(7 ) 上田 他 : 柿シロップ乳酸菌飲料の開発 79 表 使用した菌株 属 種 a) 菌株 分離源 b) タンナーゼ活性 Lactobacillus plantarum subsp. plantarum ATCC 497 T キャベツの漬物 Lactobacillus paraplantarum

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1 Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi, 63(2), 78-85, 206 Copyright 206, Japanese Society for FoodScience andtechnology doi : 0.336/nskkk 技術論文 柿果実由来乳酸菌を用いた柿シロップ乳酸発酵飲料の開発 * 上田京子, 樋口智子, 平野吉男, 塚谷忠之, 末永光, 齋藤浩之 2, 横溝雅和 福岡県工業技術センター生物食品研究所 2 プレットサンフーズ株式会社 Development of a FermentedPersimmon Syrup Beverage Using Lactic AcidBacteria Isolatedfrom Persimmon Fruit Kyoko Ueda *, Tomoko Higuchi, Yoshio Hirano, Tadayuki Tsukatani, Hikaru Suenaga, Hiroyuki Saitoh andmasakazu Yokomizo 2 Biotechnology andfoodresearch Institute Fukuoka Industrial Technology Center, Aikawa, Kurume, Fukuoka PretosunfoodCo., 96-5 Araki, Arakimachi, Kurume, Fukuoka We report here on the development of a fermented lactic acid beverage using syrup made from non-standard persimmons (Diospyros kaki Fuyu ). BFRI 380-7, which was isolatedfrom persimmons, was selectedfrom growth assay results in persimmon syrup medium. BFRI was identified as Lactobacillus plantarum. Furthermore, lactic acidbacteria (LAB) strains (including BFRI 380-7) that were capable of fermenting persimmon syrup exhibitedtannase (tannin acylhydrolase) activity. BFRI was optimally culturedat a temperature of 30 and4 to 6 days incubation time, andlactic acidproduction was the highest at a syrup concentration of Brix 30. Fermented persimmon syrup (30, 5 days) contained. % lactic acidandlab at CFU/ml. We successfully produced trial products of the fermentedlactic acidbeverage using BFRI from persimmon syrup without milk components. (ReceivedJun. 30, 205 ; AcceptedOct. 6, 205) Keywords : lactic acidbacteria, persimmon syrup, lactic acidfermentation, tannase キーワード : 乳酸菌, 柿シロップ, 乳酸発酵, タンナーゼ ⅰ) 農林水産省が実施している作物統計調査によると, 福岡県は全国第 2 位のカキ生産県であり, 出荷量は t である. 品種は, 富有柿 ( 甘柿 ) が中心で, 主な産地は, うきは市, 朝倉市, 久留米市など筑後川流域沿いである. これらの地域では, 形が規格から外れている柿や賞味期限が短い過熟柿であるために, 流通出荷されない規格外の柿が約 t/ 年排出されている. これら規格外柿の有効利用方法として, 柿生産地では, 柿酢を製造する取り組みが行われている )2). 柿酢以外の新たな取り組みとして, 著者らは, 規格外富有柿を粉砕後, 減圧濃縮し, 柿シロップや柿ピューレに加工することで, 長期保存可能な食品加工用原料の製造技術を開発している 3). 