平成 30 年度アグリ技術シーズセミナー in 沖縄沖縄産資源を活用したヤギ用飼料の開発と沖縄肉用ヤギのブランド化へ向けた研究取組琉球大学農学部長嶺樹

Size: px

Start display at page:

Download "平成 30 年度アグリ技術シーズセミナー in 沖縄沖縄産資源を活用したヤギ用飼料の開発と沖縄肉用ヤギのブランド化へ向けた研究取組琉球大学農学部長嶺樹"

しなつささおか
4 years ago
Views:

1 沖縄産資源を活用したヤギ用飼料の開発と沖縄肉用ヤギのブランド化へ向けた研究取組琉球大学農学部長嶺樹

2 本日の講演内容ヤギについて豆腐粕サイレージは子ヤギ育成用飼料となり得るか現在取り組んでいる研究プロジェクト

3 消化管構造の比較 ( イヌウマウシ ) ウマ ( 後腸発酵動物 ) イヌ ( 肉食動物 ) ヤギ ( 前胃発酵動物 ) 大きい長い小さい短い 1: 胃 2: 小腸 3: 盲腸 4: 結腸 5: 直腸

4 ヤギの胃

5 第一胃内微生物

6 ヤギ肉料理

7 ヤギの乳製品 ( はごろも牧場中城村 ) ナチュラルチーズピンザブラン沖縄県産業まつり県知事奨励賞やぎみるくのむヨーグルトは沖縄県商工連合会優秀賞やぎミルク石鹸 Pinza Soap 左 : ヨーグルト右 : やぎみるく

8 ヤギ肉の機能性平成 20 年度畜種別のアミノ酸成分タウリンカルノシンセリングリシンイノシン酸 (mg/100g) (mg/100g) (mg/100g) (mg/100g) (mg/100g) 鶏ムネ肉豚ロース肉牛ロース肉羊ロース肉山羊ロース肉 ( 沖縄県農林水産部 )

9 ヤギ乳の機能性 1. 乳のタンパク質はカゼイン ( 牛乳 :αs 1 - カゼインヤギ乳 :β- カゼイン ) αs 1 - カゼインアレルゲンとなりアレルギーを引き起こす β- カゼインアレルゲンとなりにくい 2. ヤギ乳は共役リノール酸 (CLA) を豊富に含む脂肪合成抑制作用, 抗ガン作用を有する 3. ヤギ乳の組成はヒトの母乳の組成と類似している 4. ヤギ乳石鹸はアトピー性皮膚炎の発症を抑制する

10 ヤギの優位性と可能性 1. 自給飼料 ( 生草 ) のみで飼育可能 2. 人懐こく癒しの動物となる 3. 高齢者の伴侶動物となり健康増進に寄与できる 4. 虚弱体質やアレルギー体質の人々に蛋白質を供給できる 5. 生草を採食している山羊の乳肉は機能性成分を豊富に含んでいる 6. 堆肥を生産し植物の生育を助けエコサイクルを円滑にする 7. 食料難の時代に人類を救うことが期待される

11 豆腐粕サイレージは子ヤギ育成用飼料となり得るか

12 はじめに畜産物 ( 乳肉卵 ) の生産コストに占める飼料費の割合は 40~60% 飼料の 75% が輸入飼料に依存 ( 農林水産省,2009) 穀物価格の高騰畜産農家の経営を圧迫飼料費の削減

13 ( 農林水産省,2009) 食品製造副産物 ( 豆腐粕泡盛粕ジュース粕 ) 再利用率 60% 約 1,000 万トン / 年排出 20% が飼料化家畜用飼料として利用畜産経営の改善飼料費節減飼料自給率向上

14 豆腐粕日本で約 100 万トン / 年排出タンパク質含量 ( 約 30DM%) Ca 含量 ( 約 0.4DM%) が高い ( 日本標準飼料成分表,2001) しかし水分含量 ( 約 80%) およびタンパク質含量が高いため変敗しやすい

15 喜納 (2008) 乾燥豆腐粕 20% を配合した飼料で子ヤギの育成試験しかし乾燥機の購入や電気代がかかる乾燥では飼料費を抑えられなかったそこで乾燥ではなくサイレージ化

16 サイレージ家畜用飼料の一種飼料作物をサイロなどで発酵させた飼料中島 (2009) 乾燥よりも低コストで生産できるサイレージの調製方法これに準じてサイレージを調製

