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1 脊髄小脳変性症 脊髄小脳変性症とは 脊髄小脳変性症 = 脊髄と小脳が萎縮する病気 中枢神経 : 大脳 間脳 小脳 脳幹 脊髄 大脳 = ものを考えたり, 感じたり, 運動のプログラムが存在する脳 間脳 = 生き生きした生命感情を司る脳 小脳 = 運動がスムーズにいくように調節し バランスを保つために必要な脳です 脊髄小脳変性症の歴史的背景 < 過去の分類 > Greenfield の分類 (1954) 1 脊髄型 2 小脳型 3 脊髄 & 小脳型 脳幹 = 情報を脊髄に伝えたり 脊髄から入ってきた情報を小脳 間脳 大脳に伝達する役割をしています 脊髄と小脳とが病的に変性していく ( 壊されていく ) 病気が 脊髄小脳変性症 (spino cerebellar degeneration=scd) と呼ばれているのです Harding の分類 (1982) 1 常染色体劣性遺伝性疾患 Friedreich s ataxia, Early onset cerebellar ataxiawith retained tendon reflexes Ataxia with isolated vitamin E deficiency(aved), With hypogonadism.etc. 2 常染色体優性遺伝性疾患 (autosomal dominant idiopathic ataxia; ADCA) ADCA1: 眼球運動障害や錐体外路障害を伴うもの ADCA2: 網膜色素変性を伴うもの ADCA3: 純粋小脳失調であるもの ADCA4: ミオクローヌスや聴力障害を伴うもの周期的運動失調 3X 染色体遺伝性疾患 わが国の分類 (1997) オリーブ橋小脳萎縮症 (OPCA) 皮質性小脳萎縮症 (CCA) Machado-Joseph 病 (MJD) 遺伝性オリーブ橋小脳萎縮症遺伝性皮質性小脳萎縮症歯状核赤核 淡蒼球ルイ体萎縮症 (DRPLA) 遺伝性痙性対麻痺 Friedreich 型運動失調症 1

2 現在の脊髄小脳変性症の位置づけ < 脊髄小脳変性症の定義 > 脊髄小脳変性症 (SCD) とは漸次進行性の小脳運動失調を中核症状として その他にも種々の症状が複合して発展していく それぞれに原因が異なる神経変性疾患の総称 ( 症候群 ) である 神経病理学的には 小脳運動失調を惹起しうる小脳系病変が少なくとも 1 つ存在せねばならない ただし 小脳症状は他の複合症状 例えば 錐体外路症状や運動ニューロン系などの障害によって隠蔽されることもある すなわち SCD は臨床病型が異なる単一な病気ではない 脊髄小脳変性症の分類 1 常染色体優性遺伝性疾患群 2 常染色体劣性遺伝性疾患群 3 明らかな誘因を持たない非遺伝性疾患群 4 体外性の誘因を持つ疾患群 5 体内性の中枢神経系以外の誘因を持つ疾患群 原 因 疫 学 有病率は人口 10 万人あたり 2 ~ 4 人男女比は 1.5:1 で男性にやや多い それぞれの疾患で原因 病態生理は異なる 遺伝性の場合 = 遺伝子異常 Friedreich 病 遺伝性痙性対麻痺 = 20 歳以下に多い 晩発性小脳皮質萎縮症 オリーブ橋小脳萎縮症は 40 歳以上 わが国と欧米における頻度とにあまり差はない 原因遺伝子の機能障害 中年期以降の発症が多いが 遺伝性の場合 10~20 歳代で発症 ゆっくりながらも進行性 病状の進行速度は疾患によって異なり また個人差も大きく 予測は必ずしも容易ではない 症状 1. 小脳障害 : 運動の調節 制御の障害 運動失調をきたす 運動分解, 測定異常 指鼻試験 膝踵試験 2. 歩行障害 : 不安定 千鳥足歩行 転倒しやすい 自転車も困難 3. 言語障害 : 不明瞭で聞き取りにくい 4. 手の細かい動作が困難 : 振え 習字困難 5. 嚥下障害 2