他方で, 規格外品や副産物の付加価値を高めるための乳酸発酵技術が開発されている. 河村らは, 柿果実から分離した乳酸菌で発酵したニンジン発酵液を使用し, 長崎県の特産品として, 人参ジュースを開発している 4). また, 広瀬らは, 沖縄県産のサトウキビ搾汁液原料の乳酸発酵飲料を 開発し,γ アミノ酪酸 (GABA) は約 8 mg/00 ml まで乳酸発酵により増強され, さらに DPPH ラジカル消去活性は 84 µmol-te/00 ml であることを明らかにしている 5). また, 富有柿に関する研究では,Lactobacillus plantarum( イチジク分離源 ) を用いて, 柿ペーストを原料にセルラーゼ処理および乳酸発酵した結果,DPPH ラジカル消去活性が 5.5 mol-te/00 g( 加工前の約 5.6 倍 ) であったことが報告されている 6)7). これらと比較して, 著者らが開発した柿シロップ (Brix 60) は, サトウキビ乳酸発酵飲料の約 2 倍の GABA を含有し, さらに柿ペースト発酵液の約 0 倍の DPPH ラジカル消去活性を示した 3).DPPH ラジカル消去活性について, 柿ペースト発酵液より柿シロップが高い値を示したのは, 柿原料を真空減圧濃縮ニーダーで Brix 60 まで濃縮しているためであると考えられる. 一方, 乳および乳製品の成分規格等に関する省令 ( 昭和 26 年 2 月 7 日厚生省令第 52 号 ) により, 乳酸菌飲料は乳成分を含むと成分規格に定められている. 現在の乳酸菌 福岡県久留米市合川町 465-5, 福岡県久留米市荒木町荒木 96-5 * 連絡先 (Corresponding author),[email protected]

2 (7 ) 上田 他 : 柿シロップ乳酸菌飲料の開発 79 表 使用した菌株 属 種 a) 菌株 分離源 b) タンナーゼ活性 Lactobacillus plantarum subsp. plantarum ATCC 497 T キャベツの漬物 Lactobacillus paraplantarum NBRC 075 T ビール汚染物質 Lactobacillus pentosus NBRC T コーンサイレージ Lactobacillus buchneri JCM 5 T トマト果肉 Lactobacillus parabuchneri JCM 2493 T ヒトだ液 Lactobacillus brevis NBRC 3345 セリビアのオリーブ Lactobacillus brevis NBRC 2005 サイレージ Lactobacillus casei NBRC 5883 T チーズ Lactobacillus rhamnosus NBRC 3425 T Lactobacillus hilgardii JCM 55 T ワイン Lactobacillus dextrinicus JCM 5887 T サイレージ Pediococcus inopinatus JCM 258 T ビール酵母 Pediococcus damnosus JCM 5886 T ラガービール酵母 Pediococcus parvulus JCM 5889 T サイレージ Pediococcus pentosaceus JCM 5890 T 乾燥アメリカビール酵母 Pediococcus acidilactici JCM 8797 T Lactococcus lactis subsp. lactis JCM 5805 T Lactococcus lactis subsp. cremoris NBRC T 生乳 Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides NBRC T 発酵オリーブ Lactobacillus plantarum BFRI * 柿果実 a)atcc, American Type Culture Collection;NBRC, NITE Biological Resource Center;JCM, Japan Collection of Microorganis; T, 標準株. * 福岡県工業技術センター生物食品研究所分離株 b) 大澤ら (2000) 8) 飲料の市場動向をみると, 乳アレルギーや乳糖不耐症の人々による乳酸菌を摂食したいというニーズが高く, 乳由来成分を含有しない商品が求められている. しかし現在市販されている乳酸菌入りの乳成分 0% 商品は 野菜の戦士 ( 大塚チルド食品 ( 株 )) のみである 8)ⅱ). そこで, 本研究では, 柿シロップのみを原料とし, 柿シロップの原料である富有柿果実から新たに分離した乳酸菌を用いて, 柿シロップ乳酸菌飲料の開発に取り組んだので報告する. 実験方法. 