熊本地震と情報

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1 熊本地震と通信の諸問題 - 災害時の輻輳問題 - 東洋大学中村功 1

2 熊本地震は近年の災害時の情報通信の在り方を浮き彫りに 熊本地震は 東日本大震災以降 初めて起きた震度 7の大地震 1 携帯事業者へのヒアリング 2 被災住民へのアンケート 3 被災自治体へのヒアリングを実施

3 軽微だった設備被害の影響 - 内閣府資料から - 携帯網で最大の被害は 翌 17 日午前 9 時の段階にあり 3 社合わせて 344 局が停波 ( 内閣府平成 28 年 (2016 年 ) 熊本県熊本地方を震源とする地震に係る被害状況等について 4/17 12:00 発表 ) 停波の原因は停電と基地局への伝送路の途絶 ( ドコモと au は停電 SB は断線 ) ドコモ最大 84 局中停電 78 局伝送路断 6 局ドコモ HP より ) au 停波原因停電 13 局伝送路断 7 局不明 1 4/19 時点内閣府 SB 停波原因停電 39 局 伝送路断 76 局 4/19 時点内閣府 震度 7 地域ではほとんど停波していない 停波したのは主に阿蘇地方 ドコモは中ゾーン化 (3-5km カバー ) でカバーできた LINE LINE Out 機能で固定電話 携帯電話への通話を 10 分間無料と 14 日夜発表 ネットで批判 実際の悪影響はなかった輻輳は地震後数分で解消しかし今後の大災害では問題あり LINE の専用線やサーバーは借り物 固定網と接続する POI で詰まる可能性 ドコモ au ソフトバンク

4 前震時は軽い輻輳 本震時は固定網への輻輳 - 事業者ヒアリングから - NTT ドコモ 4/14 前震の直後平常のピーク時の約 36 倍の発信 1 時間ほどつながりにくくなった 4/16 本震直後 輻輳は起きなかった 16 日午後 2 時 14 分 ~17 日午前 11 時 43 分まで携帯から固定電話への輻輳発生 25% の発信規制 au 4/14 1 地震直後から 3 時間 5 分 (21:28~4/15 00:33) にわたり音声の輻輳発生発信規制熊本県 福岡県の一部 長崎県の一部最大規制率 :35% 2 地震直後から 1 時間 12 分 (21:28~4/14 22:40) 福岡県の一部 長崎県の一部 佐賀県 大分県 宮崎県 鹿児島県 4/16 通信規制なし NTT, au いずれも音声の発信規制のみ パケットの通信の輻輳は無し 4

5 アンケート調査概要 目的熊本地震における情報の問題 特にメディアの問題を探る 対象被害の激しかった 益城町 熊本市東区 熊本市中央区の住民 (4 月 16 日の本震時に上記の地域に住んでいた人 ) ネットモニタから100 人を男女 年齢の偏りがないように選考したただし益城町はモニターが少ないため全て受け入れた 益城町 17 名 熊本市 83 名が回答 方法インターネットによるウエブ調査 調査期間 2016 年 5 月 20 日 ~5 月 30 日 調査主体東洋大学中村功研究室 5

6 実際の疎通度 4/16 益城 熊本 ( ) 内は利用した人の実数 固定電発つながりにくい ( 停電 ) 携帯音声通話はややつながりにくい 携帯メールもややつながりにくい SNS はサクサクつながった PC は停電でつながらない 6

7 安否 安否がわかった手段 携帯音声 > メール ライン 全体益城熊本 全体益城熊本 1. 携帯 スマホの通話 災害用伝言板 ( 文字 ) 携帯 スマホのメール J-anpi ( インターネット ) ライン フェイスブックの災害時情報センター ツイッター グーグル パーソンファインダー フェイスブック 人づての話で 災害用伝言ダイヤル ( 音声 ) 直接会って その他 ( 具体的に ) 安否は やや困った 全体益城熊本 1. 大変困った やや困った あまり困らなかった 全く困らなかった

