かなえ医薬振興財団研究報告集

Size: px

Start display at page:

Download "かなえ医薬振興財団研究報告集"

ゆきさまるこ
4 years ago
Views:

1 かなえ医薬振興財団 2010 年度研究業績集 ( 第 39 集 ) 19. 卵巣明細胞腺癌の新規増幅遺伝子 ZNF217 を標的とした治療法の開発島根大学医学部産科婦人科中山健太郎キーワード : 卵巣明細胞腺癌, 癌遺伝子 Abstract BACKGROUND. This study examined the clinical significance of ZNF217 amplification and assessed whether ZNF217 is a potential therapeutic target in ovarian clear cell carcinoma. METHODS. ZNF217 expression and amplification in OCCC was assessed by immunohistochemistry, fluorescence in situ hybridization, and clinical data collected by retrospective chart review. ZNF217 gene knockdown using silencing RNA (sirna) was used to assess ZNF217 function in OCCC tissue samples. RESULTS. Gene amplification was identified in 12 (20.4%) of 60 OCCCs. ZNF217 copy number significantly correlated with ZNF217 protein expression (r=0.341, P<0.01). ZNF217 amplification significantly correlated with shorter progressionfree (P=0.0042) and overall (P=0.0199) survival. There were nonsignificant trends between high ZNF217 protein expression and poor progression-free (P=0.2594) and overall (P=0.2199) survival. Multivariate analysis revealed ZNF217 gene amplification to be an independent prognostic factor for progression-free and overall survival after standard platinum agentbased chemotherapy (P= and P=0.0039, respectively). Profound growth inhibition and apoptosis were observed in ZNF217 sirna-treated cancer cells with gene amplification compared to cancer cells with ZNF217 moderate expression without ZNF217 gene amplification or with low ZNF217 expression. CONCLUSIONS. These findings indicate that ZNF217 overexpression is critical to growth and survival of OCCCs with ZNF217 gene amplification. Furthermore, they suggest that ZNF217 sirna-induced phenotypes depend on amplification status of OCCCs. Therefore, ZNF217-targeted therapy may benefit OCCC patients with ZNF217 amplification. 背景および目的産婦人科領域で扱う腫瘍には子宮頚癌子宮体癌卵巣癌がほとんどであるその中でも卵巣癌の死亡率が極めて高いさらに卵巣癌の中でも組織型別に予後を調べると明細胞腺癌が最も予後不良である本邦での卵巣癌における卵巣明細胞腺癌の発生頻度は 21.4% であり 30 年間で約 5 倍に増加している卵巣明細胞腺癌は白金製剤を主体とする現在の化学療法に抵抗性で極めて予後不良であり特に本邦において急速に増加傾向にある卵巣明細胞腺癌の分子生物学的特徴は殆ど解明されておらず分子標的薬剤開発の糸口さえ掴めていない今後卵巣明細胞腺癌の治療成績を向上させるためには卵巣明細胞腺癌の分子生物学的特徴を解明しその特徴にターゲットを絞った創薬が必要と考えられる申請者は卵巣がんの発がん機構の分子生物学解明とその臨床応用という研究テーマで大学院入学後より現在に至るまで研究を継続している 2005 年以降 Digital Karyotyping SNP array を用いて卵巣癌における新規癌遺伝子を複数同定してきた新規増幅遺伝子 Rsf-1 Notch3 NAC1 は遺伝子導入した細胞を用いた機能解析にて - 1 -