試料および乳酸菌 () 柿シロップ平成 24 年度に福岡県久留米市田主丸地域で収穫された 3) 規格外柿 ( 富有柿 ) を原料に, 前報の方法により製造された柿シロップ (Brix 60) を ( 株 ) 元山から入手し, 使用時まで20 で保存した. シロップは適宜試験時の濃度に滅菌水で無菌的に希釈して使用した. (2) 乳酸菌使用した乳酸菌を表 に記載する. 分譲株および分離株は, 試験時は実験方法で特に記載していない限り,MRS 培地で 30,6 時間培養後, 菌体を滅菌生理食塩水で 2 回洗浄し, 滅菌生理食塩水に同菌体濃度に再縣濁後, 発酵試験に供した. なお, 乳酸発酵は静置で行った. 2. 成分分析 () 糖度測定手持屈折率計 (( 株 ) アタゴ ) を用いて測定した. (2) 分析用試料調製方法試料を遠心分離 (2 330 g,0 分 ) 後, 上清を蒸留水で 0 倍希釈し,0.45 µm のフィルター ( アドバンテック東洋 ( 株 )) で除粒したものを分析用試料とし, 糖および有機酸の分析に供した. (3) 糖定量分析用試料を液体クロマトグラフ ( 日本ウォーターズ ( 株 )) にて分析した. 測定条件は以下の通り. カラム: Cosmosil Sugar D 4.6 mm 250 mm( ナカライテスク ( 株 )) 移動相:70 % アセトニトリル 流速 :.0 ml/min 検出器: waters 40( 示差屈折 ) 装置 :waters 50 (4) 有機酸定量分析用試料を, 有機酸分析システム LC0 A(( 株 ) 島津製作所 ) を用いて, 分析を行った. (5) 遊離アミノ酸定量試料を遠心分離 (2 330 g,0 分 ) 後, 上清を回収した. 次に上清をクエン酸リチウム緩衝液 (ph 2.98) で 0 倍希釈し,0.45 µm のフィルターで除粒し, アミノ酸分析装置

3 80 日本食品科学工学会誌第 63 巻第 2 号 206 年 2 月 (8 ) ( 日本電子 ( 株 )JLC/V2) で生体アミノ酸分析用条件を用いて分析した. (6) ビタミン C 定量 9) 既報に準じて, 試料を遠心分離 (2 330 g,0 分 ) 後, 上清 5mlをメスフラスコに採取し,5 % メタリン酸溶液で 20 ml に定容し, 液体クロマトグラフを用いて, 分析した. (7) 総ポリフェノール定量 9) 既報に準じて, 試料を遠心分離 (2 330 g,0 分 ) 後, 上清 20 ml を終濃度 80 % となるようにエタノールを加え, 5 分間加熱還流し, フォーリン チオカルト法により分析した. (8)DPPH ラジカル消去活性測定 0) 既報に準じて, 試料を遠心分離 (2 330 g,0 分 ) 後, 上清 20 ml に終濃度 80 % となるようにエタノールを加えた. この前処理試料を試験に供し,DPPH ラジカル消去活性を Trolox 相当量として測定した. ) 3. 乳酸菌数の測定 発酵液を適宜希釈し,MRS 白亜寒天培地 ( シクロヘキシミド 50 ppm, アジ化ナトリウム 0 ppm 含有 ) または BCP 加プレートカウント寒天培地 ( 日水製薬 ( 株 )) で混釈平板培養し,30,48 時間培養後, コロニー数を測定した. 4. 柿シロップ発酵用乳酸菌株の単離および生育試験 ) () 柿由来乳酸菌株の単離 平成 22 年 月中旬に福岡県久留米市田主丸町で収穫した過熟果 3 個を MRS 培地 ( シクロヘキシミド 50 ppm, アジ化ナトリウム 0 ppm 含有 ) に個別に浸漬し,30, 週間, 集積培養を行った. それぞれの集積培養液 (A,B,C) を MRS 白亜寒天培地で 30,48 時間, 嫌気培養 ( アネロパック, 三菱ガス化学 ( 株 )) し, クリアゾーン形成コロニー ( 酸生産菌 ) を 0 株ずつ単離した. (2) 柿シロップ (Brix 30) 生育試験 柿果実より単離した菌株の前培養液 (30,6 時間,MRS 培地 ) を生理食塩水 (5 %) で 0 倍に希釈後, 分光光度計を用いて濁度 (OD 600 ) を測定した. その後, 各前培養液をOD 600 =0.4 になるよう滅菌生理食塩水で希釈した. 平底マイクロプレート (96 穴 ) にフィルター除菌した柿シロップ (Brix 30) を 00 µl ずつ分注し, 事前調整した菌液を 5µl ずつ各ウェルに植菌した. 対照区には生理食塩水を用いた.30,5 日間嫌気培養し, マイクロプレートリーダーを用いて経時的に濁度を測定した. 5. 柿果実由来乳酸菌の同定 () 細胞の形態観察およびカタラーゼ試験乳酸菌の形態観察はグラム染色および検鏡によった. また, カタラーゼ活性の有無を確認した 2). (2) 乳酸光学活性乳酸光学活性を F-kit( ロシュ ダイアグノスティクス ( 株 )) で測定した. (3) 糖資化性試験 糖資化性を API50CHL( シスメックス ビオメリュー ( 株 )) で判定した. (4) 遺伝子配列の決定および解析 3) 微生物の分類 同定実験法に準じて実験を行った. 