductal drainage for chronic pancreatitis. Surgery 1989; 105: ( ケースシリーズ ) 15) Greenlee HB, Prinz RA, Aranha GV. Long-term results of side-to-side pancreaticojejunostomy. World J Surg 1990; 14: 70-76( ケースシリーズ ) 16) Denton GW, Brough WA, Tweedle DE. Pancreaticojejunostomy for severe symptomatic chronic pancreatitis. HPB Surg 1992; 5: ( 横断 ) 17) Hakaim AG, Broughan TA, Vogt DP, et al. Long-term results of the surgical management of chronic pancreatitis. Am Surg 1994; 60: ( ケースシリーズ ) 18) Lucas CE, McIntosh B, Paley D, et al. Surgical decompression of ductal obstruction in patients with chronic pancreatitis. Surgery 1999; 126: ( ケースコントロール ) 19) Sakorafas GH, Farnell MB, Farley DR, et al. Long-term results after surgery for chronic pancreatitis. Int J Pancreatol 2000; 27: ( コホート ) 20) Kinoshita H, Hara M, Hashimoto M, et al. Surgical treatment for chronic pancreatitis: results of pancreatic duct drainage operation and pancreatic resection. Kurume Med J 2002; 49: 41-46( ケースシリーズ ) 21) 黒田嘉和, 竹山宜典, 小野山裕彦, ほか. 慢性膵炎の外科治療成績. 日本消化器外科学会雑誌 1991; 24: ( ケースシリーズ ) 22) 及川郁雄, 中野昌志, 三神俊彦. 慢性膵炎の外科治療 成因別, 術式別による術後長期経過の比較. 外科診療 1992; 34: ( ケースシリーズ ) 23) Sakorafas GH, Zobolas B. Lateral pancreatojejunostomy in the surgical management of chronic pancreatitis: current concepts and future perspectives. Dig Liver Dis 2004; 33: ( メタ ) 24) Frey CF, Smith GJ. Description and rationale of a new operation for chronic pancreatitis. Pancreas 1987; 2: ( ケースシリーズ ) 25) Frey CF, Amikura K. Local resection of the head of the pancreas combined with longitudinal pancreaticojejunostomy in the management of patients with chronic pancreatitis. Ann Surg 1994; 220: ( ケースシリーズ ) 26) Izbicki JR, Bloechle C, Knoefek WT, et al. Duodenum-preserving resection of the head of the pancreas in chronic pancreatitis: a prospective, randomized trial. Ann Surg 1995; 221: ( ランダム ) 27) Amikura K, Arai K, Kobari M, et al. Surgery for chronic pancreatitis-extended pancreaticojejunostomy. Hepatogastroenterology 1997; 44: ( ケースシリーズ ) 28) Izbicki JR, Bloechle C, Broering DC, et al. Extended drainage versus resection inn surgery for chronic pancreatitis: a prospective randomized trial comparing the longitudinal pancreaticojejunostomy combined with local pancreatic head excision with the pylorus-preserving pancreatoduodenectomy. Ann Surg 1998; 228: ( ランダム ) 29) Kelemen D, Horvath OP. Clinical experience with different techniques of pancreas head resection for chronic pancreatitis. Dig Surg 2002; 19: 28-34( ケースシリーズ ) 30) Falconi M, Bassi C, Casetti L, et al. Long-term results of Frey s procedure for chronic pancreatitis: a longitudinal prospective study on 40 patients. J Gastrointest Surg 2006; 10: ( ケースシリーズ ) 31) Egawa S, Motoi F, Sakata N, et al. Assessment of Frey procedures: Japanese experience. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2010; 17: ( ケースシリーズ ) 検索期間外文献 a) Roch AM, Brachet D, Lermite E, et al. Frey procedure in patients with chronic pancreatitis: short and longterm outcome from a prospective study. J Gastrointest Surg 2012; 16: ( ケースシリーズ ) 87 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

111 Clinical Question 3-17 膵切除術は慢性膵炎の腹痛に有効か? 3. 治療 ❸ 疼痛対策 CQ 3-17 膵切除術は慢性膵炎の腹痛に有効か? ステートメント 病変が膵尾側に限局している場合には尾側膵切除術を行うことを提案する. 膵管拡張がなく膵頭部病変が存在する症例の難治性腹痛に対しては, 十二指腸温存膵頭切除術や膵頭十二指腸切除術を行うことを提案する. 膵頭部を中心とする病変で悪性腫瘍に起因すると考えられる所見が認められる場合は,PD または PPPD などの悪性腫瘍に準じた膵頭切除術を行うことを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) 2 (100%) 1 (100%) エビデンスレベル C C B 解説 従来は, 膵管拡張を伴う症例には膵管ドレナージ術が行われ, 膵管拡張を伴わない症例には膵切除術が選択されてきた. 慢性膵炎の難治性腹痛に対する膵切除術としては, 尾側膵切除術 (distal pancreatectomy:dp), 膵頭十二指腸切除術 (pancreatoduodenectomy:pd) と膵全摘術 (total pancreatectomy:tp) があげられ, 膵石や膵の腫大などの病変の存在部位により, 膵切除の部位が規定され術式が選択されてきた. さらに, 標準術式として胃の幽門側を切除する PD に対して, 術後の消化管ホルモンなどの温存を期待して全胃と幽門輪を温存する全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術 (pyrolus-preserving pancreatoduodenectomy:pppd) が行われており, PD,PPPD,DP,TP が慢性膵炎に対する膵切除術の標準的術式となってきた. そのうち,TP の適応の是非については後述する. PD と PPPD の成績に関する報告を表 1 1 9) にまとめた. 術死率は 5% 以下で, 周術期合併症発生率は 15% から 32% である. ほとんどが 3 年以上の観察期間で, 腹痛緩和効果は 54% から 92% の症例にみられた. 一方,DP の成績は表 2 1, 7 14) に示すように, 術死率は 5% 以下で, 周術期合併症発生率は 12% から 32% である. すべて 3 年以上の観察期間で, 腹痛の緩和効果は 57% から 90% の症例に認められた. この結果からは, どちらの術式も大差ないようにみえるが, 同一施設からの報告でも, それぞれの術式の遠隔期の除痛効果には差がある. たとえば,2001 年の Nealon らの報告では,PD/PPPD の除痛率が 91% であるのに対し,DP は 67% である 8). しかし, 同時期の Heise らの報告では,PPPD の除痛率が 54% であるのに対し,DP は 89% でまったく逆の結果で 88 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

112 3 疼痛対策 ある 9). ただし,Heise らは除痛効果には, 術式間で差がないと結論している. この違いは, 患者背景の差と手術適応の選択基準の違いに起因すると考えられる.Sawyer らは, 膵管径 5 mm 以下で膵病変が膵体尾部に限局している場合と膵頭部に病変が及ぶ場合では DP 術後の成績に有意差があり,DP は病変が膵体尾部に限局している場合には適応があると結論している 11). また,Howard らは膵管閉塞が病因となった閉塞性膵炎に限って検討した結果, 閉塞部より尾側の膵を切除する DP が, 膵頭切除よりもよい成績を示したことを報告している 15). これに対して, 膵頭切除で良好な成績をあげている報告では, 手術の理由が悪性腫瘍の疑いの頻度が高く, 術前の有腹痛率が低いことも報告されている 16). これらの成績を総合すると, 慢性膵炎における膵切除術は, 一定の腹痛除去効果を示すが,2 3 割の症例では腹痛が再燃すると考えられる. ただし, 閉塞性膵炎で病変が膵尾部に限定している場合には DP が良好な除痛効果を示す. 一方, 膵切除術には膵組織の絶対量の減少から膵内外分泌機能脱落が避けられず,24% から 77% の症例で術後に新たな内分泌障害が発生することが報告されている. さらに,PD や PPPD では術後代謝障害の発生には十二指腸切除が影響しているとの考えから,Beger が考案した十二 89 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

113 3. 治療 指腸温存膵頭切除術 (duodenum-preserving pancreas head resection:dpphr,beger 手術 ) 17) が PD,PPPD に代わる膵頭切除術式として臨床応用されている. その成績を表 ) に示す. ほぼ 90% 近い腹痛緩和率が達成されている. さらに,PD/PPPD と DPPHR を比較した複数の RCT が行われており,Buchler らは DPPHR で有意に除痛率, 体重増加率が高く, 内分泌障害の頻度が有意に低かったと報告し 22),Muller らは DPPHR が PPPD よりも胃内容排出遅延の発生が有意に低かったと報告している 23). 一方, Howard らは Beger 手術と Frey 手術を合わせた十二指腸温存術式と PPPD を比較解析し, 両群間で差が認められたのは入院経費が前者で有意に低かったのみで, 短期 / 長期の腹痛緩解率や長期の医療費には差がなかったと述べている 24). また, 最近では術後 5 年における腹痛や QOL を PD と DPPHR で比較した成績が報告されており,DPPHR が有意差をもって優れていたのは, 腹痛と QOL の主観的評価であり, 客観的には有意差はなかったという 25). したがって, 随伴する膵頭部病変に悪性腫瘍の可能性が否定できないときは, 躊躇なく PPPD または PD を行うべきである. 文献 1) Williamson RC, Cooper MJ. Resection in chronic pancreatitis. Br J Surg 1987; 74: ( ケースシリーズ ) 2) Stone WM, Sarr MG, Nagorney DM, et al. Chronic pancreatitis: results of Whipple s resection and total pancreatectomy. Arch Surg 1988; 123: ( ケースシリーズ ) 3) Martin RF, Rossi RL, Leslie KA. Long-term results of pylorus-preserving pancreatoduodenectomy for chronic pancreatitis. Arch Surg 1996; 131: ( ケースシリーズ ) 4) Stapleton GN, Williamson RC. Duodenum preserving resection of the head of the pancreas in painful chronic pancreatitis. Br J Surg 1997; 83: ( ケースシリーズ ) 5) Rumstadt B, Forssmann K, Singer MV, et al. The Whipple partial duodenopancreatectomy for the treatment of chronic pancreatitis. Hepatogastroenterology 1997; 44: ( ケースシリーズ ) 6) Traverso LW, Kozarek RA. Pancreatoduodenectomy for chronic pancreatitis: anatomic selection criteria and subsequent long-term outcome analysis. Ann Surg 1997; 226: ( ケースシリーズ ) 7) Sakorafas GH, Farnell MB, Farley DR, et al. Long-term results after surgery for chronic pancreatitis. Int J Pancreatol 2000; 27: ( ケースシリーズ ) 8) Nealon WH, Matin S. Analysis of surgical success in preventing recurrent acute exacerbations in chronic pancreatitis. Ann Surg 2001; 233: ( ケースコントロール ) 9) Heise JW, Katoh M, Luthen R, et al. Long-term results following different extent of resection in chronic pancreatitis. Hepatogastroenterology 2001; 48: ( ケースシリーズ ) 10) Keith RG, Saibil FG, Sheppard RH. Treatment of chronic alcoholic pancreatitis by pancreatic resection. Am J Surg 1989; 157: ( ケースシリーズ ) 11) Sawyer R, Frey CF. Is there still a role for distal pancreatectomy in surgery for chronic pancreatitis? Am J Surg 1994; 168: 6-9( ケースシリーズ ) 12) Rattner DW, Fernandez-del Castillo C, Warshaw AL. Pitfalls of distal pancreatectomy for relief of pain in 90 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

