Japanese Journal of Endourology Japanese Society of Endourology 2018 原著論文宮内勇貴菊川忠彦西田敬悟雑賀隆史小山花南江野田輝乙浅井聖史福本哲也三浦徳宣柳原豊ロボット支援前立腺全摘

Size: px

Start display at page:

Download "Japanese Journal of Endourology Japanese Society of Endourology 2018 原著論文宮内勇貴菊川忠彦西田敬悟雑賀隆史小山花南江野田輝乙浅井聖史福本哲也三浦徳宣柳原豊ロボット支援前立腺全摘"

のぶのすけすすむ
4 years ago
Views:

1 Japanese Journal of Endourology Japanese Society of Endourology 2018 原著論文宮内勇貴菊川忠彦西田敬悟雑賀隆史小山花南江野田輝乙浅井聖史福本哲也三浦徳宣柳原豊ロボット支援前立腺全摘除術における内臓脂肪の影響要旨肥満症例に対するロボット支援前立腺全摘除術 Ro- poor in the obese group. The factor which significantly bot-assisted laparoscopic radical prostatectomy RALP influenced the length of the console time was visceral fat は手技に難渋することがしばしばある今回RALP症例に area, body mass index and the body circumference おいて内臓脂肪面積を測定し手術に対する影響を後方視 length. The measurement of the visceral fat area can be- 的に検討した 2015年1月から2016年8月まで愛媛大学で come the predictive factor of the extension of the opera- RALPを施行した98例の臍レベルの内臓脂肪面積を測定 tive time. し 100cm 以上であった57例とそれ未満であった41例 2 と比較検討した患者背景では糖尿病の既往が肥満群に多 Key words RALP, visceral fat, obesity い傾向があった手術時間コンソール時間はいずれも有意に肥満群の方が長かったまた術中出血量が肥満群の方が有意に多かったが輸血症例は1例のみであった陽性緒言断端など病理学的結果に差はなかった尿禁制は肥満群の肥満症例に対する外科的手術において手術時間の延長方が悪い傾向であったコンソール時間に有意に影響を与や手技が困難となることをしばしば経験しロボット支援える因子は内臓脂肪面積とBMI 体周囲長であった内臓前立腺全摘除術 Robot-associated laparoscopic radical 脂肪面積の測定は手術時間の延長の予測因子となりえる prostatectomy RALP についても同様である今回我々は当院で行ったRALP症例において内臓脂肪面積を測 Abstract Robot-assisted laparoscopic radical prostatecto- 定し手術に対する影響を後方視的に検討した my RALP for obese patients is often difficult. We examined the influence of visceral fat in RALP, retrospectively. We measured the visceral fat area of navel levels 対象と方法 of 98 patients received RALP from January, 2015 until 愛媛大学では2013年6月にRALPを導入したが今回は August, 2016 in Ehime University. We defined the 57 pa- 初期の約80症例を除いた2015年1月から2016年8月までの98 tients with more than 100cm of visceral fat area as an 症例を対象とした術者は7人であるが 86症例 87.8% obese group. Operative time and console time were sig- は4人の術者が行った基本的にはhigh risk症例に対して nificantly longer in the obese group. There was signifi- 拡大郭清を行った Dorsal vein complexは92例 93.9% cantly more quantity of estimated blood loss in an obese において無結紮で処理した画像解析システムSYNAPSE group. It was a tendency that urinary continence was VINCENT 富士フィルム社を用いて CT画像から臍 2 レベルの横断面で内臓脂肪面積を測定した Fig. 1 宮内勇貴西田敬悟小山花南江野田輝乙浅井聖史福本哲也三浦徳宣柳原豊菊川忠彦雑賀隆史愛媛大学泌尿器科住所愛媛県東温市志津川 TEL , FAX uroyuukictb12@yahoo.co.jp 代表著者名宮内勇貴論文受領日 2017年8月24日論文採用日 2018年2月6日 84 また同時に測定される体周囲長皮下脂肪面積も解析した同様に恥骨下での前立腺断面が最大となる部位においての前立腺周囲脂肪面積も測定し解析した一般的に定義されている臍レベルの内臓脂肪面積が 100cm2以上である57例を内臓肥満群とし =A群 100cm2未満であるB群 41例と比較検討した

ロボット支援前立腺全摘除術における内臓脂肪の影響結果 Fig. 1 CTを用いた内臓脂肪面積の測定 : 臍レベルの横断面において, 自動的に皮下脂肪, 内臓脂肪が識別され面積が示される. 解析は Mann-Whitney の U 検定, および χ 2 検定を行い, 解析ソフトは StatMate ver3.19 を用いた. 患者背景をTable 1に示す.