菌株を MRS 培地 5 ml で 30,6 時間培養し,Blood & Cell Culture DNA Mini kit(( 株 ) キアゲン ) を用いて DNAを抽出, 精製した. 菌株の溶菌時には, リゾチーム, アクロモペプチダーゼおよび ProteinaseK を用いた.6 S rrna 遺伝子および reca 遺伝子の PCR には PremixTaq(EX Taq version)( タカラバイオ ( 株 )) および TaKaRa PCR Thermal Cycler MP TP3000( タカラバイオ ( 株 )) を用いた.6 S rrna 遺伝子の PCR にはプライマー 27f(5 - AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3 ) および 492r(5 - GGCTACCTTGTTACGACTT-3 ) 3) を用い,94,2 分 (94, 分 -50, 分 -72,.5 分 ) 30 サイクル 72,3 分 ) の条件で行った.recA 遺伝子の PCR には reca 90F(5 -TAYGGVCCNGAAAGTTCDGG-3 ),reca 500R(5 -CATVACVCCVACTTTYTCACG-3 ) 4) を用い, 94,2 分 -(94,20 秒 -55,30 秒 -72,20 秒 ) 30 サイクル72,3 分 ) の条件で行った.PCR 産物は QIAGEN PCR Purification Kit(( 株 ) キアゲン ) により精製した.2 種の PCR 産物を鋳型として BigDye Terminator v. Cycle Sequencing Kit( ライフテクノロジーズジャパン ( 株 )) によりシーケンス反応を行い,ABI PRISM 30 Genetic Analyzer( ライフテクノロジーズジャパン ( 株 )) で塩基配列を決定した. 決定した 6 S rrna 遺伝子配列は,DDBJ BLAST ⅲ) を用いて相同性検索を行った. さらに,recA 配列について, 近縁菌株の reca 遺伝子の一部配列 AJ2869(Lactobacillus plantarum ATCC 497 T ),AJ28620(L. paraplantarum LMG 6673 T ) および AJ2868(L. pentosus LMG 0755 T ) に対して,DDBJ Clustal W ⅲ) による系統解析を行い,Treeview(ver.6.6) を用いて, 近接結合法 (NJ 法 ) に従い, 系統樹を作成した. 6. 乳酸菌分譲株 分離株の柿シロップ発酵試験表 の乳酸菌を 5 ml の柿シロップ Brix 30 に菌液を 5µl 植菌し,30,4 日間発酵後, 有機酸の生産量を測定した. また, 年齢 代の 3 名で香りについて嗜好的に評価した. 7. 乳酸菌のタンナーゼ活性測定 5) 既報に従い, タンニン酸処理 MRS 寒天培地を作成した. 表面に表 の乳酸菌を画線し, クリアゾーンを形成した菌株をタンナーゼ活性陽性と判定した. 8. 乳酸発酵前後の成分変化の検討乳酸菌 BFRI を用いて, 発酵試験を行った.00 ml の柿シロップ Brix 30 に, 菌液を 00 µl 植菌し,30 で 4 日間発酵した. 遠心分離を行い, 上清を回収した. 上清について, 遊離アミノ酸, 有機酸, ビタミンC, 総ポリフェ

4 (9 ) 上田 他 : 柿シロップ乳酸菌飲料の開発 8 図 分離菌株の生育検討柿シロップ,Brix 30; 発酵温度,30 ノールおよび DPPH ラジカル消去活性測定を行った. 実験結果. 柿由来乳酸菌株の単離および選定柿果実 3 個を集積培養した培養液 (A,B,C) から MRS 白亜寒天培地上でクリアゾーンを形成したコロニーをそれぞれ 0 株, 合計 30 株を単離した. 分離した 30 株について, 柿シロップ (Brix 30) で生育試験を実施した. その結果, 集積培養液 Cから分離した 0 株は生育しなかった. 生育した 20 株 (A,B) のうち, 特に生育が良かったのは集積培養液 Aから分離した 0 株であった ( 図 ). 顕微鏡観察の結果, 集積培養液 Aから分離した 0 株は, すべて桿菌であり, グラム陽性であった. また, カタラーゼは陰性であり, 糖資化性より L. plantarum( % ID) と判定された. そこで, これら 0 株のうち, 乳酸発酵特有の爽やかな香りを一番強く感じた 株を以降の柿シロップ発酵試験に用いた. 2. 選定柿由来乳酸菌の同定乳酸光学活性を測定したところ, 選定した株は,DL 型であった. 