1 著者が長い間研究してきた核果類(モモ スモモ オウトウ)のうち スモモとオウトウは結実が不安定で いかに安定して結実させるかが大きな課題になっている これに対し モモの結実確保は比較的容易だが 食味のばらつき を指摘されることが多い 品質の揃った果実を安定してとる モモではこれが課題であり 実現

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1 1 著者が長い間研究してきた核果類(モモ スモモ オウトウ)のうち スモモとオウトウは結実が不安定で いかに安定して結実させるかが大きな課題になっている これに対し モモの結実確保は比較的容易だが 食味のばらつき を指摘されることが多い 品質の揃った果実を安定してとる モモではこれが課題であり 実現するにはじつは高度な技術が必要となる 本書は その核となる技術 すなわち施肥や整枝 せん定などによる樹勢調節 および摘蕾 摘花/果の着果調節を中心に モモ栽培の基本技術 長い栽培の歴史の中で つねにバージョンアップされ続けてきたそれを ベースとなる樹体生理をふまえてわかりやすく解説しようとしたものである 本書の発行元である農文協から筆者も分担執筆した モモの作業便利帳 が出版されて16 年になるが この間 品種の変遷はもちろん 核割れの軽減と摘果の労力分散をねらいとした摘蕾による早期着果調節とか 発生が増えている果肉障害を軽減する管理の方法といった新たな開発技術も数多い 本書でもそれらについてはできるだけ取り上げている 他の果樹でもそうだが モモでも近年は栽培面積は漸減傾向にある それでも これまでモモの経済栽培の北限であった山形県を越えて 秋田県や青森県で栽培が始まるなど 新たな動きも起きている これからのモモ栽培の可能性を信じてのことだろう まえがき

2 2 本書は そうしたモモの可能性にかける方 モモを新規就農の栽培品目に選んだ方はもとより 自分の栽培をもう一度基礎から見直そうと考える方 例えば新しい品種を入れたのをきっかけに一から学び直してみようと思うベテラン農家や 基礎こそ大事だと考える指導者や農業大学校 農業高校の先生方などに 役立てていただきたいと願っている 著者は その風土が栽培に適したこともあり ブドウやスモモとともに日本一のモモ産地になっている山梨県で試験研究に従事している 本書の技術も多くは山梨県のそれをベースにしているが 全国の栽培に役立つよう配慮した 最後に 本書を執筆するにあたって多くのご助言ご教示をいただいた山梨県果樹試験場の先輩諸氏 および山梨県果樹園芸会モモ部の皆様に篤く感謝申し上げます またこのたび単行本として本書発行の機会を与えてくれた農文協にお礼申し上げる 二〇一七年十月富田晃

3 実管理モモの生育過程とおもな栽培管理 ( 農文協 果樹栽培の基礎 2004 を改変 ) 月 生育段階 休眠期 発芽 開花 結実期 果実肥大 成熟期 養分蓄積期 休眠期 生育のすがたおもな栽培管理9 モモの生育過程とおもな栽培管理結生殖生長栄養生長枝管理土壌管理防胚のう 花粉形成 開花 花芽分化 花器形成 花 果実の発育 細胞分裂 硬核期 細胞肥大 生理的落果 果実の肥大量 新梢の生長量 落葉 地上部 地下部 春根 秋根 新根の生長量 摘心人工受粉 摘果 袋掛け 除袋 摘花 収穫 整枝 せん定 整枝 せん定 摘心 捻枝 誘引 枝つり 支柱立て 追肥 基肥 除草 マルチング 土壌管理 休眠期防除 生育期薬剤散布

