ない物事の流行でありともすればあまり意味のないものとみなされていた (LaPiere 1938Blumer 1969Turner and Killian 1972Lofland 1985) Aguirre(1988) や Bikhchandani(1992) はファッドを注目すべきものとして論じ

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ゆきあわたけ
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1 オーラルセッションフルペーパーなぜファッド群が起こるのか腐女子の質的研究株式会社ゼウスエンタープライズ大森友子要約本稿の目的はなぜファッド群が発生するのかを腐女子の質的調査を通して明らかにすることであるファッドとは非常に寿命の短い一時的な流行のことで (Solomon 2014) ともすればあまり意味のないものとみなされてきたがインターネットの普及によって人々は趣味などの情熱を傾ける対象を通してコミュニティを形成するようになり流行は国民の誰もが知っているファッションから特定のコミュニティのみに拡散するファッドへと変化してきておりファッドは無視できない現象になっている Best(2005) は特定のコミュニティにおいてファッドが何度も繰り返し起こる現象をファッド群と呼びファッドを連続する現象と捉えたがなぜファッド群が発生するのかは明らかにされていない本稿ではトリクルダウン理論を援用してファッドの流行サイクルが消費者同士のインタラクションの不協和によって起こることを腐女子へのインタビュー調査を通じて明らかにしたキーワードファッドファッド群コミュニティトリクルダウン I. はじめに本稿の目的はなぜファッド群が発生するのかを腐女子の質的調査を通して明らかにすることであるファッドとは非常に寿命の短い一時的な流行のことである (Solomon 2014) 例えば 1990 年代にコギャルの間で流行したガングロや厚底ブーツなどをイメージしてもらえば分かりやすいだろうなかでも特定の集団で繰り返し起こるファッドのことをファッド群と言う (Best 2005) 流行とくに新しいファッションが繰り返し発生する現象についてはトリクルダウン理論やそこから派生したトリクルアップ理論トリクルアクロス理論 (Simmel 1904Solomon 2014) が有名だがこうした理論はファッド群においても援用できるだろうかこれが本稿の問題意識である本稿では近年日本において見られる腐女子の流行を対象にファッド群の発生要因を腐女子を対象にしたインタビューデータのコーディングを通して明らかにしていく II. 先行研究 1. ファッド一般的に日本語で流行と表現される現象は英語ではファッド (fad) ファッション (fashion) などその性質によって細分化されるしかしその分類については研究者によって定義が異なっており一意ではない ( 齊藤 1957Best 2006Solomon 2014) Solomon(2014) は市場に広まりピークを迎え廃れていくという受容サイクルの相対的な長さに着目することで流行をファッドファッションクラシックに分類している ( 図 1 ) クラシックとは極端に受容サイクルの長い流行のことでこれはある意味反流行でもある消費者は購入する製品を安定したリスクの低い製品だとみなしており受容者の数も多い反対にファッドは非常に寿命の短い一時的なブームのことである (Solomon 2014) 本稿では Solomon(2014) の定義を採用し流行を受容サイクルの相対的な長さでファッドファッションクラシックに区別する流行についてはこれまで多くの先人によって研究されてきたにも関わらずファッドはファッションよりも重要では 49 Japan Marketing Academy Conference Proceedings vol.6(2017)

2 ない物事の流行でありともすればあまり意味のないものとみなされていた (LaPiere 1938Blumer 1969Turner and Killian 1972Lofland 1985) Aguirre(1988) や Bikhchandani(1992) はファッドを注目すべきものとして論じているが従来のファッドの研究の多くは単一のファッドがどのように拡散されていくかということに焦点を絞っていた 2. ファッド群これに対し Best(2006) は大学生などの特定の集団ではファッドが何度も繰り返し起きていることに言及しそのような特定の集団で複数回起こるファッドのことをファッド群と呼んだファッド群とは例えば大学生の羽目はずし ( テレフォンブーススタッフィングストリーキングハロウィンなどのお祭りのときにするどんちゃん騒ぎなど ) おもちゃファッド ( フラフープルービックキューブキャベツ畑人形など ) ダイエットファッド ( 低糖分低脂肪低炭水化物など ) のように同じ種類の人たちがおおよそ同じ種類の対象や活動を基本的に同じ理由 ( 楽しみ注目されたいという理由 ) で取り入れることで完全にお互いが無関係ではないファッドのことである (Best 2006) Best(2006) は大学のような集団では相対的に同質であること継続的に構成員が変化していくこと自由な時間が多いことあまり監視されていないこと学内や学校同士で競争する文化があることでファッド群が発生しやすいのではないかと述べているがなぜファッド群が発生するのかは実証されていない 3. トリクルダウン理論ファッド群は特定の集団の中で発生するミクロの流行現象であるがマクロでの流行現象については Simmel(1904) によって同質化欲求と差別化欲求という 2 つの欲求の拮抗によって流行がトリクルダウンするために永続的にサイクルすることが明らかにされているトリクルダウン理論は McCracken(1988) によって社会的階級がなくとも追跡と逃走によって流行がサイクルすると解釈が拡大されたことで流行が同じ階層に拡散するトリクルアクロスや下の階層から上に向かって拡散するトリクルアップが現代のトリクルダウン理論として論じられるようになった Solomon(2014) はファッドについてブームに乗るのは比較的少数の人たちであるが急速に広まっていくまた図 1 流行の受容サイクルの比較日本マーケティング学会カンファレンスプロシーディングス vol.6(2017) 50