2 癌遺伝子としての機能がある事また sirna や gamma-secretase inhibitor を用いた発現制御解析で in vitro in vivo の両面で分子標的となりうる事を報告した (1)(2)(3) さらに Digital Karyotyping SNP array Dual-color FISH マイクロサテライトマーカー解析を用いた実験にて卵巣癌の約 40% は Chromosomal instability ( 以下 CIN) の phenotype を示しており CIN phenotype は予後不良である事を報告してきた (4)(5) 卵巣癌で最も予後不良で既存の抗癌剤治療に抵抗性である卵巣明細胞腺癌に焦点を絞り Digital Karyotyping SNP array を用いて卵巣明細腺癌特有の増幅遺伝子を同定する事を目的としたさらに卵巣癌で最も発生頻度が高い組織型でる漿液性腺癌と Chromosomal instability の程度を比較することとしたさらに発見された新規増幅遺伝子が卵巣明細胞腺癌の分子標的因子として有用であるかについて分子生物学的臨床病理学的に詳細に検討していく事を目的とした方法インフォームドコンセントの得られた卵巣明細胞腺癌手術後の臨床検体を初代培養し上皮細胞に対する鉄ビーズ付加上皮細胞特異抗体 (anti-epicam-conjugated beads) とマグネットを用いたセルソーティングを用いて癌細胞のみの検体から DNA を抽出する明細胞腺癌約 10 例で Digital Karyotypin SNP array を用いて難治性明細胞腺癌における遺伝子増幅領域を同定する当科関連病院での症例を含めた卵巣癌 ( 約 60 例 ) を使用した Tissue Microarray を用いて dual color FISH 法にて大規模サンプルでの遺伝子増幅の頻度予後等について検討する遺伝子増幅がみられた症例は網羅的な遺伝子発現解析を行い遺伝子増幅領域内の責任候補遺伝子を同定する指標とする遺伝子増幅領域の高発現遺伝子が同定されたら臨床検体を用いて real-time pcr 法にて遺伝子発現プロファイルを作成し責任遺伝子を絞り込む責任候補遺伝子は PCR 法を用いて遺伝子クローニングし腫瘍増殖能を持たない正常卵巣表層上皮細胞株に安定遺伝子導入して細胞増殖能を検討し癌遺伝子としての機能について検討するまた sirna を用いた発現抑制解析を in vitro in vivo で行い本遺伝子が分子標的因子になりうるかどうか検討する結果新規増幅遺伝子 ZNF217 SNP array を用いて卵巣明細胞腺癌の染染色体 20q13.2 領域に遺伝子増幅領域を認めた ( 図 1 A) また Chromosomal instability の程度は明細胞腺癌は Low grade の漿液性腺癌と同程度であった ( 図 1B) 20q13.2 領域には以前から癌遺伝子として可能性が報告されている ZNF217 が存在するため ZNF217 に焦点を絞り卵巣明細胞腺癌症例での臨床病理学的検討予後について検討した - 2 -

3 図 1. 卵巣明細胞腺癌における DK, SNP array の結果. 図 1 A. DK, SNP array にて卵巣明細胞腺癌の染色体 20q13.2 領域に ZNF217 の遺伝子増幅を認めた図 1 B. 卵巣明細胞腺癌と漿液性腺癌を含む他の組織型と CIN の程度の相違 ZNF217 の遺伝子コピー数とタンパク発現との関連 ZNF217 の遺伝子増幅は 20.4%(12 例 /60 例 ) に認められた ZNF217 の免疫染色は 4 段階の染色強度で評価した ZNF217 の FISH 及び免疫染色の結果は図 2に示した ZNF217 の遺伝子コピー数と免疫染色の強度は有意に正の相関を示した (r=0.341, P<0.01) - 3 -

4 図 2 ZNF217 の FISH 免疫染色の結果. FISH と免疫染色の結果Ａ ZNF217 タンパク質強陽性３Ｂ. ZNF217 タンパク質陽性２Ｃ ZNF217 タンパク質弱陰性０ D, ZNF217 遺伝子増幅症例 ZNF217 遺伝子増幅と卵巣明細胞腺癌患者予後 ZNF217 遺伝子増幅と卵巣癌患者の予後につてカプランマイヤー法で検討したところ ZNF217 の遺伝子増幅症例は無病生存期間全生存期間ともに有意に短かった図 3 免疫染色の強度で 2 群に分けたところ無病生存期間全生存期間ともに有意差はなかった図 3-4-

5 図 3 ZNF217 遺伝子増幅タンパク発現と卵巣明細胞腺癌患者の予後カプランマイヤー法で検討した. ZNF217 遺伝子増幅と卵巣癌患者の予後につてカプランマイヤー法で検討したところ ZNF217 の遺伝子増幅症例は無病生存期間全生存期間ともに有意に短かった免疫染色の強度で 2 群に分けたところ無病生存期間全生存期間ともに有意差はなかった ZNF217 ノックダウンと細胞増殖抑制効果次に卵巣明細胞腺癌細胞株を用いて ZNF217 の機能解析を行った ZNF217 の遺伝子増幅の状態と Western blotting によるタンパク発現の状態を示した図 4 ZNF217 の遺伝子増幅を認めた症例は ZNF217 の sirna によるに遺伝子サイレンシングに極めて Sensitive に反応し細胞増殖抑制効果が顕著であった図 5 興味深い事に ZNF217 タンパク発現を多く認めても ZNF217 の遺伝子増幅を認めない細胞株は ZNF217 の遺伝子増幅を認めた細胞株に比べて細胞増殖抑制効果は弱かったこの細胞増殖抑制効果は Anexin V を用いたアポトーシス BRdU を用いた細胞増殖実験の両方に有意であった図 5-5-