次に, 選定株の 6 S rdna 塩基配列 ( 497 bp) を決定し, 相同性を調べたところ,L. plantarum と L. pentosus に対して 00 % であった. さらに,recA 塩基配列 (347 bp) について, 近縁菌株との系統樹を作製した ( 図 2). これらの結果から, 選定株は L. plantarum と同定し, L. plantarum BFRI とした. 3. 乳酸菌分譲菌株 選定株の柿シロップ発酵試験およびタンナーゼ活性前述の通り, 柿果実から分離した 30 株のうち, 柿シロッ 図 2 BFRI と Lactobacillus 属の 3 標準株の reca 遺伝子による系統樹 進化距離は DDBJ の CLUSTALW を用いて計算し, 近接結合法 (NJ 法 ) で系統樹を作成し,TreeView で描画した. バーは塩基置換 % を示した (0. は 0 % 置換 ). プ Brix 30 で旺盛に生育した株は 0 株であり, 集積培養液 Aから分離した菌株であった. 柿シロップの原料の富有柿と同じ完全甘ガキの品種である 次郎 は収穫時に可溶性タンニンを 50 mg/ 個, 不溶性タンニンを 50 mg/ 個程度含むことが報告されている 6). タンニンはポリフェノールの一種であり, 抗菌作用がある 7). これらの知見から, 柿シロップには抗菌性があり, 柿シロップを乳酸発酵できる菌株が限られるものと推察された. そこで, 柿シロップ発酵能とタンナーゼ ( タンニンアシルヒドロラーゼ ) 活性との関係を検討した. 乳酸発酵で 8) 用いられている菌株やタンナーゼ活性を持つ菌株などを指標に9 株を選択し, これらの菌株と BFRI の柿シロップ発酵特性およびタンナーゼ活性を比較した ( 表 2). その結果, 乳酸を % 以上, かつ総有機酸を 2 % 以上生産し た菌株は,L. plantarum ATCC 497,L. pentosus NBRC 06467,Pediococcus inopinatus JCM 258 および BFRI 380-7の4 株であった.BFRI と同様に L. plantarum ATCC 497,P. inopinatus JCM 258 は爽やかな好ましい乳酸発酵特有の香りも生じていたが,L. pentosus NBRC は発酵前後で香りの変化は見られなかった. これらの菌株はタンナーゼ活性陽性 () を示した. なお, BFRI と同じく集積培養液 Aより分離した 9 株もタンナーゼ活性陽性 () であった. 4. 乳酸発酵条件の検討 () 発酵時間の検討柿シロップを Brix 30 に調製し,BFRI380-7 を用いて,

5 82 日本食品科学工学会誌第 63 巻第 2 号 206 年 2 月 ( 20 ) 表 2 タンナーゼ活性および柿シロップ乳酸発酵試験 乳酸菌 タンナーゼ活性 乳酸 (%) 有機酸 総有機酸 (%) L. plantarum subsp. plantarum L. paraplantarum L. pentosus L. buchneri L. parabuchneri L. brevis L. brevis L. casei L. rhamnosus L. hilgardii L. dextrinicus P. inopinatus P. damnosus P. parvulus P. pentosaceus P. acidilactici L. lactis subsp. lactis L. lactis subsp. cremoris L. mesenteroides subsp. mesenteroides L. plantarum ATCC 497 NBRC 075 NBRC JCM 5 JCM 2493 NBRC 3345 NBRC 2005 NBRC 5883 NBRC 3425 JCM 55 JCM 5887 JCM 258 JCM 5886 JCM 5889 JCM 5890 JCM 8797 JCM 5805 NBRC NBRC BFRI ± 柿シロップ (Brix 30) 未発酵.2 柿シロップ (Brix 30) を 30,4 日間培養タンナーゼ活性 :3 段階で評価 ( 陽性 ),±( わずか陽性 ),( 陰性 ) 図 3 発酵時間の検討 柿シロップ,Brix 30; 菌株,BFRI 380-7; 発酵温度,30 発酵試験 (200 ml) を行った. 有機酸と乳酸菌数を経時的に測定した結果, 図 3に示すように, 乳酸濃度は経時的に増加し,5 日目に.% になった. 乳酸菌数は 5 日で 個 /ml に到達した. 乳酸菌飲料の成分規格では乳酸菌数は 0 7 個 /ml 以上であることから, 発酵液が配合に よって希釈されることを考慮に入れて, 乳酸菌数は 0 8 個 /ml 以上を確保する必要がある. このため, 最適発酵時間は4 6 日とした. (2) 柿シロップ Brix 濃度の検討事前検討 (Brix 0 35 濃度発酵試験 : データ未掲載 ) の