3 図 2 トリクルダウン理論取り入れるのはすべて同じサブカルチャーに属する人たちということも多くブームはそのメンバーの間ではトリクルアクロスするがグループの外まで広がることは滅多にないとファッドがトリクルアクロスすることに言及しておりファッドが同じ階層に拡散する流行サイクルつまりファッド群のようなものがあると考えているのではと推察されるこのように先行研究をみてきたが Best(2005) も Solomon(2014) もどうしてファッド群が発生するのかについては実証できていない以上から本稿ではマクロの流行研究からトリクルダウン理論を援用しファッド群の発生要因を明らかにする III. 腐女子のファッド 1. 腐女子とは腐女子には幾つかの定義が存在し広義にはアニメなどのサブカルチャーを好む女性のオタク全般のことを指すこともあるが本稿では男性同士の恋愛 = ボーイズラブ ( 以下 BL) を扱った小説や漫画アニメまたは二次創作作品を好む女性と定義する近年腐女子のコミュニティで起きたブームによって時に爆発的な経済効果が生まれることで注目が集まっており例えば 1966 年 1988 年にアニメ放送されたおそ松くんの 30 年後を描いたコメディ作品であるおそ松さんは 2015 年 10 月から 5カ月で 70 億円の市場規模を創出したと話題になった 1) 2. 腐女子のファッドこのように腐女子は消費意欲の高い消費者として注目するにたる存在であるが一方で非常に流行の移り変わりが激しい消費者でもある図 3は腐女子のファッドが繰り返し発生していることを証明するために Googleトレンド 2) で調査した結果である今回 Googleトレンドを使用した理由はグッズの売上高やアニメの視聴率では購入者や視聴者が腐女子であるのかを判断することができないためである Googleトレンドでの調査にあたっては調査対象を腐女子のみに絞るために (i) 腐女子しか検索に使用しない語の抽出 (ii) 人気作品の抽出 (iii)googleトレンドでの調査という 3 つの手順を踏んだ (1) 腐女子しか検索に使用しない語の抽出腐女子コミュニティでは BL 要素を含む二次創作作品の投稿や腐女子同士の会話で公式作品や腐女子以外と 51 Japan Marketing Academy Conference Proceedings vol.6(2017)