114 3 疼痛対策 chronic pancreatitis. Am J Surg 1996; 171: ( ケースシリーズ ) 13) Sakorafas GH, Sarr MG, Rowland CM, et al. Postobstructive chronic pancreatitis: results with distal resection. Arch Surg 2001; 136: ( ケースシリーズ ) 14) Hutchins RR, Hart RS, Pacifico M, et al. Long-term results of distal pancreatectomy for chronic pancreatitis in 90 patients. Ann Surg 2002; 236: ( ケースシリーズ ) 15) Howard TJ, Maiden CL, Smith HG, et al. Surgical treatment of obstructive pancreatitis. Surgery 1995; 118: ( ケースコントロール ) 16) Sohn TA, Campbell KA, Pitt HA, et al. Quality of life and long-term survival after surgery for chronic pancreatitis. J Gastrointest Surg 2000; 4: ( ケースコントロール ) 17) Begar HG, Krautzberger W, Bittner R, et al. Duodenum-preserving resection of the head of the pancreas in patients with severe chronic pancreatitis. Surgery 1985; 97: ( ケースシリーズ ) 18) Izbicki JR, Bloechle C, Knoefek WT, et al. Duodenum-preserving resection of the head of the pancreas in chronic pancreatitis: a prospective, randomized trial. Ann Surg 1995; 221: ( ランダム ) 19) Ikenaga H, Katoh H, Motohara T, et al. Duodenum-preserving resection of the head of the pancreas--modified procedures and long-term results. Hepatogastroenterology 1995; 42: ( ケースシリーズ ) 20) Buchler MW, Friess H, Bittner R, et al. Duodenum-preserving pancreatic head resection: long-term results. J Gastrointest Surg 1997; 1: 13-19( ケースコントロール ) 21) Beger HG Schlosser W, Friess H, et al. Duodenum-preserving head resection in chronic pancreatitis changes the natural course of the disease: a single-center 26-year experience. Am J Surg 1999; 230: ( ケースシリーズ ) 22) Buchler MW, Friess H, Muller MW, et al. Randomized trial of duodenum-preserving pancreatic head resection versus pylorus-preserving Whipple in chronic pancreatitis. Am J Surg 1995; 169: 65-69( ランダム ) 23) Muller MW, Freiss H, Beger HG, et al. Gastric emptying following pylorus-preserving Whipple and duodenum-preserving pancreatic head resection in patients with chronic pancreatitis. Am J Surg 1997; 173: ( ランダム ) 24) Howard TJ, Jones JW, Sherman S, et al. Impact of pancreatic head resection on direct medical costs in patients with chronic pancreatitis. Ann Surg 2001; 234: ( ケースコントロール ) 25) Mobius C, Max D, Uhlmann D, et al. Five-year follow-up of a prospective non-randomised study comparing duodenum-preserving pancreatic head resection with classic Whipple procedure in the treatment of chronic pancreatitis. Langenbecks Arch Surg 2007; 392: ( 横断 ) 91 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

115 Clinical Question 治療 ❸ 疼痛対策 膵管ドレナージ術は膵切除術より慢性膵炎の腹痛に有効か? CQ 3-18 膵管ドレナージ術は膵切除術より慢性膵炎の腹痛に有効か? ステートメント 膵管ドレナージ術である Frey 手術と, 膵頭切除術である Beger 手術で腹痛緩解効果に差はないが, 周術期合併症の発生頻度は Beger 手術のほうが高く, 適応があれば Frey 手術を行うことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル B 解説 これまでは, 膵管拡張症例には膵管ドレナージ術が選択され, 膵管拡張のない症例には膵切除術が行われてきた. たとえば, 膵管拡張がなく膵尾部に石灰化が限局するような症例では,DP が適応され, 壊死性膵炎後に膵頸部の膵管狭窄をきたし, 上流に膵管拡張をきたした症例では LPJ が適応と考えられる. しかし, 膵頭部に結石や腫大が認められる症例では, 膵切除術か, 膵管ドレナージ術かどちらを選択すべきである. 上記のような症例に対して, 主膵管のみならず膵頭部の分枝膵管の徹底したドレナージを目的として膵頭部のくり抜きを膵管空腸側々吻合術と組み合わせた Frey 手術が考案された 1). 膵頭部の部分切除を伴うことから, 膵切除術に分類する報告者もあるが, 膵頭部膵管分枝の一括ドレナージを目的として膵切除を追加したものであり, 膵管ドレナージ術に分類すべきである. 一方,Beger は, 慢性膵炎の腹痛のペースメーカーが膵頭部に存在するという理念に基づいて膵頭部の切除が重要であるとの考えから十二指腸温存膵頭切除術 (duodenum-preserving pancreas head resection:dpphr,beger 手術 ) を考案し, 低侵襲で膵頭部を選択的に切除することが, 慢性膵炎の除痛に有効であることを示した 2). この術式は, 周囲臓器の切除を可及的に抑えた膵頭切除術である. 現時点では, 難治性腹痛を伴い膵頭部に病変が及ぶ慢性膵炎に対する標準術式として, これら両術式が広く行われている. 両者を比較する RCT の結果も報告されており,Izbichi らは, 膵頭部に主病変がある慢性膵炎患者 42 例を,Beger 手術 20 例,Frey 手術 22 例に無作為割付し, 解析した結果を 1995 年に報告している 3). 追跡率 100% で平均観察期間 1.5 年の成績は, 周術期死亡はなく, 全症例の合併症発生率 14% であった. 周術期合併症は Beger 手術 20%,Frey 手術で 9% の頻度で発生し, 有意差があった. 遠隔成績は, 腹痛緩和率 (Beger 手術 95%,Frey 手術 94%),QOL 改善率 ( 両群とも 67%), 内外分泌能の変化は群間に有意差はみられなかったと報告している. さらに, 同じグループから無作為に割り付けられた Beger 38 例と Frey 36 例の術後 104 ヵ月での遠隔成績が比較解析されており, その結果は死亡率 (31% vs. 32%),QOL スコア 92 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

116 3 疼痛対策 (66.7 vs. 58.4), 疼痛スコア (11.25 vs ), 外分泌障害率 (88% vs. 78%), 内分泌障害率 (56% vs. 60%) の, すべてで両者に差がなかったという 4). さらに, 他の研究者からも, 非ランダム化試験であるが両術式の長期成績の比較が報告されており,Beger 手術 42 例と Frey 手術 50 例の術後平均 5 年の時点での腹痛完全緩解率はそれぞれ,50% と 62% で, やや Frey 手術のほうが勝っていたが, 内外分泌能や体重増加などでは差がなかったと報告されている 5). 両術式間の本質的な差は, 膵頭部切除量の差と門脈前面 膵後面間の剝離の有無である.Izbicki らの報告では,Beger 手術においてより手術時間が長く, 輸血量が多い傾向があり, 周術期合併症発生率の差も, これに起因すると考えられる. 慣れた術式を行うべきと考えられ, 日本ではほとんど Beger 手術が行われていない実情から, あえて Beger 手術を行う必要はないと考えられる. 文献 1) Frey CF, Smith GJ. Description and rationale of a new operation for chronic pancreatitis. Pancreas 1987; 2: ( ケースシリーズ ) 2) Begar HG, Krautzberger W, Bittner R, et al. Duodenum-preserving resection of the head of the pancreas in patients with severe chronic pancreatitis. Surgery 1985; 97: ( ケースシリーズ ) 3) Izbicki JR, Bloechle C, Knoefel WT, et al. Duodenum-preserving resection of the head of the pancreas in chronic pancreatitis: a prospective, randomized trial. Ann Surg 1995; 221: ( ランダム ) 4) Strate T, Taherpour Z, Bloechle C, et al. Long-term follow-up of a randomized trial comparing the Beger and Frey procedures for patients suffering from chronic pancreatitis. Ann Surg 2005; 241: ( ランダム ) 5) Keck T, Wellner UF, Riediger H, et al. Long-term outcome after 92 duodenum-preserving pancreatic head resections for chronic pancreatitis: comparison of Beger and Frey procedures. J Gastrointest Surg 2010; 14: ( ケースコントロール ) 93 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

117 Clinical Question 3-19 膵全摘術は慢性膵炎の難治性腹痛に有効か? 3. 治療 ❸ 疼痛対策 CQ 3-19 膵全摘術は慢性膵炎の難治性腹痛に有効か? ステートメント 難治性腹痛に対する膵全摘術は, 他の治療法が無効で, 術後の禁酒と厳密な生活管理指導が可能な症例にのみ行うことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル B 解説 慢性膵炎の難治性腹痛に対しては, 膵管拡張が存在すれば膵管ドレナージ術が選択され, 膵頭部または膵尾部に病変が偏在しているものには膵部分切除が選択される. しかし, 膵管拡張がなく病変が膵全体に及ぶ症例や, 手術を含む様々な治療に抵抗する腹痛に対しては膵全摘術が行われてきた. 理論的には腹痛の発生源である膵臓が完全に除去されるので除痛が得られると考えられる. しかし, 膵全摘術後の長期成績を解析した比較的症例数の多い報告では, 腹痛改善率は 67 90% とされている 1 7). これらの報告のなかには, 膵全摘術と膵頭十二指腸切除術や十二指腸を温存した膵亜全摘術との治療成績を比較し, これらの術式より膵全摘術が腹痛改善率で劣っていたとするものもある 2, 7). また, 膵全摘術後に除痛効果が得られない症例では全例で麻薬が使用されたとする報告もあり 6), 膵全摘術後であっても除痛効果は完全ではない.Imrie は慢性膵炎手術後の難治性腹痛症例の治療に関する報告 4 報をまとめて分析し, 膵全摘術症例 195 例の腹痛改善率は 72% であるが,156 例 (80%) がすでに何らかの慢性膵炎に対する手術を受けており, 再手術が多いことも考慮すべきであると述べている 8). 一方, 膵全摘術後には膵内外分泌機能の完全脱落をきたし, 一生涯にわたって血糖管理や消化酵素薬の補充を含めた厳密な栄養管理が不可欠となる. 膵全摘術を受けた 38 例の長期予後追跡結果では, 遠隔死亡は 15 例 (39%) にも達し, そのうち 11 例が膵炎に関連した死亡で, さらに 8 例はアルコール摂取再開から糖尿病が悪化し, 低血糖発作で死亡したという 6). そこで, 近年, 欧米では膵全摘と同時に自家膵島移植を行う試みが多く報告されている 9, 10), (J Gastrointest Surg 2012; 16: a),am Surg 2012; 78: b) [ 検索期間外文献 ]). それらによると, いずれも, 手術により腹痛の程度が改善し, 血糖コントロールも良好であると述べられている. また, 膵全摘術と自家膵島移植に関するシステマティックレビューも行われており,5 論文 296 症例の結果の解析では, すべての報告で除痛効果が報告されているが, 麻薬使用の減少効果は 2 論文のみ報告されていた 11). 自家膵島移植の効果に関しては, インスリン不要例が術後 5 年で 46% とまずまず良好な成績が報告されている. 94 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