2 ロボット支援前立腺全摘除術における内臓脂肪の影響結果 Fig. 1 CTを用いた内臓脂肪面積の測定 : 臍レベルの横断面において, 自動的に皮下脂肪, 内臓脂肪が識別され面積が示される. 解析は Mann-Whitney の U 検定, および χ 2 検定を行い, 解析ソフトは StatMate ver3.19 を用いた. 患者背景をTable 1に示す. 生検時のPSA 値や, 術前病理学的評価などに有意な差を認めなかった.A 群においては糖尿病を合併している症例が16 人 (28.1%) であり,B 群では4 人 (9.8%) であった (p=0.07). 両群を比較すると,BMI(25.3 vs 22.2) や体周囲長 (90.2cm vs 79.6cm), 皮下脂肪面積 (132.8cm 2 vs 85.7cm 2 ), 前立腺周囲脂肪面積 (24.2cm 2 vs 19.2cm 2 ) はいずれもA 群において, 有意に高値を示していた ( いずれもp<0.001).Table 1に示していないが, 内臓脂肪とBMI, 体周囲長, 皮下脂肪面積および前立腺周囲脂肪は強い相関関係を示していた. 手術成績をTable 2に示す. 両群を比較すると手術時間 (237.5 分 vs 分 ),console time(180.9 分 vs 分 ) はA 群で有意に長かった ( いずれもp<0.05). 手術時間に影響と及ぼすと思われる, 拡大郭清の有無や, 神経温存の有無に関しては両群に差を認めなかったため, それらの影響ではないと考えられた. また, 出血量もA 群において有意に多かったが (148.3ml vs 72.2ml, p<0.05), 両群とも輸 Table 1 患者背景 A (n=57) B(n=41) p 年齢 68.3(57-78) 66.9(51-79) NS(0.54) 生検時 PSA(ng/ml) 9.2( ) 7.6( ) NS(0.41) GS NS(0.44) c a 臨床的 T 分類 2b 4 1 NS(0.45) 2c 7 5 3a 4 1 Low 13 9 D Amico risk Int NS(0.22) High Low 13 9 NCCN risk Int NS(0.22) High 18 7 生検時悪性本数 (%) 29.0( ) 29.7( ) NS(0.66) 前立腺体積 (mm 3 ) 32.4( ) 28.2( ) NS(0.19) 腹部手術歴 NS(0.59) 糖尿病 16(28.1%) 4(9.8%) NS(0.07) 高血圧 26(45.6%) 11(26.8%) NS(0.20) BMI 25.3( ) 22.2( ) <0.001 体周囲長 (cm) 90.2( ) 79.6( ) <0.001 皮下脂肪 (cm 2 ) 132.8( ) 85.7( ) <0.001 前立腺部脂肪 (cm 2 ) 24.2( ) 19.2( ) <0.001 BMI, 体周囲長, 皮下脂肪, 前立腺周囲脂肪は肥満群で高値であったが, その他の臨床病理学的背景に差がなかった. 85