4 腐女子を区別するために独自の作品呼称 ( 例えば Pixiv 3) でBL 要素を含むおそ松さんの二次創作には BL 松というタグ ) が使用されているつまりその呼称を検索に使用する人間は腐女子である可能性が非常に高いしかし独自の作品呼称は腐女子が腐女子以外にバレないようにという意図で使用していることから全てを網羅する 4) ことは困難であるそのため本稿では Pixiv 百科事典の作品作者別腐向け作品リンクタグ 5) ページを参考にページに記載されていた 281 作品からシリーズなど単一の作品名ではない項目を取り除いた 254 作品とそれに使用されている独自の呼称を調査対象とした (2) 人気作品の抽出次に (1) で抽出した 254 の作品からさらに腐女子の人気が高い10 作品を抽出するこれは Googleトレンドではキーワードがいつ人気であったかは判断できるがどのくらい人気であったかは判断できないためである抽出には再度 Pixivを利用した 254の呼称についてタグ付けされた投稿作品 ( イラスト ) が多いほど腐女子に人気であると定義しタグ付けされた投稿作品数を調査したその結果 BL 松刀剣乱腐進撃の腐人忍玉 - 腐黒バス腐 JOJO 腐イナイレ [ 腐 ] イナゴ [ 腐 ] 腐向け HQ 腐 ree! のタグがつけられたイラストが腐女子に人気の上位 10 作品として抽出された ( 表 1) (3)Googleトレンドでの調査 (2) で抽出された 10 作品に2016 年秋に放送され後述のインタビューで作品名が多く出たユーリ!!!onICE を加えて Googleトレンドで人気動向を調べた結果が図 3 である一部独自の呼称が Googleトレンドで認識できない語であった作品については調査可能であった他の 6 作品を公式名称で調査した人気度の動向と腐女子独自の呼称で調査した人気度の動向を比較した結果概ね一致していたことから公式名称での検索結果を点線で示した図 3では黒子のバスケ刀剣乱舞 6) を除く全作品でファッドの特徴である急速性と短命性が確認できた以上の調査から腐女子のコミュニティでファッドが何度も繰り返し起きファッド群が発生していることを確認できたので次章からなぜファッド群が発生するのかを明らかにしていく表 1 Google トレンド検索対象 No 公式名称独自呼称作品数 Google トレンド検索 1 おそ松くん / おそ松さん BL 松刀剣乱舞刀剣乱腐進撃の巨人進撃の腐人落第忍者乱太郎 / 忍たま乱太郎忍玉 - 腐黒子のバスケ黒バス腐ジョジョの奇妙な冒険 JOJO 腐公式名称で検索 7 イナズマイレブンイナイレ [ 腐 ] イナズマイレブン GO イナゴ [ 腐 ] 公式名称で検索 9 ハイキュー!! 腐向け HQ 公式名称で検索 10 Free! 腐 ree! 公式名称で検索 11 ユーリ!!!onICE ユーリ on ICE 2891 公式名称で検索 *1 ハイキュー!! は公式名称でも検索できなかったため!! を除きハイキューで検索 *2 ユーリ!!!onICEは公式名称でも検索できなかったため!!! を除きユーリ on ICE で検索日本マーケティング学会カンファレンスプロシーディングス vol.6(2017) 52

5 図 3 腐女子のトレンド推移 IV. 分析方法とデータ 1. 調査対象腐女子が嗜好する同人誌の多くはホモセクシャルな関係の描写を含むまた腐女子を含むオタクに対して世間一般からスティグマがはられてきた歴史も相まって彼女らは自らのオタクの実践を隠蔽するよう振舞う ( 岡部 2008) ためその母集団を明確化できないことから本稿では自らを腐女子であると自認し同人誌を作成もしくは購入している 20 代の女性 8 人に対しこれまでに熱中したジャンル 7) 熱中した ( している ) 動機他のジャンルに移動した動機について 1 2 時間程度の半構造化インタビューを実施した ( 表 2) インフォーマントはラポールの形成を考慮してインフォーマントからインフォーマントを紹介してもらうスノーボール形式で選定したインタビューは対面スカイプメールで実施したデータのコーディングには NVivo 11を使用して次の手順で行ったまずインタビューの音声データを NVivoで書き起こしそのテキストデータからインフォーマントがジャンルに熱中した ( している ) 動機について話している箇所他のジャンルに移動した動機について話している箇所をそれぞれ熱中動機移動動機のノードに抽出したさらに各ノードのテキストデータから概念の抽出を行いその概念に対して概念名をつけた概念の抽出とテキストデータの振り分けは同時進行で行い新しい概念が作成されると都度テキストデータの振り分けを修正しこれを繰り返すことで最終的な概念を抽出した表 2 インフォーマントの属性インフォーマント年齢 / 性別腐女子歴 ( ブランク )* ジャンル数 A 20 代 / 女性 10 年 (1 年 ) 5 B 20 代 / 女性 11 年 (3 年 ) 11 C 20 代 / 女性 10 年 6 D 20 代 / 女性 11 年 (3 年 ) 24 E 20 代 / 女性 15 年 9 F 20 代 / 女性 8 年 10 G 20 代 / 女性 6 年 20 H 20 代 / 女性 6 年 31 * 腐女子歴は腐女子と自覚してからの年数そのうち腐女子としての活動をしていない期間をブランクとした ex.) インフォーマント Aは実質 9 年間腐女子として活動していることになる 53 Japan Marketing Academy Conference Proceedings vol.6(2017)