118 3 疼痛対策 このように, 膵全摘術の是非については現時点でも賛否両論があり, 膵全摘術は手術的治療を含め他の治療法が無効な症例に限って行われるべきである. 術前のアルコール摂取状態, 鎮痛薬服薬状況と薬物中毒の有無を正確に把握することも必要である. 膵全摘術後には膵機能の完全脱落状態から厳密な生活管理が要求されることを患者本人に十分に説明し, 手術に臨むべきである. 文献 1) Williamson RC, Cooper MJ. Resection in chronic pancreatitis. Br J Surg 1987; 74: ( ケースシリーズ ) 2) Stone WM, Sarr MG, Nagorney DM, et al. Chronic pancreatitis: results of Whipple s resection and total pancreatectomy. Arch Surg 1988; 123: ( ケースシリーズ ) 3) Cooper MJ, Williamson RC, Benjamin IS, et al. Total pancreatectomy for chronic pancreatitis. Br J Surg 1987: 74: ( ケースシリーズ ) 4) Eckhauser FE, Strodel WE, Knol JA, et al. Near-total pancreatectomy for chronic pancreatitis. Surgery 1984; 96: ( ケースシリーズ ) 5) Linehan IP, Lambert MA, Brown DC, et al. Total pancreatectomy for chronic pancreatitis. Gut 1988; 29: ( ケースシリーズ ) 6) Fleming WR, Williamson RC. Role of total pancreatectomy in the treatment of patients with end-stage chronic pancreatitis. Br J Surg 1995; 82: ( ケースシリーズ ) 7) Wahoff DC, Paplois BE, Najarian JS, et al. Autologous islet transplantation to prevent diabetes after pancreatic resection. Ann Surg 1995; 222: ( ケースシリーズ ) 8) Imrie CW. Management of recurrent pain following previous surgery for chronic pancreatitis. World J Surg 1990; 14: 88-93( メタ ) 9) Garcea G, Weaver J, Phillips J, et al. Total pancreatectomy with and without islet cell transplantation for chronic pancreatitis: a series of 85 consecutive patients. Pancreas 2009; 38: 1-7( ケースシリーズ ) 10) Morgan K, Owczarski SM, Borckardt J, et al. Pain control and quality of life after pancreatectomy with islet autotransplantation for chronic pancreatitis. J Gastrointest Surg 2012; 16: ( ケースシリーズ ) 11) Bramis K, Gordon-Weeks AN, Friend PJ, et al. Systematic review of total pancreatectomy and islet autotransplantation for chronic pancreatitis. Br J Surg 2012; 99: ( メタ ) 検索期間外文献 a) Walsh RM, Saavedra JR, Lentz G, et al. Improved quality of life following total pancreatectomy and autoislet transplantation for chronic pancreatitis. J Gastrointest Surg 2012; 16: ( ケースシリーズ ) b) Morgan KA, Theruvath T, Owczarski S, et al. Total pancreatectomy with islet autotransplantation for chronic pancreatitis: do patients with prior pancreatic surgery have different outcomes? Am Surg 2012; 78: ( ケースコントロール ) 95 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

119 Clinical Question 3-20 内臓神経切除術は慢性膵炎の腹痛に有効か? 3. 治療 ❸ 疼痛対策 CQ 3-20 内臓神経切除術は慢性膵炎の腹痛に有効か? ステートメント 胸腔鏡下内臓神経切除術は, 腹痛が交感神経由来である症例に行うことを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル C 解説 慢性膵炎に伴う難治性腹痛に対する神経手術としては, 膵頭神経叢切除術や左内臓神経節切除術などが報告されているが, 安定した成績を示しているのは内臓神経切除術である. 最近の報告をまとめた 248 例の内臓神経切除術の総説では, 平均観察期間 22.2 ヵ月で腹痛改善率 85.5% とされている 1). ただし, 個々の報告としては RCT による質の高いものは少ない. その結果は表 1 に示したとおりである 2 13). ほとんどの報告が胸腔鏡下で行われており,3 報では最初から両側,2 報では除痛不良例に対側内臓神経切除が追加されている. なお,Bradley や Howard らは, 交感神経痛か体性痛かを判別しうる differential epidural anesthesia の術前検査としての有用性を報告している 6, 12). 本術式は交感神経痛にのみ有効であり, 体性痛には無効である. また,Howard らは differential epidural anesthesia にて交感神経痛と診断され両側胸腔鏡下内臓神経切除術を行った 55 例を, すでに手術や内視鏡的治療を受け 96 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

120 3 疼痛対策 ている 38 例と, 受けていない 17 例に分けて解析したところ, 治療後 3,6 ヵ月の早期では両群ともに有意な除痛効果を認めたが, それ以降は前治療のない群でのみ有意な除痛効果が持続したと報告した 12). また, 治療 12 ヵ月後の QOL も前治療のない群でのみ, 有意な改善がみられたという. さらに,Stefaniak らは, 術前 3 ヵ月以内に麻薬投与を受けた症例は除痛効果が持続せず,6 ヵ月以降には除痛効果が消失することを報告している 13, 14). さらに, 胸腔鏡下内臓神経切除術に関する 16 の報告における 302 症例の結果を報告したシステマティックレビューでは, 6ヵ月後の除痛率は 90% であるが,15 ヵ月以降では 49% に低下すること,12.9% の症例にさらなる除痛対策が必要であったことが報告されている 15). つまり, 本治療は膵管拡張がなく膵病変が膵全体に及び, しかも膵機能が保たれているような他の治療法の適応がない難治性腹痛を有する慢性膵炎に適応とするべきであり, 麻薬を投与された患者では効果は期待できない. 文献 1) Bradley EL 3rd, Bem J. Nerve blocks and neuroablative surgery for chronic pancreatitis. World J Surg 2003; 27: Erratum World J Surg 2004; 28: ( メタ ) 2) Stone HH, Chauvin EJ. Pancreatic denervation for pain relief in chronic alcohol associated pancreatitis. Br J Surg 1990; 77: ( ケースシリーズ ) 3) Cuschieri A, Shimi SM, Crosthwaite G, et al. Bilateral endoscopic splanchnicectomy through a posterior thoracoscopic approach. JRColl Surg Edinb 1994; 39: 44-47( ケースシリーズ ) 4) Kusano T, Miyazato H, Shiraishi M, et al. Thoracoscopic thoracic splanchnicectomy for chronic pancreatitis with intractable abdominal pain. Surg Laparosc Endosc 1997; 7: ( ケースシリーズ ) 5) Noppen M, Meysman M, D Haese J, et al. Thoracoscopic splanchnicolysis for the relief of chronic pancreatitis pain: experience of a group of pneumologists. Chest 1998; 113: ( ケースシリーズ ) 6) Bradley EL 3rd, Reynhout JA, Peer GL. Thoracoscopic splanchnicectomy for small duct chronic pancreatitis: case selection by differential epidural analgesia. J Gastrointest Surg 1998; 2: 88-94( ケースシリーズ ) 7) Moodley J, Singh B, Shaik AS, et al. Thoracoscopic splanchnicectomy: pilot evaluation of a simple alternative for chronic pancreatic pain control. World J Surg 1999; 23: ( ケースシリーズ ) 8) Ihse I, Zoucas E, Gyllstedt E, et al. Bilateral thoracoscopic splanchnicectomy: effects on pancreatic pain and function. Ann Surg 1999; 230: ; discussion: ( ケースシリーズ ) 9) Imrie CW, Menezes N, Carter CR. Diagnosis of chronic pancreatitis and newer aspects of pain control. Digestion 1999; 60 (Suppl 1): ( ケースシリーズ ) 10) Buscher HC, Jansen JJ, van Goor H. Bilateral thoracoscopic splanchnicectomy in patients with chronic pancreatitis. Scand J Gastroenterol Suppl 1999; 230: 19-34( ケースシリーズ ) 11) Leksowski K. Thoracoscopic splanchnicectomy for the relief of pain due to chronic pancreatitis. Surg Endosc 2001; 15: ( ケースシリーズ ) 12) Howard TJ, Swofford JB, Wagner DL, et al. Quality of life after bilateral thoracoscopic splanchnicectomy: long-term evaluation in patients with chronic pancreatitis. J Gastrointest Surg 2002; 6: ( ケースシリーズ ) 13) Stefaniak T, Vingerhoets A, Makarewicz W, et al. Opioid use determines success of videothoracoscopic splanchnicectomy in chronic pancreatic pain patients. Langenbecks Arch Surg 2008; 393: ( ケースコントロール ) 14) Makarewicz W, Stefaniak T, Kossakowska M, et al. Effect of NCPB and VSPL on pain and quality of life in chronic pancreatitis patients. World J Gastroenterol 2003; 27: ( ケースコントロール ) 15) Baghdadi S, Abbas MH, Albouz F, et al. Systematic review of the role of thoracoscopic splanchnicectomy in palliating the pain of patients with chronic pancreatitis. Surg Endosc 2008; 22: ( メタ ) 97 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

121 Clinical Question 治療 ❹ 外分泌不全の治療 適正カロリーと食事内容の指導は慢性膵炎の治療に有用か? CQ 3-21 適正カロリーと食事内容の指導は慢性膵炎の治療に有用か? ステートメント 慢性膵炎においては, 個々の病期 病態 栄養状態に応じて適正カロリーや食事内容を指導することが, 腹痛の緩和や栄養状態の改善に有用であり, 行うことを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (100%) エビデンスレベル D 解説 慢性膵炎における適正カロリー量と食事内容を含む生活指導法を具体的に記した指針が示された 1). これによると, 個々の病期 病態 栄養状態に応じて食事療法を決定する必要があるとされる 1). 慢性膵炎の栄養療法においては, 下記に述べるように代償期と非代償期に分けた観点から考慮しなければならない 1 5). 慢性膵炎代償期においては, 腹痛発作の管理が最も重要である 1 5). 脂質の過剰摂取や飲酒により反復する腹痛発作が誘発されると, 経口摂取が困難になることがあり, 栄養状態の低下につながる. そのため, 腹痛が存在する症例では脂肪制限 (1 日量 g) や断酒が最も重要である 1, 2, 5). 脂肪投与量 10 g 以下ではほとんど血中 CCK 濃度の上昇がないことから,1 回の食事摂取脂肪量を 10 g 以下にすることを推奨する報告もある 3, 4). 一方で過度の脂質制限は脂溶性ビタミン不足につながるおそれがある 1, 5). そのため, 腹痛の存在しない症例では制酸薬や消化酵素薬を補充しながら,30 g 以上 (40 60 g) の脂質を摂取しても問題ないとされる 1, 5). 一方, 慢性膵炎非代償期においては, 腹痛が消失していることが多く, 消化吸収障害や膵性糖尿病が主な病態となる 1, 2, 5). 栄養状態が低下している症例が多く, 個々の栄養状態や膵内外分泌機能の評価を行い, 長期的展望に立った栄養管理が必要である 1, 2, 5). 消化吸収障害が存在する場合には制酸薬や十分な消化酵素薬の投与を行う 1 3, 5). 適切なエネルギー投与量としては標準体 4, 5) 3) 重 (kg) kcal とする報告や標準体重 (kg) 30 kcal 以上を原則とする報告がある. 適切なエネルギー投与により糖尿病の増悪をきたすことがあり, 糖尿病のコントロールは適切なエネルギー量を投与したあとに行うのが望ましい 1, 5, 6). 脂肪摂取量に関しては 1 日 g 3) 以上の摂取を推奨する意見や全カロリーの 30 40% の摂取を推奨する意見がある 7). また, 中鎖脂肪酸はリパーゼやコリパーゼ, 胆汁酸の影響を受けずに吸収されるため, 体重の回復が十分でない症例での摂取を推奨する報告もある 7 9). 非代償期においては, ビタミン ( 特に脂溶性ビタミン ) や微量元素の欠乏を呈することもあり, 食事摂取が長期にわたり困難な場合は補充を要すると報告されている 1 11). 98 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