17 目的豆腐粕サイレージが子ヤギの育成用飼料として利用できるか明らかにする

18 豆腐粕サイレージの調製と分析

19 飼料設計 TDNおよびDCP( 栄養水準 ) が等しくなるように設計一般化学成分対照飼料豆腐粕配合飼料乾物 % 粗蛋白質 DM% 粗脂肪 DM% 可溶性無窒素物 DM% 粗繊維 DM% 粗灰分 DM% 可消化粗蛋白質 (DCP) DM% 可消化養分総量 (TDN) DM%

20 対照飼料および豆腐粕サイレージにおける原料配合割合配合割合 (DM%) 対照飼料豆腐粕サイレージ原材料圧ペントウモロコシフスマ米ぬか - 4 ヘイキューブ大豆粕豆腐粕 ( 生 ) - 20 炭酸カルシウムゼンビタンF 合計

21 豆腐粕サイレージの製造方法原材料 ( 圧ペントウモロコシフスマ豆腐粕 ) ミキサーで混合添加物 ( 糖蜜水乳酸菌 )

22 水分 (%) 貯蔵後 14 日目豆腐粕サイレージの発酵品質 ph 試料中の有機酸含有率 (DM%) 乳酸酢酸酪酸 Flieg s score N.D. 100 貯蔵後 53 日目 N.D. 99 発酵品質良好保存性良好

23 育成試験

24 供試動物日本ザーネン種とヌビアン種の雑種雄ヤギ 11 頭 ( 実験開始時 3 ヶ月齢体重 22.3±2.66kg) を供試した対照区 ( 大豆粕を主なタンパク源とした飼料 ) 豆腐粕サイレージ区 ( 豆腐粕を主なタンパク源とした飼料 ) 飼養環境 : 農場内のペンで気温 16.8~29.9 相対湿度 78.4~89.0% で飼育給餌給水 : 給餌および給水は午前午後の 2 回 (10:00,16:00) 給水鉱塩不断給与

25 対照区実験方法 - 実験設計 - 予備飼育期間 ( 約 2 ヵ月 ) 育成期間 ( 約 9 ヶ月 ) 市販配合飼料アルファルファヘイキューブクレイングラス豆腐粕サイレージ区豆腐粕馴致期間 ( 約 2 ヶ月 ) 育成期間 ( 約 9 ヶ月 ) 豆腐粕市販配合飼料アルファルファヘイキューブクレイングラス

26 G ヤギの体型測定部位 A B E E H C F D D I 1(A-I) 体高 2(F-G ) 斜体長 3(C-J ) 十字部高 4(B-H) 胸深 J 5(E-E ) 6(BEHE B) 7(D-D ) 胸幅胸囲腰角幅

27 結果

28 乾草採食量の推移対照区豆腐粕サイレージ区 ** ** ** 乾草採食量 (gdm/ 頭 / 日 ) ** ** ** ** ~4 4~5 5~6 6~7 7~8 8~9 9~10 10~11 11~12 月齢 ** 対照区と豆腐粕サイレージ区の間に有意差 (**P<0.01) があることを示す

29 豆腐粕サイレージの給与がルーメン絨毛の発達に及ぼす影響 1 cm 1 cm 対照区豆腐粕サイレージ区

30 豆腐粕サイレージの給与が体高および十字部高の成長に及ぼす影響 A I C J *, 対照区と豆腐粕サイレージ区の間に有意差 (*P<0.05) があることを示す

31 斜体長 (cm) 豆腐粕サイレージの給与が斜体長の成長に及ぼす影響対照区豆腐粕サイレージ区 90.0 * * 85.0 * * 月齢 G F * 対照区と豆腐粕サイレージ区の間に有意差 (*P<0.05) があることを示す

32 豆腐粕サイレージの給与が胸深および胸囲の成長に及ぼす影響 B H B E E H *, ** 対照区と豆腐粕サイレージ区の間に有意差 (*P<0.05,**P<0.01) があることを示す

33 豆腐粕サイレージの給与が増体重に及ぼす影響対照区豆腐粕サイレージ区 ** ** ** ** ** 体重 (kg) ** ** * ** 月齢 *, ** 対照区と豆腐粕サイレージ区の間に有意差 (*P<0.05,**P<0.01) があることを示す

34 豆腐粕サイレージの給与がオス子ヤギの肉生産に及ぼす影響測定項目 CFG *1 TSG *2 SEM *3 体重 (kg) * 5.55 枝肉重量 (kg) * 4.45 枝肉歩留 (%) * 2.80 肉の総重量 (kg) * 5.02 ロース (g) * 肩ロース (g) * 肩バラ (g) * バラ (g) * モモ (g) * ロース芯面積 (cm 2 ) 値は 6 頭の動物の平均値 (n=6) *1 対照区 *2 豆腐粕サイレージ区 *3 Standard error of the mean * 対照区と豆腐粕サイレージ区の間に有意差 ( * P<0.05) があることを示す

