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2 目 次 研 究 論 文 L.B.アルベルティの 絵 画 論 にみる 視 的 ピラミッドとその 切 断 に 関 する 研 究 (1) 天 貝 義 教 1 シアトル 美 術 館 日 本 古 美 術 展 覧 会 (1949 年 )について 志 邨 匠 子 11 'educate'の 語 源 解 釈 におけるイギリス ロマン 主 義 の 思 想 的 影 響 S.T.コールリッジによる 教 育 の 定 義 とOED 池 亀 直 子 髙 梨 誠 23 地 域 における 現 代 美 術 考 Ⅳ 観 光 資 源 としてのアート デザイン 島 屋 純 晴 39 ソシエテ アノニムにおける 近 代 美 術 館 1920 年 代 アメリカでの 同 時 代 美 術 の 普 及 をめぐって 慶 野 結 香 47 女 乗 物 のつくりと 材 料 の 研 究 木 部 の 観 察 と 実 測 を 通 して 落 合 里 麻 57 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 についての 構 成 学 的 考 察 金 孝 卿 67 カンヌライオンズ にみる 作 品 評 価 の 変 化 制 作 現 場 への 貢 献 を 目 的 として 水 田 圭 77 研 究 報 告 街 の 風 景 調 査 および 景 観 デザインスタディー 秋 田 駅 周 辺 市 街 地 の 場 合 山 内 貴 博 87 欧 州 意 匠 指 令 の 修 理 条 項 にまつわる 対 立 構 造 の 俯 瞰 2006 年 当 時 に 誰 が 何 をどのように 主 張 しているのか 宮 田 平 95

3 実 践 報 告 参 加 者 間 の 相 互 作 用 を 促 すアートワークショップについての 一 考 察 屋 宜 久 美 子 107 今 東 北 で 風 土 への 想 い をテーマに 制 作 して 自 然 人 々 生 活 など あなたが 抱 く 風 土 への 想 いを 表 現 して 下 さい 皆 川 嘉 博 115 ものづくりデザイン 専 攻 教 員 展 実 践 報 告 第 2 回 湧 水 地 点 おふくわけ の 取 り 組 み ものづくりデザイン 専 攻 123 制 作 報 告 変 塗 蒔 絵 螺 鈿 箱 かたくり 制 作 報 告 漆 工 芸 加 飾 技 法 の 再 構 成 と 表 現 の 試 み 熊 谷 晃 137 JA 全 農 あきた ホンモノづくり プロジェクト 愛 菜 ものがたり のパッケージデザイン 提 案 孔 鎭 烈 143

4 研 究 論 文

5 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 L.B.アルベルティの 絵 画 論 にみる 視 的 ピラミッドと その 切 断 に 関 する 研 究 (1) 天 貝 義 教 レオン バッティスタ アルベティは その 著 絵 画 論 (ラテン 語 版 1435 年 発 行 イタリア 語 版 1436 年 発 行 )において 見 ること(vision)とは 三 角 形 を 作 ることであり 三 角 形 なしにはいかなる 量 も 見 ることはできないと 語 り 絵 画 (picture)を 眼 を 頂 点 とし 見 られる 面 を 底 とする 視 的 ピラ ミッドの 切 断 として 定 義 した アルベルティ 以 後 多 くの 芸 術 家 たちが 絵 画 芸 術 について 重 要 な 概 念 を 引 き 出 すこととなった 視 的 ピラミッドは 底 である 見 られている 面 の 各 点 から 頂 点 であるひとつの 眼 まで 引 かれた 直 線 の 集 まりによって 構 成 され 切 断 は これら 視 的 ピラミッドを 構 成 する 直 線 と その 底 と 頂 点 の 間 に 挿 入 された 透 明 な 面 とが 交 わる 点 の 集 まりから 構 成 される パースペクティヴに 関 する 諸 規 則 は 視 的 ピラミッドとその 切 断 との 特 別 な 関 係 のなかに 見 いだされる 本 研 究 では 視 的 ピラミッドと 切 断 に 関 するいくつかの 図 版 と 模 型 をつかって 視 的 ピラミッドの 直 線 が パースペ クティヴの 原 理 にもとで 平 行 線 となることを 考 察 する 研 究 の 前 半 部 (1)では 視 的 ピラミッドと その 切 断 の 作 図 について 射 影 幾 何 学 を 参 考 にしながら 考 察 する 研 究 の 後 半 部 (2)では 見 ること (vision)とは 三 角 形 を 作 ることのみならず その 同 じ 三 角 形 に 平 行 関 係 を 作 ることでもあるという ことを 考 察 する 以 上 の 考 察 から 私 たちは アルベルティにならって 三 角 形 なしには 平 行 関 係 を 見 ることはできないといえるのである キーワード:L.B.アルベルティ パースペクティヴ 視 的 ピラミッド 切 断 平 行 関 係 Astudyonthevisualpyramid anditscros-sectionofl.b.alberti'sonpainting(1) AMAGAIYoshinori,Ph.D. InhisbookentitledOnPainting(Latinversionpublishedin1435,Italianversionpublishedin1436),Leon BatistaAlbertisaysthatvisionmakesatriangleandthatnoquantitycanbeseenwithoutthetriangle,andhe definesapictureas'acros-section'of'avisualpyramid'havingtheeyeasitsapexandtheplaneseenasitsbase. Avisualpyramid,fromwhichmanyartistsafterAlbertidrewmanyimportantconceptsontheartofpainting, isconstructedbyacolectionoflineswhichareextendedfromeachpointinthebase(aplanewhichisseen) totheapex(thesingleeye),andacros-sectionisthenthecolectionofpointswheretheselinesofthevisual pyramidintersectatransparentglaswhichisinterposedbetweenthebaseandtheapex.theruleofthe perspectivesystemisfoundinthespecialrelationshipbetweenthevisualpyramidanditscros-section.inthis study,byusingsomediagramsandmodelsofavisualpyramidanditscros-section,iinvestigatewhythelines 1

6 L.B.アルベルティの 絵 画 論 にみる 視 的 ピラミッドとその 切 断 に 関 する 研 究 (1) 天 貝 義 教 ofavisualpyramidmaybecomeparalelundertheprincipleoftheperspectivesystem.theintentionofthefirst halfofthisstudy(1)istoconstructdiagramsofavisualpyramidanditscros-sectionwithreferenceto projectivegeometry.inthesecondhalfofthisstudy(2),byusingmodelsofavisualpyramidanditscrossection,iasertthatvisionmakesnotonlyatrianglebutalsoparalelisminthesametriangle.fromtheabove discusion,folowingalberti'sfootsteps,wesaythatitisquitecertainthatnoparalelismcanbeseenwithout thetriangle. Keywords:L.B.Alberti,Perspective,Visualpyramid,Cros-section,Paralelism 1 はじめに レオン バッティスタ アルベルティは 註 その 著 絵 画 論 1 (ラテン 語 版 1435 年 イ タリア 語 版 1436 年 )において 見 ること (vision)とは 三 角 形 (triangle)を 作 るこ とであり 三 角 形 なしにはいかなる 量 (quant ity)も 見 ることはできないと 語 り 絵 画 (picture)を 眼 を 頂 点 とし 見 られる 面 を 底 とする 視 的 ピラミッド(visualpyramid)の 切 断 (cross-section)として 定 義 した ア ルベルティ 以 降 ピエロ デッラ フランチェ スカをはじめとして 今 日 に 至 るまで 多 く の 芸 術 家 が 視 的 ピラミッドにもとづいて 絵 画 芸 術 に 関 して 重 要 な 概 念 を 生 み 出 してき た 視 的 ピラミッドは アルベルティによる 基 礎 的 な 記 述 にもとづけば その 底 である 見 られている 面 の 各 点 から 頂 点 であるひとつの 眼 まで 引 かれた 直 線 の 集 まりによって 構 成 さ れ 切 断 は これら 視 的 ピラミッドを 構 成 す る 直 線 と その 底 と 頂 点 との 間 に 挿 入 された 透 明 な 面 とが 交 わる 点 の 集 まりから 構 成 する ことができる パースペクティヴに 関 する 諸 規 則 は 視 的 ピラミッドとその 切 断 との 関 係 のなかに 見 いだされ パースペクティヴはル ネサンス 以 降 造 形 芸 術 の 重 要 な 基 本 原 理 の 註 ひとつとして 発 展 きてきた 2 本 研 究 では アルベルティが 絵 画 を 定 義 す るさいにもちいた 視 的 ピラミッドとその 切 断 に 注 目 し それらの 図 と 模 型 をつかって 視 的 ピラミッドを 構 成 する 直 線 が パースペク ティヴの 原 理 のもとで 平 行 関 係 となることを 図 1 図 2 2

7 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 考 察 する 研 究 の 前 半 部 (1)では アルベルティに よって 絵 画 の 定 義 にもちいられた 視 的 ピラミッ ドとその 切 断 の 図 解 を 概 観 し 射 影 幾 何 学 の 基 本 的 な 概 念 であるデザルグの 定 理 を 参 考 に しながら 視 的 ピラミッドとその 切 断 の 作 図 をおこなう 図 1は その 一 例 であり この 図 において 三 角 形 VA'B'は Vを 頂 点 とし 直 線 A'B'を 底 とする 視 的 ピラミッドである 直 線 ABは そのひとつの 切 断 であり 直 線 A'B'の 透 視 図 となる 研 究 の 後 半 部 (2)では 前 半 部 (1)の 作 図 にもとづいて 作 られた 模 型 をつかって 視 的 ピラミッドを 構 成 する 直 線 が 平 行 関 係 と なることをデジタルカメラで 実 際 に 記 録 する 図 2は その 一 例 であり ここでは 図 1に おいて 視 的 ピラミッドを 構 成 している VAA' を 通 る 直 線 lと VBB'を 通 る 直 線 mが 平 行 関 係 になっている 本 研 究 では 以 上 の 考 察 を アルベルティ にならって 数 学 者 としてではなく 見 ら れる 対 象 (theobjecttobeseen) を 望 む 立 場 から 進 め 最 終 的 に 見 ることとは 三 角 形 を 作 ることのみならず その 同 じ 三 角 形 に 平 行 関 係 を 作 ることでもあることを 明 らかに する 私 たちは アルベルティにならって 三 角 形 なしには 平 行 関 係 を 見 ることはできな いといえるのである のいう 外 部 光 線 (extrinsicray) を EG は 中 心 光 線 (centricray) EP 1 EP 2 E P 3 EP 4 は 媒 介 光 線 (medianray.ケンプ の 著 書 では intrinsicrayと 表 記 )を 表 して いる 図 3 またアルベルティからモンジュまでのパー スペクティヴの 歴 史 について 数 学 的 に 考 察 し たアンダーセン(K.Andersen)は アルベ ルティの 絵 画 論 を 考 察 するさい 図 4の ように 1640 年 代 に 発 行 されたボッス 2 視 的 ピラミッドの 切 断 とパースペクティ ヴ アルベルティの 絵 画 論 では 視 的 ピラ ミッドとその 切 断 の 関 係 ついては 言 及 されて いるものの それらの 関 係 を 視 覚 的 に 表 した 図 は 見 られない それゆえ ブルネレスキか らスーラまでの 視 覚 にかかわる 主 題 を 網 羅 的 に 考 察 した 美 術 史 家 のケンプ(M.Kemp)は アルベルティの 絵 画 論 について 語 るさい 図 3にみられるような 作 図 をもちいて 視 的 ピ 註 ラミッドを 説 明 している 3 この 図 において Eは 眼 を 表 し EA EB EC EDは アルベルティ 図 4 3

8 L.B.アルベルティの 絵 画 論 にみる 視 的 ピラミッドとその 切 断 に 関 する 研 究 (1) 天 貝 義 教 ド その 切 断 そして 透 視 図 の 関 係 を 統 合 し 註 た 図 を 残 している 7 図 8は これを 改 めて 描 き 直 し 符 号 をくわえたものであるが この 図 において 三 角 形 ABCが 視 的 ピラミッド BEが 切 断 を 表 し 台 形 BCedは BCの 長 さ を 一 辺 とする 正 方 形 BCGFの 透 視 図 となる 図 5 図 7 (AbrahamBosse)の 著 作 にみられる 図 版 をつ 註 かって 視 的 ピラミッドを 説 明 している 4 切 断 は これらの 視 的 ピラミッドを 構 成 す る 直 線 と 画 面 との 交 点 から 構 成 されるが 同 じくアンダーセンは このことを 図 5のよう にボッスと 同 年 代 のデュブルイユ(Dubreil) の 著 作 にみられる 図 版 をつかって 説 明 してい 註 る 5 視 的 ピラミッドの 切 断 とパースペクティヴ の 関 係 を 表 した 図 版 はピエロ デッラ フラ 図 6 ンチェスカの 著 作 において 図 6( 図 中 の 符 号 は 天 貝 による 補 足 )のようにきわめて 正 確 註 かつ 簡 潔 に 描 かれていることが 知 られる 6 ここでは 三 角 形 ABCが 視 的 ピラミッド BE がその 切 断 を 表 している ピエロは この 図 にもとづいて 図 7のように 視 的 ピラミッ 図 8 今 日 では 視 的 ピラミッドの 切 断 と 透 視 図 の 関 係 については パースペクティヴに 関 し て 出 版 されている 図 学 関 係 の 多 数 の 解 説 書 に 見 ることができるが 本 論 では 数 学 者 のダ 註 ン ペドウの 著 書 8 に 見 られる 図 版 とその 説 明 にもとづいて 視 的 ピラミッドとその 切 断 の 関 係 そして 視 的 ピラミッドの 切 断 とパー スペクティヴの 関 係 を 理 解 しておく ペドウは 図 9に 見 られる 図 をもちいなが 註 ら 次 のように 解 説 する 9 点 Vを 画 家 の 眼 とする 平 面 α'は 水 平 な 平 面 で 絵 に 描 こうとする 対 象 面 である 4

9 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 図 9 いま 平 面 α'の 上 の 点 P'を 見 て それ を 平 面 αの 上 の 点 Pに 写 す 直 線 P'P は 当 然 点 Vを 通 る このとき α'の 上 の 点 を Vを 投 影 の 中 心 (thecenterof projectionv)とし αの 上 に 投 影 した (projecting)という 平 面 αは いわゆる 画 面 であり 点 Vを 通 る 直 線 P'Pは 視 的 ピラミッドを 構 成 する 直 線 となり 点 Pは 点 P'の 透 視 図 となる ぺドウによれば 平 面 αとα'との 交 線 は 投 影 の 軸 (theaxisofprojection)と 呼 ばれ この 軸 上 の 点 は 同 じ 点 に 投 影 され R= R'となる この Rを 通 る 直 線 l'を 平 面 α'の 上 に 引 き l'の 上 の 各 点 と Vとを 結 ぶと それらの 直 線 群 と 平 面 α すなわち 画 面 と の 交 点 群 は 平 面 α 上 で Rを 通 る 直 線 lと なる 直 線 lは 直 線 l'の 透 視 図 である 点 P'が l'の 上 を Rから 遠 ざかるように 動 くと 考 えると 画 面 上 の 点 Pは 次 第 に 画 面 上 の 点 Q すなわち Vから l'に 平 行 に 引 いた 直 線 が 平 面 αに 交 わる 点 に 近 づくこととなる これを ぺドウは 直 線 VQは 直 線 l'に 平 行 で 無 限 に 延 長 しても l'とは 交 わらないこ とを 意 味 し 点 Qは 点 Vを 通 って 平 面 α' に 平 行 な 平 面 と 平 面 αとの 交 線 vの 上 に あると 説 明 する この 直 線 vは 平 面 α'の 消 線 (thevanishingline)とよばれる これ について ぺドウは 次 のようにユニークな 方 註 10 法 で 解 説 する 一 冊 の 本 をもって その 背 を 上 にして 背 を VQに 沿 うようにすれば 中 の1 頁 を 直 線 l'と lとで 形 成 される 平 面 と 重 ねることができよう そこで 別 の 頁 を 開 いて 図 にあるように 直 線 m'と mと で 形 成 される 平 面 であるとすれば mは 当 然 Qを 通 るし m'は l'と 平 行 になる ぺドウの 解 説 は 次 のようにつづく 註 11 図 10 幾 何 学 用 語 でいえば 直 線 VQが 平 面 α 'と 平 行 であれば 直 線 VQを 含 むどの 平 面 も 平 面 α'とは VQに 平 行 な 直 線 で 交 わり 平 面 αとは 点 Qを 通 る 直 線 で 交 わる したがって 平 面 α' 上 の 一 群 の 平 行 直 線 群 は 平 面 αの 上 では 一 点 を 通 る 直 線 群 として 描 写 され その 交 点 は < 消 線 >vの 上 にあること すなわ ち < 平 面 α'の 上 の 特 定 の 方 向 の 直 線 5

10 L.B.アルベルティの 絵 画 論 にみる 視 的 ピラミッドとその 切 断 に 関 する 研 究 (1) 天 貝 義 教 に 対 して 平 面 α 上 vの 上 にこれに 対 応 する 特 定 の 点 が 存 在 する>ということが 証 明 されたことになる ぺドウによれば この 単 純 な 記 述 が 長 い 年 月 にわたる 透 視 図 法 の 発 展 の 歴 史 で 得 られ た 結 果 と 同 じ 内 容 をもっていることとなる 本 研 究 でいう 視 的 ピラミッドは ペドウの 図 をもちいれば 図 10において 太 線 で 示 した ように 直 線 S'P'を 底 とする 三 角 形 VS'P' で 表 される そして 平 面 α 上 の 直 線 SPは そのひとつの 切 断 であり 直 線 S'P'の 透 視 図 となる この 図 にもとづいて 本 研 究 の 目 的 をあらためて 述 べれば 三 角 形 VS'P'につい て 平 面 α' 上 のある 点 から 見 て 直 線 S'P'と 直 線 SPが 重 なって 見 えるとき 三 角 形 VS'P 'を 構 成 する 直 線 VS'と VP'が 平 行 関 係 にあ ることを 実 際 に 示 すことにある 3 視 的 ピラミッドとその 切 断 の 作 図 で 図 11に 示 したような 図 版 をもちいてパー スペクティヴの 技 法 の 説 明 を 開 始 し 図 12に 見 られるような 平 面 図 形 に 関 する 作 図 を 紹 介 註 12 している テイラーは 図 11において Oを 眼 (Eye) とし EFを 画 面 (Picture) 画 面 の 上 の 図 形 abcdを Oから 見 られているもとの 図 形 (Original Object) ABCD の 再 現 (Representaiton)としている そして 図 形 abcdが Oから 見 て 図 形 ABCDを 正 確 に 覆 っ ているとき 光 線 (Ray) もしくは 視 線 (VisualRay)を 表 す 直 線 AO BO CO DOを 図 形 ABCDの 各 点 A B C Dから 眼 であ る 点 Oに 伸 ばすと これらの 光 線 は 図 形 ABCDの 各 点 A B C Dに 対 応 する 図 形 abcd の 各 点 a b c dにおいて 画 面 を 切 る 註 13 (cut)こととなる この 図 形 ABCDを 底 とし 眼 Oを 頂 点 とし 光 線 または 視 線 AO BO CO DOからなる 四 角 本 研 究 では 視 的 ピラミッドと 切 断 に 関 す る 作 図 をおこなうにあたって 図 1にみられ るような 平 面 図 形 を 取 り 扱 うこととし 十 八 世 紀 の 英 国 のブルック テイラー(Brook 図 12 図 11 Taylor)のパースペクティヴの 理 論 と 射 影 幾 何 学 の 基 本 的 定 理 であるデザルグの 定 理 を 参 考 にする テイラーは 1715 年 に 発 表 した 著 作 の 冒 頭 錐 は 視 的 ピラミッドと 見 なせるが この 図 版 に 関 連 してテイラーは 視 的 ピラミッドとい 註 14 う 表 現 をつかっていない 図 12は 視 的 ピラミッドの 構 成 する 要 素 で ある 視 線 に 注 目 して パースペクティヴの 作 図 法 を 考 察 したものとして 重 要 である 註 15 テイラーによれば この 図 において X は 眼 を 表 す Oのある 平 面 (Plane)とされ Yは 画 面 (PlaneofPicture) Zは 見 ら れる 対 象 (Object) のあるもとの 平 面 (OriginalPlane) とされる Xは efを 通 6

11 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 る 消 線 (VanishingLine)で Yと 交 わり Y は EFを 通 る 交 線 (Intersection)で Zと 交 わる Xと Zの 平 面 は Yと 同 一 の 平 面 上 にあり Yに 描 かれている 図 形 abcdは Z にあるもとの 図 形 ABCDの 裏 返 しの 再 現 (Representation)となる この 図 において は 視 線 は Oから bを 通 り Bと 結 ばれた 直 線 で 表 されている この 視 線 OBをもちい て 点 Bの 再 現 である 点 bが 求 められる すなわち もとの 図 形 の 直 線 CBを 交 線 に 向 かって 延 長 し 交 線 との 交 点 を Eとする つぎに Oから 消 線 に 向 かって 直 線 CBEに 平 行 に 線 を 引 き 消 線 との 交 点 を eとする 点 eは 直 線 CBEの 消 点 であり 点 eと 点 E 描 き 改 めたものが 図 13である この 図 から 直 線 Of Oe fc ecと 消 線 を 取 り 除 いたもの が 図 14であるが この 図 は デザルグの 定 理 を 満 たすものとなる すなわち 直 線 Aa B b Ccがひとつの 点 Oを 通 るならば ABと abの 交 点 E' BCと bcの 交 点 E CAと ca の 交 点 Fは ひとつの 直 線 ここではテイ 図 14 図 13 を 結 んだ 直 線 eeと 視 線 OBとの 交 点 が 点 B の 再 現 である 点 bとなるというのである 点 cをもとめるさいには テイラーは 註 16 視 線 をもちいていない すなわち 直 線 CA を 交 線 に 向 けて 延 長 し 交 線 との 交 点 を F とする 直 線 CAFに 平 行 に 引 かれた 直 線 Of と 消 線 と 交 わる 点 を fとし 直 線 eeと ff の 交 点 が 点 Cの 再 現 である 点 cとなる ここで Zにある 三 角 形 ABCに 注 目 して 視 線 OA OCを 描 きくわえると 直 線 OCは 点 cを 通 ることとなる さらに 直 線 BAを 交 線 上 に 延 長 し 交 線 との 交 点 を E'とし 点 b と 結 んだ 直 線 E'bは 点 aを 通 る 以 上 を ラーが 交 線 (Intersection)と 呼 んだ 直 線 の 上 にある このとき 三 角 形 ABCと 三 角 形 abc はパースペクティヴの 位 置 にあるが このパー スペクティヴの 中 心 は O 軸 は 交 線 である 三 角 形 ABCと 三 角 形 abcは 同 じ 平 面 上 に 註 17 あっても 異 なる 平 面 上 にあってもよい 図 14の 場 合 は 二 つの 三 角 形 が 同 じ 平 面 図 15 7

12 L.B.アルベルティの 絵 画 論 にみる 視 的 ピラミッドとその 切 断 に 関 する 研 究 (1) 天 貝 義 教 図 16 上 にあり 図 15の 場 合 は 異 なる 平 面 上 にある 図 15は ケンプが 透 視 図 とデザルグの 定 理 の 註 18 関 係 を 示 すために 掲 げたものである が ペ ドウの 著 書 にも 図 16のように 同 様 の 図 が 掲 載 註 19 されており デザルグの 定 理 とパースペク ティヴとの 関 係 を 直 観 的 に 示 すさいの 典 型 的 な 図 といえよう 図 15において 異 なる 平 面 の 上 にある 三 角 形 ABCと 三 角 形 DFGは Eを 中 心 とし IJ 図 17 図 18 を 軸 としてパースペクティヴの 位 置 にある ここで 中 心 Eを 通 り 三 角 形 ABCのある 平 面 に 平 行 となる 平 面 が 三 角 形 DFGのあ る 平 面 Pと 交 われば それが 先 に 掲 げた 図 9における 平 面 α 上 の 直 線 vとなり Eか ら vに 垂 直 線 を 引 いて vと 交 わる 点 が Nと なる 視 的 ピラミッドは Eを 頂 点 三 角 形 ABCを 底 として Eからの 視 線 EA EB EC で 表 され 切 断 は 平 面 Pの 三 角 形 DFGで 表 される このようにデザルグの 定 理 をもち いて 任 意 の 視 的 ピラミッドとその 切 断 が 作 図 できるのである 図 17は 以 上 のようなテイラーの 作 図 法 と デザルグの 定 理 を 参 考 にして 作 図 したもので 註 20 ある ここでは 三 角 形 ではなく 四 角 形 をもちい て Vをパースペクティヴの 中 心 nを 軸 と している ここでの 視 的 ピラミッドの 頂 点 は V 底 は 正 方 形 A'B'C'D' 視 線 は VAA' VBB ' VCC' VDD'で 表 され 切 断 は 四 角 形 ABCD となる 冒 頭 で 示 した 図 1は 太 線 で 示 した 部 分 である さて 射 影 幾 何 学 においては 無 限 遠 点 が 抽 象 的 につけ 加 えられ 平 面 上 の 二 つの 直 線 は 必 ず 通 常 の 点 か 無 限 遠 点 で 交 わることとなる ケンプは 図 15について Eを 無 限 遠 点 とし 註 21 た 場 合 の 図 版 を 図 18のように 示 している この 図 では パースペクティヴの 中 心 Eは 無 限 遠 点 として 表 され Eを 通 る 直 線 すな わち 視 線 AF BD CGは 平 行 線 となる この 図 にならって 図 1について Vを 無 8

13 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 限 遠 点 とすれば 図 19に 示 したように Vを 通 る 二 つの 直 線 lと mは 平 行 線 となる 図 2は 図 1にもとづいて 製 作 した 模 型 を 撮 影 したものであるが ここでは 図 1のパー スペクティヴの 軸 nの 上 の 部 分 が 裏 返 しに すなわち 直 線 BANが 画 面 の 右 側 にあり 視 的 ピラミッドを 構 成 する 二 つの 直 線 lと m が 平 行 になっている 図 19 次 節 では 図 16にもとづく 模 型 製 作 と 図 2に 示 した 画 像 の 撮 影 過 程 について 述 べる ( 以 下 別 稿 に 続 く) 註 1 アルベルティの 絵 画 論 ついては 本 研 究 では 英 文 は JohnR.Spencerによる 英 訳 "OnPaiting"(YaleUniversityPress, 1956)を 参 照 し 邦 語 は 三 輪 福 松 氏 による 邦 訳 絵 画 論 ( 中 央 公 論 美 術 出 版 平 成 4 年 ) を 使 用 した また 下 記 のものを 適 宜 参 考 にし た Leon Battista Alberti, "On Painting", translated bycecile Grayson, with an IntroductionandNotesbyMartinKemp, PenguinBooks,Reprint,2004. Roccoinisgalli,"LeonBattistaAlberti: On Painting. ANew Translattion and Critical Edition, Cambridge University Press, 美 術 史 的 観 点 からパースペクティヴの 歴 史 を 考 察 したものとして 以 下 のものを 参 照 し た MartinKemp,"TheScienceofArt- ThemesinWesternArtfromBrunelleschito Seurat-",YaleUniversityPress,1990. また 数 学 的 観 点 からものは 以 下 のものを 参 照 した KristiAndersen,"TheGeometryofan Art -The History ofthe Mathematical Theory ofperspective from Albelti to Monge-",Springer, M.Kemp 註 2 同 上 書 p.22 4 K.Andersen 註 2 前 掲 書 p.20 5 同 上 書 p.21 6 PierodellaFrancesca,"DeProspectiva Pingendi", Firennze, Casa Editrice Lettere,1984.(Tav.I,Fig.I) 図 版 は 以 下 の 邦 訳 にも 見 ることができる 石 鍋 真 澄 ピエロ デッラ フランチェス カ 平 凡 社 ページの 図 1 7 PierodellaFrancesca 同 上 書 (Tav.IV, Fig.XIII) 石 鍋 同 上 書 442ページの 図 4 8 Dan Pedoe, "Geometry and Liberal Arts",PenguinBooks,1976.これは1983 年 にDoverPublicationより "Geometryand thevisualarts"と 改 題 されて 出 版 されてい る 1976 年 版 の 邦 訳 は ダン ぺドウ 磯 田 浩 訳 図 形 と 文 化 ( 法 政 大 学 出 版 局 1985) がある 本 研 究 では 主 として 邦 訳 をつかった 9 ダン ぺドウ 磯 田 浩 訳 図 形 と 文 化 法 政 大 学 出 版 局 1985 p 同 上 書 p 同 上 書 pp.45~46 12 Kiristi Anderson, "Brook Taylor's WorkonLinearPerspective AStudyof Taylor's Role in the History of PerspectiveGeometry.IncludingFacsimiles 9

14 L.B.アルベルティの 絵 画 論 にみる 視 的 ピラミッドとその 切 断 に 関 する 研 究 (1) 天 貝 義 教 of aylor's Two Books onperspective", Springer-Verlag,1992. この 書 には 書 名 にあるように BrookTaylor による 以 下 の 二 つの 著 作 のファクシミリ 版 が 収 められている Linear Pespective: OrANew Method Of RepresentingJustlyAllMannerOfObjects AsTheyAppearToTheEyeinAllSituations. London.1715 NewPrincipesOfLinearPerspective:OrThe Art Of Designingon A Plane The RepresentationsOfAllSortsOfObjects,In AMoreGeneralAndSimpleMethodThanHas BeenDoneBefore.London KiristiAnderson 同 上 書 p テイラーは 1719 年 の 著 作 (p.163)で は "OpticCone"という 用 語 をもちいてい る また 同 じ 著 作 (p.231)で つぎのよう な 図 版 をつかって パースペクティヴの 基 本 的 概 念 を 説 明 している 4 点 形 定 理 を 参 照 するとともに 栗 太 稔 具 象 から 幾 何 へ ( 日 本 評 論 社 1980)の128ペー ジと196ページにみられる 平 行 四 辺 形 でない 四 角 形 の 射 影 による 正 方 形 の 作 図 法 を 参 照 し た 21 M.Kemp 前 掲 書 p K.Anderson 註 12 前 掲 書 p.76 p 同 上 書 p 寺 阪 英 孝 幾 何 とその 構 造 筑 摩 書 房 1971.p.148 p M.Kemp 前 掲 書 p D.Pedoe 前 掲 書 p.181 邦 訳 では 190ページ 20 作 図 にさいしては 寺 阪 の 前 掲 書 153ペー ジから155ページにみられるデザルグの 完 全 10

15 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 シアトル 美 術 館 日 本 古 美 術 展 覧 会 (1949 年 )について 志 邨 匠 子 1949 年 アメリカ 合 衆 国 のシアトル 美 術 館 において シャーマン E リーの 企 画 による 日 本 古 美 術 展 が 開 催 された リーは 1946 年 8 月 から 占 領 下 の 東 京 において GHQ/SCAPの 民 間 情 報 教 育 局 美 術 記 念 物 課 で 美 術 顧 問 官 として 勤 務 し 1948 年 6 月 シアトル 美 術 館 に 副 館 長 として 迎 えられてい た このシアトル 美 術 館 日 本 古 美 術 展 については 前 号 ( 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 1 号 )の 論 文 において 簡 単 に 触 れたが その 後 新 たに 関 連 資 料 を 入 手 することができた 本 稿 では 新 資 料 を 参 考 に 同 展 の 主 要 出 品 作 を 示 し 現 地 の 批 評 と 展 覧 会 の 意 味 について 考 察 する キーワード:シアトル 美 術 館 日 本 古 美 術 展 覧 会 シャーマン リー Ontheexhibition ASurveyofJapaneseArt heldattheseatlemuseumofartin1949 SHIMURAShoko Theexhibition ASurveyofJapaneseArt conceivedbyshermanleetookplaceattheseatlemuseum ofartin1949.from1946to1948,lee,asacolectionadvisor,hadworkedfortheartsandmonuments DivisionofCIEinGHQ/SCAPlocatedinTokyoatthetime.AfterreturningtotheUS,Leeasumedhisrole asasociatedirectoroftheseatlemuseumofartandcuratedthisexhibition.withthelistofmainworks presentedattheshow,thispaperwilanalyzethecriticalresponsestotheexhibitionandexaminethe significanceoftheshow. Keywords:SeatleMuseum ofart,japaneseartexhibition,shermanlee, 1 概 要 シアトル 美 術 館 日 本 古 美 術 展 ( 以 下 シア トル 展 と 略 )は 1949 年 11 月 9 日 から12 月 4 日 まで シアトル 美 術 館 の6 部 屋 のギャラ リーを 使 って 開 催 された 1 展 覧 会 の 正 式 名 は ASurveyofJapaneseArt である シャーマン E リー(ShermanE.Lee, )は 1946 年 8 月 から 占 領 下 の 東 京 において GHQ/SCAP( 連 合 国 軍 最 高 司 令 官 総 司 令 部 )CIE( 民 間 情 報 教 育 局 )の 美 術 記 念 物 課 で 顧 問 官 として 勤 務 し 1948 年 6 月 シアトル 美 術 館 に 副 館 長 として 迎 えられ ていた この 日 本 古 美 術 展 は リーの 企 画 に よるものである シアトル 美 術 館 は リチャード フラー (RichardE.Fuller)と 彼 の 母 親 の 寄 付 によっ 11

16 シアトル 美 術 館 日 本 古 美 術 展 覧 会 (1949 年 )について 志 邨 匠 子 て1933 年 に 設 立 された フラー 母 子 はアジア 美 術 のコレクターで 同 美 術 館 は 充 実 した 日 本 美 術 コレクションを 有 していた 2 リーは 少 なくとも 日 本 に 滞 在 していた1948 年 には 同 館 への 就 職 が 内 定 しており 帰 国 前 に 館 長 のフラーから 日 本 美 術 作 品 の 買 い 付 けを 依 頼 されている 年 の 日 本 古 美 術 展 は シ アトル 美 術 館 が 既 に 有 していた 日 本 美 術 コレ クションを 中 心 に リーが 同 館 のために 購 入 したものと 日 本 の 国 立 博 物 館 や 個 人 コレク ター アメリカ 国 内 の 美 術 館 や 個 人 コレクター から 借 用 した 作 品 で 構 成 された 一 般 公 開 さ れてから20 日 間 で 約 人 が 来 場 つまり 一 日 平 均 500 人 の 来 場 者 があったという 4 出 品 作 品 は 下 記 の12のセクションに 分 類 されていた 当 時 の 展 覧 会 冊 子 5 と 国 立 博 物 館 ニュース ( 第 34 号 1950 年 3 月 1 日 ) の 記 事 6 を 参 考 にしながら セクションを 順 番 に 記 す 1. 初 期 仏 教 神 道 美 術 (EarlyBuddhist andshintoart) 2. 大 和 絵 (Yamato-e) 3. 足 利 水 墨 画 (AshikagaMonochrome Painting) 4. 能 面 の 発 展 (DevelopmentoftheNoh Mask) 5. 茶 の 湯 (Chanoyu) 6. 庭 園 (Gardens) 7. 後 期 絵 画 および 装 飾 派 (LaterPainting andthedecorativeschool) 8. 陶 磁 器 (JapaneseCeramics) 初 期 瀬 戸 焼 (EarlySetoStoneware) 日 本 磁 器 (JapanesePorcelain) 京 都 磁 器 (KyotoPorcelain) 9. 版 画 (JapanesePrints) 初 期 浮 世 絵 (EarlyUkiyo-eWood BlockPrints) 後 期 木 版 画 (LaterWoodBlock Prints) 北 斎 派 の 素 描 (Drawingsofthe HokusaiSchool) 10. 桃 山 徳 川 装 飾 美 術 (Momoyamaand TokugawaDecorativeArts) 11. 民 芸 (FolkArt) 民 芸 陶 磁 器 (FolkCeramics) 民 芸 木 彫 (FolkCarvinginWood) 大 津 絵 (Otsu-e) 12. 花 道 (FlowerArrangements) 展 覧 会 冊 子 には セクションごとの 解 説 出 品 作 品 のデータ 一 部 の 作 品 に 対 する 簡 単 な 作 品 解 説 が 記 されている 作 品 の 通 し 番 号 は176までつけられているが 抜 けている 番 号 も 多 く またひとつの 番 号 に 複 数 の 作 品 が 記 載 されている 場 合 もある この 点 について は 冊 子 の 末 尾 に このカタログに 全 出 品 作 を 掲 載 することは 不 可 能 であった しかしこ こに 選 ばれた 作 品 は 展 覧 会 の 中 で 最 も 重 要 なものである と 注 意 書 きが 添 えられてい る 7 したがって この 冊 子 は 完 全 な 出 品 作 品 リストではないが 主 要 作 品 を 確 認 する 意 味 で ここに 翻 訳 し 再 録 する( 別 表 ) なお 正 確 な 出 品 点 数 は 不 明 だが 現 地 の 新 聞 は 350 点 以 上 と 報 じている 8 セクションは 大 まかに 時 代 順 になってい るが 能 面 や 陶 磁 器 といった 作 品 の 種 類 による 分 類 も 混 在 し 茶 の 湯 や 庭 園 花 道 といった 一 般 的 な 美 術 展 覧 会 で は 扱 われないジャンルも 含 まれている 茶 の 湯 には 茶 道 具 の 他 に 茶 室 の 写 真 が 展 示 され 庭 園 にも 金 閣 寺 等 の 写 真 が 展 示 さ れた 花 道 は シアトル 在 住 の 庄 司 権 之 助 夫 人 による 生 け 花 で 初 期 仏 教 神 道 美 術 足 利 水 墨 画 桃 山 徳 川 装 飾 美 術 の 3つのセクションに 各 々の 時 代 にふさわし い 様 式 で 花 が 生 けられていた 9 また 民 芸 のセクションに 大 津 絵 が 含 まれていることも 興 味 をひく この 展 覧 会 の 特 徴 は 日 本 美 術 を 網 羅 的 に 紹 介 している 点 である 古 代 から 近 世 まで 扱 っている 時 代 も 長 きにわたって いるが 写 真 展 示 をしてまで 茶 室 や 庭 園 を 示 し さらに 本 物 の 生 け 花 を 展 示 するなど 日 本 美 術 を 支 える 文 化 を 広 く 紹 介 したいという 12

17 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 シャーマン リーの 意 図 が 感 じられる シアトル 展 は 海 外 で 開 催 された 日 本 古 美 術 展 としては 戦 後 になって はじめてのも のであった 戦 前 では1900 年 パリ 万 博 1910 年 日 英 博 覧 会 における 日 本 古 美 術 展 示 1936 年 のボストン 日 本 古 美 術 展 覧 会 1939 年 ベル リン 日 本 古 美 術 展 覧 会 同 じく1939 年 金 門 万 博 (The Golden Gate International Exposition,SanFrancisco)における 日 本 古 美 術 展 示 があげられる シアトル 展 の 後 に は 1951 年 のサンフランシスコ 日 本 古 美 術 展 そして1953 年 のアメリカ 巡 回 日 本 古 美 術 展 が 続 く ただしシアトル 展 は シアトル 美 術 館 の 企 画 によるものであり 日 本 が 主 体 的 に 関 わっていない 点 で 上 記 の 展 覧 会 とは 性 質 が 異 なる しかし 同 展 は 出 品 点 数 が350 点 を 超 える 総 合 展 示 であり 占 領 期 のアメリカ における 日 本 美 術 の 紹 介 と 受 容 という 観 点 か ら 重 要 な 意 味 をもっている さらに 日 本 人 の 意 向 がほとんど 介 入 せず アメリカ 人 が アメリカ 人 に 呈 示 した 日 本 美 術 観 を 観 察 する 手 だてになると 思 われる また2 年 後 に 同 じ 西 海 岸 で 開 催 されるサンフランシスコ 日 本 古 美 術 展 への 先 駆 となる 展 示 であったことも 考 慮 されるべきである 2 日 本 からの 出 品 作 品 日 本 からの 借 用 は 以 下 のように 国 立 博 物 館 ( 現 東 京 国 立 博 物 館 )から4 点 個 人 か ら10 点 であった 10 以 下 作 品 番 号 所 蔵 先 とともに 記 す 3 如 来 坐 像 国 立 博 物 館 47 鳥 獣 戯 画 残 闕 国 立 博 物 館 54 雪 舟 金 山 寺 図 国 立 博 物 館 59 単 庵 芦 鷺 図 国 立 博 物 館 4 法 隆 寺 刺 繍 幡 瀬 津 伊 之 助 ( 鎌 倉 ) 8 山 水 図 瀬 津 伊 之 助 ( 鎌 倉 ) 10 過 去 現 在 因 果 経 繭 山 順 吉 ( 東 京 ) 33 駿 牛 図 繭 山 順 吉 ( 東 京 ) 43 壺 松 田 福 一 郎 ( 小 田 原 ) 44 壺 大 宮 伍 三 郎 ( 鎌 倉 ) 90 三 羅 漢 羅 漢 寺 ( 東 京 ) 158 俵 屋 宗 達 牡 丹 図 前 田 青 邨 ( 鎌 倉 ) 159 本 阿 弥 光 悦 俵 屋 宗 達 墨 画 巻 瀬 津 伊 之 助 ( 鎌 倉 ) 163 尾 形 光 琳 鶴 蒔 絵 硯 箱 原 良 三 郎 ( 横 浜 ) 現 地 の 批 評 に 影 響 を 与 えた 情 報 として 原 田 治 郎 が ニッポン タイムズ に 寄 せた 記 事 シアトルの 展 覧 会 に 出 品 される4 点 の 美 術 作 品 11 が 注 目 される たとえば 10 月 30 日 の シアトル タイムズ には 原 田 の 文 章 が 引 用 されており 12 同 紙 の 記 事 が 原 田 の 記 述 に 負 うところが 大 きいことが 分 かる 原 田 治 郎 は 当 時 国 立 博 物 館 の 文 部 事 務 官 で あり 英 語 が 堪 能 であったことから ニッ ポン タイムズ に 英 語 で 記 事 を 執 筆 してい たと 推 測 される 13 記 事 には シアトル 展 の 概 要 シャーマン リーの 経 歴 とリーの 日 本 美 術 に 関 する 知 識 そして 国 立 博 物 館 がシア トル 展 に 貸 し 出 す4 作 品 に 関 する 解 説 が 記 述 されている リーについては リーが GHQ の CIEに 美 術 顧 問 官 として 勤 務 した 後 充 実 した 日 本 コレクションを 有 するシアトル 美 術 館 の 副 館 長 に 迎 えられたこと 鎌 倉 美 術 に 高 い 関 心 を 持 っていること などが 紹 介 され た 4 作 品 とは 先 に 記 した 如 来 坐 像 ( 図 1) 鳥 獣 戯 画 残 闕 ( 図 2) 雪 舟 の 金 山 寺 図 単 庵 の 芦 鷺 図 ( 図 3)である これら4 点 の 作 品 を 選 んだのはリーだという 特 に 金 銅 の 如 来 坐 像 は 飛 鳥 彫 刻 の 優 品 のひとつであり 法 隆 寺 から 帝 室 コレクショ ンに 入 ったものであると 説 明 されている 作 品 解 説 も 以 下 のように 細 やかになされている この 小 像 は 口 角 に 特 徴 的 なアルカイック スマイルをたたえ 水 かきのある 大 きな 手 を して 襞 のあるドレスと 左 右 対 照 にたれさがっ たスカートを 着 用 している 穏 やかな 威 厳 が あり 中 国 の 隋 の 彫 刻 を 思 い 出 させる 7 世 紀 の 日 本 で 繁 栄 した 止 利 派 の 典 型 的 な 作 例 で ある 13

18 シアトル 美 術 館 日 本 古 美 術 展 覧 会 (1949 年 )について 志 邨 匠 子 原 田 は 博 物 館 所 蔵 の 他 の3 作 品 について も 解 説 を 書 いている 雪 舟 の 金 山 寺 図 については 金 山 寺 は 雪 舟 が 中 国 に 滞 在 して いた 時 に 訪 れた 禅 寺 であること 雪 舟 が 帰 国 した1469 年 か 翌 年 に 描 かれたこと 等 に 触 れ この 作 品 は この 偉 大 な 風 景 画 家 の 研 究 者 にとって とりわけ 技 術 的 様 式 的 な 点 にお いて 非 常 に 興 味 深 い と 述 べている 14 現 在 のところ この 出 品 作 に 同 定 される 雪 舟 作 品 は 定 かでない 15 3 点 目 の 鳥 獣 戯 画 残 闕 ( 図 2)につい ては 力 強 い 線 と 器 用 な 筆 遣 いが 特 徴 として 挙 げられている 4 点 目 の 単 庵 の 芦 鷺 図 ( 図 3)については 以 下 のように 解 説 され ている いる 部 分 を 国 立 博 物 館 の 所 蔵 作 品 で 補 い 個 人 コレクターからの 出 品 は 龍 泉 堂 の 繭 山 順 吉 の 斡 旋 によるという 17 戦 前 龍 泉 堂 は 中 国 の 古 陶 磁 を 専 門 に 扱 っていたが 繭 山 が 東 京 で CIEの 仕 事 をしていたリーに 知 り 合 い 日 本 美 術 に 興 味 を 抱 いていたリーの 影 響 で 繭 山 もリーとともに 日 本 の 古 美 術 の 勉 強 をはじめた その 後 両 者 は 信 頼 関 係 を 深 め 帰 国 後 リーはシアトル 美 術 館 のために 繭 山 から あるいは 繭 山 の 仲 介 で 日 本 美 術 作 品 を 購 入 している 18 またリーは 滞 日 時 に 古 美 術 商 の 瀬 津 伊 之 助 とも 親 交 を 結 び 19 シアトル 展 では 瀬 津 か ら 法 隆 寺 刺 繍 幡 山 水 図 本 阿 弥 光 悦 俵 屋 宗 達 の 墨 画 巻 を 借 用 している この 簡 素 な 黒 一 色 が 彼 の 技 術 を 雄 弁 に 物 語 っている もちろん このスケッチは ほ んのわずかな 筆 さばきで 描 かれているという だけではない この 絵 画 は 完 成 していて そ れ 以 上 のストロークがあふれている 鷺 の 様 子 には 年 老 いた 哲 学 者 のような 何 かがある まるで 彼 は 事 物 の 深 奥 に 入 り 込 み この 物 質 世 界 の 意 味 を 理 解 しようと 努 めているかの ようである さらに 原 田 は 以 前 に 海 外 で 開 催 された 日 本 美 術 展 覧 会 すなわち 1910 年 の 日 英 博 覧 会 1936 年 にボストン 日 本 古 美 術 展 そして 1939 年 のベルリン 日 本 古 美 術 展 に 言 及 し そ の 時 はいずれも 日 本 から 専 門 家 が 作 品 の 移 送 に 付 き 添 っていたが 今 回 は 誰 も 付 き 添 っ ておらず それは 新 しい 日 本 からアメリカに 対 する 信 頼 と 親 善 のあらわれとみることがで きるのではないか と 述 べている 最 後 に 博 物 館 所 蔵 とは 別 に 日 本 からシアトル 展 に 送 られた 作 品 として 前 田 青 邨 蔵 の 俵 屋 宗 達 牡 丹 図 繭 山 順 吉 蔵 の 過 去 現 在 因 果 経 と 駿 牛 図 原 コレクション 松 田 コレ クション 16 について 触 れられている 翌 年 の 座 談 会 で 原 田 が 語 ったところによれ ば シアトル 美 術 館 のコレクションに 欠 けて 3 リーの 日 本 美 術 観 展 覧 会 冊 子 の 冒 頭 は 以 下 の 文 章 ではじまっ ている 文 章 には 筆 者 が 記 されていないが 展 覧 会 を 企 画 したリーが 書 いたものと 判 断 し て 良 いだろう 日 本 美 術 は しばしば 中 国 美 術 の 不 十 分 な 反 映 であると 言 われてきた この 展 覧 会 の 目 的 は その 反 対 であること そして 世 界 の 美 術 に 対 する 日 本 独 自 の 貢 献 を 示 すことであ る 中 国 スタイルは 二 つの 大 きな 影 響 の 波 すなわち 飛 鳥 奈 良 時 代 と 足 利 時 代 において 支 配 的 であった 実 は 初 期 中 国 美 術 の 研 究 は 日 本 に 残 されているこの 貴 重 な 遺 物 なし には 不 可 能 である それ 以 外 の 時 代 の 日 本 美 術 は 独 創 的 で 日 本 固 有 のアプローチを 示 し 日 本 を 代 表 する 重 要 な 美 術 表 現 のひとつとなっ た 日 本 は 木 彫 絵 巻 物 装 飾 的 な 屏 風 漆 工 の 分 野 において 覇 権 を 握 っていると 言 わ れている 20 以 上 のように リーは この 展 覧 会 によっ て まずアメリカ 人 に 日 本 美 術 は 中 国 美 術 の 単 なる 模 倣 ではないこと そして 日 本 美 術 の 独 自 性 を 認 識 させることに 主 眼 をおいてい た 翻 って 言 えば 1949 年 の 時 点 で 日 本 美 14

19 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 術 の 特 質 は アメリカ 西 海 岸 においては 浸 透 していなかったことを 示 している だからこ そ この 展 覧 会 は 古 墳 時 代 の 埴 輪 から19 世 紀 初 頭 までを 概 観 (survey) する 構 成 と なっていた 21 この 意 味 で 最 も 古 い 出 品 作 品 が 埴 輪 で あったことは 興 味 深 い なぜなら 1951 年 の サンフランシスコ 日 本 古 美 術 展 にも 埴 輪 が 4 点 出 品 されており その 際 日 本 側 は こ れらの 埴 輪 を 仏 教 の 影 響 を 受 ける 以 前 の 日 本 の 土 着 性 を 示 す 造 形 として 出 品 し 英 文 カ タログにもそのことが 明 記 されていたからで ある 22 一 方 リーは この 展 覧 会 を 企 画 した 時 点 では 埴 輪 によって 日 本 美 術 の 固 有 性 を 見 せようとしたのではく むしろ その 造 形 に 漢 と 東 南 アジアとの 類 似 性 を 見 ていた 23 しかし 1964 年 に 著 した 大 著 AHistoryof FarEasternArtにおいて リーは 埴 輪 は 完 全 に 土 着 の 様 式 で 大 陸 の 副 葬 小 像 とは 根 本 的 に 異 なっている と 述 べ 中 国 美 術 との 違 いを 明 確 に 論 じている 24 どの 時 点 でリー が 見 解 を 変 えたのは 定 かではないが サンフ ランシスコ 日 本 古 美 術 展 において 日 本 が 示 し た 論 点 が リーに 影 響 を 与 えた 可 能 性 も 否 定 できない 25 またリーがこの 展 覧 会 の 出 品 作 品 を19 世 紀 初 頭 までとしたのは 明 治 以 降 日 本 美 術 は 凋 落 し 今 日 最 も 将 来 を 嘱 望 されている 芸 術 家 は 近 代 西 洋 のスタイルで 仕 事 をし とりわけフランス 美 術 の 影 響 を 受 けている 26 と 考 えたからであった したがって リーの 考 える 日 本 美 術 の 固 有 性 とは 平 安 鎌 倉 桃 山 江 戸 時 代 に 見 出 せると 言 えるだろう ではリーは 日 本 美 術 の 固 有 性 を 具 体 的 に はどのように 見 ていたのだろうか この 点 に ついて 展 覧 会 冊 子 の 載 せられた 解 説 の 中 で 特 に 日 本 的 な 要 素 が 述 べられている 部 分 を 抜 粋 し 以 下 に 要 約 する 神 道 は 日 本 固 有 のアニミズム 崇 拝 であり この 展 覧 会 では 作 品 番 号 34の 熊 野 曼 荼 羅 に 表 現 されている 貞 観 時 代 には とくに 木 彫 ( 作 品 番 号 11)において 日 本 独 自 のスタイ ルが 発 展 し 貴 族 的 な 洗 練 さが 際 立 つ 藤 原 時 代 には ほぼ 全 ての 分 野 おいて 見 事 な 日 本 的 表 現 が 見 られる 続 く 鎌 倉 時 代 は 露 骨 なミリ タリズムとプラグマティズムの 時 代 で 写 実 的 で 力 強 い 表 現 を 見 出 すことができる その 新 しい 精 神 は 四 天 王 像 ( 作 品 番 号 35)など に 見 られる しかし 鎌 倉 時 代 の 最 も 偉 大 な 表 現 は 大 和 絵 である 大 和 絵 は 露 骨 な 現 実 性 を 有 している 点 において 特 に 日 本 的 であ り より 一 般 的 な 中 国 の 人 物 画 とは 対 照 的 で ある この 展 覧 会 では アメリカではこれま で 紹 介 されたことがない 大 和 絵 の 完 成 され た 流 れを 展 示 している 初 期 の 宗 教 的 なもの ( 作 品 番 号 16 22)から 古 典 的 な 物 語 絵 ( 作 品 番 号 23 24) そして 土 佐 派 への 移 行 を 示 すもの( 作 品 番 号 25 65)である 足 利 時 代 は 宋 の 水 墨 画 の 影 響 が 強 いが 周 文 雪 舟 の 時 代 の 後 そのスタイルは 日 本 的 になり 狩 野 派 が 起 こる 狩 野 派 は 注 文 によって 水 墨 画 と 着 彩 画 の 両 方 を 描 いた 土 佐 派 は 大 和 絵 の 伝 統 を 引 き 継 ぐが 自 由 で 活 気 のある 装 飾 的 な 様 式 に 影 響 を 受 けた しかし 最 も 偉 大 な 装 飾 グループは 宗 達 光 悦 光 琳 乾 山 らである 軸 であろうと 屏 風 であろうと 漆 塗 りの 箱 であろうと 彼 らの 作 品 は 洗 練 されたデザインを 示 し 道 具 や 物 として 適 切 に 使 用 される 瀬 戸 焼 は 日 本 の 最 も 古 い 炻 器 で 西 洋 で 展 示 されるのは 今 回 が 始 めてで ある 大 きな 壷 は 特 に 素 晴 らしく 中 国 から の 影 響 を 受 けているが 左 右 非 対 称 である 点 や 自 然 な 表 現 は 全 く 日 本 的 なものである 27 以 上 のように リーが この 展 覧 会 におい て 日 本 美 術 の 固 有 性 が 顕 著 な 例 として 特 筆 し たのは 貞 観 彫 刻 鎌 倉 時 代 の 絵 巻 琳 派 瀬 戸 焼 であった 4 評 価 現 地 では 博 物 館 から 出 品 された 飛 鳥 時 代 の 如 来 座 像 が 注 目 を 集 めた 前 述 のよう に 10 月 30 日 の シアトル タイムズ が ニッポン タイムズ の 原 田 の 記 事 を 一 部 15

20 シアトル 美 術 館 日 本 古 美 術 展 覧 会 (1949 年 )について 志 邨 匠 子 引 用 した 他 10 月 24 日 の 同 紙 にも この 作 品 が7 世 紀 の 作 例 で 元 皇 室 コレクションであっ たこと 等 が 紹 介 され 28 シャーマン リーと シアトル 美 術 館 学 芸 員 のケネス キャラハン (KennethCallahan, )が 如 来 坐 像 を 手 にしている 写 真 が 掲 載 されている ( 図 4) さらに11 月 13 日 の 同 紙 にも キャラ ハンが この 像 について たいへん 美 しいブ ロンズ 彫 刻 であるばかりでなく 非 常 に 稀 少 で 初 期 日 本 美 術 史 において 重 要 な 作 品 である と 記 している 29 つまり シアトル タイム ズ は 展 覧 会 の 予 告 も 含 めて 三 度 にわたっ て 如 来 坐 像 について 報 道 したことになる いずれも 原 田 の 記 事 に 依 拠 したものだが この 展 覧 会 で 話 題 になった 作 品 のひとつだと 言 えるだろう その 他 では 鳥 獣 戯 画 残 闕 が10 月 24 日 シアトル タイムズ において 世 界 で 最 も 有 名 なユーモラスな 絵 画 のひとつ として 紹 介 され 月 30 日 の 同 紙 でも 重 要 な 作 品 と 評 されている 31 ケネス キャラハンはまた 日 本 美 術 の 装 飾 性 に 着 目 し シアトル タイムズ に DecorativeJapanArtsatMuseum と 題 す る 記 事 を 寄 せ 日 本 美 術 の 特 徴 のひとつは 初 期 から 現 在 に 至 るまで その 装 飾 性 にある 現 在 シア トル 美 術 館 で 開 催 されている 注 目 すべき 総 合 的 な 日 本 美 術 展 においても それは 顕 著 であ る 日 本 美 術 は ほとんど 常 に 装 飾 性 と 関 係 している 形 状 と 機 能 から 切 り 離 された 装 飾 のための 装 飾 であることはほとんどない それは 屏 風 版 画 陶 磁 器 の 皿 漆 の 箱 刀 彫 刻 などに 見 出 される 日 本 の 文 明 は 過 去 1500 年 にわたって 発 展 してきたが 美 術 は 徐 々に 装 飾 的 になり それに 呼 応 して 活 気 が 失 われ 19 世 紀 に 至 って 時 に 全 体 の 調 和 よりも 表 面 に 関 心 を 払 い 細 部 の 仕 上 げに 集 中 するようになった 32 と 述 べている 特 にキャラハンが 言 及 したの は 世 紀 の 工 芸 で 陶 磁 器 では 乾 山 の 菓 子 器 にみられるような 自 由 に 絵 付 けさ れたシンプルな 形 状 の 陶 器 や 鍋 島 の 皿 のよ うな 正 確 で 洗 練 されたデザインの 磁 器 である 漆 工 では 光 琳 の 蒔 絵 硯 箱 屏 風 では 金 地 の 屏 風 をあげている キャラハンは 画 家 でもあり ギイ アンダー ソン(GuyAnderson) やマーク トビー (MarkTobey) モリス グレイヴス(Morris Graves) とともに 北 西 派 (Northwest School)を 牽 引 した 33 グレイヴスとトビー が 仏 教 や 禅 日 本 美 術 に 関 心 があったこと はよく 知 られているが キャラハンが 彼 らと 親 交 を 持 っていたことは 彼 もまた 日 本 美 術 に 意 識 的 であった 可 能 性 を 示 唆 している し かし キャラハンの 日 本 美 術 への 関 心 が 山 水 画 や 絵 巻 よりもむしろ 装 飾 やデザインに あったことは 水 墨 表 現 や 書 に 影 響 を 受 けた トビーやグレイヴスとは 日 本 美 術 への 関 心 においては 一 線 を 画 していたと 言 えよう フランシス ハッベルも シアトル 展 では 多 くの 日 本 の 画 家 達 の 装 飾 的 な 絵 画 が 色 々 のスタイルの 作 品 を 通 して 表 示 された と 述 べ 浮 世 絵 と 大 津 絵 に 言 及 し 特 に 大 津 絵 の 評 判 がよかったと 報 告 している 34 西 欧 においては 一 般 的 に 日 本 美 術 はジャ ポニスム 的 な 価 値 観 から 装 飾 性 において 評 価 されてきた 古 美 術 に 限 らず 明 治 期 の 日 本 画 も アメリカでは 装 飾 性 において 評 価 さ れた しかしこの 装 飾 性 は 量 感 も 遠 近 感 も ないフラットな 色 面 であるという 意 味 がこめ られ したがって 装 飾 性 において 評 価 された 日 本 画 は 西 洋 絵 画 と 同 等 の 価 値 観 から 捉 え られていたわけではない 35 キャラハンの 批 評 に 活 気 が 失 われた 全 体 の 調 和 よりも 表 面 に 関 心 を 払 い 細 部 の 仕 上 げに 集 中 する など 否 定 的 な 表 現 が 含 まれるのは 彼 もま た 装 飾 性 を 西 洋 美 術 の 価 値 観 からは 一 段 劣 ったものとして 捉 えていることを 示 して いる 前 述 のように シャーマン リーも 琳 派 16

21 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 にみられる 装 飾 性 に 日 本 美 術 の 固 有 性 を 認 め ていたが リーは 装 飾 性 にのみ 固 執 していた わけではなかった たとえばリーは 絵 巻 に 日 本 美 術 の 独 自 性 として 力 強 さや 大 胆 さを 挙 げ それらを 中 国 美 術 との 対 比 で 捉 えてい る 36 そしてリーは シアトル 展 において 日 本 美 術 の 総 体 を 紹 介 し 中 国 美 術 とは 異 な る 日 本 美 術 の 固 有 性 を 示 そうとした 一 方 シアトル 展 と 同 じ1949 年 に アメリ カでは 雪 舟 展 が 計 画 されていた ダグラス マッカーサーが 支 援 を 約 束 し パール バッ クやヘレン ケラー ジョン デューイらを 開 催 委 員 に 含 む 大 掛 かりな 計 画 であったが 結 局 実 現 はしなかった 理 由 のひとつは 雪 舟 のような 渋 い 作 品 には 教 養 の 高 いわず かの 人 しか 興 味 を 示 さないだろう というも のであり その 代 わりに 奈 良 時 代 から 現 存 作 家 までを 扱 う 日 本 美 術 展 を 構 想 すべきだ との 意 見 があった 37 この 意 味 で シアトル 展 は 当 時 のアメリカ 人 の 日 本 美 術 受 容 の 問 題 をふまえたものであったと 言 える 1951 年 のサンフランシスコ 日 本 古 美 術 展 に おいても 日 本 の 古 美 術 の 豊 かさを 示 したい という 意 向 から 古 墳 時 代 から 近 世 までの 絵 画 彫 刻 工 芸 を 含 む 総 合 的 な 展 示 がおこな われた 展 示 を 企 画 したデ ヤング 美 術 館 の ウォルター ハイル(WalterHeil)は 同 展 覧 会 のカタログにおいて アメリカ 人 は 日 本 美 術 についての 知 識 が 乏 しいと 述 べ その 原 因 として アメリカ 人 の 極 東 美 術 への 関 心 がもっぱら 中 国 に 向 けられていたために 日 本 人 が 固 有 の 美 術 を 創 造 してきたことを 見 逃 してきたことをあげている 38 つまりハイル の 指 摘 は 2 年 前 にリーが 主 張 した 内 容 の 繰 り 返 しであった ハイルがリーの 主 張 を 意 識 したのか あるいはサンフランシスコ 展 にお いても リーの 意 向 が 反 映 されたのかもしれ ない 原 田 治 郎 は サンフランシスコ 展 の 日 本 側 の 担 当 者 であり 作 品 選 択 はほぼ 日 本 側 に 委 ねられていた したがって 原 田 にはシ アトル 展 の 展 示 構 成 が 念 頭 にあったとも 考 え られる 1953 年 のアメリカ 巡 回 日 本 古 美 術 展 は ロックフェラー 三 世 がサンフランシスコ 展 を 観 覧 し 自 らが 発 起 人 となって 開 催 され た 39 またリー 自 身 がアメリカ 巡 回 展 の 作 品 選 定 に 深 く 関 わったことを 考 えれば 40 シア トル 展 は 戦 後 のアメリカにおける 日 本 古 美 術 展 覧 会 の 先 駆 的 な 意 味 をもっていたと 言 え る 1 拙 論 シャーマン リーと 日 本 美 術 ( 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 1 号 2014 年 3 月 頁 )において 稿 者 は 国 立 博 物 館 ニュース の シアトルで 大 規 模 な 日 本 美 術 総 合 展 開 かる ( 第 34 号 1950 年 3 月 1 日 3 頁 )を 参 照 し 本 展 の 開 催 期 間 を11 月 8 日 から12 月 5 日 までと 記 した が シアトル 美 術 館 の 年 報 (AnnualReportofthe ArtMuseum,SeatleArtMuseum,1949,p.35)には 11 月 9 日 から12 月 4 日 と 記 載 されている また 現 地 の 新 聞 には 11 月 9 日 に 関 係 者 を 招 待 したプレ ヴューが 開 かれ 10 日 から 一 般 公 開 されると 報 じ られている (SuzanneMartin, AncientJapanese Art Treasures Shown Here, Seatle Post- Inteligencer, Nov.1,1949; ArtMuseum Plans Show, SeatlePost-Inteligencer,Nov.6,1949.)ま た 本 展 で 使 用 されたギャラリーの 数 についても 新 聞 によって 異 なるが ここではシャーマン リー の 記 述 に 従 った ShermanE.Lee, JapaneseArtat Seatle, OrientalArt,vol.2,no.3,winter, , p WarenI.Cohen,EastAsianandAmericanCulture: AStudy ininternationalrelations,new York: ColumbiaUniversityPres,1992,pp リーよりプラマー(JamesM.Plumer) 宛 書 簡 1948 年 1 月 30 日 ( 国 立 国 会 図 書 館 憲 政 資 料 室 所 蔵 GHQ/SCAP 文 書 請 求 番 号 CIE(C)5316) ;Mary AnnRogers, ShermanE.Lee, Orientations,vol.24, no.7,jul.1993,p フランシス ハッベル シアトルの 日 本 美 術 展 三 彩 50 号 1951 年 1 月 25 頁 5 ASurveyofJapaneseArt,Nov.1949,TheSeatle ArtMuseum. 6 シアトルで 大 規 模 な 日 本 美 術 総 合 展 開 かる ( 前 掲 ) 17

22 シアトル 美 術 館 日 本 古 美 術 展 覧 会 (1949 年 )について 志 邨 匠 子 7 ASurveyofJapaneseArt,Nov.1949,op.cit.,p SuzanneMartin, AncientJapaneseArtTreasures ShownHere, art.cit. 9 Ibid.;ASurveyofJapaneseArt,Nov.1949,op.cit., p.11; シアトルで 大 規 模 な 日 本 美 術 総 合 展 開 か る ( 前 掲 ) 10 展 覧 会 冊 子 ASurveyofJapaneseArt,Nov.1949, TheSeatleArtMuseumに 拠 る シャーマン リー と 日 本 美 術 ( 前 掲 )において 稿 者 は シアト ルで 大 規 模 な 日 本 美 術 総 合 展 開 かる ( 前 掲 )と シヤトル 博 物 館 にゆく 美 術 品 ( 国 立 博 物 館 ニュー ス 第 29 号 1949 年 10 月 1 日 2 頁 )を 参 考 に 日 本 からの 出 品 作 品 を 列 挙 したが それらは 一 部 展 覧 会 冊 子 の 主 要 出 品 作 品 リストと 異 なっている 本 稿 では 展 覧 会 冊 子 のリストを 参 考 にし 前 論 文 を 訂 正 する 11 JiroHarada, FourChoiceWorksofArttogoto SeatleExhibit, NipponTimes,Sep.29, MuseumtoExhibitRareJapaneseArt, Seatle Times,Oct.30, 原 田 治 郎 については 片 平 幸 欧 米 における 日 本 庭 園 像 の 形 成 と 原 田 治 郎 の TheGardensof Japan ( 日 本 研 究 第 34 集 2007 年 3 月 頁 )に 詳 しい 14 JiroHarada, FourChoiceWorksofArttogoto SeatleExhibit, art.cit. 15 現 在 東 京 国 立 博 物 館 に 所 蔵 されている 以 下 の 模 本 2 点 が その 可 能 性 としてあげられる もし 2であれば 金 山 寺 1 幅 のみを 出 品 したこと になる 1 雪 舟 ( 守 保 ) 金 山 寺 図 1 枚 紙 本 淡 彩 cm 2 雪 舟 ( 狩 野 栄 川 ) 育 王 山 金 山 寺 図 2 幅 紙 本 淡 彩 cm ( 東 京 国 立 博 物 館 編 収 蔵 品 目 録 ( 絵 画 書 跡 彫 刻 建 築 ) 1976 年 2 月 292 頁 ) 16 原 田 は themasudacolectionofodawara と 記 し 益 田 孝 のコレクションと 考 えたようだが シアトル 美 術 館 の 展 覧 会 冊 子 の 作 品 番 号 43には F.Matsuda,Odawara と 記 載 されている 茶 わん 誌 上 の 座 談 会 で 出 品 者 として 松 田 福 一 郎 が 出 席 しており 所 蔵 者 は 松 田 と 考 えて 良 いだろ う 座 談 会 シアトル 展 覧 会 を 語 る 茶 わん 第 20 巻 第 3 号 1950 年 5 月 頁 17 座 談 会 シアトル 展 覧 会 を 語 る ( 同 上 )67 頁 18 シャーマン リー 共 に 学 びし 朋 友 - 繭 山 順 吉 と 私 - 陶 説 第 561 号 1999 年 12 月 頁 19 シャーマン リー 回 想 日 本 であった 友 人 た ち 別 冊 太 陽 21 号 1977 年 11 月 62 頁 20 ASurveyofJapaneseArt,Nov.1949,op.cit.,p [ 作 品 番 号 1] 男 の 頭 部 (シアトル 美 術 館 蔵 ) は 当 時 の 写 真 が 残 されていないため 同 定 できな い 22 ArtTreasures from Japan.A SpecialLoan ExhibitioninCommemorationoftheSigningofthe PeaceTreatyinSanFrancisco,September1951,M. H.DeYoungMemorialMuseum,1951,np, 拙 論 サンフランシスコ 日 本 古 美 術 展 覧 会 (1951 年 ) と 冷 戦 下 の 日 米 文 化 外 交 多 摩 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 27 号 2013 年 3 月 頁 23 ShermanE.Lee, JapaneseArtatSeatle, art.cit., p ShermanLee,AHistoryofFarEasternArt,London: ThamesandHudson,1964(1978),pp リーは 1951 年 のサンフランシスコ 日 本 古 美 術 展 に 際 して 会 場 となったデ ヤング 美 術 館 にお いて 日 本 美 術 の 創 造 性 および 鎌 倉 時 代 の 日 本 美 術 と 題 する 講 演 を2 日 間 にわたっておこ なっており 同 展 覧 会 に 関 与 していたことがわかっ ている 文 化 財 保 護 委 員 会 編 桑 港 日 本 古 美 術 展 覧 会 文 化 財 保 護 委 員 会 1952 年 36 頁 26 ASurveyofJapaneseArt,Nov.1949,op.cit.,p Ibid.,pp MuseumtoExhibitJapanArtTreasures, Seatle Times,Oct.24, KennethCalahan, JapanArtHistoryShownatM useum, SeatleTimes,Nov.13, MuseumtoExhibitJapanArtTreasures, art.cit. 31 MuseumtoExhibitRareJapaneseArt, art.cit. 32 Kenneth Calahan, DecorativeJapan Artsat Museum, SeatleTimes,Nov.27, ThomasOrton, KennethCalahan, inkenneth Calahan(exh.cat.),MuseumofNorthwestArt,2001, pp