8 情報ニーズ 本震当日困ったこと 余震 断水 トイレ 全体益城熊本全体益城熊本 1. 家が壊れて家にいられなかった 携帯電話が通じなかった 余震が怖くて家にいられなかった テレビが見られなかった 避難する場所がなかった トイレが使えなかった 電気が止まった 家族 知人の安否がわからなかった 水道が止まった 暖房が使えなかった ガスが止まった その他 ( 具体的に ) 固定電話が通じなかった 特に困ったことはなかった

9 地震が怖くて家にいなかった 本震時 自宅にいたのは 21.6% ( サーベイリサーチセンター益城避難所調査 ) サーベイリサーチセンタープレスリリース 熊本地震被災地における避難状況およびニーズ調査 c/research/area/pdf/kuma moto_press3.pdf 9

10 当日知りたかった情報 余震 水道 水食糧 被害 安否 電気 道路状況 ガソリン 全体益城熊本全体益城熊本 1. 発生した地震の規模 発生場所 震度 避難場所 今後の地震の見通し 水や食料について 地震の全体の被害 診療可能な病院について 家族 知人の安否 津波について 市役所 町役場の対応 地震時に取るべき行動について 電気 ガス 水道の状況 ガソリンの販売について 道路の交通情報 原発の状況について 電話 携帯電話のつながり具合 その他 ( 具体的に ) 知りたい情報は特になかった

11 当日役だったメディア ラジオワンセグテレビウエブページテレビが役に立った 携帯電話 携帯メール ラインはまあまあ役に立った 全体益城熊本 全体益城熊本 1. テレビ その他のSNS ワンセグ テレビ ( 携帯 カーナビ ) 無料で開放された Wi-Fi ラジオ ( 通常のAMやFM) 新聞 携帯 スマホの通話 口コミ 携帯 スマホのメール 役場 警察 消防署などからの情報 インターネットのウエブ ページ 避難所にある掲示やチラシ ライン その他 ( ) ツイッター 特にない フェイスブック

12 流言 多くの人が流言を聞いていた 伝達手段 ネット流言口コミ + ネットニュース SNS は少ない リアル流言口コミが主 全体 益城 熊本 近くの動物園からライオンが放たれた クレア ( イオンモール ) が燃えた 月 日 時 ( まで ) にまた震度 7の地震が来る SNS で流言が広がった とは言えない 12

13 前震翌日のネットニュース 確信犯的デマ ツイッター投稿 デマと検知しすぐにネットニュース化 現地で口コミに (~ というデマが広がっているらしいよ ) 13

14 その他の課題 スマホの緊急地震速報は役に立った (52.9% 益城 ) 揺れの強さの基準となった 中森広道 平成 28 年熊本地震と緊急地震速報 - 熊本 福岡 大分における住民の対応と評価 日本災害情報学会学会大会予稿集 2016, 余震情報 で 震度 7 の再来はない と油断してしまった (54.2% 熊本 ) 生活情報に SNS が役立った (35.3% 益城 ) 町からの情報発信が欠如していた (58.8% 益城 ) 全体益城熊本 1. 携帯 スマホの緊急地震速報は役に立った 回目の地震のあと 気象庁が出した 余震情報 では もう一度震度 7 が 起きる可能性がある とは言っていなかったので 油断してしまった 生活情報を得るのに SNS が役に立った SNS の情報は古かったり 事実と違っていたりしたことがあった Yahoo! の災害情報アプリは役に立った トヨタ自動車の発表した 通れた道マップ は役に立った 地震後 市や町からの情報発信が欠如していたと思う あてはまるものはない