122 4 外分泌不全の治療 文献 1) 下瀬川徹, 伊藤鉄英, 中村太一, ほか. 特集 : 慢性膵炎の断酒 生活指導指針. 膵臓 2010; 25: ( ガイドライン ) 2) 片岡慶正, 阪上順一, 十亀義生, ほか. 消化器病と栄養学 膵疾患の栄養管理.G.I.Research 2002; 10: ) 中村光男, 武部和夫. 慢性膵炎と食事療法. 栄養 - 評価と治療 1996; 13: ) 柳町幸, 丹藤雄介, 中村光男, ほか. 進歩した膵炎 膵癌の診療 慢性膵炎 慢性膵炎の食事療法と栄養管理. 臨牀と研究 2010; 87: ) 五十嵐久人, 伊藤鉄英, 河邉顕, ほか. 膵炎の病態 治療とケア 慢性膵炎の病態 診断 治療. 消化器肝胆膵ケア 2008; 13 (2): ) 伊藤鉄英, 五十嵐久人, 河邊顕. 胆膵 膵性糖尿病の実態と治療指針.Annual Review 消化器, 中外医学社, 東京,2012: p ) Meier RF, Beglinger C. Nutrition in pancreatic diseases. Best Pract Res Clin Gastroenterol 2006; 20: ) Pfutzer RH, Schneider A. Treatment of alcoholic pancreatitis. Dig Dis 2005; 23: ) Duggan S, O Sullivan M, Feehan S, et al. Nutrition treatment of deficiency and malnutrition in chronic pancreatitis: a review. Nutr Clin Pract 2010; 25: ) 丹藤雄介, 渡辺拓, 葛西伸彦. 慢性膵炎患者の栄養アセスメント. 消化と吸収 1997; 20: ( ケースコントロール ) 11) Nakamura T, Arai Y, Terada A. Dietary analysis of Japanese patients with chronic pancreatitis in stable conditions. J Gastroenterol 1994; 29: ( ケースコントロール ) 99 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

123 Clinical Question 3-22 消化酵素薬は慢性膵炎の治療に有用か? 3. 治療 ❹ 外分泌不全の治療 CQ 3-22 消化酵素薬は慢性膵炎の治療に有用か? ステートメント 脂肪便と体重減少を伴う慢性膵炎患者には高力価の消化酵素薬による治療を行うことを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (100%) エビデンスレベル A 解説 消化酵素薬の有効性が明らかな病態は膵外分泌機能不全による脂肪便であり, 消化酵素薬としてリパーゼ力価の高い腸溶性ミクロスフィア製剤であるパンクレリパーゼ製剤が推奨される 1 4). 5, 6) 消化酵素薬により便中脂肪排泄量の有意な減少を認めた二重盲検クロスオーバー試験の結果の他に, 慢性膵炎手術後症例におけるパンクレアチン製剤による脂肪便減少効果とともに蛋白代謝改善や体重増加の長期的有効性の報告がある 7). また, 近年実施されたパンクレリパーゼ製剤によるプラセボ対照無作為化二重盲検試験において脂肪 窒素量吸収率を有意に改善するとともに排便回数 便中脂肪排泄量 便中窒素排泄量や便の性状 お腹の張りが有意に改善したと報告されており, その後に継続して実施された長期の試験においては体重増加も確認されている 8, 9). 脂肪便を含めた慢性膵炎患者の QOL 評価から検討した多施設前向き調査において消化酵素薬の有効性が認められている 10). この試験では新規の慢性膵炎診断症例と数年前から診断され治療中の慢性膵炎症例の 2 群に分けて, 消化酵素薬の投与量を個々の膵外分泌機能の障害の程度に応じて決定した消化酵素補充療法が行われた.European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire Core 30(EORTC QLQ-C30) を主体とした QOL 評価が行われた結果, 両群ともに明らかな体重増加と便通の改善効果が認められた. 脂肪便と腹痛の減少とともに, 作業能力, 経済負担を含めた QOL 全体の改善効果が消化酵素補充療法によりもたらされたと報告されている 10). 6) 腹痛の軽減傾向と鎮痛薬使用量の減少が消化酵素薬投与で認められたという報告やプロテ 11) アーゼ活性の高い消化酵素薬大量投与で腹痛が軽減する報告もある. さらに, 慢性膵炎の腹痛コントロール対策のひとつとして消化酵素薬の有用性を示唆する報告もある 12). しかし, 最近の無作為化比較試験の結果では, 高力価プロテアーゼ膵酵素薬を 8 ヵ月内服した腹痛を有する再発性慢性膵炎症例の疼痛スコアと鎮痛薬使用量評価から, その長期的有用性は明らかでないとの報告がされている 13). 慢性膵炎は病期 病態, 合併症などにより多彩な自他覚症状を示し, 症状発現の様式も個人差が大きく, 治療目標のエンドポイントの相違により消化酵素薬の有用性の評価が異なり, さ 100 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

124 4 外分泌不全の治療 らには個体の膵外分泌機能の障害の程度, 胃酸分泌能や胃運動, さらに用いる消化酵素薬の内容, 剤形, 力価, 内服量などによりその効果発現が左右される点に注意が必要である. 脂肪便や消化不良の程度にかかわらず膵外分泌機能不全と診断されれば消化酵素薬の内服を推奨する報告もあり, 多彩な症状を確認して消化酵素薬による治療を考慮すべきである 14 16). 日本で使用可能な消化酵素薬を表 1 に記すが, 力価の高い消化酵素薬は 1 製剤のみとなる. 他の消化酵素薬では承認されている用量の 3 倍量 ( ときには 12 倍量 ) が必要とされる. 文献 1) Nakamura T, Takeuchi T, Tando Y. Pancreatic dysfunction and treatment options. Pancreas 1998; 16: ) Marotta F, O Keefe SJ, Marks IN, et al. Pancreatic enzyme replacement therapy: importance of gastric acid secretion, H2-antagonists, and enteric coating. Dig Dis Sci 1989; 34: ( ケースコントロール ) 3) Lankisch PG. Enzyme treatment of exocrine pancreatic insufficiency in chronic pancreatitis. Digestion 1993; 54 (Suppl 2): ) Layer P, Keller J, Lankisch PG. Pancreatic enzyme replacement therapy. Curr Gastroenterol Rep 2001; 3: ) Armbrecht U, Svanvik J, Stockbrugger. Enzyme substitution in chronic pancreatitis: effects on clinical and functional parameters and on the hydrogen (H2) breath test. Scand J Gastroenterol Suppl 1986; 126: ( 非ランダム ) 6) Halgreen H, Pedersen NT, Worning H. Symptomatic effect of pancreatic enzyme therapy in patients with chronic pancreatitis. Scand J Gastroenterol 1986; 21: ( 非ランダム ) 7) Van Hoozen CM, Peeke PG, Taubeneck M, et al. Efficacy of enzyme supplementation after surgery for chronic pancreatitis. Pancreas 1997; 14: ( コホート ) 8) Whitcomb DC, Lehman GA, Vasileva G, et al. Pancrelipase delayed-release capsules (CREON) for exocrine pancreatic insufficiency due to chronic pancreatitis or pancreatic surgery: a double-blind randomized trial. Am J Gastroenterol 2010; 105: ( ランダム ) 9) Gubergrits N, Malecka-Panas E, Lehman GA, et al. A 6-month, open-label clinical trial of pancrelipase delayed-release capsules (Creon) in patients with exocrine pancreatic insufficiency due to chronic pancreatitis or pancreatic surgery. Aliment Pharmacol Ther 2011; 33: ( ケースコントロール ) 101 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

125 3. 治療 10) Czako L, Takacs T, Hegyi P, et al. Quality of life assessment after pancreatic enzyme replacement therapy in chronic pancreatitis. Can J Gastroenterol 2003; 17: ( コホート ) 11) Isaksson G, Ihse I. Pain reduction by an oral pancreatic enzyme preparation in chronic pancreatitis. Dig Dis Sci 1983; 28: ( 非ランダム ) 12) Andren-Sandberg A. Enzyme substitution in pancreatic disease. Digestion 1987; 37 (Suppl 1): ) Malesci A, Gaia E, Fioretta A, et al. No effect of long-term treatment with pancreatic extract on recurrent abdominal pain in patients with chronic pancreatitis. Scand J Gastroenterol 1995; 30: ( ランダム ) 14) Bornman PC, Botha JF, Ramos JM, et al. Guideline for the diagnosis and treatment of chronic pancreatitis. S Afr Med J 2010; 100: ( ガイドライン ) 15) Sikkens EC, Cahen DL, Kuipers EJ, et al. Pancreatic enzyme replacement therapy in chronic pancreatitis. Best Pract Res Clin Gastroenterol 2010; 24: ) Dominguez-Munoz JE, Iglesias-Garcia J. Oral pancreatic enzyme substitution therapy in chronic pancreatitis: is clinical response an appropriate marker for evaluation of therapeutic efficacy? JOP 2010; 11: ( コホート ) 102 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

126 Clinical Question 3-23 胃酸分泌抑制薬は慢性膵炎の治療に必要か? 3. 治療 ❹ 外分泌不全の治療 CQ 3-23 胃酸分泌抑制薬は慢性膵炎の治療に必要か? ステートメント 脂肪便を伴う慢性膵炎患者で消化酵素薬が効果不十分な場合, 胃酸分泌抑制薬を併用することを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル B 解説 リパーゼ活性が失活しないためには ph>4.0が必要とされており, 重炭酸塩分泌能の低下している慢性膵炎患者では十二指腸内 ph が低下しているために, 消化酵素は失活し十分な効果が得られない. 消化酵素薬を併用しない PPI 単独療法による研究では, アルコール性慢性膵炎症例の胃内および上部小腸内 24 時間 ph モニタリングで食後 ph レベルが PPI( オメプラゾール ) 単独投与により上昇することと便中脂肪排泄が軽減する報告がある 1). 理論的には, 胃酸分泌抑制薬の同時内服により胃十二指腸内の ph を上昇させることにより消化酵素薬の効果発現を高めることができるとして, 消化酵素薬 ( 非腸溶性 ) 補充療法に酸分泌抑制薬の併用が有効とする報告がある 2). 消化酵素製剤単独で難治性の脂肪便症例では H 2 受容体拮抗薬や PPI を消化酵素補充療法に併用することが推奨される 3, 4). 高度な脂肪便を伴う症例への消化酵素補充療法に H 2 受容体拮抗薬 ( ラニチジン ) を併用した臨床研究では, 胃酸分泌能が正常もしくは高い場合,H 2 受容体拮抗薬併用の有効性が報告されている 5). アルコール性慢性膵炎症例に対し,H 2 受容体拮抗薬 ( ラニチジン ) を消化酵素薬 ( 非腸溶性 ) に加えた場合, 胃酸分泌が低い症例では相加効果がなく, 胃酸分泌が正常もしくは高い場合に効果があるという同様の結果を導いた報告がみられる 6). 消化酵素薬 ( 腸溶性 ) 補充療法を要する慢性膵炎に PPI( オメプラゾール ) を加えた場合, 便中蛋白排泄や便中脂肪排泄に有意な低下は認めなかった報告もあり 7), 腸溶性消化酵素薬に胃酸分泌抑制薬の併用を有効とするだけのエビデンスレベルの高い報告は乏しいものの, 膵外分泌不全に対するステップワイズアプローチとして, 消化酵素薬 ( 腸溶性 ) 補充療法の効果が不十分な場合に胃酸分泌抑制薬併用の有用性を記載した海外総説論文が散見される. 脂肪便以外の病態治療に及ぼす消化酵素補充療法への制酸薬併用効果については, エビデンスレベルの高い報告はない. 103 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