23 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 34 フランシス ハッベル シアトルの 日 本 美 術 展 ( 前 掲 )27 頁 35 拙 論 日 本 画 の 装 飾 性 をめぐるいくつかの 立 場 - セントルイス 万 博 における 日 本 画 論 を 中 心 に- 女 子 美 術 大 学 紀 要 第 29 号 1999 年 3 月 頁 36 ShermanE.Lee, SevenEarlyJapanesePaintings, ArtQuarterly,vol.12,no.4,autumn,1949,pp 拙 論 一 九 四 九 年 の 雪 舟 展 計 画 近 代 画 説 第 23 号 2014 年 12 月 頁 38 WalterHeil,ForewordinArtTreasuresfromJapan, ASpecialLoanExhibitioninCommemorationofthe Signing ofthepeacetreatyinsan Francisco, September1951,op.cit.,np, 拙 論 サンフランシス コ 日 本 古 美 術 展 覧 会 (1951 年 )と 冷 戦 下 の 日 米 文 化 外 交 ( 前 掲 )88 頁 39 森 田 孝 展 覧 会 の 一 般 経 過 について アメリ カ 巡 回 日 本 古 美 術 展 覧 会 報 告 書 文 化 財 保 護 委 員 会 編 集 発 行 1954 年 4 頁 40 WarenI.Cohen,EastAsianandAmericanCulture, 図 1 如 来 坐 像 東 京 国 立 博 物 館 ( 画 像 提 供 : 東 京 国 立 博 物 館 ) 図 2 鳥 獣 戯 画 残 闕 東 京 国 立 博 物 館 ( 画 像 提 供 : 東 京 国 立 博 物 館 ) op.cit.,p.141. * 本 研 究 は JSPS 科 研 費 の 助 成 を 受 け ている 図 3 単 庵 芦 鷺 図 東 京 国 立 博 物 館 ( 画 像 提 供 : 東 京 国 立 博 物 館 ) 図 4 ケネス キャラハン( 左 )とシャーマン リー( MuseumtoExhibitJapanArtTreasures, SeattleTimes,Oct.24,1949) 19

24 シアトル 美 術 館 日 本 古 美 術 展 覧 会 (1949 年 )について 志 邨 匠 子 20

25 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 21

26 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 'educate'の 語 源 解 釈 におけるイギリス ロマン 主 義 の 思 想 的 影 響 S.T.コールリッジによる 教 育 の 定 義 と OED 池 亀 直 子 1 2 髙 梨 誠 教 育 の 定 義 をめぐっては 英 語 の educationや educateの 語 源 としてラテン 語 の 名 詞 educatio が 取 り 上 げられ この 語 に 引 き 出 す の 意 味 があることを 理 由 として 教 育 とは 生 徒 や 学 生 の 個 性 や 能 力 を 引 き 出 すことである とする 教 育 言 説 が 散 見 される しかし educatioの 動 詞 形 である educareの 意 味 は 育 てる であって 引 き 出 す ではなく 引 き 出 す の 意 味 を 持 っているのは 英 語 educeの 語 源 であるラテン 語 の 動 詞 形 educereである こうした 異 なる 意 味 を 持 つ 二 つの 語 の 混 同 には 二 つの 語 が 類 似 していたことに 加 え 19 世 紀 のイギリスで OEDの 編 纂 が 行 われた 黎 明 期 に 教 育 を 引 き 出 すこと(educing) と 定 義 づけたロマン 派 の 詩 人 サミュエル テイラー コールリッ ジの 思 想 が 影 響 していると 考 えられる コールリッジはアンドリュー ベルによって 提 唱 された 教 育 システム(モニトリアル システム)に 対 する 支 持 を 表 明 する 過 程 で 宗 教 教 育 とモラルの 育 成 を 重 視 し 教 育 を 人 間 精 神 の 能 力 を 引 き 出 すこと と 定 義 づけ この 定 義 は OEDの 用 例 に 採 用 され ている educate(education)と educe(educing)を 結 びつけた 教 育 の 定 義 は19 世 紀 後 半 から20 世 紀 以 降 の 教 育 関 係 者 に 思 想 的 な 影 響 力 を 持 ったが これに 伴 って educateと educeの 語 源 となる educareと educereの 意 味 を 混 在 させた 解 釈 が 成 立 していくこととなり こうした 語 源 解 釈 は 今 日 の 教 育 言 説 にも 影 響 を 及 ぼしていると 考 えられる キーワード:ロマン 主 義 コールリッジ 語 源 学 OED 教 育 AnInfluenceoftheBritishRomanticism ontheetymologicalanalysisoftheword'educate': TheDefinitionof'education'byS.T.ColeridgeandtheOED IKEGAMENaokoandTAKANASHIMakoto Itisoftenmentionedthatthetrueeducationconsistsnotincrammingknowledgeintochildrenbutin drawingforthabilitiesortalentsfromtheinsideofthembecausetheword'educate'comesfromalatinword whichmeans'todrawforth'.however,theword'educate'isfromthelatin'educare',whichdoesnothavethe 1 秋 田 公 立 美 術 大 学 2 日 本 西 洋 古 典 学 会 員 23

27 'educate'の 語 源 解 釈 におけるイギリス ロマン 主 義 の 思 想 的 影 響 池 亀 直 子 髙 梨 誠 meaning'todrawforth'.inlatinitcorespondsto'educere',theoriginof'educe'inenglish.thisconfusion mighthavebeencausedfromtheresemblanceofthesewords,andthenotion'educationasdrawingforth (educing)'mightbeoriginatedinmoderntimessincewedidnothavetheconceptslikelatentabilitiesortalents tobedrawnforthinancientandmedievaltimes.fromthedescriptionsof'educate'and'educe'intheoed, publishedinthenineteenthcentury,wecanfindthatitiss.t.coleridge,abritishromanticpoet,whorelated thesewordsinordertoexpreshisownthoughtthat'educationconsistsineducingfacultiesofhumanmind'.he owedittoandrewbel,whoadvocated'educationaselicitingemulationordesireofexcelence'inhis 'monitorialsystem'.coleridgechangedtheword'eliciting'ofthephraseinto'educing'anduseditwithspecial meaningstoexpreshisthoughtonreligiouseducationandcultivationofmoralcharacterinhisbooksand lectures.sincethenthephrase'educationaseducing'hasbeenmentionedbyteachersandscholarsofpedagogy asabasisoftheirthought,sometimeswithinaccurateetymologicalanalysis. Keywords:Romanticism,S.T.Coleridge,Etymology,OED,thedefinitionofEducation はじめに educateや educationという 英 語 と その 語 源 を 交 えて 教 育 問 題 を 論 ずる 言 説 を 私 たちはしばしば 目 にする 1 そのような 言 説 は おおむね 次 のような 内 容 である educationの 語 源 は ラテン 語 名 詞 educatio である 2 この 名 詞 の 動 詞 形 educareは e- ( ~の 外 へ )と ducare( ~を 引 き 出 す ) に 分 解 できる 3 ここから 理 解 できるのは 教 育 とは 本 来 生 徒 や 学 生 が 持 っている 能 力 あるいは 個 性 を 外 に 引 き 出 す 営 みであっ て 知 識 を 詰 め 込 んだり 規 則 で 個 性 を 押 さえ つけたりする 行 為 は 教 育 の 本 来 の 姿 ではない 確 かに 外 に 引 き 出 す 営 みとしての 教 育 という 言 説 は 一 見 すると 真 実 らしい しか し その 根 拠 となっている 語 源 分 析 には 二 つの 問 題 があると 考 えられる 一 つは educateや educationの 語 源 として 挙 げられたラテン 語 についての 説 明 である 確 かに 名 詞 educatioは 動 詞 educareの 完 了 分 詞 educatumから 生 成 されたものである しかし ~を 引 き 出 す という 語 義 をもつ という*ducareという 動 詞 は ラテン 語 では 確 認 できない ラテン 語 でこの 語 義 をもつの は ducereであるが この 語 から 名 詞 educatio は 生 成 されない 4 つまり この 言 説 の 語 源 分 析 では 異 なる 二 つの 動 詞 educareと educereが 混 同 されているのである 教 育 学 者 森 昭 は 次 のように 指 摘 している 5 ラテン 語 の "educatio"の 語 源 は エドゥ カーレ (educare)であって これは 子 供 を 育 てる という 意 味 であったとい う これに 対 して 引 き 出 す を 意 味 す るラテン 語 は エドゥケーレ (educere) であった このように 語 源 が 引 き 出 す と 似 ていたので エドゥカツィオ も やがて 引 き 出 すという 意 味 を 帯 びてきた のであろう もう 一 つの 問 題 は 引 き 出 す 対 象 ( 目 的 語 )となっている 個 性 能 力 といっ た 概 念 が ラテン 語 動 詞 とは 何 の 関 係 をもっ ていない 点 である これも 森 がすでに 指 摘 し ているように 6 人 間 に 潜 在 するものとして の 個 性 能 力 という 概 念 は ラテン 語 が 主 として 用 いられていた 古 代 や 中 世 には 存 在 せず この 説 明 が 近 代 以 降 になされたこと も 明 らかであろう このような 問 題 をはらんでいるとはいえ この 語 源 を 根 拠 とした 引 き 出 す 営 みと しての 教 育 という 言 説 は 日 本 以 外 でも 幅 広 く 見 られ 一 定 の 説 得 力 をもって 受 け 入 れら 24

28 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 れている 7 しかし この 言 説 がいったい どのような 過 程 を 経 て 形 成 され 受 容 されてき たかについては 明 らかになっていない 問 題 となった 英 語 educateの 語 源 の 記 述 語 源 とされた 二 つのラテン 語 動 詞 そして このような 語 源 解 釈 の 経 緯 について 検 討 を 進 めてみると 実 際 イギリスにおいてまず 二 つの 英 語 の 動 詞 が 関 連 づけられ 教 育 が 引 き 出 す 営 み として 定 義 されて 論 じられてい ること そしてそれを 受 けて 二 つのラテン 語 の 動 詞 が 関 連 づけられて 語 源 として 説 明 されていること また 引 き 出 す 営 みとし て 教 育 という 言 説 が 内 容 の 変 遷 を 伴 いな がら 繰 り 返 し 論 じられていることがわかる 本 稿 では まずこの 言 説 の 語 源 解 釈 につい て 検 討 する 英 語 educateの 語 源 について オックスフォード 英 語 辞 典 (TheOxford EnglishDictionary: 以 下 OED)の 記 述 を 取 り 上 げてその 内 容 を 確 認 し 語 源 とされ た 二 つのラテン 語 動 詞 について それらの 用 法 と 関 連 性 を 検 討 する そして OEDにあ る 引 用 文 から 引 き 出 す 営 み の 根 拠 となる 語 源 解 釈 がなされた 経 緯 について 考 察 する そのうえで 引 き 出 す 営 みとして 教 育 という 言 説 そのものがいかにして 形 成 された のか その 背 景 と 後 代 の 受 容 の 様 相 について 考 えてみたい Educate(e dju keit),v.[f.l.e - ducppl.stem ofe - duca - retorear,bringup (children,younganimals) ここから この 動 詞 がラテン 語 educareの 完 了 分 詞 educatum の 語 幹 educat-から 形 成 されており educateの 語 源 となったラテン 語 動 詞 は educereではなく educareだと 考 えられていることが 確 認 できる だが 注 目 に 値 するのは この 直 後 に 次 のような 記 述 が 続 いていることである ^ relatedtoe - du - ce re(seeeduce),which issometimesusednearlyinthesamesense.] ここで 重 要 なのは educareとは 異 なる 動 詞 であり 直 接 の 語 源 とはされていないにも かかわらず 動 詞 educereが educareに 関 連 づけ られ 時 にほぼ 同 義 で 用 いられる ことがある と 説 明 されている 点 である また このラテン 語 動 詞 に 英 語 動 詞 educeへの 参 照 指 示 が 付 されている 英 語 動 詞 educeは ~を 引 き 出 す という 語 義 をも つ 動 詞 であるが educateとは 異 なる 語 であ り ~を 教 育 する という 語 義 はない educeの 項 には その 語 源 について 次 のよう に 記 されている 1 OEDに 見 る educationの 語 源 ここでまず 引 き 出 す 営 みとしての 教 育 言 説 での 語 源 解 釈 の 問 題 について 英 語 名 詞 educationと 動 詞 educateの 語 源 がどのように 説 明 されているか OEDの 記 述 をもとに 確 認 しておきたい 8 OED( 第 1 版 )における 名 詞 educationの 項 には 動 詞 educateへの 参 照 が 指 示 されて いる そして 動 詞 educateの 項 では 語 源 と なったラテン 語 とその 構 成 について 次 のよ うに 記 述 されている 9 ^ ^ Educe(e diu -.s)[ad.l.e - du - ce re, f.e - out ^ +duce re( tolead).] ここに 記 述 されているのは educeの 語 源 となったラテン 語 動 詞 educereの 構 成 である educereは ~から を 意 味 する 接 頭 辞 e-と ~を 導 く という 意 味 の ducereから 形 成 さ れている とされているが ここで 容 易 に 気 づくのは この educeでの 記 述 が 引 き 出 す 営 みとして 教 育 言 説 における educateの 語 源 分 析 とほぼ 一 致 していることである こ こでは 単 なる 形 態 の 類 似 性 からではなく educeを 介 して educateの 語 源 educareと educereが 関 係 づけられていることになるが 25

29 'educate'の 語 源 解 釈 におけるイギリス ロマン 主 義 の 思 想 的 影 響 池 亀 直 子 髙 梨 誠 この 記 述 が 混 乱 の 要 因 となっている 可 能 性 も 考 えられよう ただこの 記 述 には 異 なる 動 詞 である educareと educereが ほぼ 同 義 で 用 いられ ることがある という 関 連 の 内 容 につい ては それ 以 上 の 説 明 がなく 明 確 ではない あるいは educareと educereは 本 来 同 一 の 動 詞 であると 考 えられるのだろうか それと も educereもまた educateの 語 源 と 認 められ る 程 度 の 強 い 関 連 性 があるのだろうか 2 ラテン 語 動 詞 educareと educereが 同 義 となる 条 件 ここで educareと educereの 形 態 語 義 用 法 について 確 認 してみよう 確 かに この 二 つの 動 詞 の 間 には 一 定 程 度 の 関 係 があるともいえる まず 双 方 とも に ラテン 語 辞 典 において 見 出 しとなる 直 説 法 1 人 称 単 数 現 在 形 が educoとなるよ うに 形 態 がよく 似 ている また 辞 典 によっ ては educareの 項 に 語 根 (*duc-)が 共 通 し ている 可 能 性 があることが 記 述 されている 10 それぞれの 語 義 と 用 例 を 確 認 すると まず educareは ( 子 ども 動 物 植 物 など)を 養 育 する という 語 義 で 用 いられるが ~ を 引 き 出 す という 語 義 で 用 いられた 例 は 見 られない 他 方 educereは ~を 引 き 出 す という 語 義 を 中 心 として 用 いられているが それとともに ~を 養 育 する という 語 義 も 確 かに 見 られ その 用 例 も 複 数 確 認 できる 11 では どういった 場 合 に OEDにあるような 同 義 となるのだろうか ここで それぞれの 用 例 を 検 討 すると educereが ~を 養 育 する という 語 義 で 用 いられるさいには 本 来 次 のような 条 件 が あったと 考 えられる それは 意 味 上 educareが 使 用 されるべきであるにもかかわ らず それが 不 可 能 な 場 合 に 限 り educere が educareの 代 用 として 用 いられる と いうものである ~を 養 育 する という 語 義 になる educereの 多 くは 韻 文 作 品 で 多 数 見 出 され るものであり なかでも 紀 元 前 3 世 紀 から 2 世 紀 にかけて プラウトゥス(c BC)と テレンティウス(c BC) によって 韻 文 で 執 筆 された 喜 劇 において 用 いられているものがほとんどである そこで 韻 文 での 使 用 という 観 点 から この 二 つの 動 詞 の 用 例 を 検 討 してみたい 日 本 語 の 韻 文 は 5 音 と7 音 など 一 定 の 音 節 数 の 語 が 規 則 的 に 組 み 合 わせられることで 構 成 されるが ラテン 語 においては 音 節 の 長 短 の 規 則 的 な 組 み 合 わせを 基 本 単 位 とし それが 一 定 数 繰 り 返 されることにより 詩 行 が 構 成 される 古 代 ローマの 喜 劇 は イアンボ スと 呼 ばれる 韻 律 に 従 って 12 それに 当 ては まる 語 が 台 詞 として 選 択 配 置 される 問 題 となっている 二 つの 動 詞 の 音 節 の 長 短 を 記 号 (- )で 示 すと e - du - ce re( 長 長 短 短 ) ^ e - du ca - re( 長 短 長 短 )となるが これらはあ くまで 不 定 法 の 場 合 であって 法 人 称 時 制 などにより 多 様 に 変 化 する 13 そのため 変 化 によっては 当 該 の 韻 律 に 当 てはまらず 使 用 不 能 な 場 合 もある この 韻 律 による 制 約 という 点 から 考 えると まず ~を 養 育 する という 語 義 の educere の 用 例 では そこで 韻 律 上 educareを 用 いる ことができないことがわかる 14 また 仮 に 韻 律 上 どちらも 使 用 可 能 であるならば 双 方 と も 同 様 に 用 例 として 現 れるはずであるが ど ちらも 可 能 である 場 合 は educareの 用 例 しか 残 されておらず 双 方 可 能 な 場 合 には educereは 用 いられていない 15 つまり educereが ~を 養 育 する という 語 義 で 用 いられるのは 韻 律 の 制 約 上 educareが 使 用 不 可 能 な 場 合 に 限 られると 考 えられるのであ る このことは 時 代 を 下 った ウェルギリウ ス(c.70-19BC)による 叙 事 詩 の 場 合 にお いても 同 様 である educareは 叙 事 詩 の 韻 律 であるヘクサメトロスでは イアンボスよ りも 使 用 可 能 な 機 会 が 少 ない 16 だが 使 用 可 能 な 場 合 には educareが 用 いられており 使 ^ 26

30 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 用 不 能 な 場 合 に 限 って educereが 代 用 される ことが 指 摘 されている 17 もちろん 韻 律 の 制 約 のない 散 文 作 品 にお いて educereが ~を 養 育 する という 語 義 で 用 いられている 例 もあるが それらの 時 期 を 考 慮 すると 韻 文 における 代 用 用 法 として の 語 義 を 踏 襲 している 可 能 性 が 考 えられる また ~を 養 育 する という 語 義 での 用 例 に は 広 がりが 見 られず その 数 は ~を 引 き 出 す でのそれに 比 して 限 られている そうで あれば あくまで educereは 本 来 ~を 引 き 出 す という 語 義 を 中 心 に 用 いられる 語 であ り ~を 養 育 する という 語 義 では 一 定 の 条 件 のもと 限 定 的 に 用 いられた と 考 えら れよう 確 かに educareと educereの 間 には 形 態 や 語 義 に 一 定 程 度 の 同 一 性 は 認 められるもの の 残 されている 用 例 を 検 討 する 限 り これ らが 同 義 になるのは 限 定 的 な 場 合 のみである この 二 つの 動 詞 が 本 来 同 一 であり educere もまた educateの 語 源 となっていると 判 断 す るのは 難 しいといえる 18 3 OED 用 例 文 から 見 る educateの 語 源 記 述 の 過 程 では 一 定 程 度 の 関 連 性 はあるとはいえ 直 接 の 語 源 とは 異 なる educereが OEDで 言 及 されているのはなぜだろうか ここで educeの 項 の 記 述 をさらに 辿 ると 19 3 番 目 の 語 義 に 示 されている 用 例 のなかに 次 の 一 文 を 見 出 すことができる 1816ColeridgeLaySerm.328 Education -consistsineducingthefacultiesand formingthehabits. いることは 明 らかである 見 出 し 語 の 適 切 な 用 例 を 包 括 的 に 年 代 順 に 収 載 するというこ の 辞 典 の 編 集 方 針 からすると コールリッジ が 引 き 出 す 営 みとしての 教 育 言 説 をその 著 作 で 展 開 している 可 能 性 が 高 い 20 そして OEDにおける 語 源 記 述 の 過 程 については 必 ずしも 明 確 にはされていないものの この コールリッジによる 引 用 文 が 見 出 されたこと で 次 のような 推 測 が 成 り 立 つ educateの 語 源 を 記 述 するさい 編 者 には コールリッジによるこの 引 き 出 す(educe) 営 みとしての 教 育 (education<educate) と いう 言 説 が 想 起 され educateと educeの 関 係 を 記 述 することによって それを 表 現 しよ うとした だが この 二 つの 英 語 動 詞 は 直 接 の 関 係 をもたない そこでそれぞれの 語 源 で 時 に 同 義 であった ラテン 語 educereと educareを 引 き 合 いに 出 し それらを 関 連 づける ことで 念 頭 にあったコールリッ ジの 言 説 を 表 現 したのではないか この 推 測 に 対 しては 当 然 ながら 大 きな 疑 問 が 生 じうる ある 言 語 に 関 する 包 括 的 な 辞 典 の 編 者 が 一 詩 人 の 言 説 に 影 響 を 受 けて 特 定 の 語 の 語 源 について 記 述 する また 直 接 の 語 源 ではない 語 まで 言 及 するということは 私 たちには 想 像 しがたい だが OEDの 黎 明 期 に 目 を 向 けてみると 後 の OEDの 原 型 となる 大 型 英 語 辞 典 の 刊 行 構 想 そして 初 期 の OED 編 集 者 たちと コー ルリッジが 実 際 に 深 い 関 わりをもっていたこ とが マキュージックの 研 究 によって 明 らか にされている 21 コールリッジと 語 源 研 究 引 き 出 す 営 みとしての 教 育 という 言 説 また OEDの 編 纂 が 開 始 されるまでの 経 緯 と の 関 係 について それに 従 って 確 認 してみた い この 文 はイギリスのロマン 派 詩 人 コールリッ ジ( )による 著 作 からの 引 用 であ るが 教 育 とは 能 力 を 引 き 出 し そして 習 慣 を 形 成 する 営 みである という 内 容 は 本 稿 で 問 題 とされている 教 育 言 説 と 一 致 して 4 コールリッジと 黎 明 期 OEDとの 関 連 コールリッジは 抒 情 詩 集 (Lyrical Balads) (1798)などの 作 品 によって 詩 人 としての 名 声 を 得 る 一 方 で 様 々な 語 彙 の 語 27

31 'educate'の 語 源 解 釈 におけるイギリス ロマン 主 義 の 思 想 的 影 響 池 亀 直 子 髙 梨 誠 源 について 独 自 の 研 究 を 行 っていた 1798 年 かねてから 言 語 の 歴 史 に 関 心 をもっ ていたコールリッジは 当 時 言 語 学 研 究 の 中 心 地 だったドイツ ゲッティンゲン 大 学 に 留 学 する その 大 学 でのゲルマン 語 史 研 究 を 通 じて とりわけ 言 語 の 起 源 に 強 い 関 心 を 寄 せ るようになった 翌 年 ドイツから 帰 国 したコールリッジ は 類 似 する 語 彙 を 取 り 上 げ 独 自 の 語 源 解 釈 を 含 めながら それらの 相 違 や 関 連 性 語 彙 使 用 の 適 切 さを 分 析 する 作 業 を 精 力 的 に 行 ってい る その 作 業 は 様 々な 主 題 設 定 に 従 ってなさ れており その 成 果 の 多 くは 講 演 や 著 作 に 残 されている 22 なかでも 引 き 出 す 営 みとしての 教 育 と いう 主 題 は コールリッジの 講 演 著 作 に 頻 出 するものであった 各 々の 動 詞 の 語 源 となっ たラテン 語 について 直 接 の 言 及 は 見 られない ものの コールリッジの 語 源 への 強 い 関 心 と 言 語 分 析 の 手 法 を 考 慮 すると 教 育 を 主 題 に するにあたって 動 詞 educeを 想 起 し educateと 結 びつけることは 不 自 然 ではない だろう 23 そして 問 題 となっている educereと educareの 関 連 の 記 述 についても コー ルリッジが OED 刊 行 の 主 唱 者 や 初 期 の 編 者 となった 人 々に 対 して 密 接 な 交 流 を 通 じて 大 きな 影 響 力 を 持 っていたことが その 理 由 として 考 えられる コールリッジは 語 源 を 用 いた 自 らの 言 語 分 析 作 業 を 進 めるうえで 個 々の 英 語 語 彙 の 歴 史 的 な 展 開 を 詳 細 に 示 す 包 括 的 な 大 型 辞 典 の 必 要 性 を 痛 感 したものの そのような 大 型 英 語 辞 典 は 当 時 のイギリスには 存 在 しなかっ た そこで 自 らその 刊 行 を 構 想 し 出 版 社 との 契 約 まで 結 んだが 最 終 的 に 実 現 はしなかっ た しかし 当 時 のイギリス 言 語 学 会 長 リチャー ド トレンチ( )がその 構 想 を 引 き 継 ぎ 大 型 辞 典 発 刊 の 主 唱 者 となったので ある トレンチはコールリッジとの 交 流 によ り 思 想 面 で 多 大 な 影 響 を 受 けており 将 来 編 纂 されるべき 大 辞 典 について わが 国 の 英 語 辞 典 の 欠 陥 について と 題 する 講 演 を 行 って いる そして 自 身 の 著 作 で 引 き 出 す 営 みと しての 教 育 に 言 及 している 24 また トレンチが 編 者 を 外 れた 後 初 期 の 編 者 たちのなかで 主 要 な 役 割 を 果 たしたのが ヘルバート コールリッジ( )で ある 彼 はコールリッジの 孫 にあたり 生 育 した 家 庭 環 境 からも 祖 父 であるコールリッジ の 思 想 に 親 しんでいたことが 十 分 考 えられよ う 25 この 辞 典 編 纂 事 業 はヘルバートが31 歳 で 病 死 したため 十 数 年 にわたって 停 滞 と 中 断 を 余 儀 なくされたが その 後 ジェイムズ マリー( )ら 新 しい 編 者 を 迎 えて 編 纂 事 業 が 再 開 されたときには ヘルバート が 収 集 した 語 彙 用 例 のスリップも 引 き 継 がれ ているという 26 これらを 総 合 すると educereと educare が 関 連 づけ られている educateの 語 源 記 述 については OED 編 纂 の 比 較 的 初 期 段 階 においてコールリッジの 影 響 を 受 けた 人 物 に よって 彼 が 主 張 する 教 育 言 説 を 投 影 した 形 で 記 述 された と 考 えることができよう もちろん 現 在 でも 広 く 見 られる 引 き 出 す 営 みとしての 教 育 という 言 説 の 全 てが OEDの 語 源 記 述 を 参 照 し 根 拠 としていると いうことはないだろう だが その 淵 源 を OEDに 探 ることにより 語 源 に 強 い 関 心 を もつロマン 派 詩 人 コールリッジが 引 き 出 す 営 みとしての 教 育 という 言 説 を 展 開 してい ること また 語 源 解 釈 についてはそれを 踏 ま えて 記 述 されている 可 能 性 が 確 認 できた 5 ロマン 派 詩 人 とモニトリアル システム 本 節 からはコールリッジの 教 育 思 想 と 彼 が educateの 語 源 として educe( 引 き 出 す) の 意 を 見 いだそうとした 経 緯 と 思 想 的 背 景 および 後 代 への 影 響 について 検 討 する 教 育 思 想 に 関 するイギリス ロマン 派 に 対 する 一 般 的 な 理 解 とは 同 時 代 の 抑 圧 的 な 教 育 に 批 判 的 な 姿 勢 を 取 り 作 品 の 中 で 子 ども 28

32 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 の 無 垢 と 想 像 力 を 美 しく 歌 い 上 げる 芸 術 家 もしくはルソー( )の 消 極 教 育 思 想 の 支 持 者 といったものも 少 なくない 27 だがこうした 一 般 的 理 解 に 反 してコールリッ ジはルソーの 消 極 教 育 思 想 に 対 してはむしろ 否 定 的 な 見 解 を 持 っており 28 逆 に 教 育 に 対 する 関 心 は1808 年 1813 年 の 講 演 や 著 作 雑 誌 論 考 等 で 様 々に 展 開 される コールリッジやワーズワース( ) サウジー( ) 等 のロマン 派 詩 人 が 同 時 代 の 社 会 的 風 潮 に 呼 応 して 支 持 したのが アンドリュー ベル( )らが 提 唱 した 新 しい 教 育 システム すなわちモニトリ アル システムである 周 知 の 通 りモニトリ アル システムとは18 世 紀 後 半 から19 世 紀 に かけて 慈 善 学 校 など 貧 民 層 の 子 ども 向 けの 教 育 を 中 心 に 普 及 した 一 斉 教 授 法 の 総 称 である 多 くの 生 徒 に 対 して 同 時 に 同 一 内 容 の 教 授 を 可 能 とした 効 率 性 の 高 いシステムは 今 日 で はその 機 械 的 な 側 面 をはじめ 多 くの 問 題 点 が 指 摘 されているが ロマン 派 詩 人 たちの 時 代 にはランカスター( )の 提 唱 した システムがイギリス 国 内 に 広 まりつつあった モニトリアル システムとは 簡 単 にいえば 生 徒 を 習 熟 度 別 のクラスに 分 け 全 体 を 監 督 する 教 師 の 指 導 と 成 績 の 良 い 生 徒 を モニ ター と 呼 ばれる 助 教 として 採 用 することを 組 み 合 わせ 一 斉 教 授 の 効 果 的 理 解 の 促 進 を 計 るシステムである またモニター 採 用 に 向 け 習 熟 度 を 目 に 見 える 形 にすることで 競 争 や 助 け 合 いを 喚 起 し 教 師 の 権 威 や 罰 則 に 依 拠 せず 向 学 心 や 他 者 を 助 けることへの 達 成 感 を 呼 び 覚 ます という 生 徒 の 内 面 的 道 徳 的 成 熟 に 対 する 効 用 も システムを 普 及 させよう とする 人 々の 謳 い 文 句 であった しかしランカスターのシステムがイギリス 国 教 会 の 考 える 宗 教 教 育 にとって 脅 威 である と 見 なされ 始 めると サラ トリマー( )をはじめ 同 時 代 の 教 育 家 や 政 治 家 たち がベルのマドラス システムに 対 する 賛 辞 を 表 明 するようになる この 動 向 は 国 の 教 育 をいずれのシステムに 委 ねるかをめぐり ベ ル ランカスター 本 人 と 支 持 者 たちが 議 論 を 戦 わせた ベル=ランカスター 論 争 へと 発 展 した ベルの 支 持 者 たちの 多 くはモニトリアル システムの 効 用 は 高 く 評 価 した 上 で ランカ スターの 宗 教 教 育 が 適 切 な 内 容 ではないとし て 問 題 視 する その 目 的 は 国 教 会 の 方 針 に 従 った 宗 教 教 育 を 選 択 していたベルへの 賛 辞 を 表 明 することで 貧 民 層 の 宗 教 とモラルに ついての 教 育 を 国 教 会 主 導 へと 転 換 すること にあった さて 先 述 の 通 りロマン 派 詩 人 の 多 くがベ ルの 教 育 論 には 賛 辞 を 寄 せている 詳 しくは 後 述 するが コールリッジは 講 演 や 著 作 でベ ルの 教 育 システムを 称 賛 し 教 育 とは 何 かと いう 重 要 な 定 義 づけにおいてベルの 言 葉 を 引 用 する また サウジーは 新 しい 教 育 シス テムの 起 源 本 質 とその 目 的 (TheOrigin, Nature,and ObjectoftheNew System of Education) (1812)でベルの 新 しい 教 育 シス テムの 発 明 が 時 機 を 得 た ものであると 称 賛 し ベルの 評 伝 の 編 纂 にも 着 手 している 29 三 巻 になる 評 伝 の 編 纂 作 業 はサウジーの 息 子 チャールズに 引 き 継 がれ1844 年 から 刊 行 され たが 第 一 巻 のチャールズによる 序 文 では 父 の 古 い 友 人 であるワーズワース 氏 の 助 言 に 対 して 謝 辞 が 捧 げられている 30 そのワー ズワースは 代 表 的 作 品 逍 遙 (TheExcursion) (1814)でベルの 新 しい 発 見 を 称 賛 して いる ベル 博 士 の 発 見 はこのことの 実 現 に 素 晴 らしい 適 性 を 示 している そして 見 識 あ る 誠 実 な 管 理 のもとにこの 単 一 のエンジ ンを 広 く 適 用 することで 人 類 にもたらさ れる 利 益 について 買 いかぶることはあり 得 ない 31 引 用 文 の このこと とは 規 則 に 従 わせ ること を 指 しており また エンジン は マドラス システムにコールリッジが 与 えた 称 号 である モラル スチーム エンジン 29

33 'educate'の 語 源 解 釈 におけるイギリス ロマン 主 義 の 思 想 的 影 響 池 亀 直 子 髙 梨 誠 すなわちモラルの 育 成 に 関 して 蒸 気 機 関 に 匹 敵 する 成 果 を 生 み 出 す 画 期 的 な 発 明 を 踏 まえ ての 表 現 であろう つまりワーズワースは 教 育 の 硬 直 性 を 批 判 した 序 曲 (ThePrelude) (1805,1850)の 記 述 とは 対 照 的 に ベルの 教 育 システムが 普 及 することは 人 類 に 利 益 をもたらす と 賛 辞 を 寄 せていることになる こうした しばしば 消 極 教 育 思 想 の 推 進 者 と 理 解 されてきたロマン 派 詩 人 らの 矛 盾 するかに 見 える 言 動 について 先 行 研 究 では 複 数 の 解 釈 がなされている 第 一 にリチャー ドソンらのようにロマン 派 による 教 育 システ ムへの 支 持 は 限 定 的 一 時 的 なものであると いう 解 釈 がある すなわち 過 酷 な 労 働 を 強 い られる 貧 民 層 の 子 どもたちをめぐる 当 時 の 悲 惨 な 状 況 において モニトリアル システム の 起 用 は 児 童 労 働 を 抑 止 する 動 きがあると 考 えられた あるいは1845 年 頃 までにモニトリ アル システムへの 関 心 は 薄 れたというもの である 32 第 二 にロマン 派 の 詩 作 において 社 会 化 は むしろ 重 要 な 主 題 であり 続 けたというヒッキー などの 解 釈 がある ヒッキーはワーズワース の 序 曲 と 逍 遥 の 二 つの 長 編 を 分 析 し 人 間 精 神 の 成 長 が 一 貫 した 主 題 となっている ことを 理 由 にモニトリアル システムへの 関 心 はロマン 派 による 転 向 とは 見 なせない と 結 論 づけている 33 さらに 第 三 の 解 釈 は 第 二 の 解 釈 と 同 じく ロマン 派 には 教 育 に 対 する 関 心 が 継 続 して 存 在 し その 上 でその 関 心 は 別 の 関 心 事 と 連 動 していたとするものであり たとえばコール リッジの 教 育 論 をマルサス( )の 人 口 論 に 対 する 反 論 と 見 るコンネルや その 背 景 には 道 徳 哲 学 や 倫 理 宗 教 思 想 が 存 在 す ると 考 えるロックリッジ ヘッドレイらが 挙 げられる 34 様 々な 状 況 を 考 え 合 わせると 第 一 のロマン 派 による 教 育 に 対 する 関 心 は 限 定 的 一 時 的 なものであったという 解 釈 は 成 り 立 ちにく い 35 本 稿 ではロマン 派 にとって 教 育 は 継 続 する 関 心 事 の 一 つであったという 第 二 第 三 の 解 釈 を 踏 襲 し 特 に 第 三 の 解 釈 とりわけ コールリッジの 宗 教 とモラルをめぐる 教 育 の 定 義 づけが ベルの 教 育 システムに 対 する 支 持 と 連 動 していたとの 立 場 から 議 論 を 進 め る 6 引 き 出 す 行 為 としての 教 育 コールリッジが 教 育 とは 引 き 出 すこと と 提 示 するのは 一 連 のベルに 対 する 支 持 表 明 のさなかである 1809 年 頃 から 刊 行 された 雑 誌 フレンド(TheFriend) でコールリッ ジは 教 育 を 次 のように 定 義 する それ( 引 用 者 注 : 教 育 )は 引 き 出 す(to educe)ことにある あるいは ベル 博 士 自 身 の 表 現 を 借 用 するなら 人 間 精 神 の 能 力 を 引 き 出 す(eliciting)ことであ り そして 同 時 にそれらを 理 性 と 意 識 に 従 わせることである 36 ここでは 教 育 が 人 間 の 能 力 を 引 き 出 すこ と と 定 義 づけられているが コールリッジ は 教 育 に 関 する 発 言 のなかで 引 き 出 す( educe) 育 成 する(cultivate) ことの 重 要 性 に 繰 り 返 し 言 及 する 1808 年 や1813 年 の 講 演 では 教 育 (Education) とは 引 き 出 す こと(toeduce) 呼 び 起 こすこと(tocal forth) であると 述 べ 花 や 実 が 蕾 と 芽 から 引 き 出 されるように 人 間 の 能 力 は 教 育 によっ て 引 き 出 されると 主 張 する 37 コールリッジのこの 発 言 は1808 年 にマドラ ス システムの 目 的 と 特 徴 をまとめて 出 版 し たベルの 主 張 をふまえている ベルはシステ ムの 第 一 の 特 徴 としてクラス 制 の 採 用 と 子 ども 同 士 で 競 わせ 学 び 合 うことの 重 要 性 を 強 調 し 競 争 心 や 功 名 心 を 神 が 人 間 に 与 えた 尊 い 資 質 であるとして 次 のように 述 べている それゆえ 競 争 や 優 れたいという 欲 望 が これらは 創 造 主 が 最 も 賢 明 かつ 高 貴 なる 目 的 のために 人 間 の 胸 に 植 え 付 けたもう 30

34 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 たものであるが 引 き 出 され(あるいは 呼 び 起 こされ) 称 賛 に 値 する 努 力 に 向 けての 力 強 い 止 むことのない 刺 激 とな る 穏 やかで しかし 効 果 的 な 訓 練 の 手 段 として 38 注 目 すべきは ベルが 引 き 出 す 呼 び 起 こす の 表 現 に 'elicited(orcaledforth)'と いう 語 を 使 用 するのに 対 し コールリッジは 呼 び 起 こす の calforthは 引 き 続 き 使 用 し つつ 引 き 出 す の elicitを educeに 言 い 換 えていることである また ベルにおける elicitは 生 徒 の 努 力 を 刺 激 する 競 争 心 を 引 き 出 す という 文 脈 で 用 いられるのに 対 して コールリッジが 用 いる educeの 語 は 教 育 とい う 営 みそのものを 指 しており 人 間 精 神 の 能 力 を 引 き 出 す と その 目 的 と 対 象 が 拡 大 されていることも 重 要 であろう 韻 律 や 語 感 の 効 果 を 考 慮 して 創 作 を 行 うこ とが 日 常 化 している 詩 人 コールリッジにとっ て ある 事 柄 の 定 義 づけにおける 単 語 の 選 択 は 非 常 に 重 要 な 意 味 を 持 っていたと 考 えられ る つまり 特 定 の 単 語 の 語 源 史 ではなく あ くまでも 教 育 という 営 みと 引 き 出 す 行 為 を 結 合 させるために elicitの 語 は educe に 言 い 換 えられる 必 要 があった 可 能 性 が 高 い そして educeを 語 源 とするとされた 教 育 = 人 間 精 神 の 能 力 を 引 き 出 す という 定 義 は その 後 もコールリッジによって 講 演 や 様 々な 著 作 の 中 で 繰 り 返 し 言 及 され やがて OED に 用 例 として 収 められるまでになった それではなぜ コールリッジにとっての 教 育 は 引 き 出 す という 語 源 的 背 景 を 必 要 と する 営 みだったのか この 疑 問 については コンネルによるコールリッジの フレンド における educingの 読 み 替 えは 道 徳 的 精 神 的 な 育 成 (cultivation)のプロセスとし て 教 育 を 再 定 義 しようと 試 みた もので あるという 指 摘 が 手 がかりとなろう コンネルは 経 済 学 の 視 点 からマルサスの 人 口 論 に 対 するコールリッジの 反 論 を 読 み 取 り マルサスによる 大 衆 教 育 批 判 に 対 してコール リッジは 国 教 会 を 中 心 とする 宗 教 教 育 道 徳 教 育 を 擁 する 教 育 運 動 を 国 の 教 育 として 認 識 し 教 育 政 策 に 積 極 的 かつ 継 続 的 に 関 与 しようとしたという そして 経 済 行 為 を 含 む 様 々な 行 動 様 式 を 身 につける 社 会 化 としての 市 民 化 と キリスト 教 の 教 育 としての 育 成 は コールリッジにおいては 厳 密 に 区 別 されていたという 39 つまりコールリッ ジの 教 育 とは 引 き 出 すこと には 第 一 に 人 間 の 内 的 な 善 性 すなわち 宗 教 的 なモラル の 育 成 が 想 定 されていたということである ロックリッジやヘッドレイも コールリッ ジが 教 育 にとって 不 可 欠 な 要 素 にキリスト 教 の 信 仰 を 位 置 づけ 彼 が 教 育 を 人 間 の 精 神 に おける 神 聖 な 潜 在 力 を 引 き 出 すことであると 考 えたと 解 釈 する 40 さらにヘッドレイは 省 察 の 助 け(AidstoReflection) (1825)を 詳 しく 分 析 し コールリッジが 人 類 がその 環 境 を 美 徳 によって 超 越 することを 引 き 出 す ことが 教 育 であると 考 え 自 由 とは 善 のヴィジョンの 結 実 であって この 善 は 教 育 者 からなる 社 会 によって 呼 び 覚 まされ 形 成 されると 考 えていたと 指 摘 している 41 つまりコールリッジが 教 育 に 引 き 出 す という 語 源 の 背 景 を 与 えようとしたことには 人 間 の 内 面 的 な 善 を 適 切 な 導 きによって 引 き 出 し 育 成 していくことが 重 要 であるという 彼 のキリスト 教 信 仰 上 の 信 念 が 関 係 していた こうしたコールリッジの 態 度 は 彼 が 宗 教 的 モラルの 解 釈 において 善 の 先 験 性 を 見 出 し 道 徳 哲 学 において 功 利 主 義 ではなく 直 観 主 義 の 立 場 を 採 ったこととも 合 致 する 42 コールリッジにとっては 人 間 の 精 神 には 地 中 に 潜 む 植 物 の 種 のように 善 の 性 質 が 潜 在 しているのであり 教 育 とは 精 神 を 耕 し 育 成 する(cultivate)ことで 種 から 花 を 咲 かせ 実 を 結 ばせるように 内 なる 善 を 育 て 引 き 出 す (educe) 営 みであると 考 えられた それゆえ にこそ 教 育 は 引 き 出 す の 意 をもつラ テン 語 源 により 近 く 位 置 する educeの 語 によっ て 定 義 づけられる 必 要 があったのである 31

35 'educate'の 語 源 解 釈 におけるイギリス ロマン 主 義 の 思 想 的 影 響 池 亀 直 子 髙 梨 誠 7 後 代 の 教 育 言 説 に 対 するコールリッジの 影 響 ここまで educateの 語 源 の 歴 史 と イギリ ス ロマン 派 による 教 育 の 定 義 に 込 めら れた 宗 教 とモラルをめぐる 語 源 解 釈 の 経 緯 を 検 討 してきた だがこうした 語 源 解 釈 に 関 す るコールリッジとロマン 主 義 の 思 想 は ベル の 思 想 と 国 教 会 の 意 向 を 汲 んだ 同 時 代 の 教 育 運 動 や 教 育 政 策 においてよりも むしろその 後 の19 世 紀 から20 世 紀 以 降 の 教 育 思 想 に 大 き な 影 響 を 及 ぼしたと 考 えられる リードはコールリッジ ワーズワース サ ウジーの 公 教 育 に 対 する 関 心 は 国 教 会 支 持 を 理 由 として 継 続 的 なものであったと 位 置 づけ たうえで 彼 らの 思 想 が ロマン 主 義 的 なイ デオロギー 43 として 設 立 直 後 のロンドン 大 学 における 英 文 学 の 教 育 カリキュラムに 少 な からぬ 影 響 力 を 持 ったと 指 摘 している コー ルリッジやワーズワースが 大 学 で 直 接 に 教 鞭 を 取 ったわけではないが 大 学 の 設 立 に 関 わっ た 人 々にロマン 派 の 詩 人 たちの 思 想 や 教 育 に 対 する 理 念 が 引 き 継 がれていき 英 文 学 科 の 教 育 カリキュラムの 作 成 において 文 学 のテ キストと 個 別 の 読 者 の 呼 応 関 係 が 個 人 の 知 識 や 経 験 感 情 概 念 倫 理 的 な 自 己 形 成 の 技 法 や 精 神 的 成 長 の 成 熟 を 実 現 すると 考 え られたのではないかというのである 44 さらにコールリッジの 語 源 解 釈 が 現 場 の 教 師 達 に 多 様 な 形 で 影 響 力 をもったことはジョ ゼフ ペイン( )の 主 張 にも 明 ら かである オルドリッチに 詳 しいが 45 ペイ ンは19 世 紀 後 半 に 労 働 者 階 級 の 出 身 でありな がら 独 学 で 教 師 となり 私 立 学 校 を 設 立 して 校 長 を 務 めながら 教 員 養 成 や 教 員 採 用 試 験 の 作 成 私 学 教 育 を 中 心 としたイギリスの 教 育 制 度 の 発 展 に 尽 力 した 人 物 である 彼 が 編 纂 した 子 どものための 選 詩 集 (Selected PoetryforChildren) (1839)にはコールリッ ジ ワーズワース ブレイク( ) らロマン 派 の 作 品 も 多 く 収 められ 教 科 書 と して 活 用 されて 多 くの 教 師 が 手 に 取 った 1874 年 に 出 版 された 教 育 の 科 学 と 方 法 に 関 する 講 義 (LecturesoftheScienceandArtof Education) はペインの 教 育 方 法 論 の 思 想 的 集 大 成 とも 言 えるが ペスタロッチやフレー ベルなど 幼 児 教 育 にも 目 を 配 った 議 論 が 展 開 され ロマン 主 義 の 影 響 を 見 て 取 ることがで き かつコールリッジへの 直 接 的 言 及 も 見 ら れる 著 作 である 46 ここでペインは educate および instructの 語 源 としてラテン 語 の educare educere instruereに 言 及 し 次 の ように 述 べている 教 育 (educare すなわち educereの 反 復 形 の 意 から 引 き 出 すこと)とは 繰 り 返 しの 行 為 により 子 どもの 力 を 引 き 出 すことであり 子 どもの 力 を 適 切 な 作 業 に 向 けて 訓 練 することである 47 別 の 箇 所 での 主 張 によれば ペインは educereが 単 独 で 完 結 する 行 為 であるのに 対 し educareは educereの 反 復 形 ( 繰 り 返 し) であり 頻 繁 に 繰 り 返 し 継 続 的 にそして それゆえに 力 強 く 永 続 的 に 引 き 出 すことを 意 味 する という 48 だがペインが 何 を 根 拠 と してラテン 語 の educareに educereの 反 復 形 を 見 出 しているかは 不 明 確 である ラテ ン 語 の 動 詞 の 反 復 形 は 完 了 分 詞 の 語 幹 + areで 作 られる 例 えば dicere( 言 う)の 反 復 形 は dictare( 繰 り 返 し 言 う)である 反 復 形 は 完 了 分 詞 の 語 幹 dict-+-areで 構 成 される これに 従 えば educere の 完 了 分 詞 の 語 幹 は educt-um であり その 反 復 形 は *eductare となるはず である また educareには 引 き 出 す の 意 味 はないため 仮 に 語 形 を 反 復 形 にしても 繰 り 返 し 引 き 出 す の 意 味 とはならない また 教 育 における 教 師 の 継 続 的 指 導 にお いて 訓 練 を 強 調 するペインの 次 の 主 張 は コールリッジの 意 図 とはかけ 離 れている 教 育 者 とはそれゆえに 訓 練 者 である そ の 役 割 が 継 続 的 習 慣 的 永 続 的 に 子 ど 32

36 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 もの 力 を 引 き 出 すのである そして 教 育 は 教 育 者 がこの 目 的 のために 費 やすプロ セスのことである 49 コールリッジは instructionの 語 に 知 識 の 教 え 込 み 型 へのはめ 込 みといった 否 定 的 な 意 味 を 見 出 していたが ペインは 繰 り 返 し 子 ど もの 能 力 を 引 き 出 すための 継 続 的 な 反 復 訓 練 として instructionを 重 視 する さらにコール リッジの 時 点 では 類 似 の 暗 示 にすぎなかった 引 き 出 す というラテン 語 の 意 味 が ペイ ンに 至 っては educateの 語 源 として 定 着 し 解 釈 の 重 点 は 引 き 出 す 行 為 の 継 続 性 や 習 慣 性 に 置 かれている 引 き 出 す 行 為 の 継 続 性 や 習 慣 性 が 強 調 されるのは ペインが 教 育 実 践 において 訓 練 としての instructionに 肯 定 的 な 意 味 を 読 み 取 っ ていたからだろう つまりペインにおいては educationと instructionの 意 味 や 目 的 が 語 源 を 根 拠 として 一 体 化 されようとしている 彼 がどこまでラテン 語 の 恣 意 的 解 釈 に 自 覚 的 で あったかは 定 かではないが この 事 例 は 異 な る 意 味 を 持 つ 語 の 混 同 や 著 者 自 身 の 思 想 によっ て 教 育 の 定 義 をめぐる 語 源 解 釈 が 変 容 し ていく 可 能 性 があることを 示 してくれる そして educateの 語 源 は20 世 紀 以 降 の 教 育 哲 学 研 究 においても 定 型 化 される 1972 年 初 版 で 現 在 まで 版 を 重 ねるラウトリッジの 入 門 書 である 教 育 哲 学 入 門 の 中 で 編 者 のス コフィールドは C.J.デュカスの 見 解 として educareと educereの 語 源 解 釈 を 紹 介 してい る デュカスが 解 釈 を 論 じる1958 年 の 時 点 で は すでに educareと educereの 二 つの 意 味 が educateの 語 源 として 定 着 しており 議 論 の 争 点 は 教 育 の 目 的 をどこに 置 くかに 移 行 し ている さらにごく 近 年 でも 前 置 きとしてデュ カスに 対 するスコフィールドの 見 解 を 加 えた educareと educereのラテン 語 源 の 解 釈 を 使 用 し そこから 議 論 を 膨 らませてアフリカの 伝 統 と 教 育 を 分 析 する 研 究 論 文 が 見 られる 50 おわりに 以 上 現 在 でも 広 く 見 られる 引 き 出 す 営 みとしての 教 育 という 言 説 の 根 拠 となる 英 語 の 語 源 説 明 について OEDの 語 源 記 述 と 用 例 などを 踏 まえて 検 討 した educateのラ テン 語 源 をめぐっては educeの 語 を 媒 介 と して 異 なる 動 詞 である educareと educereが 関 連 づけられている さらに 引 き 出 す 営 み としての 教 育 という 言 説 での 語 源 説 明 にお ける 混 乱 の 要 因 を 巡 って OEDの 記 述 を 検 討 したところ 語 源 としてのラテン 語 動 詞 につ いて 不 明 確 な 点 が 見 られた そして その ような 不 明 確 な 語 源 記 述 はコールリッジによ る 語 彙 研 究 また 包 括 的 大 型 辞 典 である OEDの 刊 行 までの 経 緯 そして 初 期 の 編 者 たちに 対 する コールリッジ の 思 想 的 影 響 に 由 来 すると 考 えられる むろんコールリッジがラテン 語 の educare と educereを 誤 用 した あるいはその 意 味 を 混 同 したわけではない 彼 に 特 定 の 強 い 意 図 が 働 いたのは 教 育 の 定 義 づけにおける educeという 語 の 選 択 の 際 であったと 考 えら れる すなわち ベルがモニトリアル シス テムで 提 唱 した ( 競 争 心 を) 引 き 出 すこと はコールリッジによって 宗 教 教 育 モラルの 育 成 において ( 人 間 精 神 の 能 力 を) 引 き 出 すこと という 定 義 を 付 与 されることになっ たのである そして 人 間 精 神 の 育 成 における 重 要 な 論 拠 としてのラテン 語 源 の 解 釈 は 語 源 学 の 領 域 においては 初 期 の OED 編 者 たちに 引 き 継 が れて OEDに 収 められ 教 育 学 の 領 域 におい ては 子 どもの 善 なる 特 質 や 能 力 を 引 き 出 すと いう 教 育 思 想 として 後 代 の 教 師 達 や 研 究 者 に 引 き 継 がれた またその 過 程 で ペインの 事 例 に 見 られるように 単 語 の 語 源 を 示 してそ こに 自 らの 思 想 を 投 影 し 膨 らませていくとい う 傾 向 や コールリッジ 自 身 も 意 図 しなかっ た 形 での 解 釈 の 変 化 が 生 じ 今 日 の 教 育 言 説 における 様 々な 展 開 に 至 っていると 考 えられ る 33

37 'educate'の 語 源 解 釈 におけるイギリス ロマン 主 義 の 思 想 的 影 響 池 亀 直 子 髙 梨 誠 なお 今 回 検 討 した educeと 同 様 に 育 成 する(cultivate) の 語 もまた 教 育 の 定 義 に 関 する 重 要 な 議 論 としてコールリッジに 意 識 されていたと 考 えられる 耕 やす の 意 味 を 持 つこの 語 をめぐって 推 測 される 思 想 的 背 景 としては 人 間 の 精 神 を 野 菜 に 例 えた エドワード ヤング( )による 天 才 51 論 の 影 響 と 自 然 や 植 物 との 親 和 性 を 持 つ ロマン 主 義 の 芸 術 の 全 体 的 傾 向 が 考 えられる が この 仮 説 の 検 証 には 語 源 の 解 釈 と 教 育 思 想 の 関 連 のみならず イギリスにおける 新 古 典 主 義 とロマン 主 義 の 天 才 論 想 像 力 論 の 再 検 討 が 必 要 であるため 今 後 の 課 題 としたい 本 稿 は はじめに と1-4 節 を 髙 梨 が 5-7 節 と おわりに を 池 亀 が 分 担 して 執 筆 し た 注 1 例 えば 女 子 学 院 中 学 校 高 等 学 校 院 長 校 長 風 間 晴 子 氏 の 発 言 ( 朝 日 新 聞 2012 年 8 月 25 日 付 朝 刊 16 面 全 面 広 告 ) サッカー 日 本 代 表 元 監 督 岡 田 武 史 氏 による 講 演 録 htp:/sportsnavi.yahoo.co.jp/sports/soccer/japan/20 10/) 岡 田 氏 の 発 言 を 引 用 している 潮 智 史 社 説 余 滴 スポーツとは 相 いれないもの ( 朝 日 新 聞 2013 年 2 月 27 日 付 )などを 参 照 また 小 川 芳 男 編 ハンディ 語 源 英 和 辞 典 有 精 堂 出 版 1961 年 の 記 述 も 参 照 2 以 下 ラテン 語 は 斜 体 で 表 記 する なお こ の 語 は2014 年 4 月 から NHK 教 育 テレビで 放 映 さ れている 番 組 のタイトルとなっている 3 日 本 経 済 新 聞 社 が 発 行 する 教 育 情 報 誌 のタイ トルは デュケレ であるが 英 字 表 記 は Ducareとなっている 4 educereの 完 了 分 詞 は eductumであるため 5 森 昭 人 間 形 成 原 論 遺 稿 森 昭 著 作 集 第 六 巻 黎 明 書 房 1977 年 36 頁 6 森 前 掲 書 34 頁 7 海 外 の 学 術 論 文 でも 導 入 部 分 に 同 様 の 言 説 が 見 られる 例 えば AmasaPhilipNdofirepi, Elizabeth Spiwe Ndofirepi '(E)ducation or (e)ducationintraditionalafricansocieties?a philosophicalinsight',education intraditional Africa,2012,pp.13-4などを 参 照 8 OED は 19 世 紀 に 刊 行 が 始 まった 英 語 語 彙 に 関 する 世 界 最 大 の 辞 典 である 包 括 的 で 科 学 的 な 記 述 を 標 榜 し 各 見 出 し 語 にはその 語 源 と 年 代 順 の 用 例 が 記 載 されている 英 語 語 彙 の 用 法 についてなんらかの 説 明 が 必 要 とされる 場 合 に 参 照 されることが 多 い 名 詞 educationの 語 源 解 釈 が 刊 行 以 降 になされたものであれば 参 照 された 可 能 性 も 十 分 に 考 えられる 9 第 2 版 では 発 音 記 号 の 表 記 法 を 除 いて 語 源 記 述 の 変 更 はない なお 最 新 の 第 3 版 は 電 子 版 のみで 刊 行 されており 冊 子 形 態 は 存 在 しな い 10 例 えば オックスフォードラテン 語 辞 典 ( TheOxfordLatinDictionary: 以 下 OLD)にお ける 語 源 記 述 を 参 照 11 OLD では 10ある 語 義 のうちの 最 後 に 挙 げ られている 12 イアンボスは 長 音 節 と 短 音 節 (- )の 組 み 合 わせを 基 本 単 位 する 韻 律 である 13 語 末 の eの 長 短 については 後 続 の 語 による ラテン 語 では 同 表 記 であっても 長 母 音 か 短 母 音 かで 意 味 が 異 なる 語 が 複 数 存 在 することもあ り OED での 語 源 表 記 で 長 短 の 区 別 がつけら れていることには 重 大 な 意 味 がある( 第 3 版 か らは 簡 略 化 され 長 音 の 一 部 と 短 音 の 表 記 がな くなっている) 14 例 えば プラウトゥス クルクリオ 518 行 では educereの 直 説 法 1 人 称 単 数 完 了 形 eduxi を educavi(educareの 直 説 法 1 人 称 単 数 完 了 形 ) とすると 音 節 数 が 規 定 数 をこえてしまう 15 例 えば テレンティウス ポルミオ 943 行 を 参 照 16 ヘクサメトロスは 長 音 節 長 音 節 短 音 節 (-- )の 組 み 合 わせを 基 本 単 位 する 韻 律 であ り educareのような 長 音 節 短 音 節 長 音 節 (クレティック:- -)を 含 む 語 が 使 用 でき る 機 会 がほとんどない 17 アエネイス 第 8 巻 413 行 とフォーダイス 34

38 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 による 註 釈 (C.J.Fordyce,P.VergiliMaronis AeneidoslibriVI-V I,Bristol,1985,p.359)を 参 照 18 ducereと これにさまざまな 接 頭 辞 を 加 え た 複 合 動 詞 は educere 以 外 にも 多 数 あるものの *ducareもそれに 接 頭 辞 を 加 えた 複 合 動 詞 も 存 在 は 確 認 できない これらを 同 一 の 動 詞 とする ならば 母 音 の 長 短 の 相 違 や educareの 形 成 に ついてさらに 説 明 が 必 要 となる 19 Tobringout,elicit,develop,from acondition latent,rudimentary,ormerelypotentialexistance. ここでは 潜 在 している 状 態 の 対 象 を 引 き 出 す 用 例 が 収 められている それに 対 して1 2 番 目 に 挙 げられている 語 義 は 引 き 出 す 対 象 が 顕 在 している 状 態 であるが 第 1 版 です でに 廃 語 とされており 15 世 紀 から17 世 紀 まで の 用 例 のみが 挙 げられている 20 コールリッジ 以 後 になされた 他 の 論 者 による 引 用 については 後 の 項 を 参 照 21 JamesC.McKusick,"LivingWords':Samuel TaylorColeridgeandtheGenesisoftheOED' ModernPhilology1992(90)pp.1-45.,'Coleridge andlanguagetheory'frederickburwick(ed.),the OxfordHandbookofSamuelTaylorColeridge, Oxford,2009,pp その 分 析 手 法 は コールリッジが 自 ら 造 語 し た desyonomizationという 語 で 呼 ばれる また 教 育 以 外 の 主 題 としては 詩 ('poesy'と 'poetry') について 取 り 上 げ 論 じている 例 など が 挙 げられる 23 コールリッジはもちろんラテン 語 にも 精 通 し ており それらの 語 源 となった 各 々の 動 詞 が 念 頭 にあったことは 十 分 推 測 できる 24 RichardChenevixTrench,'OntheDistincitonof Words',OntheStudyofWords,London,1876, p ヘルバートの 母 サラはコールリッジの 娘 であ り 父 の 死 後 夫 とコールリッジ 作 品 の 収 集 と 整 理 を 継 続 的 に 行 っていた そのような 家 庭 環 境 でヘルバートは 生 育 している 26 なお マレーが 編 集 に 参 加 して 以 降 発 刊 ま での 経 緯 については K.M.ElisabethMuray, Caughtinthewebofwords:JamesA.H.Muray andtheoxfordenglishdictionarywinchester,1977 (= 加 藤 知 己 訳 ことばへの 情 熱 :ジェイムズ マレーとオクスフォード 英 語 大 辞 典 三 省 堂 1980 年 )や SimonWinchester,Themeaningof everything :thestoryoftheoxford English Dictionary,2003.(= 苅 部 恒 徳 訳 オックスフォー ド 英 語 大 辞 典 物 語 研 究 社 2004 年 )などを 参 照 27 ロマン 派 の 教 育 思 想 をルソーの 影 響 から 考 え る 研 究 としては ピーター カヴニー 子 ども のイメージ 江 河 徹 監 訳 紀 伊 国 屋 書 店 1979 年 MorisEaves,WiliamBlake'sTheoryofArt, Princeton,N.J.:PrincetonUniversityPres,1982, StephenGil,Wiliam Wordsworth:ThePrelude, CambridgeUniversityPres,1991,PeryNodleman, ThePleasuresofChildren'sLiterature,NewYork: Longman,1992,JanetBotoms,'TheBatleofthe (Children's) Books',Romanticism Volume 12, Number3,2006など 年 1813 年 の 講 演 でルソーの 思 想 に 影 響 を 受 けている 友 人 をコールリッジがからかい ルソーを 批 判 するエピソードが 紹 介 されている が 1818 年 の 手 紙 でコールリッジはこのエピソー ドは1797 年 の 出 来 事 であったと 述 べている SamuelTaylorColeridge,TheColectedWorksof SamuelTaylorColeridge,Lectures on Lirerature, ed. Kathleen Coburn, Princeton UniversityPres,1987,p.106,p.586,Coleridge, Colected LetersofSamuelTaylorColeridge, vol.iv,ed.earllesliegriggs,clarendonpres: OxfordUniversityPres,2000,pp RobertSouthey,TheOrigin,NatureandObjectof thenewsystemofeducation,london:printedfor John Muray,32,Fleet-Street: W.Blackwood, Edinburgh;andJ.Cumming,Dublin, CharlesC.Southey,TheLifeofRev.AndrewBel, JohnMuray,ed.RobertSouthey,London:Wiliam Blackwood& Sons,Edinburgh.,vol.I,xi. 31 Wiliam Wordsworth,ThePoeticalWorksof WiliamWordsworth,Vol.5,ed.EdeSelincourt, andhelendarbishire,theexcursion,oxfordatthe 35

39 'educate'の 語 源 解 釈 におけるイギリス ロマン 主 義 の 思 想 的 影 響 池 亀 直 子 髙 梨 誠 ClarendonPres,p Alan Richardson,Literature,Education and Romanticism,ReadingasSocialPractice ,Cambridge:CambridgeUniversity Pres, 1994,p.95,p AlisonHickey,ImpureConceits:Rhetoricand IdeologyinWordsworth's'Excursion',Stanford, Calif.:StanfordUniversityPres,1997,pp PhilipConnel,Romanticism,Economicsandthe Questionof'culture',Oxford:OxfordUniversity Pres,2001,pp ,LaurenceS.Lockridge, TheEthicsofRomanticism,CambridgeUniversity Pres,1989,pp.39-45,DouglasHedley,Coleridge, PhilosophyandReligion:AidstoReflectionandthe MiroroftheSpirit,CambridgeUniversityPres, 2000,pp チャールズ サウジーの 序 文 にあるようにワー ズワースはベルの 評 伝 の 編 纂 作 業 に 一 定 の 関 わ りを 見 せていたし コールリッジがルソーの 批 判 をしていた1797 年 から1830 年 頃 までの 期 間 は 一 時 的 と 呼 べるほど 短 いものではなく ま た 彼 らの 一 連 の 教 育 論 は 児 童 労 働 のみを 限 定 的 に 論 じているわけではない さらにリードも 指 摘 するようにこの 時 期 のロマン 派 詩 人 たちの 発 言 はその 後 のイギリス 国 内 における 教 育 思 想 や 教 育 実 践 に 対 して 大 きな 影 響 力 を 持 った 点 で 重 要 である Ian Read,'Romantic Ideologies, EducationalPractices,andInstitutionalFormations ofenglish',journalofeducationaladministration andhistory,28:1,1996,p Coleridge,TheColectedWorksofSamuelTaylor Coleridge,TheFriend I,ed.BarbaraE.Rooke, PrincetonUniversityPres,1969,p Coleridge,TheColectedWorksofSamuelTaylor Coleridge,Lectures onLirerature,ed. KathleenCoburn,PrincetonUniversityPres,1987, pp ,pp AndrewBel,TheMadrasSchool,orElementsof Tuition:comprisingofAnalysisofAnExperimentin EducationmadeatMaleAsrlum,Madras,London: PrintedbyT.Bensley,1807,p コンネルはこうした 政 治 経 済 におけるコール リッジの 見 解 が 彼 の 教 育 論 に 強 く 影 響 している と 見 ており 1808 年 の 講 演 ではランカスター 批 判 に 加 えてマルサスに 対 する 度 を 超 した 攻 撃 が 見 られると 指 摘 している Connel,op.cit., p Lockridge,op.cit.,pp ,Hedley,op.cit., p Hedley,Ibid.,p 道 徳 哲 学 の 直 観 主 義 特 にケンブリッジ モ ラリストと 呼 ばれる 人 々が 受 けたカントの 影 響 がコールリッジを 介 してのことだったことは 児 玉 聡 を 参 照 児 玉 聡 功 利 と 直 観 - 英 米 倫 理 思 想 史 入 門 - 勁 草 書 房 2010 年 頁 ま たロックリッジは 功 利 主 義 の 観 念 連 合 論 と 決 別 したコールリッジが 人 格 形 成 においてモラルす なわち 善 を 引 き 出 す ために 直 観 主 義 の 思 想 を 構 築 していったことを 明 らかにしている Lockridge,op.cit.,pp 世 紀 の 文 化 や 思 想 に 対 するイデオロギー としてのロマン 主 義 の 影 響 に 着 目 した 研 究 とし てはマクガンを 参 照 JeromeJ.McGann,The Romantic Ideology: A Critical Investigation, UniversityofChicagoPres,ChicagoandLondon, Read,op.cit.,pp ペインの 教 育 思 想 と 教 育 実 践 についてはオル ドリッチを 参 照 R.オルドリッチ イギリス ヴィクトリア 期 の 学 校 と 社 会 -ジョゼフ ペイ ンと 教 育 の 新 世 界 本 多 みどり 訳 ふくろう 出 版 2013 年 46 なお 本 稿 では1883 年 出 版 の 第 二 版 を 参 照 して いる JosephPayne,LecturesontheScienceand theartofeducationwithotherlecturesandesays,london:longmansgreen& Co., Payne,op.cit.,p Ibid.,p Ibid. 50 C.J.Ducase,'WhatCanPhilosophyContributeto EducationalTheory?'inSelectedReadingsinthe PhilosophyofEducation,edJ.Park,Macmilan, 1958,pp.9-24,HarySchofield,ThePhilosophyof Education:AnIntroduction,Routledge Library 36