6 2. インフォーマントの分類表 2 からわかるように腐女子歴に対してジャンル数が明らかに多いインフォーマントと少ないインフォーマントがいたのでインタビューの中でインフォーマントが自身の性質について語る場面から両者の性質の違いを考察した以下は各インフォーマントが自身の性質についての発言である A: 好きになるとずっと一直線お金も費やすし愛もやばいし C: 私興味ないものには興味ないんだけど興味示したものには結構がっつりいくタイプなので E: ( 中略 ) 私はポリシーとしてはあれやこれやと流行ジャンルを渡り歩く人は苦手ですけどね ( 中略 ) 私は一筋タイプの人間なので黒子のバスケを一生愛していくと思います B: 私はハマりやすくて飽きっぽい性格 D: 最近結構目白押しなんで ( 中略 ) とうらぶコナン松ユーリヒロアカとか全部収まってなくてその時の旬はあったりするんですけど全体的に好きです F: 世の中で何が流行ってるのかなって感じで視たりはするハマるかどうかはわからなくてもとりあえず最初に一回見てみないと始まらないので見てみる G: 飽きてきた時になんかちょっと話題のアプリとか合ったら試して見て自分がハマるかどうかとかアニメもつまらなくても 3 話くらいまでは見てます H: 基本的に飽き性であるんですけどその飽き性を認めたくないがために今までのもずっと好きでいるんですけどインフォーマント ACE が好きになるとずっと一直線興味ないものには興味ない一筋タイプと語っているのに対しインフォーマント BDFGHは自身が飽きっぽい性格飽き性であることや熱中しているジャンルに多くの作品名を上げるなど 1つのジャンルに固執しない発言が見られるのが特徴的であるこのことからインフォーマント ACEは1 つの作品に対してのめり込むタイプで興味のあるジャンル以外は無視するのに対してインフォーマント BDFGHは飽きっぽいタイプで複数のジャンルを熱中している作品としてあげる興味がなくても試すという性質の差があると考え本稿では 1 つのジャンルに熱中するインフォーマント ACEを定住型の腐女子複数のジャンルに熱中インフォーマント BDFGHをノマド型 8) の腐女子と分類した表 3 インフォーマントの分類タイプノマド型定住型インフォーマント BDFGH AEC V. 分析結果 1. 3 つの発見分析によって得られた発見は3つあった第 1の発見は腐女子はジャンルの間を移動しているのではなく複数のジャンルをストックしていることであるインタビューではどうして新しいジャンルに移動するのかという質問をしていたがこれに対して移動するという表現を否定されることが多かった代わりに頻繁に使用されていたのがメインジャンルとサブジャンルという言葉で使い方に多少の個人差はあったがメインジャンルとは活動量が多い状態にあるジャンルでサブジャンルとは活動量がメインジャンルに比べ少ないストックとなっているジャンルで概ね一致していたまたメインジャンルは必ずしも 1 つとは限らず複数のジャンルをメインジャンルであると話すインフォーマントもおりノマド型は定住型と比較して一度に抱えているメインジャンルとサブジャンルの数が多いのが特徴であった以下は複数のジャンルをストックしていることについて言及した発言である B: ( サブジャンルとメインジャンルがあって )2 年前にワートリ 9) にハマってからはそれがメインで他は追いかけてるけどあくまでサブ H: 手は足りないからどうしても今はまっているジャンル日本マーケティング学会カンファレンスプロシーディングス vol.6(2017) 54

