卒論進歩状況有明海沿岸干潟域における生物生息環境特性に関する研究

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るるみのえ
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1 有明海沿岸干潟域における生物生息環境特性 THE ENVIRONMENTAL CHARACTERISTIC OF THE HABITAT AT THE TIDAL FLAT IN ARIAKE SEA 熊本大学大学院自然科学研究科森田将任

2 研究の背景目的有明海は日本の干潟総面積の約 %( 約 km ) を有した大型閉鎖性内湾生物の干潟環境おける機能生物生産機能浄化機能物質循環の維持等有明海の環境問題赤潮の頻発化と大規模化生態系の変化生物の減少等地球規模の環境問題地球温暖化による気温水温の上昇外来生物の移入異常気象等沿岸域の開発自然海岸海岸線の人工化干潟域の減少農業生活工業排水の流入水産生物の乱獲負荷の蓄積 H.W.L: 朔望平均満潮面 M.H.W.L: 平均満潮面 M.L.W.L: 平均干潮面潮汐潮上帯高潮帯中潮帯低潮帯潮間帯 ( 干潟 ) L.W.L: 朔望平均干潮面潮下帯 ( 亜潮間帯 )

3 研究の背景目的有明海の再生改善策の実施が緊急かつ大きな課題具体的な再生改善策は確立されておらず評価手法の開発も求められている干潟の環境機能が注目され干潟の環境悪化が著しことを受けて干潟環境の再生 ( 滝川ら ) が実施されている場に応じた対策の実施には有明海特有の干潟環境を理解する必要がある有明海干潟域では多数の環境項目かつ広域に調査した事例は少ない有明海の沿岸干潟域における改善策の提言を最終目的としその現状を把握するため多数の環境項目を同時期にかつ広域に調査を行い得られたデータから有明海沿岸干潟域の生物生息環境について考察しました

4 調査対象干潟の選定 N S-9-8 S-7 S-8-5, 六角川 S-9 S-1 S-1 N-5, 諫早湾諫早湾 F-11 S-7 三池港 N- N- N-3 N- F-11 F-1 N- N-3 N-1 大崎鼻大崎鼻筑後川 F-1 矢部川 K-13,1 N-1 K-13,1 K-5,,7 凡例 N-1 N- N-3 N- N-5 N- S-7 S-8 K-15,1,17 K-15,1,17 菊池川 K-5,,7 K-18,19, K-1, K-3, K-1, K-3, 白川 K-8 K-8 緑川 S-9 S-1 F-11 F-1 K-13 K-1 口之津三角西港八口之津八早崎瀬戸代代早崎瀬戸海海 : 調査地点 : 調査地点磯 ( 礫 ) を有する場合は凡例の白黒を反転している調査対象干潟位置図 km 5~ 年は熊本県沿岸を対象に調査を行った 7 年は現地踏査を踏まえ調査の簡便さ底質生物相等の条件から調査地点が偏らぬように 1 箇所調査対象干潟を設定したそして有明海沿岸干潟域生物生息環境特性の考察は 5~7 年の調査データ ( 計 1 地点 ) を用いた

1-1 1 K-13-3 - 1 3 岸からの距離 (m) 5 干潟の横断面図 3

5 地盤高 T.P.(m) 調査方法 5~7 年の9~11 月に地形底質底生生物について大潮干潮時を目安に調査を実施した調査項目調査方法調査内容地形調査横断測量 ( トランシット ) 地盤高岸からの距離底質調査採泥 ( 表層 5cm) CODsed TS TN 含水率含泥率底生生物調査定量調査 (5cm 5cm)( 回 ) 種の同定種数個体数湿重量 K 岸からの距離 (m) 5 干潟の横断面図 3 各底質項目の分析方法一覧底質項目単位分析方法含泥率 % レーザー解析 / 散乱式粒度分布測定装置 LA-9 含水率 % 底質調査方法 Ⅱ.3 CODsed mg/gdry 底質調査方法 Ⅱ. 全硫化物 mg/gdry 底質調査方法 Ⅱ.17 全窒素 mg/gdry 底質調査方法 Ⅱ.18 地形調査底質調査採泥定量調査ソーティング