6 ( 2 ) 上田 他 : 柿シロップ乳酸菌飲料の開発 83 表 3 乳酸発酵による柿シロップ成分および機能性の変化 項目ブドウ糖 %(w/v) 果糖クエン酸 %(w/v) リンゴ酸乳酸総有機酸 GABA(mg/00 ml) グルタミン酸総ポリフェノール量 (mgge/ml) 発酵前 発酵後 図 4 柿シロップ Brix 濃度の検討 菌株,BFRI 380-7; 発酵温度,30 ; 発酵時間,7 日 還元型ビタミン C(mg/00 ml) 酸化型ビタミン C 4. 総ビタミン C DPPH ラジカル消去活性 (µmolte/00 ml) 柿シロップ (Brix 30) を BFRI で 30,4 日間培養した. 結果,Brix の範囲に乳酸生産量が高くなる Brix 濃度があることが示唆されたため, 本試験では,Brix まで,2.5 刻みに濃度を調製し, 発酵試験を行った. なお, 発酵時間は乳酸最大生産能力を検討するため, 週間とした. 柿シロップ 5 ml に対して,BFRI 菌液を 5µl 加え,30, 週間発酵後, 乳酸生産量を測定した. 図 4に示す通り, 乳酸生産量が最も高かったのは Brix 30 であった. また,Brix 濃度あたりの生産量をみると Brix まではほぼ同程度であるが,Brix 32.5 より高くなるほど生産量が低くなる傾向が見られた. そこで, 以降の検討は Brix 30 で行った. 5. 乳酸発酵前後の成分変化柿シロップを Brix 30 になるように調製後,BFRI を用いて,30 で 4 日間乳酸発酵した. 発酵後の成分変化を表 3に示す. 乳酸発酵を行うことにより, ブドウ糖 :.2 %, 果糖 :0.7 % を消費し, 乳酸を.4 % 生じた. なお, 一般的な乳酸菌飲料に含まれているショ糖, 乳糖などは柿シロップには含まれていなかった ( データ未掲載 ). また, 発酵に伴い, リンゴ酸が % から 0.3 % に減少した. 一方,GABA は発酵に伴って, 微増した. グルタミン酸は, 発酵前は 2.4 mg/ml 含まれていたが, 発酵後は検出限界以下であった. 総ビタミン C は発酵することにより, 発酵前の約 25 % に著しく減少した. また,DPPH ラジカル消去活性は微増し, 総ポリフェノール量 ( 没食子換算 ) に変化はなかった. 6. 柿シロップ乳酸発酵飲料の試作乳酸発酵させた柿シロップを原料として, 滅菌水で希釈して柿シロップ乳酸発酵飲料を試作した. 味を見ながら濃度調整したところ,Brix 7 に希釈した飲料で, 酸味と甘味のバランスが良好であった. 試作品の乳酸菌数および成分を表 4に示す. 試作品の乳酸菌数は 個 /ml, 乳酸 表 4 試作品の乳酸菌数および含有成分項目試作品乳酸菌数 ( 個 /ml) 糖度 (Brix%) 7 ブドウ糖 %(w/v) 7.7 果糖 7.5 クエン酸 リンゴ酸 0. 乳酸 総有機酸. 糖度は手持屈折計により計測. 試作品は Brix 7 となるように乳酸発酵液を滅菌水で希釈した. は% であった. これらの結果から, 原料に柿シロップのみを使用し,BFRI で発酵を行い, 乳成分不使用の製品 ( 写真, 2) を試作した. 考察本報では, 柿シロップ乳酸発酵用乳酸菌を選定し, 柿シロップ発酵能とタンナーゼ活性の関係について検討を行った. また, 乳酸発酵させた柿シロップを原料として乳酸発酵飲料を試作した.. 柿シロップ乳酸発酵用分離乳酸菌について富有柿から分離した乳酸菌 30 株の中で, 柿シロップ中で生育が良かった乳酸菌は 0 株であった. 糖資化性試験の結果で判定したところ, これらは L. plantarum と判定され, 類似の株であると推察された. これら 0 株のうち, L. plantarum BFRI は乳酸発酵特有の爽やかな香りが特に強く, 柿シロップ発酵用乳酸菌として有用であると考えられた.

7 84 日本食品科学工学会誌第 63 巻第 2 号 206 年 2 月 ( 22 ) 写真, 柿シロップ (Brix 30) 発酵前 2, 柿シロップ (Brix 30) 発酵後 3, 試作品 (Brix 7) 2. 柿シロップ発酵能とタンナーゼ活性の関係柿シロップ乳酸発酵試験の結果から BFRI と同様に L. plantarum ATCC 497,L. pentosus NBRC 06467, P. inopinatus JCM258 は柿シロップを発酵させる能力が高い菌株であることが明らかとなった. これらの菌株はすべてタンナーゼ活性が陽性であり, 柿シロップの発酵にはタンナーゼ活性が有利に働くことが示唆された. 今回検討を行った BFRI は, 抗菌性を有する機能性が高いタンニン 5) ( 加水型ポリフェノール類 ) を多く含む素材である茶, 果物, 野菜などの発酵に利用できると期待される. ところで, 緑茶カテキンは没食子酸エステル型カテキンで存在することが多く, たんぱく質と複合体を形成するために, 体内に吸収されにくいことが課題であったが, タンナーゼ活性を有する乳酸菌は, この没食子酸エステル型を非エステル型に乳酸菌が変換し, カテキンの体内吸収を促進すると報告されている 7).BFRI もタンナーゼ活性を有することから, 同様な効果が期待できると考えられる. 