7 が優先にはなってしまうけど基本的にはサブもメインも全部抱えている今まで見たものはゲームも漫画も時間が許す限りは見るジャンルをストックしているという状態は一見トリクルダウン理論の模倣と模倣からの差別化から逸脱している衣服であれば流行が終わったら以前流行したものは時代遅れとなって忘れ去られるのが一般的であるしかしトリクルダウン理論において模倣とは下の階級が上の階級に上がることが目的となっていることを忘れてはならない衣服は上の階級を真似て新しい流行を取り入れること時代遅れの服を捨て下の階級から自己を差別化することが優位を保つ手段なのであるではストックする行為は誰との模倣と模倣からの差別化となっているのであろうか腐女子に限らず真のファンとはどういうものかというのはしばしば議論されるものであるが (Fiske 1992) 未だその議論に決着はついていないではなぜ真のファンであることを主張する必要があるのかそこにはにわかファンと呼ばれる存在があるにわかファンについてはインフォーマント G が次のような発言をしている G: 本当ににわかやめてほしいですよね ( 作品のことを ) わかったふり?( 中略 ) 本当にやめて欲しい全部視てから言って欲しい自分は好きなキャラを取り巻く環境を全て知らなければいけないと思うので G の発言からは作品の全てを網羅していない人はにわかファンでありにわかファンが好まれない存在であることがわかる真のファン ( になりたいファン ) はにわかファンから自己を差別化しなければならない腐女子がジャンルをストックする行為はファッドが終わってもジャンルを捨てないことで自分は真のファンであると主張しにわかファンと自己を差別化するための手段なのではないだろうかつまり腐女子が真のファンとにわかファンを差別化しようとする欲求は流行が終わった後の消費行動に影響を与えていると言える第 2の発見は腐女子のファッドは腐女子全体に拡散しないことであるトリクルダウン理論において流行は徐々に全体に拡散していくものであったが腐女子のコミュニティでは定住型の腐女子にはファッドが取り入れられなくても収束が起きるこれは決して定住型が情報に疎いということではないインタビューでも定住型のインフォーマントは現在どのジャンルが流行していてそのジャンルではどのようなことが起こっているのかということを把握していた定住型の腐女子はファッドの採用が遅いのではなく主体的に採用しないのである以下のインフォーマントA の発言がそれを表している A: 誰かがいいって言ってみんながいいって言うから見てみようからハマっちゃうのがあるんでしょうね私は視てないけどユーリ 10) も〇〇さん ( バイト仲間 ) にマジやばいってめちゃめちゃ勧められてるし Twitterでも流れてくるけど今は自分がモブサイ 11) で描きたいもとかあるからいいやって感じ AはTwitterを主な情報源としておりフォローしているユーザーやフォロワーのツイートによって流行しているジャンルの情報を得ていてユーリ!!!on ICE が流行していることは知っているし知人からも薦められているが他に熱中しているものがあるから私は視ないと言い切っているこれはインフォーマント F のハマるかどうかはわからなくてもとりあえず最初に一回見てみないと始まらないので見てみるという発言にあるようにノマド型が話題となっている作品や友人から紹介された作品はとりあえず視ておこうとするのとは対照的である第 1の発見と第 2の発見から腐女子のタイプ別に活動のイメージを図にしたものが図 4である定住型が活動量を急速に増やした後に緩やかに活動量を減らしていくファッション的な動きをするのに対しノマド型は活動量が急速に増加した後に急激に減少するファッド的な動きをし尾をひくように活動を続けていく腐女子の流行はこの異なる 2 つのタイプによって複合的に急速に拡大するがノ 55 Japan Marketing Academy Conference Proceedings vol.6(2017)

8 継続性 2 1 インタラクショ継続性 4 2 インタラクショなぜファッド群が起こるのか腐女子の質的研究マド型の活動量が減少することに起因して縮小するつまりノマド型の活動量の低下によって腐女子の流行はファッドになっているのであるではノマド型の活動量が減少するのはどうしてだろうか表 4はそれぞれのタイプのインフォーマントの活動量にプラスに作用する動機とマイナスに作用する動機についてそれぞれ公式作品が起因となるキャラクターストーリー作者継続性と公式作品以外の要素が起因となる二次創作コミュニケーションコミュニティの計 7 つのファクターに分類したものであるキャラクターはキャラクターそのものやキャラクター同士の関係性ストーリーは作品のストーリーや世界観継続性は漫画やアニメが継続していることゲームならば定期的にイベントが発生すること作者は漫画の作者やアニメの製作者に関することコミュニケーションは他者との対話についてコミュニティは直接対話をしない不特定多数について二次創作は二次創作の質や二次創作する上での環境などについて言及があったことを示す第 3の発見は腐女子のファッドがコミュニティのメンバー同士のインタラクションによって起こることである表 4 よりノマド型と定住型の差異が最も顕著に現れたのはプラスに作用する動機の製作者とマイナスに作用する動機の製作者コミュニティコミュニケーションの項目であったノマド型では製作者がジャンルに熱中する動機としてあげられなかったのに対し定住型は3 人中 2 人がプラスに作用する動機に製作者への好意をあげていたまたマイナスに作用する動機ではノマド型が製作者コミュニティコミュニケーション二次創作をあげているのに対し定住型はそれらによる影響を受けなかった以上から漫画の作者やアニメの製作者に対し好意を持っているとコミュニティの雰囲気が悪化することやコミュニケーションの減少が活動量の低下に影響を与えにくいことがわかる以下は定住型の腐女子が製作者に対しての好意を語っている場面である図 4 タイプ別活動量推移表 4 動機の比較ノマド型 (5) 定住型 (3) (+) 公式ストーリー 3 2 キャラクター 3 3 作者 0 2 ン二次創作 3 2 コミュニケーション 4 2 コミュニティ 1 1 (-) 公式ストーリー 1 0 キャラクター 0 0 作者 2 0 ン二次創作 1 0 コミュニケーション 2 0 コミュニティ 4 0 日本マーケティング学会カンファレンスプロシーディングス vol.6(2017) 56