3 共同運動障害 反復運動障害 回内 回外運動 運動失調 立位 歩行 以下の症状も現れることがある パーキンソン症状 : 動作緩慢 体が硬くなる 錐体路症状 : 足のつっぱりによる歩行障害 自律神経症状 ( 排尿 排便障害 起立性低血圧 ) 眼振 ( 眼球が勝手に動き 景色が揺れたり 2 つに見えるなど ) 不随意運動 : 手足が勝手に動いてしまう. 小脳症状をきたす小脳系病変 1 小脳皮質 2 歯状核遠心系 小脳の入出力系 前庭 小脳系脊髄 小脳系橋 小脳系中脳小脳中脳小脳中脳小脳 3 橋核小脳求心系 4 下オリーブ核小脳求心系 5 脊髄小脳求心系 橋橋虫部橋延髄片葉 小節延髄延髄 小脳半球 6 前庭小脳系 小脳の入力系 小脳の出力系 3

4 SCD における臨床上の注意点 1 人の患者であっても病気の進行に伴って主体となる臨床症状が変化することが多い 遺伝性疾患の時には患者の発病年齢に応じて症状が変化する また, 同じ病気でも発症年齢の違いから臨床症状 経過が異なる 常染色体優性遺伝性脊髄小脳変性症 Aiutosomal dominant hereditary spinocerebellar ataxia SCA locus gene mutation type mutation site protein 1 6p23 ATXN1 CAG repeat coding exon atain q24 ATXN2 CAG repeat coding exon atain q32 ATXN3 CAG repeat coding exon atain q22 PLEKHG4 5 11q13 SPTBN2 coding exon β-Ⅲspectrin 6 19p13 CACNA1A CAG repeat coding exon α1aca+channel 7 3p14 ATXN7 CAG repeat coding exon atain q21 non-coding CTG repeat 3'-UTR q13 ATXN10 non-coding AATCT repeat ATTCTrepeat 11 15q14 TTBK2 12 5q31 PPP2R2B non-coding CAG repeat 5'-UTR PPP2RB 13 19q13 KCNC3 missence coding exon KCNC q13.4-qter PKCγ missence mutation coding exon PRKCG (PKCγ:protein kinase) 15 3p26 ITPR1 16 3p26 ITPR1 17 6q27 TBP CAG repeat coding exon TATA (basic transcription) 18 7q p21-1q p p21-1q p13-p p15-p p q34 FGF14 missence, frame shift coding exon FGF p p26 ITPR1 DRPLA 12p13.31 DRPLA CAG repeat coding exon atrophin-1 Friedreich GAA repeat coding intron FTL 19q13.3-q13.4 FTL 2 base pair insertion coding exon Ferritin light chain 4

5 ポリグルタミン病の特徴 常染色体優性遺伝性疾患群の中でポリグルタミン病は現在まで原因遺伝子の構造が明らかになったものは 9 つある アミノ酸 ( グルタミン ) ポリグルタミン病 = CAG repeat 病 CAG repeat 数 負の相関 発病年齢発症年齢 が下がって症状が重くなる = 表 現促進現象 (anticipation) ポリグルタミン病 (CAG リピート病 ) SCA1 SCA2 SCA3/MJD SCA6 SCA7 SCA17 DRPLA (Huntington 病 ) (SBMA) DRPLA 異常伸長タンパク質 ポリグルタミン蛋白の凝集過程 misfolding βシート構造 ユビキチン プロテアソーム系結合 SCA2 の核内封入体 分解 オリゴマー形成 オートファジー ライソソーム系結合 凝集 アミロイド線維状凝集体形成 封入体形成 5

6 ポリグルタミン病の神経細胞死 ポリグルタミン病の治療ターゲット 細胞質 分解系 オリゴマー形成アミロイド線維状凝集体形成封入体形成 mrna 核 発現抑制 CAG リピート伸長 分解促進 封入体 転写活性化 封入体ポリグルタミン蛋白凝集 オリゴマー核移凝集阻害神経細胞保護行抑制細胞死抑制ミトコンドリアミトコンドリア活性 細胞死 ポリグルミン病の治療戦略 ポリグルタミン異常蛋白発現抑制 RNA 干渉 Misfolding 阻害 分子シャペロン (Hsp70, Hsp40) 凝集阻害 trehalose,qbp-1, Congo-red 分解促進 rapamycin, 17-AAG 核移行抑制 leuprorelin 転写活性化 ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤 ミトコンドリア活性化 creatine, CoQ10 神経細胞保護 神経栄養因子 (CNTF, BDNF, GDNF) 細胞死抑制 caspase 阻害薬,minocycline 現在試行中のポリグルミン病の治療 TRH( タルレチン ) ミトコンドリア活性化 : コエンザイムQ10 ビタミン剤 : ビタミンE SCA3: セロトニン1A 受容体作動薬 (tandospirone) 抗てんかん薬 (lamotrigine) SCA2:GABAの低分子誘導体 (piracetam) Kチャンネルブロッカー :3,4-diaminopyridine 大量免疫グロブリン 今後の展望 ポリグルタミンは可逆的に回復できる病気であるか? 変異蛋白の発現 off のタイミングを変えて回復の有無を調べた結果, ある程度の期間内であれば回復が可能 病理変化は核内封入体を含め, 発現が off になりさえすれば完全に回復する 最近発見された遺伝性脊髄小脳変性症 SCA14 SCA27 FTL 遺伝子異常 16q-ADCA 治療は早ければ早いほど回復しやすい 6