35 豆腐粕サイレージの給与がロース肉の化学特性に及ぼす影響測定項目 CFG *1 TSG *2 SEM *3 脂肪融点 (ºC ) * 総脂質含量 (g/100 g) 飽和脂肪酸 (%) 不飽和脂肪酸 (%) リノール酸 (C18:2)(%) * 4.20 アミノ酸含量 (mg/100 gfm) 総アミノ酸必須アミノ酸非必須アミノ酸カルノシン * 2.35 値は 6 頭の動物の平均値 (n=6) *1 対照区 *2 豆腐粕サイレージ区 *3 Standard error of the mean *4 ロース肉から抽出した脂肪の融点 * 対照区と豆腐粕サイレージ区の間に有意差 ( * P<0.05) があることを示す

36 豆腐粕サイレージの給与が栄養および健康状態に及ぼす影響血液成分対照区豆腐粕サイレージ区ヘマトクリット (%) 34.5 ± ± 1.09 血漿総タンパク質濃度 (g/dl) 6.6 ± ± 0.34 血漿浸透圧 (mosm/l) ± ± 2.14 ** 血漿グルコース濃度 (mg/dl) 70.5 ± ± 4.34 血漿 Na 濃度 (mmol/l) ± ± 1.11 ** 血漿 K 濃度 (mmol/l) 4.9 ± ± 0.35 血漿 Cl 濃度 (mmol/l) ± ± 1.35 ** 血漿 GOT 濃度 (IU/L) 55.8 ± ± 血漿 GPT 濃度 (IU/L) 16.8 ± ± 4.09 血漿総コレステロール濃度 (mg/dl) 58.1 ± ± 7.75 血漿トリグリセライド濃度 (mg/dl) 30.9 ± ± 2.80 ** 血漿遊離脂肪酸濃度 (μmol/l) ± ± 血漿リン脂質濃度 (mg/dl) 71.3 ± ± 血漿 HDL コレステロール濃度 (mg/dl) 29.5 ± ± 5.16 血漿 LDL コレステロール濃度 (mg/dl) 22.4 ± ± 4.50 * 正常値の範囲内であった *, ** : 対照区と豆腐粕サイレージ区の間に有意差 ( * P<0.05, ** P<0.01) があることを示す

37 飼料原料購入費の比較飼料購入費 ( 円 /kg) 飼料 1kg あたり約 38 円の節約対照飼料豆腐粕サイレージ

38 結論豆腐粕サイレージの給与により体重および体各部位の成長が促進され枝肉重量および枝肉歩留が増加した健康状態も良好であった豆腐粕サイレージは子ヤギの育成用飼料として利用可能である

39 現在取り組んでいる研究プロジェクトアロエベラとヤギを用いた 6 次産業モデルの構築 ( しろう農園合同会社宮古島 )

焼酎粕飼料を製造できることを過去の研究で明らかにしている ( 日本醸造協会誌 106 巻 (2011)11 号 p785 ~ 790) 一方近年の研究で食品開発センターが県内焼酎もろみから分離した乳酸菌は肝機能改善効果があるとされる機能性成分オルニチンを生成することが分かった本研究では従来

焼酎粕飼料を製造できることを過去の研究で明らかにしている ( 日本醸造協会誌 106 巻 (2011)11 号 p785 ~ 790) 一方近年の研究で食品開発センターが県内焼酎もろみから分離した乳酸菌は肝機能改善効果があるとされる機能性成分オルニチンを生成することが分かった本研究では従来調査報告学術調査未利用資源 ( 焼酎粕 ) に含まれる機能性成分が牛の生産性に及ぼす影響について要約宮崎県畜産試験場家畜バイテク部部長須崎哲也副部長黒木幹也宮崎県食品開発センター応用微生物部副部長山本英樹技師藤田依里焼酎粕に乳酸菌培養液ならびに植物性食品残渣および酵素を加えることで保存性が高く (91 日後 ph 変動少ない ) オルニチンを高含有(1リットル当たり約 1500ミリグラム

平成 30 年度アグリ技術シーズセミナー in 沖縄 沖縄産資源を活用したヤギ用飼料の開発と 沖縄肉用ヤギのブランド化へ向けた研究 取組 琉球大学農学部長嶺樹

平成 30 年度アグリ技術シーズセミナー in 沖縄沖縄産資源を活用したヤギ用飼料の開発と沖縄肉用ヤギのブランド化へ向けた研究取組琉球大学農学部長嶺樹