3 Table 2 手術成績, および病理学的結果 A (n=57) B(n=41) p 手術時間 ( 分 ) 237.5( ) 215.3(97-316) <0.05 コンソール時間 ( 分 ) 180.9(96-303) 159.7(62-241) <0.05 出血量 (ml) 148.3( 少量 -800) 72.2( 少量 -400) <0.05 なし NS(0.60) リンパ節郭清限局拡大 15 8 なし NS(0.64) 神経温存片側 6 5 両側 1 0 輸血 1 1 NS(0.66) 尿道カテ抜去 (POD) 7.0(4-32) 5.9(4-9) NS(0.75) 在院日数 (POD) 9.5(5-22) 9.1(6-17) NS(0.86) 吻合不全 8 1 NS(0.06) 合併症 (grade 3) 1( 尿道狭窄 ) 1( 大網露出 ) T T2a 病理学的 T 分類 T2b 2 2 T2c NS(0.13) T2b 9 5 T3a GS NS(0.78) RM NS(0.20) 郭清リンパ節個数 7.4(1-34) 8.9(2-29) NS(0.41) 手術時間,console time, 出血量は肥満群において有意に高値であった. 血を要した症例は1 例ずつであった. 尿道カテーテルは, 最近は1 週間後に抜去するように決めているため有意な差はなく (7.0 日 vs 5.9 日 ), それに伴って術後在院日数に関しても有意差は認めなかった (9.5 日 vs 9.1 日 ) が, カテーテル抜去の際に行っている膀胱造影で, 吻合不全の所見を認める症例は,A 群で8 例 (14.0%),B 群で1 例 (2.4%) であった (p=0.06).clavien-dindo 分類でgrade 3に相当する合併症は,A 群で尿道狭窄の1 例であり, 内視鏡的切開術を行った. また,B 群ではドレーン挿入部跡からの大網露出があり, 縫合術を行った. 病理学的な結果に関しては両群に有意な差はなく, 断端陽性症例に関しても差はなかった (14 例 (24.6%)vs 5 例 (12.2%)). 尿禁制に関しては, 術後 6ヶ月目でのsafety pad 1 枚以下の割合は,A 群 58.8%,B 群 90.9% であった (p=0.07)(fig. 2). 内臓脂肪面積, 皮下脂肪面積, 体周囲長, 前立腺周囲脂肪面積,BMIのそれぞれと,console timeの相関に関して検討すると, 内臓脂肪面積, 体周囲長,BMIがconsole timeと有意な相関関係を示した ( いずれもp<0.05)(Fig. 3). Fig. 2 術後尿禁制率 ( 尿禁制獲得はsafety pad 1 枚 / 日以下とした ):A 群が6ヶ月目で58.8% の禁制率であったが,B 群は 90.9% であった. 86

4 ロボット支援前立腺全摘除術における内臓脂肪の影響 Fig. 3 Console time と各肥満因子の相関図 : 内臓脂肪, 体周囲長,BMI が有意に console time と相関を示した. 考察肥満患者における手術手技がしばしば困難となることは, 日常よく経験することである. 前立腺全摘除術においても, 対象症例が中高年であることから, 肥満症例に遭遇することも多い.RALPが導入されてからも, 肥満は全く影響がない, とは言い難いのが現状であろう. 肥満症例においてRALPは手術時間の延長を来たした, との報告が散見されている 1-3). また, 肥満症例においては, 患者の準備,dorsal vein complexの出血のコントロール, 神経温存, 膀胱尿道吻合などで時間がかかった,Costも高くなる 2) との報告や, 後腹膜アプローチにしても手術時間は延長 3) した, との報告もある. また出血量に関しては, 出血量 3) が多くなったという報告と, 出血量には差がなかった, 1) という報告がある. 自験例においても, 有意に手術時間とconsole timeが延長した. また出血量も肥満群において, 有意に増加している. 手術時間の延長が出血量に影響することも考えられるが, むしろリンパ節郭清や前立腺周囲操作などの際に, 脂肪組織からの出血が, 肥満群において多い印象がある. また, 手術の際には, 内臓脂肪肥満の症例において, 腸が視野の妨げになることもしばしば経験する. 結果に示していないが, 膀胱尿道吻合時間は両群において差はなかったが (A 群 23 分,B 群 20 分. 有意差なし ), 吻合不全が内臓肥満群に多い傾向にあったのは, 内臓肥満が吻合手技に影響を及ぼしていると考えられる. 内臓脂肪とRALPとの関係の報告は確認し得なかったが, 開腹手術においては, 内臓脂肪が多いとtrifectaが有意に達成できなかった, と報告されており,BMIだけでは反映されないかもしれないことが示唆されている 4). 腹腔鏡手術においても, 手術時間に影響を及ぼす因子は内臓脂肪前立腺周囲脂肪前立腺重量であり,BMIは影響がなかった, と報告されている 5). 自験例では前立腺周囲脂肪面積はconsole time との相関が認められなかったが,BMIはよく相関していた. また, BMIや体周囲長が内臓脂肪面積ともよく相関していたため, 今回の検討では, 簡便に評価しうるBMIや体周囲長が,console timeの延長の予測因子として, 内臓脂肪型面積の代用としうる可能性があると考えた. また, 肥満と尿禁制に関する報告は, 尿禁制に肥満の影響はなかったとするものと 1, 6), 肥満症例では尿禁制率が有意に悪いとするもの 7, 8) とがある. しかし, 影響がないとする報告も, 尿禁制の獲得に時間がかかるとしている. 特に内臓脂肪肥満の症例は, 手術の際のworking spaceの狭小化が手術成績に影響を及ぼしたり, 膀胱を下垂させたりすることが, 尿失禁に繋がるとされている 6). 87