127 3. 治療 文献 1) Nakamura T, Arai Y, Tando Y, et al. Effect of omeprazole on changes in gastric and upper small intestine ph levels in patients with chronic pancreatitis. Clin Ther 1995; 17: ( ケースシリーズ ) 2) Lankisch PG. Acute and chronic pancreatitis: an update on management. Drugs 1984; 28: ) Scolapio JS, Malhi-Chowla N, Ukleja A. Nutrition supplementation in patients with acute and chronic pancreatitis. Gastroenterol Clin North Am 1999; 28: ) Perry RS, Gallagher J. Management of maldigestion associated with pancreatic insufficiency. Clin Pharm 1985; 4: ) Marotta F, O Keefe SJ, Marks IN, et al. Pancreatic enzyme replacement therapy: importance of gastric acid secretion, H2-antagonists, and enteric coating. Dig Dis Sci 1989; 34: ( ケースコントロール ) 6) Dominguez-Munoz JE. Pancreatic enzyme replacement therapy for pancreatic exocrine insufficiency: when is it indicated, what is the goal and how to do it? Adv Med Sci 2011; 56: 1-5( コホート ) 7) Delhaye M, Meuris S, Gohimont AC, et al. Comparative evaluation of a high lipase pancreatic enzyme preparation and a standard pancreatic supplement for treating exocrine pancreatic insufficiency in chronic pancreatitis. Eur J Gastroenterol Hepatol 1996; 8: ( コホート ) 104 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

128 Clinical Question 治療 ❹ 外分泌不全の治療 脂溶性ビタミン薬は慢性膵炎の治療に必要か? CQ 3-24 脂溶性ビタミン薬は慢性膵炎の治療に必要か? ステートメント 消化吸収障害を伴う慢性膵炎治療に際しては, 脂溶性ビタミン薬の補充の前に十分量の膵消化酵素薬の投与を行うことを推奨する. 消化吸収障害の程度, 栄養評価に応じて, 脂溶性ビタミン薬を補充することを考慮する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (80%) 2 (100%) エビデンスレベル B C 解説 脂肪便を伴う高度進行性の慢性膵炎では, 明らかに脂溶性ビタミン D,E,K の欠乏を生じる 1) 2) 報告とともにカルシウムや亜鉛, セレンといった微量元素, さらには水溶性ビタミン B 1, B 2,B 3) 12 が欠乏する報告がある. 慢性膵炎ではビタミン D 3 の低下がみられることから 歳での慢性膵炎は経過の長い疾患であり, 骨病変進展阻止を目指してビタミン D 製剤の投与を 4) 推奨する報告があり, ビタミン D 製剤単独投与でも慢性膵炎症例の血清 25(OH)D の上昇がみられる 5). 一方で, 膵内外分泌機能障害を伴う慢性膵炎における各種脂溶性ビタミン欠乏は, 膵消化酵素薬, もしくは H 2 受容体拮抗薬あるいは PPI 投与を併用した膵消化酵素薬投与によりその多くは改善する 6). また, この時期の慢性膵炎では膵消化酵素薬投与中の血中ビタミン D は維持されており, 骨密度は対象としての一次性糖尿病症例と明らかな差はなかったとする報告もある 7). 食事摂取が長期にわたり困難でない限り, 脂溶性ビタミン欠乏例に対してはまず適切な食事指導と栄養評価のもとに, 十分量の膵消化酵素補充療法を行い, その効果発現が期待できない場合に, 脂溶性ビタミン薬の補充を考慮する必要性がある. 慢性膵炎症例に膵消化酵素補充療法のもとにビタミン D 補充を行えば, 健常人と同様に血清 25(OH)D の正常化をもたらすことが示されている 8). 脂溶性ビタミン薬の補充により, 慢性膵炎患者の心臓血管病や自己免疫性疾患, 悪性疾患, 1 型 2 型糖尿病の合併率の低下や全致死率低下など, イベントに対するリスク低下を証明した報告はみられない. 105 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

129 3. 治療 文献 1) Nakamura T, Takebe K, Imamura K, et al. Fat-soluble vitamins in patients with chronic pancreatitis (pancreatic insufficiency). Acta Gastroenterol Belg 1996; 59: 10-14( ケースコントロール ) 2) Twersky Y, Bank S. Nutritional deficiencies in chronic pancreatitis. Gastroenterol Clin North Am 1989; 18: ( 横断 ) 3) 渡辺拓, 中村光男, 丹藤雄介. 慢性膵炎患者の血中水溶性ビタミンの検討. 消化と吸収 1998; 20: ( ケースコントロール ) 4) Payer J, Killinger Z, Aleryany S, et al. Vitamin D deficiency as one of the causes of bone changes in chronic pancreatitis. Vnitr Lek 1999; 45: [Article in Slovak]( ケースシリーズ ) 5) Bang UC, Matzen P, Benfield T, et al. Oral cholecalciferol versus ultraviolet radiation B: effect on vitamin D metabolites in patients with chronic pancreatitis and fat malabsorption: a randomized clinical trial. Pancreatology 2011; 11: ( ランダム ) 6) Nakamura T, Takeuchi T, Tando Y. Pancreatic dysfunction and treatment options. Pancreas 1998; 16: ) 楠美尚子, 中村光男, 丹藤雄介, ほか. 消化吸収不良を伴った慢性膵炎症例における脂溶性ビタミンと骨密度. 消化と吸収 2000; 22: ( ケースコントロール ) 8) Klapdor S, Richter E, Klapdor R. Vitamin D status and per-oral vitamin D supplementation in patients suffering from chronic pancreatitis and pancreatic cancer disease. Anticancer Res 2012; 32: ( ケースコントロール ) 106 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

130 Clinical Question 3-25 禁酒 食事指導は膵性糖尿病の治療に有用か? 3. 治療 ❺ 糖尿病の治療 CQ 3-25 禁酒 食事指導は膵性糖尿病の治療に有用か? ステートメント 慢性膵炎患者の糖尿病には, 禁酒指導や個々の症例に応じた食事指導を行うことを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (100%) エビデンスレベル C 解説 慢性膵炎に伴う膵性糖尿病患者の多くは, 消化吸収障害による便中脂肪排泄の増加や, 糖尿病による尿糖排泄の増加による栄養障害を伴っている. また, ケトン体産生が抑制されるためケトアシドーシスは起こりにくいが, グルカゴン分泌不全により血糖の変動が大きく, 低血糖に陥りやすい. 一方, 低血糖時には自律神経障害により低血糖に伴う症状が出現しにくい. そのため, 低血糖性昏睡に陥ることもまれではない. 以上のことから, 膵性糖尿病の治療においては栄養状態の評価や消化吸収障害 膵性糖尿病の程度を把握し, 低血糖に注意して治療を行っていく必要がある. 膵性糖尿病の治療において, まず栄養状態を改善させることが重要である 1, 2). 栄養状態の評価としては, 体重測定,BMI,Hb, コレステロール, アルブミンなどが用いられる 1, 2). 膵内外分泌能の評価も併せて行い, 必要に応じて消化酵素薬や制酸薬の補充を行う 1 3). 膵性糖尿病においては栄養状態の改善を優先させるため, 一般には高血糖を回避するカロリー制限は行わない 1, 2). 適正カロリー量は標準体重 (kg) 30 kcal 以上が推奨される 1, 2). 膵性糖尿病をきたす慢性膵炎は非代償期であることが多く, 腹痛症状は軽減 消失していることが多い 1, 2). また, 膵外分泌能低下により便中へ脂肪が喪失していることを考慮しても, 一律に脂肪制限を行うことは慎むべきである 1). 適正な脂肪摂取量は 1 日あたり g との報告がある 1). 膵性糖尿病ではインスリン治療を行う患者も多く, 低血糖に注意することが重要である 1, 2, 4, 5). 低血糖時の対応についても指導を行い, 可能な場合は血糖自己測定管理も指導する 1, 5). インスリンは少量頻回投与とし, 投与量の変更は少量ずつ行う 1, 2, 5). アルコールは慢性膵炎の病態を進展させるおそれがあるだけではなく, 低血糖を誘発するため, 原則として禁酒を指導する 1, 2, 4). 107 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

131 3. 治療 文献 1) 伊藤鉄英. 膵性糖尿病の病態と治療. 日本医事新報 2011; 4544: ) 下瀬川徹, 伊藤鉄英, 中村太一, ほか. 特集 : 慢性膵炎の断酒 生活指導指針. 膵臓 2010; 25: ( ガイドライン ) 3) 柳町幸, 丹藤雄介, 中村光男, ほか. 病態栄養に基づいた膵疾患の栄養管理を考える 膵内分泌と栄養. 胆と膵 2011; 32: ) Ito T, Otsuki M, Igarashi H, et al. Epidemiological study of pancreatic diabetes in Japan in 2005: a nationwide study. Pancreas 2010; 39: ( 横断 ) 5) 河邉顕, 藤山隆, 伊藤鉄英. 病態栄養に基づいた膵疾患の栄養管理を考える 膵性糖尿病の強化インスリン治療. 胆と膵 2011; 32: 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

132 Clinical Question 3-26 経口血糖降下薬は膵性糖尿病の治療に有効か? 3. 治療 ❺ 糖尿病の治療 CQ 3-26 経口血糖降下薬は膵性糖尿病の治療に有効か? ステートメント 慢性膵炎に合併した糖尿病に対する経口血糖降下薬の有効性に関するエビデンスはない. インスリン分泌能が保たれている慢性膵炎患者の糖尿病には, 経口血糖降下薬を投与することを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル C 解説 慢性膵炎に合併する膵性糖尿病 (CQ 2-7 参照 ) は, 膵 β 細胞減少によるインスリン分泌不全に起因するため, その治療としてはインスリン療法が基本となる 1 4). 病態としては, さらに膵 α 細胞からのグルカゴン分泌不全も伴い, 低血糖が起こりやすく遷延しやすいことや, 膵外分泌細胞の破壊, 減少による膵消化酵素の分泌不全も伴っているため, 十分な消化酵素の補充が必要となるなどの特徴がある. これらを考慮したうえでの血糖コントロールが必要となる. 慢性膵炎に合併する糖尿病治療においては,75% がインスリン治療,6% が経口血糖降下薬による治 5, 6) 療を施行したという報告がある. 厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班が行った膵性糖尿病全国疫学調査 (2005 年 ) 7) では 66.7% でインスリン治療をされていたと報告されている. 現在のところ, 膵性糖尿病を対象とした経口血糖降下薬の効果に関するエビデンスはなく, 膵性糖尿病に対する効果は不明確である. しかし, 慢性膵炎に合併する糖尿病の全例が, 膵疾患 7) に伴って出現した糖尿病 ( 真の膵性糖尿病 ) とは限らない. 上記の膵性糖尿病全国疫学調査によれば, 慢性膵炎が成因である膵性糖尿病のうち, 真の膵性糖尿病は 46.3% とされ, 約半数が慢性膵炎発症前に糖尿病を発症しており, 通常型糖尿病が影響している可能性がある. インスリン分泌能が残存していれば, インスリン以外の薬物, たとえばスルホニル尿素薬 (SU 薬 ) が効果を示すこともある. 1) インスリン治療適応の目安としては,24 時間尿中 C-ペプチド排泄量が 10 µg/ 日以下や, グルカゴン負荷試験でΔCPR 値が 1.5 mg/ml 以下などがインスリン分泌能の低下の指標となる. インスリン非依存状態では, 現在使用されている経口血糖降下薬はいずれも血糖改善効果が期待できる. たとえば, ナテグリニド (1 日 3 回毎食直前に投与 ) もしくはグリメピリド (1 日 1 回朝食直前に投与 ) などの SU 薬,α グルコシダーゼ阻害薬 (α -GI) などが用いられる. メトホルミン ( ビグアナイド薬 ) やピオグリタゾン ( チアゾリジン誘導体 ), インクレチン関連薬に関しては改訂第 2 版では別項 (CQ 3-27,3-29) で扱われており, この項では扱わないこととする. また, SGLT2 阻害薬も新たに登場してきたが, 現在のところ慢性膵炎に合併する糖尿病に関しての有 109 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