40 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 Editions:Education,London:GeorgeAlen & Unwin LTD, 1972, pp.30-33, Amasa Philip Ndofirepi,ElizabethSpiweNdofirepi,op.cit.,pp ,AmasaP.Ndofirepi,'DecipheringTraditional AfricanEducationinR.S.Peters'Educationas Initiation',JournalofEducationandLearning, Vol.8(2),2014,pp イギリスにおけるヤングの 思 想 的 影 響 の 様 々 な 可 能 性 については 池 亀 直 子 イギリス 芸 術 教 育 思 想 における 独 創 性 と 公 共 性 -レノルズ ブレイクとロマン 主 義 の 子 ども 観 風 間 書 房 2014 年 頁 を 参 照 37

41 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 地 域 における 現 代 美 術 考 Ⅳ 観 光 資 源 としてのアート デザイン 島 屋 純 晴 著 者 は これ 迄 に 各 地 のアート デザインを 活 用 した 町 の 活 性 化 事 例 を 調 査 研 究 論 考 してきた 本 論 では 石 川 県 金 沢 市 が 北 陸 新 幹 線 開 業 を 見 据 えたうえでアート デザインと 観 光 の 連 携 を 強 く 意 識 した 多 様 な 取 り 組 みについての 事 例 を 検 証 すると 共 に そこから 見 えてくる 交 流 人 口 拡 大 の 方 策 に ついて 言 及 論 考 する 併 せて 金 沢 市 の 事 例 研 究 から 秋 田 市 の 今 後 の 観 光 施 策 について その 可 能 性 と 方 向 性 について も 言 及 する キーワード:アート デザイン 地 方 都 市 における 観 光 戦 略 Thecontemporaryartconsideredintheregion Ⅳ :ArtandDesignastourism resources SHIMAYAYoshiharu Theauthorhasinvestigatedanddiscusedvariouscasesofvitalizationoftownwhichutilizeartand design.thispaperverifiesthecaseofvarietyofefortsmadebykanazawacity,ishikawaprefecture,with strongawarenesonthecolaborationoftourismandart/designinviewofthehokurikushinkansenopening, anditalsoreferstoanddiscusesaboutthemeasuresforexpansionofexchangepopulationthatisbrought about.inaddition,inconnectionwiththecasestudiesofkanazawa,italsoreferstothepotentialityand directionofthefuturetourismpolicyofakitacity. Keywords:Art,design,tourismstrategyinregionalcities 1 観 光 文 化 都 市 金 沢 に 見 られるアート デザインを 活 用 した 観 光 戦 略 を 探 る 地 方 都 市 の 衰 退 が 現 実 味 を 帯 びる 中 それぞ れの 地 域 では この 現 状 を 打 ち 破 るべく 様 々 な 施 策 が 試 みられている しかしながら 世 界 の 日 本 の 経 済 状 況 の 不 安 定 さと 中 国 を 始 めとするアジアの 各 国 の 経 済 的 な 台 頭 世 界 中 の 政 情 市 場 不 安 東 日 本 大 震 災 以 降 の 国 内 おける 不 均 衡 とも 言 える 様 々な 分 野 におけ る 格 差 社 会 の 出 現 など 地 方 都 市 の 未 来 はな かなか 見 通 しの 築 けない 状 況 が 慢 性 化 してい る その 様 な 状 況 下 であっても 特 定 の 地 域 においては これまでの 経 済 施 策 と 異 なる 価 値 観 を 見 出 し 過 去 に 見 られない 都 市 政 策 に 39

42 地 域 における 現 代 美 術 考 Ⅳ 観 光 資 源 としてのアート デザイン 島 屋 純 晴 よって 確 実 に 地 域 振 興 に 成 果 を 上 げる 都 市 が 出 現 しつつある 著 者 は これまでその 専 門 分 野 である アー ト デザインを 活 用 した 都 市 政 策 地 域 活 性 化 の 視 点 から 青 森 県 十 和 田 市 石 川 県 金 沢 市 などを 対 象 にその 活 性 化 策 を 調 査 研 究 し 論 考 を 重 ねてきた そのような 研 究 の 中 より 石 川 県 金 沢 市 の 都 市 政 策 特 にアート デザイ ンと 観 光 を 強 く 結 びつけ 地 域 の 経 済 の 向 上 交 流 人 口 の 拡 大 に 成 果 を 上 げる 戦 略 について 取 り 上 げ その 分 析 を 通 じて 地 方 都 市 の 活 性 化 の 可 能 性 と 秋 田 市 における 地 域 振 興 の 方 向 性 について 言 及 する など 世 界 各 地 のメディア 等 で 選 出 される 世 界 の 美 しい 駅 に 必 ず 登 場 する 金 沢 駅 の 表 玄 関 が 多 くの 観 光 客 の 意 表 をつくかたちで 現 れ る この 地 で 盛 んな 能 楽 で 使 われる 鼓 をモチー フにした 大 きな 鼓 門 と 雨 天 の 多 い 北 陸 地 方 で 必 需 品 とも 言 える 雨 傘 をイメージした ガラスの もてなしドーム から 構 成 されて おり その 姿 形 スケールはここから 始 まる 金 沢 観 光 の 始 まりを 大 きく 期 待 させるに 十 分 すぎるほどの 力 を 見 せつける 2 重 層 的 構 造 を 持 つ 金 沢 市 の 観 光 振 興 に おけるアート デザインの 活 用 策 金 沢 市 は 北 陸 地 域 にあっては 所 謂 大 規 模 製 造 業 の 数 において 決 して 活 発 な 状 況 には なく 富 山 県 新 潟 県 等 と 比 べると 観 光 産 業 に 代 表 されるサービス 産 業 の 経 済 が 中 心 を 為 すともいえる そうした 状 況 下 長 く 開 業 が 待 たれた 北 陸 新 幹 線 の 長 野 ~ 金 沢 間 の 開 通 を 機 に これまで 以 上 に 文 化 観 光 都 市 とし ての 発 展 に 非 常 に 大 きな 期 待 と 活 性 化 の 機 運 が 高 まっている この 観 光 文 化 都 市 と 言 われ る 都 市 の 施 策 の 実 情 と その 成 果 の 有 り 様 を 研 究 検 証 する 2.1 JR 金 沢 駅 に 見 る 観 光 のためのアー ト デザイン 活 用 事 例 多 くの 観 光 客 は 鉄 道 にかぎらず 空 路 を 利 用 した 場 合 でも 小 松 空 港 より 直 行 するリムジ ンバスが JR 金 沢 駅 を 起 点 とすることから 金 沢 駅 を 始 まりとして 金 沢 市 の 観 光 に 望 む ここにすでにアート デザインを 最 大 限 活 用 する 戦 略 が 組 み 込 まれている 空 路 利 用 の ケースでは 金 沢 駅 西 口 JR 利 用 の 場 合 中 央 部 が 最 初 の 導 入 部 となるが そこから 観 光 を 目 的 に 金 沢 市 中 心 部 に 向 かうために 駅 東 口 にアクセスすることとなる そこにはアメリカの 大 手 旅 行 雑 誌 トラベ ル レジャー のウェブ 版 において 日 本 で 唯 一 世 界 で 最 も 美 しい 駅 14 選 に 選 出 される 金 沢 駅 鼓 門 執 筆 者 撮 影 これらは 完 成 当 時 地 元 住 民 からは 金 沢 に は 不 釣 り 合 い そぐわない 等 多 くの 反 対 意 見 が 聞 かれたが 北 陸 新 幹 線 開 業 直 前 の 現 時 点 ではそのデザイン 性 を 含 め 景 観 構 成 の 戦 略 から 観 光 産 業 の 隆 盛 に 大 きな 役 割 を 担 い 金 沢 のイメージ 戦 略 に 大 きな 役 割 を 果 たして いることは 明 白 である もてなしドーム 内 観 執 筆 者 撮 影 40

43 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 車 椅 子 等 の 方 のタクシー 乗 り 場 執 筆 者 撮 影 降 雨 時 も 傘 の 必 要 がないバス 乗 り 場 執 筆 者 撮 影 2.2 金 沢 駅 を 起 点 とする 観 光 のための 2 次 アクセス 金 沢 駅 を 起 点 とした 市 内 観 光 ルートについ ては そのスケールから 見 ると 十 分 に 徒 歩 圏 内 とも 言 える しかしながら 観 光 についての 市 内 アクセスについては 非 常 に 優 れたプラン と 実 践 が 見 て 取 れる かつては 地 下 鉄 やモノレールの 導 入 が 検 討 された 時 期 も 在 ったようだが 現 在 は 多 様 な 路 線 バスの 整 備 とタクシー 利 用 に 関 して 非 常 に 細 かな 配 慮 を 伴 う 利 便 性 の 向 上 が 図 られ ている これらの 起 点 となる 金 沢 駅 にあるバ ス タクシーターミナルは 先 に 述 べた 雨 傘 をイメージしたガラスの もてなしドーム のもとにある 雨 天 や 降 雪 の 季 節 においても 傘 を 必 要 とすることなく 各 種 路 線 バス タ クシーに 乗 車 することが 可 能 な 設 計 がなされ 快 適 な 状 況 を 提 供 する また 何 よりも 驚 か されるのが 非 常 に 多 種 多 様 に 準 備 されて いる 各 種 路 線 バスについてである 運 行 日 時 やルートによって 主 な 観 光 ルートを 結 ぶバ スは 以 下 の 様 な 路 線 が 準 備 され 多 様 な 観 光 客 のニーズに 手 厚 く 対 応 している 1) 城 下 まち 金 沢 周 遊 バス( 北 陸 鉄 道 ) 2) 金 沢 ふらっとバス( 北 陸 鉄 道 ) 3) 兼 六 園 シャトル( 北 陸 鉄 道 ) 4) 金 沢 ライトアップバス 夜 の 金 澤 光 の 散 歩 道 ( 北 陸 鉄 道 ) 5) 金 沢 ショッピングライナー まちバス (JR 西 日 本 ) これらの 路 線 バスは 主 に 観 光 客 を 対 象 とし ており 金 沢 駅 兼 六 園 金 沢 城 址 公 園 尾 山 神 社 近 江 町 市 場 金 沢 21 世 紀 美 術 館 し いのき 迎 賓 館 を 含 む 広 坂 公 園 東 の 茶 屋 街 等 をとても 利 便 性 高 く 繋 ぐ 役 割 を 果 たしている 更 に 通 常 の 路 線 バスの 整 備 も 行 き 届 き 各 主 要 なバス 停 留 所 では 運 行 状 況 等 待 ち 時 間 の 予 測 も 可 能 となっている 加 えてこれら 路 線 バスの 運 行 に 際 し ソフ ト 面 特 にバス 運 転 手 の 方 々の 観 光 に 対 する ホスピタリティーが 素 晴 らしい 効 果 を 生 み 出 し ている 時 に 所 謂 金 沢 弁 と 言 われる 嫌 味 のない 方 言 を 交 えながら 非 常 に 丁 寧 でわかりやす い 対 応 を 交 え 質 の 高 いサービスと 乗 客 にとっ て 居 心 地 の 良 い 時 間 を 提 供 している 点 も 見 逃 せない 車 内 放 送 も 必 要 な 多 国 語 を 提 供 して おり まさに 観 光 の 視 点 から 抜 かりのないサー ビスが 日 常 的 に 提 供 される 主 要 な 観 光 施 設 となりつつある 尾 山 神 社 執 筆 者 撮 影 41

44 地 域 における 現 代 美 術 考 Ⅳ 観 光 資 源 としてのアート デザイン 島 屋 純 晴 多 くの 観 光 客 で 賑 わう 近 江 町 市 場 執 筆 者 撮 影 市 内 を 走 るタクシーについても 非 常 にサー ビス 精 神 が 旺 盛 でまさに 観 光 地 に 相 応 しいサー ビスを 提 供 している これは 著 者 の 印 象 に 基 づく 記 述 となるが かつて 長 く 金 沢 に 居 住 し た 経 験 から 考 慮 すると 隔 世 の 感 覚 を 持 たざる をえない ここ 数 年 に 渡 り 何 度 も 調 査 研 究 の ため 訪 れ 幾 度 となく 様 々なタクシーを 利 用 し た 経 験 から 判 断 すると 的 確 に 最 短 の 距 離 時 間 を 考 慮 し 乗 客 に 対 応 する 会 話 について も 非 常 に 満 足 度 の 高 いサービスを 提 供 してく れる 城 下 まち 金 沢 周 遊 バス 金 沢 ふらっとバス 執 筆 者 撮 影 2.3 多 様 な 側 面 を 見 せる 金 沢 市 の 文 化 観 光 政 策 のための 組 織 公 益 財 団 法 人 金 沢 芸 術 創 造 財 団 と 公 益 財 団 法 人 金 沢 文 化 振 興 財 団 公 益 財 団 法 人 金 沢 芸 術 創 造 財 団 金 沢 21 世 紀 美 術 館 は 美 術 館 が 街 を 変 え る との 理 念 を 掲 げる 現 代 美 術 館 である 所 謂 文 化 行 政 の 視 点 とともに 観 光 行 政 都 市 経 済 効 果 の 観 点 から 地 域 活 性 化 の 成 功 例 とし その 大 きな 役 割 を 果 たす 通 常 地 方 公 立 美 術 館 では 設 置 自 治 体 の 教 育 委 員 会 等 が 主 管 し 所 謂 教 育 行 政 の 一 部 門 と 捉 える 傾 向 がほとん どである しかしここでは 学 芸 課 と 交 流 課 が 設 置 され 設 置 者 である 金 沢 市 が 美 術 館 の 顔 というべき 展 示 企 画 を 担 当 する 学 芸 課 を 非 常 に 重 視 し 対 外 的 に 誇 れる 観 光 政 策 としても 十 分 に 機 能 するような 展 観 の 実 施 に 力 を 入 れる 同 様 に 歴 代 の 館 長 職 に 国 内 のみ ならず 世 界 的 に 見 ても 優 れた 企 画 運 営 に 長 け た 能 力 を 持 つ 人 材 を 配 し 現 代 美 術 館 として の 質 の 確 保 と 向 上 に 寄 与 する 体 制 実 現 させて いる 学 芸 課 と 同 様 に 交 流 課 では 市 民 参 画 の 重 視 将 来 を 担 う 子 どもに 焦 点 を 当 て 現 代 美 術 を 通 じた 教 育 を 重 視 している 点 が 見 られる この 交 流 課 は 教 育 子 供 向 けプログラム 等 それぞれの 専 門 スタッフが 市 民 とこども アー ト デザイン 音 楽 や 映 像 舞 台 等 を 通 した 教 育 普 及 活 動 を 実 践 している 42

45 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 休 館 日 にも 賑 わう21 世 紀 美 術 館 執 筆 者 撮 影 博 物 館 安 金 箔 工 芸 館 金 沢 ふるさと 偉 人 館 泉 鏡 花 記 念 館 金 沢 湯 涌 夢 二 館 金 沢 蓄 音 機 館 前 田 土 佐 守 記 念 館 室 生 犀 星 記 念 館 徳 田 秋 聲 記 念 館 老 舗 記 念 館 金 沢 文 芸 館 金 沢 湯 涌 江 戸 村 鈴 木 大 拙 館 の 各 施 設 の 運 営 に 当 たる これらの 施 設 は かつて 金 沢 が 生 み 出 し 文 化 都 市 の 礎 とも 言 える 文 化 人 や 地 域 が 生 み 出 した 文 化 芸 術 を 観 光 資 源 と 捉 え そ の 魅 力 を 多 く 来 訪 者 観 光 客 に 伝 え 金 沢 と いうブランドを 巧 みに 活 用 する 施 策 が 見 られ る 財 団 は 金 市 役 所 内 に 設 置 され その 名 の 通 り 公 益 財 団 であるが その 経 営 方 針 手 法 は 民 間 企 業 と 公 営 のメリットを 非 常 に 効 果 的 に 組 み 合 わせ 他 都 市 にはない 成 功 事 例 をとし て 市 街 地 の 効 果 的 な 活 性 化 を 創 出 している 金 沢 21 世 紀 美 術 館 写 真 提 供 金 沢 市 金 沢 21 世 紀 美 術 館 では 2004 年 10 月 の 開 館 以 来 2014 年 開 館 10 年 目 にして1,400 万 人 を 超 える 入 館 者 が 数 えられた 年 間 平 均 140 万 人 近 い 人 がコンスタントに 足 を 運 んでいる 人 口 47 万 人 の 金 沢 市 においては 驚 異 的 な 数 字 で ありその 経 済 効 果 都 市 ブランド 構 築 地 域 活 性 化 の 好 影 響 は 計 り 知 れない 今 春 の 北 陸 新 幹 線 開 業 後 は さらに 訪 れる 人 が 増 えるで あろうことは 容 易 に 推 測 出 来 る 金 沢 芸 術 創 造 財 団 ではその 他 に 金 沢 歌 劇 座 金 沢 市 文 化 ホール 金 沢 市 アートホール 金 沢 市 民 芸 術 村 金 沢 卯 辰 山 工 芸 工 房 金 沢 湯 涌 創 作 の 森 金 沢 能 楽 美 術 館 を 運 営 し 金 沢 美 術 工 芸 大 学 とともに 新 たな 文 化 芸 術 の 創 出 と その 成 果 の 活 用 文 化 芸 術 都 市 の 推 進 に 大 きく 寄 与 する 公 益 財 団 法 人 金 沢 文 化 振 興 財 団 金 沢 文 化 振 興 財 団 は 所 謂 観 光 文 化 施 設 の 寺 島 蔵 人 邸 中 村 記 念 美 術 館 金 沢 くらしの 金 沢 市 民 芸 術 村 金 沢 職 人 大 学 校 公 益 財 団 法 人 金 沢 芸 術 創 造 財 団 が 管 理 運 営 する 金 沢 市 民 芸 術 村 は 主 に 金 沢 市 民 を 中 心 に 地 域 の 文 化 芸 術 に 関 心 を 寄 せ そうした 市 民 活 動 に 関 わる 多 くに 方 のために 開 設 運 営 される 何 よりも 驚 異 的 なのは 公 設 の 施 設 で ありながら 24 時 間 体 制 で 利 活 用 が 可 能 であ る 点 である 趣 味 レベルの 活 動 から プロ 活 動 の 予 備 軍 までを 網 羅 し 多 様 な 文 化 芸 術 活 動 のサポート 体 制 を 形 作 る 演 劇 音 楽 活 動 写 真 絵 画 彫 刻 工 芸 作 品 の 制 作 展 示 な ど 非 常 多 様 な 分 野 について 活 動 が 可 能 な 施 設 は 非 常 に 魅 力 に 富 んでいる かつてより 長 い 歴 史 を 刻 む 金 沢 美 術 工 芸 大 学 そして 地 域 文 化 芸 術 工 芸 の 保 存 育 成 を 目 的 とする 卯 辰 山 工 芸 工 房 そこにこの 市 民 芸 術 村 が 加 わり あらゆる 階 層 の 文 化 芸 術 活 動 の 実 践 を 可 能 に している 更 に 驚 くべきは 芸 術 村 内 に 設 置 される 職 人 大 学 校 が 挙 げられる この 金 沢 職 人 大 学 校 は プロの 職 人 として すでに 仕 事 を 持 つ 若 手 職 人 を 対 象 に 文 化 芸 術 都 市 金 沢 の 各 文 化 施 設 観 光 施 設 伝 統 的 建 造 物 と 景 観 を 未 来 にわたり 維 持 補 修 する ための 優 れた 職 人 の 養 成 施 設 である 43

46 地 域 における 現 代 美 術 考 Ⅳ 観 光 資 源 としてのアート デザイン 島 屋 純 晴 金 沢 市 民 芸 術 村 執 筆 者 撮 影 育 施 設 では 賄 うことの 出 来 ない 分 野 の 高 度 な 職 人 の 養 成 を 実 践 し 後 継 者 の 育 成 を 行 う 従 って その 教 育 研 修 は 通 常 の 仕 事 を 終 えた 夜 間 に 行 われ 左 官 瓦 職 人 生 け 垣 庭 石 等 を 含 む 造 園 神 社 仏 閣 を 含 む 大 工 など 伝 統 文 化 都 市 の 担 い 手 の 育 成 の 現 場 であり 結 果 として 金 沢 の 末 永 い 文 化 政 策 の 一 翼 を 担 う 人 材 の 育 成 でもある これらの 研 修 教 育 を 無 償 で 享 受 出 来 る 体 制 についても 金 沢 の 文 化 芸 術 都 市 としての 都 市 運 営 の 確 実 な 方 向 性 施 策 の 確 かさを 垣 間 見 ることができる 2 章 は 著 者 の 過 去 の 論 考 より 抜 粋 添 削 加 筆 を 行 い 本 論 の 趣 旨 にふさわしい 内 容 に 体 裁 を 整 えたものである 金 沢 市 民 芸 術 村 アトリエ 展 示 棟 執 筆 者 撮 金 沢 市 民 芸 術 村 職 人 大 学 校 執 筆 者 撮 影 金 沢 市 民 芸 術 村 職 人 大 学 校 執 筆 者 撮 影 金 沢 美 術 工 芸 大 学 卯 辰 山 工 芸 工 房 等 の 教 3 金 沢 市 の 観 光 振 興 におけるアート デザ インの 活 用 策 と 重 層 的 構 造 の 再 確 認 これまで 複 数 年 次 に 亘 る 調 査 研 究 の 結 果 から 金 沢 市 の 観 光 政 策 に 係 る 重 層 的 構 造 が 改 めて 確 認 することが 出 来 る 特 定 の 建 築 施 設 設 備 の 整 備 伝 統 的 文 化 施 設 と 現 代 の 文 化 芸 術 の 活 用 さらには 通 常 は 観 光 施 設 とし て 捉 えられる 分 野 に 対 する 文 化 政 策 の 導 入 通 常 は 公 共 の 自 治 体 が 取 り 組 むことがないと 思 われる 交 通 機 関 等 ありとあらゆる 所 に 文 化 政 策 の 考 え 方 が 取 り 入 れられ まさに 文 化 観 光 都 市 として アート デザインを 非 常 に 有 効 に 活 用 した 重 層 的 とも 言 える 観 光 文 化 施 策 が 実 現 されている こうした 事 例 は 国 内 地 方 自 治 体 においては 極 めて 稀 有 なケースであ り 容 易 に 取 り 入 れることは 非 常 に 困 難 であ ると 思 われる しかしながら 現 実 に 大 きな 成 果 を 上 げ 都 市 の 経 済 の 活 性 化 に 寄 与 する 姿 を 見 ると 多 くの 点 を 参 考 としながら 例 え ばこうした 施 策 の 秋 田 モデルを 計 画 し さら に 独 自 の 姿 に 発 展 継 承 することは 十 分 に 可 能 であり 是 非 とも 参 考 事 例 として 更 に 研 究 調 査 を 継 続 する 必 要 性 が 大 きいものである 4 秋 田 市 の 現 状 と 今 後 の 都 市 空 洞 化 の 課 題 解 決 策 としての 方 向 性 44

47 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 現 在 秋 田 市 中 心 市 街 地 は 所 謂 箱 物 の 整 備 が 終 了 し 市 街 地 活 性 化 の 方 向 性 と 結 果 が 求 められる 段 階 であるが その 実 質 的 な 運 用 施 策 について 十 分 な 検 討 がなされないまま ハー ド 整 備 のみが 実 施 され 十 分 かつ 本 来 求 め られるべき 活 性 化 については 十 分 な 成 果 があ がっているとは 言 えない 開 発 された 地 区 が 想 定 する 顧 客 層 各 施 設 が 見 込 むターゲット 層 どの 様 な 地 域 からの どの 位 の 集 客 を 見 込 むのか 等 々 具 体 的 な 商 業 活 動 の 方 向 性 と 経 済 の 活 性 化 につい ても 実 際 の 人 の 動 向 を 踏 まえ 一 層 の 検 討 を 行 うことも 必 要 であろう こうした 点 は これまで 調 査 研 究 を 実 施 してきた 青 森 県 十 和 田 市 のアート 十 和 田 本 論 で 調 査 研 究 を 行 った 石 川 県 金 沢 市 の 施 策 等 を 参 考 にしながら 本 県 独 自 の 方 向 性 を 見 出 す ことも 必 要 である 今 後 行 政 民 間 経 済 関 連 事 業 者 そこに 国 際 教 養 大 学 秋 田 県 立 大 学 本 学 等 高 等 教 育 機 関 の 研 究 者 の 研 究 成 果 を 加 え 真 に 求 め られる 市 街 地 の 活 性 化 の 研 究 と 実 現 を 模 索 実 行 すべき 時 でもある 例 えば 現 在 構 想 が 進 む 美 術 大 学 の 設 置 地 区 新 屋 地 区 の 開 発 においてもガラス 工 房 等 の 設 置 計 画 に 留 まらず 新 たな 施 設 設 備 を 如 何 に 運 用 し どのような 人 の 流 れを 創 り そ こに 関 わる 人 材 の 実 際 の 経 済 活 動 のあり 方 経 済 の 方 向 性 についても 言 及 しながら 地 域 の 活 性 化 の 方 向 性 を 探 るべきであろう これまで 各 地 の 調 査 研 究 事 例 成 功 事 例 ば かりではなく 明 らかに 失 敗 事 例 とも 言 える 地 域 の 調 査 研 究 結 果 を 踏 まえれば 新 屋 地 区 等 の 構 想 については 明 確 な 方 向 性 を 指 し 示 し より 具 体 的 なプランを 提 言 することは 十 分 に 現 実 的 である て 捉 え 直 し 醸 造 酒 造 を 新 たな 文 化 価 値 と して 捉 え 直 し 秋 田 県 内 の 醸 造 発 酵 文 化 の 発 信 拠 点 として 整 備 するなどの 施 策 を 一 案 と して 提 言 する 全 国 的 に 見 ても 秋 田 県 の 醸 造 発 酵 食 品 が 持 つ 開 発 能 力 製 造 技 術 商 品 化 の 力 は 非 常 に 魅 力 的 であり 十 分 に 国 内 市 場 の 中 で 存 在 感 を 示 し 得 る 分 野 である しかし 現 状 秋 田 のブランドとして 醸 造 発 酵 食 品 を 発 信 し 経 済 活 動 につなげる 試 みは 各 個 店 に 委 ねられており 地 域 の 経 済 活 動 としては 脆 弱 な 状 況 である 元 来 秋 田 地 域 に 大 きな 活 力 を 生 み 出 していた 醸 造 発 酵 に 関 する 記 念 館 県 内 の 当 該 食 品 を 一 同 に 紹 介 販 売 す る 施 設 実 際 に 食 し 体 験 することが 出 来 るレ ストラン 等 県 内 全 体 を 視 野 に 入 れ 全 国 に 発 信 するための 施 設 は 秋 田 県 内 でも 存 在 しな い もちろん 詳 細 なプラン 施 策 は 専 門 家 に よる 十 分 な 検 討 検 証 が 必 要 となるが 可 能 性 として 非 常 に 大 きな 期 待 が 持 てるものである 更 に 由 利 本 荘 地 区 仙 北 地 区 等 との 連 携 を 深 め 秋 田 独 自 の 食 材 の 開 発 生 産 等 を 取 り 込 み 秋 田 県 広 域 の 食 文 化 の 発 信 基 地 とし て 捉 えれば 大 きな 可 能 性 が 広 がる あくまでも これまでの 調 査 研 究 の 成 果 に 基 づく 計 画 の 一 例 にすぎないが ハードの 整 備 計 画 とともに 実 際 の 現 場 の 経 済 活 動 のあ り 方 関 わる 人 材 等 の 経 済 活 動 と 現 実 的 な 日 常 の 中 にある 様 々な 諸 問 題 を 洗 い 出 し 地 域 の 持 つ 問 題 を アートとデザインの 力 によっ て 活 性 化 全 く 新 しい 文 化 芸 術 を 活 用 し た 交 流 人 口 の 拡 大 観 光 施 策 を 構 築 すること が 求 められる 時 代 で 有 り 現 実 的 な 方 策 とし て 本 研 究 等 の 県 内 高 等 教 育 機 関 の 研 究 成 果 を 活 用 することも 重 要 であろう 5 新 屋 地 区 新 政 跡 地 の 開 発 計 画 提 言 新 屋 地 区 はかつてより 多 くの 酒 造 蔵 元 味 噌 醤 油 等 の 醸 造 元 が 存 在 していた しかし ながら 現 在 においてはわずか 数 社 が 製 造 営 業 を 継 続 するにとどまる こうした 現 状 を 改 め 45

48 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 ソシエテ アノニムにおける 近 代 美 術 館 1920 年 代 アメリカでの 同 時 代 美 術 の 普 及 をめぐって 慶 野 結 香 ソシエテ アノニムは キャサリン ドライヤー マルセル デュシャンらのアーティストを 中 心 として 1920 年 にアメリカ 合 衆 国 で 結 成 された 1929 年 に 開 館 するニューヨーク 近 代 美 術 館 に 先 駆 け 近 代 美 術 館 の 名 を 冠 し 主 に 国 内 へ 欧 米 諸 国 の 前 衛 芸 術 を 普 及 するため 展 覧 会 等 の 活 動 を 展 開 し た 本 稿 では 1920 年 代 の 同 団 体 が 自 らの 美 術 館 と 呼 ぶべき 私 設 ギャラリーを 閉 鎖 してからも 近 代 美 術 館 を 一 貫 して 名 乗 り 続 けたことに 着 目 し 彼 らが 用 いた 近 代 美 術 館 という 概 念 につ いて 考 察 する 19 世 紀 後 半 にアメリカにおいてミュージアムが 誕 生 した 時 より この 国 では 美 術 館 という 場 所 の 確 保 とその 教 育 的 役 割 が 重 視 されてきた しかしソシエテ アノニムは 当 初 は 私 設 ギャ ラリーという 場 所 を 美 術 館 と 見 なしていたが 次 第 に 普 及 活 動 を 展 開 する 主 体 を 包 括 する 概 念 と して 近 代 美 術 館 を 用 いたことが 明 らかになった キーワード:アメリカ 合 衆 国, 近 代 美 術 館,ソシエテ アノニム 'MuseumofModernArt'oftheSociétéAnonyme:Focusingonthe PopularizationofContemporaryArtintheU.S.duringthe1920s KEINOYuka TheSociétéAnonymewasfoundedintheUnitedStatesin1920,spearheadedbyartistssuchasKatherine DreierandMarcelDuchamp.Calingitselfa'museumofmodernart'-aheadoftheMuseumofModernArt, NewYork,whichopenedin1929-thegroupheldexhibitionstopopularizeavant-gardeartprimarilythroughout EuropeanandUScountries.Thispaperfocusedonhowtheorganizationcontinuedtocalitselfa'museumof modernart'evenafterclosingitsownprivategalery-inotherwords,whatwouldbegeneralycaledits museum-inthe1920s,aswelasexaminethesociétéanonyme'sconceptofa'modernartmuseum.'eversince museumswerefoundedinamericainthelaterhalfofthe19thcentury,ithasbeentheirsecurityoftheplace caledthemuseumandeducationalvaluethathasbeenemphasizeddomesticaly.however,whilethesociété Anonymeinitialytooktheterm'museum'torefertothephysicalplacesknownasprivategaleries,itgradualy becameclearthatthesociétécametousetheterm'modernartmuseum'torefertothegeneralideaofartistic outreachthatwasattheheartoftheorganization. Keywords:theUnitedStates,MuseumofModernArt,theSociétéAnonyme 47

49 ソシエテ アノニムにおける 近 代 美 術 館 慶 野 結 香 1 はじめに ソシエテ アノニム(theSociétéAnonyme) は 1920 年 に 画 家 であり 同 時 代 美 術 のコレク ターでもあった キャサリン ドライヤー (KatherineS.Dreier, )を 中 心 に 組 織 され アメリカ 合 衆 国 において 最 初 期 に 同 時 代 の 前 衛 美 術 を 専 門 的 に 展 観 する 場 を 作 った 団 体 の 一 つである 1 主 要 メンバーに は フランス 出 身 で 当 時 アメリカへ 亡 命 中 であったアーティストのマルセル デュシャ ン(MarcelDuchamp, ) ユダヤ 系 アメリカ 人 のマン レイ(ManRay=Emmanuel Rudzitsy, )などがおり ロシア 出 身 の 芸 術 家 ワシリー カンディンスキー (WassilyKandinsky, )を 副 代 表 にするなど 2 組 織 の 国 際 性 を 強 調 しつつ ヨ ー ロ ッ パ か ら 大 西 洋 を 横 断 (transatlantic)してきた 前 衛 美 術 のアメリ カでの 普 及 と 国 内 における 独 自 のモダン アートの 発 展 に 貢 献 した この 団 体 は 1950 年 に 解 散 を 迎 えるまでの 約 30 年 間 存 在 したが 主 な 活 動 は1920 年 代 に 集 約 されている そして この 組 織 の1920 年 代 の 活 動 形 態 は 次 の 三 つに 大 別 することが できる 第 一 に 私 設 ギャラリーにおける 活 動 1920 年 1 月 ニューヨークのイーストサイド 47 丁 目 19 番 地 に 展 覧 会 場 を 設 け 本 部 を 隣 接 するニュージャージー 州 に 置 いたソシエテ アノニムは この 作 品 を 展 示 するが 売 らな いギャラリー3 において 展 覧 会 場 を 閉 鎖 する1924 年 まで 計 20 回 に 及 ぶ 独 自 の 企 画 展 示 を 行 った また 第 二 に 1921 年 頃 から 私 設 ギャラリーでの 活 動 と 並 行 し 東 海 岸 を 中 心 とした 外 部 の 美 術 館 や 教 育 機 関 を 会 場 に 行 わ れた 展 覧 会 の 企 画 や 作 品 貸 与 があげられる そして 第 三 に 1926 年 にブルックリン ミュー ジアムで 行 われた 国 際 モダン アート 展 (InternationalExhibitionofModernArt) という 23ヶ 国 の 作 家 307 点 もの 作 品 を 集 めた この 団 体 最 大 規 模 の 展 覧 会 に 代 表 され る 外 部 の 美 術 館 での 企 画 展 示 の 開 催 があげ られる ソシエテ アノニムを 特 徴 づけているのは 上 記 した 三 つの 活 動 形 態 において 終 始 一 貫 し 近 代 美 術 館 (MuseumofModernArt) 4 という 冠 をその 名 称 に 付 していることである 確 かに 第 一 にあげた 私 設 ギャラリーでの 活 動 においては 美 術 館 と 呼 びうるスペー スが 存 在 していたものの 第 二 にあげた 諸 機 関 における 展 覧 会 の 開 催 は 巡 回 展 示 もし くは 外 部 の 展 覧 会 への 作 品 貸 与 などでの 協 力 活 動 だと 考 えられる 第 三 にあげた 外 部 の 施 設 における 大 規 模 な 国 際 展 の 開 催 に 関 しては ブルックリン ミュージアムという 美 術 館 は 存 在 するものの ソシエテ アノニム 自 体 の 美 術 館 に 相 当 する 場 所 は 存 在 しない 本 稿 では ソシエテ アノニムが 自 らの 美 術 館 と 呼 ぶべき 場 所 を 失 ってからもな お 近 代 美 術 館 という 枠 組 みを 保 持 して 組 織 の 運 営 を 継 続 した 点 に 着 目 し 彼 らの 近 代 美 術 館 の 概 念 を 捉 えることを 目 指 す これまでにも ソシエテ アノニムの1920 年 代 の 活 動 に 関 する 研 究 は 進 められてきた ソシエテ アノニムは アメリカにおける 同 時 代 美 術 のための 最 初 の 実 験 的 美 術 館 (experimentalmuseum) 5 として 取 り 扱 っ ていた 作 品 の 多 様 性 と 東 欧 地 域 を 含 む 広 範 囲 のヨーロッパ 前 衛 芸 術 をアメリカへ 紹 介 した 功 績 が 評 価 されている しかし 管 見 の 限 りで は ソシエテ アノニムがなぜ 近 代 美 術 館 と 冠 し 活 動 を 行 ったのか 論 じたものは 見 あた らない そこで 本 稿 では 美 術 館 という 一 般 的 に 場 所 を 指 すと 考 えられている 対 象 をめぐっ て 自 らのギャラリーを 閉 鎖 した 後 のソシエ テ アノニムの 近 代 美 術 館 が 指 し 示 すも のを 明 らかにすべく 論 を 進 めたい 次 章 では ソシエテ アノニム 以 前 のアメリカ 合 衆 国 で の 美 術 館 の 状 況 を 確 認 するために 同 国 にお けるミュージアムの 特 性 を 歴 史 的 に 確 認 する 続 く3 章 では 先 述 したソシエテ アノニム 三 つの 活 動 形 態 を 分 析 することで 同 団 体 の 活 動 形 態 の 変 遷 に 沿 いながら 近 代 美 術 館 48

50 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 の 枠 組 みを 明 らかにする 以 上 を 通 じて ソ シエテ アノニムにおける 近 代 美 術 館 の 概 念 について 考 察 を 進 めていきたい 2 アメリカにおける 美 術 館 の 特 性 近 代 美 術 館 は 文 字 通 りモダン アート を 専 門 的 に 扱 うミュージアムのことを 指 すが 19 世 紀 末 から20 世 紀 前 半 にかけ 芸 術 の 諸 分 野 において モダニズム と 呼 ばれる 既 存 の 価 値 観 を 否 定 し 新 傾 向 の 内 容 形 式 手 法 の 刷 新 を 行 う 運 動 が 生 まれたように それら の 作 品 を 専 門 的 に 扱 う 美 術 館 の 誕 生 は 一 般 的 には1929 年 に 開 館 したニューヨーク 近 代 美 術 館 (MoMA)であるとされている しかしソシエテ アノニムは MoMAに 先 駆 けること 約 10 年 1920 年 に 近 代 美 術 館 を 冠 してモダン アートの 普 及 活 動 を 開 始 し たため アメリカ 合 衆 国 において 最 初 期 に 近 代 美 術 館 を 名 乗 ったことになる 6 美 術 館 という 制 度 としては アメリカでは19 世 紀 後 半 からはじまる 美 術 館 設 立 運 動 にソシエテ アノニムは 影 響 を 受 けていると 考 えられるの ではないか そこで 本 章 では ソシエテ ア ノニム 誕 生 時 のミュージアムというものにつ いて 把 握 するために アメリカにおける 美 術 館 の 特 性 を 歴 史 的 に 確 認 したい 1776 年 にイギリスの 植 民 地 から 独 立 を 宣 言 したアメリカ 合 衆 国 は 19 世 紀 後 半 南 北 戦 争 ( ) 後 に ギルデッド エイジ (GildedAge= 鍍 金 時 代 ) と 呼 ばれる 時 代 を 迎 える この 時 代 は おおよそ1850 年 代 か ら1900 年 までの 約 50 年 間 のことを 指 すが 資 本 主 義 の 急 速 な 成 長 の 下 グラント 政 権 に 代 表 される 政 治 的 腐 敗 のなかで 国 家 の 庇 護 を 受 けた 資 本 家 たちは 更 なる 富 を 蓄 えた この ギルデッド エイジ を 迎 えたアメ リカは 資 本 家 たちの 富 の 蓄 積 を 基 盤 として 文 化 的 芸 術 的 なものに 目 覚 めたとされる その 端 的 な 例 として 1870 年 代 におけるアー ティストや 上 流 階 級 の 人 々を 中 心 とする 社 交 親 睦 を 主 な 目 的 とした クラブ の 形 成 があ げられる クラブとは 元 来 共 通 の 趣 味 や 興 味 を 持 つ 仲 間 が 定 期 的 に 集 まる 組 織 のことで あり 17 世 紀 後 半 から18 世 紀 のヨーロッパで 誕 生 した 形 態 であった 1871 年 アメリカにおける 最 初 の 美 術 クラ ブ である サ ル マガンディ クラブ (SalmagundiClub) がニューヨークのグリ ニッジ ビレッジに 開 設 された このクラブ は ニューヨーク スケッチ 教 室 (New YorkSketchClub) を 母 体 とした 画 家 や 彫 刻 家 を 中 心 とした 集 まりであったと 同 時 に 会 員 のモノクロ イラストを 展 示 する ブラッ ク アンド ホワイト 展 (BlackandWhite ExhibitionoftheSalmagundiSketchClub) という 展 覧 会 を1879 年 から10 年 間 行 ったこと で 知 られている この 展 覧 会 は 国 立 デザイ ン 学 校 (thenationalacademyofdesign) が 会 場 として 使 われ 出 品 作 品 を 記 録 したカ タログも 発 行 された 大 規 模 な 試 みであった しかしこの 時 代 におけるアーティストとは 独 自 の 作 品 を 生 み 出 すことよりも アメリカ の 上 流 社 会 に 対 してヨーロッパの 趣 味 を 紹 介 する 役 割 を 担 っているに 過 ぎなかったと 言 わ れている クラブ を 母 体 として 展 覧 会 が 催 され 上 流 階 級 を 中 心 にヨーロッパ 美 術 の 紹 介 をす るという 役 割 をアーティストが 担 う 一 方 で 南 北 戦 争 終 了 後 に 美 術 を 一 般 市 民 へ 見 せる 場 をつくる 動 きが 見 られるようになった ア メリカで 三 大 美 術 館 と 呼 ばれている 年 開 館 のニューヨーク 州 のメトロポリタン 美 術 館 (TheMetropolitanMuseumofArt) 1870 年 に 設 立 され1876 年 に 開 館 したマサチュー セッツ 州 のボストン 美 術 館 (MuseumofFine Arts,Boston) 1879 年 に 開 館 したイリノイ 州 のシカゴ 美 術 館 (TheArt Instituteof Chicago)の 設 立 運 動 がこれにあたる 現 在 世 界 最 大 規 模 の 美 術 館 の 一 つとなっ ているメトロポリタン 美 術 館 の 場 合 その 計 画 は1866 年 のパリではじまった アメリカ 独 立 記 念 日 を 祝 うためにパリのアメリカ 人 たち 49

51 ソシエテ アノニムにおける 近 代 美 術 館 慶 野 結 香 が 集 った 席 で 外 交 官 のジョン ジョイがア メリカに 国 際 的 な 規 模 の 美 術 館 が 存 在 しない ことを 嘆 き 美 術 館 の 設 立 の 必 要 性 を 訴 えた ことが 契 機 となったといわれている パリに 住 まい 当 時 のフランスをはじめとするヨー ロッパ 芸 術 の 先 進 性 を 実 感 していたアメリカ 人 たちによって 美 術 館 の 設 立 計 画 が 進 めら れたことは 特 徴 的 である メトロポリタン 美 術 館 は 当 初 より 一 般 市 民 への 公 開 を 目 指 し 美 術 館 の 建 物 やコレク ションが 全 くない 状 態 で 計 画 がはじめられ 民 間 人 の 資 金 や 寄 付 によって まず 美 術 館 の 建 物 がつくられた それから 展 示 される 作 品 の 収 集 がなされ 4 年 後 の1870 年 に 創 立 1872 年 に 開 館 したのだった ヨーロッパの 美 術 館 が ルーヴルをはじめ として18 世 紀 末 の 革 命 が 生 み 出 したものであ り 19 世 紀 には 国 家 の 帝 国 主 義 の 道 具 化 して いたのとは 異 なり アメリカの 美 術 館 はメト ロポリタン 美 術 館 の 設 立 からも 分 かるように 政 治 家 ではなく 民 間 人 が 創 立 管 理 し 基 金 を 提 供 した 市 民 が 美 術 館 を 担 った 背 景 には 南 北 戦 争 後 の 資 力 の 蓄 積 ばかりでなく 美 術 館 に 関 わることで 教 養 があり 公 共 の 利 益 を 優 先 している 姿 勢 を 示 したいという 欲 望 があっ たかもしれないが アメリカの 美 術 館 は 草 創 期 から 一 貫 して 美 術 館 の 教 育 的 役 割 を 重 視 していたことは 特 筆 に 値 するだろう それ は 美 術 品 を 通 して アーティストたちが 新 た な 作 品 を 生 み 出 すという 美 術 教 育 に 関 するこ とよりも 一 般 市 民 の 美 的 感 性 を 高 めるため に 彼 らの 多 くが 世 界 の 美 術 作 品 を 目 にする 機 会 を 設 け 美 的 意 識 を 呼 び 起 こすことで 国 民 的 趣 向 や 道 徳 規 範 の 向 上 を 目 指 すものであっ た 7 また アメリカの 美 術 館 はヨーロッパの 美 術 館 の 理 念 を 綿 密 に 模 倣 した それは コレ クションや 展 示 にも 表 れており イギリスを はじめとするヨーロッパから 文 化 財 をすさま じい 勢 いで 輸 入 したのだった 展 示 室 の 中 央 にエジプト 美 術 古 代 ギリシャ ローマ 美 術 家 具 や 銀 製 品 世 紀 の 巨 匠 の 作 品 や19 世 紀 の 絵 画 を 展 示 し さらに 後 には 印 象 派 や アジア 美 術 も 加 えられた また 絵 画 の 展 示 方 法 は メトロポリタン 美 術 館 開 館 時 を 例 にとると フランス パリ の 美 術 アカデミーが1725 年 から1890 年 まで 行 っ た サロン(Salon) における 絵 画 の 大 き さを 基 準 として 壁 を 覆 い 尽 くすように 多 段 掛 けした 展 示 形 式 の 影 響 が 見 られる 一 方 で 20 世 紀 に 入 ると 現 在 でも 北 米 美 術 館 の 特 徴 と なっている 時 代 別 展 示 室 (periodrooms) の 展 示 手 法 が 登 場 する しかしこれも ベル リン 美 術 館 カイザー フリードリヒ 美 術 館 ( 現 ボーデ 美 術 館 )などを 手 がけたヴィルヘ ルム ボーデ(Wilhelm von Bode, )の 総 合 的 展 示 方 法 を 学 んだキュレーター が 帰 国 して 師 の 理 念 を 実 現 したものであり アメリカの 展 示 はヨーロッパの 影 響 下 にあっ たと 言 わざるを 得 ない つまり ソシエテ アノニムが 近 代 美 術 館 を 設 立 する 以 前 のアメリカでは 美 術 館 とは 作 品 があるから 作 られるのではなく 国 民 の 美 的 啓 蒙 という 教 育 的 目 的 によって 建 物 や 場 所 から 用 意 されるものであった ま た 収 蔵 品 や 展 示 のレベルにおいては ヨー ロッパを 模 倣 することで アメリカにおける 美 術 館 は 形 成 されていったのだ 3 ソシエテ アノニムの 活 動 形 態 次 にソシエテ アノニムの 近 代 美 術 館 の 概 念 を 探 るべく 1920 年 代 の 同 団 体 の 活 動 を ほぼ 時 系 列 に 沿 って 三 つの 場 合 分 けに 基 づき 考 察 していく 3.1 私 設 ギャラリーでの 活 動 ソシエテ アノニムは 1920 年 からはじま る 私 設 ギャラリー[ 図 版 1]での 活 動 に 際 し て 以 下 の 様 な 理 念 を 掲 げており 言 説 レベ ルで 自 身 の 近 代 美 術 館 を 次 のように 定 義 している 50

52 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 目 的 ソシエテ アノニム:1920 年 モダン アートの 美 術 館 の 目 的 は 教 育 的 (educational)なものである その 美 術 (Art)の 進 歩 に 対 してアメリカにおける 研 究 を 促 進 するこの 国 際 的 組 織 は 基 本 理 念 (FundamentalPrinciples)を 土 台 とし 今 日 の 美 術 における 美 (beauty) の 新 しい 表 現 が 持 つ 精 神 力 と 生 命 力 の 保 存 に 助 力 する 標 語 伝 統 とは 美 しいものである しかし 伝 統 を 創 造 することは 後 を 追 うことで 8 はない フランツ マルクの 書 簡 以 上 の 引 用 から 理 解 されるのは 19 世 紀 後 半 から 設 立 されたアメリカの 美 術 館 の 特 徴 で ある 教 育 的 であることをモダン アート を 専 門 に 扱 うソシエテ アノニムでも 適 用 し ようとしたことである また モダン アー トの 国 際 性 と 美 的 な 価 値 を 認 め それらの 作 品 を 美 術 館 という 枠 組 みを 用 いることで コレクションし モダン アートの 伝 統 を 創 出 しようとしたことがうかがえる ソシエテ アノニムの 美 術 館 であった 私 設 ギャラリーは 当 初 ニューヨークの 東 47 丁 目 19 番 地 のアパートに 開 かれた 約 メートルの 大 きな 展 示 室 ( 東 )と 約 メートルの 小 さな 展 示 室 ( 西 )の 二 室 が 合 わさり どちらの 部 屋 も 高 さは2.7メー トルほどであった 大 小 の 部 屋 合 わせて 展 示 が 行 われ 小 さい 展 示 室 の 横 には 最 新 のモ ダン アートの 情 報 が 集 められた 図 書 室 が 併 設 された [ 図 版 2] ソシエテ アノニムが 図 書 室 を 設 置 した 理 由 として 当 時 最 新 のモダン アートに 関 す る 情 報 が 雑 誌 をはじめとする 紙 の 媒 体 によっ て 多 く 流 通 していたことがあげられる アメリカでも サルマガンディ クラブが 開 催 した ブラック アンド ホワイト 展 で 19 世 紀 すでに 展 覧 会 の 出 品 作 品 のリスト や 一 部 作 品 の 複 写 を 掲 載 した 展 覧 会 カタロ グ が 発 行 されていたことは 先 章 で 述 べた 通 りだが 20 世 紀 に 入 ると 雑 誌 というメディア によって アーティスト 自 身 の 手 で 芸 術 運 動 の 理 念 の 発 信 が 盛 んに 行 われるようになる 実 際 デュシャンやマン レイも1917 年 に ブラインド マン 1921 年 に ニューヨー ク ダダ という 雑 誌 を 発 行 することで 自 らの 活 動 を 発 信 しようとしたのだった この 雑 誌 メディアによる 芸 術 運 動 の 伝 達 は アメリカだけでなくヨーロッパにおいても 見 られ 1920 年 頃 まででソシエテ アノニムに 関 係 のある 動 向 をまとめると 1910 年 から19 31 年 まで 発 行 された 作 曲 家 で 画 廊 経 営 者 ヘア ヴァルト ヴァルデンによる 文 芸 誌 デア シュトゥルム(DerSturm) 1912 年 と1914 年 にミュンヘンで 青 騎 士 のグループであ るカンディンスキーやフランツ マルクによっ て 発 行 された 青 騎 士 (DerBlaueReiter) 1917 年 から1924 年 まで 通 巻 19 号 を 数 えるピカ ビアによるダダ 雑 誌 391 画 家 編 集 者 で あったテオ ファン ドースブルクがライデ ンで1917 年 から1928 年 まで 発 行 し 現 代 建 築 と 構 成 主 義 を 中 心 とした デ ステイル(De Stijl) 1923 年 から 発 行 が 行 われるクルト シュヴィッタースによる メルツ(Merz) などがあげられる これらの 雑 誌 を 入 手 する ことで 各 国 や 芸 術 運 動 の 最 新 情 報 を 把 握 す ることができたことから ソシエテ アノニ ムは 紙 メディアの 重 要 性 を 感 じ 図 書 室 を 併 設 したものと 思 われる 以 上 のように ソシエテ アノニムは 展 示 室 と 図 書 室 といった 複 合 施 設 を モダン アー トの 美 術 館 として25セントの 入 場 料 を 払 え ば 誰 でも 最 新 の 前 衛 美 術 を 見 ることができる 場 所 = 美 術 館 として 設 立 したと 言 えるだろう また 主 体 的 に 作 品 を 収 集 し 雑 誌 メディア なども 用 いて 想 像 の 共 同 体 を 形 成 しよう としたことを 鑑 みると この 美 術 館 の 機 51

53 ソシエテ アノニムにおける 近 代 美 術 館 慶 野 結 香 能 には 作 品 を 収 集 保 存 し 展 覧 会 を 軸 に 普 及 し 研 究 を 促 進 するという 今 日 におけ るミュージアムの 役 割 がほぼ 全 て 盛 り 込 まれ ていたと 言 える 3.2 外 部 の 諸 機 関 における 巡 回 展 示 1921 年 頃 からソシエテ アノニムは 外 部 の 機 関 に 進 出 し 展 覧 会 を 多 数 開 催 している 1924 年 に 私 設 ギャラリーが 閉 鎖 されるまで 外 部 の 施 設 での 活 動 はこのギャラリーと 並 行 して 進 められた ここでは 主 に 私 設 ギャラ リーとの 並 存 期 間 である 1921 年 から1924 年 の 約 五 年 間 に 行 われた 活 動 に 着 目 する ソシエテ アノニムが 外 部 の 機 関 において 関 わった 展 示 には 次 の 二 種 類 がある 一 つ には 展 覧 会 の 企 画 などの 準 備 段 階 からドラ イヤーを 中 心 とするソシエテ アノニムの 会 員 が 関 わったもの つまり 展 覧 会 の 外 部 委 託 の 発 注 をソシエテ アノニムが 受 けた 形 態 である 二 つ 目 は ソシエテ アノニムおよ びドライヤーが 所 有 する 作 品 を 外 部 の 美 術 館 などで 行 われる 展 覧 会 に 貸 し 出 したものであ る ソシエテ アノニムが 外 部 の 機 関 で 展 覧 会 を 開 催 することになった 直 接 的 な 理 由 として は 1921 年 にドライヤーの 資 金 が 底 をついた ことが 指 摘 できる 1920 年 にソシエテ アノニムの 私 設 ギャラ リーで 続 けざまに 行 われていた 展 覧 会 は ほ ぼ 全 てドライヤー 自 身 が 購 入 した 作 品 をソシ エテ アノニムのコレクションとして 展 示 し ていたものだった そのため 彼 女 の 資 金 難 を 受 けて ソシエテ アノニムは 私 設 ギャラ リーでの 継 続 的 な 活 動 が 困 難 になった そこ で 1921 年 から 外 部 の 教 育 機 関 やクラブ 既 存 の 美 術 館 やギャラリーへコレクションを 運 び 展 覧 会 を 行 うようになる そこには ソシ エテ アノニムの 私 設 ギャラリーよりも 大 き な 展 示 会 場 を 使 用 できるという 利 点 があった [ 図 版 3] ソシエテ アノニムが 外 部 で 初 めて 展 覧 会 を 催 したのは 1921 年 の1 月 15 日 および29 日 に 行 われたマンハッタン 女 子 職 業 学 校 (ManhattanTradeSchoolforGirls)にお いてであった 同 年 2 月 24 日 にミス ウィアー デザイン 学 校 (MissWeir'sSchoolofDesi gn) その 後 も1920 年 代 に 限 れば1923 年 の4 月 4 日 から5 月 12 日 にかけてのニューヨーク 州 ダッチェス 郡 ポキプシーに 所 在 するヴァッ サー 大 学 (1923 年 当 時 は 女 子 大 学 ) 1925 年 には11 月 20 日 にワシントン D.C.のマウント ヴァーノン 神 学 校 で 展 覧 会 を 開 催 している ヴァッサー 大 学 での39 日 間 に 及 ぶ 展 覧 会 の 他 は いずれも 一 日 限 りの 展 示 であったが マンハッタン 女 子 職 業 学 校 では1 月 15 日 に15 作 品 同 月 29 日 には20 作 品 の 展 示 ウィアー デザイン 学 校 では16 作 品 ヴァッサー 大 学 で の24 作 品 マウント ヴァーノンでも12 作 品 と 当 時 ソシエテ アノニムの 私 設 ギャラリー での 展 覧 会 と 同 程 度 の 作 品 数 の 展 示 を 行 って いたことが 分 かる また マンハッタン 女 子 職 業 学 校 とマウント ヴァーノンでは 講 演 会 もセットで 行 っており キャサリン ドラ イヤーがマルセル デュシャンとジョセフ ステラを 助 手 として 引 き 連 れた 3つの 講 演 (ThreeLectures) やドライヤーの 単 独 講 演 が 行 われたことが 分 かる 特 に 興 味 深 いのは 教 育 機 関 と 言 えど 美 術 学 校 に 限 らず 女 子 職 業 学 校 や 女 子 のみのリ ベラル アーツ カレッジで 展 覧 会 と 講 演 会 を 行 ったということだろう ここから ソシ エテ アノニムの 目 指 す 教 育 的 であるこ とという 組 織 の 目 的 が 作 り 手 だけでなく 美 術 を 見 る 側 に 対 する 教 育 へ 比 重 をおいていた ことは 明 白 である また 同 様 の 形 態 における 展 覧 会 は 学 校 をはじめとする 教 育 機 関 だけではなく 上 流 階 級 への 教 養 講 座 の 形 をとって 当 時 存 在 し た クラブ においても 行 われた 1921 年 の1 月 18 日 には マンハッタンの 女 子 職 業 学 校 の 二 回 に 及 ぶ 展 覧 会 の 間 を 縫 うよ 52

54 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 うにコロニー クラブ(ColonyClub)にお いて 30 点 もの 絵 画 を 取 り 扱 った 展 覧 会 と 講 演 会 同 年 2 月 17 日 にはシビック クラブ (CivicClub)における20 点 もの 絵 画 による 展 覧 会 と 講 演 会 続 いて2 月 21 日 から3 月 5 日 までヘテロドクシー クラブ(Heterodoxy Club)における20 点 もの 絵 画 による 展 覧 会 と 講 演 会 が 行 われた また1922 年 には 4 月 24 日 から5 月 8 日 にかけてマックダウエル ク ラブ(McDowellClub)において31 点 もの 作 品 を 集 めた 展 覧 会 が 行 われた (この 展 覧 会 は 直 前 に 行 われ 本 章 で 詳 細 に 分 析 するウー スター 美 術 館 における 展 覧 会 とほぼ 同 様 であっ たことが 推 測 される ) また 1923 年 には5 月 20 日 にユダヤ コミュ ニティ センター(JewishCommunityCenter) の 文 学 フォーラム(LiteraryForum)におい て12 点 の 絵 画 による 展 覧 会 と 講 演 会 を 開 いた ( 個 展 ばかりを 開 催 していた 時 期 だったため 直 前 の 展 覧 会 に 出 品 した 作 品 を 用 いるよりは 数 年 前 に 展 示 を 行 ったものを 取 り 上 げたもの と 思 われる ) 以 上 の 活 動 から 見 ると 当 時 の 上 流 階 級 における 教 養 のありかとして 絵 画 をはじめとする モダン アート が 重 要 視 されていたことは 想 像 に 難 くない また ソシエテ アノニムの クラブ における 活 動 は ドライヤーと 社 交 界 のつながりによる ものであり ソシエテ アノニムの 初 期 の 会 員 で 委 員 会 などを 担 っていた 人 々の 人 脈 を 利 用 したものであったことが 予 想 される 自 らの 私 設 ギャラリーのみの 活 動 が 困 難 に なったというネガティブな 理 由 から 始 まった 外 部 の 機 関 における 展 覧 会 活 動 ではあったも のの 1921 年 から1924 年 にかけては 私 設 ギャ ラリーでの 活 動 と 並 行 するかたちで ソシエ テ アノニムの 教 育 的 であることという 目 標 は 実 現 されていた 加 えて 一 般 的 な 鑑 賞 者 が 足 を 運 びにくかった 私 設 ギャラリーで の 活 動 から 外 に 出 ることで この 団 体 の 知 名 度 は 上 昇 したと 考 えられる また 既 存 の 美 術 館 において 展 覧 会 の 企 画 を 行 うことにより 小 規 模 な 私 設 ギャラリーでは 実 現 できなかっ た 数 十 点 規 模 の 展 覧 会 の 開 催 が 可 能 になった ことは 注 目 に 値 する 特 にこの 活 動 形 態 では 運 搬 のしやすい 絵 画 という 媒 体 が 選 ばれてい たことも 特 筆 すべき 点 である 外 部 の 機 関 と 関 わることによって ソシエ テ アノニムは 自 らの 私 設 ギャラリーという 場 所 = 近 代 美 術 館 だけでなく ソシエテ アノニムという 主 体 を 明 確 にして 展 覧 会 の 企 画 を 行 い 自 らの 同 時 代 美 術 の 教 育 的 普 及 と いう 目 的 を 果 たすようになったといえよう 3.3 国 際 モダン アート 展 1924 年 にソシエテ アノニムは 私 設 ギャラ リーを 閉 鎖 することになり 自 らの 展 示 会 場 を 失 った しかしながらこの 団 体 は 美 術 館 と 呼 ぶべき 場 所 を 失 っても 近 代 美 術 館 という 肩 書 きをはずすことなく 既 存 の 美 術 館 やギャラリー 教 育 機 関 など 外 部 の 施 設 で の 展 覧 会 活 動 を 継 続 し 1926 年 にこの 団 体 最 大 規 模 の 展 覧 会 国 際 モダン アート 展 (InternationalExhibitionofModernArt 以 下 一 部 で ブルックリン 展 と 記 載 ) を ニューヨーク 市 のブルックリン ミュージア ムで 開 催 した [ 図 版 4] これは 1913 年 に 行 われた アーモリー ショウ 以 来 の 国 際 モダン アート 展 と 銘 打 った 展 覧 会 であり その 後 のモダン アー トの 動 向 をいち 早 く 取 り 上 げた 内 容 であった また ホワイト キューブ と 室 内 装 飾 が 統 合 された 展 示 形 式 の 実 践 特 別 カタログ モダン アート の 発 行 など 特 筆 すべき 点 が 多 い 私 設 ギャラリー 閉 鎖 後 上 記 した 同 団 体 最 大 規 模 の 展 覧 会 の 他 にも ソシエテ アノニ ムは 外 部 の 機 関 での 展 覧 会 や 講 演 会 活 動 を 継 続 し 1925 年 からは 普 及 活 動 へより 力 を 注 ぐ ことになる 従 来 は 自 らのギャラリーにおい て ソシエテ アノニムの 会 員 を 中 心 とした 作 家 の 個 展 や アメリカで 未 だ 展 観 されたこ 53

55 ソシエテ アノニムにおける 近 代 美 術 館 慶 野 結 香 とのないアーティストを 盛 り 込 んだグループ 展 を 開 催 すると 共 に 外 部 の 施 設 では 持 ち 運 びしやすい 絵 画 作 品 に 限 って 多 数 の 作 家 を 集 めた 展 覧 会 を 行 っていた この 時 点 では 私 設 ギャラリーとほぼ 同 じ 内 容 の 作 品 を 展 観 したものと 思 われるが 自 らの 美 術 館 と 呼 べる 場 所 を 失 ったことによって 1925 年 か らは 外 部 の 施 設 でも 特 定 の 作 家 に 焦 点 を 当 て た 個 展 も 行 うようになる ソシエテ アノニムは 近 代 美 術 館 と いう 名 称 を 保 ったまま これまで 私 設 ギャラ リーと 外 部 の 施 設 で 内 容 を 分 けていた 展 示 会 場 の 枠 組 みを 取 り 払 い 外 部 のギャラリーで も 個 展 を 行 うようになり さらに 国 際 的 で 大 規 模 な 展 覧 会 を 手 がけるようになった そしてそれは まだ 同 時 代 美 術 がミュージ アムに 収 蔵 されていなかったこの 時 代 におい て 一 般 市 民 へモダン アートを 展 観 し 普 及 する 恰 好 の 機 会 を 提 供 していた 私 設 ギャラリーを 失 ったからこそ 既 存 の 美 術 館 における 会 期 が 限 られた 展 覧 会 という メディアでの 普 及 経 験 を 通 じて ソシエテ アノニムは 自 分 たちの 美 術 館 という 枠 組 みを 単 なる 作 品 を 展 示 する 場 所 としてでは なく 同 時 代 美 術 の 最 新 動 向 を 伝 える 主 体 と しての 近 代 美 術 館 として 利 用 したといえ るだろう また アーモリー ショウ と は 違 い 展 示 作 品 の 売 却 を 行 うのではなく ソ シエテ アノニムがセレクションを 行 い コ レクションした 作 品 として 同 時 代 美 術 の 鑑 賞 へと 観 客 を 誘 った またギャラリーという 場 所 から 離 れること で ソシエテ アノニムの 活 動 は さらにイ ンターナショナルな 性 格 を 帯 びた 外 部 の 施 設 での 活 動 を 通 じ 私 設 ギャラリーよりも 多 くの 鑑 賞 者 の 目 に 展 覧 会 が 触 れることにより ソシエテ アノニム という 団 体 は 人 口 に 膾 炙 し さらにその 主 体 を 強 化 したといえよ う 4 おわりに これまで1920 年 代 のソシエテ アノニムが 自 らの 美 術 館 と 呼 ぶべき 私 設 ギャラリー を 閉 鎖 してからも 近 代 美 術 館 を 一 貫 して 名 乗 り 続 けたことに 着 目 し 彼 らの 近 代 美 術 館 という 概 念 について 同 時 代 美 術 の 普 及 活 動 の 変 遷 を 追 いながら 考 察 してきた 1920 年 に 近 代 美 術 館 が 登 場 する 以 前 の アメリカにおける 美 術 館 は 19 世 紀 後 半 にアメリカでミュージアムが 誕 生 した 時 より この 国 では 場 所 の 確 保 とその 教 育 的 役 割 が 重 視 されてきた 加 えてその 施 設 は 建 物 や 収 集 作 品 もヨーロッパの 影 響 が 色 濃 いものであっ た しかしソシエテ アノニムは 当 初 こそ 図 書 館 を 有 した 複 合 施 設 としての 私 設 ギャラリー という 場 所 を 美 術 館 と 見 なしていたもの と 考 えられるが 資 金 繰 りの 悪 化 などの 影 響 も 受 け 次 第 に 普 及 活 動 を 展 開 する 主 体 を 包 括 するものとして 近 代 美 術 館 という 概 念 を 用 いて ソシエテ アノニムという 主 体 を 強 化 したと 言 える 展 観 する 場 所 としての ミュージアムがなくても ソシエテ アノニ ムは 更 に 広 い 範 囲 の 資 料 としての 前 衛 美 術 作 品 の 収 集 その 整 理 保 管 調 査 研 究 展 覧 会 はもちろんのこと 講 演 会 等 を 通 した 教 育 普 及 など 今 日 におけるミュージアムの 機 能 すべ てを 有 した 活 動 を 展 開 したのだった 9 ソシエテ アノニムの 近 代 美 術 館 にお いて アメリカは19 世 紀 的 なヨーロッパの 模 倣 と 距 離 を 取 り 独 自 に 他 者 をまなざすよう になった そして 美 術 館 の 枠 組 みは 単 な る 場 所 を 指 すものではなく 収 集 された 作 品 や 教 育 普 及 などコンテンツや 機 能 への 転 回 を 見 せ 戦 後 アメリカのモダン アートの 発 展 を 準 備 する 素 地 を 築 いたと 結 論 づけられるだ ろう 54