3. 乳酸発酵による成分および機能性への影響試作した柿シロップ乳酸発酵飲料の乳酸は % であった. 製品買い上げ調査の結果, 生菌タイプの市販乳酸発酵飲料は, 乳酸含有量が % であった ( データ未掲載 ). この結果から, 今回の試作品は市販品より少し高めの乳酸含有量であった. また, リンゴ酸は L. plantarum のマロ ラクティック発酵により変換されて減少したと推察された. 次に各成分および機能性への乳酸発酵の影響並びに試作品の評価について, 項目ごとに考察した. (GABA) 発酵前の柿シロップ (Brix 30) は GABA を多く含んでいるが, その乳酸発酵後も GABA(7 mg/00ml) は失われることなく, 含まれていることが明らかとなった. また,GABA の前駆体であるグルタミン酸は, 発酵前は 2.4 mg/ml 含まれていたが, 発酵後は含まれておらず,GABA に変換若しくは乳酸菌に資化されたと考えられる.GABA は市販品では 0 20 mg/00 g で特定保健用食品として許 写真 2 試作品認可されているが, 試作した乳酸発酵飲料 (Brix 7) にも特定保健用食品と同等の約 0 mg の GABA が含まれていた. ( ビタミンC, ポリフェノール ) 発酵後, 総ビタミン Cは約 25% まで減少しており, 発酵の過程で菌株に資化された可能性がある. また, 柿シロップ (Brix 30) 中には総ポリフェノール ( 没食子酸換算 ) で 5.2 mgge/ml 含まれており, 発酵後も維持していた. (DPPH ラジカル消去活性 ) 総ビタミン C 量の減少により乳酸発酵液では DPPH ラジカル消去活性が, 低下することが推察出来た. しかしながら, 発酵前は 538 µmol-te/00 ml, 発酵後は 624µmol- TE/00 ml と約.2 倍に増加しており, 乳酸菌による抗酸 4) 6) 化能増強が認められ, 既報と同様な乳酸菌による DPPH ラジカル消去活性増強効果が得られた. 他の発酵液と比較すると, サトウキビ搾汁液は 68µmol-TE/00 ml で, 乳酸発酵後では 84 µmol-te/00 ml と.2 倍に増加したことが報告されている 4). サトウキビ乳酸発酵飲料と比較すると, 今回試作した柿シロップ乳酸発酵飲料 (Brix 7) が約 4 倍程度高かった. 乳酸発酵による抗酸化能の増強効果は柿シロップ発酵と同様に約.2 倍であるため, この抗酸化能の違いは, 柿シロップそのものの成分に起因していると考えられる. 柿シロップを原料に柿から単離した乳酸菌を用いて, 乳酸発酵させることにより, 乳成分を含まない乳酸菌飲料を試作した. 試作品は, 柔らかい酸味と, 柿シロップの甘味がある素朴な味であり, 乳酸発酵由来の爽やかな香りであった. さらに, 乳酸発酵によって,GABA, ポリフェノールを含む柿シロップの特徴を維持しつつ,DPPH ラジカル消去能の増強が認められた. 柿シロップを乳酸発酵することによりさらに機能性を付与され, 機能性素材としての利用が期待される. 要約規格外の富有柿 (Diospyros kaki Fuyu ) を原料とした柿

8 ( 23 ) 上田 他 : 柿シロップ乳酸菌飲料の開発 85 シロップの乳酸発酵飲料開発について報告する. 柿シロップでの生育試験の結果から柿果実分離乳酸菌 BFRI を選定した.BFRI は Lactobacillus plantarum と同定した. さらに,BFRI を含む, 柿シロップを発酵することが可能な乳酸菌は, タンナーゼ活性 ( タンニンアシルヒドロラーゼ ) を有することを明らかにした.BFRI を用い, 発酵温度 30 で, 最適発酵条件を検討した結果, 発酵時間 4 6 日であり, 最も高い乳酸生産量を示した柿シロップ濃度は Brix 30 であった.30,5 日間発酵で, 乳酸菌濃度は. %, 乳酸菌数は 個 /ml に達した. さらに BFRI を用いて, 乳成分を含まない柿シロップのみを原料とした乳酸発酵飲料を試作した. 本研究を遂行するにあたり, ご助言頂きました神戸大学大学院農学研究科大澤朗教授並びに上田宗平氏に謝意を表します. 文 ) 渡部忍, 土佐典照, 山崎幸一, 大坪睦己, 西条柿の有効利用乳酸菌を利用した発酵調味料の開発, 島根県産業技術センター研究報告,43,-5 (2006). 2) 山下浩一, 山中信介, クエン酸含有柿酢の製造, 奈良県工業技術センター研究報告,29,7-2 (2003). 