133 3. 治療 効性を示すエビデンスはない. 糖尿病の薬物療法を行う場合は, 低血糖に注意を要する. そのため, 患者に低血糖症状を十分に説明しておく必要がある ( 表 1). 低血糖症状出現時は, 砂糖 20 g( 水があれば溶かして飲む, 糖分 20 g 含有ジュース 200 ml) を飲用するなどの指導を行う. ただし,α-GI を服用している場合は, 砂糖 ( ショ糖 ) ではなく, 必ずブドウ糖を服用するよう指導する. 大量の飲酒を継続している患者では, 肝での糖新生が抑制され低血糖が誘発されやすいので注意を要する. 文献 1) 小泉勝. 膵疾患診断と治療の進歩 慢性膵炎 合併症とその対策. 日本内科学会雑誌 2004; 93: ) 中村光男. 膵性消化吸収不良の治療 膵酵素及びインスリン補充療法の関連から. 消化と吸収 2006; 28: ) 柳町幸, 丹藤雄介, 松橋有紀, ほか. 膵石症をめぐる最近の動向 膵石症の内科的治療法 Life style modification, 食事療法, 薬物療法について. 胆と膵 2005; 26: ) 伊藤鉄英, 宜保淳也, 加来豊馬, ほか. 慢性膵炎の合併症とその取り扱い 糖尿病 慢性膵炎における耐糖能異常. 消化器の臨床 2004; 7: ) 三浦順子. 膵性糖尿病における糖尿病性合併症とインスリン療法. 東京慈恵会医科大学雑誌 1993; 108: ( ケースコントロール ) 6) 中村光男, 武部和夫. 慢性膵炎の合併症 膵性糖尿病の糖尿病性合併症と代謝的特徴. 膵臓 1992; 7: ( コホート ) 7) Ito T, Otsuki M, Igarashi H, et al. Epidemiological study of pancreatic diabetes in Japan in Pancreas 2010; 39: ( 横断 ) 110 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

134 Clinical Question 治療 ❺ 糖尿病の治療 インスリン抵抗性改善薬は膵性糖尿病の治療に有効か? CQ 3-27 インスリン抵抗性改善薬は膵性糖尿病の治療に有効か? ステートメント 慢性膵炎に合併した糖尿病に対するインスリン抵抗性改善薬の有効性について十分なエビデンスはない. インスリン抵抗性が疑われる慢性膵炎患者の糖尿病には, インスリン抵抗性改善薬を投与することを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル C 解説 インスリン抵抗性改善薬はインスリン抵抗性を改善させ, 肝でのブドウ糖産生を抑制し, 骨格筋へのブドウ糖取り込みを増強させることによって血糖を低下させる経口血糖降下薬である. 一般的には肥満や高インスリン血症を認める 2 型糖尿病患者がよい適応となっており, 日本においてはチアゾリジン誘導体であるピオグリタゾンとビグアナイド薬であるメトホルミンが使用可能である. 現在, 膵性糖尿病においてはインスリン抵抗性改善薬の有効性に関する RCT はなく, 推奨する十分な科学的根拠はない. 慢性膵炎における膵性糖尿病は長期にわたる膵実質の炎症と線維化による β 細胞の減少とそれに伴うインスリン分泌不全が主たる原因とされ, インスリン補充が原則とされている 1). しかし, 慢性膵炎に合併する糖尿病すべてが狭義の膵性糖尿病とは限らず,2 型糖尿病の要素も多く含まれている症例もあり, インスリン抵抗性改善薬が有効な場合もあると考えられる. また, 膵性糖尿病においても 2 型糖尿病と同様にインスリン抵抗性が重要な因子であることが報告されており, 特に肝臓でのインスリン抵抗性が増強され, インスリンによるブドウ糖産生抑制効果が障害されると考えられている 2, 3). インスリン抵抗性の評価の指標としては body mass index(bmi), 空腹時血糖,75 g OGTT, 血中インスリン濃度,HOMA-IR などがあげられるが, これらの指標を評価し, インスリン抵抗性が疑われる症例ではインスリン抵抗性改善薬が有効である可能性がある. しかし, 膵性糖尿治療の基本は前述のようにインスリン補充であり, 治療効果を評価し十分でない場合にはインスリン導入を早期に検討する必要がある. 近年, メトホルミンによる膵癌発症リスクの低下, 予後改善効果が報告されており 4, 5),Cui らは第一選択薬としてメトホルミンを推奨している 6). しかし, 一方で予後に差がなかったとする報告もあり, 現時点では推奨に値する十分な科学的根拠はない 7). 111 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

135 3. 治療 文献 1) 河邉顕, 藤山隆, 伊藤鉄英, ほか. 病態栄養に基づいた膵疾患の栄養管理を考える 膵性糖尿病の強化インスリン治療. 胆と膵 2011; 32: ) Niebisz-Cieslak AB, Karnafel W. Insulin sensitivity in chronic pancreatitis and features of insulin resistance syndrome. Pol Arch Med Wewn 2010; 120: ( 横断 ) 3) Cavallini G, Vaona B, Bovo P, et al. Diabetes in chronic alcoholic pancreatitis: role of residual beta cell function and insulin resistance. Dig Dis Sci 1993; 38: ( ケースコントロール ) 4) Li D, Yeung SC, Hassan MM, et al. Antidiabetic therapies affect risk of pancreatic cancer. Gastroenterology 2009; 137: ( ケースコントロール ) 5) Sadeghi N, Abbruzzese JL, Yeung SC, et al. Metformin use is associated with better survival of diabetic patients with pancreatic cancer. Clin Cancer Res 2012; 18: ( ケースコントロール ) 6) Cui Y, Andersen DK. Pancreatogenic diabetes: special considerations for management. Pancreatology 2011; 11: ) Hsu C, Saif MW. Diabetes and pancreatic cancer: highlights from the 2011 ASCO annual meeting. chicago, IL, USA; june 3-7, JOP 2011; 12: 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

136 Clinical Question 治療 ❺ 糖尿病の治療 インスリン治療開始の指標設定は膵性糖尿病の治療に必要か? CQ 3-28 インスリン治療開始の指標設定は膵性糖尿病の治療に必要か? ステートメント 慢性膵炎の糖尿病においてインスリン治療開始の指標設定は 1 型や 2 型糖尿病と同様に行うことを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (100%) エビデンスレベル D 解説 慢性膵炎に伴う膵性糖尿病に対するインスリン治療開始の指標を設定する必要性について, 科学的根拠を示す研究は今のところ認められない. しかし, 通常の 1 型および 2 型糖尿病と同様に, 膵性糖尿病においても血糖コントロールを目的とした治療 管理は重要であり 1), インスリン治療開始の指標を設定する必要があると考えられる. 日本糖尿病学会編集の 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 2013 ( 南江堂 ) によると, インスリン治療の絶対的適応は,11 型糖尿病,2 糖尿病性昏睡,3 重症感染症併発, 中等度以上の外科手術,4 糖尿病合併妊娠, とされている ( 表 1)( 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 2013, 南江堂,2013: p73-79 a) [ 検索期間外文献 ]). また, インスリン治療の相対的適応は,1 著明な高血糖を認める場合や, ケトーシス傾向を認める場合,2 経口血糖降下療法では良好な血糖コントロールが得られない場合,3 重症の肝障害, 腎障害を有する例とされている a). 慢性膵炎に合併する膵性糖尿病は膵 β 細胞数減少に起因するため, その治療としてはインスリン療法が基本となる 2). そのため膵性糖尿病においても同ガイドラインにそってインス 113 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

137 3. 治療 リン治療開始の指標設定を検討すべきである. インスリン分泌能からみたインスリン治療開始の指標については,24 時間尿中 C-ペプチド排泄量が 10 µg/ 日以下, またはグルカゴン負荷試験でΔCPR 値が 1.5 ng/ml 以下であればインスリン治療が適当であると考えられる 3). インスリン治療開始時には, 同時にそのリスクについても知っておくべきである.1 型および 2 型糖尿病における血糖コントロールにおいて, 急激な是正あるいは厳格なコントロールは, ときに重篤な低血糖, 網膜症や神経症など糖尿病細小血管合併症の増悪, 突然死などを起こしうることが知られている ( 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 南江堂,2013: p21-28 b) [ 検索期間外文献 ]). 膵性糖尿病の成因である慢性膵炎, 膵腫瘍, 膵切除術後では, インスリン分泌能のみならず, グルカゴン分泌能の低下を認める ( 糖尿病最新の治療 2013-, 南江堂, 2013: p [ c) 検索期間外文献 ]). このため膵性糖尿病に対するインスリン治療の際に, 低血糖を惹起しやすく遷延化する傾向にあるため, 低血糖出現には特に留意すべきである 1). そのため膵性糖尿病では, 少量頻回インスリン治療法 ( 速効型, 超速効型 ), 持効型インスリン製剤の使用が低血糖の予防に有用であると報告されている 1, 4) が, 膵性糖尿病においてどのようなインスリン注射法が適しているかについての検討は十分に行われていない. 文献 1) Kawabe K, Ito T, Igarashi H, et al. The current managements of pancreatic diabetes in Japan. Clin J Gastroenterol 2009; 2: 1-8 2) 伊藤鉄英, 五十嵐久人, 河邉顕. 胆膵 膵性糖尿病の実態と治療指針.Annual Review 消化器, 中外医学社, 東京,2012: p ) 小泉勝. 膵疾患 診断と治療の進歩 慢性膵炎 合併症とその対策. 日本内科学会雑誌 2004; 93: ) 中村光男, 丹藤雄介, 柳町幸, ほか. 膵内外分泌不全に対する膵消化酵素及びインスリン補充療法. 膵臓 2007; 22: 検索期間外文献 a) 日本糖尿病学会 ( 編 ). インスリンによる治療. 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 2013, 南江堂, 東京,2013: p73-79( ガイドライン ) b) 日本糖尿病学会 ( 編 ). 糖尿病治療の目標と指針. 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 南江堂, 東京,2013: p21-28( ガイドライン ) c) 五十嵐久人, 伊藤鉄英. 二次性糖尿病 膵疾患による糖尿病. 糖尿病最新の治療 2013-, 南江堂, 東京,2013: p 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