15 益城町の情報 庁舎の全電源ダウン停電に備えバッテリー 発電機 ソーラーパネルがあった 本来 3 日半はもつはずが 揺れで配線が切れ 全部使えなる 庁舎のエレベータや庇の損壊もあったが 電源喪失がもとで災害対策本部を電源がある保健福祉センターへ移した 本震の際にはすでに避難者があふれ災対本部の場所がなかった BCP 的に大問題 被害情報収集は電話と防災無線移動系 ( 固定電話が通じていた ) 防災無線は役に立ったが中継局の電源が 17 日で切れて使用不能に エリアメールの代行発信できるはずが エリアメールは本庁舎 3 階の情報系サーバーがダウンし使用不能 L アラートは熊本県に代行入力してもらったが エリアメールの代行入力がでず 代行発信の訓練が必要 ラインで職員間の情報共有 4 月 25 日から避難所とのやり取りに利用 情報班の 30 代の女性職員が一つのグループを作成 職員 250 人が 1 グループ 実際に使ったのは半分以下だが 数人に 1 人が使うだけでも情報共有ができた プッシュ型の物資輸送は比較的機能した 住民の共助の教育が必要物資の配給やトイレ掃除などで 15 防災無線移動系

16 西原村の情報 パソコン庁舎の停電で使えなくなった 庁舎の発電機は手動起動型 当日は消防車車載の投光器で執務 被害情報の収集 1 防災無線の移動系と 2 ライン電話 本震直後は電話がつながりにくかった 消防団から未明までに被害情報が次々と上がってきた 1が基本だが電波の悪いところは 2を使用 ライン グループ ( 全職員で一つ ) がとても役に立った 避難所の避難者数などが毎日共有された 同報無線とても役に立った 平成 10 年ころ戸別受信機を全戸に配布 細かい村の状況について発信できた フェイスブック防災無線の内容をそのまま掲載 村民 + 本村出身の他地域に住む人に伝えられた 義援金にもつながる 庁舎内の地震計の震度 7は電話回線が使えず 送れなかった 16

17 熊本地震の予測と準備 西原村 - 震災前から 地震が第一に警戒すべき災害だという認識はあった 平成 15 年に国の地震調査推進本部の発表があり 布田川断層帯で震度 6 以上の地震発生確率が 6% とあった 阪神大震災の時 発生確率が 8% だったので西原でも起きうると考えていた 防災訓練全村民が参加する 発災対応型防災訓練 を 2 年に 1 度行ってきた 安否確認等 昨年は西原中学校に模擬的倒壊家屋を建て 救出訓練を行った 訓練の成果今回 訓練を見た消防団員が 実際にチェーンソーを使った倒壊家屋からの救出を行い 全壊家屋から合計 9 人の住民を助け出した 安否確認もスムーズだった 倒壊した家屋からの救出現場 福和先生 Yahoo news より 17

18 事前の活動 - 西原村 電池交換を呼びかけ 1 被害想定があっていた 2 その場で対応させる訓練形式 広報西原 2013 年 2 月号 M7 を想定した発災対応型防災訓練広報西原 2015 年 8 月号 18

19 最後に - 災害時の輻輳問題から逃れられるのか?- 今回輻輳は軽かった輻輳が軽かった理由は複合的発着信ともに少ないのは奇異たまたま? (1 本震が深夜 2 前震後に震度 6 強が連発した 3 震度 7 は外部に伝えられず 4 連続地震で家にいなかった ) 携帯は相手も携帯か確かめて発信 携帯 固定はつながりにくい SNS の疎通率は 携帯音声 携帯メールよりも良かった ライン電話は使えた ( 西原 ) ライン グループが庁内の情報共有で使われた ( 課題も ) 沼田宗純 標準的な災害対応支援システムの整備 運用体制の構築 CIDIR ニュースレター第 32 号 ( ) 予備電源の配線は再点検が必要 庁舎は基地局を見習うべき ( 建物構造 バッテリーの固定法方法 ) 非常電源の断線による通電火災が今回 2 件発生 ( ホテル 工場 ) ( 廣井悠 熊本地震における地震火災調査の概要とその特徴 日本災害情報会学会大会予稿集, 2016, ) 緊急速報メールは発信訓練が必要 ( 特に県 ) ネットニュースがデマ拡散の主役 (SNS ではない ) 19

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