3) 平野吉男, 塚谷忠之, 樋口智子, 黒田理恵子, 山下聡子, 上田京子, 林伊久, 冨田和夫, 須田博, 井上忠男, 林田武, 岩永伸一, 右田英訓, 未利用柿を利用したピューレ及びシロップの製造並びに成分特性, 福岡県工業技術センター研究報告,20,36-39 (200). 4) 河村俊哉, 晦日房和, 玉屋圭, 松本周三, 榊原隆三, 野嶽勇一, 県内資源を活用した加工食品の開発 長崎県産物由来の植物性乳酸菌及び酵母を活用した加工食品の開発, 平成 23 年度長崎県工業技術センター研究報告,4,-6 (202). 5) 広瀬直人, 氏原邦博, 照屋亮, 前田剛希, 吉武均, 和田浩二, 吉元誠,γ- アミノ酪酸 (GABA) を増強したサトウキビ乳酸発酵飲料の開発, 日本食品科学工学会誌,55, (2008). 6) 園元謙二, 善藤威史, 孫燕旗, 柴田圭右, 野田義治, 植木達朗, 藤野武彦, 柿の抗酸化活性機能増強法および健康食品素材, 特許出願 ( ). 7) 善藤威史, 孫燕旗, 植木達朗, 野田義治, 藤野武彦, 園元謙二, 柿に機能性を賦与する乳酸発酵技術の開発, 第 6 回日本生物工学会大会講演要旨集,p. 74, 名古屋 (2009). 8) 大塚食品 ( 株 ), 発酵ベジタブル飲料 野菜の戦士 の誕生, 献 食品工業,45,52-58 (2002). 9) 上田京子, 塚谷忠之, 村山加奈子, 倉田有希江, 竹田絵里, 大塚崇文, 高井美佳, 宮崎義之, 立花宏文, 山田耕路, ブロッコリーのビタミン C,S-メチルメチオニン, ポリフェノール含有量の部位別解析と細胞機能への影響, 日本食品科学工学会誌,62, (205). 0) 沖智之,DPPH ラジカル消去活性評価方法, 食品機能性評価マニュアル集第 Ⅱ 集, 第 版, 食品機能評価支援センター技術普及資料等検討委員会編,( 日本食品科学工学会, 茨城 ),pp (2008). ) 内村泰, 岡田早苗,Ⅱ. 乳酸菌の分離 保存法, 乳酸菌実験マニュアル 分離から同定, 第 版,( 朝倉書店, 東京 ),pp ) 内村泰, 岡田早苗,Ⅲ. 乳酸菌の同定実験法, 乳酸菌実験マニュアル 分離から同定, 第 版,( 朝倉書店, 東京 ),pp ) 平石明, リボソーム RNA 遺伝子の塩基配列, 微生物の分類 同定実験法 分子遺伝学 分子生物学的手法を中心に, 第 版, 鈴木健一朗, 平石明, 横田明編,( シュプリンガー ジャパン, 東京 ),pp (200). 4) Torriani, S., Felis, G.E. anddellaglio, F., Differentiation of Lactobacillus plantarum. L. pentosus, and L. paraplantarum by reca gene sequence analysis andmultiplex PCR assay with reca gene-derived primers. Appl.Environ.Microbiol., 67, (200). 5) Osawa, R., Formation of a clear zone on tannin-treatedbrain heart infusion agar by a Streptococcus sp. isolatedfrom feces of koalas. Appl. Environ. Microbiol., 56, (990). 6) 平智, 松本尚子, 小野未来, 甘ガキおよび渋ガキ果実の発育過程におけるタンニンの蓄積と不溶化, 園芸学会雑誌, 67, (998). 7) Scalbert, A., Antimicrobial properties of tannins. Phytochemistry, 30, (99). 8) Osawa, R., Kuroiso, Goto, K., S. andshimizu A., Isolation of tannin-degrading lactobacilli from humans and fermented foods. Appl. Environ. Microbiol., 66, (2000). 9) 大澤朗, タンナーゼ活性を有する乳酸菌を利用した新規プロバイオティクスの開発, 腸内細菌学雑誌,25,-5 (20). 引用 URL ⅰ) 作況調査 ( 果樹 ) 確報 ( 平成 23 年産果樹生産出荷統計かきの都道府県別の出荷量 )http : //www. e-stat. go. jp/sg/ estat/list.do?lid= ( ) ⅱ) http : //www. otsuka-chilled. co. jp/product/yasainosenshi/ index.html( ) ⅲ) http : // 6. 5) ( 平成 27 年 6 月 30 日受付, 平成 27 年 0 月 6 日受理 )

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