4 モモの樹の特性を知る 1 理想的な生育 70 ばれるような枝になると8月になってもま が続き 1mを超え徒長枝 発育枝 と呼 枚の葉が確保される これらの葉でつくら だ生長は続く 新梢の生長が遅くまで続く 徒長枝が多く発生するような樹勢では遅 イナスとなる 少なくなる 果実生産にとっては大きなマ に多く消費され 果実への分配量は著しく れる光合成産物が果実内にどのくらい送り 梢の停止状態が大きく関係する 前の年に形成された葉芽が新梢として生 結果枝の長さで異なる新梢停止時期 収穫の早い極早生品種では開花からわずか 長し 翌年の結果枝となる この結果枝の く ま で 新 梢 の 伸 び が 続 き 図 序 1 - 変 形果や核割れ 生理落果が多くなり 品質 長さによって新梢の停止時期は異なる 短果枝と中果枝は5月下旬には生長を停 日 前から急激に高まる モモでは開花から収 も不安定で 品種本来の特性が発揮できな の糖度は着色が始まる頃 収穫の 図序 1 徒長枝が多発し 樹形が乱れた樹 モモはほかの果樹に比べて頂部優勢性が弱く 基部から 強い枝が発生しやすい と 葉で生産された光合成産物はその生長 60 込まれるかは 同時並行で生長している新 着果調節で 収穫時には1果あたり 50 止する 一方 長果枝は7月下旬まで伸長 15 穫まで 摘蕾 摘花 摘果による段階的な 日ほどで成熟期を迎える また果実 モモは開花から収穫までの期間が短く 開花 収穫までがわずか 日 おさえておきたい生育特性 おいしい モモづくりの基本 序章 70

5 長果枝 い 着色始期の新梢停止率を に 90 率を高めることが重要である 葉で生産された光合成産物の果実への分配 新梢伸長が 早期に停止するよ う管理して 展葉したのち 一定の葉面積を確保したら 質な果実の生産と多収を目指すには 葉が このようなモモの特性を踏まえて 高品 の新梢が停止する樹勢を目指 目標としては 果実の着色が始まった時 点で 90 る 図 序 3-1 本 の 樹 に お け る そ の 構 よって長果枝 中果枝 短果枝に分けられ す で に 述 べ た と お り 結 果 枝 は 長 さ に せん定の強弱 2 適正樹相へ導くには 形もよく 日持ちも優れる る また適正な樹勢で栽培されたモモは果 をしたモモを安定して収穫することができ まっていれば 高糖度で 品種本来の着色 すことである 新梢停止率がこの範囲に収 成比率は樹勢の強弱によって変わる 長果 序章 おいしいモモづくりの基本 11 結果枝の種類別形態と新梢の発生 図序 2 新梢の勢力が落ちると 複葉もすべて花芽になる ことが多くなり 翌年 はげ上がった結果枝にな りやすい 長果枝 中果枝には葉芽も 多くあり 翌年の結果枝を 確保しやすい 中果枝 短果枝 短果枝は葉芽が先端だけに しかないので 枝がはげ上 がりやすい モモの安定生産には着果と新梢伸長のバランスが大事 一定の新梢伸長は確保しつつ その光合成産物をいかに 効率よく果実に送り込めるかだよ

6 長果枝 短果枝 を超えて し 新梢を遅伸びさせない肥効 肥料の効 新梢管理と秋季せん定 から行なう 管理や秋季せん定も重要である 樹勢が強 好適な樹相に誘導する方策として 新梢 き とするため 施肥時期は 月までとす る 着果調節でコントロール く 栄 養 生 長 新 梢 伸 長 が 活 発 な 場 合 は 部まで光が あたるような採光 条件を保つ 樹勢を調節する技術としては着果調節が 日後に行なう仕上げ摘果の程度 30 れを防ぐことができる むらを少なくし 若木ではとくに樹形の乱 また 徒長枝となる元 強勢な新梢 を新 最終の見直し摘果は6月に入って新梢の を軽くし やや多めの着果量にして樹に負 減するのは当然ながら まずチッソ過多に 多く までの新梢 が伸長を停止して 梢管理で除いておくことで薬剤散布の掛け 満開 ほとんどが中 短果枝となる場合は 切り 施肥は 月までに に努める 強勢な新梢に捻枝や摘心を行なって樹冠内 枝や短果枝の占める割合が 秋季せん定は若木や強い樹勢の成木に対して 行なう 上 無処理 下 処理 骨格枝である主枝や亜主枝の上側 陽光面 から発生し た徒長枝をせん除する 左下は切り落とした枝で これぐらいのせん定量とする 図序 4 荷をかけ 生育の調節を図る 40 注意したい また必要葉枚数を早期に確保 施肥では樹齢や生育状況に応じて量を加 35 もっとも基本となる 生育が旺盛な場合は 95 にした弱めのせん定を心がける 逆に中果 以上ある樹は 冬季せん定は間引きを中心 枝の占める割合が 以上 徒長枝も 本 20 返しを主体にして勢力の回復 枝の若返り 図序 3 結果枝の種類と長さ 長果枝 30 以上 中果枝 30 短果枝 未満 中果枝 12