9 A: ( 中略 ) 応援したくなるととにかく公式にお金を費やそうってなります先生とか作家さんとかアニメ製作陣とかになんとかこんなに大好きでこんなにも続きをやってほしいんだよってことを示せるのが購買運動しかないから E: ( 中略 ) 全スタッフが心から作品の物語性キャラクターを尊重し大切にしそれらの品格が失われないプロデュースでこの世に送り出していることが伝わってきますそういう純粋な作品愛でつくられた黒バス 12) を知ってしまっているので余計に他の作品にはハマれないですねインフォーマント AEとも原作者とアニメの製作者の作品に対する姿勢を高く評価しており作品に熱中する要因になっていること A がとにかくお金を使うことでしか愛を示せないと語っているように原作者とアニメの製作者への好意がグッズの購買に繋がっていることがわかるまた Eがそういう純粋な作品愛でつくられた黒バスを知ってしまっているので余計に他の作品にはハマれないですねと言っているように原作者とアニメの製作者への好意は他のジャンルに移動しない要因でもあった定住型腐女子がコミュニティコミュニケーションの影響を受けにくいことは E の次の発言に表れている E: ( 中略 ) 作品の魅力は誰かと喧嘩別れしようが変わりません誰かとつるむような楽しみ方はついでのようなものですコミュニティに重きを置きすぎてしまって ( 馴れ合いのほうが楽しくなってしまって ) 本来の作品やキャラクターを愛することを疎かにする人はオタク失格とすら思いますなのでたとえだれと人間関係のトラブルになろうがその作品への愛情度は変わらないです Eにとって腐女子同士でのコミュニケーションはあくまでついでなのでありそこに楽しみを感じているのは確かだがインタラクションに問題が発生してもそれによってそのジャンルでの活動が減ることがない対してノマド型腐女子ではインタラクションに問題が生じたことによって熱中していたジャンルでの活動量が減少した経験が以下のように語られた B: 原作が面白いのは大前提としあって ( 中略 ) かつ 13) ファンの民度が低くなければ私はそのジャンルに居続けられると思うんですけど H: 黒バスとかでもあったんですけどファンのマナーの悪さが目につくようになるとちょっと冷めるというか ( 中略 ) 素行の悪いファンの人がいてそういう話を聞き始めると平和じゃないなと思って平和なジャンルを探し始めるっていうのもあって次に移ろいやすい D: ( 中略 ) 元のとうらぶ 14) アカウントがスマホ版のとうらぶが出たことで民度が低くなったんでそっちの方は一回鍵かけて ( 中略 ) とうらぶを書かなくなってから松を書き始めましたねノマド型腐女子からはファンの民度が低くなるファンのマナーの悪さが目につくなど他のファンの行動が起因となって次のジャンルを探す二次創作をしなくなるなど熱中していたジャンルでの活動に負の影響を与えた腐女子のコミュニティでは特定の素行の悪いファンは若年層若い子など相対的に若者であると考えられていることが複数のインフォーマントの発言から確認できたそれは次の A の発言が端的に表している A: 若い子が多いと過激なことが多いですよ荒れやすいジャンルがつまり若年層とはマナーの悪いファンの代名詞のような存在でありジャンルが荒れる (= コミュニティの雰囲気が悪くなる ) 原因であると腐女子には考えられている人気のジャンルについて若年層が多いって聞いていたからという理由で避けたという発言が複数のインフォーマントからありコミュニティに若年層が多くインタラクションに問題が発生しやすいことは活動量の減少だけでなく新しいジャンルの選択にも負の影響があった 57 Japan Marketing Academy Conference Proceedings vol.6(2017)

今回の調査から若年層と呼ばれるグループが本当に年齢的に若いのか判断することはできなかったがその性質についてはある種の非常に熱狂的なファンであることから前述のにわかファンとは区別されるものであると考え本稿では定住型ノマド型に合わせて迷惑住人型と呼ぶことにする 2.