56 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 註 年 に 組 織 されたソシエテ アノニムの 他 に も 1927 年 から1943 年 にかけてニューヨーク 大 学 内 に 設 置 されたアルバート ユージン ギャラティ ンの 現 代 美 術 ギャラリー/ 美 術 館 (Galleryand MuseumofLivingArt) が 同 時 代 の 類 似 活 動 とし て 挙 げられる Stavitsky,Gail.A.E.Gallatin'sGalleryand Museum oflivingart( ),american Art,Vol.7No.2(Spring1993),pp 当 時 青 騎 士 の 前 衛 芸 術 活 動 で 世 界 中 の 注 目 を 集 めていたカンディンスキーは 訪 米 したことこ そなかったが 書 簡 でのやりとりを 通 じてドライ ヤーとの 交 流 を 保 ち 続 けた 作 品 を 媒 介 として ソシエテ アノニムは 世 界 的 なアーティストのネッ トワークを 築 き 想 像 の 共 同 体 を 形 成 していた との 指 摘 もある Gross,JenniferR.,TheSocieteAnonyme,p.3 3 デュシャンのソシエテ アノニムに 関 する 発 言 より Naumann,FrancisM.,Obalk,Hector(edited), Taylor, Jill (translation). Affectionately Marcel:TheSelectedCorrespondanceofMarcel Duchamp,London:Thames&Hudson,2000. フランシス M ナウマン エクトール オバル ク 編 北 山 研 二 訳 マルセル デュシャン 書 簡 集 白 水 社 2009 年 p.97 5 Gross,op.cit,.p.1 6 註 1 参 照 のこと 7 烏 賀 陽 梨 沙 アメリカの 美 術 館 教 育 の 理 念 及 び 実 践 の 史 的 展 開 美 術 教 育 学 : 美 術 科 教 育 学 会 誌 25 号 美 術 科 教 育 学 会 2004 年 p81 8 ソシエテ アノニムが 私 設 ギャラリーにおいて 配 布 していた 同 団 体 と 展 覧 会 のフライヤーより 抜 粋 KatherineDreierPapers/SociétéAnonyme Archive,YaleCollectionofAmerican Literature,BeineckeRareBookandManusscript Library,YaleUniversity. BoxNo.42,73,74,87-89,90,101 9 現 代 の 博 物 館 (ミュージアム)では 資 料 収 集 整 理 保 管 調 査 研 究 教 育 普 及 の4つの 機 能 を 総 称 して 博 物 館 四 大 機 能 と 名 づけている 4つの 機 能 が 相 関 しあって 博 物 館 が 機 能 しているというこ とができる 加 藤 有 次 博 物 館 機 能 論 雄 山 閣 出 版 2000 年 pp.3-9,pp 年 当 時 のソシエテ アノニムや 当 時 のモダ ン アートの 状 況 を 考 慮 すると 'Museumof ModernArt'は 現 代 美 術 館 もしくは モダン アートの 美 術 館 と 訳 されるべきであろう しか しながら ソシエテ アノニムの 近 代 美 術 館 活 動 が アルフレッド バー ジュニアへ 影 響 を 与 え 1929 年 のニューヨーク 近 代 美 術 館 (the MuseumofModernArt,NewYork)のあり 方 ひい てはその 影 響 を 受 けた 戦 後 日 本 の 近 代 美 術 館 にまで 波 及 していると 考 え 本 稿 では 'Museumof ModernArt'を 近 代 美 術 館 と 訳 出 した 55

57 ソシエテ アノニムにおける 近 代 美 術 館 慶 野 結 香 [ 図 版 1]ソシエテ アノニムの 私 設 ギャラリー 会 場 風 景 (1920 年 ) [ 図 版 3]ソシエテ アノニムの 巡 回 展 示 会 場 風 景 (マサチューセッツ 州 ウースター 美 術 館 ソ シエテ アノニム 絵 画 展 1921 年 ) KatherineDreierPapers/SociétéAnonyme Archive,YaleCollectionofAmerican Literature,BeineckeRareBookandManusscript Library,YaleUniversity. KatherineDreierPapers/SociétéAnonyme Archive,YaleCollectionofAmerican Literature,BeineckeRareBookandManusscript Library,YaleUniversity. [ 図 版 2]ソシエテ アノニムの 私 設 ギャラリー 平 面 図 [ 図 版 4]ブルックリン ミュージアム 国 際 モ ダン アート 展 展 示 風 景 (1926 年 ) KatherineDreierPapers/SociétéAnonyme Archive,YaleCollectionofAmerican Literature,BeineckeRareBookandManusscript Library,YaleUniversity. KatherineDreierPapers/SociétéAnonyme Archive,YaleCollectionofAmerican Literature,BeineckeRareBookandManusscript Library,YaleUniversity. 56

58 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 女 乗 物 のつくりと 材 料 の 研 究 木 部 の 観 察 と 実 測 を 通 して 落 合 里 麻 江 戸 時 代 初 期 に 発 生 し その 時 代 を 通 して 用 いられた 女 乗 物 の 木 部 についての 研 究 である 当 時 の 文 献 に 書 かれた 内 容 と 現 存 する 女 乗 物 の 調 査 結 果 を 照 らし 合 せ その 役 割 や 本 体 のつくり 材 料 につ いて 明 らかにすることを 目 的 としている 現 地 調 査 として 行 った 観 察 と 実 測 からは 女 乗 物 に 共 通 す る 形 状 とつくりがわかってきた 1793 年 に 著 された 婚 禮 道 具 圖 集 には 女 乗 物 についての 解 説 が 書 かれており 観 察 実 測 でわかった 内 容 と 比 較 したところ 寸 法 形 状 共 に 近 いという 結 果 が 得 られ た このことから 婚 禮 道 具 圖 集 の 内 容 が 当 時 の 女 乗 物 の 雛 形 であった 可 能 性 が 高 いと 考 えられ る 製 作 に 用 いられた 木 材 の 樹 種 は 限 られた 箇 所 の 観 察 によるが 檜 であった 檜 材 は 比 重 が 軽 い にも 関 わらず 強 度 があり 曲 げにも 強 い 人 を 乗 せて 長 距 離 を 移 動 する 女 乗 物 には 檜 という 軽 くて 尚 且 つ 強 度 のある 材 料 が 最 適 だったのである キーワード: 女 乗 物 駕 籠 江 戸 時 代 構 造 木 工 木 工 技 術 ResearchonthestructureandmaterialofOnna-norimono: Throughobservationandactualmeasurement onthepartsmadeofwood OCHIAIRima ThepresentpaperdealswithresearchthatwasfocusedonthepartsmadeofwoodfromOnna-norimono (palanquinsforjapanesefeudalladies)originatedintheearlyedoperiod,andusedthroughouttheperiod.itis myaimtoresearchthosewhichremainineachdistrictinjapan,colatetheresultswithliteraturewritenatthat time,andrevealthesefunction,structure,andmaterial.byobservationandactualmeasurement,itcametolight thattheyhavecommonshapesandstructure.thereisanexplanationaboutonna-norimonoat"konrei-douguzushuu"writenin1793.havingcomparedtheresultsofactualmeasurementwiththecontentsoftheliterature, theresearchshowedthatbothmeasurementsandshapeswereclosetothevalue.fromtheseresults,thereisa highposibilitythatthecontentswritenin"konrei-dougu-zushuu"wereaprescribedformofonna-norimono atthattime.thespeciesofwoodthatwasusedtomanufacturethem,dependingonthelimitedpart,washinoki. Despiteitsspecificgravity,Hinokiislight,ithasastrongtisue,andinbending,too.Havingbeenlightand strong,hinokiwasmostsuitableforonna-norimonowhichhadafunctiontocaryaladyandtravellong distances. Keywords:Onna-norimono,Palanquin,Edoperiod,Structure,Woodworking,Technologyinwoodworking 57

59 女 乗 物 のつくりと 材 料 の 研 究 木 部 の 観 察 と 実 測 を 通 して 落 合 里 麻 1 はじめに 江 戸 時 代 に 交 通 手 段 の 一 つとして 用 いられ た 駕 籠 は その 中 でも 形 態 や 使 用 者 の 違 いか ら 大 きく 乗 物 と 駕 籠 に 分 けられる その 分 類 基 準 は 複 数 にわたり 未 だ 曖 昧 なと ころもあるが 使 用 者 という 視 点 で 表 すと 武 家 などの 支 配 者 層 が 使 用 した 駕 籠 が 乗 物 被 支 配 者 層 の 庶 民 が 使 用 した 駕 籠 が 駕 籠 となる 1 さらに 乗 物 の 中 で 武 家 や 貴 族 の 女 性 が 用 いたものは 女 乗 物 と 称 される 日 髙 真 吾 の 研 究 によると 江 戸 時 代 初 期 に 発 生 した 女 乗 物 は 江 戸 時 代 中 期 から 後 期 にかけて 婚 礼 行 列 の 中 心 を 担 う 乗 用 具 へと 順 位 制 を 高 めていった 2 という 漆 塗 りに 家 紋 や 唐 草 紋 などの 蒔 絵 が 施 された 女 乗 物 が 現 在 でも 日 本 各 地 に 残 されている 内 部 には 花 鳥 画 が 張 り 込 まれ 他 の 種 類 の 乗 物 や 駕 籠 に 比 べ 全 体 的 に 装 飾 性 が 際 立 つ 傾 向 がある では 女 乗 物 本 体 はどのように 作 られてい るのだろうか 装 飾 が 目 を 引 く 存 在 ではある が そもそも 構 造 が 脆 弱 では 人 を 乗 せて 運 ぶ ことは 不 可 能 である 人 の 乗 る 部 分 を1 本 の 長 い 柄 に 吊 るし 前 後 から 担 いで 運 ぶ と いう 独 特 の 構 造 では 力 の 掛 り 方 を 計 算 して 木 を 組 み 上 げなければ 簡 単 に 壊 れてしまい 長 距 離 の 旅 に 耐 えることができない また 本 体 に 使 用 されている 材 料 が 木 であることは 確 かだが 樹 種 は 決 まっていたのだろうか 樹 種 の 選 択 を 間 違 うと 製 作 工 程 で 作 業 効 率 や 加 工 性 の 問 題 が 生 じ 完 成 後 の 使 い 勝 手 や 強 度 にも 支 障 が 出 ることは 木 材 を 扱 う 人 であ れば 理 解 していることである この 研 究 を 始 める 契 機 となったのは 筆 者 が 平 成 2011 年 から2012 年 にかけて 逓 信 総 合 3 博 物 館 所 蔵 の 駕 籠 の 修 復 を 東 京 学 芸 大 学 の 太 田 朋 宏 教 授 と 共 同 で 行 った 際 構 造 や 材 料 について 調 査 を 試 みたものの 求 める 内 容 の 文 献 を 見 つけられなかったことである 女 乗 物 だけでなく 駕 籠 と 称 されるもの 全 体 にお いて 木 工 技 術 の 視 点 での 研 究 がされてい ないと 知 り まずは 支 配 者 層 ( 武 家 など)の 乗 物 から 被 支 配 者 層 ( 庶 民 )の 駕 籠 まで 対 象 を 広 く 捉 え 木 部 の 技 法 材 料 構 造 を 中 心 に 調 査 を 始 めた その 研 究 の 中 で 本 稿 では 特 に 女 乗 物 に 内 容 を 絞 って 取 り 上 げる これは 様 々な 形 態 が 存 在 する 庶 民 使 用 の 駕 籠 に 比 べて 女 乗 物 は 形 態 や 本 体 のつ くりに 共 通 している 点 が 多 く 例 外 として 扱 わざるを 得 ない 特 異 な 女 乗 物 がほとんど 存 在 せず 調 査 した 女 乗 物 ほぼ 全 てを 比 較 検 討 の 対 象 にでき 4 何 らかの 基 準 となるものが 存 在 した 可 能 性 も 考 えられるからである 2 先 行 関 連 研 究 と 江 戸 時 代 の 文 献 女 乗 物 についての 先 行 研 究 としては 発 生 経 緯 と 装 飾 性 についての 日 髙 真 吾 による 論 考 蒔 絵 技 法 と 漆 塗 りの 観 察 を 行 った 日 髙 真 吾 菅 井 裕 子 の 研 究 女 乗 物 を 含 む 駕 籠 全 般 につ いてまとめた 櫻 井 芳 昭 の 著 書 等 が 挙 げられる 近 世 の 風 俗 研 究 の 重 要 な 文 献 史 料 である 守 貞 謾 稿 (もりさだまんこう 喜 田 川 守 貞 著 1853 年 に 一 応 完 成 1911 年 刊 行 )では 様 々 な 種 類 の 駕 籠 について 分 類 し 図 を 交 えて 詳 細 に 解 説 している 5 ( 図 1) 日 髙 は 著 書 女 乗 物 -その 発 生 経 緯 と 装 飾 性 の 中 で 守 貞 謾 稿 を 取 り 上 げて 駕 籠 の 分 類 方 法 を 考 察 し 駕 籠 の 発 生 経 緯 や 装 飾 性 について 論 じている 図 1 女 乗 物 喜 田 川 守 貞 守 貞 謾 稿 (1853 年 ) 国 立 国 会 図 書 館 デジタルコレクションより 転 載 女 乗 物 の 形 態 については 岡 田 玉 山 が 寛 政 5 年 (1793 年 )に 著 した 婚 禮 道 具 圖 集 (こ んれいどうぐずしゅう)の 中 の 婚 禮 道 具 諸 器 形 寸 法 書 人 巻 6 で 図 を 交 えて 解 説 をしている 日 髙 は これについて 次 のように 述 べている 乗 物 については 側 面 正 面 引 戸 屋 58

60 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 形 内 部 の 肘 掛 屋 根 の 部 位 といった 各 部 位 の 図 が 描 かれ それぞれの 寸 法 が 書 き 込 ま れている [ 中 略 ] 正 面 図 には 上 部 と 下 部 の 幅 の 寸 法 について 巾 二 尺 五 分 巾 二 尺 六 分 と 記 している [ 中 略 ] 担 ぎ 棒 の 長 さについては 棒 長 一 四 尺 八 寸 と 記 してある 以 上 のことから 同 書 は 特 に 乗 物 について 図 のなかに 細 かな 寸 法 を 付 しており これは 女 乗 物 の 製 作 における 雛 形 の 役 割 を 果 たしたものと 考 えられる 7 つくりや 材 料 について 木 工 技 術 の 視 点 で 捉 えた 文 献 や 研 究 報 告 は 未 だ 確 認 できてい ない 女 乗 物 は 駕 籠 の 中 でも 装 飾 性 が 際 立 ち 木 で 作 られていることをあまり 感 じさせない が 人 を 乗 せて 担 ぐという 目 的 を 果 たすため には 木 材 を 組 んで 乗 物 本 体 を 作 る ことに 対 して 当 時 の 人 々は 熟 慮 したはずであり 複 雑 な 形 状 を 観 察 すればそのことが 想 像 できる 以 上 の 点 を 考 慮 し 女 乗 物 を 木 工 技 術 の 視 点 で 捉 え 考 察 していきたい 3 研 究 方 法 3.1 研 究 対 象 女 乗 物 とは 守 貞 謾 稿 には 女 乗 物 について 次 のよ うに 記 されている 8 女 乗 物 にも 数 種 あり 惣 黒 漆 に 金 蒔 絵 を 最 上 とす 蒔 絵 は 定 紋 散 らしあるひは 定 紋 に 唐 草 または 唐 草 のみをもこれを 描 くか 予 見 る 物 多 くは 定 紋 のちらしなり 棒 同 製 なり 押 縁 黒 に 滅 金 の 金 具 を 打 つ [ 中 略 ] 次 に 天 鵞 絨 巻 なり [ 中 略 ] 次 に 網 代 朱 ぬり [ 中 略 ] 次 に 全 体 青 漆 [ 中 略 ] 次 に 打 [ 中 略 ] 日 髙 は このことから 女 乗 物 には 黒 漆 金 蒔 絵 女 乗 物 を 筆 頭 に 天 鵞 絨 巻 (びろうどまき) 女 乗 物 朱 塗 網 代 女 乗 物 青 漆 塗 女 乗 物 茣 蓙 打 女 乗 物 という 五 種 類 に 分 類 され 順 位 づ けられていることがわかる 9 と 述 べている ここまで 外 装 の 特 徴 を 見 てきたが 次 に 形 の 特 徴 を 確 認 していきたい 守 貞 謾 稿 に 書 かれている 内 容 を 現 代 語 訳 して 示 すと 以 下 の ようになる 10 (1) 全 体 構 造 を 四 方 板 張 りでつくる (2) 側 面 の 形 状 は 上 辺 下 辺 とも 同 じ 長 さでつ くる (3) 夢 想 窓 と 呼 ばれる 窓 がついており それは 薄 い 板 で 作 った 連 子 を 駕 籠 の 外 と 内 に 並 べ 立 て 内 側 の 連 子 をスライドさ せて 開 閉 できる 窓 である (4) 扉 は 左 右 対 称 の 引 戸 である (5) 担 ぎ 棒 の 形 状 は 上 部 が 円 弧 状 で 両 端 が 細 くなっている 前 頁 の( 図 1)を 参 照 すると (1) 全 体 構 造 (2) 側 面 の 形 状 (5) 担 ぎ 棒 の 形 状 について 読 み 取 ることができる (3) 夢 想 窓 は( 図 1) には 直 接 描 かれていないが 位 置 としては 御 簾 の 内 側 となる 本 稿 では これらの 守 貞 謾 稿 に 記 された 内 容 に 相 当 する 駕 籠 を 女 乗 物 とみなし 研 究 対 象 とする 3.2 現 地 調 査 肉 眼 観 察 と 実 測 現 地 調 査 では 所 蔵 施 設 内 において 肉 眼 観 察 と 実 測 を 行 った 肉 眼 観 察 で 観 察 対 象 とするのは 主 に 木 材 の 樹 種 である 漆 塗 りのものが 多 く 樹 種 の 特 定 が 難 しい 場 合 が 想 定 されたが 可 能 な 限 り 無 塗 装 の 部 位 や 表 面 の 塗 装 が 剥 落 した 箇 所 を 探 し 観 察 を 行 った また 接 合 部 の 技 法 や 装 飾 金 具 布 地 の 種 類 等 の 観 察 も 行 った 実 測 では 図 面 を 作 成 するために 必 要 な 寸 法 全 てを 測 ることとした 制 約 のある 場 合 は 要 所 ( 全 体 寸 法 主 要 な 板 の 厚 み 等 )のみの 実 測 とした A3 用 紙 に 図 面 を 手 描 きし 観 察 結 果 を 記 録 する 実 測 に 用 いた 道 具 は 巻 尺 定 規 ダイヤルキャリパゲージ 13 等 である 現 地 調 査 を 行 った 女 乗 物 は9 挺 である( 表 1) 地 域 を 限 定 せず 博 物 館 資 料 館 寺 院 神 社 の 主 に 展 示 室 や 収 蔵 庫 で 行 った 59

61 女 乗 物 のつくりと 材 料 の 研 究 木 部 の 観 察 と 実 測 を 通 して 落 合 里 麻 表 1 調 査 を 行 った 女 乗 物 の 所 蔵 委 託 機 関 と 分 類 くろ ぬり ろく せい もん まき え 名 称 所 蔵 委 託 機 関 分 類 時 代 黒 塗 六 星 紋 蒔 絵 女 乗 物 和 歌 山 市 立 博 物 館 ( 和 歌 山 県 和 歌 山 市 ) 黒 漆 金 蒔 絵 女 乗 物 江 戸 時 代 後 期 は ぎく あお やま せん もん さん か きっ こう まき え 葉 菊 青 山 銭 紋 散 花 亀 甲 蒔 絵 女 乗 物 ( 公 財 ) 松 浦 史 料 博 物 館 ( 長 崎 県 平 戸 市 ) 黒 漆 金 蒔 絵 女 乗 物 江 戸 時 代 後 期 びろーど 天 鵞 絨 まき 巻 女 乗 物 ( 公 財 ) 松 浦 史 料 博 物 館 ( 長 崎 県 平 戸 市 ) 天 鵞 絨 巻 女 乗 物 江 戸 時 代 くろうるしたちばなから くさ まるじゅうもん まき え 黒 漆 橘 唐 草 丸 十 紋 蒔 絵 女 乗 物 薩 摩 伝 承 館 ( 鹿 児 島 県 指 宿 市 ) 黒 漆 金 蒔 絵 女 乗 物 江 戸 時 代 後 期 伊 東 家 女 乗 物 駕 籠 飫 肥 城 歴 史 資 料 館 ( 日 南 市 教 育 委 員 会 宮 崎 県 日 南 市 ) 黒 漆 金 蒔 絵 女 乗 物 江 戸 時 代 後 期 浅 野 家 女 乗 物 駕 籠 飫 肥 城 歴 史 資 料 館 ( 日 南 市 教 育 委 員 会 宮 崎 県 日 南 市 ) 黒 漆 金 蒔 絵 女 乗 物 江 戸 時 代 後 期 金 蒔 絵 漆 塗 女 乗 物 大 興 寺 ( 愛 媛 県 伊 予 市 ) 黒 漆 金 蒔 絵 女 乗 物 江 戸 時 代 なん 南 ぶ し むかいづるじょうもんちらし 部 氏 向 鶴 定 紋 散 女 乗 物 もりおか 歴 史 文 化 館 ( 岩 手 県 盛 岡 市 ) 黒 漆 金 蒔 絵 女 乗 物 江 戸 時 代 後 期 み と 水 戸 け じょうもんちらし お のり もの 家 定 紋 散 御 乗 物 鳥 谷 崎 神 社 ( 岩 手 県 花 巻 市 ) 黒 漆 金 蒔 絵 女 乗 物 江 戸 時 代 図 2 女 乗 物 について 記 された 図 と 解 説 岡 田 玉 山 婚 禮 道 具 圖 集 1793 年 婚 禮 道 具 諸 器 形 寸 法 書 人 巻 pp 国 立 国 会 図 書 館 デジタルコレクションより 転 載 3.3 婚 禮 道 具 圖 集 に 記 された 女 乗 物 と 現 存 する 女 乗 物 の 比 較 婚 禮 道 具 圖 集 の 婚 禮 道 具 諸 器 形 寸 法 書 人 巻 では 女 乗 物 について 図 で 解 説 し 細 かな 寸 法 を 付 している( 図 2) 女 乗 物 の 製 作 における 雛 形 の 役 割 を 果 たしたのではな いかと 考 えられているが 現 存 する 女 乗 物 の 全 体 および 部 分 における 寸 法 の 比 較 がなされ ているわけではない これについて 具 体 的 な 合 致 点 と 相 違 点 を 見 つけるため ここに 記 さ れた 女 乗 物 について 尺 貫 法 で 書 かれた 寸 法 を 現 代 の 寸 法 単 位 (メートル 法 )に 換 算 し 実 測 した 内 容 との 比 較 を 行 った それらの 関 係 性 を 示 すことで 製 作 における 雛 形 であっ た 可 能 性 を 高 められるのではないか 4 結 果 4.1 婚 禮 道 具 圖 集 に 記 された 内 容 婚 禮 道 具 圖 集 の 婚 禮 道 具 諸 器 形 寸 法 書 人 巻 で 解 説 されている 女 乗 物 の 内 容 につ いて 解 読 し 寸 法 表 記 を 尺 貫 法 からメートル 法 に 直 した さらにこの 寸 法 を 基 に 図 面 を 描 くと( 図 3)のようになる 単 位 の 換 算 は 1 尺 =303.03mm 1 寸 =30.3mm 1 分 =3.03 mm 1 厘 =0.3mmとして 計 算 した なお 御 簾 や 組 紐 金 具 等 の 装 飾 品 は 除 いて 作 図 して いる 60

62 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 図 3 婚 禮 道 具 圖 集 に 記 された 女 乗 物 の 寸 法 と 解 説 を 基 に 作 成 した 図 面 A~Hは 次 頁 ( 表 2)に 示 す 主 要 部 分 の 寸 法 値 と 対 応 している 4.2 肉 眼 観 察 と 実 測 の 結 果 肉 眼 観 察 と 実 測 からは 基 本 的 な 構 造 を 確 認 することができた また 本 体 に 使 われて いる 木 材 の 樹 種 は 檜 であることがわかった ( 図 4)は 葉 菊 青 山 銭 紋 散 花 亀 甲 蒔 絵 女 乗 物 (( 公 財 ) 松 浦 史 料 博 物 館 )の 写 真 から 起 こ した 立 体 図 と 主 構 造 ( 骨 組 み)の 図 である 漆 塗 りに 蒔 絵 の 施 された 華 やかな 女 乗 物 はそ の 装 飾 性 が 目 立 つということもあり 写 真 で は 構 造 がわかりづらい 装 飾 を 除 いて 木 部 の みの 図 にすると (1) 蒲 鉾 形 の 板 材 (2) 四 隅 の 柱 材 (3) 前 後 を 繋 ぐ3 本 の 棒 材 (4) 下 部 の 四 方 枠 (5) 床 下 の 桟 (6) 担 ぎ 棒 を 通 す 金 物 が 人 を 乗 せて 担 ぐときに 必 要 な 最 低 限 の 構 造 ( 骨 組 み)をつくっていることがわ かる この 構 造 は 若 干 の 寸 法 や 形 状 の 差 は あれども 調 査 を 行 った 女 乗 物 の 全 てに 共 通 する 内 容 であった また 主 構 造 以 外 の 部 材 の 形 状 や 構 造 についても 共 通 する 内 容 が 多 い ことがわかった 側 面 の 板 材 の 端 ( 乗 り 降 り するための 開 口 部 )には 必 ず 枠 を 廻 し 広 い 面 積 の 側 板 には100~130mmの 間 隔 で 押 縁 を 付 ける 屋 根 は 外 周 の 枠 と7 本 前 後 の 細 い 桟 で 骨 組 みを 作 り その 上 に 薄 い 板 を 張 り 押 縁 で 押 さえる 打 揚 げ( 屋 根 の 一 部 に 蝶 番 を 付 けて 跳 ね 上 げ 乗 り 降 りする 際 に 頭 がぶつ からないようにするつくり)は 左 右 両 方 に 存 在 する 内 部 には 肘 掛 けがあり 場 合 によっ ては 後 部 に 背 もたれが 付 く これらは 婚 禮 道 具 圖 集 に 描 かれた 内 容 とほぼ 一 致 する 一 例 として 葉 菊 青 山 銭 紋 散 花 亀 甲 蒔 絵 女 乗 物 の 実 測 図 を( 図 5)に 示 す 61

63 女 乗 物 のつくりと 材 料 の 研 究 木 部 の 観 察 と 実 測 を 通 して 落 合 里 麻 図 4 葉 菊 青 山 銭 紋 散 花 亀 甲 蒔 絵 女 乗 物 完 成 形 と 主 構 造 ( 骨 組 み)の 比 較 4.3 実 測 値 と 婚 禮 道 具 圖 集 に 記 され 4.4 側 面 に 使 われている 板 材 の 厚 み た 寸 法 の 比 較 女 乗 物 の 側 面 に 使 われている 広 い 面 積 の 板 主 要 部 の 寸 法 を 実 測 した 結 果 を( 表 2)に 示 す 表 の 下 段 には 調 査 を 行 った9 挺 それぞ れの 寸 法 の 平 均 値 を 記 載 した この 平 均 値 を 婚 禮 道 具 圖 集 に 記 された 寸 法 と 比 較 する と 非 常 に 近 く 極 端 に 外 れた 数 値 は 見 当 たら ない ( 表 2)において 灰 色 で 表 示 している 箇 所 は 平 均 値 が 婚 禮 道 具 圖 集 に 記 され た 寸 法 の5パーセント 以 内 の 差 に 収 まってい ることを 示 している 高 さ 以 外 は 全 てその 範 囲 内 に 入 っていることが 読 み 取 れる は 守 貞 謾 稿 の 中 に 記 される 女 乗 物 の 特 徴 のうち 全 体 構 造 を 四 方 板 張 りでつくる の 四 方 板 にあたる 主 構 造 ではなく 本 来 この 部 分 にそれほど 厚 い 板 を 使 用 する 必 要 はないが 全 てにおいて 厚 さ9~17mmの 厚 い 板 材 が 使 われていた( 図 6 表 3) 庶 民 が 使 用 した 駕 籠 では3mm 程 度 の 薄 い 板 が 使 わ れている 例 が 多 く 見 られるが 実 測 した 女 乗 物 にはそのようなつくりは 見 られず 全 て 厚 みのある しかも 無 垢 材 が 使 われている 表 2 調 査 を 行 った 女 乗 物 9 挺 の 主 要 部 分 の 寸 法 平 均 値 婚 禮 道 具 圖 集 に 記 された 寸 法 名 称 A B C D E F G H 屋 根 幅 ( 正 面 ) 本 体 幅 上 部 ( 正 面 ) 高 さ 本 体 幅 下 部 ( 正 面 ) 屋 根 幅 ( 側 面 ) 本 体 幅 ( 側 面 ) 担 ぎ 棒 幅 担 ぎ 棒 高 さ 黒 塗 六 星 紋 蒔 絵 女 乗 物 葉 菊 青 山 銭 紋 散 花 亀 甲 蒔 絵 女 乗 物 天 鵞 絨 巻 女 乗 物 黒 漆 橘 唐 草 丸 十 紋 蒔 絵 女 乗 物 伊 東 家 女 乗 物 駕 籠 浅 野 家 女 乗 物 駕 籠 金 蒔 絵 漆 塗 女 乗 物 南 部 氏 向 鶴 定 紋 散 女 乗 物 水 戸 家 定 紋 散 御 乗 物 上 記 9 挺 の 平 均 値 婚 禮 道 具 圖 集 に 記 された 寸 法 単 位 :mm 平 均 値 の 小 数 点 以 下 は 四 捨 五 入 整 数 表 記 とした 実 測 が 不 可 能 であった 箇 所 については で 示 す 62

64 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 図 5 葉 菊 青 山 銭 紋 散 花 亀 甲 蒔 絵 女 乗 物 (( 公 財 ) 松 浦 史 料 博 物 館 ) 実 測 図 63

65 女 乗 物 のつくりと 材 料 の 研 究 木 部 の 観 察 と 実 測 を 通 して 落 合 里 麻 図 6 側 面 の 板 材 の 厚 みを 測 定 した 部 位 斜 線 部 A~Cの 厚 みの 測 定 結 果 を 下 記 ( 表 3)に 示 す 表 3 側 面 の 板 材 の 厚 み 測 定 結 果 と 平 均 名 称 A B C 黒 塗 六 星 紋 蒔 絵 女 乗 物 葉 菊 青 山 銭 紋 散 花 亀 甲 蒔 絵 女 乗 物 天 鵞 絨 巻 女 乗 物 黒 漆 橘 唐 草 丸 十 紋 蒔 絵 女 乗 物 伊 東 家 女 乗 物 駕 籠 5 17 浅 野 家 女 乗 物 駕 籠 4 金 蒔 絵 漆 塗 女 乗 物 南 部 氏 向 鶴 定 紋 散 女 乗 物 水 戸 家 定 紋 散 御 乗 物 上 記 9 挺 の 平 均 値 単 位 :mm 実 測 が 不 可 能 であった 箇 所 については で 示 す 4.5 本 体 に 使 われている 木 材 の 樹 種 本 体 を 構 成 する 木 材 の 樹 種 を 肉 眼 観 察 した 結 果 木 部 を 直 接 観 察 できた 部 位 については 檜 であることがわかった 女 乗 物 の 場 合 木 地 に 麻 布 を 巻 き 付 け 刻 苧 下 地 錆 下 地 を 施 し 黒 漆 で 仕 上 げている この 手 の 込 んだ 丁 寧 な 仕 上 げのために 年 月 を 経 て 木 が 痩 せてし まっても 木 目 が 見 えることがなく 観 察 は 破 損 箇 所 や 磨 り 減 った 部 分 を 中 心 に 行 った こ のため 木 部 全 てについて 確 認 できたわけで はない しかしそのような 状 況 でも 内 部 の 絵 画 が 和 紙 ごと 剥 がれた 箇 所 を 観 察 すると 目 の 詰 んだ 柾 目 の 檜 を 使 用 していることが 確 認 できた( 図 7) また 大 興 寺 ( 愛 媛 県 伊 予 市 )の 金 蒔 絵 漆 塗 女 乗 物 からは 担 ぎ 棒 に も 檜 が 使 われていることがわかった( 図 7) 図 7 本 体 と 担 ぎ 棒 に 使 われている 檜 材 木 目 から 檜 の 柾 目 材 とわかる ( 左 : 本 体 内 部 右 : 担 ぎ 棒 の 一 部 ) 金 蒔 絵 漆 塗 女 乗 物 ( 大 興 寺 愛 媛 県 伊 予 市 ) 5 考 察 5.1 女 乗 物 の 製 作 のおける 雛 形 現 地 調 査 を 行 った 女 乗 物 9 挺 の 主 要 部 の 寸 法 の 平 均 値 と 婚 禮 道 具 圖 集 に 記 された 寸 法 は 非 常 に 近 く 形 態 やつくりも 共 通 してお り これは 偶 然 とは 考 えられない 当 時 この 文 献 の 他 に 女 乗 物 に 関 する 資 料 が 存 在 した 可 能 性 は 否 定 できないが 現 段 階 では 婚 禮 道 具 圖 集 の 婚 禮 道 具 諸 器 形 寸 法 書 人 巻 に 記 された 内 容 は 女 乗 物 の 製 作 における 雛 形 の 役 割 を 果 たした 可 能 性 は 高 いと 考 えられる 5.2 女 乗 物 のつくり 人 を 乗 せて 担 ぐ ための 最 低 限 の 構 造 材 は 正 面 から 見 て 上 部 の 蒲 鉾 形 の 板 材 四 隅 の4 本 の 柱 材 前 後 を 繋 ぐ3 本 の 棒 材 下 部 の 四 方 枠 床 下 の 桟 担 ぎ 棒 を 通 す 金 物 であ る もちろんこの 構 造 材 だけでは 歪 みを 抑 え ることができないため 実 際 には 側 面 の 板 材 等 で 構 造 を 補 っている 唐 破 風 状 の 屋 根 は 存 在 感 もあり 乗 物 と 呼 ばれる 駕 籠 におい ては 象 徴 的 な 部 分 ではあるが 板 の 厚 さを 測 ると 非 常 に 薄 く 構 造 材 としての 機 能 は 担 っ ていない 平 均 値 からも 薄 い 板 が 使 われてい ることがわり 厚 みは4mm 程 度 しかない ( 表 3) 担 ぎ 棒 を 通 す 金 物 も 屋 根 板 に 穴 を あけて 通 しているだけで 固 定 は 下 の 蒲 鉾 形 の 板 にしっかりとされている これについて は 解 体 かX 線 撮 影 をしなければ 確 実 なことは 言 えないが 筆 者 が 共 同 で 行 った 駕 籠 ( 逓 信 総 合 博 物 館 所 蔵 )の 修 復 からは 蒲 鉾 形 の 板 の 内 部 で 担 ぎ 棒 を 通 す 金 物 の 先 端 が 金 属 製 の 金 物 によって 強 固 に 固 定 されていることがわ 64

66 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 図 8 左 : 修 復 後 の 駕 籠 ( 修 復 後 逓 信 総 合 博 物 館 にて 筆 者 撮 影 ) 右 : 板 の 内 部 で 金 物 を 固 定 している 中 央 の 白 い 部 材 は 修 復 の 際 に 補 強 材 として 加 えたものである かっている( 図 8) 今 回 調 査 を 行 った 女 乗 物 についても 同 様 に 板 の 内 部 で 金 物 によっ て 固 定 されていると 予 想 できる 側 面 の 板 材 には 厚 みのある 無 垢 材 が 用 い られていることがわかった その 理 由 として は 外 装 は 漆 塗 りで 仕 上 げ 内 装 は 花 鳥 画 を 張 り 込 むため 反 りや 歪 みの 少 ない 材 が 適 当 だったということが 考 えられる できる 限 り 軽 くしたいとはいえ この 理 由 のために 庶 民 の 駕 籠 に 見 られる 軽 くするための 工 夫 も できなかったのだろうと 筆 者 は 考 えている 5.3 江 戸 時 代 における 女 乗 物 と 檜 檜 を 用 いることの 意 味 本 体 を 構 成 する 木 材 は 檜 であることが 確 認 できた これは 筆 者 にとって なるほどと 思 う 結 果 であった 檜 材 は 材 質 にむらが 少 なく 特 有 の 芳 香 と 光 沢 があり 加 工 もしやすい 木 材 の 強 度 について 小 原 二 郎 は 一 般 に 木 材 の 強 さは 比 重 に 比 例 するが 針 葉 樹 は 材 が 軽 軟 であるから 重 くて 硬 い 広 葉 樹 よりも 弱 い 14 と 述 べており これによると 比 重 が0. 45である 檜 は 弱 い 方 に 含 まれる しかし 小 原 によると 檜 材 は 曲 げ 圧 縮 硬 度 などの 硬 さは いずれも200 年 くらいまでの 間 は じわじわと 増 大 し 最 大 30パーセント 近 くも 増 大 する 15 という 世 界 最 古 の 木 造 建 築 で ある 法 隆 寺 や 伊 勢 神 宮 など 多 くの 神 社 仏 閣 が 檜 材 でつくられていることから 世 界 的 にも 優 秀 な 材 と 言 われていることには 納 得 ができ 駕 籠 に 使 われていると 知 った 時 も 当 然 のこと と 思 えた さらに 筆 者 は 女 乗 物 の 製 作 に 檜 材 を 使 っ たことには 駕 籠 特 有 の 理 由 があると 考 える 女 乗 物 は 人 を 乗 せて 長 い 距 離 を 運 ぶ 4 人 で 担 ぐとはいえ 軽 ければ 軽 いほど 楽 でよい その 点 を 考 えると 檜 材 は 前 述 のように 他 の 針 葉 樹 に 比 べて 強 度 があり 軽 さと 丈 夫 さが 同 時 に 求 められる 女 乗 物 の 材 料 としては 最 適 なのである また 檜 材 は 他 の 樹 種 に 比 べて 曲 げに 強 い 女 乗 物 の 唐 破 風 状 の 屋 根 のアー ルを 作 る 際 にも 曲 げにも 強 い 檜 材 の 特 長 が 活 かされているのである 檜 材 の 需 要 江 戸 時 代 において 檜 材 は 一 般 的 に 使 われ ていたのであろうか 江 戸 時 代 は 伊 勢 神 宮 や 江 戸 城 などの 建 築 物 の 造 営 のために 檜 材 の 需 要 が 増 大 した 尾 張 藩 においては 乱 伐 により 荒 廃 した 森 林 を 再 生 させるために 木 曽 で 木 一 本 首 一 つ と 言 われる 厳 しい 留 山 ( 伐 採 を 禁 じた 山 ) 制 度 を 行 ったほどである 木 材 消 費 の 多 かった 貞 亭 (1684~88 年 ) 元 禄 (1688~1704 年 ) 期 に 江 戸 へ 木 材 を 提 供 し ていたのは 肥 後 土 佐 阿 波 紀 伊 飛 騨 信 濃 などの 諸 国 であり 16 女 乗 物 の 製 作 にも これらの 国 から 供 給 された 材 が 使 用 されてい た 可 能 性 が 高 いと 考 えられる しかしこの 事 についての 具 体 的 な 記 述 は 未 だ 見 つけること ができておらず 今 後 の 課 題 と 考 えている 6 おわりに 現 存 する 女 乗 物 の 観 察 と 実 測 を 通 して 基 本 的 なつくりが 共 通 していること 檜 材 が 主 に 用 いられていることがわかり それは 一 つ の 成 果 であった さらに 婚 禮 道 具 圖 集 に 書 かれた 内 容 が 製 作 の 雛 形 となった 可 能 性 をより 高 めることができた しかし 調 査 件 数 としては 十 分 とはいえず 今 回 調 査 対 象 とし た 女 乗 物 以 外 にも 全 国 に 数 多 く 存 在 が 確 認 さ れている 地 域 や 時 代 にも 偏 りが 見 られたこ とも 事 実 である 今 後 は 庶 民 の 使 用 した 駕 籠 の 研 究 を 進 め 本 稿 の 女 乗 物 の 研 究 成 果 を 比 較 対 象 として 取 り 入 れたいと 考 えている 65

67 女 乗 物 のつくりと 材 料 の 研 究 木 部 の 観 察 と 実 測 を 通 して 落 合 里 麻 謝 辞 本 研 究 は JSPS 科 研 費 の 助 成 を 受 けたものである 研 究 課 題 江 戸 時 代 の 駕 籠 木 部 の 技 法 構 造 材 料 の 研 究 の 中 で 本 稿 では 特 に 女 乗 物 に 焦 点 を 当 てて 内 容 をまと め 執 筆 した 現 地 調 査 では 多 くの 博 物 館 資 料 館 寺 院 神 社 にご 協 力 いただき 女 乗 物 についての 詳 細 な 調 査 を 行 うことができた 長 時 間 の 調 査 にも 関 わらず 快 く 受 け 入 れてくださったこ とに 感 謝 の 意 を 表 したい ご 協 力 いただいた 機 関 については 次 に 示 すとおりである (50 音 順 敬 称 略 ) 飫 肥 城 歴 史 資 料 館 ( 日 南 市 教 育 委 員 会 ) 公 益 財 団 法 人 松 浦 史 料 博 物 館 大 興 寺 薩 摩 伝 承 館 鳥 谷 崎 神 社 もりおか 歴 史 文 化 館 和 歌 山 市 立 博 物 館 また 婚 禮 道 具 圖 集 の 現 代 語 訳 に 際 し て 知 識 や 助 言 をいただいた 井 上 豪 准 教 授 に 御 礼 申 し 上 げる 註 1 乗 物 と 駕 籠 の 基 準 は 大 きく 配 者 層 が 用 いたものと 被 支 配 者 層 が 用 いたものに 分 けられ るが その 基 準 は 曖 昧 である 例 えば 守 貞 謾 稿 に 支 配 者 層 が 用 いた 茣 蓙 巻 乗 物 よりも 被 支 配 者 層 が 用 いた 法 仙 寺 駕 籠 という 装 飾 性 に 優 れ た 駕 籠 が 記 してある という( 日 髙 2008 p.97) 形 の 特 徴 からも 分 類 ができるが その 分 類 方 法 も 一 つではなく やはり 明 確 な 基 準 がないようだ 2 日 髙 真 吾 女 乗 物 その 発 生 経 緯 と 装 飾 性 東 海 大 学 出 版 会 2008 年 p 逓 信 総 合 博 物 館 は2013 年 8 月 に 閉 館 し 2014 年 3 月 に 郵 政 博 物 館 として 墨 田 区 押 上 に 開 館 した 4 駕 籠 は 守 貞 謾 稿 で 分 類 がなされているが 現 地 調 査 の 過 程 ではどの 分 類 にも 属 さない 形 状 が 少 なからず 見 られ 共 通 項 が 少 ないため 数 挺 を 比 較 して 調 査 結 果 を 出 すことが 難 しい 5 日 髙 は 守 貞 謾 稿 に 描 かれた 女 乗 物 ( 図 1) について 乗 物 と 駕 籠 に 関 する 一 考 察 ( 民 具 研 究 / 日 本 民 具 学 会 2003 年 p.30)の 中 で 屋 根 部 分 について 守 貞 謾 稿 では 丸 みを 帯 びた 屋 根 を 描 いており 筆 者 の 調 査 した 唐 破 風 状 の 形 状 とは 異 なる と 指 摘 している 6 岡 田 玉 山 著 正 宗 敦 夫 編 纂 校 訂 婚 禮 道 具 圖 集 下 巻 日 本 古 典 全 集 刊 行 会 1793 年 ( 日 本 古 典 全 集 ; 第 6 期 ) 婚 禮 道 具 諸 器 形 寸 法 書 人 巻 pp 日 髙 真 吾 女 乗 物 その 発 生 経 緯 と 装 飾 性 東 海 大 学 出 版 会 2008 年 pp 守 貞 謾 稿 喜 田 川 守 貞 1853 年 p.455 原 文 には 句 読 点 がないため ここでは 句 読 点 のみ 適 宜 追 加 した 9 日 髙 真 吾 女 乗 物 その 発 生 経 緯 と 装 飾 性 東 海 大 学 出 版 会 2008 年 pp 同 上 pp 三 面 図 断 面 図 ( 側 断 面 3 面 )を 作 成 するた めに 必 要 な 寸 法 全 てを 測 る 場 合 対 象 が 女 乗 物 の 場 合 は7~8 時 間 が 必 要 であった 12 施 設 によっては 常 設 展 示 のため 閉 館 後 の 短 時 間 での 実 測 しか 許 可 されない 場 合 がある 13 手 前 の 突 起 物 を 避 けて 厚 みを 測 れる 道 具 ノ ギスの 一 種 である 14 西 岡 常 一 小 原 二 郎 法 隆 寺 を 支 えた 木 日 本 放 送 出 版 協 会 1978 年 p 同 上 p 有 岡 利 幸 ものと 人 間 の 文 化 史 153 檜 (ひ のき) 法 政 大 学 出 版 局 2011 年 pp 参 考 文 献 1 櫻 井 芳 昭 ものと 人 間 の 文 化 史 141 駕 籠 法 政 大 学 出 版 局 2007 年 2 岡 田 玉 山 著 正 宗 敦 夫 編 纂 校 訂 婚 禮 道 具 圖 集 日 本 古 典 全 集 婚 禮 道 具 圖 集 現 代 思 潮 社 1978 年 3 所 三 男 近 世 林 業 史 の 研 究 吉 川 弘 文 館 1980 年 4 鈴 木 和 夫 福 田 健 二 編 著 図 説 日 本 の 樹 木 朝 倉 書 店 2012 年 66

68 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 についての 構 成 学 的 考 察 金 孝 卿 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 には 円 紋 同 心 円 紋 輪 紋 などがあり これらは 釣 り 合 いのとれたダイナミッ クスな 造 形 として 知 られている その 他 に 均 等 間 隔 ではあるが 閉 鎖 性 ではない 曲 線 による 渦 巻 状 と フィボナッチ 数 列 による 螺 旋 状 の 渦 紋 または 面 が 図 と 地 の 相 互 関 連 によって 形 成 される 構 造 の 巴 紋 点 の 連 続 による 線 状 に 構 成 された 雲 紋 さらに 輪 郭 線 に 閉 鎖 された 家 紋 に 表 現 された 形 態 などが 含 ま れている つまり 何 百 年 前 に 作 られた 円 形 の 紋 様 は 象 徴 的 装 飾 的 造 形 として 形 のまとまりの 造 形 要 素 として 豊 かなバリエーションが 存 在 している そのまま 現 代 のグラフィックデザインにおける 会 社 の シンボルマークやブランド 品 のトレードマークとして 数 多 く 使 われている それぞれの 意 味 や 形 態 が 異 なるものの 対 称 ( 反 転 ) 連 続 回 転 のシンメトリー 性 のもった 数 理 的 な 造 形 であり デザイン における 造 形 のエレメントとして 共 通 性 をもっている キーワード 幾 何 学 的 紋 様 装 飾 美 術 構 成 原 理 FormalAnalysisofCircularGeometricCrests KIM HyoKyung Thecirculargeometriccrests,Enmondousinenmon(concentriccrest),includeWamon,theyareknownas thedynamicsofthemoldingawel-balance.itisintheotherinequalintervals,butthespiralc'monbyspiral andfibonaccisequencebyitisnotaclosedcurveorsurfaceofthestructure,whichisformedbythemutual relationoffigureandgroundtomoemon,linearbyaseriesofpoints,configuredkumomoncontainssuchasin theformexpresedinthecrest,whichisclosedorcontour. Inotherwords,hundredsofyearsbeforethecircularcrestsmadetosymbolicaly,asdecorativemolding, richvariationexistsasmodelingelementsintheformofunity.asithasbeenusedanumberasatrademark ofsymbolmarksandbrandsofthecompanyinmoderngraphicdesign.althougheachmeaningandformis diferent,symmetry(inverted),continuous,itisamathematicalmodelingthathasthesymmetryoftherotation, andhaveacommonalityasanelementofmodelinginthedesign. Keywords:GeometricCrests Decorativeart PrincipleofForm 67

69 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 についての 構 成 学 的 考 察 金 孝 卿 1 研 究 の 背 景 1.1 研 究 の 意 義 本 来 幾 何 学 的 紋 様 は 伝 統 的 装 飾 芸 術 に おけるもっとも 基 本 的 な 造 形 要 素 であり こ れまで 数 多 く 研 究 がなされてきた しかし その 上 にさらなる 研 究 を 試 み 実 質 的 な 成 果 を 導 き 出 すことは 決 して 容 易 ではない 本 研 究 は これまで 論 及 されることが 少 な かった 円 形 に 成 している 幾 何 学 的 紋 様 を 対 象 として 取 り 上 げ その 幾 何 学 的 造 形 的 特 性 に 注 目 し 構 成 学 的 立 場 から 検 討 することで ある 1.2 研 究 の 方 法 今 はデザイン 界 では 一 般 的 によく 見 られる 形 態 である 円 形 による 幾 何 学 的 紋 様 の 形 態 的 造 形 的 側 面 から 検 討 し 分 析 することである ここで 具 体 的 な 考 察 を 行 なうために 取 り 上 げ た 円 紋 は 伝 統 的 紋 様 として 受 け 継 げられて いるが それらの 造 形 的 要 素 を 構 成 学 的 視 座 から 分 類 し デザインへの 利 用 検 討 するこ とが 本 研 究 の 最 大 の 特 色 であり 研 究 の 目 的 でもある したがって 円 形 による 幾 何 学 的 紋 様 のバ リエーションを 分 類 し 鏡 面 回 転 移 動 縮 小 拡 大 逆 対 称 などのシンメトリー 性 の 数 理 的 分 析 を 行 なう 円 形 を 造 形 モチーフと して 捉 え 形 態 的 進 化 と 形 態 の 変 容 統 合 な どを 考 察 し その 造 形 的 な 体 系 化 を 試 みる 2 装 飾 表 現 の 背 景 人 間 は 自 然 環 境 のなかで 生 きている 自 然 から 人 間 生 活 に 必 要 なものを 摂 取 し 不 必 要 なものを 排 出 しつつ 生 存 していく そもそも 人 間 が 描 く 創 る 飾 る と いう 表 現 は 先 史 時 代 から 自 然 と 存 在 してき た これは 人 間 が 何 らかの 形 を 残 したいとい う 願 望 の 行 為 からはじまったと 考 えられる この 行 為 は 描 かれたものに 対 する 合 図 やシ ンボルであり 視 覚 的 メッセージの 記 録 であっ たに 違 いない ( 図 1) たとえば 図 2の 渦 巻 きパターンは 古 代 から 原 始 紋 様 として 広 く 用 いられてきた 縄 文 時 代 に 現 れた 壷 形 土 器 を 見 ても 自 然 の 巻 貝 に 見 られる 渦 状 の 形 を 形 象 化 した 渦 巻 形 と 鋸 歯 状 の 線 が 幾 何 学 的 抽 象 形 として 埋 め 尽 く されている これらの 形 態 は おそらく 目 で みることのできる 絵 として 表 現 されたのでは なく 人 間 にへと 保 存 することを 可 能 にした と 考 えられる 2.1 自 然 と 人 工 の 形 アルタミラやラスコー 洞 窟 ( 図 3)をみて も 明 らかなように 先 人 たちははじめから 私 たちが 知 っているような 美 術 を 意 識 して 描 い たものでなく 牛 馬 鹿 などの 動 物 の 生 気 ある 姿 を 写 実 的 に 描 いていた これも 正 面 か ら 見 た 図 形 はほとんどなく 動 物 の 活 力 や 動 作 を 的 確 に 表 現 しやすい 側 面 のものが 主 流 を 占 めていた このように 大 自 然 に 立 ち 向 かう 人 間 の 姿 の 形 として 視 覚 的 な 情 報 伝 達 記 録 したい という 欲 求 に 過 ぎなかったと 考 えられる 人 間 は 自 然 の 恩 恵 を 受 けながらも 獣 などの 危 険 から 身 を 守 り 人 間 に 適 した 環 境 を 整 えて きたことが 分 かる その 後 人 間 は 長 い 歳 月 を 経 て 生 活 に 必 要 な 道 具 や 住 む 家 を 作 り 出 すことになった 壷 や 器 物 などの 土 器 の 表 面 には 原 始 的 な 幾 何 学 的 紋 様 が 描 かれており 植 物 の 繊 維 を 用 い て 縦 糸 横 糸 の 様 々な 組 み 合 わせで 織 物 を 織 り 上 げたり 模 様 の 単 位 (ユニット)を 反 復 68

70 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 第 一 に 具 象 形 態 をモチーフにしながら 硬 化 し 様 式 化 装 飾 化 した 幾 何 学 的 抽 象 形 態 にみえるダイプ 第 二 に 抽 象 形 態 で 分 割 した 中 に 具 象 形 態 を 嵌 め 込 んだタイプ 第 三 に 相 互 に 組 み 合 わせたタイプ 第 四 に 相 互 に 配 置 したタイプ (リピード)する 方 法 ( 図 4)を 応 用 し 連 続 模 様 を 作 ったりしながら 装 飾 する 美 の 豊 か さを 知 った こうした 環 境 のもとで 人 間 は 自 然 を 描 写 しながらも 人 間 だけが 作 り 得 る 人 工 の 形 を 生 み 出 したのである つまり 自 然 ( 形 )から 生 まれた 人 工 の 形 は 機 能 や 目 的 に 適 した 形 や 構 造 などに 発 展 を 重 ねてきたのであろう 3 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 の 構 成 学 的 考 察 円 形 による 幾 何 学 的 紋 様 の 形 式 には 紋 章 や 家 紋 シンボルマークのような 単 独 形 があ り 2つ 以 上 の 単 位 が 用 いられた 複 合 形 とが ある この 複 合 形 の 形 式 にも 単 位 を 繰 り 返 して 並 べた 方 法 と 単 位 と 単 位 の 地 間 を 埋 め 尽 くす 充 填 する 方 法 がある さらに 二 方 連 続 四 方 連 続 反 転 回 転 などさまざまであ るが 地 間 を 充 填 する 方 法 をまとめると 次 のように 挙 げられる 2.2 人 工 の 形 の 分 類 人 工 の 形 には 自 然 を 形 象 化 した 自 然 主 義 な 具 象 形 態 と 幾 何 学 的 形 態 を 含 む 抽 象 形 態 が 上 げられる まず 具 象 形 態 は 充 填 の 欲 求 を 視 覚 化 したものがあるが 描 かれた 動 物 は 農 作 や 農 漁 に 対 する 祈 願 や 呪 術 的 なシンボ ルとして 表 現 された 特 に 人 工 の 形 は 各 種 の 植 物 各 種 の 動 物 自 然 界 における 波 雲 山 星 雨 など( 図 5)が 多 く 占 めてあるが このなかには 現 実 的 に 存 在 しない 想 像 上 のものも 含 まれる たとえば 中 国 の 聖 人 の 出 る 前 に 現 れる 麒 麟 や 四 神 の 内 の 東 方 を 象 徴 する 青 龍 など ビー ルの 商 標 ( 図 6)や 十 二 支 の 龍 などで 馴 染 み 深 い 想 像 上 の 動 物 も 現 れた ここで 人 工 の 形 として 家 紋 ( 図 7)を 取 り 上 げ 次 のように 分 類 することができた 第 一 に 同 形 だけが 埋 め 尽 くす 第 二 に 密 度 の 変 化 による 錯 視 表 現 を 伴 う 第 三 に 単 位 の 大 きさが 規 則 的 に 変 化 する 第 四 に 異 なる 単 位 が 交 代 に 繰 り 返 す これらは 快 い 変 化 を 与 え 空 間 装 飾 的 効 果 というより 点 線 面 色 形 などが 工 夫 され まとまりのある 構 成 もしくは 造 形 秩 序 に 沿 った 表 現 になっているといえる 3.1 円 紋 の 形 成 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 の 形 態 は 有 機 的 な 点 の 要 素 から 派 生 した 点 線 直 線 曲 線 ( 図 8) によって 誕 生 し 円 形 ( 図 9) 三 角 形 四 角 形 五 角 形 六 角 形 螺 旋 形 などに 応 用 さ れることによって 様 々に 発 展 する 過 程 で 形 成 された 図 象 を 指 す 本 来 的 にそれらは 人 工 69

71 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 についての 構 成 学 的 考 察 金 孝 卿 の 形 の 基 本 構 造 として 体 系 化 しやすく また 同 時 に 人 工 的 形 態 のベースメントを 形 成 する さらに 位 置 と 大 きさが 異 なる 様 々な 変 化 形 を 生 み 外 的 な 力 による 膨 張 感 と 収 縮 感 また 方 向 性 をもつ 構 造 から 象 徴 と 装 飾 ( 図 10) の 要 素 と 深 い 関 係 をもちつづけてきた 円 形 の 大 小 による 遠 近 感 形 態 との 間 隔 重 ね 変 形 などによって 連 続 パターンにみえ たり 星 形 に 見 えたり 錯 視 効 果 も 加 わり 幾 何 学 的 抽 象 形 態 として 視 覚 効 果 を 高 めるの である ところが 円 形 の 輪 郭 がネガ ポジ 陰 陽 表 現 による 形 と 異 なる 形 態 との 複 合 型 がある ここで 複 数 の 円 形 紋 様 がポジの 場 合 は ネガ ティブな 形 態 の 表 現 より 視 認 性 が 低 いものの シャープな 視 覚 効 果 を 与 えている 3.2 円 紋 から 七 宝 紋 七 宝 紋 は 円 形 が 連 続 して 回 転 する 数 理 的 に 形 成 された 形 態 であるが 図 11の1 上 下 左 右 の 点 と 点 が 継 がれた 2 円 の4 分 の1とな る 形 を 3すべり 鏡 映 に 反 転 させる 形 が 現 れる これは 44つの 円 形 が 継 がれて 接 する 部 分 から 生 成 される 中 心 の 円 形 に 対 して 5 地 間 に 自 然 に 菱 形 の 構 造 によって 七 宝 紋 がつく られた これが 図 となる64つの 菱 形 の 並 べ ると 中 央 には 地 となる 円 形 がつくられた この 時 四 つの 形 のなかで 一 つでも 欠 けると 三 つ 形 だけで 崩 れ 七 宝 紋 ( 図 12) が 生 まれる ところが この 崩 れた 形 態 を 単 独 に 用 いた 場 合 には アンバランス アシンメトリー 性 を 成 しているように 円 形 は 正 しい 数 理 的 70

72 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 構 造 の 繰 り 返 すしながらも 不 規 則 で 自 由 な アンバランスの 形 態 が 空 白 の 運 動 感 をもたら す 造 形 にも 成 り 得 る しかし 形 が 左 右 反 転 したもう 一 つ の 形 が 重 なると 自 然 的 に 面 積 あるX 字 とな る がシンメトリーとバランスとれて 均 質 性 もつ これを45 の 方 向 を 変 えると 形 の 十 字 形 がつくられる このよう な 円 紋 は 円 の 配 置 から 得 られる 数 理 的 に 規 則 性 のある 構 造 をもつ 形 態 として 様 々なバ リエーションを 生 み きわめてまとまりのあ る 象 徴 的 な 造 形 といえる このように 円 形 から 形 成 される 七 宝 紋 は 世 界 の 色 々 国 で 共 に 表 現 された 形 態 であるが 日 本 では 織 物 に 多 用 され 織 り 出 した 線 の 流 れが 柔 らかく 整 然 なる 形 態 が 表 現 された 幾 何 学 的 特 性 を 生 かした 数 理 的 構 造 であり 規 則 正 しい 秩 序 による 造 形 が 主 流 を 占 めている つまり 円 紋 は 点 を 持 たずに 円 形 に 成 り 立 たないので 点 から 線 や 点 から 面 がつくられ たという 構 造 を 裏 付 けていると 考 えられる 3.3 円 紋 から 派 生 の 形 円 形 を 単 独 に 形 成 された 場 合 には 最 もシ ンメトリー 性 をもっているが この 完 全 な 状 態 の 円 形 の4つが 継 がれると 閉 鎖 性 による 連 続 パターンがつくられる ところが 図 12 のように 意 識 的 にアシンメトリー 性 を 生 か した 破 れ 七 宝 紋 のような 連 続 パターンもつ くられた このような 調 査 分 析 した 結 果 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 が 点 線 ( 直 線 曲 線 ) 面 によ る 造 形 要 素 によって 構 成 されているという 造 形 性 について 図 13のような 発 展 過 程 によっ て 形 成 されることが 推 察 できる 図 13のAグループの1の 点 が 基 本 となり そこから2の 二 つの 点 を 繋 ぐ 点 の 連 続 から 半 円 となり 2の 間 にも 点 が 増 えて やがて 無 数 な 点 によって 円 形 が 形 成 される そもそも 円 は 収 縮 作 用 と 外 側 に 向 かって 膨 張 する 潜 在 的 対 称 の 力 が 内 在 し 方 向 性 と 回 転 性 をも つ ただし 小 さな 同 心 円 の 場 合 は 運 動 感 が 少 なく 大 きい 円 の 場 合 ( 図 10)は 回 転 性 と 動 きが 一 層 強 く 感 じられる この 形 成 過 程 から 考 えると 対 称 的 な 四 つ 点 を 定 め それに 重 ねる 外 側 に 向 かう 膨 張 す る 新 たな 輪 紋 が 連 続 されるので 内 側 を 通 る A-4から 七 宝 紋 になるように 円 をモチーフ とした 均 等 分 割 と 均 衡 のとれたレイアウト ( 配 置 )がつくられる つまり その 四 つの 基 本 ユニットが 一 つのモチーフとして 非 対 称 に 崩 される 応 用 形 がつくられ 日 本 独 特 のア ンバランスな 七 宝 紋 が 生 まれた また ネガとポジの 相 互 関 係 から 様 々な 組 み 合 わせによる 変 化 形 が 生 み 出 され 点 から 円 形 三 角 形 四 角 形 菱 形 などに 変 容 した 形 成 過 程 を 推 測 することができた 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 には 点 線 面 の 造 形 要 素 はも ちろん 造 形 秩 序 によって 統 一 されたまとま りのある 形 として 捉 えられる 以 上 のように 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 には モチーフと 応 用 によって 様 々な 造 形 が 派 生 さ れるため 装 飾 紋 様 の 基 本 形 として 多 用 され てきたと 考 えることができる 特 に 造 形 秩 序 ( 図 14)のなかで 行 なう 装 飾 的 な 幾 何 学 的 形 態 として 均 衡 がとれたシンメトリー 性 の 形 態 としての 視 覚 効 果 が 強 いといえる 3.4 小 紋 の 造 形 性 幾 何 学 的 形 態 としての 円 紋 は 早 くから 点 列 線 紋 が 土 器 などに 表 現 され 幾 何 学 的 紋 様 史 上 で 伝 統 的 な 脈 らくを 形 成 している と 上 71

73 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 についての 構 成 学 的 考 察 金 孝 卿 72

74 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 記 した そのため 点 だけの 構 成 されている 小 紋 を 取 り 上 げる 必 要 があるので ここで 小 紋 の 造 形 的 考 察 を 行 なう 小 紋 のなかには 規 則 正 しい 幾 何 学 的 な 形 態 があれば ネガティブな 点 が 線 を 描 く 構 成 も 見 られた ( 図 15)これは 点 を 意 識 してそ の 周 囲 を 線 で 取 り 巻 く 形 を 指 すが 線 の 一 部 を 切 断 してごくわずか( 線 の 太 さだけ)のず らせて すきまを 空 けて 空 白 ( 地 )に 点 つく る 場 合 もある ( 図 16)これは 円 形 の 存 在 感 としては 弱 いが 繊 細 な 表 現 として 様 々な 小 円 形 の 小 紋 などには 適 当 な 形 態 といえる こ の 構 成 は 点 を 持 たずに 点 を 描 く 表 現 方 法 と して 現 代 の 平 面 形 態 構 成 のエレメント として 取 り 入 られている このような 形 態 と 構 造 は 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 というより 点 の 大 きさがグラデーショ ンに 線 化 された 形 であるが 様 々な 大 きさの 点 の 配 列 からはっきりした 紗 綾 形 小 紋 ( 図 17) を 形 成 している どころが 周 囲 の 点 の 幅 が 微 妙 の 変 化 によっ て 全 体 の 点 の 構 成 がもたらすデリケートな 表 現 偶 然 的 な 構 造 ( 図 18)となっていた 場 合 もある 縞 線 の 幅 と 細 かい 点 が 圧 縮 されて 大 きさによるグラデーション( 図 19)と 錯 視 的 な 表 現 効 果 により 整 然 とした 秩 序 から 視 点 が 移 動 しているようにも 見 える 小 紋 の 現 れた 形 態 点 の 大 きさと 集 合 (または 拡 散 )する 点 ( 図 9)により 強 い 方 向 性 や 遠 近 感 を 指 し ている 円 を 形 成 する 源 となる 点 の 大 きさが 小 さいため 円 形 という 認 識 ではなく 点 の 大 きさが 決 める 曲 線 が 全 体 の 方 向 を 構 成 し 花 形 や 波 形 の 面 という 視 認 性 を 強 く 感 じさせ る また 点 の 大 小 と 密 度 ( 密 接 )によって は 象 徴 的 に 意 味 は 持 たないが 装 飾 的 意 味 と 凸 凹 の 表 現 も 可 能 であると 思 われる このように 点 を 巧 みに 構 成 することによっ て 曲 線 的 なリズム 感 をもつパターンや 陰 陽 によって 立 体 感 をもつパターンも 表 現 された これらもおびただしい 数 の 点 によって 線 的 効 果 を 現 した 造 形 として これらは 装 飾 模 様 と して 空 間 に 対 して 充 填 的 目 的 に 使 用 し 現 代 デザインにおいても 点 の 大 きさやモチーフバ リエーションによって 多 く 取 り 入 れている 小 紋 に 表 現 された 構 造 そもそも 小 紋 とは 点 と 点 の 近 接 性 と 方 向 性 もつ 形 として 点 の 大 きさを 効 果 的 に 生 か したパターンといえる 菊 水 模 様 ( 図 8)に 現 れた 形 態 は 視 覚 的 に 点 の 大 きさと 間 隔 に よって 波 の 流 動 的 な 力 が 方 向 を 表 現 している 4 数 理 性 によるシンメトリー 性 幾 何 学 的 形 態 は 常 に シンメトリー 性 をもつ 形 態 である ここでシンメトリーとい う 概 念 を 探 る H ヴァイルの シンメトリー では シンメトリー( 対 称 的 )という 用 語 の 意 味 を 次 のように 定 義 している 73

75 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 についての 構 成 学 的 考 察 金 孝 卿 第 一 は シンメトリーとは よく 釣 り 合 い がとれた 調 和 の 意 味 として ひとつの 全 体 に 融 合 している さま をあらわす 美 は シンメトリーと 結 びついている 第 二 は シンメトリーという 言 葉 には 自 然 なつながりをつけている また 左 右 対 称 であって 高 等 動 物 特 に 身 体 構 造 において 著 しい と 述 べている これらの 意 味 から シンメトリー の 概 念 は 左 右 対 称 をつくる 美 であると 同 時 に 幾 何 学 的 紋 様 の 美 しさもシンメトリー 性 であ るともいえる 対 称 の 模 写 や 模 倣 によらない 自 律 的 な 造 形 言 語 に 基 づき 洗 練 された 美 的 感 覚 があふれる 造 形 表 現 でもある 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 におけるシンメトリー の 特 徴 は あらゆる 主 観 的 要 素 を 取 り 除 いた 単 純 化 簡 潔 化 されている 造 形 要 素 となるモ チーフの 数 と 量 ( 面 積 )が1:1/2:2 を 形 成 するシンメトリー 性 の 構 造 である 言 い 換 えれば 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 がシン メトリーに 形 成 しているから 美 と 繋 がること にもなる また 幾 何 学 という 秩 序 のなかで 抽 象 化 された 理 念 的 形 態 として 常 に 連 続 と いう 規 則 の 変 化 交 代 進 行 の 過 程 が 繰 り 返 す(リピード)との 構 成 原 理 ( 図 14)に 基 づ いている さらに 閉 鎖 性 による 基 本 図 形 の 円 形 より 曲 線 三 角 形 四 角 形 菱 形 十 字 形 などに 変 容 していくが いずれもシンメトリー 性 を 形 成 する これらは ユークリッド 幾 何 学 に 準 ずる 形 態 として 基 本 形 の 図 形 と 地 間 から 生 じる 地 形 との 相 互 によってつくり 出 す この 抽 象 的 形 態 を 単 なる 衝 動 的 な 装 飾 に 見 なされがちであるが 本 来 は 直 線 曲 線 というユニットの 繰 り 返 しによる 構 造 をもっ ている このような 原 理 には 多 くの 事 物 や 具 象 的 な 姿 や 形 が 共 通 する 性 質 と 属 性 を 抜 き 出 して 抽 象 化 されながらも 釣 り 合 いによ る 調 和 を 持 たなければ 成 り 立 たない 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 の 自 体 がシンプルで 明 快 なイメージを 持 つことは いわゆるバラン スがとれたシンメトリー 性 による 調 和 が 簡 潔 化 されるバラエティーをもつからといえる 5 デザインへの 利 用 円 紋 は 視 覚 的 に 認 識 しやすいサイン シ ンボルマークとして 視 覚 コミュニケーショ ン メディアの 役 割 を 果 たし これらに 相 応 しい 形 のデザインに 十 分 整 えられているとい うことができる ビジュアル コミュニケー ションの 視 点 からデザインへの 展 望 が 見 られ るだけでなく その 形 の 美 しさを 生 かすよう に デザインされたものである また 円 形 の 基 本 モチーフとしてビジュア ル ソースとしての 役 割 をもち 応 用 によっ て 造 形 の 豊 かさが 視 覚 伝 達 の 目 的 としてデザ イン 的 な 役 割 を 十 分 果 たしている 視 覚 デザ インの 表 現 性 における 美 的 表 現 を 一 層 高 めて いくともいえよう いわゆる これを 現 代 デザイン 用 語 によれ ば ベーシックタイプにデザインされたシン ボルマークであるが 広 い 意 味 では サイン デザインとして 捉 えられる この 視 覚 デザイ ンへの 展 開 と 応 用 は 優 れたデザインとして 造 形 力 を 見 せ る 現 代 デザインは CI (CorporateIdentity) 計 画 の 手 法 として 多 く 取 り 入 られてきた 特 に 企 業 のトレンドマーク 名 刺 封 筒 レターベッド ユニフォーム 社 章 建 物 の 入 り 口 のサインのようなイメージ コミュ ニケーション デザインに 応 用 されている 我 々の 生 活 空 間 をみると 色 彩 や 紋 様 ( 模 様 ) がデザインされていない 形 態 は 日 常 用 品 機 器 衣 装 装 身 具 建 築 物 など ほとんど 存 在 しないといってもよい ( 図 20) 74