6 図 4.A, B, C ZNF217 の遺伝子増幅の状態と Western blotting によるタンパク発現,Real-time PCR による遺伝子発現の状態. JHOC9, OVMANA 細胞は ZNF217 の遺伝子増幅タンパク質の過剰発現を認めた - 6 -

7 図 5 ZNF217 の遺伝子サイレンシングの結果. A, ZNF217 の遺伝子増幅を認めた症例は ZNF217 の sirna によるに遺伝子サイレンシングに極めて Sensitive に反応し細胞増殖抑制効果が顕著であった B, C ZNF217 の遺伝子サイレンシングによる細胞増殖抑制効果は Anexin V を用いたアポトーシス BRdU を用いた細胞増殖実験の両方に有意であった考察 ZNF217 の遺伝子増幅は卵巣明細胞腺癌患者の予後に重大な影響を与えている事が明らかとなったまた in vitro の結果より ZNF217 遺伝子増幅を示している症例に対しては ZNF217 は有効な分子標的因子となる可能性が示された今後 ZNF217 の下流制御遺伝子の網羅的解析を行い卵巣明細胞腺癌発生機構の解明に挑みたいと考えている卵巣明細胞腺癌発生進展機構に関わる遺伝子レベルでの研究が進むなかでその分子生物学的特徴を考えた場合進行卵巣明細胞腺癌を根治させる事は人類の叡智をもってしても困難であるかもしれないしかし ZNF217 阻害剤のような低分子化合物を内服あるいは月に数回の点滴治療で用いる事で腫瘍の進展を遅らせ生活の質を担保することが高齢化社会を迎える将来においては必要となるすなわち癌が死亡を意味する疾患ではなく糖尿病や高血圧のような慢性疾患に変えて行くという発想であるこのような分子標的薬剤が多数開発されれば癌治療に対する選択肢は飛躍的に向上する歳代の癌年齢の患者が分子標的薬剤を使用しながら社会復帰家庭復帰が可能となれば国民生活経済効果に及ぼす好影響は計り知れない尚本研究の主旨は参考文献６で発表した発表論文参考文献 1 Shih IeM, Sheu JJ, Santillan A, Nakayama K, Yen MJ, Bristow RE, Vang R, Parmigiani G, Kurman RJ, Trope CG, Davidson B, Wang TL.: Amplification of a chromatin remodeling gene, Rsf-1/HBXAP, in ovarian carcinoma. Proc Natl Acad Sci USA, 102: , Park JT, Li M, Nakayama K, Mao TL, Davidoson B, Zhang Z, Kurman RJ, Eberhart CG, Shih IeM, Wang TL.: Notch3 gene amplification in ovarian cancer. Cancer Res., 66: ,

8 3) Nakayama K, Nakayama N, Davidson B, Sheu JJ, Jinawath N, Santillan A, Salani R, Bristow RE, Morin PJ, Kurman RJ, Wang TL, Shih IeM.: A BTB/POZ protein, NAC-1, is related to tumor recurrence and is essential for tumor growth and survival. Proc Natl Acad Sci USA, 103: , ) Nakayama K, Nakayama N, Jinawath N, Salani R, Kurman RJ, Shih IeM, Wang TL.: Amplicon Profiles in Ovarian Serous Carcinomas. Int J Cancer, 120: , ) Huan Z, Nakayama K, Nakayama N, Ishibashi M, Yeasmin S, Katagiri A, Purwana IN, Iida K, Maruyama R, Fukumoto M, Miyazaki K.: Genetic classification of ovarian carcinoma based on microsatellite analysis: relationship to clinicopathological features and patient survival. Oncol Rep., 19: , ) Rahman MT, Nakayama K, Rahman M, Nakayama N, Ishikawa M, Katagiri A, Iida K, Nakayama S, Otsuki Y, Shih IeM, Miyazaki K.: Prognostic and therapeutic impact of amplification of the chr20q13.2 ZNF217 locus in ovarian clear cell carcinoma. Cancer, 2011 in press - 8 -

学位論文の内容の要旨論文提出者氏名小川憲人論文審査担当者主査田中真二副査北川昌伸渡邉守論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

学位論文の内容の要旨論文提出者氏名小川憲人論文審査担当者主査田中真二副査北川昌伸渡邉守論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 ) 学位論文の内容の要旨論文提出者氏名小川憲人論文審査担当者主査田中真二副査北川昌伸渡邉守論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 ) < 要旨 > platelet derived growth factor (PDGF 血小板由来成長因子)-C,