5 自験例においても, 尿禁制獲得 (safety pad 1 枚以下 ) は, 術後早期は内臓脂肪肥満群と非肥満群に有意な差は認めなかったが, 徐々にその差は開き, 術後 6ヶ月目においては肥満群で約 60%, 非肥満群で約 90% と有意差はないものの, 内臓肥満群において尿禁制が悪い傾向があった. 長期的な成績も検討する必要であるが, 短期的には報告のとおり禁制の獲得に時間がかかることが示唆された. 結論として, 内臓脂肪型肥満はRALPにおいて手術時間,console timeの延長に繋がり, また, 出血量の増加や尿禁制獲得の遅延など,functionalな手術成績にも影響を及ぼすことが示唆された. さらなる症例の蓄積と, 長期的な観察による検討が今後必要であると考えられる. 利益相反自己申告 : 申告すべきものあり文献 1) Gu X, Araki M, Wong C(2014)Does elevated body mass index(bmi)affect the clinical outcomes of robot-assisted laparoscopic prostatectomy(ralp):a prospective cohort study. Int J Surg. 12: ) Carter SC, Lipsitz S, Shih YC, et al.(2014)population-based determinants of radical prostatectomy operative time. BJU Int. 113:E ) Agrawal V, Feng C, Joseph J(2015)Outcomes of Extraperitoneal Robot-Assisted Radical Prostatectomy in the Morbidly Obese:A Propensity Score- Matched Study. J Endourol. 29: ) Ongun S, Demir O, Gezer NS, et al.(2015)impact of pelvic biometric measurements, visceral and subcutaneous adipose tissue areas on trifecta outcome and surgical margin status after open radical retropubic prostatectomy. Scand J Urol. 49: ) Kaneko G, Miyajima A, Yuge K, et al.(2013)periprostatic fat area is an independent factor that prolonged operative time in laparoscopic radical prostatectomy. Urology. 82: ) Kumar A, Samavedi S, Bates AS, et al.(2015)continence outcomes of robot-assisted radical prostatectomy in patients with adverse urinary continence risk factors. BJU Int. 116: ) Wiltz AL, Shikanov S, Eggener SE, et al.(2009)robotic radical prostatectomy in overweight and obese patients:oncological and validated-functional outcomes. Urology. 73: ) Ahlering TE, Eichel L, Edwards R, et al.(2005)impact of obesity on clinical outcomes in robotic prostatectomy. Urology. 65:

34-1（見本英3）

34-1（見本英3）講座北里医学 2015; 45: 103-107 第 28 回北里腫瘍フォーラムロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術の手術成績腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術との比較田畑健一, 佐藤威文, 津村秀康, 平山貴博, 西盛宏, 藤田哲夫, 松本和将, 岩村正嗣北里大学医学部泌尿器科学ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術 (RALP) が 2012 年 4 月から保険収載され, 北里大学病院では

Japanese Journal of Endourology Japanese Society of Endourology 2018 原著論文 宮内勇貴 菊川忠彦 西田敬悟 雑賀隆史 小山花南江 野田輝乙 浅井聖史 福本哲也 三浦徳宣 柳原 豊 ロボット支援前立腺全摘

Japanese Journal of Endourology Japanese Society of Endourology 2018 原著論文宮内勇貴菊川忠彦西田敬悟雑賀隆史小山花南江野田輝乙浅井聖史福本哲也三浦徳宣柳原豊ロボット支援前立腺全摘