138 Clinical Question 治療 ❺ 糖尿病の治療 インクレチン関連薬は膵性糖尿病の治療に有効か? CQ 3-29 インクレチン関連薬は膵性糖尿病の治療に有効か? ステートメント 慢性膵炎の糖尿病に対するインクレチン関連薬の有効性を示すエビデンスはない. ベネフィットがリスクを上回ると判断した患者に限って使用することを提案する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (90%) エビデンスレベル D 解説 消化管から分泌されるホルモンであるインクレチン (glucagon-like peptide-1:glp-1,glucose-dependent insulinotropic peptide:gip) は, グルコース濃度依存性にインスリン分泌を促進するほか, 膵 β 細胞の保護 増殖効果も有することが知られている. 近年, このインクレチンをターゲットとした GLP-1 作動薬, およびインクレチン分解酵素である dipepticyl peptidase- 4(DPP-4) を阻害する DPP-4 阻害薬が登場し,2 型糖尿病に対する新規治療薬として注目されている 1). 一方, 膵性糖尿病に対するインクレチン関連薬の有用性は, 現時点では確立されていない. 糖尿病を有する慢性膵炎患者における検討では,GLP-1 によりインスリン分泌が促進されると 2, 3) いう報告や, インスリンとの併用での有用性を示唆する報告 ( 厚生労働省難治性膵疾患に関 a) する調査研究班平成 24 年度研究報告書 [ 検索期間外文献 ]) を認める一方で, インスリン分泌 4, 5) 促進効果はほとんど認めないとする報告や, その効果は β 細胞の分泌予備能が保たれている症例に限られるとする報告も存在する. これらはいずれも少数例 短期間での検討であり, 膵性糖尿病におけるインクレチン関連薬の長期的な血糖改善効果に関してはさらなるエビデンスの蓄積が必要である. インクレチン関連薬は α 細胞からのグルカゴン分泌も抑制する 1) ため, 膵性糖尿病に対する使用は低血糖の出現が危惧されるが,Knop ら 6) の報告では糖尿病を有する慢性膵炎患者では低血糖は認めず, 安全に使用できると考える. また, インクレチン関連薬と膵炎 7),(JAMA Intern Med 2013; 173: b) [ 検索期間外文献 ]), および膵癌や甲状腺癌などの悪性腫瘍発症との関連性 7),(Diabetes 2013; 62: c) [ 検索期間外文献 ]) を示唆する報告が近年相次いでおり, 長期的な安全性が確保されるまでインクレチン関連薬の使用は控えるべき, とする意見もある (Diabetes Care 2013; 36: d) [ 検索期間外文献 ]).2012 年に開催された PancreasFest では, 慢性膵炎に合併した糖尿病には使用は控えるべきであるとの勧告が出された (Pancreatology 2013; 13: e) [ 検索期間外文献 ]). 115 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

139 3. 治療 一方, これらの報告はバイアスや患者背景などの観点から不十分なデータであり, インクレチン関連薬の関与ありと結論づけることは現時点では不適切とする報告も複数存在する (Diaetes Care 2013; 36 (Suppl 2): f),curr Med Res Opin 2013; 29: g),lancet Diabetes Endocrinol 2014; 2: h),diabetes Care 2013; 36: [ i) 検索期間外文献 ]). 米国内分泌学会 (Amerifcan Diabetes Association[ j) 検索期間外文献 ]), および, 米国糖尿病学会 欧州糖尿病学会 国際糖尿病学会の 3 学会 ( 共同 )(The Endocrine Society k) [ 検索期間外文献 ]) から 現時点では情報が不十分であり, 患者自身の判断で自己中断するべきではない との声明が出された. 現在,FDA( 米食品医薬品局 )(Food and Drug Administration l) [ 検索期間外文献 ]), EMA( 欧州医薬品庁 )(European Medicines Agency m) [ 検索期間外文献 ]) がこれらの関連性について調査中である. 以上をふまえ, 現時点では, インクレチン関連薬のリスクとベネフィットを十分に考慮したうえで, ベネフィットが上回ると判断した症例での使用が妥当と考える. 文献 1) Daniel JD, Michael AN. The incretin system: glucagon-like peptide-1 receptor agonists and dipeptidyl peptidase-4 inhibitors in type 2 diabetes. Lancet 2006; 368: ) Vilsboll T, Knop FK, Krarup T, et al. The pathophysiology of diabetes involves a defective amplification of the late-phase insulin response to glucose by glucose-dependent insulinotropic polypeptide-regardless of etiology and phenotype. J Clin Endocrinol Metab 2003; 88: ( コホート ) 3) Knop FK, Vilsboll T, Hojberg PV, et al. The insulinotropic effect of GIP is impaired in patients with chronic pancreatitis and secondary diabetes mellitus as compared to patients with chronic pancreatitis and normal glucose tolerance. Regul Pept 2007; 144: ( コホート ) 4) Knop FK, Vilsboll T, Hojberg PV, et al. Reduced incretin effect in type 2 diabetes: cause or consequence of the diabetic state? Diabetes 2007; 56: ( コホート ) 5) Hedetoft C, Sheikh SP, Larsen S, et al. Effect of glucagon-like peptide 1(7-36)amide in insulin-treated patients with diabetes mellitus secondary to chronic pancreatitis. Pancreas 2000; 20: 25-31( コホート ) 6) Knop FK, Vilsboll T, Larsen S, et al. No hypoglycemia after subcutaneous administration of glucagon-like peptide-1 in lean type 2 diabetic patients and in patients with diabetes secondary to chronic pancreatitis. Diabetes Care 2003; 26: ( コホート ) 7) Elashoff M, Matveyenko AV, Gier B, et al. Pancreatitis, pancreatic, and thyroid cancer with glucagon-like peptide-1-based therapies. Gastroenterology 2011; 141: ( 横断 ) 検索期間外文献 a) 丹藤雄介, 柳町幸, 今昭人, ほか. 膵性糖尿病治療におけるインクレチン関連薬の位置づけ. 厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班平成 24 年度研究報告書,2013: p ( コホート ) b) Singh S, Chang H-Y, Richards TM, et al. Glucagonlike peptide-1-based therapies and risk of hospitalizations for acute pancreatitis in type 2 diabetes mellitus. JAMA Intern Med 2013; 173: ( ケースコントロール ) c) Butler AE, Campbell-Thompson M, Gurlo T, et al. Marked expansion of exocrine and endocrine pancreas with incretin therapy in humans with increased exocrine pancreas dysplasia and the potential for glucagon-producing neuroendocrine tumors. Diabetes 2013; 62: ( ケースシリーズ ) d) Butler PC, Elashoff M, Elahoff R, et al. A critical analysis of the clinical use of incretin-based therapies: are the GLP-1 therapies safe? Diabetes Care 2013; 36: e) Rickels MR, Bellin M, Toledo FG, et al; PancreasFest Recommendation Conference Participants. Detection, evaluation and treatment of diabetes mellitus in chronic pancreatitis: recommendations from PancreasFest Pancreatology 2013; 13: f) Nauck MA, Friedrich N. Do GLP-1-based therapies increase cancer risk? Diaetes Care 2013; 36 (Suppl 2): g) Dore DD, Hussein M, Hoffman C, et al. A pooled analysis of exenatide use and risk of acute pancreatitis. 116 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

140 5 糖尿病の治療 Curr Med Res Opin 2013; 29: ( ケースコントロール ) h) Giorda CB, Picariello R, Nada E, et al. Incretin therapies and risk of hospital admission for acute pancreatitis in an unselected population of European patients with type 2 diabetes: a case-control study. Lancet Diabetes Endocrinol 2014; 2: ( ケースコントロール ) i) Nauck MA. A critical analysis of the clinical use of incretin-based therapies: the benefits by far outweigh the potential risks. Diabetes Care 2013; 36: j) ADA/EASD/IDF Statement Concerning the Use of Incretin Therapy and Pancreatic Disease. 2013; Amerifcan Diabetes Association Web site. http: // 最終アクセス 年 3 月 7 日 ] k) Society Joins Call for Review of Incretin-based Therapy for Diabetes Mellitus. 2013; The Endocrine Society Web site. Statements/2013/Incretin%20statement%2018%20JUN%2013.pdf[ 最終アクセス 年 3 月 7 日 ] l) FDA Drug Safety Communication: FDA investigating reports of possible increased risk of pancreatitis and pre-cancerous findings of the pancreas from incretin mimetic drugs for type 2 diabetes. 2013; Food and Drug Administration Web site. http: // 最終アクセス 年 3 月 7 日 ] m)european Medicines Agency investigates findings on pancreatic risks with GLP-1-based therapies for type-2 diabetes. European Medicines Agency Web site jsp&mid=WC0b01ac058004d5c1[ 最終アクセス 年 3 月 7 日 ] 117 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

141 Clinical Question 治療 ❺ 糖尿病の治療 血糖コントロールの目標設定は膵性糖尿病の治療に必要か? CQ 3-30 血糖コントロールの目標設定は膵性糖尿病の治療に必要か? ステートメント 慢性膵炎の糖尿病を治療するうえで, 血糖コントロールの目標設定を行うことを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (100%) エビデンスレベル C 解説 2005 年に行われた日本における膵性糖尿病の全国調査では, 糖尿病網膜症の合併は通常の糖尿病の場合と比べて低かったが, 腎症, 神経症などでは差はなかった 1). また, 一方で長期観察例において死因の多くは糖尿病合併症によるものであるとも報告されており 2), 特に大血管合併症が予後を大きく左右する. そのため, 合併症の早期発見 適切な治療とそれに先行する血糖コントロールが重視されなければならない. 一方, 膵性糖尿病では低血糖発作の重症化や遷延化を生じやすく, 頻回低血糖は網膜症をはじめとする細小血管合併症を増悪させることが知られている 3). また, 糖尿病薬物治療を行っている患者では, 厳格な血糖コントロールでは重症低血糖により突然死する場合がある. 血糖コントロールの目標値は症例により異なり, 一律ではないが, 膵性糖尿病においては低血糖を頻繁に起こすことがないようにすることが重要であるため, 通常の糖尿病患者に比べ高めに設定する ( 表 1).2010 年に発表された慢性膵炎の断酒 生活指導指針では,HbA1c の目標値を 7.5% 台前半としている 4). 近年は超速効型インスリンの少量頻回投与 ( 各食直前 ) と, 持効型インスリン (1 回 / 日 ) を用いることで低血糖の予防に有用であると報告されている 5, 6). また, 飲酒継続者は低血糖が誘発されやすいので注意を要する 4). 断酒指導が重要であるが, 飲酒継続者では特に低血糖症状について説明し, 血糖自己測定を適宜施行させることが推奨される. 118 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

142 5 糖尿病の治療 文献 1) Ito T, Otsuki M, Igarashi H, et al. Epidemiological study of pancreatic diabetes in Japan in 2005: a nationwide study. Pancreas 2010; 39: ( 横断 ) 2) Koizumi M, Yoshida Y, Abe N, et al. Pancreatic diabetes in Japan. Pancreas 1998; 16: ( コホート ) 3) 右田良克, 大島彰, 若杉英之. 膵性糖尿病の臨床経過 とくに合併する血管障害についての検討. 糖尿 病 1994; 37: ( コホート ) 4) 下瀬川 徹, 伊藤鉄英, 中村太一, ほか. 特集 : 慢性膵炎の断酒 生活指導指針. 膵臓 2010; 25: ( ガイドライン ) 5) 柳町幸, 丹藤雄介, 松橋有紀, ほか. 膵疾患と栄養 慢性膵炎非代償期の栄養評価からみた栄養法. 栄 養 - 評価と治療 2005; 22: ) Kawabe K, Ito T, Igarashi H, et al. The current managements of pancreatic diabetes in Japan. Clin J Gastroenterol 2009; 2: 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