7 13 新梢管理によって強い新梢を取り除いても 収穫後の9月になるとまた強い枝の発生が目立つようなときがある その場合は 徒長枝を中心に強勢な枝を秋季せん定によって処理する(図序- 4) 秋季せん定は 強い樹勢から好適な樹相へ誘導する方法としてきわめて有効であるが 適正樹勢の樹に対しては樹勢低下につながり 逆効果となる ときどき秋季せん定が必要ない樹に対しても強いせん定が行なわれているのを見かけるが 注意したい その他 気を付けたいこと以上のほか 好適な樹相(早期に新梢が止まり 収穫時の停止率が ~90 %)を長期にわたり維持するには 次のような管理が重要となる 1しっかりした骨格を形成し 成木期以降は太枝を切らなくて済むよう計画的に枝を整理する 2成園化しても縮伐(相互に接する樹の太枝を切り縮める)をしないで済むように 適正な栽植距離をとる 主枝 亜主枝など骨格をつくる枝の先端を欠くと それ以降の樹形や適正樹勢の維持が困難となる 3地上部と地下部の生育は連動しているので 根域の拡大を促すために排水性と保水性が向上する土づくりを徹底する 4花粉のない白桃系品種では 結実量が不足しないように人工受粉による結実管理に努める また着果管理では樹に負担がかかりすぎないよう 樹勢に応じた適切な着果量に調節する 5健全な樹体を維持するには日焼けの防止も重要で 主枝や亜主枝の上を覆う枝を配置する(52 ページ図3-14 参照) いぼ皮病やコスカシバなどの枝幹の病害虫の防除も徹底する さて 以上のような適正樹相を維持するための管理とともに モモ栽培を成功させるうえで欠かせない三つの条件として 土壌 樹づくり(樹形) 水分管理がある モモの開花 結実開花期は品種によって多少違うが 寒冷地ではどの品種もほぼ一斉に開花する 多くの品種が自家結実する しかし 花粉をもたないか少ない白桃系の品種(加納岩白桃 浅間白桃 白桃 川中島白桃など)では 花粉のある品種を受粉樹として混植するか 人工受粉しないと結実しない 花粉のある品種はよく結実するので 摘蕾や摘花で着果量の調節を行なう この作業には開花による貯蔵養分の消耗を抑え 新梢の伸長や果実の発育をよくする効果がある 摘果が早いほど果実はよく肥大するが 急激に肥大すると核割れ(第9章参照)による生理落果で 着果量が不足する危険性も高くなる このため 摘果は通常数回に分けて段階的に行なう 袋掛けは 短期間に多くの労力を要するが 病害虫予防のほか果実の外観をよくし 収穫1~2週間前の除袋によって着色を促す効果がある また裂果しやすい品種では その予防に役立つ 序章 おいしいモモづくりの基本

第一部 高品質連年生産のための土壌 樹体改善技術 摘葉するとともに先端 3 芽の切り返しを組み 合わせると 細く短い枝の確保だけでなく春季の 着花が減少するので樹相のバランスを回復させ るのに効果的です なおこの場合 早め 秋季 青島温州 等の高糖系ウンシュウは 果実の の摘葉処理も同様な効果が期待できます 糖度が高い反面 果皮が粗く じょうのう膜の硬 摘葉処理は着花減少だけでなく 優良な結果 い商品性の劣る大玉果がなりやすい上に

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