10 今回の調査から若年層と呼ばれるグループが本当に年齢的に若いのか判断することはできなかったがその性質についてはある種の非常に熱狂的なファンであることから前述のにわかファンとは区別されるものであると考え本稿では定住型ノマド型に合わせて迷惑住人型と呼ぶことにする 2. 腐女子の流行サイクル以上 3つの発見から腐女子の流行サイクルを表したのが図 5 である腐女子コミュニティにおけるジャンルの流行は最初に定住型とノマド型によって発生しジャンルの人気が高まると迷惑住民型がコミュニティに現れる迷惑住民型がコミュニティで迷惑行為を働くとノマド型は迷惑住民型と関わらないように活動しつつ次のジャンルを探索して新しい流行を生む定住型は迷惑住民型と関わらないように同じジャンルに他のタイプの腐女子がいなくなるまで留り続けいくつかの流行が過ぎた頃に次のジャンルを探索する腐女子の流行サイクルとトリクルダウン理論の相違点は流行のサイクルが模倣と模倣からの差別化ではなくファン同士のインタラクションによって起こる点である従来のトリクルダウン理論がインタラクションに言及しないのは社会階級の異なるグループがコミュニケーションをとる状態にあることが想定されていないこととファッションという目に見える流行であったことに起因する誰がどのようなファッションを取り入れているかということは一目で明らかであるため下位のグループにとっては模倣が容易であるし上位のグループは下位のグループに模倣されたことがすぐにわかるので差別化が起こるそれに対して腐女子コミュニティでは日常生活の中で誰が腐女子であるのかどのジャンルに熱中しているのか見た目で判断することは難しいそれを知ろうとすればそこには必ずインタラクションが発生するのである個人の趣味というのは基本的に見た目で判断することは難しいが特に腐女子は腐女子であることを日常では意図的に隠している場合が多く故にインターネットで見つけた仲間とのコミュニケーションに特別な価値を見出しているインターネットはコミュニケーションを容易とする代わりに時に望ましくないコミュニケーションを生みより楽しめるジャンルの探索へと腐女子を駆り立図 5 腐女子の流行サイクル日本マーケティング学会カンファレンスプロシーディングス vol.6(2017) 58