6 調査地点の分類と環境特性 5~7 年の調査地点 ( 計 1 地点 ) クラスター分析分析項目地盤高含泥率含水率全硫化物全窒素クラスター分析 N-1_1 N-_ K-_3 K-7_3 K-3_1 K-3_3 N-_1 K-13_1 K-13_ N-1_ K-_5 N-_ K-18_3 K-3_5 K-3_ K-_ K-1_3 K-19_3 K-_ N-_ K-_ N-_3 K-3_ K-19_ K-18_ K-_3 N-_1 K-17_1 K-18_1 K-15_1 K-_1 K-19_1 K-_1 N-3_1 K-15_ K-1_ S-7_1 K-15_5 K-15_ K-_ K-3_ N-5_1 N-_1 N-5_ K-17_ N-_ N-3_ K-15_7 K-15_8 K-1_5 N-3_3 N-_3 K-19_ K-19_5 K-13_3 K-1_3 K-18_ N-5_3 N-_3 K-1_1 K-_3 S-8_1 K-1_ S-7_ K-8_ K-7_ K-17_ K-_1 K-7_1 K-_ K-18_5 K-1_ K-5_1 K-5_ S-7_3 S-9_3 S-9_ F-1_ K-17_5 K-8_3 S-8_ K-_ S-8_3 S-9_1 S-1_3 F-11_1 F-11_ K-17_3 F-11_3 F-1_1 F-1_3 S-1_1 K-1_1 K-15_ S-1_ K-15_3 K-1_ K-1_3 K-8_1 K-17_ K-1_1 K-_ A B C D E クラスター分析の樹形図 ( ウォード法 ) F G

7 地盤高が低い Z 地盤高が高い調査地点の分類と環境特性主成分負荷量硫化物が高い Z 3 硫化物が低い硫化物が高い Z 3 硫化物が低い地盤高 T.P. 1 含泥率含水率硫化物全窒素第 1 主成分第主成分第 3 主成分各分析項目の主成分負荷量第 1 主成分負荷量底質項目の全体の高さ第主成分負荷量地盤高の高さ第 3 主成分負荷量硫化物の低さ第 1~3 主成分負荷量の累積寄与率 9.% 底質項目が全体的に低い A 1 B C-1 D- E-3 F- G 底質項目が Z 1 底質項目が底質項目が全体的に高い Z 全体的に低い 1 全体的に高い -3 A B C D E F G 主成分得点の散布図 A 1 B C-1 D- E-3 F- G 地盤高が低い Z 地盤高が高い

8 調査地点の分類と環境特性底質項目が底質項目が Z1 全体的に低い全体的に高い地盤高が低い Z 地盤高が高い硫化物が高い Z 3 硫化物が低い最大 -1 最小平均最大最小 -1 平均 - - A B C D E F G - A B C D E F G -3 A B C D E F G 各グループの平均主成分得点 5~7 年の調査地点 ( 計 1 地点 ) クラスター分析分析項目地盤高含泥率含水率全硫化物全窒素 A: 砂 ~ 砂泥質の地点 B: 地盤高が高い砂泥質の地点 C: 礫粗砂が多く存在する地点 D: 地盤高の低い砂泥 ~ 泥質の地点 E: 河川の影響の強い泥質の地点 F: 硫化物が低い泥質の地点 G: 硫化物が顕著に高い泥質の地点

9 種類数湿重量 (g/.15 m ) 個体数 ( 個体数 /.15 m ) 湿重量 (g/.15 m ) 種類数種類数個体数 ( 個体数 /.15 m ) 湿重量 (g/.15 m ) 生物生息環境特性全 A B C D E F G 地平 A B C D E F G全 A B C D E F G 地平点均点均 A B C D E F G 軟体動物環形動物節足動物その他 8 各グループの門別平均表在性内在性付着性寄生性全全地平 A B C ADB CE D EF F GG地平点均点均各グループの生活様式別平均 ~7 年の定量調査の確認総種数全 17 種 A B C D E F G 全地平点均全 A B C D E F G 地平点均