143 Clinical Question 治療 ❺ 糖尿病の治療 HbA1c は膵性糖尿病の治療効果の判定に有用か? CQ 3-31 HbA1c は膵性糖尿病の治療効果の判定に有用か? ステートメント HbA1c は慢性膵炎の糖尿病の長期管理指標として有用であり, 用いることを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (100%) エビデンスレベル D 解説 糖尿病治療の目的は合併症の発症予防と進展抑制であり, 膵性糖尿病においても同様である. 細小血管障害は HbA1c と極めてよく相関するが, 大血管障害においては HbA1c のみならず, 食後高血糖との関連が報告されており血糖変動の把握も重要である 1).HbA1c は過去 1 2 ヵ月の平均血糖値を反映する糖尿病管理指標であり広く用いられているが 2), 血糖変動を必ずしも反映しないことが指摘されており, 同じ HbA1c 値であっても, 様々な血糖変動を示す 3). 慢性膵炎における膵性糖尿病は β 細胞と α 細胞ともに減少しており, インスリンのみならずグルカゴンの分泌も低下しているため, 血糖変動の幅が著しく, いわゆるブリットル型血糖変動となる 4, 5). 膵性糖尿病においても HbA1c は治療効果判定の指標として有用であり一般的に使用されているが, 頻回の低血糖がある場合には低値を示すことがあり, その解釈には注意が必要である. また, 赤血球寿命に影響を及ぼしうる貧血, 腎不全, 肝硬変などを有する症例でも HbA1c 値は低値を示す 6). 慢性膵炎では低栄養に伴う貧血やアルコール多飲による肝障害を合併している症例も少なくなく, 留意が必要である. 膵性糖尿病においても HbA1c のみならず, 空腹時血糖値, 随時血糖値, グリコアルブミン (GA),1,5- アンヒドログルシトール (1,5-AG) なども測定し, 総合的に治療効果を評価することが重要である. 文献 1) Ceriello A, Colagiuri S. International Diabetes Federation guideline for management of postmeal glucose: a review of recommendations. Diabet Med 2008; 25: ( ガイドライン ) 2) Nathan DM, Kuenen J, Borg R, et al. Translating the A1C assay into estimated average glucose values. Diabetes Care 2008; 31: ( 横断 ) 3) Del Prato S. In search of normoglycaemia in diabetes: controlling postprandial glucose. Int J Obes Relat Metab Disord 2002; 26: S9-S17( 横断 ) 4) Kawabe K, Ito T, Igarashi H, et al. The current managements of pancreatic diabetes in Japan. Clin J Gastroenterol 2009; 2: 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

144 5 糖尿病の治療 5) Cui Y, Andersen DK. Pancreatogenic diabetes: special considerations for management. Pancreatology 2011; 11: ) 糖尿病診断基準に関する調査検討委員会. 糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告. 糖尿病 2010; 53: 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

145 Clinical Question 治療 ❺ 糖尿病の治療 糖尿病慢性合併症の診断と治療は膵性糖尿病でも有用か? CQ 3-32 糖尿病慢性合併症の診断と治療は膵性糖尿病でも有用か? ステートメント 通常型糖尿病の合併症を診断する場合と同様, 慢性膵炎の糖尿病においても合併症を評価し, 血糖コントロールを行うことを推奨する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 1 (100%) エビデンスレベル C 解説 一般に糖尿病慢性合併症は, 細小血管障害と大血管障害に分類され, さらに細小血管障害には糖尿病網膜症, 腎症, 神経障害が含まれ, 糖尿病に特有の合併症である. その発症 進展の抑制には血糖コントロールと高血圧の治療が重要とされる ( 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 2013, 南江堂,2013: p a) [ 検索期間外文献 ]). 一方, 大血管障害には冠動脈疾患, 脳血管障害, 末梢血管障害が含まれ, 危険因子として糖尿病の他, 高血圧, 肥満, 脂質異常症, 喫煙などがあげられ, その進展予防には血糖コントロールとともにこれらの危険因子を包括的にコントロールすることが重要とされる a). 慢性膵炎における糖尿病において慢性合併症の発症頻度は低いとされていたが 1), 罹患期間が長くなればなるほど高くなると報告され 2), 罹患期間を調整すると網膜症の頻度は通常の 1 型および 2 型糖尿病 ( 以下, 通常型糖尿病 ) と同程度かやや低く, 腎症の頻度は通常型糖尿病と同程度という報告がみられる 2 4). また, 神経障害については, 慢性膵炎では消化吸収障害による低栄養状態や, 成因の多くとなるアルコール自体の関与により障害されうると考えられ, 通常型糖尿病と同程度か 2, 3, 5), やや高いとの報告がある 6, 7). 大血管障害の頻度は, 通常型糖尿病よりも低いとされ, 栄養障害により危険因子であるコレステロールや LDL が低値であることが関与していると考えられている 2, 8). ただし, 十分な消化酵素の投与により栄養状態が改善すればこの差はなくなる可能性がある. したがって, 慢性膵炎による糖尿病でも糖尿病慢性合併症の診断 評価 管理については通常型糖尿病と同様に行うことが望ましい ( 表 1). その糖尿病慢性合併症の治療についても一定の見解は得られていないが, 慢性膵炎における死因には糖尿病合併症によるものや低血糖が関与すると考えられる原因不明死が多く 9, 10), 通常型糖尿病と同様に良好な糖尿病コントロールが重要と考えられる. 122 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

146 5 糖尿病の治療 文献 1) Sjoberg RJ, Kidd GS. Pancreatic diabetes mellitus. Diabetes Care 1989; 12: ) Ito T, Otsuki M, Igarashi H, et al. Epidemiological study of pancreatic diabetes in Japan in Pancreas 2010; 39: ( 横断 ) 3) 中村光男, 松井淳, 小川吉司, ほか. 胆と膵疾患の長期予後 膵疾患 慢性膵炎合併症 膵性糖尿病. 肝 胆 膵 1999; 38: ) Gullo L, Parenti M, Monti L, et al. Diabetic retinopathy in chronic pancreatitis. Gastroenterology 1990; 98: ( ケースコントロール ) 5) Larsen S, Hilsted J, Philipsen EK, et al. Comparative study of microvascular complications in patients with secondary and type 1 diabetes. Diabet Med 1990; 7: ( ケースコントロール ) 6) Rosa-e-Silva L, Oliveira RB, Troncon LE, et al. Autonomic nervous function in alcohol-related chronic pancreatitis. Pancreas 2000; 20: ) 三浦順子. 膵性糖尿病における糖尿病性合併症とインスリン療法. 東京慈恵会医科大学雑誌 1993; 108: ( ケースシリーズ ) 8) 越智浩二, 立花英夫, 松本秀次, ほか. 膵性糖尿病の合併症. 環境病態研報告 1990; 61: ) 右田良克, 島彰, 若杉英之. 膵性糖尿病の臨床経過 とくに合併する血管障害についての検討. 糖尿病 1994; 37: ( ケースシリーズ ) 10) 中村光男, 山田尚子, 荒井雄樹, ほか. 膵性糖尿病の病態と合併症. 日本糖尿病学会総会記録 1994; 36: ( ケースシリーズ ) 検索期間外文献 a) 日本糖尿病学会 ( 編 ). 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 2013, 南江堂, 東京,2013: p ( ガイドライン ) 123 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

147 Clinical Question 治療 ❻ 合併症の治療 保存的治療は慢性膵炎に合併した膵仮性囊胞に有効か? CQ 3-33 保存的治療は慢性膵炎に合併した膵仮性囊胞に有効か? ステートメント 安定した状態の慢性膵炎に合併した膵仮性囊胞には保存的治療を行うことを提案する. 状態が安定しない有症状例に対しては, ドレナージなどの介入治療のタイミングを失うことがないように注意する. 推奨の強さ ( 合意率 ) 2 (100%) エビデンスレベル D 解説 慢性膵炎に合併する仮性囊胞は, 膵石や膵管狭窄などによる膵液の流出障害が背景に存在するため, 自然消失例は少ないとされている 1). このような器質的変化のない正常膵に発生した, 外傷による仮性囊胞は 29% の症例で自然消失したのに対し, 慢性膵炎では 6% しか自然消失しなかった 2). 小児仮性囊胞の検討でも, 外傷性では 54.5% が保存的治療で改善したのに対し, 慢性膵炎を含む非外傷性は 7.7% しか保存的治療では改善しなかった 3). また, 他のケースシリーズにおいても, 慢性膵炎に随伴する仮性囊胞 27 症例のうち保存的治療により消失したのは 2 例 (7.4%) であった 4). このように, 多くの報告では慢性膵炎に合併する仮性囊胞は保存的治療に抵抗性であることが示されているが, 一方では, ある程度の効果を示す論文も認める. 経過観察により 23.4% の症例で仮性囊胞が消失したという報告や 5),39% の症例で保存的治療により長 6) 期的に管理可能であったとする報告がある. 腹痛, 感染, 消化管 胆道通過障害などの有症状例に対し, 全身状態が安定している場合にはドレナージや手術の適応を常に考慮しつつ, 絶食による膵の安静や抗菌薬投与などによる短期間の保存的治療を行うことは許容される. 文献 1) 乾和郎, 入澤篤志, 大原弘隆, ほか. 膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン 膵臓 2009; 24: ( ガイドライン ) 2) 小林雅男, 砂村真琴, 松村正紀. 膵仮性嚢胞の自然経過と合併症からみた外科治療方針. 膵臓 1990; 5: ( ケースコントロール ) 3) Teh SH, Pham TH, Lee A, et al. Pancreatic pseudocyst in children: the impact of management strategies on outcome. J Pediatr Surg 2006; 41: ( ケースコントロール ) 4) 土屋涼一, 山口孝, 角田司. 慢性膵炎治療の最近の動向 仮性嚢胞への対策. 胆と膵 1986; 7: ( ケースシリーズ ) 5) Sanfey H, Aguilar M, Jones RS. Pseudocysts of the pancreas, a review of 97 cases. Am Surg 1994; 60: ( ケースコントロール ) 6) Cheruvu CV, Clarke MG, Prentice M, et al. Conservative treatment as an option in the management of pancreatic pseudocyst. Ann R Coll Surg Engl 2003; 85: ( ケースシリーズ ) 124 慢性膵炎診療ガイドライン ( 改訂第 2 版 ), 南江堂,

148 複製 転載禁止 Clinical Question 治療 ❻合併症の治療 仮性囊胞の大きさはドレナージ治療の適応判断に有用か CQ 3-34 仮性囊胞の大きさはドレナージ治療の適応判断に有用か 推奨の強さ エビデンス レベル 合意率 ステートメント 仮性囊胞のドレナージ治療の適応は 原則として感染 腹痛 消化 管や胆道の閉塞などの有症状例であり 囊胞径により判断しないこ とを提案する C 解説 アトランタ分類が改訂され 膵仮性囊胞 pseudocyst の定義が明確になった これまでは 急性壊死性膵炎後に形成される壊死物質を含む被包化された病変も仮性囊胞と呼ばれてきた しかし 改訂アトランタ分類ではそのような病変は WON walled-off necrosis として定義され 仮性囊胞とは区別された 仮性囊胞は主膵管あるいは分枝膵管の破綻により形成される 内部に 壊死物質を含まない均一な液体成分から成る完全に被包化された通常球形で膵外に突出する病 変と定義され 急性膵炎後に形成されることはまれであるとされている 図 1 Gut 2013; 62: 102造影 CT MRI T2WI MRI T1WI a b c d e f 仮性囊胞 WON 図 1 仮性囊胞と WON 仮性囊胞は通常球形で膵外に突出する病変であり 内部に壊死物質を含まない均一な液体成分である a c 矢印 WON は 急性壊死性膵炎後に形成される 内部に壊死組織を含む被包化された病変であり d 矢印 MRI では壊死物質や出血 液体成 分などを反映し低信号と高信号が混在する画像を呈する e f 125 慢性膵炎診療ガイドライン 改訂第2版 南江堂

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