76 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 デザインとは 生 活 のために 必 要 な 様 々な 物 をつくるにあたって 材 料 構 造 や 機 能 は 美 しさと 調 和 を 考 えて 一 つの 形 態 あるいは 形 式 へとまとめ 上 げる 総 合 的 な 計 画 設 計 を ふくめた 造 形 と 捉 えるならば 幾 何 学 的 紋 様 は 近 代 デザインの 形 態 と 形 式 をもつプロセス というより 現 代 デザインが 見 られる 以 前 に 在 る 伝 統 デザインである と 考 えられる このような 意 味 から 考 えると デザインの 3 要 素 とは 色 彩 形 態 紋 様 (パターン) として 捉 えられる また 紋 様 はすべて の 実 用 的 機 能 的 な 物 の 表 面 に 表 象 する 必 要 不 可 欠 の 図 案 として パターン 化 され デザ インされた 造 形 エレメントである たとえば 器 物 のデザインでは 色 彩 と 形 態 が 決 まるとその 後 は 器 物 に 入 れるパター ンが 問 題 となる これは 紋 様 が 生 活 周 辺 のす べての 器 物 の 衣 装 衣 類 などに 繊 細 なパター ンの 美 しさと 細 部 な 機 能 美 の 表 現 である 独 特 なテクスチャの 役 割 も 果 たしているからで ある 6 結 論 幾 何 学 的 形 態 は 古 くから 自 然 主 義 的 とも いえる 動 物 紋 と 並 んで 水 平 垂 直 斜 め 円 渦 巻 といった 点 と 線 で 表 現 された 形 で ある いずれも 幾 何 学 が 登 場 する 以 前 原 始 時 代 の 岩 壁 画 や 土 器 などにも 見 られる 表 現 と して 古 代 人 の 生 活 を 豊 かにしてきた 円 形 三 角 形 四 角 形 の 造 形 要 素 による 自 律 的 な 純 粋 形 態 として 数 理 性 を 内 包 す る 抽 象 が 幾 何 学 的 形 態 あるいは 構 成 的 形 態 をつくり 出 すのが 幾 何 学 的 紋 様 であるという ことができる こうした 幾 何 学 的 あるいは 数 学 的 な 抽 象 形 態 は 平 面 はじめ 立 体 的 な 造 形 物 に 幅 広 く 用 いられてきた 本 論 で 取 り 上 げた 円 形 による 幾 何 学 的 紋 様 には 主 に 点 の 細 やかさの 曲 線 的 表 現 が 多 いなかで ユニット 自 体 が 象 徴 的 意 味 として 用 いられた 場 合 も 少 なくない 特 に 崩 れ 七 宝 紋 のように 幾 何 学 的 な 定 形 と 数 理 性 を 外 し た 非 定 形 の 表 現 がともに 使 われた 例 は 世 界 のどこにも 見 られない これらのアシンメ トリーやアンバランス 的 な 形 態 は 現 代 的 感 覚 に 満 ち 古 さを 感 じさせない ダイナミッ クスな 造 形 ということができる 紋 様 デザインの 古 典 である 万 国 図 案 大 辞 典 連 続 紋 様 図 案 集 世 界 紋 様 辞 典 家 紋 集 など で 見 られる 伝 統 紋 様 そのままが 今 日 の 装 飾 デザインでは 古 風 な 紋 様 でも 現 代 に 共 通 す る 美 の 共 感 がある また 絵 画 グラフィック デザイン 空 間 デザインなど 平 面 と 立 体 の 様 々な 領 域 で 造 形 要 素 として 部 分 的 に 広 域 的 に 用 いられて いる その 範 囲 は シンボル 包 装 紙 壁 紙 衣 装 織 物 などを 含 め さらに 壁 天 井 窓 戸 格 子 などのような 大 面 積 を 要 する 建 築 物 の 全 体 が パターンにデザインに 及 ぶ 以 上 のように 円 形 による 幾 何 学 的 紋 様 に ついて 分 析 したが 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 には モチーフや 対 称 回 転 移 動 重 ね 分 割 な どのシンメトリー 造 形 法 の 応 用 により 様 々 な 造 形 が 生 み 出 されると 考 えることができる 形 成 過 程 と 発 展 状 況 からみて 美 しさと 共 に 情 緒 的 視 覚 デザイン 的 効 果 を 挙 げている これからは 円 形 を 踏 まえ 三 角 形 四 角 形 による 幾 何 学 的 紋 様 について さらなる 研 究 を 重 ねていきたい { 図 版 目 録 } 図 1 フィリップ B メッグズ 藤 田 治 彦 グ ラフィック デザイン 全 史 淡 交 社 1996 年 図 2 矢 部 良 明 日 本 やきもの 史 美 術 出 版 社 1998 年 図 3 フィリップ B メッグズ 藤 田 治 彦 グ ラフィック デザイン 全 史 淡 交 社 1996 年 図 4 辻 惟 雄 日 本 美 術 史 吉 川 弘 文 館 1975 年 図 5 フィリップ B メッグズ 藤 田 治 彦 グ ラフィック デザイン 全 史 淡 交 社 1996 年 図 6 ヴィキペディアフリー 百 科 辞 典 75

77 円 形 の 幾 何 学 的 紋 様 についての 構 成 学 的 考 察 金 孝 卿 図 7 グラフィック 編 集 部 家 紋 大 図 覧 1996 年 図 8~10 近 藤 信 彦 日 本 の 文 様 1( 割 付 ) 光 琳 社 1977 年 図 11 金 孝 卿 作 成 図 12 西 岡 ハルオ 世 界 文 様 事 典 創 元 社 1994 年 図 13~14 金 孝 卿 作 成 図 15 近 藤 信 彦 日 本 の 文 様 1( 割 付 ) 光 琳 社 1977 年 図 16 朝 倉 直 己 芸 術 デザインの 平 面 構 成 六 耀 社 1984 年 図 17~18 近 藤 信 彦 日 本 の 文 様 1( 割 付 ) 光 琳 社 1977 年 図 19 金 孝 卿 撮 影 { 参 考 文 献 } 1 杉 浦 康 平 円 相 の 芸 術 工 学 工 作 舎 堤 浪 夫 かたちの 発 想 鳳 山 社 高 橋 正 人 構 成 1 視 覚 造 形 の 基 礎 鳳 山 社 海 野 弘 装 飾 空 間 論 美 術 出 版 社 野 口 広 図 形 工 房 日 本 ブリタニカ 藤 田 伸 連 続 パターンの 不 思 議 岩 崎 美 術 社 三 井 秀 樹 美 の 構 成 学 中 公 新 書 サイン コミュニケーション 刊 行 会 サイン コミュニケーション(CI/ 環 境 柏 書 房 近 藤 信 彦 前 園 実 知 雄 日 本 の 文 様 1( 別 冊 1.2.3) 光 琳 出 版 社 アイロス リーグル 著 / 長 広 敏 雄 訳 美 術 様 式 論 岩 崎 美 術 社 中 村 吉 右 衛 門 紋 章 とデザイン 淡 交 社 ジョン ダワー/ 白 石 かず 子 訳 紋 章 の 再 発 見 淡 交 社

78 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 カンヌライオンズ にみる 作 品 評 価 の 変 化 制 作 現 場 への 貢 献 を 目 的 として 水 田 圭 本 研 究 では カンヌライオンズ 国 際 クリエイティビティ フェスティバル ( 旧 カンヌ 国 際 広 告 祭 ) ( 以 降 カンヌ )を 制 作 者 による 広 告 作 品 への 評 価 であることに 着 目 し 時 系 列 で 整 理 する そ の 評 価 の 変 遷 はメディアや 社 会 の 変 化 への 対 応 ばかりではなく 制 作 側 が あるべき 評 価 を 実 現 し ようと 試 行 錯 誤 する 歴 史 である この 広 告 賞 は1954 年 映 画 館 における 劇 場 CM 振 興 のために 創 設 され たが 現 在 では17の 部 門 に 分 け 評 価 をおこなっている 各 部 門 はメディアの 違 いによってのみ 分 けら れているのではない 評 価 対 象 は クリエイティビティ アイデア 革 新 性 に 留 まらず 営 業 活 動 表 現 技 術 理 論 の 実 行 ターゲットの 絞 れたコミュニケーションのように 多 彩 となっている 評 価 の 観 点 として 対 象 とする 課 題 表 現 技 術 と 理 論 の 実 行 広 告 効 果 クリエイティビティ 等 と 整 理 する ことが 出 来 る カンヌ の 評 価 に 対 する 真 摯 な 姿 勢 を 確 認 することが 出 来 た キーワード: 広 告 クリエイティブ デザイン 評 価 デザイン Changeofevaluationtoseethe"CannesLions" MIZUTAKei Inthisstudy,"CannesLionsInternationalFestivalofCreativity"(formerly"CannesInternational AdvertisingFestival")(hereinafter"Cannes"),isorganizedintheatentionandtimeseriestobe"evaluationof advertisingworksbycreators".transitionoftheevaluationisnotonlyrespondingtochangesinthemediaand society,itisahistoryofproductiontrialanderortryingtorealize"idealevaluation."thisadvertisingaward wasfoundedfortheatercmpromotionin1954,andnowisdoingtheevaluationdividedinto17categories.each categoryisnottobeseparatedonlybythediferenceinmedia.evaluationisoncreativity,ideas,innovation, operatingactivities,representationtechnology,theexecutionofthetheory,andcommunicationwithawel focusedtarget.asintermsofevaluation,itisposibletoorganizetheisuesofinterest,theexecutionofthe expresiontechnologyandtheory,advertisingefectivenes,andcreativity,etc.iwasabletoconfirmasincere atitudetowardevaluationofthe"cannes". Keywords:Advertising,PublicRelation,Evaluation,Creativity, 77

79 カンヌライオンズ にみる 作 品 評 価 の 変 化 制 作 現 場 への 貢 献 を 目 的 として 水 田 圭 1 目 的 と 本 研 究 の 位 置 づけ 華 やかな 広 告 賞 の 世 界 がある 一 方 制 作 の 現 場 は 変 化 を 余 儀 なくされている コンピュー ターの 発 展 と 普 及 により まず 技 能 領 域 に おける 難 易 度 と 参 入 障 壁 が 低 下 し 続 けている そして 産 業 による 環 境 や 人 権 への 影 響 が 明 らかになったことで 広 告 会 社 に 求 められる 役 割 もただ 製 品 を 売 ることから 広 告 を 通 じ て 企 業 があらゆるステークホルダーに 愛 され 公 器 となるための 課 題 解 決 へと 拡 大 した こ れらのことから 制 作 側 に 求 められる 能 力 はこ れまでの 職 人 的 技 術 を 出 発 地 点 としつつ 顧 客 となる 企 業 のビジネスモデルを 理 解 するこ とまでもが 含 まれている このように 制 作 環 境 が 変 わる 中 評 価 を 分 類 整 理 するこ とで 制 作 側 と 顧 客 の 間 にある 情 報 を 整 理 し 事 業 の 効 率 化 に 貢 献 することが 研 究 の 目 的 で あり 本 稿 はその 基 礎 研 究 となる 広 告 などのコミュニケーションデザインの 活 動 は 企 業 やNPO 等 のように 社 会 活 動 の 一 環 であり 常 に 目 的 を 伴 う しかし 多 くの 場 合 広 告 のクリエイティブに 関 しては 感 性 や 感 覚 の 分 野 であり 評 価 しづらいものと 誤 解 されている よって 実 際 におこなわれている 評 価 では 市 場 とクリエイティブへの 理 解 が 必 要 であるにもかかわらず 感 覚 や 気 分 で 決 めてしまいがちである たんに 責 任 の 所 在 を 明 確 にしているにすぎない 場 合 すらある 公 正 な 評 価 の 基 準 を 実 現 することは これ まで 意 思 決 定 者 の 感 性 に 振 り 回 されてきた 制 作 現 場 へのフィードバックも 大 きく また 意 思 決 定 者 があるべき 評 価 を 学 ぶ 機 会 ともなる 本 研 究 の 範 囲 は 今 後 より 詳 細 な 検 討 を 実 現 す るための 基 礎 となる 情 報 の 整 理 をおこなうこ とである 2 研 究 方 法 このような 目 的 のなかで 本 研 究 では まず カンヌ の 制 作 者 による 広 告 (クリエイ ティブ) 作 品 への 評 価 である 側 面 に 着 目 し 評 価 の 歴 史 から 要 素 を 抽 出 するために 時 系 列 で 整 理 する 消 費 者 など 広 告 作 品 を 受 信 する 78

80 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 側 の 感 性 に 対 する 研 究 や 作 品 の 分 類 ではな く 本 研 究 では 評 価 カテゴリー の 変 化 を 評 価 の 観 点 の 変 化 であるとみなし 整 理 す る 本 研 究 では 芸 術 やデザインなどにおける クリエイティブ 活 動 や 創 造 性 を 個 々の 制 作 者 の 心 理 的 因 果 関 係 から 普 遍 的 な 真 理 を 導 き だそうとするのではなく カンヌ の 変 遷 を より 相 応 しい 受 賞 作 品 を 選 ぶための 判 断 ( 評 価 )の 集 積 とその 変 遷 と 捉 える その ことで 抽 象 的 な 活 動 と 考 えられがちな 評 価 の 要 素 分 解 を 果 たそうとする 3 カンヌ の 概 要 カンヌライオンズ 国 際 クリエイティビティ フェスティバル ( 旧 カンヌ 国 際 広 告 祭 )と は 優 秀 な 広 告 作 品 を 表 彰 する 国 際 広 告 賞 で あるとともに 多 数 のセミナーやカンファレ ンスなどが 行 なわれる 世 界 最 大 規 模 のフィス ティバルである 毎 年 6 月 最 終 週 に 開 催 され ている 現 在 は17ある 部 門 の 中 総 合 キャン ペーンが 対 象 である チタニウム 部 門 と 歴 史 とともにオーソドックスなCM 作 品 を 対 象 とする フィルム 部 門 の 二 つに 権 威 がある とされている CannesLionsInternational AdvertisingFestival という 名 称 で 運 営 さ れ 日 本 では カンヌ 国 際 広 告 祭 と 呼 ばれて いたが 2011 年 CannesLionsInternational FestivalofCreativity へ 改 称 をおこなっ た これは 広 告 業 界 の 加 速 度 的 な 変 化 に 対 応 したものである 他 に 国 際 的 に 認 知 されて いる 広 告 賞 としては クリオ 賞 OneShow などが 著 名 であり また 近 年 では アジア 太 平 洋 広 告 祭 (アドフェスト) のように ア ジアを 拠 点 とした 国 際 広 告 賞 が 国 際 的 に 認 知 されている 日 本 では 広 告 祭 は 映 画 祭 等 と 比 較 して 認 知 度 が 低 いが その 評 価 過 程 と 国 際 的 な 地 位 規 模 を 見 る 限 り 劣 るものではない しかし 商 業 活 動 の 一 環 であったことや 日 本 作 品 への 評 価 が 高 くなかったことから 海 外 と 比 べ 日 本 での 認 知 度 が 低 くなりがちであった しかし カンヌ の 最 大 の 特 徴 は 規 模 が 最 も 大 きいことではない 2013 年 の 期 間 中 には130ものカンファレンス セミナーが 開 催 されていることや 60 年 間 の 評 価 カテゴリー の 変 遷 からその 特 徴 と 価 値 を 確 認 することが できる おそらく カンヌ において もっ とも 賞 を 与 えるに 相 応 しい 作 品 を 選 ぶこと からはじまった 議 論 は 欧 州 におけるノブレ スオブリージュを 背 景 に あるべき 審 査 あるべき 広 告 の 姿 激 変 する 現 代 社 会 に おいてあるべき 広 告 業 界 の 姿 を 議 論 する 場 へと 変 化 したのではないだろうか たんなる 製 品 のプロモーション 活 動 で 終 始 する 広 告 作 品 を 作 れば 良 いと 考 え コミュニケーション 産 業 の 果 たす 役 割 もそれで 必 要 十 分 とするよ うな 広 告 代 理 店 や 制 作 会 社 は カンヌ で はもはや 見 当 たらない 特 にその 傾 向 は2013 年 の 第 60 回 大 会 で 顕 著 となった 受 賞 作 の 多 くがフォーグットやソーシャルグットと 言 わ れる 社 会 貢 献 的 な 面 を 持 つ 作 品 であった 年 受 賞 作 と 傾 向 2013 年 のグランプリ 受 賞 作 は 以 下 のとおり である そのうちフォーグットやソーシャル グットと 呼 ぶことができる 作 品 に それ 以 外 の 技 術 やアイデアが 評 価 理 由 となっている と 考 えられる 作 品 の 冒 頭 に をつけた 複 数 受 賞 作 については 受 賞 数 の 記 号 をつけた チタニウム 部 門 グランプリ Unilever REALBEAUTYSKETCHES (ブラ ジル/OgilvyBrasil,SaoPaulo) フィルム 部 門 とサイバー 部 門 は2 作 品 にグ ランプリを 授 与 ファルム 部 門 /インテグレーテッド 部 門 /PR 部 門 /Direct 部 門 /ラジオ 部 門 グランプリ メトロ DumbsWaystoDie(あ ほらしい 死 に 方 ) (オーストラリア/McCANN, Melbourne) フィルム 部 門 /サイバー 部 門 /ブランドコン テンツ&エンタメ 部 門 グランプリ INTEL+TOSHIBA TheBeautyInside (アメリカ/PEREIRA&O'DELL,SanFrancisco) サイバー 部 門 ブランプリ OLEO DAILY TWIST( ア メ リカ/DRAFT 79

81 カンヌライオンズ にみる 作 品 評 価 の 変 化 制 作 現 場 への 貢 献 を 目 的 として 水 田 圭 FCB,NY) CreativeEffectiveness 部 門 グランプリ ハイネケン LEGENDARYJOURNEY (オラン ダ/W+K,Amsterdam) Promo&Activation 部 門 グランプリ SPORTCLUBRECIFE IMMORTALFANS (ブ ラジル/Ogilvy,SaoPaulo) メディア 部 門 グランプリ WhyWaitUntilIt'stoolate(オランダ /Ogilvy&Mather,Amsterdam) イノベーション 部 門 グランプリ CINDER SoftwareTechnology (アメリカ /TheBarbarianGroup,NY) アウトドア 部 門 グランプリ IBM Shelter その 他 (フランス/Ogilvy, Paris) モバイル 部 門 グランプリ SMARTCOMMUNICATION SMARTPUBLICAFFA IR (フィリピン) プレス 部 門 グランプリ ipadmini Newyorker (アメリカ/TBWA MEDIAARTSLAB,losAngesls) デザイン 部 門 グランプリ AUCHAN TheSelfscanReport (ドイツ/ Serviceplan,Munich) フィルムクラフト 部 門 グランプリ CHANNEL4 MeetTheSuperhumans (イギ リス/4creative,London) このように 明 らかに が 多 いことがわ かる これはグランプリ 作 品 ばかりではなく 金 銀 銅 ショートリストの 作 品 にもみら れる 傾 向 であった 第 60 回 記 念 ということも 影 響 していると 考 えられるが 多 くの 審 査 員 が 評 価 の 際 に 広 告 業 界 のあるべき 姿 を 意 識 し ていたことが 想 像 できる 1954 年 のグランプ リはイタリアの 歯 磨 き 粉 Chlorodont toothpasteが 受 賞 している 受 賞 作 品 は 歯 磨 き 粉 の 箱 を 用 いたコマ 撮 りアニメーション でサーカスを 表 現 した 長 編 劇 場 CMである 技 術 とアイデア ユーモアが 評 価 理 由 となっ ており 2013 年 との60 年 間 の 時 の 流 れによる 違 いが 際 立 つ 結 果 である 5 カンヌ の 評 価 カテゴリー カンヌ の 評 価 の 歴 史 を 追 うことで 広 告 作 品 の 評 価 の 観 点 をみつけることができる カンヌ は1954 年 劇 場 CMの 振 興 のために 創 設 され35mmフィルム 作 品 のみが 審 査 対 象 であった しかし 現 在 では17のカテゴリーで 評 価 がおこなわれている 受 賞 対 象 とする 部 門 分 野 は 発 祥 であるフィルムを 中 心 とし て 発 展 した テレビ インターネット モバ イル デジタルサイネージ インタラクティ ブメディアとメディアが 多 様 化 複 雑 化 するな か 近 年 では 以 下 のように 部 門 を 急 速 に 追 加 している プレス 部 門 ( 印 刷 媒 体 1992 年 ) サイバー 部 門 (1998 年 ) メディア 部 門 (1999 年 ) ダ イレクト 部 門 (2002 年 ) ラジオ 部 門 (2002 年 ) チタニウム&インテグレーテッド 部 門 ( 総 合 キャンペーン 2005 年 ) アウトドア 部 門 (2006 年 ) プロモ&アクティベーション 部 門 (2006 年 ) PR 部 門 (2009 年 ) フィル ム クラフト 部 門 ( 映 像 制 作 の 質 を 評 価 2010 年 ) クリエイティブ イフェクティブネス 部 門 ( 広 告 主 のビジネスに 測 定 可 能 な 影 響 を 与 えたクリエイティビティを 表 彰 2011 年 ) このように 伝 統 的 な 広 告 の 枠 を 超 えて 評 価 を おこなっている また 2005 年 50 回 よりスペ シャルライオン( 記 念 2 回 以 上 グランプリ を 取 ったものについて)が 創 設 されている (*1)(*3)2014 年 より より 領 域 を 拡 大 して 受 け 入 れるため ヘルス 部 門 ( 健 康 生 活 持 続 可 能 性 )とイノベーション 部 門 (ク 領 域 を 問 わずリエイティビティを 実 現 するデー タ 技 術 発 明 )を 他 の 全 ての 賞 (Cannes Lions)と 距 離 を 置 くかたちで 別 途 運 営 す るイベントとして 設 立 した 80

82 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 また 上 記 の 作 品 賞 以 外 に 作 品 以 外 を 表 彰 するものとして HoldingCompanyofthe Year,NetworkoftheYear,MediaAgencyof theyear,agencyoftheyear,independent AgencyoftheYear,MediaPersonofthe Year,AdvertiseroftheYear,thePalme d'or( 最 優 秀 独 立 系 映 像 制 作 会 社 を 表 彰 )が ある 他 に 時 期 によって Diploma, JournalistsAwards 等 があった 6 カンヌ 作 品 評 価 の 歴 史 公 式 ホームページなどによると 評 価 カテ ゴリーの 変 遷 は 以 下 のとおりとなっている ( 部 門 の 追 加 統 合 などについて 冒 頭 に を 記 している ) 1954 年 劇 場 CM 会 社 の 世 界 的 な 業 界 団 体 である 財 団 法 人 ScreenAdvertisingWorldAssociation (SAWA)が 当 時 盛 んであった 劇 場 CMの 振 興 のために 創 設 した 初 回 はイタリアのベニ スで 開 催 され 14カ 国 187エントリーがあっ た IAFF(InternationalAdvertisingFilm Festival)を 母 体 にとしてその 後 広 告 イベン トとして 独 立 した 1961 年 株 式 会 社 東 映 エージエンシーがカンヌ 国 際 広 告 祭 の 日 本 代 表 理 事 企 業 として フェスティ バルのプロモートを 始 める 1974 年 フィルム 部 門 にて 日 本 作 品 が 初 のグランプ リ 受 賞 (サントリー ホワイト 出 演 サミー デービスジュニア) 1985 年 参 加 作 品 は 約 2000 本 18 名 のトップクリエー ターによって 審 査 日 本 から174 作 品 この 年 よりビデオ 応 募 が 認 められた 日 本 理 事 社 は 東 映 AG 広 告 会 社 と 制 作 会 社 が 出 品 する 20の 業 種 別 カテゴリー 日 本 作 品 に 企 業 広 告 あるいはサービス 部 門 と 商 品 広 告 のカテゴリ 混 乱 があった グランプリおよび 金 銀 銅 ディ プロマ 賞 (*5) 1987 年 RogerHatchuel( 仏 )により 運 営 (2004 年 まで ) 1992 年 屋 外 広 告 印 刷 物 を 対 象 としたプレス&ア ウトドア 部 門 創 設 公 式 名 称 を TheInternationalAdvertising FilmFestival から TheInternational AdvertisingFestival に 変 更 Film を 公 式 名 称 から 外 す 1998 年 ( 第 45 回 ) インターネットを 対 象 としたサイバー 部 門 創 設 TheLions 各 カテゴリーから 金 は1 銀 は1か2 良 質 なら 銅 を 授 与 する フィ ルム 部 門 (28カテゴリー/4926 本 /23 人 の 審 査 員 / 約 500 本 のショートリスト) プレス &アウトドア(ポスター) 部 門 サイバー 部 門 の3 部 門 5000 人 が 参 加 (*2)セミ ナー8 講 座 TheGrandPrixは 公 共 広 告 部 門 以 外 からベストなフィルム 作 品 を 選 ぶ Advertiseroftheyear 過 去 の 得 点 を 換 算 事 前 発 表 Agencyoftheyear 今 年 の 得 点 広 告 会 社 向 け Palmd'or 銅 フィルムプロダ クション 向 け JournalistsAwards 記 者 に よる 投 票 フィルム3 本 から1 本 を 選 ぶ 1999 年 メディアの 優 れた 活 用 手 法 を 競 うメディア 部 門 創 設 2002 年 ダイレクトマーケティングを 対 象 としたダ イレクト 部 門 創 設 2004 年 この 年 は7 部 門 で 評 価 (*13)EMAPplc( 英 現 在 TopRightGroup)により 買 収 2005 年 第 52 回 ラジオ 部 門 創 設 チタニウム 部 門 創 設 ( 総 合 キャンペーン が 対 象 最 も 斬 新 なクリエイティビティを 評 価 し 高 いプレステージ 性 を 持 つ ) 審 査 課 程 を 変 更 プレス 部 門 とアウトドア 部 門 の 審 査 員 を 分 けた フィルム プレス ア ウトドア 各 部 門 の 審 査 委 員 長 は 全 てを 統 括 し た ダイレクト 部 門 では 自 宅 での 予 備 審 査 を 81

83 カンヌライオンズ にみる 作 品 評 価 の 変 化 制 作 現 場 への 貢 献 を 目 的 として 水 田 圭 図 2 17カテゴリーまでの 歩 み 82

84 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 83

85 カンヌライオンズ にみる 作 品 評 価 の 変 化 制 作 現 場 への 貢 献 を 目 的 として 水 田 圭 廃 止 しカンヌで 審 査 することとした ダイレ クトマーケティングとは 触 覚 的 手 法 のことを 言 う デジタル 処 理 ではなく 実 際 のフォー マットで 審 査 することとした 合 計 1 万 3000 点 以 上 の 応 募 があり ダイレクト 部 門 は 前 回 1600 点 を 超 える (*4)デジタルメディア の 出 現 によりダイレクトマーケティングの 効 果 を 評 価 対 象 とすべきと 意 識 したと 考 えるこ とができる 2006 年 消 費 者 を 動 かす 創 造 的 なプロモーションを 対 象 としたプロモ 部 門 創 設 ( 現 在 はプロモ& アクティベーション 部 門 ) プレス&アウトドア 部 門 から 屋 外 広 告 を 対 象 とするアウトドア 部 門 が 分 離 2007 年 チタニウム 部 門 に 最 先 端 の 統 合 キャンペー ンを 評 価 するインテグレーテッド 部 門 が 加 わ り チタニウム &インテグレーテッド 部 門 となる 3つ 以 上 のメディアに 跨 るプロジェ クトが 対 象 となる それまではフィルム 部 門 が 中 心 であった 公 共 広 告 作 品 への 評 価 が 続 いていたが この 年 ユニリーバのDOVEが フィルムのグランプリを 受 賞 することで カ ンヌ 全 体 の 流 れが 変 わりはじめる このキャ ンペーンは 主 にはウェブで 流 し テレビでは 最 低 限 に 流 したのみであったからである (*7) 2008 年 優 れたデザイン 性 を 競 うデザイン 部 門 創 設 フィルム 部 門 内 の 分 類 の 見 直 し スクリー ン 向 け TV インターネット モバイル 等 この 年 はテレビCMとウェブCMの2 本 グラ ンプリという 過 渡 期 となった 前 年 迄 はテレ ビでオンエアされていない 作 品 は 応 募 出 来 な かったが 改 訂 された (*7)UNIQL OCKがチタニウム &インテグレーテッド 部 門 グランプリを 獲 得 した この 年 の 印 象 は サイバー 部 門 のインテグレーテッド 化 フィ ルムを 初 めとした 他 部 門 のサイバー 化 ひと つのカテゴリーにすぎなかったウェブコミュ ニケーションがあらゆるフィールドで 欠 かせ ない 存 在 となり コミュニケーションの 全 て の 領 域 を 束 ねる 役 割 を 果 たす セミナーはほ とんどがテクノロジー 系 のソリューションを 提 供 している フィルム 部 門 のグランプリが インタラクティブ 作 品 となった (*6) 2009 年 PRの 手 法 を 競 うPR 部 門 創 設 オースト ラリア クイーンランド 州 観 光 公 社 世 界 最 高 の 仕 事 この 部 門 ではその 後 二 年 間 はラ ジオCM 動 くビルボード 広 告 街 頭 イベン ト ヘリコプターから 吊 るしたバナー 広 告 ツイッターを 使 ったクチコミなど 従 来 のPR の 枠 から 大 きく 出 た 多 彩 なものが 受 賞 した 伝 統 的 なPR 会 社 がPR 部 門 の 賞 をとれない という 現 象 がおきている 最 もクリエイティ ビティに 富 んで 費 用 対 効 果 の 高 いプランが 立 てられる 会 社 が 評 価 対 象 となった (*9) この 年 はオバマ 大 統 領 の 選 挙 キャンペーンが グランプリを 獲 得 SNSを 小 額 募 金 のため に 用 いるなど 多 角 的 に 利 用 した (*6)ま た この 年 フィルムは 広 告 の 最 高 峰 ではな くなった いろいろある 手 法 の 一 つでしかな い この 年 のフィルム 部 門 のグランプリは フィリップス 社 映 画 の 視 聴 に 適 したテレビ の 広 告 として 映 画 の 中 に 入 れる 仕 組 み ウェ ブ 上 で 操 作 できるインタラクティブフィルム ACinema21:9Production メッセージの あるCMではない キットカット そのまま 郵 便 で 送 れる が メディア 部 門 グランプリ を 受 賞 している (*7) 2010 年 映 像 制 作 の 技 術 面 を 評 価 するフィルム ク ラフト 部 門 創 設 グランプリ フォー グッド 賞 創 設 2011 年 クリエイティブ イフェクティブネス 部 門 創 設 広 告 主 のビジネスに 与 えた 効 果 を 競 う ( 広 告 主 のビジネスに 測 定 可 能 な 影 響 を 与 えたクリエイティビティを 表 彰 ) カンヌライオンズ 国 際 クリエイティビティ フィスティバル と 名 称 の 変 更 広 告 が 名 称 からなくなる この 年 13のカテゴリー 84

86 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 (*9)クリエイティブ イフェクティブネ ス 部 門 では ブランドの 価 値 向 上 や 商 品 の 販 売 への 貢 献 度 を 評 価 する 昨 年 の 受 賞 作 品 およびショートリスト 入 賞 作 品 ( 部 門 は 問 わ ない)の 中 から 数 値 的 に 優 れた 成 果 を 挙 げ た 作 品 が 選 ばれる 同 賞 のグランプリに 輝 い たのは オーストリアヴァージニア 州 の 鉄 道 会 社 V/LINE による 若 者 の 里 帰 りを 促 す キャンペーン GUILTTRIPS だった ショー トリストには12 作 品 が 選 出 され 日 本 からの 入 賞 受 賞 はなかった MediaPersonOf TheYearに マークザッカーバーグ(26 才 ) が 選 出 された チタニウム 部 門 受 賞 は TWE LPFORCE TWI+HELP+FORCE 地 味 な BESTBUY (ベストバイ)によるキャンペーン 全 体 にど の 部 門 も 地 味 でSNSの 出 現 により 評 価 基 準 が 迷 走 した 模 様 である 90カ 国 から34301の エントリー 前 年 から10000 以 上 増 加 した (*8*12*14*16) 2012 年 ブランドコンテンツ/エンタテイメント 部 門 およびモバイル 部 門 創 設 2013 年 第 60 回 大 会 領 域 が 拡 大 する 中 以 下 の2つの 大 きな 流 れ を カンヌライオンズの 評 価 カテゴリとは 分 離 させて 同 時 開 催 する 広 告 に 限 らないテク ノロジーなどを 展 示 評 価 する ヘルスライオンズ 創 設 ( 分 離 ) 本 期 間 の 二 日 間 に 健 康 に 関 する 展 示 交 流 イノベーションライオンズ 創 設 ( 分 離 ) 期 間 中 二 日 間 7 日 間 セミナー ワークショッ プなどは 計 130セッション エントリー 作 品 数 は 年 カテゴリーは17 部 門 (*13)チタニウム 部 門 グランプリに SoundofHonda が 選 ばれる 7 まとめ: 観 点 の 整 理 カンヌ が 国 際 広 告 賞 として 創 設 された 当 初 からしばらくの 間 は フィルム 部 門 のみ で 展 開 し 1950 年 代 は TVと cinémaの2カ テゴリーで 運 営 されていたようである 審 査 の 過 程 で アルコール 食 品 車 化 粧 品 公 共 などのように 広 告 作 品 の 業 界 に よって 分 けられていたが これは 同 じ 業 界 の 作 品 に 偏 らないようにするための 審 査 過 程 上 の 分 類 であり 評 価 の 観 点 や 方 法 がカテゴリー 間 で 異 なるものではなかったと 思 われる 設 立 時 からしばらくの 期 間 はコンテンツが 評 価 の 対 象 である この コンテンツイズキング という 考 え 方 は 現 在 でも 重 要 な 評 価 軸 である その 後 広 告 の 発 信 メディアは 大 幅 に 発 展 し 多 様 化 した フィルム テレビ インターネッ ト モバイル デジタルサイネージ インタ ラクティブメディアなどである (*11) 現 在 は 広 告 を 超 えたクリエイティビティ により 企 業 や 社 会 の 課 題 解 決 に 貢 献 すること も 評 価 の 対 象 とされている 評 価 対 象 は ク リエイティビティ アイデア 革 新 性 に 留 ま らず 営 業 活 動 表 現 技 術 理 論 の 実 行 ター ゲットの 絞 れたコミュニケーションなどのよ うに 多 彩 となっている (*12)これらを 評 価 の 観 点 として 置 き 換 えると 対 象 とする 課 題 表 現 技 術 理 論 実 行 広 告 効 果 クリ エイティビティ(アイデア/ 革 新 性 /チャレ ンジ) 等 と 整 理 することが 出 来 るだろう カンヌ がメディアや 社 会 の 変 化 に 対 応 し 自 らの 評 価 を 整 理 し 具 体 性 と 公 正 性 を 意 識 し より 深 めていこうとする 姿 勢 を 確 認 す ることが 出 来 る 2014 年 には クライアントのビジネスを もっと 良 くするアイデアを 返 すのが 広 告 だと したら フォー グッドは クライアントが 社 会 課 題 を 解 決 することを 目 的 とした 団 体 で ない 限 り クライアントから 提 示 された 解 決 すべきビジネス 課 題 だけでなく 社 会 課 題 も 解 決 するという 文 脈 ですから なかなか 難 し い 構 図 になっているわけです 実 際 今 年 の カンヌでもそうしたプロジェクトの 応 募 が 非 常 に 多 かったのですが 審 査 する 側 にもある 種 の 偽 善 を 見 抜 こうとする 警 戒 心 が 生 まれた りしていました (*15)というような 見 解 もあることから 売 るための 広 告 へ 回 帰 し ようとする 動 きも 確 認 できる 85

87 カンヌライオンズ にみる 作 品 評 価 の 変 化 制 作 現 場 への 貢 献 を 目 的 として 水 田 圭 文 献 を 追 って 明 らかになったのは 1998 年 ごろを 境 に 急 速 に 審 査 対 象 カテゴリーが 増 え たことである 今 後 カンヌ の1998 年 前 後 以 降 を 中 心 にさらに 調 査 を 進 めることでより クリエイティブとその 評 価 について 知 見 を 深 めることができるだろう 謝 辞 本 稿 を 執 筆 するにあたり 文 献 にあたる 以 外 に 博 報 堂 ケトル 共 同 CEO 木 村 健 太 郎 氏 の 意 見 を 参 考 とした 木 村 氏 は 多 くの 受 賞 と 審 査 員 セミナー 開 催 の 経 験 がある 生 きた 経 験 を 惜 しみなく 提 供 して 下 さったことに 感 謝 します 注 / 参 考 文 献 (*1 わかりやすい 広 告 論 八 千 代 出 版 第 2 版 ( 編 石 崎 徹 ) より) (*2( 済 ) 広 告 批 評 220 号 1998 年 10 月 (089 P98'カンヌ 広 告 祭 レポート 文 編 集 部 )) (*3( 済 ) 広 告 批 評 0273 号 2003 年 7/8 月 AD WATCHING:50 周 年 記 念 カンヌ 国 際 広 告 祭 速 報 ) (*4AdverTimes 年 より) (*5 背 中 の 創 造 力 新 広 告 作 法 高 橋 俊 明 1985 誠 文 堂 新 光 社 ) (*6 使 ってもらえる 広 告 (アスキー 新 書 2010 年 )) (*7 マーケティングはつまらない?(2010 関 橋 英 作 )) (*8 ロングエンゲージメント 2011 京 井 良 彦 ) (*9 中 国 ビジネスで 失 敗 しない7つのポイン ト(2011 杉 田 敏 )) (*10 ソーシャルシフト (2011 斉 藤 徹 )) (*11 わかりやすい 広 告 論 八 千 代 出 版 第 2 半 ( 編 石 崎 徹 )) (*12 公 式 サイト( 英 語 / 日 本 語 )HP) (*13 AdvereTimesサイト 記 事 物 凄 いスピード で 発 展 を 続 けるカンヌライオンズとの 上 手 な 付 き 合 い 方 佐 藤 達 郎 ( 多 摩 美 術 大 学 教 授 /コミュ ニケーション ラボ 代 表 ) (*14 AdvereTimesサイト 記 事 カンヌ 受 賞 作 品 詳 細 クリエイティブ エフェクティブネ ス 部 門 (マーケティング 室 ) (*15 電 通 報 サイト カンヌライオンズ 国 際 ク リエイティビティ フェスティバル #02チタニ ウム 部 門 グ ラ ン プ リを 受 賞 して ( 後 編 ) Sunday,August17,2014 菅 野 薫?? クリエーティブ ディレクター/クリエーティ ブ テクノロジスト? (*16 HistoryoftheCannesLions,FromAd FilmstoaCarnivalofCreativityHowthe festivalevolvedovertheyears,andwhat's newfor2012bytimnudd 86

88 研 究 報 告

89 研 究 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 街 の 風 景 調 査 および 景 観 デザインスタディー 秋 田 駅 周 辺 市 街 地 の 場 合 山 内 貴 博 街 の 雰 囲 気 のちがいとは 何 かという 探 求 から 始 めた 本 研 究 は 秋 田 の 街 を 調 査 対 象 地 域 に 設 定 して 都 市 を 緑 地 化 する 可 能 性 を 探 る ことが 主 な 目 的 である まず 始 めに 街 の 風 景 に 関 する 調 査 を 行 っ た 記 録 には Facebookを 利 用 した 調 査 方 法 は 街 路 空 間 の 中 を 主 に 自 転 車 を 利 用 して 移 動 しなが ら 印 象 に 残 る 風 景 をカメラ 撮 影 する 方 法 ( 現 地 調 査 )と 移 動 経 路 を 地 図 上 に 色 線 で 明 記 する 方 法 ( 机 上 調 査 )を 行 った 調 査 から 特 に 秋 田 駅 周 辺 市 街 地 に 関 して メヌキとミドリ と 題 した 仮 説 を 設 定 することが 出 来 た この 仮 説 は 人 々で 賑 わう 景 観 に 配 慮 した 屋 外 空 間 の 創 出 を 目 的 とした まちづくりの 提 案 である 景 観 デザインスタディーとして メヌキとミドリ のシステムを 秋 田 駅 西 口 の 駅 前 空 間 に 展 開 した 場 合 の 提 案 例 を 提 示 した その 中 における 現 在 は 屋 外 駐 車 場 の 敷 地 を 対 象 に して その 場 所 が 広 場 に 変 わった 場 合 を 条 件 にした 設 計 演 習 を 行 った まとめとして 設 計 例 を 立 案 し た キーワード: 環 境 デザイン( 建 築 都 市 ランドスケープ) SurveyandDesignaboutLandscapeoftheCity :IntheCaseofAroundAkitaStationCityArea YAMAUCHITakahiro Keywords:Environmentaldesign(Architecture,City,Landscape) 1 はじめに 1.1 街 の 雰 囲 気 のちがいとは 何 か 街 の 雰 囲 気 のちがいとは 何 か 雰 囲 気 を 感 じるのは 人 であり みている 対 象 は 街 である 街 の 雰 囲 気 のちがいとは 何 かという 探 求 から 始 めた 本 研 究 は 場 の 固 有 性 の 論 理 を 解 明 す ることと それを 活 かして 地 域 再 生 やまちづ くりに 環 境 デザインの 視 点 から 寄 与 すること を 主 な 目 的 とする 街 の 雰 囲 気 とは 場 の 個 性 や 特 徴 といったその 場 に 固 有 な 性 質 すな わち 場 の 固 有 性 のことと 定 義 できるように 思 う これまでの 研 究 では 調 査 対 象 地 域 を 自 身 の 生 まれ 育 った 街 に 設 定 して 自 分 に 関 わ りのあった 街 の 雰 囲 気 の 違 いを 比 較 研 究 する ことで 場 の 固 有 性 とはどこからきているの かを 論 理 づけようとした 本 研 究 は 2013 年 87

90 街 の 風 景 調 査 および 景 観 デザインスタディー 山 内 貴 博 度 から 赴 任 した 秋 田 の 街 を 調 査 対 象 地 域 に 設 定 して これまでの 研 究 成 果 を 発 展 させる 内 容 である 1.2 都 市 を 緑 地 化 する 可 能 性 を 探 る 赴 任 して2 年 目 になる 初 めて 秋 田 駅 に 降 り 立 った 時 の 印 象 は 駅 前 空 間 に 街 路 樹 など の 緑 が 少 ない であった これまで 県 内 の 街 を 見 て 回 ってきた ここでいう 街 とは 藩 政 期 には 城 下 町 や 宿 場 町 在 郷 町 であった 歴 史 的 な 街 である 街 の 多 くは 市 街 地 にも 人 出 が 少 なく 穏 やかで 静 かな 印 象 であった ただ そうした 街 の 様 子 の 一 方 で 所 々に 昔 からあ るのであろう 鎮 守 の 森 や 水 路 の 音 色 などに 出 会 うと 親 しみが 感 じられた こうした 穏 やかな 日 常 生 活 とはうって 変 わって 幾 つか 興 味 深 い 体 験 をした それは 祭 りなどを 視 察 した 時 の 事 である どれも 始 まりはよそよそ しいのだが 宴 もたけなわになると 何 とも 形 容 しがたいトランス 状 態 に 変 貌 するのである 例 えば7 月 に 土 崎 港 曳 山 まつり 8 月 に 秋 田 竿 燈 まつりが 盛 大 に 行 われている ところで これらの 街 を 訪 れて どの 街 でも 共 通 して 感 じたのは 特 に 市 街 地 や 駅 前 周 辺 に 緑 が 少 な いことである 周 辺 は 豊 かな 山 や 海 といった 自 然 に 囲 まれているのだが 日 々 生 活 する 街 並 に 自 然 が 感 じられない これまでの 調 査 で は 特 に 市 街 地 中 心 部 には 緑 が 少 ない 印 象 な のに 比 べて 支 流 河 川 の 並 木 などは 素 晴 らし く 親 水 性 を 高 める 可 能 性 があることが 分 かっ てきた 南 北 方 向 の 緑 のつながりも よく 観 察 すると 街 路 樹 が 切 れ 切 れで 存 在 している また 街 には 微 地 形 なりの 起 伏 が 存 在 してお り これも 一 つの 分 析 観 点 になると 考 えられ る 海 岸 沿 いには 風 車 が 見 受 けられ 風 も 地 域 の 特 徴 のようである 民 家 や 道 路 脇 に 暴 風 対 策 が 多 い 特 に 街 中 の 現 状 は どこにも 通 り と 誇 れる 個 性 豊 かな 軸 が 無 い 街 という 印 象 が 強 い 2014 年 の 夏 には 秋 田 駅 改 札 口 前 の 行 動 調 査 1 を 行 ったが その 際 も 駅 前 は 車 優 先 といった 機 能 性 の 追 求 は 認 められ るものの 歩 行 者 の 目 線 でデザインされた 様 相 は 少 ないと 思 われた 現 状 は 良 し 悪 しは 別 として 車 社 会 の 雰 囲 気 が 顕 著 に 伺 える 状 況 である ところで 秋 田 市 史 近 現 代 Ⅰ 通 史 編 には 平 成 16 年 当 時 秋 田 市 長 だった 佐 竹 敬 久 が 第 十 次 秋 田 市 総 合 計 画 で 緑 豊 か な 環 境 の 中 で 健 康 に 暮 らし 幅 広 く 文 化 にい そしみ 幸 せを 実 感 できるくらしの 形 を 目 指 すことが 述 べられている 筆 者 が2008 年 か ら2012 年 の5 年 間 設 計 研 修 を 行 った 株 式 会 社 ランドスケープデザインの 現 場 で 度 々 使 用 されていたコンセプト すなわち 都 市 と 自 然 が 日 常 の 中 に 共 にあることが 豊 かさの 根 幹 であり 都 市 と 自 然 が 共 にあるライフスタイ ルこそ 新 しい 住 まい 方 である は この 総 合 計 画 に 合 致 していると 思 われる しかし 現 状 の 街 並 には 特 に 駅 前 周 辺 市 街 地 には 緑 豊 か な 印 象 が 薄 いように 感 じられる これからの 社 会 は 市 場 原 理 や 経 済 成 長 の 追 求 に 変 わる 新 しい 豊 かさ を 考 える 必 要 があることは 言 うまでもない このような 状 況 からも 市 民 らへ 自 分 たちの 暮 らす 街 並 の 景 観 意 識 や 環 境 デザインへの 意 識 を 高 める 必 要 があると 思 われる 上 記 背 景 から 主 に 秋 田 の 街 を 調 査 対 象 地 域 に 設 定 して 都 市 を 緑 地 化 する 可 能 性 を 探 る ことが 本 研 究 の 重 要 な 目 的 であ る 2 街 の 風 景 調 査 2.1 街 景 1~80 街 景 とは 街 の 風 景 を 省 略 した 造 語 である 秋 田 の 街 並 に 街 路 樹 などの 緑 が 少 な い 理 由 として 雪 が 降 るからではないか と いう 意 見 を これまで 多 く 耳 にした はたし て 本 当 にそうなのか どれくらいそうなのか を 調 べる 必 要 があると 感 じた 為 街 の 風 景 に 関 する 調 査 を 行 った 本 研 究 の 調 査 記 録 には Facebookを 利 用 した 調 査 期 間 は 2013 年 9 月 ~2014 年 12 月 であり 調 査 数 は 80( 街 景 1~80)になった 調 査 方 法 は 街 路 空 間 の 中 を 主 に 自 転 車 を 利 用 して 移 動 しながら 印 象 に 残 る 風 景 をカメラ 撮 影 する 方 法 ( 現 地 調 査 )と 移 動 経 路 を 地 図 上 に 色 線 で 88

91 研 究 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 明 記 する 方 法 ( 机 上 調 査 )を 行 った 持 ち 帰 っ た 風 景 写 真 の 中 から 特 に 印 象 に 残 る 風 景 をピッ クアップして 机 上 調 査 の 地 図 データと 合 わ せて Facebookにアップロードした 画 像 デー タは 調 査 1 回 につき 多 くても6 枚 以 内 に 決 めた 記 録 方 法 は 調 査 ごとに 番 号 を 付 け 頭 文 字 に 街 景 を 付 した 例 えば 街 景 34 秋 田 駅 から 八 橋 へ という 内 容 で コメン ト 欄 にタイトル No. 及 び 地 名 または 経 路 を 明 記 した 調 査 対 象 は 筆 者 の 日 常 生 活 の 風 景 で ある その 為 訪 問 先 もあるが 結 果 として 秋 田 市 内 が 多 くなった 図 2 夜 間 の 抜 け 2.2 特 別 な 目 抜 きと 太 平 川 の 緑 調 査 から 特 別 な 目 抜 き と 呼 べる 軸 と 太 平 川 の 緑 という2つの 空 間 に 着 目 して 3.1 節 で 述 べる 仮 説 を 導 くことが 出 来 た 特 別 な 目 抜 き とは 秋 田 駅 東 西 連 絡 自 由 通 路 (ぽぽろーど)を 西 口 方 向 へ 出 て 延 び る 視 線 の 抜 けのことである( 図 1 参 照 ) こ こを 夜 間 に 見 た 際 に 駅 前 から 視 線 の 先 に 竿 燈 祭 りの 灯 が 見 えたらいいなと 感 じた ( 図 2 参 照 ) 実 際 には 建 物 や 屈 折 した 道 によっ て 直 接 見 る 事 は 難 しいのだが 特 別 な 目 抜 き として 街 並 を 整 備 することで 秋 田 駅 から 竿 燈 大 通 に 至 る 歩 行 空 間 が 場 の 固 有 性 を 持 つ 事 ができると 思 われる( 図 3 参 照 ) 図 3 秋 田 駅 から 竿 燈 大 通 りに 至 る 歩 行 空 間 太 平 川 の 緑 とは 秋 田 駅 周 辺 市 街 地 の 南 側 に 位 置 する 東 西 方 向 に 流 れる 川 のことで ある( 図 4 参 照 ) 蛇 行 する 流 れは この 川 が 昔 から 自 然 に 存 在 していたことを 思 わせる その 一 方 で 川 沿 いの 桜 並 木 は 自 然 にはえた 緑 ではなく 人 工 的 に 植 えられたものと 考 えら れる この 緑 の 豊 かさは 市 街 地 へ 繋 がる 街 路 樹 などの 緑 を 整 備 するポテンシャルを 持 っ ていると 思 われる( 図 5~8 参 照 ) 図 1 視 線 の 抜 け 図 4 太 平 川 89

92 街 の 風 景 調 査 および 景 観 デザインスタディー 山 内 貴 博 図 5 太 平 川 の 春 3 景 観 デザインスタディー 3.1 メヌキとミドリ という 景 観 軸 の 設 定 およびグリーンネットワークによるまち づくり 街 の 風 景 に 関 する 調 査 から 特 に 秋 田 駅 周 辺 市 街 地 に 関 して 仮 説 を 設 定 することが 出 来 た 仮 説 とは 人 々で 賑 わう 景 観 に 配 慮 した 屋 外 空 間 の 創 出 を 目 的 としたまちづくりの 提 案 である 現 在 の 格 子 状 の 街 路 について 東 西 方 向 を 目 抜 きの 軸 ( 図 9 参 照 ) 南 北 方 向 を 緑 の 軸 ( 図 10 参 照 )という 景 観 軸 を 設 定 する 図 6 太 平 川 の 夏 図 9 東 西 方 向 を 目 抜 きの 軸 図 7 太 平 川 の 秋 図 8 太 平 川 の 冬 図 10 南 北 方 向 を 緑 の 軸 90

93 研 究 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 特 に 秋 田 駅 前 から 中 心 市 街 地 へのびる 東 西 方 向 の 目 抜 きの 軸 は 歩 行 者 に 比 重 を 置 く 軸 と 車 両 交 通 に 比 重 を 置 く 軸 さらに 歩 行 者 と 車 両 の 両 方 に 配 慮 する 軸 という 景 観 軸 を 明 確 に 設 定 することによりデザインしていく 必 要 があるように 思 われた 一 方 街 の 南 北 方 向 の 緑 の 軸 は 南 側 に 太 平 川 北 側 に 千 秋 公 園 や 八 橋 運 動 公 園 などを 緑 源 とした 南 北 方 向 を 結 ぶグリーンネットワークによるデザインが 考 えられる つまり 中 心 市 街 地 を 横 にはしる 目 抜 きの 軸 メヌキ と 縦 にのびる 緑 の 軸 ミドリ を 横 糸 と 縦 糸 にして 織 物 のよう に 交 錯 させることによって 人 々の 記 憶 に 残 る 美 しい 街 の 風 景 を 創 出 してはどうかという 仮 説 である( 図 11 参 照 ) しかし メヌキとミ ドリ というキーワードは 大 枠 のコンセプト であり さらに 具 体 的 な 段 階 のキーワードが 重 要 である それを 見 出 だす 為 には 街 の 骨 格 緑 のある 位 置 または 植 えられる 位 置 など 実 態 を 調 査 する 必 要 がある より 詳 細 な 調 査 研 究 が 今 後 の 課 題 である 2014 年 3 月 に 景 観 デザイン 専 攻 などの 教 員 達 と 共 同 研 究 を 行 った 2 研 究 の 中 で 筆 者 は ランドスケープデザイン 的 視 点 から メヌキ とミドリ のシステムを 秋 田 駅 西 口 の 駅 前 空 間 に 展 開 した 場 合 の 提 案 例 を 提 示 した( 図 12 参 照 ) メヌキでは3つの 提 案 が 考 えられる 道 路 が 一 方 通 行 であることに 着 目 して 北 側 の 道 路 は 旅 行 者 らが 出 発 する 門 としてゲート ツリーの 設 置 (メヌキ1) 中 央 の 歩 行 者 専 用 道 路 は2.2 節 で 述 べた 特 別 なメヌキ の 位 置 づけから 行 うデザインのリファイン (メヌキ2) 南 側 の 道 路 は 帰 ってくる 旅 行 者 らを 迎 える 目 印 としてシンボルツリーの 設 置 (メヌキ3) 一 方 ミドリでは2つの 提 案 が 考 えられる 駅 前 に 広 がる 外 部 空 間 全 体 を 調 和 するストライプ 状 に 街 路 樹 の 設 置 (ミドリ1) ぽぽろーどを 挟 んでバス 乗 り 場 の 反 対 側 が 現 在 の 屋 外 駐 車 場 から 広 場 に 変 わったと 仮 定 し た 場 合 のボスク 状 に 叢 林 の 設 置 (ミドリ2) という 内 容 である 図 11 メヌキとミドリ 図 12 秋 田 駅 前 西 口 への 展 開 3.2 秋 田 駅 西 口 の 駅 前 空 間 における メ ヌキとミドリ の 展 開 例 秋 田 プルーラルシティー 構 想 にお ける 提 案 例 設 計 演 習 (CAD 演 習 A2) 2014 年 後 期 の 設 計 演 習 (CAD 演 習 A2)に おいて 課 題 の 設 計 対 象 地 を 図 12におけるミ ドリ2( 現 在 の 屋 外 駐 車 場 )に 設 定 して 演 習 を 行 った まず 始 めに 学 生 は 敷 地 におもむ 91

94 街 の 風 景 調 査 および 景 観 デザインスタディー 山 内 貴 博 き 現 地 調 査 を 行 い その 結 果 を 分 析 した 次 に 技 術 講 師 3 を 招 いてランドスケープデザイ ンの 実 践 に 関 する 講 義 と 具 体 的 に 設 計 のエス キースを 教 授 した 受 講 した 学 生 のうち 一 人 の 学 生 aは 現 地 調 査 を 昼 の 明 るい 時 間 に 行 い もう 一 人 の 学 生 bは 夜 の 暗 い 時 間 帯 に 行 った 為 昼 のランドスケープ 夜 のラン ドスケープといった 時 間 軸 での 設 計 アイディ アを 考 えることが 共 有 できた( 図 13~16 参 照 ) 図 16 エスキース( 学 生 bと 技 術 講 師 作 成 ) 図 13 現 地 調 査 ( 学 生 a 作 成 ) 広 場 の 設 計 まとめとして 筆 者 による 設 計 例 を 立 案 し た( 図 参 照 ) 設 計 する 上 で 仮 定 した 条 件 は 以 下 による a) 出 迎 え 車 両 などの 導 線 ルートは 確 保 する b) 現 在 の 駐 車 台 数 は 別 に 確 保 する c)ぽぽろーど 下 部 の1Fレベルにアーケー ドへの 横 断 歩 道 を 確 保 する d) 植 栽 計 画 は 積 雪 を 考 慮 して 高 木 と 中 木 地 被 のみで 構 成 する( 低 木 は 控 える) 注 図 14 エスキース( 学 生 aと 技 術 講 師 作 成 ) 1 秋 田 県 2014 年 度 市 街 地 木 質 化 実 証 モデル 事 業 による 助 成 研 究 秋 田 駅 周 辺 市 街 地 の 木 質 木 造 化 による 景 観 形 成 事 業 筆 者 は 研 究 分 担 者 2 ( 仮 称 )JR 秋 田 駅 西 口 駅 前 広 場 再 開 発 計 画 を モデルとする 基 盤 的 調 査 研 究 秋 田 プルーラル シティー 構 想 ver.00 筆 者 は 研 究 分 担 者 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 報 告 書 pp 株 式 会 社 ランドスケープデザイン 櫻 田 武 志 尚 図 1~ は 筆 者 の 作 成 による 図 15 現 地 調 査 ( 学 生 b 作 成 ) 92

95 研 究 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 図 17 秋 田 駅 前 西 口 広 場 平 面 図 93

96 街 の 風 景 調 査 および 景 観 デザインスタディー 山 内 貴 博 図 18 アイソメトリック 図 94

97 研 究 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 欧 州 意 匠 指 令 の 修 理 条 項 にまつわる 対 立 構 造 の 俯 瞰 2006 年 当 時 に 誰 が 何 をどのように 主 張 しているのか 宮 田 平 欧 州 意 匠 指 令 における 複 合 製 品 の 構 成 部 品 に 関 する 問 題 は 欧 州 連 合 加 盟 各 国 及 び 関 係 団 体 の 利 害 の 不 一 致 により 同 指 令 公 表 当 初 からまとまりをみせなかった 当 時 この 問 題 は 法 学 の 側 面 だけで 割 り 切 れない 様 相 を 呈 していた ここでは 法 学 の 側 面 以 外 にも 何 らかの 側 面 があると 仮 定 し 関 係 す る 当 時 の 文 献 を 用 いた 共 同 体 域 内 における 対 立 構 造 の 俯 瞰 の 試 みを 発 表 する キーワード: 欧 州 意 匠 指 令 複 合 製 品 の 構 成 部 品 共 同 体 の 産 業 APerspectiveViewoftheConflictsofPlayersonArticle18ofEU DirectiveNo.98/71/EConthelegalprotectionofdesigns:Who claimsin2006? MIYATASohei Keywords:"DirectiveNo.98/71/ECoftheEuropeanParliamentandoftheCouncilof13October1998onthe legalprotectionofdesigns",componentpartsofcomplexproducts,communityindustry 1 はじめに 本 稿 は 2006 年 7~9 月 頃 にかけて 筆 者 が 自 分 で 発 案 し 自 宅 で 行 った 作 業 の 結 果 を 研 究 報 告 として 形 式 を 整 えて 初 めて 公 表 す るものである 本 稿 は 当 時 も 今 も 所 属 する 組 織 とは 一 切 関 係 がないものである( 本 稿 の 中 心 をなす 図 表 は 筆 者 が 同 組 織 内 関 係 者 に 参 考 として 資 料 提 供 したことがあるが あく まで 同 組 織 内 限 りとしている ) この 研 究 報 告 はあくまで 個 人 的 な 作 業 結 果 であり 同 組 織 含 む 我 が 国 関 係 諸 官 庁 の 政 策 方 針 に 反 しな いよう 注 意 して 作 成 したものであって 内 容 については 筆 者 がすべての 責 を 負 う 本 稿 は 2007 年 12 月 の 改 正 指 令 案 が 欧 州 議 会 によって 修 正 採 択 される 以 前 の 作 業 であっ た 欧 州 意 匠 指 令 ("DirectiveNo.98/71/EC of the European Parliament and ofthe Councilof13October1998onthelegal protectionofdesigns") 第 18 条 に 起 因 する 問 題 について 欧 州 共 同 体 の 産 業 特 に 複 合 製 品 及 び 構 成 部 品 の 製 造 業 者 という 大 きな 影 響 を 受 ける 産 業 分 野 消 費 者 がどのような 主 張 をしているのか フィールドワークでなく 文 献 調 査 をもとに キーワードとなる 箇 所 を 95

98 欧 州 意 匠 指 令 の 修 理 条 項 にまつわる 対 立 構 造 の 俯 瞰 2006 年 当 時 に 誰 が 何 をどのように 主 張 しているのか 宮 田 平 多 数 抽 出 して それらを KJ 法 によって 幾 つ かの 島 に 分 けて それぞれの 島 における 対 立 構 造 を 俯 瞰 しようとする 時 間 を 要 する 試 み であった 本 稿 では KJ 法 による 結 果 の 表 ( 島 と 対 立 構 造 の 表 として 計 18の 表 )を 主 たる 結 果 物 と し 本 紀 要 の 制 限 により 本 文 の 字 数 は 努 め て 抑 え 概 要 資 料 まとめのみとする 2 問 題 の 背 景 2.1 いわゆるスペアパーツ 問 題 とは 何 か スペアパーツ 問 題 は 自 動 車 に 代 表 される 複 合 製 品 の 外 装 補 修 用 部 品 (ボンネット バ ンパー ドアパネル 等 のスペアパーツ)につ いて EU 域 内 市 場 における 自 由 競 争 を 確 保 する 観 点 から 当 該 部 品 に 対 する 意 匠 保 護 を 弱 めようという 各 プレーヤーの 動 きといえる する 欧 州 意 匠 指 令 改 正 案 (スペアパーツに 対 する 意 匠 保 護 の 実 質 的 な 廃 止 提 案 )を 採 択 公 表 した 3 筆 者 による 対 立 構 造 俯 瞰 のための 調 査 内 容 スペアパーツ 問 題 に 関 する 意 見 を 公 表 して いる 欧 州 の 関 係 民 間 企 業 及 び 消 費 者 等 の 団 体 ( 後 述 )をインターネットサイト 内 で 可 能 な 限 り 探 し 出 し その 意 見 書 ( 言 語 は 英 語 版 のみとした )を 入 手 の 上 内 容 を 逐 一 翻 訳 し 意 見 者 を 付 記 した 各 意 見 内 容 ( 日 本 語 翻 訳 版 )を 一 枚 一 枚 の 小 短 冊 に 仕 立 てて 大 量 に 短 冊 を 作 った その 後 KJ 法 に 従 って 畳 一 畳 弱 程 度 の 大 判 紙 に 短 冊 をばらして 島 を 何 度 も 作 っては 壊 す 過 程 のなかで 結 果 18の 島 を 作 った 年 の 制 定 当 時 の 状 況 本 件 問 題 を 巡 っては 自 動 車 用 スペアパー ツの 市 場 規 模 の 大 きさと 欧 州 における 自 動 車 生 産 国 の 偏 在 を 背 景 として スペアパーツ 市 場 の 自 由 化 による 事 業 の 拡 大 を 求 める 独 立 系 部 品 メーカー 及 び 価 格 競 争 による 部 品 価 格 の 低 減 を 求 める 保 険 業 界 消 費 者 団 体 と 意 匠 保 護 の 継 続 を 求 める 自 動 車 メーカーとの 間 で また これら 性 格 の 異 なる 自 国 産 業 を 背 後 に 抱 えるEU 加 盟 国 の 間 で 従 来 から 激 しい 対 立 が 続 いていたため 欧 州 意 匠 指 令 の 制 定 時 (1998 年 )には この 点 の 取 り 扱 いに 関 する 結 論 が 先 送 りされていた 状 態 となっていた 年 の 欧 州 委 員 会 の 公 表 欧 州 意 匠 指 令 第 18 条 は 欧 州 委 員 会 に 対 し て 所 定 期 間 経 過 後 にスペアパーツ 問 題 の 調 和 のために 必 要 な 改 正 案 を 欧 州 議 会 及 び 閣 僚 理 事 会 に 提 出 することを 義 務 づけていたため 欧 州 委 員 会 による 市 場 への 影 響 分 析 の 調 査 を 経 て 2004 年 9 月 14 日 欧 州 委 員 会 は 複 合 製 品 の 原 型 を 復 元 するために 補 修 目 的 で 使 用 される 部 品 には 意 匠 保 護 が 及 ばない とい う 日 本 での 通 称 修 理 条 項 の 導 入 を 内 容 と その 際 スペアパーツ 問 題 において 欧 州 域 内 における 意 匠 保 護 の 賛 成 派 と 反 対 派 の 議 論 の 内 容 が 対 立 構 造 になるものを 特 に 島 として 作 り それぞれの 島 にタイトルを 付 け 横 A4 一 枚 に 収 まるよう 対 立 意 見 を 左 右 に 配 して 体 裁 を 整 えた( 次 ページ 以 降 ) 4 調 査 対 象 資 料 の 入 手 元 4.1 インターネット 上 に 任 意 に 英 語 で 意 見 表 明 している 民 間 企 業 及 び 消 費 者 等 の 団 体 英 国 特 許 庁 による 意 見 聴 取 に 対 す る 回 答 を 出 している 者 ( 注 1) 市 場 自 由 化 に 賛 成 寄 り ピルキントン 社 ( 英 : 総 合 ガラスメーカー) 英 国 自 動 車 流 通 連 盟 ( 英 : 業 界 団 体 ) 英 国 自 動 車 会 議 ( 英 : 業 界 団 体 ) CIPA 意 匠 及 び 著 作 権 委 員 会 ( 英 : 実 務 者 団 体 ) スコットランド 法 律 協 会 知 財 部 会 ( 英 : 実 務 者 団 体 ) ダイソン 社 ( 英 : 掃 除 機 等 メーカー) RACオートウィンドウスクリーン 社 ( 英 : 自 動 車 補 修 ガラスメーカー) 96