10 種類数種類数個体数 ( 個体数 /.15 m ) 湿重量 (g/.15 m ) 生物生息環境特性 1 8 軟体動物環形動物節足動物その他全 A B C D E F G 地平 A B C D E F G全 A B C D E F G 地平点均点均各グループの門別平均 A グループの優占種個体数 ( 個体数 /.15m) 湿重量 (g/.15m) 出現頻度グループ生物名生活様式平均生物名生活様式平均生物名生活様式出現頻度コケゴカイ内在性.9 シオフキガイ内在性 1.5 シオフキガイ内在性 1/ A ホトトギスガイ内在性マテガイ内在性.5 チロリ内在性 1/ ユビナガホンヤドカリ表在性.5 オキシジミ内在性.5 Glycera 属の一種内在性 1/ A: 砂 ~ 砂泥質の地点総種数総個体数が多く種の多様性に富んでいる内在性の軟体動物や砂泥質を好むコケゴカイ等の環形動物が多く確認された干出時間が短く海水につかる時間が長いため懸濁物食者である二枚貝の生息に適している特にシオフキガイは総湿重量の約 % を占め出現頻度も最も高く生息に適していると考えられる A B C D E F G 全地平点均

11 種類数種類数個体数 ( 個体数 /.15 m ) 湿重量 (g/.15 m ) 生物生息環境特性全 A B C D E F G 地平 A B C D E F G全 A B C D E F G 地平点均点均個体数 ( 個体数 /.15m) 湿重量 (g/.15m) 出現頻度グループ生物名生活様式平均生物名生活様式平均生物名生活様式出現頻度カワグチツボ表在性 3.9 サルボウガイ内在性.7 カワグチツボ表在性 9/17 E トライミズゴマツボ表在性 9.53 ヒラタヌマコダキガイ内在性. トライミズゴマツボ表在性 9/17 ホソイトゴカイ内在性.7 カラムシロ表在性. 無針綱内在性 8/17 ウミマイマイ表在性.7 E: 河川の影響の強い泥質の地点軟体動物環形動物節足動物その他各グループの門別平均 Eグループの優占種総個体数総種数が多く総湿重量は顕著に少ない河口付近の汽水域に生息する種が多く確認され内在性の生物は少ないが表在性の生物が多く生息していたそのほとんどは小型表在性の堆積物食者であることから湿重量は少ない河川水の影響によって有機物が多く餌が豊富で地形に変化に富むため潮溜まりや澪ができ泥質のため干潟表面に水分があることが要因と考えられる A B C D E F G 全地平点均

12 種類数種類数個体数 ( 個体数 /.15 m ) 湿重量 (g/.15 m ) 生物生息環境特性全 A B C D E F G 地平 A B C D E F G全 A B C D E F G 地平点均点均 G: 全硫化物が顕著に高い泥質の地点軟体動物環形動物節足動物その他各グループの門別平均 Gグループの優占種個体数 ( 個体数 /.15m) 湿重量 (g/.15m) 出現頻度グループ生物名生活様式平均生物名生活様式平均生物名生活様式出現頻度ホソイトゴカイ内在性 11. アラムシロガイ表在性.7 アサリ内在性 / G ウミマイマイ表在性 3. ニホンスナモグリ表在性. アラムシロガイ表在性 1/ クシカギゴカイ内在性 3. ミズヒキゴカイ内在性.1 ウミマイマイ表在性 1/ 総種数総個体数総湿重量共に少なく特に湿重量が顕著に少ない硫化物が過剰に高いことで多くの生物の生息を阻み餌を消費しきれないため全窒素が高く嫌気状態にありそれが生物の生息を阻むといった悪循環に陥っているものと考えられるその特異性から地点数が少なくデータが少ないため調査し解析する必要性がある A B C D E F G 全地平点均

結論主要な結論 5~7 年の 9~11 月の定量調査によって底生生物を 17 種確認したクラスター分析を行い調査地点を 7 グループに分けグループ毎の環境特性を把握できた有明海沿岸干潟域における 9~11 月におけるグループ別の生物生息環境特性の把握ができた現時点の問題点 1.