11 てるこれは従来の模倣と模倣からの差別化では説明ができない現象であるしかし原因に相違があったとはいえ腐女子の流行サイクルは追跡と逃走というトリクルダウン理論の根幹を揺るがすことはなくノマド型と迷惑住人型という 2つのグループでの追跡と逃走が流行サイクルを起こしていることも調査によって明らかになった VI. おわりに 1. 結論本稿ではなぜファッド群が起こるのかを明らかにするために腐女子を対象にインタビュー調査を実施した分析の結果従来のトリクルダウン理論が異なるグループ同士のインタラクションを想定しておらず自己をいかに他人より上位のグループに見せるかという欲求に終始していたのに対し本稿ではインタラクションによる意欲の低下より良いコミュニティに所属したいという欲求によって流行が起こるという新しい知見を示した本稿の調査対象は腐女子のみであったためインタラクションの不協和によるファッド群の発生が他のコミュニティにおいても適用できるかどうかは今後調査する必要があるまた今回の調査ではスノーボール形式でインフォーマントを集めたため全員が創作活動をしている 20 代女性となってしまいにわかファンや迷惑住民型の腐女子から話を聞くことができなかったこれらの腐女子の性質を明らかにすることでどのようなインタラクションが誰にどのような影響を与えるのか詳らかにすることができると考えるため今後さらに研究を進めていきたい注 1 ) おそ松さん現象 6 つの解 :-ヒットの全貌女子ウケの理由そもそも何? 日経エンタテイメント (2016 年 4 月 )pp ) 数値は特定の地域と期間についてグラフ上の最高値を基準として検索インタレストを相対的に表したもので 100 の場合はそのキーワードの人気度が最も高いことを示し 50 の場合はそのキーワードの人気度が半分であることを示す同様に数値が 0 の場合はそのキーワードの人気度が最も高いときの 1% 未満であることを示す 3 ) イラストや小説の投稿閲覧サイト投稿作品にはタグと呼ばれる検索キーワードとなる情報がつけられる二次創作作品の投稿も多い 4 ) Pixiv ユーザが作成している百科事典ユーザであれば自由に編集が可能 5 ) 腐向け作品を好まない一定層への配慮を目的として検索避けを自主的におこなうユーザが ( 腐向け作品を投稿する際に ) 作品名タグの代替として用いるとされる一連の専用タグがまとめられている 6 ) 2016 年 3 月にスマートフォン版のゲームが発売になっている元は PC 用のゲームで 18 歳以上しかプレイできなかったがスマートフォン版で全年齢対象となったことが 2 回目の急上昇に関与していると思われる 7 ) 腐女子の中では漫画アニメに限らず 1 作品 =1ジャンルという意味で使用される音楽のロックポップのような分類という意味合いとは異なる 8 ) ノマド (nomad): 永住地を持たず季節に応じて移動する人々の意 ( コトバンク 9 ) ワールドトリガー作品名 10) ユーリ!!! on ICE 作品名 11) モブサイコ作品名 12) 黒子のバスケ作品名 13) ファン全体の規範意識ファン以外に迷惑がかかる行為をしないなど 14) 刀剣乱舞作品名参考文献 Aguirre B. E. Quarantelli E. L. and Mendoza J. L. (1988) The collective behavior of fads: The characteristics effects and career of streaking American Sociological Review pp Best J. (2005) Fashion Topical Jokes and Rumor as Short-Term Enthusiasms Rumor Mills: The Social Impact of Rumor and Legend pp Best J. (2006) Flavor of the month: Why smart people fall for fads Univ of California Press. 59 Japan Marketing Academy Conference Proceedings vol.6(2017)

12 Bikhchandani S. Hirshleifer D. and Welch I. (1992) A theory of fads fashion custom and cultural change as informational cascades Journal of political Economy pp Blumer H. (1969) Fashion: From class differentiation to collective selection The Sociological Quarterly 10.3 pp Fiske J. (1992) The cultural economy of fandom The adoring audience: Fan culture and popular media pp LaPiere R. T. (1938) Collective Behavior pp McGraw-Hill. Lofland J. (1985) Protest: Studies of collective behavior and social movements Transaction Publishers. McCracken G. (1988) Culture and Consumption: New Approaches to the Symbolic Character of Consumer Goods and Activities 1 Indiana University Press ( 小池和子訳文化と消費とシンボルと勁草書房 1990). Simmel G. (1904) Fashion International Quarterly pp Smelser N. J. (1962) Theory of Collective Behavior Free Press. Suzuki T. and Best J. (2003) The emergence of trendsetters for fashions and fads. The Sociological Quarterly 44.1 pp 岡部大介 (2008) 腐女子のアイデンティティゲーム : アイデンティティの可視 / 不可視をめぐって認知科学 15.4 pp 斎藤定良 (1957) 流行大衆現象の心理 :( 講座現代社会心理学第 4 巻 ) pp 中山書店作品作者別腐向け作品リンクタグ < 作品作者別腐向け作品リンクタグ > 2016 年 12 月 10 日アクセス日本マーケティング学会カンファレンスプロシーディングス vol.6(2017) 60

スライド 1

スライド 1 問 1 プロ野球への関心問 1-1 直接野球場に足を運ぶのは若い年代の性が多い実際に割合を見ると年代別性別共に差がことがわかる特に年代別では顕著な差が見られのほうが直接割合が高い n=110 27.3% 72.7% n=204 22.5% 77.5% n=155 n=135 14.8% 15.6% 85.2% 84.4% n=198 14.6% 85.4% n=400 18.5% 81.5%

ない物事 の流行であり ともすればあまり意味のないものとみなされていた (LaPiere 1938Blumer 1969Turner and Killian 1972Lofland 1985) Aguirre(1988) や Bikhchandani(1992) はファッドを注目すべきものとして論じ

ない物事の流行でありともすればあまり意味のないものとみなされていた (LaPiere 1938Blumer 1969Turner and Killian 1972Lofland 1985) Aguirre(1988) や Bikhchandani(1992) はファッドを注目すべきものとして論じ