99 研 究 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 英 国 国 防 省 ( 英 : 中 央 政 府 機 関 ) 市 場 自 由 化 に 反 対 寄 り 英 国 フォード 社 ( 英 : 自 動 車 メーカー) 安 全 性 と 消 費 者 EU 自 動 車 産 業 の 収 益 の 損 失 ( 或 いは 独 立 系 業 者 の 拡 大 ) EU 域 内 の 雇 用 の 損 失 市 場 自 由 化 の 是 非 に 立 場 を 留 保 英 国 産 業 連 盟 ( 英 : 経 済 団 体 連 合 ) 英 国 特 許 庁 による 意 見 聴 取 はなく 独 自 に 意 見 表 明 している 者 自 動 車 部 品 補 修 市 場 自 由 化 欧 州 キャンペー ン( 欧 州 : 中 間 業 者 団 体 ) 4.2 欧 州 委 員 会 提 案 に 対 するポジション ペーパー( 注 2) 及 び2005 年 版 年 次 報 告 書 ( 注 3)を 出 した 者 欧 州 自 動 車 工 業 会 ( 英 : 欧 州 自 動 車 メーカー 団 体 ) 4.3 欧 州 委 員 会 委 託 調 査 報 告 書 影 響 分 析 報 告 書 ( 注 4) 作 成 者 テクノポリス 社 ( 欧 州 委 員 会 委 託 調 査 会 社 ) 5 結 果 98 頁 以 降 のとおり いわゆる 島 のタイ トルは 順 に 次 のとおり 知 的 財 産 権 の 観 点 保 護 期 間 を10 年 とする 案 修 理 部 品 の 出 所 表 示 義 務 案 品 質 の 認 証 報 奨 金 システムの 導 入 案 著 作 権 制 度 との 関 係 EUの 模 倣 品 問 題 政 策 との 矛 盾 自 動 車 部 品 以 外 の 分 野 への 波 及 マーケットシェア 中 間 業 者 ( 修 理 工 場 流 通 業 者 ) 部 品 の 価 格 EU 域 外 からの 進 出 の 懸 念 保 険 会 社 保 険 料 と 部 品 価 格 車 体 用 外 装 パネル 板 の 品 質 上 の 問 題 6 おわりに 英 のダイソン 社 を 除 けば おおよそ 自 動 車 に 関 して 何 らかの 業 を 営 む 会 社 を 多 く 持 つ 国 の 意 見 が 大 半 を 占 める 表 を 俯 瞰 したうえで の 感 想 をここに 述 べると 恣 意 的 になりがちで あるが あえて 大 きな 特 徴 を 言 えば 自 動 車 メーカーを 持 つ 国 と 持 たない 国 との 間 に 意 見 の 相 違 がみられる 点 が 挙 げられる この 調 査 にあたっては 英 語 のインターネッ ト 検 索 文 献 のみを 資 料 としており 同 じ 欧 州 連 合 域 内 でも 非 英 語 圏 の 国 及 び 団 体 の 資 料 は 対 象 資 料 としていない したがって スペイ ン フランスなどの 西 欧 ドイツ イタリア などの 中 欧 そして 強 力 な 自 動 車 企 業 を 持 た ずとも 他 国 の 自 動 車 工 場 を 持 つ 東 欧 などの 各 国 言 語 の 資 料 を 取 り 入 れていない この 結 果 はあくまで 英 語 資 料 によるものであって 欧 州 委 員 会 等 の 英 語 版 報 告 書 を 除 けば 英 語 圏 の 国 の 意 見 に 偏 って 結 果 が 出 ている 点 に 注 意 しなければならない 注 ( 注 1)"Consultationonthe proposalfora directiveoftheeuropeanparliament andofthecouncilamendingdirective 98/71 on the legal protection of designs"(19october2005) ( 注 2)"ACEAcommentsregardingtheproposed modificationofdirective98/71onthe legal protection of designs - ExecutiveSummary" ( 注 3)"ACEA European Automobile Industry Report2005" ( 注 4)"Impactassessmentofpossibleoptions toliberalisetheaftermarketinspare parts- Final Reportto DG Internal Market" 97

100 欧 州 意 匠 指 令 の 修 理 条 項 にまつわる 対 立 構 造 の 俯 瞰 2006 年 当 時 に 誰 が 何 をどのように 主 張 しているのか 宮 田 平 98

101 研 究 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 99

102 欧 州 意 匠 指 令 の 修 理 条 項 にまつわる 対 立 構 造 の 俯 瞰 2006 年 当 時 に 誰 が 何 をどのように 主 張 しているのか 宮 田 平 100

103 研 究 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 101

104 欧 州 意 匠 指 令 の 修 理 条 項 にまつわる 対 立 構 造 の 俯 瞰 2006 年 当 時 に 誰 が 何 をどのように 主 張 しているのか 宮 田 平 102

105 研 究 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 103

106 欧 州 意 匠 指 令 の 修 理 条 項 にまつわる 対 立 構 造 の 俯 瞰 2006 年 当 時 に 誰 が 何 をどのように 主 張 しているのか 宮 田 平 104

107 研 究 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 105

108 欧 州 意 匠 指 令 の 修 理 条 項 にまつわる 対 立 構 造 の 俯 瞰 2006 年 当 時 に 誰 が 何 をどのように 主 張 しているのか 宮 田 平 106

109 実 践 報 告

110 実 践 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 参 加 者 間 の 相 互 作 用 を 促 すアートワークショップについての 一 考 察 屋 宜 久 美 子 本 報 告 では にじみ 絵 を 共 通 の 題 材 としながら 内 容 進 行 環 境 等 を 改 善 して 取 り 組 んだ3つの 実 践 について 述 べる まず3つの 実 践 を 描 写 することで それぞれ 気 づいたことや 課 題 について 整 理 する つぎに 個 々の 表 現 活 動 を 充 実 させながらも 同 時 に 他 者 との 交 流 へと 開 かれていくワークショッ プ 構 造 について 考 察 を 行 う その 上 で 未 就 学 児 と 保 護 者 の 両 方 が 描 画 を 行 うことで 未 就 学 児 が 身 近 な 他 者 である 保 護 者 の 描 画 観 察 をステップとして 段 階 的 に 他 者 の 観 察 へと 関 心 を 広 げていくこと を 述 べる また 多 様 な 表 現 が 発 生 する 場 に 身 を 置 くことで 多 方 向 へと 展 開 する 学 びが 生 じること を 明 らかにする キーワード:アートワークショップ 未 就 学 児 美 術 教 育 にじみ 絵 AStudyofPromptingInteractionamongPaticipantsinthe ArtWorkshop YAGIKumiko Keywords:ArtWorkshop,PreschoolChildren,ArtEducation,ColorStaindPainting はじめに 筆 者 はこれまで 美 術 制 作 理 論 研 究 教 育 実 践 の 横 断 的 研 究 を 行 ってきた 水 性 絵 具 を 用 いた 抽 象 絵 画 表 現 を 行 い 制 作 過 程 で 得 ら れた 問 題 意 識 を 手 掛 かりに 制 作 者 の 立 場 か ら 美 術 制 作 の 人 間 形 成 的 意 義 について 論 研 を 進 めてきた またそこから 得 られた 知 見 をワー クショップ 実 践 へ 応 用 し 制 作 のどのような 内 実 が 心 の 成 長 や 安 定 を 促 すのか 検 証 してき た 本 報 告 では 2014 年 度 に 行 ったワークショッ プの 中 で にじみ 絵 を 題 材 とした3つの 実 践 を 取 り 上 げる 1 筆 者 のワークショップ 実 践 は 偶 然 性 と 色 彩 の 変 化 に 着 目 しながら 未 就 学 児 の 親 子 を 主 な 対 象 2 として 行 っている その 理 由 とし て 筆 者 がこれまでカラー フィールド ペ インティング 3 を 中 心 に 論 研 を 進 めてきたこ とが 挙 げられる 抽 象 絵 画 表 現 の 一 つのジャ ンルであるカラー フィールド ペインティ ングは 色 彩 の 純 粋 化 を 図 るために 巨 大 な 画 面 による 構 成 と 中 心 性 のないフラットな 色 面 を 特 徴 としている 筆 者 の 関 心 は その 中 でも 絵 具 の 流 動 性 や 滲 みの 効 果 を 利 用 した 制 作 にある 4 絵 具 の 動 きを 制 御 しながらも 最 終 的 な 画 面 への 定 着 を 絵 具 の 流 動 性 に 委 ねる これらの 手 法 は 制 作 者 の 主 体 的 な 行 為 を 越 えて 描 画 が 進 む 時 間 を 有 している そのため 制 作 に 内 包 された 鑑 賞 時 間 は 制 作 者 に 新 鮮 な 感 覚 や 色 彩 自 体 の 生 命 力 を 感 じさせ 次 の 表 現 行 為 を 導 きだすと 考 えられる 5 筆 者 は このような 偶 然 性 と それを 効 果 的 に 確 認 さ せる 色 彩 の 変 化 をワークショップに 取 り 入 れ 107

111 参 加 者 間 の 相 互 作 用 を 促 すアートワークショップについての 一 考 察 屋 宜 久 美 子 ることで 慣 れない 行 為 に 対 する 参 加 者 の 緊 張 を 解 き 驚 きや 喜 びを 引 き 出 そうとしてき た たとえば 2013 年 と2014 年 に 行 った 紙 ふぶ きを 用 いたワークショップは その 良 い 事 例 であった 6 前 半 部 分 に 行 った 紙 ふぶき 遊 び は 3~5 色 の 薄 い 花 紙 を 破 ることから 始 め て 紙 を 巻 き 上 げ 途 中 段 階 で 大 量 の 紙 ふぶ きとうちわ( 段 ボール ジョイントマット) を 導 入 しながら 内 容 展 開 して 遊 ぶものであっ た 数 色 の 紙 ふぶきが 舞 い 上 がる 状 況 の 中 で 参 加 者 が 夢 中 になって 遊 ぶ 様 子 が 見 られた これらの 遊 びの 過 程 からは 参 加 者 は 紙 ふぶ きを 巻 き 上 げる 主 体 であると 同 時 に それを 受 ける 客 体 となる 時 間 が 発 生 することがわかっ た また 参 加 者 が 頻 繁 に 移 動 することで 自 ずと 参 加 者 同 士 の 遊 びが 相 互 作 用 して 自 然 発 生 的 に 交 流 が 生 まれる 結 果 となった 本 報 告 における 実 践 は これまでの 実 践 か ら 確 認 できた 効 果 を 別 の 手 法 で 検 証 するもの として 絵 具 の 流 れによる 偶 然 性 と 色 彩 の 変 化 をより 強 調 的 に 用 いたにじみ 絵 を 題 材 とし た にじみ 絵 は 水 の 扱 いに 関 する 問 題 をクリ アしてしまえば 手 法 の 単 純 さを 保 持 しなが ら 多 方 向 への 描 画 展 開 を 可 能 とするため 低 年 齢 児 でも 気 軽 に 取 り 組 むことができる 3 つの 実 践 は にじみ 絵 を 共 通 の 題 材 としてい るが 内 容 進 行 環 境 に 違 いがあるため 単 純 に 同 じ 土 俵 で 比 較 することは 難 しい そ のため まず3つの 実 践 を 描 写 することで それぞれ 気 づきや 課 題 について 整 理 する そ の 上 で 参 加 者 の 制 作 への 没 入 体 験 に 着 目 し てきたこれまでの 実 践 から 発 展 させて 個 々 の 表 現 活 動 を 充 実 させながらも 同 時 に 他 者 との 交 流 へと 開 かれていくワークショップ 構 造 について 考 察 を 行 う 1 実 践 活 動 の 概 要 日 時 :2014 年 11 月 3 日 11 時 ~15 時 題 材 : にじみ 絵 でゆめ 色 の 虹 をつくろう! 参 加 方 法 : 会 場 にて 先 着 順 に 受 付 参 加 費 :200 円 (1 人 ) 7 参 加 人 数 :98 名 材 料 と 用 具 : 障 子 紙 ( cm) 食 紅 ( 赤 青 黄 緑 ) スポンジスタンプ 角 筆 洗 やまとのり 竹 籤 紐 新 聞 紙 ア イロン 実 践 者 : 筆 者 共 同 実 践 者 1 名 主 催 団 体 のスタッフ1 名 環 境 :ショッピングセンター 内 の 通 路 一 角 を 使 用 ( 図 1) 図 1 会 場 配 置 図 本 ワークショップは もりや 子 育 てネッ トワークままもり 8 のイベント 9 の 一 環 とし て 行 ったものである 2013 年 に 同 様 の 形 態 で 実 践 した 際 地 域 に 密 着 した 団 体 と 連 携 する ことで 参 加 者 が 安 心 して 活 動 へ 参 加 できるこ とがわかったため 今 回 も 筆 者 から 依 頼 して 団 体 の 協 力 を 得 ることとなった 当 団 体 は 子 育 てを 支 援 するためのイベントを 数 多 く 行 っ ているため 会 場 における 安 全 面 への 配 慮 を 得 ることができ 実 践 の 助 けとなった これまでのワークショップはいずれも 人 数 を 制 限 して 事 前 申 込 制 としていたが 今 回 は 当 日 先 着 順 の 受 付 として より 多 くの 参 加 者 が 体 験 できるようにした しかし にじみ 絵 を 内 容 とする 初 めてのワークショップであっ たこともあり 多 くの 課 題 を 残 すこととなっ た 1.2 活 動 内 容 にじみ 絵 制 作 の 具 体 的 な 内 容 は 障 子 紙 を 支 持 体 として 食 紅 液 ( 食 紅 を 水 で 溶 いた 液 ) で 描 画 するものである 障 子 紙 を 選 んだのは 吸 水 性 と 強 度 に 優 れ サイズが 自 由 に 設 定 で きてコストも 安 いためである 食 紅 は 安 全 性 108

112 実 践 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 が 確 保 できることと 粒 子 が 細 かく 透 明 度 が 高 いため 薄 さを 調 整 することで 色 彩 の 変 化 を 効 果 的 に 確 認 できることが 選 んだポイント となった 4 色 の 食 紅 液 は4つに 仕 切 られた 角 筆 洗 の 中 に 一 色 ずつ 入 れた 描 画 は 幼 児 でも 扱 い やすいように 持 ち 手 が 太 い 棒 状 のスポンジ スタンプを 使 用 した 障 子 紙 は1 枚 だと 液 の 吸 収 が 不 十 分 で 下 敷 きとして 使 用 した 新 聞 紙 の 色 も 透 けて 見 えるため 二 重 にした( 図 2) 図 2 使 用 画 材 描 く 枚 数 は1 人 3 枚 までとして 1 枚 は 持 ち 帰 って 飾 れるように 乾 燥 後 竹 籤 と 紐 を 付 けた( 図 3) 図 3 持 ち 帰 り 作 品 残 りの2 枚 はイベント 会 場 に 展 示 して 参 加 者 による 共 同 作 品 とする 予 定 であった しか し 持 ち 帰 り 用 の 作 品 加 工 ( 乾 燥 接 着 )に 予 想 以 上 の 手 間 がかかり 今 回 は 展 示 を 断 念 せざるを 得 ない 状 況 となった 当 初 の 計 画 で はアイロンによる 作 品 乾 燥 のみ 実 践 者 側 で 行 い 接 着 は 参 加 者 が 行 う 予 定 であった しか し 次 々に 訪 れる 参 加 者 への 説 明 や 道 具 配 布 に 時 間 がかかり 接 着 の 説 明 まで 時 間 をとれ ないなど 午 前 の 時 間 帯 は 一 連 の 流 れが 滞 っ てしまった そのため 急 遽 予 定 を 変 更 して 描 画 後 に 参 加 者 が 気 に 入 った 作 品 を1 枚 選 び 実 践 者 側 で 一 度 引 き 取 り 加 工 後 に 渡 すことと した また 他 の2 作 品 については 持 ち 帰 りを 希 望 する 場 合 は 新 聞 紙 で 梱 包 後 に 渡 し 希 望 しない 場 合 は 引 き 取 ることとした 参 加 者 の 流 れが 引 いた12 時 ~13 時 の 時 間 帯 に 全 体 の 流 れを 確 認 して 体 制 を 立 て 直 した 材 料 の 配 布 や 描 画 後 に 作 品 を 置 く 場 所 が 少 ないことも 流 れが 滞 る 大 きな 原 因 となってい たため 参 加 者 がスペースを 空 けて 座 れるよ うに 材 料 を 配 置 して 描 画 後 の 作 品 を 横 に 置 けるようにした また 実 践 者 の 分 担 も 決 め 筆 者 は 参 加 者 への 説 明 や 会 場 全 体 の 流 れを 担 当 共 同 実 践 者 は 持 ち 帰 り 作 品 の 加 工 と 道 具 の 整 理 補 充 等 を 担 当 した また 受 付 をして いたスタッフへも 席 への 誘 導 や 道 具 の 配 布 等 を 必 要 に 応 じて 依 頼 した 改 善 後 は 比 較 的 スムーズに 進 行 することができたが その 間 も 片 付 けと 準 備 が 続 き 参 加 者 との 関 わりを あまり 持 つことができなかった 筆 者 のワークショップ 実 践 は 表 現 を 通 し て 子 どもと 保 護 者 参 加 者 間 の 交 流 を 促 し そのことが 表 現 へ 還 元 されることを 目 指 して いる 今 回 は 多 くの 参 加 者 を 得 られた 一 方 で その 入 れ 替 わりが 多 く 落 ち 着 いて 取 り 組 む 環 境 とならなかったため 参 加 者 間 の 交 流 は ほとんど 行 われなかった しかし 低 年 齢 児 でも 取 り 組 みやすいことが 幸 いして 個 々の 制 作 として 見 れば 子 ども 達 は 色 彩 の 変 化 を 興 味 深 く 観 察 しながら 時 には わぁ! と 声 をあげながら 次 々に 描 画 を 進 めていた( 図 4) 一 部 の 参 加 者 には 兄 弟 や 友 人 周 囲 の 参 加 者 の 作 品 を 観 察 する 様 子 もみられた ( 図 5) また 完 成 作 品 を 持 ち 歩 いて 喜 ぶ 子 どもや 材 料 に 興 味 を 示 し 自 宅 でもやってみ たいと 述 べた 保 護 者 など 多 様 な 反 応 が 伺 え た 改 善 点 はあるものの 実 践 から 明 らかに なったことは 多 く 特 に 水 を 扱 うには 不 向 き の 環 境 で 進 行 が 可 能 であったことは 今 後 へ 109

113 参 加 者 間 の 相 互 作 用 を 促 すアートワークショップについての 一 考 察 屋 宜 久 美 子 繋 がる 大 きな 収 穫 となった 図 6 会 場 配 置 図 図 4 描 画 と 観 察 を 繰 り 返 す 様 子 図 5 他 者 の 描 画 を 観 察 する 様 子 2 実 践 活 動 の 概 要 日 時 :2014 年 12 月 6 日 10 時 ~11 時 半 題 材 : カラフルにじみ 絵 であそぼう! 参 加 方 法 : 事 前 申 込 (10 組 ) 参 加 費 : 無 料 参 加 人 数 :4 組 12 名 ( 保 護 者 4 名 子 8 名 ) 子 どもの 年 齢 :2 才 (3 名 ) 4 才 (1 名 ) 5 才 (1 名 ) 6 才 (2 名 ) 7 才 (1 名 ) 材 料 と 用 具 : 障 子 紙 ( cm cm) 食 紅 ( 赤 青 黄 緑 ) スポン ジスタンプ 角 筆 洗 やまとのり 竹 籤 紐 新 聞 紙 アイロン エアキャップ マッ ト 実 践 者 : 筆 者 美 術 大 学 生 2 名 環 境 : 展 覧 会 会 場 の1 室 を 使 用 ( 図 6) 10 本 実 践 は 展 覧 会 会 場 の 筆 者 作 品 を 展 示 した 一 室 にて 行 ったものである かねてから 自 身 の 作 品 によってワークショップのための 空 間 を 構 成 したいという 考 えがあり 今 回 は 幸 いにも 会 場 にて 実 践 を 行 える 環 境 を 得 るこ とができた 筆 者 がこのように 考 えるように なったのは 2013 年 に 行 ったワークショップ の 実 践 会 場 がきっかけとなっている 11 その 会 場 は 壁 面 の3 面 がガラス 張 りの 非 常 に 開 放 的 な 空 間 で 筆 者 は 場 所 からヒントを 得 て 内 容 を 構 築 した それ 以 来 実 践 する 場 所 と 内 容 を 切 り 離 して 考 えるのではなく 密 接 に 関 連 付 けて 展 開 したいと 思 うようになっていた 展 覧 会 における 筆 者 の 展 示 作 品 は ワーク ショップと 同 じ 材 料 ( 障 子 紙 食 紅 液 )によ り 彩 色 した 紙 を 加 工 して 天 井 から 帯 状 に 何 層 も 垂 らしたものであった 一 室 の 中 心 部 を 使 用 したインスタレーション 作 品 であったが ワークショップ 時 は 作 品 を 部 屋 の 一 角 によせ カーテンのように 固 定 して 制 作 スペースを 作 っ た 2.2 活 動 内 容 実 践 1と 同 様 に 支 持 体 を 障 子 紙 描 画 材 を 食 紅 液 とスポンジスタンプとして それぞ れ3 枚 のにじみ 絵 を 描 いた その 後 新 たな 試 みとして 個 々の 制 作 の 後 に 参 加 者 全 員 によ る 共 同 制 作 を 行 った 実 践 1からの 改 善 点 は 奥 行 きのある 座 卓 を 用 意 して 動 きやすい 環 境 を 整 えたこと 作 品 を 置 くスペースを 作 った こと 新 聞 紙 と 障 子 紙 のセットをあらかじめ 用 意 して 移 動 しやすくしたことである 実 践 は 筆 者 と 美 術 大 学 生 2 名 で 行 った 筆 者 が 説 明 や 進 行 を 担 当 して 学 生 は 写 真 撮 影 と 制 作 110

114 実 践 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 補 助 に 分 担 した 当 日 は 展 覧 会 会 場 に 多 様 な 作 品 が 展 示 さ れていたことや 古 民 家 を 使 用 していたこと もあり 参 加 者 は 会 場 自 体 に 関 心 を 示 してお り よい 雰 囲 気 でのスタートとなった 簡 単 な 自 己 紹 介 を 全 員 が 行 った 後 筆 者 の 実 演 で 色 のにじみ 方 や 変 化 を 観 察 して それ ぞれの 作 品 へ 取 りかかった 描 画 に 入 ると 子 どもたちは 次 々に 色 を 重 ね 始 めた 開 始 直 後 は 皆 同 じようにスタンプを 一 色 ずつ 重 ねなが ら 慎 重 に 描 画 していたが 時 間 が 経 つにつれ それぞれ 工 夫 が 見 られるようになった 一 回 の 描 画 における 色 の 広 がりの 限 界 を 試 しなが ら 描 画 していた 参 加 者 は スポンジにできる だけ 多 くの 液 を 吸 収 させようと 試 みていた ( 図 7) また 一 色 ずつ 表 れた 色 の 様 子 を 注 意 深 く 観 察 しながら 丁 寧 に 重 ねる 参 加 者 や ( 図 8) 親 子 で 相 談 しながら 一 緒 に 描 画 を 行 う 様 子 も 見 ることができた( 図 9) 実 践 1 では 椅 子 を 使 用 していたため 描 画 時 の 動 き の 自 由 度 は 低 かったが 今 回 は 床 に 直 接 座 る ようにしたため 座 る 中 腰 になる 立 つな ど 描 く 姿 勢 も 多 様 で また 動 いて 他 者 の 作 品 を 見 るなどの 行 動 も 多 く 見 られた 全 員 が 描 き 終 わった 後 大 きな 紙 に 共 同 制 作 を 行 った 紙 は68 350cmで 大 きいと 思 っ ていたが 個 々の 制 作 で 素 材 の 扱 いに 慣 れた 参 加 者 は 夢 中 で 描 き あっという 間 に 画 面 は 色 彩 で 埋 め 尽 くされた 大 作 は 個 々に 行 う 小 作 品 とは 異 なり 体 を 大 きく 動 かし 描 画 でき るため 場 所 を 移 動 しながらのびのびと 描 く 様 子 が 伺 えた 前 半 は 比 較 的 スムーズに 進 行 していたが 個 々の 制 作 を 終 えた 頃 から 部 屋 で 走 りまわる 子 どもが 出 始 めた また 筆 者 の 展 示 作 品 を 触 れる 状 態 で 会 場 内 に 展 示 したことが 逆 効 果 となり 作 品 をひっぱる 飛 び 上 がって 触 る などの 騒 ぎへとつながった また それを 止 めようとする 保 護 者 などで 会 場 は 落 ち 着 か ない 雰 囲 気 となったため 共 同 制 作 を 完 成 さ せた 後 は 全 員 で 作 品 を 鑑 賞 しながら 筆 者 が 簡 単 な 感 想 を 述 べて 終 わりとした 今 回 は 全 図 7 大 量 の 液 を 吸 収 させる 様 子 図 8 一 色 ずつ 丁 寧 に 重 ねる 様 子 図 9 親 子 でスタンプする 様 子 ての 作 品 を 持 ち 帰 ってもらい 梱 包 の 時 に 竹 籤 と 紐 を 渡 して 自 宅 での 加 工 を 説 明 するに 留 めた 実 践 1に 比 べると 進 行 は 比 較 的 スムーズで あったが 後 半 になると 非 常 に 騒 がしくなり その 状 態 のまま 終 了 となったことが 残 念 であっ た 理 由 としては やはり 途 中 段 階 での 材 料 の 配 布 が 大 きな 手 間 となったこと 描 画 した 作 品 の 置 場 が 依 然 足 りずその 対 応 に 追 われた ことが 挙 げられる 前 回 は 実 践 者 側 の 人 数 不 足 だと 感 じていたが 今 回 も 状 況 はあまり 改 111

115 参 加 者 間 の 相 互 作 用 を 促 すアートワークショップについての 一 考 察 屋 宜 久 美 子 善 されなかったため 実 践 中 の 準 備 を 全 て 実 践 者 側 が 行 うこと 自 体 に 問 題 があると 感 じた 参 加 者 が 各 自 のペースで 自 由 に 制 作 を 進 めら れるような 環 境 整 備 が 今 後 の 課 題 となった また 会 場 については 意 図 的 に 手 を 入 れる 場 合 は 表 現 の 動 機 付 けとなるだけでなく 気 持 ちが 制 作 へ 向 かう 環 境 を 確 保 することも 重 要 であることがわかった 3 実 践 活 動 の 概 要 日 時 :2014 年 12 月 6 日 13 時 半 ~15 時 題 材 : カラフルにじみ 絵 であそぼう! 参 加 方 法 : 事 前 申 込 (10 組 ) 参 加 費 : 無 料 参 加 人 数 :2 組 5 名 ( 保 護 者 3 名 子 2 名 ) 子 どもの 年 齢 :3 才 (1 名 ) 4 才 (1 名 ) 材 料 と 用 具 : 障 子 紙 ( cm cm) 食 紅 ( 赤 青 黄 緑 ) スポンジス タンプ 角 筆 洗 やまとのり 竹 籤 紐 新 聞 紙 アイロン エアキャップ マット 実 践 者 : 筆 者 美 術 大 学 生 2 名 共 同 研 究 者 1 名 環 境 : 展 覧 会 会 場 の1 室 を 使 用 ( 図 10) 図 10 会 場 配 置 図 本 実 践 は 実 践 2の 午 後 の 部 として 行 った ものである 午 前 からの 改 善 点 は 会 場 に 配 置 していた 筆 者 作 品 を 天 井 付 近 で 束 ねて 手 が 届 かない 状 態 としたことである 3.2 活 動 内 容 実 践 2と 同 じく 支 持 体 は 障 子 紙 描 画 材 は 食 紅 液 とスポンジスタンプを 使 用 した 実 践 者 は 筆 者 と 美 術 大 学 生 2 名 に 共 同 研 究 者 1 名 が 加 わった 参 加 は2 組 5 名 であった こ れまで10 名 以 下 を 対 象 とした 実 践 を 行 ったこ とがなく 経 験 上 大 人 数 が 同 時 に 関 わる 時 の ほうが 参 加 者 間 の 交 流 も 活 発 であったため 少 人 数 で 行 うことへの 不 安 が 多 少 あった 結 果 的 には 少 人 数 であったことによって こ れまでにできなかった 内 容 を 取 り 込 め 多 く の 発 見 を 得 ることとなった 午 前 同 様 に 簡 単 な 自 己 紹 介 の 後 実 演 によっ て 色 のにじみ 方 や 変 化 を 観 察 した その 後 小 サイズの 障 子 紙 に1 人 3 枚 まで 描 いた 実 践 1 2を 含 め 筆 者 がこれまで 行 った 全 てのワー クショップでは 保 護 者 と 協 働 で 取 り 組 むこ とを 促 す 意 味 で 参 加 する 子 どもにのみ 材 料 を 渡 していた しかし 今 回 は 人 数 が 少 なかっ たことや 描 画 に 興 味 を 示 した 保 護 者 がいた こともあり 保 護 者 にも 材 料 を 渡 して 一 緒 に 描 くように 促 した また 共 に 実 践 を 行 った 美 大 生 と 共 同 研 究 者 にも 描 画 を 勧 めた 描 画 を 促 して 驚 いたことは 個 々の 制 作 が 互 いの 描 き 方 や 作 品 を 見 る 行 為 へ 自 然 に 繋 がっ ていったことだ また そのことが 他 の 参 加 者 の 描 画 に 対 する 興 味 へと 広 がり 新 たな 技 法 への 展 開 を 見 せたことだ 印 象 的 だったの は 1 人 の 保 護 者 が 4 本 のスポンジを 同 時 に 並 べて 描 き 出 し( 図 11) 向 かい 側 に 座 っ ていた 女 児 がその 様 子 を 見 て 両 手 にスポン ジを 持 ち 描 きはじめたことである( 図 12) また 保 護 者 も 自 身 が 描 くことで 子 どもや 他 の 参 加 者 の 描 画 を 興 味 深 く 見 る 様 子 も 伺 えた また 美 大 生 が 細 かいタッチで 色 を 重 ねたり ドリッピングをすることで その 場 で 展 開 さ れる 描 画 が 急 に 多 方 向 への 広 がりを 持 ち 始 め たことも これまでの 実 践 とは 異 なる 展 開 で あった 3 枚 描 いた 後 は 共 同 制 作 へと 移 った 描 き 始 めは 子 どもと 保 護 者 で 交 互 に 描 くように 促 し 後 半 は 自 由 に 描 画 した ここでも 保 護 者 が 描 く 様 子 をじっと 見 るなど 相 互 的 な 描 画 と 鑑 賞 の 様 子 が 伺 えた( 図 13) 共 同 制 作 は 紙 に 白 い 部 分 がなくなってもしばらく 続 き 画 面 の 中 で 多 様 な 色 彩 の 展 開 が 見 られた 制 作 後 4 色 からできた 画 面 にどれぐらいの 色 112

116 実 践 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 図 11 4 本 のスポンジを 使 用 する 様 子 図 12 両 手 で 描 き 始 めた 児 童 図 13 保 護 者 の 描 画 を 観 察 する 児 童 彩 があるか 画 面 を 鑑 賞 しながら 色 探 しを 行 い 終 了 とした 全 体 的 に 静 かな 雰 囲 気 での 実 践 であったが 参 加 者 間 の 描 画 観 察 やそれ を 受 けた 技 法 の 展 開 など 描 画 を 媒 体 とした 参 加 者 間 の 交 流 が 頻 繁 に 見 られる 実 践 であっ た おわりに 本 報 告 における3つの 実 践 は にじみ 絵 を 共 通 の 題 材 としながら 内 容 進 行 環 境 等 を 改 善 して 取 り 組 んだ いずれの 実 践 にも 気 づきや 課 題 があった 実 践 1では 参 加 者 が 個 々に 制 作 を 開 始 するやり 方 では 実 践 者 側 の 負 担 が 大 きく そのことが 影 響 して 参 加 者 間 の 交 流 が 生 まれにくい 状 態 となったことが 課 題 であった 当 日 自 由 に 参 加 できるスタイル は 参 加 者 が 多 く 得 られる 一 方 で 内 容 に 深 み や 多 様 性 を 持 たせることが 難 しいことがわかっ た 実 践 2では 実 践 内 容 と 環 境 を 関 連 づける 場 合 は 表 現 の 動 機 付 けだけでは 不 十 分 で ワークショップが 目 指 す 方 向 性 とも 重 ねて 構 築 しなければ 逆 効 果 となることが 明 らかになっ た しかし 会 場 の 様 子 が 参 加 者 の 活 動 に 影 響 することが 確 認 できたため 改 善 して 今 後 の 取 り 組 みへと 繋 げていきたい 実 践 3では 参 加 者 の 人 数 が 少 ないことが 心 配 要 素 であったが 未 就 学 児 と 保 護 者 ま た 実 践 者 3 名 も 制 作 に 加 わったことによって おのずと 描 画 と 鑑 賞 を 行 き 来 する 視 点 が 生 ま れることがわかった 実 践 1 2では 子 ども 達 自 身 が 枚 数 を 重 ねる 過 程 で 描 き 方 を 試 し 技 法 を 発 展 させていっ たのに 対 して 実 践 3では 自 身 の 描 画 に 加 え て 他 者 の 観 察 から 得 られた 発 見 も 加 わり 表 現 が 多 方 向 に 展 開 する 様 子 が 伺 えた 3つの 実 践 は 内 容 が 異 なる 部 分 も 多 いため 全 てを 同 じ 土 俵 で 比 較 することは 難 しいが それでも 実 践 3からは 他 の 実 践 とは 質 的 に 異 なる 参 加 者 間 の 相 互 作 用 が 見 られた そこからは 子 どもが 保 護 者 の 描 画 観 察 をステップとして 段 階 的 に 他 者 の 観 察 へと 視 野 を 開 いていく 様 子 が 伺 えた 加 えて 美 大 生 の 存 在 は 材 料 への 柔 軟 な 態 度 を 示 した 点 において 場 の 雰 囲 気 へ 大 きく 影 響 したと 考 えられる 美 大 生 は 日 頃 から 制 作 に 携 わっているため 材 料 の 扱 いや 技 法 に 対 する 幅 広 い 知 識 を 有 している そのため 表 現 への 興 味 が 強 く 描 画 を 楽 しみながら 行 う 態 度 を 基 礎 に 持 つ さらに 普 段 から 表 現 を 模 索 しているため 材 料 や 技 法 への 知 識 に 補 らわれるのではなく 自 由 に 応 用 していくこと ができる そのため 美 大 生 が 共 に 制 作 を 行 うことは 声 かけや 具 体 的 な 指 導 を 越 えた 113

117 参 加 者 間 の 相 互 作 用 を 促 すアートワークショップについての 一 考 察 屋 宜 久 美 子 その 場 に 共 にいることによる 学 びを 提 示 した と 言 える 今 回 のワークショップでは 子 どもの 描 画 が 段 階 的 に 他 者 の 観 察 へと 広 がることや 自 由 な 広 がりが 展 開 される 環 境 の 構 築 が 実 践 内 容 へ 大 きく 影 響 することが 確 認 できた 本 報 告 で 明 らかになった 課 題 を 改 善 して これか らも 実 践 を 重 ねる 中 で 考 察 を 行 っていきたい 1 本 報 告 で 述 べる3つの 実 践 経 費 は 平 成 26 年 度 秋 田 公 立 美 術 大 学 競 争 的 研 究 費 によって 賄 われている 2 近 年 ワークショップが 各 地 で 広 がりを 見 せて いる 一 方 で 未 就 学 児 が 参 加 できる 活 動 は 極 めて 限 られている 筆 者 は 美 術 制 作 が 安 心 や 受 容 をもたらすことに 着 目 し 親 子 関 係 の 育 ちに 資 す 通 路 として 美 術 教 育 の 可 能 性 を 見 出 しているため 未 就 学 児 と 保 護 者 を 主 な 実 践 対 象 としている 3 ColorfieldPainting:キャンバスを 色 彩 の 場 と 考 えオールオーバーな 色 面 によって 構 成 する 絵 画 アメリカの 批 評 家 クレメント グ リンバーグ(ClementGreenberg)が1955 年 にバーネット ニューマン (Barnett Newman)の 絵 画 を 論 じるために 考 案 した 概 念 4 モーリス ルイス(MorrisLouis)やヘレン フランケンサーラー(HelenFrankenthaler) の 制 作 など 5 屋 宜 久 美 子 美 術 制 作 における 作 家 と 世 界 の つながり 東 京 藝 術 大 学 美 術 教 育 研 究 室 編 美 術 と 教 育 のあいだ 東 京 藝 術 大 学 出 版 会 2011 年 pp 実 践 年 2 月 16 日 10 時 ~12 時 モリヤイー ストキャスト( 茨 城 県 守 谷 市 ) 実 践 年 8 月 13 日 10 時 ~12 時 なんじぃほ~る( 沖 縄 県 南 城 大 里 市 ) 詳 しい 内 容 については 屋 宜 久 美 子 遊 びと 生 成 の 世 界 - 未 就 学 児 対 象 の 造 形 ワークショップ 実 践 を 通 して- 美 術 教 育 研 究 No.19/2013 美 術 教 育 研 究 会 2013 年 pp30-39を 参 照 7 実 践 経 費 は 大 学 研 究 費 によって 賄 われている ため 参 加 費 は 主 催 団 体 の 運 営 費 用 とした 8 もりや 子 育 てネットワークままもり は 2011 年 発 足 の 茨 城 県 守 谷 市 を 中 心 に 活 動 する ボランティア 団 体 9 イベント 2014いいお 産 の 日 inもりや は 小 児 科 医 の 講 演 助 産 師 相 談 産 前 産 後 ヨガ 体 験 など 子 育 てに 関 する 多 様 な 催 しからな る( 主 催 : 子 育 てネットワークままもり) 10 RAM2014:RandomAccessMemories 2014 年 12 月 1 日 ~14 日 渡 邊 幸 四 郎 邸 ( 秋 田 県 秋 田 市 ) 年 2 月 16 日 10 時 ~12 時 モリヤイースト キャスト( 茨 城 県 守 谷 市 ) 詳 しい 内 容 につ いては 屋 宜 久 美 子 前 掲 論 文 を 参 照 114

118 実 践 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 今 東 北 で 風 土 への 想 い をテーマに 制 作 して 自 然 人 々 生 活 など あなたが 抱 く 風 土 への 想 いを 表 現 して 下 さい 皆 川 嘉 博 平 成 26 年 10 月 4 日 から11 月 3 日 までの31 日 間 にわたり 第 29 回 国 民 文 化 祭 あきた2014 が 秋 田 県 内 各 地 において 盛 大 に 開 催 された そしてこれは 東 日 本 大 震 災 以 降 東 北 で 開 かれる 最 初 の 国 民 文 化 祭 である 秋 田 市 では 主 催 事 業 として 作 品 創 作 の 源 である 風 土 への 想 いをテーマに 日 本 画 ( 水 墨 画 含 む) 洋 画 彫 刻 工 芸 書 写 真 の6 部 門 による 美 術 展 が 開 催 された 全 国 からの 一 般 公 募 作 品 とともに 東 北 6 県 の 作 家 による 招 待 作 品 とあわせて 展 示 し 東 北 人 がもつ 秘 めたる 創 造 への エネルギーと 風 土 の 魅 力 を 発 信 した 私 も 東 北 作 家 風 土 への 想 い 招 待 作 家 として 彫 刻 作 品 を 制 作 し 出 品 した その 制 作 工 程 のなかで 考 え 目 指 した 内 容 や 制 作 の 実 際 の 工 程 等 について 報 告 したい 制 作 期 間 は 平 成 25 年 12 月 から 平 成 26 年 9 月 まで およそ10ケ 月 に 及 んだ その 制 作 の 内 容 と 意 義 について あらためて 検 証 したい キーワード: 美 術 展, 東 北 作 家, 彫 刻 作 品, Now,thoughttothenaturalfeaturesintheTohokuregion isproducedinthetheme:expresthefeelingstothenatural featuressuchasnature,people,andlifethatyouhold MINAGAWA Yoshihiro Overthe31daysfromOctober4toNovember3,2014, 29 NationalCulturalFestivalAkita2014 wasgrandlyheldaloverakitaprefecture.andthisisthefirstnationalculturalfestivaltobeheldinthe TohokuregionsincetheGreatEastJapanEarthquake.InAkitaCity,the ArtExhibition by6divisions, whicharejapanesepaintings(includinginkpainting),westernpaintings,sculpture,crafts,caligraphyand pictures,washeldasorganizedbusineswiththethemoffeelingstothenaturalfeaturesthatisasourceof creation.theworkswereexhibitedtogetherwiththeinvitationworksbyartistsfrom6prefecturesintohoku regionandthepublicworkswhichweresentfromaloverthecountry.theworksoriginatedthecharmof naturalfeaturesandsecretenergytothecreationthattohokupeoplehave.ialsocreatedandexhibiteda sculptureasaninvitedartist feelingstowardthenaturalfeatures:artistsfromtohokuregion.amongthe procesofproduction,iwanttoreportaboutthecontentthatithoughtandaimedamongtheprocesof productionandactualproces.theperiodofproductionrangedforapproximately10monthsfromdecember 2013toSeptember2014.Iwanttoverifyagainaboutthecontentandsignificanceofproduction. Keywords:artexbibitioh,ArtistsofTohoku,sculpture, 115

119 今 東 北 で 風 土 への 想 い をテーマに 制 作 して 皆 川 嘉 博 1 はじめに 第 29 回 国 民 文 化 祭 あきた2014 は 東 日 本 大 震 災 以 降 東 北 で 開 かれる 最 初 の 国 民 文 化 祭 である 震 災 から3 年 を 経 過 した 今 も なお 被 災 地 は 復 興 したとはいえない 特 に 福 島 第 一 原 発 事 故 により 現 在 も 多 くの 人 々が 避 難 生 活 を 余 儀 なくされている また 経 済 的 にも 東 北 は 大 変 な 苦 難 の 途 上 にある その ような 社 会 状 勢 の 中 で この 国 民 文 化 祭 は 開 催 された 文 化 の 力 で 東 北 社 会 を 活 性 化 させよう というねらいからである その 国 民 文 化 祭 の 中 で 私 は 秋 田 市 が 主 催 した 美 術 展 に 作 品 出 品 をし 関 わり その 一 部 始 終 をもう 一 度 振 り 返 り 今 後 の 制 作 の 取 り 組 み ひいて は 東 北 社 会 への 貢 献 について 考 えてみたい 2 国 文 祭 美 術 展 招 待 出 品 の 依 頼 につい て 作 品 制 作 に 入 ったのは 平 成 25 年 12 月 初 旬 で あった 作 品 は 初 めから 国 文 祭 に 出 品 する 目 的 で 制 作 していたものではなく 出 品 依 頼 が ある3ケ 月 ほど 前 から 制 作 に 入 っていたもの である 私 の 場 合 は 年 間 で1~2 体 等 身 大 の 作 品 を 造 り 2 年 に1 回 のペースで 彫 刻 個 展 をしている 今 回 も 源 流 シリーズの 一 環 とし て 制 作 をしていた そうした2 月 下 旬 頃 に 秋 田 市 実 行 委 員 会 から 出 品 依 頼 をいただいた 平 成 25 年 4 月 中 旬 に 秋 田 県 内 の 美 術 関 係 有 識 者 を 中 心 に 美 術 展 の 企 画 委 員 会 が 招 集 された そこで 美 術 展 の 具 体 的 な 内 容 に ついて 話 し 合 われた その 中 には 展 示 検 討 部 会 東 北 選 抜 展 検 討 部 会 が 組 織 された 東 北 選 抜 展 については5 月 中 旬 から 開 催 要 項 の 作 成 がおこなわれ 出 品 作 家 検 討 や 交 渉 は 9 月 上 旬 から10 月 中 におこなわれた 開 催 要 項 は 平 成 26 年 2 月 20 日 の 日 付 けで 第 29 回 国 民 文 化 祭 秋 田 市 実 行 委 員 会 会 長 穂 積 志 秋 田 市 長 名 で 送 付 された 次 の 通 りである 第 29 回 国 民 文 化 祭 あきた 2014 美 術 展 - 日 本 画 洋 画 彫 刻 工 芸 書 写 真 - 東 北 作 家 風 土 への 想 い ~ 東 北 在 住 作 家 による 招 待 作 品 展 示 ~ 実 施 要 項 1) 趣 旨 平 成 26 年 秋 秋 田 で 開 催 される< 第 29 回 国 民 文 化 祭 あきた 2014>は 東 日 本 大 震 災 以 降 東 北 で 開 かれる 最 初 の 国 民 文 化 祭 開 催 県 です 秋 田 市 では 主 催 事 業 として 作 品 創 作 の 源 といえる 風 土 への 想 いをテーマに 日 本 画 ( 水 墨 画 を 含 む) 洋 画 彫 刻 工 芸 書 写 真 の6 部 門 による 美 術 展 を 開 催 全 国 から の 一 般 公 募 作 品 とともに 東 北 6 県 の 作 家 によ る 招 待 作 品 を 合 わせて 展 示 し 東 北 人 がもつ 秘 めたる 創 造 へのエネルギーと 風 土 の 魅 力 を 発 信 します 2) 期 間 平 成 26 年 10 月 4 日 ( 土 )~13 日 ( 月 祝 ) 10:00~18:00( 最 終 日 は15:00まで) 3) 会 場 ( 予 定 ) ( 洋 画 ) 秋 田 県 立 美 術 館 ( 書 )にぎわい 交 流 館 AU ( 日 本 画 彫 刻 工 芸 写 真 )アトリオン 4) 主 催 者 文 化 庁 秋 田 県 秋 田 市 秋 田 市 教 育 委 員 会 第 29 回 国 民 文 化 祭 秋 田 県 実 行 委 員 会 第 29 回 国 民 文 化 祭 秋 田 市 実 行 委 員 会 5) 事 業 内 容 美 術 展 企 画 委 員 会 推 薦 による 東 北 在 の 作 家 に 出 品 依 頼 展 示 数 約 75 点 ( 予 定 ) 作 品 は 美 術 展 各 部 門 の 展 示 会 場 ごとに 展 示 予 定 以 上 116

120 実 践 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 招 待 作 家 予 定 は 総 点 数 75 点 日 本 画 7 水 墨 画 7 洋 画 11 彫 刻 13 書 12 写 真 12 県 別 では 青 森 10 岩 手 12 宮 城 12 山 形 13 福 島 8 秋 田 20 3 彫 刻 制 作 の 実 際 平 成 25 年 12 月 に 彫 刻 制 作 に 取 り 組 んでいた 自 身 の 研 究 テーマである 源 流 シリーズの 流 れ である 源 流 シリーズは 私 の 制 作 ルーツであ る 主 に 野 焼 きで 巨 大 な 彫 刻 作 品 を 制 作 して 来 た この 源 流 シリーズは2000 年 の 銀 座 のギャ ラリーでのグループ 展 での 発 表 に 始 まった その 時 点 ではまだ 源 流 シリーズは 抽 象 形 態 で あった 舟 形 の 作 品 とアンモナイトの 型 によ る 作 品 幼 児 に 粘 土 を 握 らせ 焼 成 した 作 品 砂 (シャモット)を 組 み 合 わせた 実 験 的 な 作 品 であった 幼 児 は 当 時 は4 歳 で 現 在 17 歳 である つまり 源 流 シリーズ は 14 年 間 にわたる 作 品 テーマである この 作 品 題 名 の 源 流 という 響 きは 物 事 のルーツを 探 り 真 実 を 見 極 めようとする 思 いが 感 じられ 鑑 賞 者 へも 伝 わりやすいの ではないかと 思 い 長 年 にわたり 使 い 続 けて 来 た 今 回 は 国 文 祭 の 招 待 作 品 ということで この 源 流 シリーズ の 集 大 成 として 作 品 を 制 作 する 決 意 をした ここ2 3 年 の 源 流 シリーズはあらたに 神 話 という 世 界 観 が 加 わって 来 ている そもそも 源 流 シリーズは 物 事 のルーツを 探 る ことを 制 作 テーマにしてきた そして 最 近 は もっぱら 人 間 のルーツについて 作 品 を 制 作 し ている 人 間 のルーツ: 起 源 を 考 える 時 必 ず 行 き 当 たるのが 神 話 である 現 代 科 学 ではDNA 追 跡 などで 人 間 のルーツを 知 るこ とができる また 脳 科 学 の 分 野 では 脳 の 進 化 から 人 間 のルーツを 知 ることができるだろ う しかしながら 人 間 の 思 念 のルーツ そ れは 古 代 宗 教 や 古 代 の 遺 跡 もっとさかの ぼれば 原 住 民 の 洞 窟 の 壁 画 など 様 々な 手 段 が 考 えられる 私 は 彫 刻 という 立 体 芸 術 よっ て 人 間 のルーツを 解 き 明 かしてみたい そう 考 えた 時 に 古 代 から 人 類 に 受 け 継 がれて 来 た 神 話 という 世 界 が 非 常 に 魅 力 的 に 映 り 彫 刻 表 現 に 応 用 しやすい 様 に 思 えるので ある 神 話 のなかの 人 間 像 を 見 て 行 くと 半 人 半 獣 という 超 人 たちの 存 在 に 気 付 かされ る 特 にギリシア 神 話 に 象 徴 されるが ヘラ クレス パン セイレーンの 魔 女 人 魚 な どなど 実 に 多 種 多 様 である 最 近 私 が 最 も 注 目 しているのは 鳥 人 である 羽 の 生 えた 人 間 それは 神 の 使 いで ある キリスト 教 では 天 使 として マリアに 受 胎 告 知 をするのも 羽 を 持 った 天 の 使 いで ある それ 以 前 には ギリシャ 神 話 の 中 に ニケ という 勝 利 の 女 神 が 羽 を 持 った 女 性 の 姿 である 良 い 表 現 だけではない 悪 魔 の 姿 にも ときどき 羽 を 持 った 姿 で 表 される 悪 魔 の 羽 は コウモリ を 連 想 させる たし かにコウモリは 夜 に 飛 び 動 物 の 生 き 血 を 吸 う 恐 ろしいイメージがあり それがそのま ま 悪 魔 のイメージになったのかもしれない 反 対 に 天 使 のイメージは 白 い 鳩 や 白 鳥 のよう な 純 白 が 清 らかで 正 しいイメージを 醸 し 出 すのだろうか 私 が 今 回 制 作 したのは 女 性 像 で 羽 状 の 板 を 背 中 に 持 つが 決 して 天 使 をイメージした ものではない 日 本 特 に 東 北 に 伝 わる 鳥 人 伝 説 のようなものを 象 徴 的 に 表 現 した つま り ある 神 話 の 場 面 を 限 定 的 に 制 作 したわけ ではなく もっと 普 遍 的 なイメージにして 表 現 に 幅 を 持 たせたのである ただし 鳥 人 は 意 識 している 鳥 人 は 時 には 天 使 の 様 に 神 の 言 葉 を 人 間 に 伝 え ニ ケの 様 に 人 々を 勝 利 に 導 き 時 にはコウモリ やカラスの 様 に 闇 : 死 の 世 界 に 人 々を 導 く この 羽 をもった 姿 で 人 間 を 導 き 時 には 人 間 を 翻 弄 する つまり 何 処 からともなく 現 わ れ 追 えば 天 高 く 逃 げてしまう それは 人 間 の 運 命 そのものの 様 でもある 自 分 ではコン トロールできない 存 在 代 表 されるのは 生 と 死 だろう 今 回 私 の 作 品 は そう 言 う 意 味 でも 天 使 でも 悪 魔 でもない ましてニケ: 勝 利 の 女 神 でもない 強 いていうならば 人 間 がコントロールすることができない 存 在 117

121 今 東 北 で 風 土 への 想 い をテーマに 制 作 して 皆 川 嘉 博 つまり 人 間 の 運 命 を 象 徴 した 像 である 制 作 自 体 は 学 生 時 代 から 培 った 塑 造 技 法 を 使 い テラコッタ: 素 焼 彫 刻 として 仕 上 げ た この 像 は 一 旦 塑 造 技 法 で230cmの 等 身 より 大 きい 女 性 像 を 造 った 両 手 を 上 げたポー ズをしている 背 中 には2 本 の 羽 状 の 板 を 背 負 っている 手 足 は 爪 が 伸 び 指 の 節 々が 鱗 状 に 変 形 し あたかも 鳥 の 足 のように 変 化 している また 全 身 の 大 きな 特 徴 として 体 内 部 の 骨 格 が 表 面 に 浮 き 出 た 様 に 造 ってい る 肋 骨 や 大 腿 骨 あらゆる 全 身 の 骨 がきし み 合 う 様 に 表 面 に 浮 かび 上 がっている これ はある 超 人 現 象 を 表 している そう 考 えれば この 像 は 鳥 に 変 身 する 中 間 の 姿 ともいえる つまり 変 身 の 最 中 ということになるだろうか もちろん 作 品 形 態 自 体 は これまでの 修 練 の 形 であり 言 葉 にできるものではない 3 次 元 的 フォルムのかっこよさ シャープさ 量 (マッス)のバランスをたえず 検 討 しなが ら 制 作 を 続 けた ここで 考 えるとういう 行 為 は 実 際 に 手 を 使 い 目 で 見 て 検 討 しながら 制 作 することで 常 に 感 覚 的 瞬 間 的 な 偶 然 的 な 要 素 が 含 まれる 行 為 つまり 頭 で 考 え るということではない 全 体 を 把 握 するとい う 行 為 は 考 えるより 雰 囲 気 を 感 じるのであ る 五 感 を 研 ぎ 澄 ますということである 頭 で 考 えるのではなく 脊 髄 の 辺 りで 触 覚 に 跳 ね 返 る 感 覚 を 大 事 にしながら 制 作 している 2 枚 の 羽 状 の 板 の 制 作 も 苦 心 した 部 分 であ る 羽 といえば 鳥 の 羽 いわゆる 天 使 の 羽 を 誰 もが 連 想 するだろうから 羽 を 鳥 の 羽 状 にするのは 面 白 くないと 考 えた 面 白 くない とは なぜかというと 完 成 図 が 想 像 できて しまうからである 想 像 できてしまうものは 造 っていても 面 白 くない ましてや 鑑 賞 者 に は 面 白 くないものとして 映 る 自 分 の 想 像 を 上 回 るものを 造 った 時 はじめて 面 白 くなる のである 背 中 に2 本 ついただけで 鑑 賞 者 には 羽 と 認 識 されてしまう どうせならば 天 使 の 羽 状 でなくても 良 い コウモリの 羽 でもない どちらかというと 飛 行 機 の 翼 に 近 いような 気 がする 飛 行 機 の 翼 は 機 能 的 な 形 である 鳥 の 羽 のような 柔 らかさや 細 かさはない し かし 鳥 のように 空 に 飛 び 立 つための 形 である 飛 行 機 の 翼 のような 研 ぎすまされた 形 態 を 目 指 した そして それは 粘 土 という 素 材 で 造 ってい るということとも 大 きく 関 係 している 仮 に 紙 のような 軽 い 素 材 であれば 鳥 の 羽 と 同 じ ような 形 状 ができる しかし 粘 土 のような 重 い 素 材 で しかも 木 などで 芯 材 を 造 らない と 壊 れてしまうような 素 材 では 鳥 の 羽 のよ うな 形 態 よりも 飛 行 機 の 翼 状 の 形 態 の 方 が 造 りやすいのである 今 回 造 形 的 な 最 も 大 きな 発 見 は 翼 状 の 形 態 と 人 体 部 分 の 髪 の 毛 をつなげシンプルな 形 態 にすることによって 全 体 の 一 体 感 を 強 めることに 成 功 したことである これまでの 源 流 シリーズでは 人 体 部 分 と 翼 状 の 形 態 が バラバラに 見 え 全 体 感 が 弱 くなる 傾 向 があっ たが 今 回 はそれをクリヤーした 様 に 感 じた 塑 造 部 分 は 平 成 26 年 12 月 から 平 成 27 年 1 月 中 には 完 成 し すぐに 石 膏 取 り 作 業 に 入 った この 塑 造 から 型 を 取 り 型 に 焼 き 物 用 の 粘 土 を 込 め 型 を 外 し 乾 燥 する 粘 土 は 信 楽 の 大 物 用 粘 土 を 使 った 全 体 で250kg 以 上 の 粘 土 を 型 に 込 めた その 後 型 を 外 し 表 面 の 壊 れた 部 分 などを 修 正 した 2 週 間 以 上 じっ くり 乾 燥 させ 800 で 酸 化 焼 成 を 行 った しかし800 では 焼 き 肌 が 均 一 に 仕 上 がり 面 白 くないので 籾 殻 や 墨 を 用 いて もう 一 度 焼 成 した そうすることによって 焼 き 肌 に は 黒 色 や 緋 色 の 焼 きムラが 美 しく 残 った 3 月 中 にはすべて 焼 き 上 げることができた 4 テラコッタパーツ 組 み 立 て 工 程 平 成 26 年 4 月 焼 き 上 がったテラコッタ 部 材 は 以 下 の 通 りである 人 体 部 分 : 頭 部 胸 部 腰 大 腿 部 脚 (スネ) 2 本 足 地 山 部 分 腕 2 本 手 部 分 以 上 9 118

122 実 践 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 個 翼 状 部 分 : 上 部 中 部 下 部 2 本 分 以 上 6 個 このバラバラな 部 材 を 組 み 立 てて 作 品 にして 行 く テラコッタは 陶 芸 でいうなら 素 焼 の 状 態 つまり 脆 くて 割 れやすい テラコッタだ けでは 全 体 を 組 み 立 てると 強 度 的 にもたない ので 内 部 に 鉄 材 などで 芯 材 を 造 り FRP (ポリエステル 樹 脂 で 固 定 する 全 体 が250kg 以 上 に 達 するため この 鉄 の 芯 材 に 全 体 重 が かかるようにする 人 体 部 分 は9 個 のパーツをすべて 繋 ぎ 合 わ せて1 体 化 する 翼 部 分 は2 本 にする 人 体 部 分 で 最 も 気 をつけたいのが 足 首 の 部 分 であ る 足 首 は 細 く そこに 人 体 部 分 の 体 重 そ して2 本 の 翼 部 分 の 重 さがかかる ここには 内 部 に20mmの 鉄 芯 を 入 れた 基 本 的 にはこの 20mmの 鉄 棒 を2 本 彫 刻 内 部 にいれ 腰 胸 部 などで 横 棒 ( 鉄 )を 入 れ FRPで 固 定 した 地 山 ( 作 品 底 部 の 人 体 が 乗 っている 台 座 ) 部 分 は 特 に 頑 丈 にし 横 木 を 多 く 入 れ 固 定 した 翼 部 分 と 人 体 の 組 み 立 ては 特 に 苦 労 した それは 取 り 外 し 式 にしなければならないこ とと 翼 部 分 がかなり 重 く 設 置 面 も 大 きい ため より 困 難 を 極 めた これまでの 経 験 を 十 分 にいかして 最 高 レベルの 組 み 立 てを 目 指 した 石 や 木 などの 重 量 物 を 吊 るす 三 又 を 使 って 1 本 60kg 以 上 ある 翼 部 分 を 吊 るし ながら 作 業 をした 約 2か 月 以 上 組 み 立 て 作 業 が 続 いた 7 月 下 旬 に 一 旦 作 品 が 完 成 した その 後 作 品 の 組 み 立 ての 時 間 などの 関 係 で 写 真 撮 影 を 秋 田 公 立 美 術 大 学 の 工 房 で 行 うことになり 作 品 の 会 場 への 搬 入 も 大 学 か ら 会 場 へ 直 接 行 うことになった したがって 制 作 も 会 期 の 直 前 までおこなうことができた この 展 示 まで 猶 予 期 間 ができたことは 私 にとって 大 変 に 大 きいできことであった 締 め 切 りに 追 われて 制 作 することは 精 神 的 に 大 変 な 負 担 になる 少 し 時 間 が 経 つと 自 分 の 作 品 も 冷 静 に 見 ることができる つまり 客 観 視 できるのである この 期 間 を 利 用 して 今 一 度 作 品 全 体 のバランス 密 度 など 再 点 検 をした するとやはり 破 綻 のある 部 分 が 見 つかり その 部 分 を 修 正 することができた また イヤリングなど 装 飾 的 な 細 部 の 造 り 込 みをすることが 可 能 になった 図 1 作 品 完 成 図 作 品 名 源 流 神 話 の 民 形 状 テラコッタ 寸 法 : 高 さ230 幅 150 奥 行 150cm 重 量 :250kg 制 作 年 :2014 年 作 品 撮 影 8 月 22 日 ( 金 ) 東 北 作 家 の 搬 入 は8 月 20 日 ( 水 )にはじま り 20 日 21 日 と 作 品 撮 影 をした 私 の 作 品 は 大 きく 組 み 立 てに 時 間 がかかるた め 秋 田 公 立 美 術 大 学 に 直 接 作 品 を 撮 影 し 来 てた 平 成 25 年 12 月 に 制 作 を 始 め じつに9 ケ 月 を 作 品 制 作 に 費 やし 完 成 させたことを 思 うと 非 常 に 感 慨 深 く 達 成 感 があった 119

123 今 東 北 で 風 土 への 想 い をテーマに 制 作 して 皆 川 嘉 博 5 展 覧 会 の 実 際 10 月 2 日 ( 木 ) 秋 田 公 立 美 術 大 学 からアト リオン 地 下 イベント 広 場 に 作 品 を 運 搬 した テラコッタは 壊 れやすいため 木 枠 を 造 り 作 品 が 壊 れない 様 に 細 心 の 注 意 を 払 った アトリオンでは 日 通 美 術 運 搬 部 の 皆 さん に 手 伝 っていただき 作 品 を 木 枠 から 出 し 組 み 立 てた 時 間 にして 約 30 分 程 度 で 組 み 立 てられたと 思 う 展 覧 会 開 催 10 月 4 日 ( 土 )~10 月 13 日 ( 月 ) 10 月 4 日 ( 土 ) 表 彰 式 10:00~12:00 ビューホテル 美 術 展 10:00~18:00 アトリオン 地 下 イ ベント 広 場 審 査 員 によるギャラリートーク13:30~14: 30 彫 刻 審 査 員 山 本 眞 輔 : 彫 刻 家 日 本 芸 術 院 会 員 日 展 常 務 理 事 中 垣 克 久 : 彫 刻 家 飛 騨 市 美 術 館 名 誉 館 長 現 代 日 本 彫 刻 作 家 連 盟 会 長 北 郷 悟 : 彫 刻 家 東 京 芸 術 大 学 教 授 新 制 作 協 会 会 員 10 月 5 日 ~10 月 12 日 美 術 展 10:00~18:00 10 月 13 日 ( 月 ) 美 術 展 10:00~15:00 終 了 作 品 搬 出 15:00~19:00 展 覧 会 出 品 数 公 募 部 門 : 出 品 総 数 1453 点 ( 日 本 画 水 墨 画 105 洋 画 206 彫 刻 19 書 434 写 真 580) 招 待 出 品 : 出 品 数 75 点 ( 日 本 画 7 水 墨 画 7 洋 画 11 彫 刻 13 工 芸 13 写 真 12) 図 2 作 品 搬 入 設 置 風 景 展 覧 会 入 場 者 数 彫 刻 部 門 入 場 者 数 10 月 4 日 ( 土 ):462 人 10 月 5 日 ( 日 ):490 人 10 月 6 日 ( 月 ):178 人 10 月 7 日 ( 火 ):272 人 10 月 8 日 ( 水 ):287 人 120

124 実 践 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 10 月 9 日 ( 木 ):199 人 10 月 10 日 ( 金 ):273 人 10 月 11 日 ( 土 ):401 人 10 月 12 日 ( 日 ):407 人 10 月 13 日 ( 月 ):282 人 合 計 :3251 人 ( 資 料 提 供 : 国 文 祭 秋 田 市 実 行 委 員 会 ) 図 3 図 4 審 査 員 によるギャラリートーク 彫 刻 部 門 会 場 風 景 6 おわりに 国 文 祭 秋 田 市 実 行 委 員 会 が 中 心 となって 開 催 した 美 術 展 の 中 に 今 東 北 で 風 土 への 想 い をサブテーマに 東 北 在 住 作 家 作 品 展 を 開 催 したことは 大 変 に 大 きな 意 義 があっ たと 思 う これまでの 国 文 祭 の 美 術 展 の 流 れ を 汲 みつつ 現 在 の 東 北 在 住 の 作 家 が 今 ど のように 考 え 制 作 に 取 り 組 んでいるのか 一 目 瞭 然 で 理 解 することができるからである 秋 田 の 地 での 開 催 でありながら 東 北 全 体 へ 目 を 向 けた 展 覧 会 であった 美 術 作 品 は 震 災 復 興 支 援 の 直 接 的 なラ イフラインにはならないかもしれないが 長 期 にわたる 復 興 への 取 り 組 みへの 精 神 的 な 応 援 支 えとして 存 在 して 行 くものであり ま た そうありたいと 願 い 制 作 する 作 家 も 多 い と 思 う より 積 極 的 な 取 り 組 みとしては 現 地 で 美 術 関 連 のワークショップなどを 開 き 直 接 的 に 被 災 地 に 向 き 合 うことであろうが こ のように 全 国 的 に 注 目 する 機 会 に 展 覧 会 を 開 催 することも 重 要 な 支 援 の 方 法 であると 思 う この 展 覧 会 のサブタイトル 今 東 北 への 想 い ~ 自 然 人 々 生 活 などあなたが 抱 く 風 土 への 想 いを 表 現 して 下 さい~ このテー マに 取 り 組 み 制 作 できたことは 私 にとって 2014 年 の 大 きな 成 果 であった 様 に 思 う 国 文 祭 という 全 国 規 模 の 大 きな 文 化 祭 が 秋 田 に 来 たことは 大 変 に 喜 ばしいことで 何 よりも 秋 田 県 に 在 住 し 制 作 している 私 達 が 自 分 たち 自 身 の 文 化 を 考 える 良 い 機 会 になったと 感 じ ている 私 自 身 としては 日 頃 から 制 作 して 来 た 研 究 テーマでもある 源 流 シリーズ を 極 めて 121

125 今 東 北 で 風 土 への 想 い をテーマに 制 作 して 皆 川 嘉 博 いくだけではあるが やはり 国 文 祭 よって 県 内 外 の 多 くの 来 場 者 に 作 品 を 見 ていただける ということは 大 変 に 恵 まれた 機 会 だった 私 自 身 もできるだけ 会 場 に 足 を 運 び 鑑 賞 者 に 説 明 した 彫 刻 会 場 には 非 常 に 好 奇 心 に 溢 れ た 方 々が 多 く 来 場 し 質 問 されていた 秋 田 で 国 文 祭 が 開 かれ 秋 田 を 全 国 の 方 々 が 注 目 し 訪 れてくださったことは 大 変 に 喜 ばしいことであったが 秋 田 に 生 き 美 術 作 品 を 制 作 している 私 達 に 己 自 身 にたいする 制 作 意 義 について 改 めて 考 える 好 機 になった ことは 間 違 いない そしてまた 文 化 関 係 各 所 の 今 後 の 取 り 組 みに 期 待 したい 東 日 本 大 震 災 後 東 北 ではじめて 開 催 され た 国 文 祭 は 東 北 に 生 きる 人 々の 文 化 の 誇 り を 取 り 戻 した 機 会 でもあったのではないだろ うか これが 東 北 に 留 まらず 日 本 全 体 に 浸 透 していくことを 願 っている 図 ( 写 真 ) 1 展 覧 会 図 録 より 引 用 2 執 筆 者 撮 影 3 執 筆 者 撮 影 4 執 筆 者 撮 影 参 考 文 献 1 第 29 回 国 民 文 化 祭 あきた2014 美 術 展 日 本 画 ( 水 墨 画 含 む) 洋 画 彫 刻 工 芸 書 写 真 図 録 122

126 実 践 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 ものづくりデザイン 専 攻 教 員 展 実 践 報 告 第 2 回 湧 水 地 点 おふくわけ の 取 り 組 み ものづくりデザイン 専 攻 本 稿 は ものづくりデザイン 専 攻 が 取 り 組 む 教 育 研 究 領 域 である 使 用 感 の 充 足 生 活 耐 久 財 地 域 文 化 の 掘 り 起 こしと 再 解 釈 をキーワードにした ものづくりデザイン 専 攻 教 員 と 助 手 による 展 覧 会 の 実 践 報 告 である この 展 覧 会 のコンセプトである 湧 水 地 点 とは 秋 田 という 地 域 から 湧 き 出 す 固 有 の 文 化 的 資 源 や 自 然 風 土 を 制 作 の 基 盤 とし それらを 再 解 釈 して 新 たな 価 値 を 持 った 生 活 耐 久 財 を 提 案 するという 試 みである この 教 員 展 をものづくりデザイン 専 攻 としての 成 果 発 表 研 究 実 績 と 位 置 づけ 今 後 の 展 望 も 含 めてその 概 要 や 個 々の 視 点 を 紹 介 したい キーワード: 使 用 感 の 充 足 生 活 耐 久 財 地 域 文 化 PracticereportontheexhibitionofCreativeManufacturingDesignmajor. Approachto"ofukuwake"thesecondexhibition"yuusuichiten" CREATIVEMANUFACTURINGDESIGN Keywords:Easeofuse,Durablegoodsforlife,Chikibunka 1 本 研 究 の 目 的 と 意 義 ( 使 用 感 の 充 足 を 造 形 化 するために) 本 研 究 はものづくりデザイン 専 攻 が 目 指 す 使 用 感 の 充 足 という 本 来 ものづくりに 備 わるべき 価 値 を 造 形 化 する 事 が 目 的 であり その 方 法 論 として 湧 水 地 点 というコンセ プトを 立 て プロダクトデザインの 視 点 ( 計 画 生 産 流 通 )とガラスや 金 属 等 各 種 素 材 と 技 法 を 両 輪 として ものづくりを 実 践 する ことを 目 指 している 湧 水 地 点 とは 本 専 攻 が 掲 げる 新 しい ものづくりのありかたを 象 徴 する 言 葉 であり 研 究 制 作 において 柱 となるコンセプトである このコンセプトは 近 代 デザイン 思 想 による 均 質 化 された 工 業 製 品 が 及 ぼす 功 罪 を 踏 まえ 本 専 攻 が 立 脚 する 秋 田 という 土 地 の 文 化 自 然 風 土 をベースに 地 域 文 化 の 掘 り 起 こしと 再 解 釈 を 行 い 人 と 人 人 と 自 然 とが 豊 かな 関 係 を 築 く 一 助 となるものづくりを 目 指 すこ とである また 湧 水 とは 大 地 から 沸 き 出 す 多 様 な 養 分 やミネラルを 含 んだ 水 であり こ の 自 然 の 恵 みであるミネラルウォーターを 私 達 が 目 指 す 生 活 耐 久 財 と 捉 え 均 質 な 水 道 水 を 近 代 デザイン 思 想 による 工 業 製 品 と 例 え 湧 水 が 出 る 地 点 として 秋 田 から 新 し いものづくりを 発 信 する 意 味 を 込 め 湧 水 地 点 というコンセプトを 掲 げた 2 本 研 究 の 特 色 と 展 覧 会 のテーマ 本 研 究 の 特 色 は 各 教 員 の 専 門 性 を 活 かし 使 用 感 の 充 足 の 造 形 化 という 目 的 に 軸 足 123