13 結論主要な結論 5~7 年の 9~11 月の定量調査によって底生生物を 17 種確認したクラスター分析を行い調査地点を 7 グループに分けグループ毎の環境特性を把握できた有明海沿岸干潟域における 9~11 月におけるグループ別の生物生息環境特性の把握ができた現時点の問題点 1. 定量調査で採取できない生物もいるため調査方法やデータの扱い方も考えなければならない. 湾口部と特異性のある調査データが少ないため引き続き調査しデータを集めて分析する必要がある 3. 現在の分析項目では分析に考慮されにくい特徴を有している地点もあるため今後分析項目を検討する必要がある

15 A: 砂 ~ 砂泥質の地点 N S-9 六角川 S-1 F-11 F-1 筑後川凡例 S-8 S-7 N-5, 諫早湾諫早湾三池港 N- N- N-3 N- N- N-1 矢部川 K-13,1 N-1 K-13 K-5,,7 K-15,1,17 菊池川 K-7 K-18,19, K-1, K-3, K-18,19, K-1 K-3 白川 K-8 大崎鼻大崎鼻緑川口之津口之津早崎瀬戸早崎瀬戸 : 調査地点 : 調査地点三角西港八八代代海海 km 磯 ( 礫 ) を有する場合は凡例の白黒を反転している

16 E: 河川の影響の強い泥質の地点 N S-9 S-8 S-7 S-8 六角川 S-9 S-1 S-7 S-1 F-11 三池港 F-11 F-1 筑後川 F-1 矢部川 K-13,1 凡例 N-5, 諫早湾諫早湾 N- N-3 N- N-1 K-5,,7 K-15,1,17 K-17 菊池川 K-18,19, K-1, K- K-3, 白川 K-8 大崎鼻大崎鼻緑川口之津口之津早崎瀬戸早崎瀬戸 : 調査地点 : 調査地点三角西港八八代代海海 km 磯 ( 礫 ) を有する場合は凡例の白黒を反転している

17 G: 硫化物が顕著に高い泥質の地点 N S-9 六角川 S-1 F-11 F-1 筑後川凡例 S-8 S-7 N-5, 諫早湾諫早湾三池港 N- N-3 N- N-1 矢部川 K-13,1 K-1 K-5,,7 K-15,1,17 菊池川 K-18,19, K-1, K- K-3, 白川 K-8 大崎鼻大崎鼻緑川口之津口之津早崎瀬戸早崎瀬戸 : 調査地点 : 調査地点三角西港八八代代海海 km 磯 ( 礫 ) を有する場合は凡例の白黒を反転している

18 調査方法と分析の問題点問題点定量調査の採取困難な生物の存在大型で移動性が高い種 : アシハラガニムツゴロウ等気配に敏感で近づくと遠くへ逃げ採取が困難である岩や石等に付着する種 : イシダタミガイフジツボ等岩や石等のない場所に生息している可能性は極めて低い付着基質塩生植物が無い地点ではほとんど確認されていない密集して生息する種 : ムラサキイガイハリガネイガイ等密集地がコドラートに入らなければ確認されず密集地に当たると大量に採取されるクラスター分析によるより詳細な環境分類石や岩等が存在している中央粒径 mm 以上の礫が存在する等現在の分析項目では分析に考慮されづらい特徴を有している調査地点がある付着基質定性調査目視調査塩生植物調査 3

Microsoft Word - 資料2-2

Microsoft Word - 資料2-2 ) 底質中の有機物の増加主要な要因を中心とした連関図における現状の確認結果を表.. に示すその結果をまとめて図.. に示す表及び図中の表記は ) 底質の泥化と同様である表.. 底質中の有機物の増加についての現状の確認結果 ( 案 ) ノリの生産活動底質中の有機物の増加検討中である栄養塩の流入有機物の流入底質中の有機物の増加ベントスの減少底質中の有機物の増加堆積物食者である底生生物が減少することで底質中の有機物が多くなると考えられる

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