127 ものづくりデザイン 専 攻 教 員 展 実 践 報 告 第 2 回 湧 水 地 点 おふくわけ の 取 り 組 み ものづくりデザイン 専 攻 をおいて 制 作 していることである これまで の 素 材 間 の 縦 割 りや 伝 統 工 芸 やクラフトと いったジャンル 分 けを 超 えたところで 新 し い 視 点 や 考 え 方 を 共 有 するために 試 行 錯 誤 を 重 ねている 今 回 の 教 員 展 のテーマである おふくわけ という 言 葉 は いただきものなどを 分 け 与 え るという 意 味 があり 一 般 的 には 同 義 語 であ る お 裾 分 け が 広 く 使 われている この おふくわけ という 言 葉 には 福 を 分 けあた える 福 をもたらすというニュアンスが 含 まれ そこから 楽 しみや 喜 びを 共 有 し さらにそ の 時 間 や 相 手 を 想 像 する という 意 味 を 見 い だした そして 今 回 の 展 覧 会 では 新 たな 試 みとして 共 同 制 作 を 行 い 重 ねの 器 重 箱 を 各 素 材 や 技 法 思 考 のコラボレーションを 織 り 込 みながら 制 作 した 3 作 品 展 示 構 成 について 第 2 回 湧 水 地 点 おふくわけ では 大 き く 分 けて3 分 野 の 展 示 構 成 となっている 展 覧 会 のテーマである おふくわけ の 取 り 組 みでは かつては 一 人 が 全 ての 物 を 揃 えなく ても( 元 々 集 団 生 活 がそうであったように) ものや 場 や 時 間 を 共 有 するという 豊 かなコミュ ニケーションが 存 在 したが 現 代 生 活 におい ては 希 薄 であり この 重 ねの 器 重 箱 を 通 し て 豊 かなコミュニケーションとは 何 かを 再 提 案 している また 実 際 作 品 に 触 れてもらう 事 で 素 材 感 や 作 者 のメッセージを 来 場 者 に 体 感 していただいた コラボレーション 作 品 は 素 材 や 技 法 や 思 考 を 掛 け 合 わせ 新 たな 展 開 や 可 能 性 を 探 る 試 みである ガラス 木 工 金 属 染 色 の 酒 器 セットの 提 案 や ガラスと 木 工 の 作 品 漆 と 染 色 の 日 傘 の 提 案 等 である 掛 け 合 わせる 事 でそれぞれの 特 徴 が 引 き 出 され 素 材 の 対 比 が 緊 張 感 を 生 み 出 している 最 後 に 湧 水 地 点 という 基 本 コンセプトを 基 にした 個 人 作 品 である 作 者 が 個 別 に 制 作 テー マを 導 き 出 し 造 形 化 する 試 みである 作 者 自 身 のテーマを 選 び 取 る 視 点 や 展 開 に 幅 があり 展 覧 会 の 魅 力 になっている 4.1 作 品 解 説 ( 重 ねの 器 重 箱 作 品 ) 熊 谷 晃 [ 漆 工 ] 秋 田 の 春 変 塗 蒔 絵 螺 鈿 重 箱 ( 蒔 絵 螺 鈿 変 塗 り) この 三 段 重 箱 は 秋 田 の 春 を 待 ち 望 む 気 持 ち と 春 に 一 瞬 の 輝 きを 見 せる 野 の 草 花 の 営 み を 表 現 している モチーフはカタクリ エン ゴサク 菊 咲 きイチゲ シダを 用 い 箱 の 重 なりにスリットを 入 れる 事 で 軽 やかさを 表 現 した 蓋 には 伝 統 技 法 の 変 わり 塗 りを 再 構 成 し 仕 掛 け 漆 を 福 寿 草 の 葉 型 の 仕 掛 け 篦 で 転 写 し 金 箔 を 貼 った 後 に 軽 く 研 ぎだし 透 け の 良 い 国 産 素 黒 目 漆 で 塗 り 込 んで 仕 上 げた ベッコウのような 飴 色 の 層 の 下 に 福 寿 草 の 葉 の 円 形 文 様 が 浮 かび 上 がる 仕 組 みは 生 命 の 循 環 のイメージを 伝 統 技 法 の 再 構 成 で 表 現 し ている またエンゴサクとシダは 一 度 研 ぎ 出 し 蒔 絵 を 完 成 させてから 透 き 漆 を 塗 り 込 み 上 面 の 飴 色 の 層 と 色 調 を 合 わせ カタクリと 菊 咲 きイチゲをクローズアップさせている 森 香 織 [ 染 色 ] 花 箱 祝 包 ( 綿 絹 / 三 浦 絞 り) 花 箱 祝 包 は 変 塗 蒔 絵 螺 鈿 重 箱 のための 重 箱 包 みである 表 地 には 持 ち 運 ぶ 際 に 十 分 な 耐 久 性 を 考 慮 し 比 較 的 丈 夫 な 綿 布 を 使 用 した また 裏 地 は 直 接 重 箱 に 触 れる 部 分 であり デ リケートな 漆 という 素 材 を 包 むことから 絹 布 124

128 実 践 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 を 使 用 した 染 色 は 表 地 に 三 浦 絞 りで 文 様 を 施 している 三 浦 絞 りは 秋 田 県 平 鹿 郡 平 鹿 町 浅 舞 で 古 く から 行 われていた 浅 舞 絞 の 技 法 の 中 の 一 つで 広 く 面 を 埋 め 尽 くす 文 様 として 使 われた 浅 舞 絞 りやその 他 の 絞 り 染 めには 藍 染 が 用 いら れることが 多 いが 今 回 は 建 染 染 料 のスレン 染 料 を 用 いた この 染 料 は 藍 染 と 同 じく 浸 染 (あらかじめ 染 料 を 溶 かした 液 体 に 布 を 浸 け 染 色 する 方 法 )で 染 色 し 空 気 酸 化 で 発 色 する 漆 工 芸 の 技 法 の 一 つである 溜 め 塗 りをイメー ジし 1 回 目 に 朱 色 の 染 液 で 染 色 し2 回 目 に 黒 色 の 染 液 で 重 ねて 染 めた これにより 溜 め 塗 りの 特 徴 である 漆 の 塗 膜 から 透 けて 見 え る 朱 色 を 表 現 したいと 考 えた 裏 地 は 酸 性 染 料 を 用 い 朱 色 一 色 で 染 色 し 溜 め 塗 りのイメー ジに 調 和 させた め 縦 方 向 の 木 目 にすると 自 然 に 見 える 箱 の 形 を 作 る 際 はじめに 水 平 垂 直 の 正 確 な 直 方 体 に 材 料 を 切 り 揃 え その 次 に 内 部 外 部 の 曲 面 の 形 を 削 り 出 す 最 終 段 階 では 四 面 ど こでも 上 下 に 合 わさるよう 鉋 を 使 って 調 整 する 鉋 という 道 具 は 木 材 の 表 面 をきれいに するための 道 具 と 思 われがちだが 作 者 は 形 をつくる 道 具 と 考 えている 他 にも 鑿 や 鋸 彫 刻 刀 などをたくさん 使 い 手 道 具 の 大 切 さを 再 認 識 させられる 作 品 であった 佐 々 木 響 子 [プロダクトデザイン] 落 合 里 麻 [ 木 工 ] 重 ねの 箱 (ウォールナット 染 料 銀 /オイル 仕 上 げ) この 作 品 は 二 段 重 ねの 箱 になっている 四 方 に 膨 らむ 形 の 箱 に 上 部 をへこませた 蓋 が 載 る 毎 日 通 る 秋 田 大 橋 は 風 が 強 く 近 くに 生 える 草 花 がいつも 揺 れている 何 気 ないことでは あるが 印 象 に 残 っているこの 光 景 を 箱 のデ ザインに 取 り 入 れることにした 側 面 の 彫 り 模 様 と 散 りばめた 銀 の 玉 は 草 花 の 種 や 綿 毛 が 空 中 に 舞 い 風 で 水 滴 が 散 ってゆく 様 子 を 蓋 の 形 は 風 がふっと 抜 けていく 感 じを 表 現 し ている この 箱 の 特 徴 の 一 つは 木 目 方 向 を 縦 に 使 っ ていることである 木 目 方 向 を 横 に 木 取 りを するのが 一 般 的 ではあるが この 箱 の 場 合 は 縦 長 の 形 状 でそれぞれの 板 には 厚 みがあるた +の 重 箱 ( 紙 / 貼 箱 ) 今 回 重 箱 を 制 作 するにあたり 重 箱 にま つわる 所 作 について 考 えた 重 箱 とはその 文 字 のごとく 重 なる 箱 であり 正 月 のおせち 料 理 などを 詰 める 場 合 にはどの 段 に 詰 めるかで 意 味 合 いも 変 わるが 今 回 は 重 ねるという 行 為 を 重 要 視 することとした 自 身 の 制 作 で 箱 の 形 を 用 いる 事 が 多 いのだが 作 品 としての 箱 を 制 作 する 時 には 箱 の 性 質 である 開 閉 の 動 作 や 所 作 を 人 の 行 為 と 重 ね 合 わせて 制 作 して いる 重 箱 は 一 段 ずつ 開 けてゆくことで 中 身 が 現 れ 一 段 ずつ 中 身 をしまう 事 で 閉 じられ てゆく 今 回 は 十 段 の 箱 を 積 み 重 ねると + (プラス) という 形 が 浮 かび 上 がるように 制 作 した 箱 の 一 段 一 段 は + の 欠 片 と 捉 え ている 全 てを 積 み 重 ねることでひとつの 作 品 として 成 り 立 つ ひとつの 事 を 成 り 立 たせ る 為 に 小 さな 欠 片 を 積 み 上 げていく 行 為 は 人 が 生 活 していく 上 では 付 き 物 である 紙 という 素 材 を 使 うことについては その 軽 さに 魅 力 を 感 じる 箱 の 角 を 丸 めないシャー プなシルエットからは 堅 い 印 象 を 受 けるが 実 際 手 に 取 ると 紙 の 質 感 とその 軽 さを 実 感 す 125

129 ものづくりデザイン 専 攻 教 員 展 実 践 報 告 第 2 回 湧 水 地 点 おふくわけ の 取 り 組 み ものづくりデザイン 専 攻 る 箱 を 持 った 時 の 重 みは 箱 そのものの 重 さ ではなく 中 身 が 決 めて 欲 しいという 想 いを 込 めている 4.2 コラボレーション 作 品 森 香 織 [ 染 色 ] 熊 谷 晃 [ 漆 工 ] 友 禅 染 蒔 絵 日 傘 ( 大 桝 立 枠 ) 浦 中 廣 太 郎 [ 彫 金 ] ( 綿 / 友 禅 染 / 蒔 絵 溜 塗 り) ひと 時 (1 2) ( 真 鍮 銅 銀 / 鍛 金 ) 素 材 を 真 鍮 銅 銀 粉 とし ロウ 付 け 鍛 金 技 法 を 中 心 に 制 作 している 少 し 斜 めになっている 小 さな 三 段 の 重 箱 斜 めにしているのは 箱 を 開 ける 行 為 を 容 易 にし 中 に 入 っている 食 べ 物 を 順 序 良 く 見 せ るための 工 夫 である 金 槌 で 出 来 る 槌 目 を 生 かし 光 沢 を 持 たせる 事 で 光 を 反 射 させ 模 様 とした どこかに 出 かけ 景 色 や 会 話 を 楽 しむ 時 に 菓 子 等 を 入 れ 楽 しい 時 間 を 演 出 するた めの 重 箱 である 井 本 真 紀 [ガラス] zipper/bolt,nut (ガラス/キルンワーク) 重 ねる 器 の 場 合 基 本 的 に 上 段 の 底 が 下 段 の 蓋 になるが そこに 留 める 開 ける 閉 め るなど もう 一 段 階 の 納 め 方 を 付 加 してみる 柔 らかな 色 味 を 選 び ジッパーやボルトなど 通 常 ガラスには 不 向 きな 道 具 をあしらい ガ ラスを 何 か 柔 らかいものとして 見 せようと 試 みたのかもしれない 男 性 用 の 日 傘 として 制 作 した 秋 田 県 鹿 角 市 花 輪 では 古 くから 紫 根 茜 染 で 絞 り 染 が 行 われていた その 中 で 使 われた 代 表 的 な 柄 で ある 大 桝 絞 り と 立 枠 絞 り を 参 考 とし た 大 桝 絞 り は 桝 が 穀 物 や 金 銭 をはか る 道 具 であったことから 豊 かさや 富 の 象 徴 を 表 す 文 様 として 用 いられていた 立 枠 絞 り は 立 涌 絞 り とも 言 われ 秋 田 の 豊 富 で 清 らかな 湧 き 水 が 水 底 から 湧 き 上 がる 様 子 を 表 現 した 文 様 である これら 絞 り 染 めの 文 様 は 本 来 藍 染 などの 浸 染 で 染 め 出 される 今 回 は 傘 の 形 状 や 絞 り 染 めの 持 つ 特 徴 など を 考 慮 し 引 き 染 での 染 色 とし 糊 防 染 である 本 友 禅 染 での 表 現 を 試 みた しかし 絞 り 染 め の 特 徴 である 文 様 際 にできるにじみは 糊 防 染 の 技 法 では 起 こらない 現 象 である 独 特 の にじみに 近 づけるため たたき 糊 等 を 使 いに じみを 表 現 した 素 材 は 落 ち 着 いた 色 合 いに なる 綿 布 を 使 用 し 直 接 染 料 で 染 色 している 柄 は 黒 漆 で 塗 り 重 ね 厚 みを 付 けた 後 銀 研 ぎ 出 し 蒔 絵 で 大 桝 文 様 と 立 涌 文 様 をそれぞれ 描 き 出 している 蒔 絵 が 完 成 した 後 その 上 から 透 き 漆 を 塗 り 込 む 事 で 飴 色 の 漆 塗 膜 の 下 に 文 様 を 浮 かび 上 がらせている 塗 り 立 て 仕 上 げにしたのは 使 い 込 むほどに 手 摩 れに より 艶 が 増 し 経 年 変 化 により 漆 の 塗 膜 が 透 け 文 様 が 明 るく 浮 かびあがる 事 を 想 定 して いるからである 126

130 実 践 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 山 岡 惇 [ 木 工 ] 小 牟 禮 尊 人 [ガラス] 友 禅 染 蒔 絵 日 傘 ( 変 縞 紋 ) 型 染 蒔 絵 日 傘 ( 七 宝 紋 ) ( 麻 / 友 禅 染 型 染 め/ 蒔 絵 溜 塗 り) 秋 の 雨 上 がり ( 神 代 杉 朴 チーク 黒 檀 /ガラス) 女 性 用 の 日 傘 として 制 作 した 変 縞 紋 は 手 描 き 友 禅 染 の 技 法 を 用 いた この 技 法 は 通 常 糸 目 と 呼 ばれる 細 く 均 一 な 糊 の 線 を 布 の 上 に 置 く( 引 く)ことで 色 と 色 を 染 め 分 けて 様 々 な 模 様 を 表 現 する 今 回 はあえて 太 細 のある 不 揃 いな 線 を 置 き それ 自 体 を 文 様 とする 表 現 を 用 いて 装 飾 的 効 果 をねらった 1 回 目 の 染 色 では 朱 色 一 色 で 引 き 染 を 行 い その 後 糊 を 置 き 再 び 黒 色 一 色 で 染 めている これは 漆 工 芸 の 技 法 の 一 つである 溜 め 塗 りをイメー ジしたものである 素 材 には 発 色 の 良 い 麻 布 を 使 用 し 直 接 染 料 で 染 色 した 型 染 蒔 絵 日 傘 は 七 宝 文 様 をモチーフに 大 小 の 七 宝 柄 を 合 わせた 文 様 とした 七 宝 文 様 は 円 満 や 調 和 の 吉 祥 文 として 知 られている 終 わりなく 繋 げていくことが 出 来 る 文 様 であ ることから 良 きことが おふわけ により 周 囲 に 広 がっていくイメージを 表 現 した 染 色 技 法 は 型 染 を 用 い 防 染 糊 に 染 料 を 加 えた 色 糊 を 使 い 二 色 に 染 め 分 けた 防 染 糊 の 場 合 型 付 け( 糊 置 き)のあとに 地 入 れを 行 う が 今 回 は 先 に 地 入 れし 型 付 けのあと 地 色 を 引 き 染 で 行 った 素 材 には 発 色 の 良 い 麻 布 を 使 用 し 直 接 染 料 で 染 色 している 柄 は 基 本 的 に 男 性 用 と 同 じ 工 程 であるが 黒 漆 の 変 わりに 弁 柄 漆 を 塗 り 重 ね 銀 研 ぎ 出 し 蒔 絵 で 変 縞 紋 や 七 宝 紋 を 描 き その 上 から 透 漆 を 塗 り 込 む 事 で 文 様 を 浮 かび 上 がらせて いる 使 い 込 むほどに 艶 が 増 し 経 年 変 化 に より 弁 柄 の 発 色 が 明 るくなる 事 を 想 定 した 冬 のある 朝 ( 栓 朴 チーク 黒 檀 /ガラス) 普 段 何 気 なく 見 ている 風 景 大 学 の 実 習 棟 の 外 に 立 つ 銀 杏 の 木 落 ち 葉 の 絨 毯 初 氷 そして 雪 化 粧 秋 から 冬 にかけての 美 しい 変 化 本 作 品 は 秋 田 の 秋 から 冬 へと 季 節 が 変 わっ ていく 一 場 面 を 水 に 落 ちた 銀 杏 の 葉 と 水 面 に 広 がる 波 紋 そして 水 に 薄 く 張 った 氷 で 表 現 している 制 作 にあたっては 木 材 の 木 目 や 色 そ して ガラス の 透 明 感 や 光 を 通 して 落 ちる 影 など それぞれの 素 材 が 持 つ 特 徴 を 大 切 に して 地 面 銀 杏 の 葉 水 面 波 紋 薄 氷 を 制 作 し 構 成 している かたちづくるにあたって 木 材 は 環 境 の 変 化 で 反 りが 起 こることが 想 定 されることか ら 地 面 にあたる 木 の 部 分 に 木 片 を 配 置 し その 上 に 水 面 にあたるガラスの 部 分 をのせる 方 法 をとっている 普 段 生 活 している 私 達 の 足 元 の 小 さな 世 界 に 目 を 向 けてみることから も 秋 田 の 魅 力 を 再 発 見 するきっかけになる のではないだろうか 127

131 ものづくりデザイン 専 攻 教 員 展 実 践 報 告 第 2 回 湧 水 地 点 おふくわけ の 取 り 組 み ものづくりデザイン 専 攻 森 香 織 [ 染 色 ] 井 本 真 紀 [ガラス] 浦 中 廣 太 郎 [ 彫 金 ] 落 合 里 麻 [ 木 工 ] 酒 器 包 ( 綿 絹 / 型 染 め 三 浦 絞 り) 金 属 木 材 ガラスの3 素 材 で 作 られた 酒 器 を 包 む 酒 器 包 を 制 作 した それぞれの 素 材 の 特 性 を 踏 まえ 組 み 合 わせることにより 新 たな 価 値 を 見 出 そうと 試 みた 作 品 群 である 酒 器 包 を 制 作 するにあたり 酒 器 とそれを 包 む 物 この 二 つを 合 わせての 一 つの 表 現 とな るよう 意 識 した 表 地 は 全 て 共 通 したものとして 綿 布 を 用 い 三 浦 絞 りで 染 色 した 三 浦 絞 りは 秋 田 県 平 鹿 郡 平 鹿 町 浅 舞 で 古 くから 行 われていた 浅 舞 絞 の 技 法 の 一 つであり 前 出 の 花 箱 祝 包 と 同 じ 染 色 方 法 である 花 箱 祝 包 では 濃 色 で 染 色 し 絞 りの 文 様 をはっきりと 表 現 したが 酒 器 包 では 外 側 ( 表 地 )と 内 側 ( 裏 地 )の 印 象 に 変 化 をつけるためごく 淡 い 色 で 染 色 した 淡 色 での 染 色 は 浸 染 時 間 が 短 く 絞 りの 奥 まで 染 料 が 入 りづらい そのため 同 じ 絞 り 方 であっ ても 文 様 の 様 子 は 異 なるという 効 果 がある 今 回 の 場 合 通 常 は 六 角 形 の 文 様 となるとこ ろが 星 型 に 近 い 文 様 となった 裏 地 や 形 状 に 関 しては 三 種 類 の 酒 器 それぞ れについて 以 下 に 述 べる 酒 器 1 ( 銅 錫 / 鍛 金 ) 酒 器 2 (ガラス/キルンワーク) 酒 器 3 (メープル/ 胡 桃 油 仕 上 げ) 酒 器 1のための 酒 器 包 は 仕 覆 の 御 物 袋 を 参 考 に 形 状 をデザインした 御 物 袋 は 器 が 包 まれている 時 には 表 地 しか 見 えないが 開 く と 包 みがほぼ 平 らになり 裏 地 の 文 様 のみが 目 に 入 る 構 造 である 酒 器 と 包 み この 二 つを 合 わせての 一 つの 表 現 とするためには 裏 地 の 文 様 と 酒 器 の 関 係 が 重 要 であり デザインを 考 える 上 でのポイントとなる このことを 踏 まえ 金 属 工 芸 で 使 われる 技 法 の 一 つである 魚 子 の 小 さな 丸 紋 をモチーフとし 酒 器 の 側 面 から 包 みへと 一 続 きになり 放 射 状 に 広 がっ ていくイメージを 型 染 で 表 現 した ( 森 ) 銅 錫 を 素 材 にして 鍛 金 技 法 により 酒 器 を 制 作 した 魚 子 模 様 と 降 り 積 もる 雪 のイメー ジに 合 わせ 模 様 をデザインし 銅 の 表 面 に 凹 みを 作 りそこに 錫 を 流 し 込 む 事 で 雪 の 模 様 を 表 現 した 銅 部 分 を 硫 化 着 色 により 黒 くする ことで 錫 の 色 とのコントラストを 強 調 し 形 は 使 いやすく 扱 いやすいシンプルな 形 態 と した ( 浦 中 ) 酒 器 2のための 酒 器 包 は 酒 器 ( 金 属 )と 同 様 の 形 状 とした 裏 地 の 文 様 は 蜘 蛛 の 巣 をモ チーフとし 巣 が 朝 露 に 輝 く 様 をイメージし 型 染 で 表 現 している ( 森 ) 128

132 実 践 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 ガラスの 酒 器 は 白 の 中 に 透 明 なガラスの 蜘 蛛 を 浮 かべ 白 と 透 明 のコントラストを 意 識 して 制 作 した 酒 器 包 みが 朝 露 をまとう 蜘 蛛 の 巣 のイメージであることを 踏 まえ 蜘 蛛 をモチーフとしながら 清 白 な 酒 器 を 目 指 し た ( 井 本 ) 酒 器 3のための 酒 器 包 は 二 つの 酒 器 を 包 む ためのものとし 形 状 を 風 呂 敷 で 二 本 の 瓶 が 包 まれている 状 態 を 参 考 に 制 作 した お 酒 を 酌 み 交 わすことは 人 と 人 との 距 離 を 近 づける 二 つの 酒 器 が 心 と 心 を 繋 げるツールになるこ とを 願 うと 共 に 人 の 心 は 外 側 からは 伺 うこ とができないこと 表 現 するため ハートを 丸 文 様 にデザインしたものを 型 染 で 包 みの 内 側 に 染 色 した ( 森 ) 酒 器 の 材 料 にはメープルを 選 び 旋 盤 を 使 っ て 制 作 した 木 はガラスや 陶 器 と 比 べて 比 重 が 軽 いため 同 じように 全 体 を 薄 く 作 ってし まうと 何 か 軽 くて 頼 りない 印 象 になる 安 心 感 のある 重 さの 器 でお 酒 を 楽 しんでもらいた いと 思 い 底 の 方 には 厚 みを 残 している 緻 密 な 木 理 を 活 かして 口 の 部 分 は 薄 く 挽 き 縁 は 鑿 で 自 然 な 形 に 削 った この 酒 器 に 用 いた メープルの 木 は 特 に 硬 く 何 度 も 磨 かなくて も 自 然 な 艶 が 出 る 使 い 続 けるともっとよい 艶 が 出 てくるのだろうか 最 後 に 胡 桃 油 を 染 み 込 ませ 飲 み 物 を 入 れても 安 全 な 仕 上 げを 施 した ( 落 合 ) 4.3 湧 水 地 点 作 品 小 牟 禮 尊 人 [ガラス] 青 の 軌 跡 (ガラス/キルンキャスト) コバルトシリーズ (ガラス/ 吹 きガラス) 人 はなぜ 藍 色 に 心 引 かれるのか 僕 だけな のか? 日 本 人 の 民 族 としての 心 に 訴 えかける 色 ではないかと 思 う ガラスでは 藍 色 をコバルトという 金 属 で 発 色 させる それがコバルトブルーと 呼 ばれる ゆえんである その 溶 かす 量 を 調 整 すると ごく 薄 い 藍 から 濃 い 藍 まで 作 り 出 すことがで きるのである しかもガラスに 溶 かされたコ バルトブルーが 特 殊 なのは 一 定 の 濃 さを 過 ぎると えも 言 われぬ 深 い 赤 紫 に 変 る その 不 思 議 な 光 が 気 になるのだ その 色 の 濃 さを 操 ってその 紫 を 再 現 したい 今 回 の 作 品 はそんな 思 いから 生 まれた 朝 の 凛 とした 光 夜 の 漆 黒 春 の 夜 桜 夏 の 朝 霧 秋 の 夕 暮 れ 冬 の 雪 陰 色 々な 場 面 に 藍 色 は 存 在 している 日 々の 生 活 の 中 で 使 う 食 器 や 窓 辺 を 彩 る 明 かり 存 在 感 の あるオブジェなど それぞれの 作 品 の 中 に 藍 色 が 生 み 出 す 風 景 を 感 じてもらえたら 嬉 しい 129

133 ものづくりデザイン 専 攻 教 員 展 実 践 報 告 第 2 回 湧 水 地 点 おふくわけ の 取 り 組 み ものづくりデザイン 専 攻 今 中 隆 介 [プロダクトデザイン] チール 板 を 素 材 として 利 用 することでスタッ キング 性 能 はショッピングカートのごとく 非 常 に 高 く また 重 量 もフルサイズのアームチェ アとしては 軽 量 級 の4kgを 切 ることに 成 功 した かさねの 椅 子 (スチール 板 溶 接 /ウレタン 塗 装 仕 上 げ) このアイディアは1999 年 の 夏 のある 日 御 茶 ノ 水 のスターバックスでコーヒーを 注 文 し ている 時 にふと 思 いついた 紙 コップの 重 な りにインスピレーションを 得 たのか スタッキングチェア(= 積 み 重 なる 椅 子 ) は 人 類 が 椅 子 を 作 り 続 けてきた 歴 史 上 で ありとあらゆる 試 行 錯 誤 が 繰 り 返 され 様 々な 仕 様 のものが 存 在 する 素 材 は 無 垢 の 木 材 成 型 合 板 スチールパイプ 合 成 樹 脂 カー ボンファイバーなどの 最 先 端 素 材 も 含 め 歴 史 と 共 に 多 種 多 様 な 展 開 が 見 受 けられ またそ れらの 構 造 に 目 を 向 けることで 設 計 者 の 類 い 稀 なる 工 夫 を 多 く 発 見 することができる 1999 年 に 製 作 したペーパーモデルから10 数 年 を 経 て 過 去 から 現 在 進 行 中 のスタッキン グチェアの 歴 史 を 俯 瞰 的 に 再 考 し 観 察 するこ とによって ただ 収 納 のためのスタッキング を 超 えた 美 しく 重 なる という 付 加 価 値 へ の 挑 戦 を 試 みることにした 構 造 を 完 成 させ るにあたり 日 本 の おりがみ が 持 つ 伝 統 的 思 考 を 強 く 意 識 した 紙 を 折 る 曲 げ る ことで 得 ることのできる 強 度 は 紙 に 限 らず あらゆる 薄 い 素 材 の 基 本 的 構 造 解 釈 となる 僅 か1.6mmのスチール 板 で 構 成 さ れるフォルムは 接 合 部 を 全 て L 字 型 断 面 で 繋 ぐことで 全 体 強 度 を 得 た( 紙 を 折 る) また 座 面 の 緩 やかなカーブ 断 面 は 荷 重 に 対 す る 強 度 を 確 保 している( 紙 を 曲 げる) 空 間 上 すべての3 次 元 方 向 に 向 けてテーパー (= 抜 け 勾 配 )を 設 定 することで 本 体 が 床 から 浮 くことの 無 い 水 平 方 向 への 完 全 な 重 なり を 可 能 にした 紙 のように 薄 いス BARA-stonewall ( 天 然 木 / 無 塗 装 仕 上 げ) 2010 年 に 発 表 したシックスインチ ジャパ ンの 新 作 ファニチャー BARA シリーズ 柱 と アーチ に 続 く 第 三 弾 石 垣 をテー マとしたファニチャー 提 案 をオリジナルとし て その 設 計 をモックアップレベルのサイズ に 縮 小 することで 遊 具 ( 積 み 木 )としての 展 開 を 試 みた 2013 年 開 催 の 第 一 回 湧 水 地 点 では ものづ くりデザイン 専 攻 の 助 手 で 木 工 作 家 の 落 合 里 麻 の 手 によって 天 然 の 木 (チーク)の 塊 から 鉋 と 鑿 によって 一 つ 一 つ 削 り 出 された 完 全 な る 単 一 品 として ハンドメイドの 遊 具 を 製 作 した 今 回 は 一 般 販 売 モデルを 目 指 し 山 梨 県 在 住 の 木 工 作 家 星 匠 に 製 作 を 依 頼 し ロー コスト 化 を 模 索 しつつ 桜 と 胡 桃 の 無 垢 材 から それぞれロット 数 5を 製 作 した 日 本 の 石 垣 をイメージした10 個 の 異 なる 形 状 のブロッ クは 自 由 な 組 合 せによってさまざまな 表 情 を 創 り 出 す バラバラにして 元 の 石 垣 に 戻 す パズルに 挑 戦 する 机 の 上 に 並 べて 枯 山 水 の 石 庭 をイメージする アーチを 組 んでみる 絶 妙 なバランスに 挑 戦 して 高 さを 競 ってみる 遊 具 のみならず 多 様 なジャンルにおいて 世 代 を 超 えて 大 切 にされるものには 必 ず 使 用 する 時 間 の 経 過 と 共 にストーリー(= 物 語 ) が 付 加 されていく 無 垢 の 天 然 木 から 一 つ 一 つハンドメイドで 丁 寧 に 削 り 出 された10 個 の 130

134 実 践 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 ブロックは 木 材 の 持 つ 自 然 な 優 しさに 触 れ ながら 遊 んでいくうちに 自 然 につく 手 垢 や 汚 れキズ 跡 で 時 間 と 共 に 記 憶 の 痕 跡 となっ て 刻 み 込 まれ 愛 着 が 湧 いてくるよう あえて 無 塗 装 で 仕 上 げた 安 藤 康 裕 [ 彫 金 ] 六 県 箸 置 き ( 銀 / 精 密 鋳 造 ) 虹 ( 銀 / 切 削 焼 き 付 け 塗 装 ) この 作 品 の 特 徴 は 愛 着 を 呼 び 起 こすために ジュエリーと 壁 面 装 飾 という 二 つの 機 能 を 持 たせたことにある ジュエリー 作 品 としては 210 個 の 蝶 の 形 態 をしたボタンカバーである 洋 服 のボタンに 留 めることで 装 いのポイント を 作 ることができる 壁 面 装 飾 としては H55 0mm W750mmの 矩 形 に210 個 のジュエリー 作 品 をパーツとして 配 置 した 半 立 体 作 品 である 秋 田 の 自 然 が 持 つ 果 てしない 生 命 の 繋 がりと 多 様 性 を 均 衡 のとれた 色 彩 グラデーション で 表 現 した 210 個 のジュエリー 作 品 は 個 別 に 購 入 することができる 購 入 者 が 気 に 入 っ たジュエリー 作 品 を 手 に 取 ることで 壁 面 作 品 には 空 白 が 生 まれ 全 体 の 繋 がりが 失 われる という 問 題 が 発 生 する この 問 題 が 購 入 者 に 通 常 の 購 入 とは 異 なる 記 憶 を 刻 む 効 果 を 期 待 している あるいは 購 入 希 望 者 が 上 記 の 問 題 を 意 識 しない 場 合 も 色 彩 グラデーションの 中 から 選 択 を 重 ね それぞれが 最 も 良 いと 感 じる1 個 を 確 定 する 体 験 により 作 品 へ の 愛 着 が 生 まれる 効 果 を 期 待 している 制 作 に 当 たり 新 しく 開 発 されたセラミック 塗 装 を 使 用 した この 技 術 は 着 色 と 強 い 塗 膜 を 施 すことができる この 技 術 と 中 間 混 合 の 原 理 を 応 用 することで 金 属 のジュエリーには 少 ない 鮮 やかな 色 彩 を 表 現 した 東 北 各 県 の 地 図 が 持 つシルエットをモチー フに 中 量 生 産 を 念 頭 にした 精 密 鋳 造 による 箸 置 きを 制 作 した 東 北 地 域 は 今 も 美 しく 豊 かな 自 然 が 存 在 し 近 代 化 以 前 の 懐 かしい 日 本 の 趣 が 感 じられる しかし 同 時 に 人 口 流 出 震 災 復 興 原 発 廃 炉 など 様 々な 問 題 も 抱 えている この 作 品 で は 食 事 という 人 間 の 存 在 に 不 可 欠 な 行 為 の 場 で 東 北 地 域 が 現 代 社 会 の 中 で 放 つ 意 味 を 語 り 使 用 者 が 地 域 と 作 品 へのより 強 い 愛 着 へ 至 ることを 目 指 した 原 型 に 必 要 な2 種 類 のパーツは 画 像 ソフトでデータを 制 作 し レー ザーカット 業 者 に 加 工 を 依 頼 した 出 来 上 がっ た 厚 さ1mmのパーツを 接 着 剤 により 集 積 し 原 型 を 制 作 その 後 ゴム 型 を 取 り 複 数 のワック ス 原 型 に 置 き 換 えた このように 得 たワック ス 原 型 を 鋳 造 することで 大 量 生 産 も 可 能 であ るが 手 作 業 による 丁 寧 な 仕 上 げを 行 なうこ とで 作 品 に 作 者 の 加 工 痕 跡 を 残 し 一 品 制 作 に 近 い 愛 着 を 使 用 者 に 感 じて 欲 しいため 中 量 生 産 にこだわった 計 画 当 初 は 多 くの 人 に 使 用 してもらうため に 地 金 のコストを 抑 え 真 鍮 での 鋳 造 を 予 定 し ていた しかし 展 示 品 は 銀 を 使 用 したため 高 価 なものとなってしまった これは 精 密 鋳 造 の 技 術 不 足 のため 925silverというより 扱 い 易 い 素 材 にしたためである 131

135 ものづくりデザイン 専 攻 教 員 展 実 践 報 告 第 2 回 湧 水 地 点 おふくわけ の 取 り 組 み ものづくりデザイン 専 攻 山 岡 惇 [ 木 工 ] 安 藤 郁 子 [ 陶 芸 ] S Car(+2) ( 杉 桧 紫 檀 チーク) その 土 地 が 育 む 素 材 として 木 材 がある これらは その 土 地 に 暮 らす 人 にとっては 普 段 の 生 活 の 中 で 建 物 や 道 具 などに 用 いられ 身 のまわりにあることはごく 自 然 なこととなっ ている 一 方 で 自 身 の 住 む 土 地 が 育 む 木 材 に ついてあらためて 目 をむけてみてみると 他 の 地 域 のものと 種 類 やその 特 徴 に 違 いがある ことに 気 がつく そこで 今 回 は 自 身 の 生 活 している 土 地 環 境 の 魅 力 を 木 材 の 特 徴 を 通 して 再 発 見 し その 良 さを 生 かし 制 作 す るということを 試 みた 作 品 は 秋 田 の 杉 の 特 徴 が 直 接 感 じられ るよう 見 て 楽 しく 手 に 触 れることのでき る 車 ( 玩 具 )を 制 作 した 真 っ 直 ぐに 通 った 木 目 でスピード 感 を そしてチークや 紫 檀 と いった 他 の 樹 種 と 組 み 合 わせることで その やわらかさや 色 などの 特 徴 がより 強 く 感 じら れるよう 工 夫 している また 仕 上 げは 杉 の 香 りも 感 じられるようにするため 無 塗 装 とし ている ここに いる ( 陶 土 / 手 捻 り) ハコ ( 陶 土 / 手 捻 り) 食 器 をはじめとする 大 方 の 生 活 に 必 要 な 日 用 品 は 機 械 で 大 量 生 産 されたもので 充 分 こ と 足 りると 言 えるだろう しかしながら 使 い 勝 手 のいい 合 理 的 な 日 用 品 という 価 値 観 か ら 視 点 を 少 しずらしたところにある 日 常 の 場 を 非 日 常 の 場 に 変 えてしまうちからのある もの に 現 代 社 会 においてわざわざ 人 の 手 でつくるものづくりの 重 要 な 存 在 意 義 があ ると 考 えている では 人 の 手 でつくる やきもの の 存 在 意 義 とは 何 か 私 は1 制 作 プロセスの 中 で 土 の 固 有 性 を 掬 い 取 り かたちにとどめる2 人 の 生 きる 営 みに 対 する 敬 意 の 念 をかたちにす るという2 点 によって 現 代 を 生 きる 私 たち の 暮 らしに 滲 み 込 み 共 にあることではない かと 考 える 132

136 実 践 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 上 記 1について 述 べる やきものの 制 作 プ ロセスの 中 で 土 からのかたちと 作 り 手 から のかたちが 出 会 い 衝 突 し 軋 轢 を 生 じる 瞬 間 がある その 瞬 間 に 土 からのかたちを 受 容 しつつ 作 り 手 のかたちをも 妥 協 させない 決 断 がいる この 決 断 は 大 量 生 産 の 製 品 製 造 プロセスの 中 では 起 こり 得 ない 土 は 私 たち の 生 活 を 根 底 から 支 える 大 地 そのものであり 土 の 固 有 性 を 掬 い 取 りかたちにすることは 人 間 が 自 然 からの 贈 与 を 受 け 取 り 人 々に 手 渡 していくことに 他 ならない 上 記 2について 述 べる 絶 望 したくなる 程 に 様 々な 問 題 を 抱 えた 現 代 社 会 で 私 たち 人 間 が 生 き 延 びる 道 はどこにあるのか そこに 切 り 込 む ものづくり は 可 能 なのか その 答 えは 恐 らく 身 近 な 人 々の 暮 らしを 虚 心 に 見 つめ 直 すことからしか 出 てこない 人 が 生 きて 食 べ 働 き 会 話 し 等 々 その 営 みを 思 い 込 みや 決 めつけを 排 して 深 く 見 つめるこ とで これからの 暮 らしのあり 方 が 見 えてく るだろう この 時 代 の やきもの に 存 在 意 義 はある のか 何 が 出 来 るのか 常 に 問 い 直 しながら 制 作 をしていきたい 井 本 真 紀 [ガラス] line (ガラス/キルンワーク 吹 きガラス) 筒 状 の 透 明 な 吹 きガラスパーツに 粉 状 に 砕 いたガラスを 被 せて 電 気 炉 で 焼 成 している この 作 品 は 秋 田 に 来 る 以 前 に 制 作 したものだ ガラスの 重 みに 対 する 問 いと ガラスとい う 物 質 の 存 在 感 の 見 つめ 直 しを 考 えていた 時 のものである 今 回 初 めて 参 加 する 湧 水 地 点 には 自 分 のための 出 発 点 として 過 去 の 作 品 を 一 点 出 品 すべきだと 思 っていた 自 分 がこれまで 何 をしてきたかを 知 るため にも 秋 田 という 地 で これからどう 変 わっ ていくかを 確 認 するためにも 浦 中 廣 太 郎 [ 彫 金 ] 酒 器 酒 杯 ( 銅 錫 真 鍮 / 鍛 金 ) 古 くから 行 われてきた 鍛 金 技 法 は 火 で 金 属 を 焼 き 鈍 し 金 槌 で 打 ちまた 火 にかけてま た 打 つ この 行 為 を 何 度 もくり 返 し 一 つの 形 を 成 形 していく 古 くから 変 わらない 技 法 で ある 現 代 では 3Dプリンター スピニン グ 等 でも 形 を 成 形 することが 出 来 るのだが 私 はそれをしない 社 会 のスピードが 早 くなり 大 量 に 物 を 作 る 現 代 では 手 で 一 つ 一 つ 作 るということは 無 駄 な 行 為 であるかもしれないが その 無 駄 と 思 える 行 為 の 中 に 一 つとして 同 じ 形 で 無 い 魅 力 と 作 る 人 間 が 長 い 制 作 時 間 の 間 に 思 考 を 練 り 込 む 事 ができ 形 が 出 来 そこに 様 々 な 模 様 を 加 える 事 で 思 考 をより 強 く 作 品 に 練 り 込 む 事 が 出 来 ると 考 え 制 作 している 素 材 を 銅 錫 真 鍮 とし 鍛 金 技 法 を 中 心 に 作 品 を 制 作 している 今 回 の 湧 水 地 点 では 重 箱 酒 器 酒 杯 を 主 な 作 品 とした お 酒 を 酌 み 交 わす 場 面 をイメージしその 場 にふさわしく 人 と 人 の 会 話 のきっかけにな る 物 を 作 りたいと 考 え 住 んだ 土 地 旅 をし た 場 所 人 をテーマとして それらを 記 号 化 しシンプルでありながら 表 情 豊 かな 作 品 に なるよう 酒 器 酒 杯 の 模 様 をデザインした 形 は 持 ちやすく 口 当 たりの 良 さを 考 慮 し 形 を 決 定 し この 二 つが お 互 いをより 強 く 響 き 合 うようにイメージを 膨 らませ 作 品 を 完 成 させた 133

137 ものづくりデザイン 専 攻 教 員 展 実 践 報 告 第 2 回 湧 水 地 点 おふくわけ の 取 り 組 み ものづくりデザイン 専 攻 落 合 里 麻 [ 木 工 ] 墨 色 の 酒 器 棚 (タモ 松 煙 染 料 /オイル 仕 上 げ) 壁 面 に 掛 けて 酒 器 やグラスを 入 れて 楽 しむ ための 棚 である 黒 に 緑 の 配 色 は 秋 田 県 角 館 の 武 家 屋 敷 からイメージした 広 く 真 っ 直 ぐ のびた 道 の 両 側 には 黒 い 塀 が 並 び 新 緑 の 頃 はしだれ 桜 の 緑 色 とのコントラストが 美 しい 300 年 前 から 続 く 景 色 を 酒 器 棚 の 形 に 落 とし 込 み 現 代 の 生 活 空 間 に 取 り 入 れることを 試 みた 作 品 である 中 に 入 れる 酒 器 も 主 役 にしたいと 考 え 扉 を 上 部 に 収 納 できるように 設 計 した 素 材 と して 選 んだタモ 材 は 道 管 が 木 目 の 印 象 を 強 くしており 着 色 してもその 木 目 は 陰 影 とし て 現 れる 武 家 屋 敷 の 塀 の 魅 力 も 黒 の 中 に 現 れる 木 目 の 陰 影 であると 考 え この 効 果 を 作 品 全 体 に 取 り 入 れた 墨 色 は 松 煙 を 使 って 着 色 した 松 煙 とは 松 の 根 を 燃 やして 作 った 煤 を 集 めたもので 顔 料 として 使 われる 武 家 屋 敷 の 塀 も かつては 松 煙 に 柿 渋 と 清 酒 を 混 ぜて 塗 っていたという 棚 全 体 に 葉 が 帯 の ように 掛 かるデザインの 中 で 少 しグレーが かった 墨 色 が 緑 色 とのコントラストを 少 し 和 らげてくれる 湧 水 地 点 の 可 能 性 について 松 本 研 一 1 湧 水 地 点 に 込 めたまなざし 本 学 の ものづくりデザイン 専 攻 に 所 属 する 教 員 は 使 用 感 の 充 足 が 得 られる 作 品 の 制 作 に 共 に 取 り 組 んでいる その 日 頃 の 研 究 活 動 を 共 同 発 表 する 際 に 展 覧 会 名 として 湧 水 地 点 を 使 用 している その 意 味 するとこ ろは 地 域 の 特 殊 性 や 異 質 性 に 着 目 すること で 地 域 で 生 活 を 支 えている 湧 き 水 的 な 地 域 文 化 発 信 地 点 たろうという 思 いを 表 現 してい る そしてその 研 究 の 基 本 とするのは 我 々 の 五 感 や 精 神 のあり 方 に 影 響 している 地 域 の 風 土 や 文 化 的 地 層 = 生 活 習 慣 風 俗 などを 意 識 的 に 捉 え 直 し そこからものづくりを 構 想 し 表 現 することである その 期 待 するところは 多 様 な 地 域 ( 日 本 のみならず 世 界 の)におけるそれぞれの 生 活 文 化 の 個 性 が 各 地 域 で 打 ち 立 てられること を 最 終 的 な 目 標 に 掲 げている 質 を 異 にする 各 地 域 から 生 み 出 されてくるものづくりが その 多 様 性 を 維 持 したままに 共 存 共 生 し 相 互 交 感 していくという 多 中 心 の 文 化 世 界 が 構 築 されることである 2 もの の 規 格 化 への 疑 問 発 想 のきっかけとなったのは 今 日 生 み 出 されている 大 量 生 産 の もの そのものに 何 か 共 通 して 欠 如 しているもの があるの ではとの 疑 問 からである その 欠 如 の 原 因 は 今 日 までの 近 代 デザイン 思 想 によるものづく りの 志 向 性 の 歪 みに 起 因 しているように 思 わ れる もちろん 近 代 デザイン 思 想 の 機 能 性 簡 便 性 効 率 性 などの 追 求 によって 得 られる もの の 利 便 性 や 低 廉 化 にあるのではな い むしろ 欠 如 しているもの と 感 じる 個 的 かつ 皮 膚 感 覚 的 情 動 そのものへの 対 応 こそ が 課 題 ではないだろうか 今 や もの の 生 産 は 経 済 のグローバル 化 によって 機 械 的 合 理 主 義 への 傾 斜 を 一 層 強 めている その 過 程 であらゆる もの は 規 格 化 されていく 134

138 実 践 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 もの の 規 格 化 は 生 活 の 標 準 化 への 道 を 辿 る 我 々の 個 的 かつ 皮 膚 感 覚 的 情 動 は 機 械 的 合 理 主 義 の 徹 底 の 過 程 でことごとく 排 除 され 人 と もの との 親 和 性 や 愛 着 は 希 薄 となり 疎 外 感 は 増 していく これからのもの づくりの 世 界 において 個 的 かつ 皮 膚 感 覚 的 情 動 は 中 心 的 課 題 となるだろう 3 情 動 に 対 する 観 点 の 欠 如 近 代 デザインの 歴 史 を 遡 れば もの の 規 格 化 についての 重 要 な 論 争 が 浮 かび 上 がってくる 1914 年 の 第 一 回 ドイツ 工 作 連 盟 展 を 契 機 とした 規 格 論 争 である その 論 点 は 一 方 が 規 格 化 による 大 量 生 産 によっ て より 多 くの 人 々が 豊 かな 生 活 を 実 現 でき ると 唱 え もう 一 方 は 優 れた 芸 術 家 の 才 能 に よって もの に 芸 術 性 を 付 加 し 豊 かな 生 活 を 実 現 できるという 主 張 であったようだ この 時 両 者 は 個 的 かつ 皮 膚 感 覚 的 情 動 に 対 する 観 点 が 欠 如 していたのではないか その 後 の 紆 余 曲 折 を 経 た 近 代 デザイン 思 想 は 経 済 合 理 主 義 を 梃 として 前 者 の 主 張 を 徹 底 さ せながら 今 日 の 経 済 のグローバル 化 と 電 子 テクノロジーの 進 展 と 相 俟 って 広 範 な 規 格 化 の 時 代 をもたらした その 結 果 として 世 界 標 準 は 神 格 化 しつつ 世 界 を 均 質 化 し 近 代 デザイン 思 想 が 当 初 夢 見 ていた 豊 かな 社 会 と は 裏 腹 に 人 間 の 均 質 化 とともに 格 差 社 会 と いう 世 界 的 な 均 質 化 へと 突 き 進 んでいる 4 特 異 性 異 質 性 の 復 権 多 くの 恩 恵 をもたらしている 近 代 デザイン 思 想 は ここにきて 歪 をあらわにしてきてい るといえるだろう 我 々は 個 的 かつ 皮 膚 感 覚 的 情 動 を 尊 重 し 湧 水 地 点 の 含 意 を 実 践 することで 均 質 化 に 風 穴 を 開 ける 今 日 的 作 品 制 作 に 取 り 組 む 今 後 各 地 域 には 湧 水 地 点 と 同 質 でありながらも 特 異 かつ 異 質 なものづくりの 活 動 が 必 ずや 雨 後 の 筍 の ように 育 つ 時 代 が 来 るだろう 我 々の 湧 水 地 点 としての 活 動 は その 魁 となるであろ うし またそのようでありたい [ 展 覧 会 実 施 概 要 ] 展 覧 会 名 秋 田 公 立 美 術 大 学 ものづくりデザイン 専 攻 教 員 展 第 2 回 湧 水 地 点 おふくわけ 日 時 平 成 26 年 10 月 31 日 ( 金 )~11 月 9 日 ( 日 ) 11:00~19:00 展 覧 会 場 3331アーツ 千 代 田 3331GALLERY 来 場 者 数 :10 日 間 合 計 636 人 美 大 サテライトセンター 巡 回 展 日 時 平 成 26 年 11 月 15 日 ( 土 )~12 月 7 日 ( 日 ) 10:00~19:00 展 覧 会 場 美 大 サテライトセンター フォンテ AKITA6F 来 場 者 数 :23 日 間 合 計 537 人 平 成 26 年 度 秋 田 公 立 美 術 大 学 ものづくりデザイン 専 攻 教 員 展 第 2 回 湧 水 地 点 おふくわけ 企 画 実 施 :ものづくりデザイン 専 攻 教 員 : 松 本 研 一 小 牟 禮 尊 人 今 中 隆 介 安 藤 康 裕 山 岡 惇 熊 谷 晃 安 藤 郁 子 森 香 織 助 手 : 井 本 真 紀 浦 中 廣 太 郎 落 合 里 麻 佐 々 木 響 子 協 力 : 秋 田 公 立 美 術 大 学 美 大 サテライトセンター 3331アーツ 千 代 田 撮 影 協 力 : 山 岡 惇 報 告 書 作 成 文 責 : 熊 谷 晃 135

139 制 作 報 告

140 制 作 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 変 塗 蒔 絵 螺 鈿 箱 かたくり 制 作 報 告 漆 工 芸 加 飾 技 法 の 再 構 成 と 表 現 の 試 み 熊 谷 晃 本 研 究 では 漆 工 芸 の 加 飾 技 法 を 捉 え 直 し その 素 材 や 技 法 の 中 に 含 まれる 表 現 を 現 代 へ 繋 げるため に 再 構 成 し 飾 り 箱 という 形 態 で 制 作 提 案 している この 研 究 は 主 に 蒔 絵 や 螺 鈿 変 わり 塗 りといっ た 加 飾 技 法 と 乾 漆 による 造 形 表 現 という 観 点 で 自 身 の 作 品 を 事 例 とし 伝 統 技 法 の 現 代 化 とその 表 現 の 可 能 性 について 考 察 したい キーワード: 蒔 絵 螺 鈿 Box.DesignofErythroniumjaponicuminmaki-elacquer andmother-of-pearlinlay Trialofareconfigurationandtheexpresionofthelacquerwork KUMAGAIKou Keywords:Laquerwork,Mother-of-pearl 1 作 品 概 要 と 趣 旨 変 塗 蒔 絵 螺 鈿 箱 かたくり 第 61 回 日 本 伝 統 工 芸 展 入 選 作 品 長 方 形 入 隅 合 口 蓋 作 りの 飾 り 箱 蓋 表 から 側 面 にかけて 塵 居 をもうけ 側 面 は 胴 張 りとし 底 面 にかけて 回 り 込 むように 曲 面 と している 側 面 にはカタクリ 菊 咲 きイチゲ エゾエンゴサクをモチーフに 蒔 絵 と 螺 鈿 技 法 を 使 い 意 匠 とし 蓋 表 は 福 寿 草 の 葉 の 形 を 用 いた 変 わり 塗 りの 技 法 で 仕 上 げている 作 品 コンセプトとしては 昨 年 同 様 秋 田 の 自 然 を かたちづくる という 大 きな 題 目 のもと 四 季 折 々の 野 に 咲 く 草 花 をモチーフに 飾 り 箱 を 提 案 している 秋 田 の 自 然 と 一 口 にいっても 広 い 県 内 ではそこで 暮 らす 人 々のメンタリティー は 微 妙 に 異 なり 地 域 差 もみられるが 共 通 し ているのは 峻 厳 たる 自 然 に 調 和 するように 暮 し その 自 然 を 捉 える 距 離 感 や 生 活 感 情 が 地 域 文 化 や 風 土 を 創 り 出 している 点 である こ の 暮 しの 作 法 や 自 然 への 眼 差 しを 作 品 制 作 の 発 想 の 源 として 取 り 組 んでいきたい 2 蒔 絵 螺 鈿 等 加 飾 技 法 について 漆 工 芸 の 加 飾 技 法 はその 種 類 の 多 さや 工 程 の 複 雑 さがあり 簡 単 には 解 説 できないが 自 身 の 作 品 に 使 用 した 蒔 絵 と 螺 鈿 の 表 現 とその 137

141 変 塗 蒔 絵 螺 鈿 箱 かたくり 制 作 報 告 熊 谷 晃 表 情 について 考 えてみたい 蒔 絵 とはそ の 文 字 の 通 り 漆 で 絵 を 描 いて 金 属 粉 を 蒔 き 付 けるという 技 法 であり 漆 を 接 着 剤 として 使 用 した 砂 絵 ( 多 少 語 弊 はあるが) 的 なもの である 使 用 する 金 属 粉 の 大 きさや 磨 きの 工 程 等 で 蒔 絵 の 表 情 は 変 わるが 黒 漆 の 地 に 金 銀 粉 による 図 や 地 文 様 の 表 現 などに 使 用 され る 事 が 多 い また 古 典 の 例 では 袈 裟 箱 や 冊 子 箱 宝 珠 箱 経 箱 などの 宗 教 用 具 を 収 める 物 から 手 箱 や 沈 箱 香 合 や 小 箱 を 始 め 提 子 や 湯 桶 飯 器 や 皿 まで 使 用 例 は 生 活 道 具 全 般 に 渡 る その 表 情 と 効 果 は 主 に 黒 漆 地 に 対 す る 金 属 粉 の 輝 きが 王 朝 趣 味 的 な 美 しさを 表 し ている 事 と 黒 漆 地 を 空 間 に 見 立 てた 文 様 表 現 の 冴 えや モチーフを 精 緻 に 描 き 尽 くして 抽 象 化 図 案 化 する 手 法 と 考 えられる 箱 の 蓋 表 から 側 面 にかけて 八 橋 の 景 を 空 間 的 に 表 現 した 八 橋 蒔 絵 螺 鈿 硯 箱 や 空 間 を 圧 縮 し た 装 飾 的 な 意 匠 の 舟 橋 蒔 絵 硯 箱 などが 分 かりやすい 次 に 螺 鈿 については 巻 貝 の 総 称 であ る 螺 と 埋 め 込 むという 意 味 の 鈿 装 か ら 螺 鈿 といわれ 貝 片 を 文 様 に 加 工 して 漆 面 に 貼 る 技 法 である その 表 情 と 効 果 について は 蒔 絵 よりも 一 般 的 ではないだろうか 誰 しも 一 度 は 栄 螺 の 殻 を 見 た 事 があるだろうし その 内 側 の 虹 色 に 光 る 部 分 を 加 工 して 使 用 す るのである 螺 鈿 の 特 徴 はその 輝 きを 利 用 し て 意 匠 に 取 り 込 むことで 蒔 絵 の 金 属 粉 の 輝 きとは 異 なる 質 感 を 表 現 でき 相 乗 効 果 を 得 る 事 ができる また 貝 の 裏 側 に 色 漆 を 塗 り 伏 せ 彩 色 を 施 す 事 で 虹 色 の 輝 きはさらに 豊 か な 表 情 を 見 せるのである これらの 要 素 から 漆 工 芸 の 加 飾 技 法 においては 黒 漆 地 に 金 銀 粉 の 文 様 表 現 と 虹 色 に 輝 く 螺 鈿 の 使 用 法 が 表 現 の 勘 所 となるに 違 いない 3 細 部 の 表 情 と 効 果 について カタクリは 葉 を 銀 の 研 ぎ 出 し 蒔 絵 でわずか に 暈 かし 書 き 割 りで 柔 らかい 葉 の 細 部 を 描 写 している 花 は 夜 光 貝 に 黒 漆 で 伏 せ 彩 色 し たものをカットし 膠 で 貼 っている 図 1 研 ぎ 出 し 蒔 絵 部 分 ( 筆 者 撮 影 ) 工 程 としてはまず 研 ぎ 出 し 蒔 絵 を 全 て 行 っ た 後 に 螺 鈿 を 膠 で 貼 ることで 螺 鈿 の 際 まで 研 ぎ 出 し 蒔 絵 ができ 図 1のような 表 現 が 可 能 となる 一 般 的 には 螺 鈿 を 貼 った 後 に 漆 を 塗 り 込 み 研 ぎ 出 した 方 が 固 着 力 が 高 いとされ 実 際 その 通 りである その 場 合 は 螺 鈿 の 際 ま で 蒔 絵 を 描 くことが 難 しく 研 ぎやぶるリスク が 高 いので 蒔 絵 と 螺 鈿 の 配 置 がポイントに なってくる 逆 に 螺 鈿 を 研 ぎ 出 し 蒔 絵 の 後 に 貼 ることで 上 記 の 問 題 は 解 決 するが 磨 きの 段 階 で 螺 鈿 が 剥 がれるなどのリスクもある いくつかの 工 夫 としては 螺 鈿 の 縁 を 事 前 に 耐 水 ペーパー 等 で 研 磨 しておくことや 膠 の 吸 い 込 みを 防 ぐために 数 回 に 分 けて 膠 を 塗 る ことや 螺 鈿 の 縁 を 漆 でくくること 等 を 行 っ ている 現 状 では 研 ぎ 出 し 蒔 絵 の 後 に 螺 鈿 を 貼 り 図 案 を 表 現 する 方 が 作 品 のイメージに 合 っていると 考 えるが 図 案 によっては 従 来 通 りの 工 程 で 行 った 方 が 良 い 場 合 もあり 今 後 も 制 作 と 検 証 を 重 ねる 必 要 がある またモ チーフとする 植 物 の 描 写 については 現 在 で は 構 図 や 扱 う 植 物 の 種 類 に 関 して 特 に 決 まり はないが 古 典 作 品 を 見 ると 真 正 面 や 真 横 か ら 植 物 を 捉 えたものが 多 い 立 体 的 空 間 的 にモチーフを 捉 えるという 観 方 は 現 代 的 な 観 方 かもしれないが モチーフを 真 正 面 や 真 横 から 捉 えるというのは 現 代 人 には 若 干 違 和 感 がある 逆 に 言 うとモチーフを 抽 象 化 し 記 号 化 する 意 味 合 いが 強 まり モチーフに 込 め られた 意 図 をストレートに 伝 える 効 果 はある と 思 う 今 回 モチーフに 使 用 したカタクリで は 斜 め 上 から 俯 瞰 するように 描 き 葉 の 柔 138

142 制 作 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 らかく 肉 厚 な 質 感 と 茎 のしなりや 可 憐 な 花 び らのシルエットを 表 現 しようと 試 みている 次 に 伏 せ 彩 色 については 主 に 薄 貝 の 加 工 技 術 が 発 達 した 江 戸 時 代 以 降 に 盛 んに 行 われ たと 考 えられるが この 伏 せ 彩 色 の 効 果 は 貝 の 裏 に 描 いた 文 様 や 塗 った 色 が 貝 の 虹 色 越 し に 見 えることであり 塗 る 色 によって 貝 その ものの 紫 味 や 青 味 が 強 調 される 所 にある 今 回 菊 咲 きイチゲに 使 用 した 白 蝶 貝 は 裏 に 生 漆 を 薄 く 塗 った 後 すぐ 拭 き 取 り 銀 の 消 粉 ( 箔 を 粉 にしたもの)を 毛 棒 で 蒔 き 付 け 乾 燥 後 に 白 漆 を 塗 り 込 んでいる 拭 き 取 る 漆 の 残 りが 多 いと 生 漆 の 茶 色 味 が 表 面 にみえてし まい 拭 き 取 りすぎると 消 粉 の 固 着 力 が 弱 く なってしまうので 加 減 が 難 しい 技 である な ぜそこまでしてこの 工 程 をふむのかは この 菊 咲 きイチゲは 白 くきれいな 花 びらが 特 徴 で あり それを 表 現 するには 白 漆 ではベージュ 味 が 強 すぎるからである 銀 の 消 粉 を 貝 の 裏 に 固 着 させることで 発 色 のよい 白 を 表 現 する ことができる 漆 を 接 着 剤 としてまた 塗 料 と して 伏 せ 彩 色 を 行 うが エポキシ 接 着 剤 を 使 えばさほど 苦 労 なく 銀 粉 を 貝 に 固 着 すること ができるのである しかし 自 分 は 漆 を 単 に 素 材 として 捉 えるのではなく 題 材 として 捉 えているので 漆 とその 周 辺 素 材 の 関 係 性 や 成 り 立 ちを 踏 まえながら 新 しい 材 料 や 考 え 方 を 導 入 するようにしている 4 変 塗 りの 表 情 変 わり 塗 りというよりも 津 軽 塗 の 方 が 伝 わ りやすいと 思 うが 一 般 的 には 漆 に 卵 白 など のタンパク 質 を 加 え 粘 稠 性 の 高 い 漆 で 篦 等 を 使 い パターン 文 様 のしかけを 打 った 後 色 漆 や 金 属 粉 を 塗 り 重 ねて 均 一 に 研 ぎ 出 した ものである その 研 ぎ 出 す 工 程 は 金 属 技 法 の 木 目 金 にも 似 ている もとは 刀 の 鞘 塗 りや 印 籠 等 に 多 く 使 われた 技 法 であるが その 表 情 はさまざまな 素 材 を 組 み 合 わせた 漆 マチエー ルによる 地 紋 様 と 捉 えることができる 例 え ば 菜 種 籾 殻 棕 櫚 縄 卵 殻 螺 鈿 等 のわり と 身 近 な 素 材 を 使 い 櫛 や 木 篦 を 加 工 した 仕 掛 け 篦 などで 複 雑 な 地 紋 様 を 作 り 上 げていく つまり 積 層 された 素 材 の 抵 抗 感 と 研 ぎ 出 され た 地 紋 様 のマチエールのパターンが 魅 力 となっ ている 現 在 取 り 組 んでいる 変 わり 塗 りはこ の 地 紋 様 でありながらも 図 を 併 せ 持 つ 表 現 と して 展 開 しようと 試 みている 図 2 変 塗 り 部 分 ( 筆 者 撮 影 ) 図 2は 変 わり 塗 りの 部 分 写 真 である まず 福 寿 草 の 葉 の 形 にプラスチックの 板 を 切 り 抜 き 柄 をつけてスタンプのように 加 工 し 仕 掛 け 漆 を 転 写 している 次 に 金 箔 を 生 漆 で 貼 り 乾 いてから 部 分 的 に 研 ぎ 出 し 葉 の 文 様 を 浮 か び 上 がらせている 最 後 に 透 けの 良 い 国 産 素 黒 目 漆 を4~5 回 塗 り 重 ねることで 飴 色 の 層 を 作 り その 奥 に 金 箔 と 葉 の 文 様 が 沈 んでい るという 状 態 である この 表 現 のポイントは 飴 色 の 層 を 見 せることにつきる つまり 鑑 賞 者 の 視 線 を 引 き 込 むために 透 ける という 漆 の 塗 膜 の 特 性 を 利 用 し 同 心 円 状 に 福 寿 草 の 葉 の 図 が 反 復 することで 視 線 を 蓋 表 から 側 面 へ 誘 導 しまた 蓋 表 へと 戻 す 意 図 がある 視 線 が 作 品 全 体 を 循 環 することが 飾 り 箱 とい う 形 態 である 必 然 性 を 支 えているが 二 側 面 のエゾエンゴサクの 役 割 は 一 度 研 ぎ 出 し 蒔 絵 を 完 成 させてから 透 き 漆 を 塗 り 込 み 飴 色 の 層 で 仕 上 げることで 蓋 表 の 変 わり 塗 りとは 色 調 で 統 一 し 二 側 面 のカタクリ 菊 咲 きイ チゲとは 描 写 表 現 で 繋 ぐ 意 図 がある これら の 文 様 の 関 連 性 が 春 に 芽 吹 く 生 命 の 連 鎖 というコンセプト 全 体 に 関 わってくる 5 入 隅 の 箱 合 口 作 りの 文 様 合 わせ 入 り 隅 の 箱 は 古 典 作 品 では 京 都 仁 和 寺 の 宝 物 である 宝 相 華 蒔 絵 宝 珠 箱 ( 平 安 時 代 )があ 139

143 変 塗 蒔 絵 螺 鈿 箱 かたくり 制 作 報 告 熊 谷 晃 るが 胎 の 種 類 は 確 認 できない その 薄 さか ら 麻 布 または 漆 皮 が 胎 として 考 えられるが 被 せ 蓋 作 り 隅 丸 甲 盛 り 塵 居 玉 縁 など は 平 安 時 代 の 形 態 の 特 徴 である 時 代 が 下 る につれて 木 胎 が 主 流 になり 箱 の 角 の 処 理 方 法 も 入 り 隅 隅 丸 だけではなく 面 取 りなども 多 く 見 られるようになり 蓋 表 と 側 面 を 画 面 として 分 ける 意 識 が 強 くなる 箱 の 角 を 丸 め るのはぶつけた 時 等 の 破 損 を 軽 減 することや 手 がけとなり 持 ちやすくするためという 以 外 に 特 段 の 意 味 はないと 思 うが 視 覚 的 に 箱 の 稜 線 の 強 さを 和 らげる 役 割 を 担 っている 今 回 の 作 品 では 直 方 体 としての 形 態 の 強 さを 見 せつつ 各 面 ごとに 独 立 しながら 緩 やかに 連 携 する 構 成 を 考 えた 各 面 の 分 割 と 連 携 のバ ランスや 形 の 強 さと 構 造 を 総 合 的 に 考 察 する ことが 重 要 であると 認 識 している またなぜ 合 口 蓋 作 りで 文 様 を 真 ん 中 で 合 わせるかとい うと 被 せ 蓋 作 りにしてしまうと 箱 の 形 態 の 自 由 度 が 低 くなり 乾 漆 で 造 形 する 意 味 が 薄 くなると 考 えているからである 合 口 蓋 作 り で 図 が 分 割 されるリスクはあるが 形 態 感 と 図 を 合 わせる 面 白 さの 両 立 を 積 極 的 に 提 案 し ていきたい を 決 める 仕 掛 け 漆 に 松 煙 を 混 ぜ 黒 さを 調 整 する 福 寿 草 の 型 を 使 い 仕 掛 けを 打 つ 仕 掛 けが 乾 いた 後 生 漆 を 薄 く 塗 り 金 箔 を 貼 る 仕 掛 けの 頭 をはつり 国 産 素 黒 目 漆 を 地 塗 り 刷 毛 で 薄 く 塗 り 込 む 軽 く 研 磨 し 仕 掛 けと 同 じ 高 さになるまで 複 数 回 塗 り 込 む 呂 色 磨 きで 仕 上 げる 技 法 工 程 解 説 側 面 : 蒔 絵 螺 鈿 研 ぎ 面 に 置 き 目 をとり 蒔 き 詰 めの 部 分 に 絵 漆 で 地 描 き 銀 6 号 粉 を 蒔 く 暈 かしの 部 分 は 呂 瀬 漆 で 地 描 き 複 数 回 に 分 けて 蒔 きぼかす 蒔 絵 部 分 を 生 漆 で 固 める 黒 漆 を 塗 り 込 み 図 を 研 ぎ 出 す 螺 鈿 を 貼 る 部 分 に 置 き 目 をとる 貝 に 伏 せ 彩 色 を 施 す 貝 と 研 ぎ 面 の 両 方 に 膠 を 塗 り アイロン 等 で 熱 を 加 えながら 貼 る 貝 の 縁 を 素 黒 目 漆 で 複 数 回 くくる 全 体 に 胴 刷 りを 行 う 重 ね 摺 りをして 艶 上 げし 完 成 させる 6 工 程 解 説 ( 終 わりにかえて) 変 わり 塗 りの 蓋 表 に 用 いている 飴 色 の 表 現 は 自 身 の 作 品 の 特 徴 の 一 つである 側 面 の カタクリや 福 寿 草 その 他 の 草 花 は 厳 しい 自 然 をくぐり 抜 け 生 命 の 連 鎖 を 象 徴 するモチー フであり 素 朴 な 自 然 賛 歌 とは 異 なるメッセー ジを 込 めている 言 葉 にすると 自 然 に 対 する 畏 怖 畏 敬 の 念 となるが 人 と 自 然 との 折 り 合 いの 付 け 方 とも 自 然 への 眼 差 しとも 言 える のではないか これらのコンセプトを 繰 り 返 し 飾 り 箱 という 形 態 を 借 りて 表 現 し 鑑 賞 者 と 共 鳴 したいと 考 えている 技 法 工 程 解 説 蓋 表 : 変 塗 り プラスチック 板 を 加 工 し 福 寿 草 の 葉 型 をつくる 黒 漆 に 卵 白 を 適 量 まぜ 仕 掛 け 漆 の 粘 度 140

144 制 作 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 熊 谷 晃 KUMAGAIKou 変 塗 蒔 絵 螺 鈿 箱 かたくり 乾 漆 蒔 絵 螺 鈿 変 塗 り H150 W240 D

145 制 作 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 JA 全 農 あきた ホンモノづくり プロジェクト 愛 菜 ものがたり のパッケージデザイン 提 案 孔 鎭 烈 品 質 がよければ 商 売 は 成 り 立 つ という 考 えは 時 代 遅 れである 今 の 消 費 者 は 品 質 が 良 いもので あることは 当 然 であると 共 に 個 性 と 見 た 目 を 求 めている パッケージは 商 品 や 企 業 イメージを 消 費 者 に 伝 えるコミュニケーションツールであると 同 時 に パッケージは 無 言 のセールスマン と 言 われる ように 消 費 者 が 商 品 の 購 入 を 決 定 づける 重 要 な 販 売 促 進 ツールでもある 筆 者 は 本 プロジェクト の 一 環 として 秋 田 の 加 工 食 品 のパッケージを 検 討 分 析 したことがある その 結 果 パッケージが 地 味 であると 共 にパッケージに 対 する 製 造 者 の 認 識 が 低 く また 地 域 で 生 産 している 商 品 のほとんどは 地 域 内 で 消 費 している 地 産 地 消 を 目 的 に 製 造 している 為 製 造 量 が 少 ない 事 が 分 かった 品 質 の 良 い 商 品 を 全 国 に 売 り 出 す 為 には 消 費 者 が 好 むパッケージデザインの 開 発 が 必 要 であると 考 え 商 品 の 魅 力 を 視 覚 的 に 表 現 した 地 域 における 食 品 のパッケージデザインを 試 みた キーワード:いぶり 大 根 パッケージデザイン ブランドデザイン JAZennouAkita"OriginalCommodityProduction"project. -"Aisaimonogatari"'spackagedesignproposal- KONGJinyel Thephrase"highqualityproductsselwel"nolongerapplies.Nowadaysconsumersconsidergood qualityasaprerequisiteastheyadditionalydemandforgreaterindividualityandproductesthetics.likethe expresion"whatlooksgood,tastesgood",packagedesignisameansofcommunicationthatconveysthe overalimageoftheproductandcompanytotheconsumer.consumer'spurchasingbehaviorisdeterminedby thepackagedesignasitisalsoanimportanttoolofpromotion.basedontheexaminationandanalysis conductedonthepackagesofprocesedfoodmanufacturedinakita,asapartofthisproject,mostofthe packagedesignswereunoriginalandplainthuslackeddistinction.thereasonbehindthisisduetothe manufacturer'slackofatentiontowardspackagedesignwhichleadstotheirunwilingnestomakean investmentforit.inaddition,theproductsmanufacturedwithintheregionareproducedinsmalquantitiesdue tothefactthatmostofthemareproducedonlytobeconsumedwithintheregion.inordertoimprovethe financialvaluebyselinghighqualityregionalproductsnationwide,itisdeemednecesarytodeveloppackage designsthatmatchthepreferenceofconsumers.thus,thisresearchofersanewpackagedesignforfoodthat visualyportraysthemeritsoftheproductandakita'simage. Keywords:Iburidaikon,Packagedesign,Branddesign 143

146 JA 全 農 あきた ホンモノづくり プロジェクト 孔 鎭 烈 1 はじめに 秋 田 の 食 品 ブランドの 一 番 の 弱 点 は パッ ケージデザインが 地 味 であることとパッケー ジデザインに 対 する 製 造 者 の 認 識 の 低 いこと である パッケージにはコストをかけたく ないという 認 識 が 一 般 的 な 考 えである 現 状 では 保 護 としての 機 能 は 充 分 はたしているも のの 現 代 社 会 で 最 も 重 要 とする 広 告 (ビジュ アル) 機 能 を 満 たしていない 秋 田 の 農 産 物 は 全 国 的 に 信 頼 度 が 高 く 食 品 信 頼 度 ランキ ングでもトップ3に 入 る 位 であるが( 表 1) 地 域 を 代 表 して 全 国 に 売 れているこれという ものが 数 少 ないのが 現 状 である その 理 由 は 前 述 のようにパッケージデザインの 機 能 であ る 広 告 の 機 能 をうまく 利 用 していないからで あると 考 える 同 じ 箱 形 のパッケージであっ ても グラフィックの 表 現 によってイメージ は 変 わる 今 回 のプロジェクトを 切 っ 掛 けに パッケージデザインの 良 さを 理 解 させ 地 域 における 食 品 の 魅 力 を 視 覚 的 に 充 分 表 現 でき るパッケージデザインを 試 みた 表 1 特 産 品 に 付 加 できる 地 域 イメージ 資 産 2 プロジェクト 概 要 JA 全 農 あきたでは 県 内 の 生 産 者 消 費 者 と 食 品 加 工 の 専 門 家 等 の 連 携 により 県 内 産 農 産 物 を 有 効 活 用 した 商 品 を 開 発 し 究 極 のモノづくりを 全 農 ブランドで 発 信 するため に ホンモノづくりプロジェクト を 平 成 25 年 7 月 に 立 ち 上 げた 秋 田 は 豊 かな 資 源 に 恵 まれた 米 を 基 幹 とする 農 産 県 である しか し 担 い 手 の 減 少 や 高 齢 化 等 顕 著 であり 農 業 産 出 額 も 減 少 傾 向 が 続 いている こうした 中 JA 全 農 あきたでは 秋 田 県 が 誇 る 伝 統 食 の 原 材 料 と 製 法 にこだわった 1 究 極 のブランドを 開 発 し 県 内 だけではなく 全 国 に 秋 田 の 味 を 発 信 している また 平 成 2 5 年 度 から 6 次 産 業 化 に 本 格 的 に 着 手 し たJA 全 農 あきたは 今 後 も 地 域 の 優 れた 素 材 を 利 用 し 秋 田 を 代 表 するモノ( 図 1)をつ くり 地 域 農 産 業 の 所 得 向 上 と 雇 用 創 出 につ なげることが 本 プロジェクトの 目 的 である 図 1 愛 菜 ものがたり いぶり 大 根 ( 商 品 造 りに 使 用 した 素 材 すべては 秋 田 県 産 である ) 3 実 践 内 容 パッケージは 商 品 や 企 業 イメージを 消 費 者 に 伝 えるコミュニケーションツールである 同 時 に パッケージは 無 言 のセールスマン と 言 われるように 消 費 者 が 商 品 の 購 入 を 決 定 づける 重 要 な 販 売 促 進 ツールでもある 3.1 パッケージデザインの 現 状 地 域 の 加 工 食 品 の 一 番 の 問 題 は 若 者 に 好 ま れてない 点 である いぶり 大 根 つくりの 名 人 で 本 プロジェクトにも 参 加 している 高 橋 氏 に よると 販 売 ルートは 注 文 によるものと 県 内 の 道 の 駅 土 産 専 門 店 などが 主 であり 年 齢 層 は50 代 以 上 が 主 であるとの 情 報 を 得 た ま た 秋 田 駅 前 のトピコ 内 の 土 産 専 門 店 でも 調 べた 結 果 いぶり 大 根 を 好 む 年 齢 層 は50 代 以 上 の 方 が 多 い その 理 由 は 若 者 の 伝 統 食 離 れと 食 のイメージが 渋 い また パッケージ のイメージも 地 味 で 品 がないという 意 見 が 多 かった 県 内 で 販 売 しているいぶり 大 根 のパッケー ジを 調 べてみると PE(ポリエチレン) 包 装 で 真 空 パックにされ 中 身 が 丸 見 えで 商 品 名 が 144

147 制 作 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 黒 または 赤 色 で 印 刷 されてある( 図 2) 地 味 なものが 多 かった 商 品 を 直 接 見 せつけ 商 品 の 良 さを 伝 えたいという 意 味 はよく 理 解 でき るが 視 覚 的 ないイメージを 考 えるといぶり 大 根 本 体 も 茶 色 であまり 目 立 たないものの パッ ケージに 使 える 色 も 渋 くて 地 味 すぎる 為 若 い 世 代 が 好 まないと 考 える と 考 える タイポグラフィは 心 と 音 声 の 視 覚 的 表 現 である お 届 けしたい 商 品 に 意 味 を 込 め よ りよい 視 覚 的 な 形 態 を 表 現 するために 既 存 の フォント(ディジタルフォント)を 使 わず 手 書 きにし 一 層 暖 かいお 母 さんの 味 と 愛 を 身 近 に 感 じられるデザインにした ( 図 3) 図 2 既 存 商 品 のパッケージイメージ 3.2 デザインコンセプト 具 体 的 なデザイン 開 発 を 始 める 前 に 商 品 開 発 に 参 加 している 高 橋 さんの 横 手 市 山 内 にあ る 大 根 畑 と 製 造 工 房 に 伺 い いぶり 大 根 つく りのお 話 を 伺 うことができた ただ 大 根 をい ぶり 漬 ければいぶり 大 根 になると 思 っていた 筆 者 には 衝 撃 であり その 工 程 はまさにお 母 さんの 愛 がなければつくることができないも のだと 感 じた それでこのパッケージデザイ ンのテーマを 秋 田 の 愛 と 決 めた 秋 田 の 地 で 丹 誠 込 めて 育 ち 秋 田 のお 母 さんが 家 族 の 思 いで 造 った 愛 情 いっぱいのいぶり 大 根 1)ブランドネーム 愛 彩 ものがたり ブランドネームは JA 全 農 あきた 社 内 に 募 集 をかけて 最 終 的 に27 個 の 応 募 がありその 中 から 決 定 したのが 愛 彩 いぶり であった 愛 彩 いぶりは 本 プロジェクトの 新 たなブラン ドとして 考 えると いぶりの 名 前 が 付 くのが 良 くないという 意 見 で 検 討 した 結 果 愛 彩 も のがたり にした お 母 さんの 愛 妻 の 愛 その 愛 には 物 語 があるという 意 味 で 今 後 JA 全 農 あきたの 新 たなブランドとして 相 応 しい 図 3 ブランドネームとグラフィックイメージ 2)グラフィックデザイン 新 商 品 のパッケージデザインには 製 品 の 魅 力 を 視 覚 的 に 表 現 し 地 域 における 食 品 のパッ ケージデザインを 提 案 したい 特 に 20 代 ~ 30 代 の 若 い 女 性 が 好 む 明 るくて 可 愛 いイラス トに 秋 田 を 象 徴 する 秋 田 犬 かまくら なま はげを 表 現 した さらに 商 品 のイメージをわ かりやすくするために いぶり 大 根 のイメー ジも 一 緒 に 配 置 した 配 色 は 明 るい 色 から 自 然 階 調 させたナチュラル ハーモニーが バランスよく 軽 快 なイメージを 出 してくれる また 類 似 的 調 和 と 対 照 的 調 和 (コントラス ト)より 全 体 と 部 分 部 分 と 部 分 の 相 互 間 にある 秩 序 が 得 られるようにと 思 い 黄 緑 系 ( 類 似 的 調 和 )の 明 るい 色 と 黒 ( 対 照 的 調 和 ) をメインに 鮮 やかで 暖 かいイメージが 表 現 で きるように 試 みた ( 図 3) 3) 箱 の 構 造 最 初 計 画 では 他 社 と 同 じ PE(ポリエチ レン)の 真 空 パックによるパッケージにする 予 定 であった しかし2~3 回 会 議 が 重 なり いろいろな 意 見 を 頂 いた 中 で より 他 社 との 差 別 化 を 考 えることにした また 商 品 は 地 145

148 JA 全 農 あきた ホンモノづくり プロジェクト 孔 鎭 烈 元 産 の 最 高 の 素 材 で 最 高 のものを 造 ってある ので 外 観 が 変 わらないと 商 品 の 良 さを 消 費 者 に 伝 えることができない ただ 商 品 を 盛 る だけではなくパッケージによる 差 別 化 と 視 覚 による 情 報 伝 達 の 方 法 を 考 えた また JA 全 農 あきたでは 新 たな 秋 田 のお 土 産 品 として 売 ると 同 時 に 県 外 特 に 東 京 での 販 売 を 計 画 しているため 高 級 なイメージを 前 面 に 出 して 欲 しいという 要 望 もあり 紙 箱 による2 次 包 装 を 提 案 した そこで 箱 の 構 造 は 無 駄 のない シンプルに 使 えて 便 利 な 形 態 に 考 え 紙 の 無 駄 も 省 ける 折 り 紙 の 技 法 を 応 用 し のり 付 け しない 箱 にした ランドのユニークな 個 性 は 競 争 商 品 との 差 別 化 はもちろん 優 位 性 を 確 保 することで 消 費 者 にとってブランドの 信 頼 度 を 高 める 結 果 にもなる 成 功 した 経 営 者 は 消 費 者 のためのパッケー ジデザインは 製 品 であることを 理 解 しなけ ればならない 2 現 状 パッケージデザイン に 対 する 認 識 の 低 い 製 造 者 はその 認 識 の 改 善 と 新 たな 挑 戦 がなくてはこれからの 未 来 はな いと 本 研 究 で 強 く 意 識 することになった 今 後 は 大 学 と 地 域 が 連 携 して 学 生 の 実 践 力 を 高 め さらに 地 域 を 活 性 化 していくた めにも 産 学 連 携 を 基 軸 としたプロジェクトを 継 続 していきたい 参 考 文 献 [1] 博 報 堂 地 ブランドプロジェクト: 地 ブラ ンド, 弘 文 堂,2007 [2] HerbertM.MeyersMurrayJ.Lubliner, [The Marketer`s Guode to Successful PackageDesign],NTCBusinessBooks,1p, 1988 図 4 愛 菜 ものがたり パッケージの 展 開 図 4 結 果 と 考 察 前 述 のようにパッケージは 商 品 や 企 業 イメー ジを 消 費 者 に 伝 えるコミュニケーションツー ルであると 同 時 に 無 言 のセールスマン と 言 われるように 消 費 者 が 商 品 の 購 入 を 決 定 づ ける 重 要 な 販 売 促 進 ツールでもある 消 費 者 と 現 実 的 に 関 係 をつなげるのは 言 語 的 要 素 ではなく 視 覚 的 な 要 素 によって 形 成 されや すい 商 品 を 直 接 接 触 する 消 費 者 は ブラン ドの 名 前 ( 文 字 )であっても 視 覚 的 要 素 を 通 っ て 接 するようになるからである パッケージデザインは 製 品 の 個 性 や 特 徴 をビジュアルコミュニケーションに 転 換 させ て 統 合 的 なマーケティング 戦 略 を 通 じ 効 果 的 にメッセージを 伝 達 させる これは パッ ケージデザインによって その 役 割 や 機 能 も 差 別 化 することができることを 意 味 する ブ 146

149 制 作 報 告 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 孔 鎭 烈 KONGJinyel 愛 菜 ものがたり 秋 田 いぶりだいこんのパッケージデザイン 250mm 460mm 147

150 FarewelltoTheSonnets 2 大 八 木 敦 彦 第 四 場 六 十 二 六 十 六 ~ 六 十 八 七 十 ~ 七 十 七 ( 詩 人 の 苦 悩 ) 第 五 場 六 十 九 ~ 七 十 九 十 四 ~ 九 十 六 ( 君 の 悪 友 ) 第 六 場 八 十 七 ~ 九 十 三 ( 別 れ) 第 四 幕 第 一 場 九 十 七 ~ 九 十 九 ( 別 れの 後 ) 第 二 場 百 ~ 百 一 ( 詩 の 女 神 ) 第 三 場 百 二 ~ 百 二 十 六 ( 愛 の 復 活 ) 別 表 2 ソネット 集 の 制 作 年 代 の 推 定 区 分 年 代 戯 曲 の 作 品 執 筆 時 の 年 齢 パトロンの 年 齢 結 婚 初 期 1585~1588 史 劇 の 初 期 21~24 中 期 1591~1595 史 劇 ~ 喜 劇 27~31 S 伯 18~ 後 期 1598~1602 悲 劇 34~38 P 伯 18~ (S 伯 ~サウサンプトン 伯 P 伯 ~ペンブルック 伯 ) 1 Cf.Wiliam Shakespeare,AsYouLikeIt(Act2,Scene7) 'Altheworld'sastage,Andalthemenandwomenmerelyplayers' 2 SamuelButler,Shakespeare'sSonnetsReconsidered(JonathanCape,1899) 3 J.D.Wilson,TheSonnets(CambridgeUniversityPres,1966)p Butler,op.cit.pp LeiseflehenmeineLieder(1933) 12

151 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 況 で 例 えば 君 のモデルであった 人 物 が 実 際 に 結 婚 してしまっ たとすればどうなるだろうか 実 際 にサウサンプトン 伯 は 一 五 九 九 年 に そして ペンブルック 伯 も 一 六 〇 四 年 に 結 婚 をしている 詩 人 に とってはもはや ソネットを 書 き 綴 る 意 味 は 自 然 に 消 滅 することにな る シューベルトに 未 完 成 という 有 名 な 交 響 曲 があり 古 典 的 な 形 式 としては 通 常 四 楽 章 で 構 成 される 交 響 曲 が なぜ 二 楽 章 だけで 終 わっているのか 古 来 音 楽 学 者 は 推 論 を 重 ねている 確 実 な 答 えは 無 論 当 人 しかわかり 得 ないものであって 当 人 にとっては 書 く 必 要 がなくなったから あるいは 書 くことができなったから という 単 純 な 理 由 以 外 ないかも 知 れないのであるが それが 往 々にして 後 世 の 人 々にとっては 色 々と 論 理 的 な 理 由 づけがなければ 納 得 できな いものであり 結 果 解 けない 謎 にもなってしまうのである こ の 謎 は 永 遠 に 学 者 の 頭 を 悩 ませ 終 わりのない 論 議 を 繰 り 返 させ る 一 方 で 芸 術 家 を 刺 激 し 想 像 を 膨 らませて 例 えば 未 完 成 交 響 楽 5 のような 映 画 を 生 み 出 させる この 映 画 で 語 られているような 楽 章 が 二 つ 目 で 中 断 したのは 作 曲 者 の 失 恋 が 原 因 である という 設 定 は 無 論 フィクションに 過 ぎないのであって シューベルト 本 人 が 知 ったら 仰 天 するであろうが しかし それ 以 外 に 中 断 の 理 由 をあれ これと 詮 索 され 痛 くもない 腹 を 探 られるような 思 いをするよりは はるかにましだと 彼 は 肩 をすくめるかもしれない ソネット 集 に 関 する 他 の 幾 多 の 推 論 がいずれも 確 証 を 持 たず あくまで 推 定 の 域 を 出 ないように 私 のここまでに 列 挙 した 論 も 推 理 に 終 わるより 他 はないのであるが どの 問 題 に 関 しても シェイク スピアに 肩 をすくめさせることはないようにとの 思 いは 常 に 私 の 中 に あった そのことを 断 わり 置 き 本 稿 で 私 は 足 掛 け 二 十 年 余 続 けて きた ソネット 集 についての 論 考 を 最 後 としたい 人 の 生 は 本 来 不 完 全 なものであり 人 はまた 死 してもなお 未 完 のものである しかし 不 完 全 であり 未 完 であることは 不 十 分 であ るということでは 決 してない 別 表 1 ソネット 集 のソネット 劇 としての 区 分 けと 各 々のテーマ 第 一 幕 第 一 場 一 二 ( 序 ) 第 二 場 三 ( 鏡 ) 四 ( 財 産 ) 五 ( 香 水 ) 六 ( 財 産 香 水 ) 七 ( 太 陽 ) 八 ( 音 楽 ) 九 十 ( 自 損 ) 十 一 ( 印 ) 十 二 ( 時 ) 十 三 ( 父 ) 十 四 ( 占 星 術 ) 第 三 場 十 五 ( 詩 ) 十 六 ( 子 供 ) 十 七 ( 詩 子 供 ) 十 八 ~ 十 九 ( 詩 ) 第 二 幕 第 一 場 二 十 ~ 二 十 五 ( 君 への 愛 ) 第 二 場 二 十 六 ~ 三 十 二 ( 旅 先 にて) 第 三 場 三 十 三 ~ 四 十 二 ( 君 の 不 義 ) 第 四 場 百 二 十 七 ~ 百 五 十 二 ( 黒 い 女 ) 第 五 場 四 十 三 ~ 五 十 二 ( 旅 先 にて) 第 三 幕 第 一 場 五 十 三 ~ 五 十 五 六 十 六 十 三 ~ 六 十 五 八 十 一 ( 詩 の 力 ) 第 二 場 五 十 六 ~ 五 十 八 六 十 一 ( 君 の 不 在 ) 第 三 場 五 十 九 七 十 八 ~ 八 十 八 十 二 ~ 八 十 六 ( 他 の 詩 人 ) 11

152 FarewelltoTheSonnets 2 大 八 木 敦 彦 ナスとアドーニス (VenusandAdonis) ルークリース 凌 辱 (The RapeofLucrece)と 同 時 期 に 書 かれたもので 出 版 されても 良 かっ たはずであったのが 何 らかの 理 由 でできなかった 例 えば 全 篇 が 完 成 に 至 らなかったとか シェイクスピア 自 身 にとって 出 版 するのが 憚 られたか というようなことである けれども 制 作 が 後 期 である とすると ソネット 集 として たとえ 完 成 してももはや 出 版 する 必 要 がなくなる つまり 劇 作 家 としてのシェイクスピアにとって 詩 集 は さほど 興 味 のあるものではなくなっていたとも 考 えられるのだ しか しながら 出 版 する 気 もないような 作 品 を 書 き 記 していたというのも おかしな 話 であり 数 篇 にとどまるものならば 単 なる 詩 人 の 手 すさ びとも 考 えられなくはないが 百 五 十 篇 余 の 連 作 となると 出 版 を 前 提 にしなければわざわざ 書 きはしまいとも 思 われる そうであれば あまり 後 期 に 書 かれたものとも 言 えなくなる 以 上 のことを 総 合 して 創 作 期 は ちょうど 中 間 にあたる 一 五 九 一 年 ~ 一 五 九 五 年 とするのが 適 当 かと 考 えられるが それでもなお 残 る 謎 は なぜシェイクスピア 自 身 が 出 版 するまでに 至 らなかったのかと いうことだ そこにはおそらく ソネット 集 の 中 でモデルとなる 人 々 との 関 係 から 生 ずる 問 題 があったのではあるまいか 私 や 君 や 黒 い 女 にモデルが 実 在 するということでは 確 かに 現 実 と 不 即 不 離 であるこれらの 詩 篇 においては 最 終 的 にはいかにフィクション であろうといえども 世 の 人 が 現 実 と 同 一 視 あるいは 混 同 し その 結 果 モデルとなった 人 々に( 無 論 シェイクスピア 自 身 も 含 めて) 諸 々の 災 いが 生 じると 予 想 される その 辺 の 事 情 は 当 時 といえども 今 日 と 全 く 変 りないわけであり 事 実 四 百 年 後 の 現 在 まで このモ デルに 関 する 詮 議 が ソネット 集 における 最 大 の 興 味 になっている のであるから シェイクスピアが 生 前 出 版 を 思 いとどまったのも 当 然 と 言 えるのかも 知 れず その 結 果 トマス ソープが おそらく 無 断 で 出 版 するに 至 ったのであろう つまるところ 世 紀 の 名 詩 集 と 称 される ソネット 集 は 実 際 は 一 種 の 海 賊 版 であり ソネット 集 にまつわる 謎 は これが 海 賊 版 であるがゆえに 生 じるものがほとんど なのであって であればこそ なぜ 海 賊 版 でなければならなかった か ということを 常 に 考 える 必 要 がある ソネット 集 の 詩 篇 は 出 版 以 前 に オリジナルとなった 原 稿 (おそらくは 書 写 稿 )が 当 時 の 人 々の 間 で 回 し 読 みされ 評 判 と なっていたのであろうと 一 般 には 考 えられており それが トマス ソープが 出 版 を 思 い 立 った 理 由 の 一 つであったと 推 測 される そうし て ソープがそれらの 原 稿 をもとに 本 文 を 構 成 したのだとすれば そ の 原 稿 の 段 階 から ソネット 詩 篇 の 配 列 は シェイクスピアの 意 図 と は 異 なる 混 乱 を 伴 ったものであったろうと 今 我 々の 眼 にする ソネット 集 からは 予 想 できる であれば シェイクスピア 自 身 が 原 稿 を 完 成 しないままに 放 置 し それが 書 写 稿 として 一 般 に 流 布 し ソープが 入 手 したのもその 一 種 であったと 考 えられるだろう それで は なぜ シェイクスピアはソネットの 連 作 を 完 成 しなかったのであ ろうか 理 由 の 一 つとして まず このソネット 集 には 確 かにプロッ トの 展 開 はあるのだが 本 当 の 劇 のようには 最 終 的 な 結 末 を 設 けるこ とが 困 難 と 思 われる 点 がある つまり 君 に 結 婚 を 勧 める ある いは 私 が 君 に 永 遠 の 愛 を 誓 う というテーマで 貫 かれた し かも 各 十 四 行 の 一 篇 毎 に 完 結 している 詩 群 に どのような 結 末 を 付 け ればよいのであろうか ある 意 味 では 一 篇 毎 が 結 末 であり しかも どこまで 続 いても 結 末 はないとも 言 えるのだ しかも そのような 状 10

153 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 あり 時 間 を 超 える 永 遠 の 生 命 そのものであるという 詩 の 信 仰 に 至 る ところが ソネット 集 はそこで 終 結 せず 最 後 に 黒 い 女 を 登 場 させ 執 拗 な 性 愛 のモチーフの 繰 り 返 しの 中 で 美 と 醜 の 不 可 思 議 な 交 錯 あるいは 融 合 を 歌 い 上 げて 真 の 美 とは 何 か そもそも 醜 なる ものが 存 在 するか 在 ることは 即 ち 美 ではないかという 黙 示 録 的 な 言 葉 に 突 入 して 終 わる それはあたかも 青 年 と 詩 の 調 和 の 世 界 が 黒 い 女 の 美 醜 の 混 沌 に 飲 み 込 まれ 天 上 的 なコスモスが それよりも 遥 か に 巨 大 で 強 力 な 暗 黒 のカオスの 中 に 崩 壊 拡 散 しながら 吸 収 されてゆ くさまを 思 わせる 繰 り 返 しになるが シェイクスピアの 生 前 に 刊 行 されているにもか かわらず ソネット 集 には 特 にその 配 列 において 詩 人 の 意 図 が 正 確 には 反 映 されていないとみなすべき 部 分 も 多 い しかしながら フォ リオ 版 をオリジナルとして 完 訳 書 を 作 成 することを 考 える 時 この 詩 集 が あくまでこの 配 列 に 沿 って 読 まれることは 無 視 できない した がって 引 用 した 拙 文 は フォリオ 版 の 配 列 を 踏 襲 する 場 合 このよ うに 解 釈 できるという 解 説 文 である 確 かに ソネット 集 は その 未 完 成 の 要 素 ゆえに 様 々な 解 釈 の 余 地 が 生 じるのであって その 意 味 では 翻 訳 者 もソネット 劇 としての 解 釈 如 何 によって 配 列 を 変 え た 新 訳 を 作 るということも 考 える 必 要 はあるだろう 言 い 方 を 換 えれ ば フォリオ 版 をそのままに 訳 すということは ある 意 味 で その 配 列 を 是 認 していることになるのである そして 翻 訳 者 にとっては 配 列 によって 訳 し 方 が 変 るということも 起 こり 得 る ソネット 制 作 の 年 代 に 関 しては 諸 説 あり サミュエル バトラーは 一 五 八 五 年 ~ 一 五 八 八 年 と 推 測 している 4 これは 制 作 年 代 として は 最 も 早 い 時 期 の 予 測 であり 逆 に 最 も 遅 い 場 合 一 五 九 八 年 ~ 一 六 〇 二 年 という 設 定 があって これは ペンブルック 伯 が 一 五 八 〇 年 の 生 まれであることから ソネットがこの 十 八 歳 のパトロンに 捧 げられ たと 考 える 場 合 の 推 測 である そして さらに 有 力 なモデルの 候 補 者 サウサンプトン 伯 の 場 合 一 五 七 三 年 生 まれなので こちらが 十 八 歳 くらいの 年 代 を 考 えると 一 五 九 一 年 ~ 一 五 九 五 年 となる つまり ソ ネットが 創 作 された 期 間 は( 前 述 の 通 り 第 百 四 番 から)およそ 三 ~ 四 年 間 と 推 定 できるものの その 年 代 については 十 数 年 の 開 きがあっ て 最 も 早 い 場 合 は 劇 作 の 方 ではごく 初 期 中 間 では 歴 史 劇 から 喜 劇 の 初 期 最 も 遅 い 場 合 は 喜 劇 から 悲 劇 の 初 期 とそれぞれに 対 応 し これにシェイクスピアの 年 齢 を 当 てはめると 二 十 歳 になったばか りの 頃 から 三 十 代 の 後 半 までの 差 がある つまり シェイクスピア の 創 作 期 を 二 十 五 歳 から 四 十 五 歳 の 間 とすると その 最 初 期 から 後 期 までに 相 当 するわけで ソネットの 書 かれた 時 期 の 設 定 範 囲 にこれ だけの 開 きがあるということは それによってこの 詩 集 の 解 釈 に 大 き な 違 いがもたらされる 可 能 性 があるということなのだ ( 別 表 2 参 照 ) 制 作 年 代 の 推 定 には 幾 つかの 根 拠 があり それには 先 に 挙 げたよ うに 君 のモデルとなる 人 物 の 生 年 も 含 まれるが 私 の 方 の 年 齢 設 定 も 無 視 することはできない 無 論 モデルがあくまでモデルに 過 ぎないように 詩 人 である 私 も 虚 構 の 人 物 であることを 忘 れて はならないのだが 詩 篇 の 中 で 繰 り 返 し 記 されている 私 の 老 い に 関 する 言 葉 は やはり シェイクスピア 自 身 の 実 感 と それによる 叡 智 の 結 晶 なのではあるまいかとも 思 われる そのように 考 えれば 制 作 年 代 は シェイクスピアの 活 動 の 初 期 ではなく 少 なくとも 中 期 以 降 という 推 測 がふさわしいようである さらに 制 作 年 代 の 設 定 に よって 出 版 の 事 情 も 変 化 する 即 ち 制 作 が 初 期 であれば ヴィー 9

154 FarewelltoTheSonnets 2 大 八 木 敦 彦 Heraudit(thoughdelayed)answeredmustbe, Andherquietusistorenderthee. ( 第 百 二 十 六 番 ) 彼 女 とは 自 然 の 女 神 であるが 女 神 に 寵 愛 されている 君 も 時 に 引 き 渡 される 時 は 来 るという この 黙 示 的 なカプレットによっ て ソネット 劇 はある 意 味 で 終 幕 と 見 なすことができる そうして 永 遠 の 夏 も 終 わりを 告 げることとなるのだが しかし 確 かに 言 葉 は 生 き 残 り 詩 が 勝 利 したことを 寂 寞 たる 哀 しみの 中 で 読 者 は 確 認 する であろう 第 百 二 十 七 番 から 第 百 五 十 二 番 のいわゆる 黒 い 女 に 関 するソネッ トは 青 年 である 君 に 関 する 詩 篇 以 上 に 謎 の 多 い 作 品 群 である そもそもこれらが 第 百 二 十 六 番 の 後 に 置 かれるべきものかどうか 不 明 なのであるが トマス ソープもこれらの 扱 いには 頭 を 悩 ませたこと と 思 われる おそらく 原 稿 としてはひとまとまりになっていたと 想 像 され 最 後 に 付 け 足 したのであろうが 内 容 的 に 百 二 十 六 番 に 連 続 し ているものかどうかは 判 別 しがたい 一 般 には ここからは ソネッ ト 集 の 第 二 部 と 見 なされ 君 とのドラマの 後 に 黒 い 女 との ドラマが 始 まると 読 むことも 可 能 であるが 前 述 したように サミュ エル バトラーは 黒 い 女 に 関 する 詩 篇 を 君 が 不 貞 をはたら く 相 手 と 見 なし 第 三 十 三 番 から 第 四 十 二 番 の 位 置 に 繰 り 上 げる 解 釈 を 示 している 君 が 不 義 をはたらく 相 手 が 私 の 恋 人 の 黒 い 女 だという 最 大 の 論 拠 は 第 百 四 十 四 番 に 見 ることができる TwolovesIhaveofcomfortanddespair, Whichliketwospiritsdosuggestmestill, Thebetterangelisamanrightfair: Theworserspiritawomancolouredill. ( 第 百 四 十 四 番 ) そうして これに 続 くソネットの 後 半 部 分 には 明 らかに 君 と 私 と 黒 い 女 の 三 角 関 係 が 示 されている 一 方 で 確 かに 詩 人 が 男 性 の 君 ではない 明 らかに 女 性 と 読 める 相 手 に 向 けて 恋 情 を 綴 ったと 思 われるソネットもここには 含 まれているのだが 当 の 女 性 については 黒 のイメージがほとんど 感 じられない 場 合 もある そ れは 例 えば 百 二 十 八 番 そして 百 三 十 八 ~ 百 四 十 番 また 百 四 十 五 番 も 相 手 に 関 しては ( 心 身 ともに) 黒 を 思 わせる 形 容 はない そ の 場 合 これらは 詩 人 が 黒 い 女 とは 別 の 女 性 を 想 定 して 書 いた 可 能 性 もあって あるいは ここまでのソネット 劇 からは はみ 出 すも のと 考 えねばならないのかも 知 れないのだが いずれにしても ソネッ ト 劇 の 末 尾 に 置 かれるものではない ソネット 集 の 最 後 に 置 かれた 第 百 五 十 三 番 と 百 五 十 四 番 のペア は 明 らかにソネット 劇 とは 無 縁 の 詩 篇 である 3 この 二 篇 について は 実 際 トマス ソープも 置 き 場 所 に 困 って 末 尾 に 付 録 のように 付 け 足 したものであろう この 第 百 五 十 三 百 五 十 四 番 は 別 として 第 百 二 十 七 番 以 降 に 関 し 拙 訳 書 出 版 の 際 は フォリオ 版 の 配 列 をある 程 度 正 当 のものと 認 める 考 えが 私 にはあった 従 って 百 二 十 六 番 までを 第 一 部 百 二 十 七 番 以 降 を 第 二 部 とみなし 次 のような 解 説 文 を 書 いた ソネット 集 は 読 み 進 めるにしたがい 青 春 の 賛 美 と 老 年 の 悲 哀 の 底 流 にある 時 間 への 抵 抗 というテーマが 次 第 に 巨 きなものとして 表 面 に 浮 上 してくる そうして 結 局 は 詩 こそ 時 間 に 勝 利 するもので 8

155 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 詩 人 は 言 葉 の 無 力 と 空 虚 さを 主 張 するのだが 誤 解 してならない のは それを 伝 えているのがやはり 言 葉 であるということだ 沈 黙 を 主 張 するのは 真 実 を 語 るこの 沈 黙 という 言 葉 なのである 詩 人 は 言 葉 や 技 巧 に 頼 っていないわけではない 詩 人 は 言 葉 を 否 定 する 言 葉 によって 逆 に 言 葉 に 真 実 を 宿 らせるという 技 巧 を 実 に 巧 みに 披 露 して いるのである 君 が 好 ましからざる 者 たち( 男 女 そして 他 の 詩 人 たち)と 付 き 合 いを 深 めていることに 絶 望 した 私 は 君 と 距 離 を 置 こ うとする(あるいは 君 の 方 で もう 私 によりつかなくなる) 第 九 十 七 番 と 第 九 十 八 番 の 不 思 議 な 静 けさに 満 ちた 二 篇 は そのよう にして 君 からしばしの 間 離 れた 状 態 で 書 かれたソネットである 前 奏 となるこの 二 篇 のあと 第 九 十 九 番 では ソネット 集 の 初 め の 頃 に 見 られた 君 の 美 しさへの 賛 美 が 復 活 し 詩 神 への 祈 りに 満 ちた 第 四 幕 の 主 旋 律 が 開 始 される 詩 人 は 必 死 に 詩 の 女 神 の 助 力 を 乞 い 君 への 賛 美 を 復 活 させるが 依 然 として 君 と 離 れた 状 態 のままであることも 暗 示 され 初 めの 頃 のような 無 垢 な 愛 に 回 帰 する ことは もはや 不 可 能 であることが 詩 句 の 端 々から 読 み 取 れる その 愛 の 言 葉 は 初 期 の 頃 のように 喜 びと 輝 きに 満 ちたものではなく 例 えば 初 期 のそれが 朝 のフルートのように 透 明 で 軽 やかな 風 の 中 に 響 き 渡 る 音 色 だったとすれば 第 百 番 代 以 降 の 詩 句 は あたかも 黄 昏 に 奏 でられるチェロのごとく 密 やかで 厳 かな 大 地 の 底 に 沈 みこむよう な 哀 しみを 湛 えた 調 べとなっている この 第 四 幕 でも 特 に 重 要 な 詩 篇 は 第 百 四 番 であろう Suchseemsyourbeautystill:threewinterscold, Havefromtheforestsshookthreesummers'pride, Threebeauteousspringstoyellowautumnturned, InprocessoftheseasonshaveIseen, ThreeAprilperfumesinthreehotJunesburned, SincefirstIsawyoufreshwhichyetaregreen.( 第 百 四 番 ) ここに 至 り 読 者 は 私 が 君 と 出 会 って 三 年 の 月 日 が 流 れ 去 ったことを 初 めて 明 確 に 知 らされる そうして あまりにも 有 名 な 第 十 八 番 ( 君 を 夏 の 日 にたとえようか )の 夏 が 三 年 を 経 て およ そ 八 十 篇 余 のソネットが 記 された 間 に もはや 同 じ 夏 の 姿 をとどめて はいないことにあらためて 気 付 かされ それと 同 時 にソネット 劇 に 終 焉 の 近 づいていることを 予 感 させられる この 最 終 幕 三 十 篇 のソネッ トのおよそ 半 数 で 時 間 がテーマとなっていることは 無 論 偶 然 で はない ソネット 集 の 前 半 においても ( 既 に 老 年 に 達 していると 称 する) 詩 人 は 時 間 に 対 抗 する 詩 の 役 割 とその 勝 利 を 宣 言 していたが ここではそれらがさらに 切 迫 した 響 きを 立 てているよう に 感 じられる 詩 人 自 らが 更 に 老 いを 重 ね 美 神 たる 君 の 美 しさ さえ 実 は 変 わっていて 目 に 映 らないだけかも 知 れない と 記 される に 至 っては ソネット 集 をここまで 辿 ってきた 読 者 は 驚 きを 禁 じ 得 ないであろう これらの 詩 篇 における 詩 人 の 愛 の 最 後 の 深 まりは その 純 粋 さゆえに 時 にはまるで 独 り 相 撲 のような 虚 しさを 示 し そ れと 共 に 詩 篇 の 中 での 君 の 存 在 はむしろ 希 薄 になって 行 って 後 にはただ 私 の 愛 のみが 残 されるようでもある 第 百 二 十 六 番 で 遂 に 彼 は 最 後 のメッセージを 記 す 7

156 FarewelltoTheSonnets 2 大 八 木 敦 彦 なる 表 面 上 のモデルに 過 ぎないのと 同 様 に シェイクスピアは 自 らを 仮 託 したように 見 せかけて ソネット 劇 に 詩 人 という 一 人 の 人 物 を 作 り 上 げ 演 技 をさせていることを 決 して 忘 れてはならない これは 拙 訳 書 のあとがきにも 記 したことであるが 一 体 我 々は 小 説 や 戯 曲 は 初 めからフィクションとして 読 むのが 普 通 なのだが 詩 と なると かなりの 割 合 で 実 際 のことを 記 していると 考 える 傾 向 にある のは 不 思 議 なことだ そうして 作 品 以 外 手 紙 や 日 記 等 の 私 的 な 文 書 を 一 切 残 さず 私 生 活 が 不 明 なゆえに その 実 在 を 疑 問 視 する 学 説 さえいまだに 根 強 く 残 っているシェイクスピアという 作 家 について 考 える 時 私 という 一 人 称 で 語 られる ソネット 集 は 多 くの 評 家 にとって ワーズワースの 記 した 通 り 隠 された 胸 の 奥 を 開 く 鍵 と 見 なすには 格 好 の 作 品 なのだ なるほど 主 観 性 を 尊 び 自 我 意 識 の 表 現 や 告 白 を 好 むイギリス ロマン 主 義 の 先 達 であったワーズワー スにとっては ソネット 集 の 詩 人 の 悩 み 苦 しみは そのままシェ イクスピアの 肉 声 と 聞 こえたかも 知 れない けれども シェイクスピ アにとって 詩 が 戯 曲 と 異 なり 私 的 で 個 人 的 なものでなければならな い 理 由 や 必 要 は 本 当 にあったであろうか それを 逆 に 言 うならば シェ イクスピアは その 戯 曲 においては 自 らを 隠 しているということにな りはしまいか そうして 我 々の 見 つけ 出 そうとしている 天 才 の 素 顔 が その 隠 されたものの 中 にあるというのならば 表 現 されたものの 方 はどれほどの 意 味 を 持 つことになるのだろうか 換 言 すれば シェ イクスピアが 戯 曲 において 発 揮 した 天 才 を ソネット 集 において は 発 揮 しなかったと 考 えることができるのであろうか ソネット 集 における 私 もシェイクスピアにとっては 万 の 心 の 一 つに 過 ぎ ない それが 読 者 にとっては 彼 の 創 造 した 中 で 最 も 興 味 深 い 人 物 の 一 人 となっているだけなのである 読 者 あるいは 評 家 がおそらくこぞっ て 興 味 を 示 すのは ソネット 集 の 詩 人 が 連 綿 と 綴 る 苦 悩 の 表 現 で あろう 肉 感 的 な 黒 い 女 に 身 も 心 も 奪 われ 輝 ける 君 に 至 高 の 愛 を 捧 げたかと 思 えば 嫉 妬 に 悩 まされる 点 もさることながら 同 世 代 の 技 巧 に 長 けた 教 養 ある 詩 人 に 悪 態 をつきながら ライバル 意 識 に 苦 しむ 詩 人 の 姿 は もしもそれがシェイクスピアの 隠 された 胸 の 奥 であるとすれば 願 ってもない 研 究 材 料 であるには 違 いない 如 何 に 隔 絶 した 天 才 を 前 にしても 我 々は その 弱 みや 失 敗 を 見 つけること で そこに 常 人 と 変 わらぬ 姿 を 発 見 し 安 心 して 喜 びを 見 出 そうとす るものなのだ しかしながら 果 たして 天 才 もまた 凡 人 と 同 じとい う 認 識 をいくら 試 みたところで 天 才 の 評 価 に 役 立 つことが 少 しでも あるのだろうか 言 い 方 を 換 えるならば よしんば ソネット 集 が シェイクスピアの 隠 された 胸 の 奥 を 開 く 鍵 であったとしても 鍵 で 開 いた 胸 の 奥 には もはや 知 るに 足 るほどのものは 隠 されていない のではあるまいか 確 かに シェイクスピアにとっては 当 時 のいわ ゆるユニヴァーシティ ウィッツはライバルとして 無 視 できない 存 在 であったろうし 彼 らが ソネット 集 の 私 を 悩 ませる 詩 人 たち のモデルとなっていることを 否 定 するつもりはないのだが 言 葉 を 飾 る 術 を 知 らぬ 詩 人 が 抱 く 劣 等 感 を シェイクスピアその 人 のもの と 見 なすよりも むしろ 劣 等 感 を 客 体 化 しているその 見 事 さに 目 を 向 けるべきではあるまいか その 意 味 で 次 の 詩 行 は 象 徴 的 なのである Thenothers,forthebreathofwordsrespect, Meformydumbthoughts,speakingineffect. ( 第 八 十 五 番 ) 6

157 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 る トマス ソープもたぶんにこれら 二 十 六 の 詩 篇 を 置 く 場 所 には 困 っ て 最 後 に 置 いておくよりほかはなかったのであろう そういう 意 味 では 黒 い 女 詩 篇 は 他 とはまったく 別 個 の 意 図 で 制 作 された 詩 篇 と 考 えることもできるのであり それならば ソネット 集 の 第 二 部 として 末 尾 に 配 置 するのも 意 味 のないことではない しかし 黒 い 女 は 詩 人 の 愛 人 として また 君 の 不 義 の 相 手 として 詩 人 と 君 と 三 角 関 係 を 成 り 立 たせていると 見 なすことも 可 能 ではあり それはソネット 劇 の 筋 書 きとしても 十 分 に 魅 力 的 であるとすれば 黒 い 女 の 詩 篇 が 本 来 は ずっと 前 の 部 分 に 入 り 込 むものだと 考 え ることもできる その 場 合 第 三 十 三 番 から 第 四 十 二 番 にかけて 君 が 不 貞 をはたらく 相 手 は 黒 い 女 であって このような 考 察 に 基 づき サミュエル バトラーは 第 三 十 三 番 から 第 四 十 二 番 の 間 に 第 百 二 十 七 番 から 百 五 十 二 番 までを(そのすべてではなく また 配 列 も 順 序 どおりではなく) 組 み 込 んでいるが 2 これは 確 かに 興 味 深 い 解 釈 である このように 大 胆 な 配 列 の 変 更 を 示 唆 しているサミュエル バトラー も 第 四 十 三 番 から 第 百 十 八 番 までは トマス ソープの 手 になると 思 われる 配 列 をそのまま 踏 襲 している あるいは この 部 分 はソープ の 入 手 した 原 稿 が 詩 人 のオリジナルな 配 列 のまま 残 されていた 部 分 な のかも 知 れないが 一 方 では いくつかのセットになっている 詩 篇 以 外 は 前 後 と 特 に 緊 密 な 関 係 が 認 められないため たとえオリジナル と 相 違 しているにしても 内 容 的 にこの 順 序 で 読 んでも たまたま 破 綻 の 生 ずる 余 地 はないとも 言 える いずれにしても このセクション は 君 への 愛 と 旅 による 離 別 そして 君 の 不 義 (および 詩 人 の 愛 人 との 三 角 関 係 )を 経 た 後 の 愛 の 変 遷 をたどる 第 三 幕 となる 部 分 である 各 詩 篇 は 内 容 的 にすんなりと 進 行 しているわけでは 必 ず しもなく むしろ 波 の 寄 せては 返 すように 一 つの 新 しいテーマが 現 れては また 前 のテーマに 行 きつ 戻 りつしてドラマを 形 成 している とは 言 え それが 故 意 にしくまれた 進 行 の 形 式 であるのか それと も 本 来 正 式 な 配 列 をなしていたものがシャッフルされてこのよう な 状 態 に 至 ったのかを 判 別 することは 困 難 である 私 としては 必 ず しもこの 箇 所 の 配 列 をこのままに 受 け 入 れるのが 正 しいとは 思 わない のだが そもそも 厳 密 な 意 味 での 配 列 ということがシェイクス ピアの 意 図 するものであったかどうかという 疑 問 があるので ここで はこの 問 題 にこれ 以 上 立 ち 入 るのは 避 けたい しかしながらそれでも この 第 三 幕 におけるソネット 群 に 共 通 した 特 質 の 認 められることは 確 かである というのは ここでは 詩 人 の 内 省 が 格 段 に 深 まり かつ ては 君 を 称 え 詩 の 力 を 信 仰 する 存 在 としてのみ 示 されていたの が ここに 至 って 自 らの 非 力 に 苦 悩 する 姿 が 前 面 に 出 され その 意 味 で 主 人 公 が 君 ではなく 詩 人 自 らであると 明 確 に 示 されるよう になったことである つまり このソネット 劇 の 主 人 公 は 謎 めいた W H 氏 のイニシャルで 暗 示 されて 読 者 や 評 家 を 惑 わす 美 神 たる 君 ではないのだ 本 当 の 主 人 公 は 君 にすべてを 捧 げつくし 裏 切 りに 堪 えながらなお 時 と 闘 い 詩 の 力 によって 真 実 の 愛 を 貫 き 通 す 詩 人 の 方 なのである そうしてここに 我 々にとって 最 も 危 険 な 陥 穽 が 仕 掛 けられているのであり それは ソネット 集 の 詩 人 が ソネット 集 を 記 したシェイクスピアその 人 だと 見 なすこ とである ソネット 集 の 中 の 詩 人 である 私 は あくまで シェイクスピアが 創 り 上 げた 人 物 であり ソネット 劇 の 登 場 人 物 とし て 創 造 された 架 空 の 存 在 であって ちょうど W H 氏 が 君 の 単 5

158 FarewelltoTheSonnets 2 大 八 木 敦 彦 Thatthishugestagepresentethnoughtbutshows Whereonthestarsinsecretinfluencecomment. ( 第 十 五 番 ) 直 前 の 第 十 四 番 からの 星 のモチーフを 継 承 しながらも 最 初 の 四 行 で 劇 作 家 の 素 顔 を 確 かに 示 し 置 いて 1 カプレットにおいては 詩 人 の 姿 を 我 々の 前 に 初 めて 表 す AndallinwarwithTimeforloveofyou, Ashetakesfromyou,Iengraftyounew. ( 第 十 五 番 ) 永 遠 を 実 現 するためには 子 孫 がやはり 確 実 であるか それとも 詩 によって 到 達 すべきか 第 十 五 番 から 第 十 七 番 で 逡 巡 をした 末 第 十 八 番 第 十 九 番 において 詩 人 は 詩 を 選 択 する 宣 言 をおこなう この 二 篇 を 第 一 幕 のクライマックスとして 次 の 第 二 十 番 からは 第 二 幕 あるいは 第 二 楽 章 へ 入 ることとなるが ここから 明 らかに 調 性 が 変 化 し 詩 人 は 君 に 率 直 に 愛 を 捧 げる 詩 篇 を 綴 り 始 める もはや 結 婚 を 勧 めることも 子 孫 を 促 すこともなくなるのは 一 見 意 外 でもあ るが 詩 人 が 詩 によって 君 を 永 遠 のものとする 決 意 を 固 めた 以 上 詩 人 が 詩 を 孕 み 詩 を 生 み 出 すためには 君 を 愛 し 君 と 一 体 化 する 必 要 があるわけで ここに 詩 人 と その 美 神 たる 君 との 恋 愛 劇 が 繰 り 広 げられることとなる 本 来 男 女 間 の 恋 愛 詩 の 典 型 とし て 用 いられるのが 通 常 であったソネットの 世 界 に 男 性 への 結 婚 の 勧 めという 異 質 のモチーフを 持 ち 込 むことで 開 始 されたシェイクスピア の ソネット 集 が ここまではパトロンへの 一 種 の 儀 礼 として 読 み 取 れるとしても 第 二 十 番 からは 男 性 同 士 の 恋 愛 詩 へと 変 貌 すること が 多 くの 評 家 を 惑 わしているわけで 例 えばオスカー ワイルドの W H 氏 の 肖 像 のように 同 性 愛 ( 正 確 には 少 年 愛 )としての 解 釈 も 許 す 余 地 が 生 まれるわけであるが フィクションとしてのソネッ ト 劇 においては これは 詩 人 と 美 神 ( 男 性 ではあるが 中 性 的 なイ メージも 見 え 隠 れする)との 恋 愛 劇 として 読 むべきなのだ 第 二 幕 は 冒 頭 こそ 幸 福 感 に 満 ちた 長 調 であるが 詩 人 が 旅 に 出 て 君 と 離 れ さらにその 間 に 君 が 不 義 の 過 ちを 犯 すことで 悲 愴 な 短 調 へと 転 ずる そうして このあたりから ソネット 集 の 配 列 の 問 題 が 浮 上 してくる そもそもシェイクスピアにとって ソネット 集 は 未 完 の 作 品 で あり 今 日 われわれの 眼 にするこの 詩 集 は 不 完 全 な 形 態 のままだとい うことを 再 度 確 認 しておく 必 要 があるだろう さらに 言 うなら こ れらの 中 には 本 格 的 な 劇 作 以 前 の 習 作 群 と 称 すべき 詩 篇 も 含 まれてお り 無 論 そこには この 天 才 詩 人 の 魔 術 的 な 言 語 が 横 溢 してはいる ものの 彼 にはこのソネット 連 作 をひとまとめの 作 品 として 完 成 する 意 思 もなかったであろうし また ここにまとめられているもの 以 外 に 散 逸 した 詩 篇 もたぶんにあったのではないかと 推 測 できる トマス ソープがどのようにして これらのソネットの 原 稿 を 入 手 したかは 知 るべくもないが おそらく 通 し 番 号 の 類 は 最 初 からなくて 詩 篇 は 数 篇 ごとのまとまりとして 束 ねられ ソープはその 内 容 に 応 じて 配 列 を 決 め 何 とか 体 裁 を 整 えたのであろう 従 って その 配 列 に 関 して 様 々な 議 論 が 存 するわけであるが 中 でも 最 も 大 きな 問 題 となるのは 黒 い 女 の 登 場 する 第 百 二 十 七 番 以 降 の 配 列 位 置 である 確 かに ソネット 集 の 末 尾 にこの 黒 い 女 の 詩 篇 が 謎 めいた 付 録 のよう に 付 け 足 されているのは 全 体 のバランスからみても 異 様 な 光 景 であ 4

159 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 のパトロンであり また 共 に 作 品 を 献 呈 されたことのあるこの 二 人 のうち 何 れが 真 の W H 氏 であるかを 決 するのは 極 めて 困 難 で ある 今 日 残 された 肖 像 画 を 見 るかぎり サウサンプトン 卿 がその 玲 瓏 白 皙 な 容 姿 によって ソネット 集 冒 頭 からの 絶 世 の 美 青 年 のモ デルとしては 一 歩 を 先 んじているとも 思 われるが そのように 考 える 時 点 で 我 々は 残 念 ながら 現 実 と 詩 の 世 界 の 真 実 との 混 同 の 過 誤 に 陥 っていると 見 なさなければなるまい つまり W H 氏 というモデルに 関 しては ペンブルック 伯 かサウサンプトン 伯 か ではあろうが それがひとたび ソネットの 中 で 永 遠 の 生 命 を 得 るに 至 っては もはやモデルはモデルに 過 ぎず ソネットに 歌 われた 君 は あくまでロミオやハムレットと 同 じくシェイクスピアの 想 像 力 によって 創 り 上 げられた 人 物 であるということを 忘 れてはならない なるほど 確 かに 詩 人 がこの ソネット 集 を 綴 り 始 めた 契 機 はパ トロンへの 献 呈 という 実 利 的 な 目 的 であったに 違 いない そうし て 若 いパトロンの 美 しさを 褒 め 称 え 結 婚 を 勧 めるという 実 用 的 な 名 目 もあったはずである 故 に これらのソネットを 捧 げられた 人 物 は ソネットの 中 で 呼 びかけられている 君 と 自 分 自 身 とが 一 致 していることを 認 めてはいたであろうが シェイクスピアにとって ソネットの 中 の 君 は もはや 実 在 のパトロンとは 異 なる 純 然 た る 詩 の 世 界 の 住 人 である Fromfairestcreatureswedesireincrease, Thattherebybeauty'srosemightneverdie, Butastheripershouldbytimedecease, Histenderheirmightbearhismemory: ( 第 一 番 ) ソネット 集 は 第 一 番 から このように 実 利 性 と 実 用 性 の 二 本 の レールの 上 を 快 速 に 進 みゆくようであるが 詩 人 の 筆 先 は 若 いパト ロンの 胸 をくすぐりながらも この 世 の 美 と 永 遠 についての 真 理 を 深 く 抉 らずにはいられない そもそも ソネット 集 において 冒 頭 から 不 可 思 議 に 感 じられることは 詩 人 がなぜ 君 に 向 かって 子 孫 を 残 す ことを 勧 めるかという 点 である 詩 人 は 繰 り 返 し 君 に 結 婚 を 促 しており それは 君 が 女 性 と 結 ばれて 愛 し 愛 される 幸 福 を 願 うからだという 詩 句 も 記 されてはいるのだが そのことはあくま でも 子 孫 を 残 す ための 一 過 程 として 捉 えられているに 過 ぎない なるほど 相 手 が 王 侯 貴 族 の 身 の 上 であれば 世 継 ぎの 問 題 は 非 常 に 重 要 であろうが 詩 人 がここで 子 孫 にこだわる 理 由 に 身 の 上 云 々 ということはほとんど 感 じられず 理 由 の 第 一 は 美 しさ なのであ る 即 ち 美 と 永 遠 こそ ソネット 集 を 貫 くテーマであり 君 に 象 徴 される 美 が 永 続 するための 方 法 として 子 孫 が 語 られている のだ しかし それも 実 は 単 なる 序 章 であって 詩 人 の 勧 めを 容 易 に 聞 き 入 れようとしない 君 に 対 し 詩 人 は 子 孫 という 世 間 一 般 の(あるいは 生 物 学 的 には 不 変 の 真 理 である) 永 続 の 方 法 から 脱 却 し 詩 という 芸 術 によって 永 遠 に 達 する 道 を 示 すに 至 る 無 論 これ は 詩 人 の 仕 組 んだプロットであって これが ソネット 集 という 劇 の 第 一 幕 となる 部 分 である ( 以 下 別 表 1 参 照 ) 転 調 は 第 十 五 番 で 訪 れる というよりもむしろ ここから 本 来 のテー マが 開 始 される WhenIconsidereverythingthatgrows Holdsinperfectionbutalittlemoment. 3

160 FarewelltoTheSonnets 2 大 八 木 敦 彦 単 独 の 劇 作 としては 冬 物 語 (TheWinter'sTale)や テンペスト (TheTempest)があるくらいで 英 国 随 一 の 劇 作 家 として 功 なり 名 を 遂 げた 彼 が 故 郷 ストラトフォード アポン エイヴォンへの 隠 遁 をも 考 え 始 めたと 思 われるこの 時 期 に ソネット 集 を 出 版 しなけ ればならなかった 特 別 の 理 由 は 認 め 難 い そして 何 よりも ソネッ ト 集 の 献 辞 が この 詩 集 出 版 の 他 とは 異 なる 状 況 を 物 語 っている TO.THE.ONLIE.BEGETTER.OF./THESE.INSUING.SONNETS./MR.W.H. ALL.HAPPINESSE./AND.THAT.ETERNITIE./PROMISED./BY./ OUR.EVER-LIVING.POET./WISHETH./THE.WELL-WISHING./ADVENTURER. IN./SETTING./FORTH./T.T. 古 来 評 家 によって 数 多 の 説 が 繰 り 広 げられ 未 だ 解 釈 の 定 まるこ とのないこの 暗 号 にも 似 た 献 辞 の 謎 が 解 かれれば おそらく ソネッ ト 集 にまつわる 謎 の 大 半 は 解 明 されるであろう とは 言 え それは この 献 辞 のせいで ソネット 集 の 謎 が 深 まっているというわけでは 決 してない この 献 辞 のあるがゆえに ソネット 集 はその 成 立 の 秘 密 の 一 端 を 確 かにのぞかせてもいるということを 忘 れてはならない それは まず ソネット 集 が T T 即 ちトマス ソープ (ThomasThorpe)と 今 日 では 判 明 している 出 版 業 者 の 意 図 によって 出 版 されたものであるということだ つまり 作 者 ではなく 出 版 人 が このように 献 辞 を 記 しているということから 作 者 であるシェイクス ピア 自 身 には 出 版 の 意 志 がなかったか あるいは 作 者 には 出 版 のこ とはほとんど 知 らされないままに 無 断 で 出 版 されてしまったと 考 え る 方 が 自 然 なのである 当 時 既 に 著 名 な 劇 作 家 であったシェイクスピアのソネット 作 品 を 売 れる とふんで 出 版 したトマス ソープの 慧 眼 は 評 価 すべきであ るが 詩 人 自 らが 編 集 等 に 関 与 していないことによって 全 百 五 十 四 篇 の 構 成 や 配 列 に 問 題 が 生 じたことは 否 定 できない しかし この 点 については 後 述 するとして ここではまず ソネット 集 の 最 大 の 謎 ともいうべき W H 氏 について 考 えたい ソネットの ただひと りの 親 と 記 されている W H 氏 に 対 しては 今 日 まで およそ 十 数 人 の 候 補 が 挙 がっているが それらに 関 する 説 を 大 別 すると 次 の 三 つになる 即 ち ソネット 作 中 に 歌 われた 人 物 とする 説 ソネッ トの 作 者 とする 説 そして ソネット 集 の 出 版 に 大 きな 役 割 を 果 たした 人 物 とする 説 である これらのうち ソネット 集 の 出 版 に 大 きな 役 割 を 果 たした 人 物 では 印 刷 業 者 のウィリアム ホール (WilliamHall)らの 名 が 挙 がっている けれども 出 版 に 関 わる 者 に 対 して ただひとりの 親 という 形 容 はあまりに 大 仰 に 過 ぎるの ではあるまいか 次 に ソネットの 作 者 とする 説 で シェイクスピア 自 身 (WilliamHimself)という 駄 洒 落 と 解 するにしても あるいは ウィリアム シェイクスピア(WilliamShakespeare)でW HはW Sの 誤 植 と 見 なすにしてもかなりに 苦 しいものではあるが それより も 同 じ 献 辞 の 中 でこの 直 後 にシェイクスピアのことを 不 滅 の 詩 人 と 記 していることを 考 えれば この W H 氏 は 詩 人 とは 別 個 に 言 及 されている 人 物 と 考 えるべきであろう 従 って W H 氏 は ペンブルック 伯 ウィリアム ハーバート(WilliamHerbert,3rd EarlofPembroke)あるいは サウサンプトン 伯 ヘンリー リズリー (HenryWriothesley,3rdEarlofSouthampton)とする 諸 説 の 中 でも 二 大 有 力 説 がやはりこの 場 合 は 順 当 であろう ただし 共 に 詩 人 2

161 研 究 論 文 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 2 号 平 成 27 年 3 月 FareweltoTheSonnets 2 FareweltoTheSonnets 2 前 年 度 本 紀 要 に 掲 載 した FarewelltoTheSonnets では 私 が シェイクスピアのソネット を 訳 出 した 際 に 参 考 とした 坪 内 逍 遥 訳 以 来 の 十 点 程 の 既 訳 書 に 関 する 翻 訳 論 としての 総 括 を 記 した 即 ち 原 語 である 英 語 と 翻 訳 された 日 本 語 の 表 現 上 の 問 題 にのみ 焦 点 を 当 てたわけだが 本 論 では もう 一 つの 課 題 として ソネット の 内 容 に 関 する 論 考 をまとめておく 即 ち 本 論 はソネットの 成 立 や 詩 中 のモデルの 問 題 そして 作 者 シェイクスピアの 実 像 等 このソネッ ト 集 にまつわる 謎 に 関 する 考 察 の 総 括 である それにしても シェイクスピアの ソネット 集 が 英 語 による 詩 の 最 高 峰 というのみならず 世 界 でも 最 も 美 しい 詩 集 と 評 されながら これほど 謎 に 満 ちているのはなぜであろうか その 原 因 の 根 底 にある のは そもそも この ソネット 集 の 編 集 や 出 版 が 詩 人 自 らの 意 志 によるものではない と 推 測 される 点 である ウィリアム シェイ クスピアという 劇 作 家 は 紛 れもない 史 上 空 前 の 天 才 詩 人 であるが 彼 がその 詩 才 を 注 ぎ 込 もうとしたのは 芝 居 であった 彼 の 詩 は 台 詞 として 役 者 の 口 から 朗 々と 謳 いあげられ 声 に 乗 せられて 人 々の 胸 中 に 達 することが 眼 目 であって( 彼 の 戯 曲 作 品 がファースト フォリ 大 八 木 敦 彦 OYAGI Atsuhiko オとして 活 字 化 されたのは 彼 の 死 後 である) 詩 集 として 紙 面 に 記 さ れ 机 上 で 読 まれることは 決 して 本 意 ではなかった 無 論 シェイクスピアが 詩 集 として 生 前 に 出 版 した 作 品 が 皆 無 とい うわけではない ヴィーナスとアドーニス (VenusandAdonis) ルークリース 凌 辱 (TheRapeofLucrece)の 二 作 は 確 かに 詩 人 自 らが 出 版 を 意 図 した しかし 詩 人 の 創 作 活 動 の 最 初 期 に 為 された これらの 長 編 詩 は 劇 作 の 方 が 軌 道 に 乗 り 始 める 間 際 の 作 品 であった ことに 加 えて 出 版 された 一 五 九 〇 年 代 初 頭 は ロンドンでペストが 大 流 行 し 劇 場 が 閉 鎖 されたため シェイクスピアには 他 に 作 品 発 表 の 方 法 がなかったという 特 殊 な 事 情 もあった ( 尚 その 他 の 詩 集 情 熱 の 巡 礼 者 (ThePassionatePilgrim)と 恋 人 の 嘆 き (ALover's Complaint)の 二 作 は 収 録 作 のすべてがシェイクスピアの 真 作 とは 証 明 されておらず また 不 死 鳥 と 雉 鳩 (The Phoenix andthe Turtle)は 他 の 詩 人 の 長 編 詩 に 付 録 として 付 け 足 された 短 詩 である ) これらと 比 較 して ソネット 集 がその 出 版 の 事 情 を 全 く 異 にするの は まず この 詩 集 が 一 六 〇 九 年 というシェイクスピアの 創 作 活 動 の 最 後 期 に 世 に 送 り 出 されていることだ これ 以 降 シェイクスピアの 1

162 研 究 論 文

163 目 次 研 究 論 文 FarewelltoTheSonnets2 大 八 木 敦 彦 1

164 秋 田 公 立 美 術 大 学 研 究 紀 要 第 二 号 平 成 二 十 七 年 三 月 二 十 五 日 印 刷 平 成 二 十 七 年 三 月 二 十 五 日 発 行 編 集 秋 田 公 立 美 術 大 学 附 属 図 書 館 運 営 委 員 会 紀 要 編 集 部 会 委 員 長 島 屋 純 晴 委 員 坂 本 憲 信 安 藤 郁 子 皆 川 嘉 博 小 田 英 之 今 中 隆 介 金 孝 卿 小 杉 栄 次 郎 澤 田 享 大 八 木 敦 彦 装 丁 坂 本 憲 信 発 行 秋 田 公 立 美 術 大 学 秋 田 市 新 屋 大 川 町 一 二 三 〇 一 八 八 八 八 八 一 〇 〇 印 刷 株 式 会 社 三 戸 印 刷 所

165

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