7 QuickTimeý Dz TIFFÅià èkç»çµåj êlí ÉvÉçÉOÉâÉÄ Ç Ç±ÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾ å ÇÈǞǽ Ç ÇÕïKóvÇ- Ç ÅB 各病型毎の発症してからの年数と歩行との関係 常染色体劣性遺伝性脊髄小脳変性症 主な常染色体劣性遺伝性脊髄小脳変性症 Friedreich 運動失調症眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う早発型失調症 (EAOH/AOA1) AOA2 毛細血管拡張性失調症 (Louis-Bar 症候群 ) Ataxia-telangiectasia-like disorder (ATLD) SCAN1 弧発性脊髄小脳変性症 弧発性脊髄小脳変性症 1. 多系統萎縮症 (MSA) オリーブ橋小脳萎縮症線条体黒質変性症シャイ ドレーガー症候群 2.( 晩発性 ) 皮質性小脳萎縮症 = LCCA 7

8 多系統萎縮症 Multiple system atrophy Olivopontocerebellar (OPCA) ---- MSA-C atrophy 歴 史 1900 年 Dejerine と Thomas にょる最初の記載 1964 年 Adams,van Bogaert,Van der Eecken が 4 剖検例を報告 1969 年 Oppenheimer が多系統萎縮症 Multiple system atrophy (MSA) を提唱 Striato-nigral (SND) ---- MSA-P degeneration 1989 年 Papp が MSA に特異的に出現するグリア細胞質内封入体 (GCI) を発見 1998 年 Tu PH, Wakabayashi らは MSA でみられるグリア細胞質内封入体 (GCI) が α シヌクレイン陽性であることを報告 どのような病気 孤発性の脊髄小脳変性症の代表的な疾患感染性の疾患ではない. オリーブ橋小脳萎縮症 ( 運動失調主体 ) シャイドレーガー症候群 ( 自律神経症状主体 ) 線条体黒質変性症 ( パーキンソニズム主体 ) 多系統萎縮症 (Multiple system atrophy:msa) 疫 学 歳代に発症男 > 女 parkinsonismを呈する患者の約 8% とくに人種や職業 性別による差なし感染性なし生活歴, 輸血歴, 外傷歴, 他の病気の有無, 食歴, タバコ, アルコールなど生活習慣とも関係はなし 原 因 原因不明オリゴデンドログリアといわれる脳内の細胞に特異的な固まりがある (glial cytoplasmic inclusion,gci) GCIの主要成分 = パーキンソン病でみられる特異的な固まりの主要成分同じ α シヌクレイン αシヌクレインがなぜ蓄積? 解明が本症の病態機序解明の鍵? 臨床症状 小脳性運動失調 両下肢から発症する安静時振戦以外の Parkinson 症状 眼振, 錐体路徴候 不随意運動 (myoclonus, dystonia, chorea, athetosis) 自律神経症状 排尿障害, 起立性低血圧, 便秘, 発汗障害, 声門開大障害 陰萎 8

9 検査所見 MRI: 小脳 脳幹の萎縮 被殻外側の異常 ( 萎縮,T1で高 低信号 T2で低 高信号 ):MSA-P 橋横走線維の変性 ( 十字サイン ), 中小脳脚の signal 変化 両側大脳中心前回に高信号領域と運動皮質に低信号領域 治 TRH 療法 療 その他 ( 対処療法 ) バーキンソニズム :L-DOPA 合剤 ( 初期には有効 ) 自律神経系 ( 起立性低血圧, 排尿障害, 便秘 ) などが治療起立性低血圧 : 交感神経作動薬 ( アメジニウム, ミドドリン, ドロキシドーパ ), 下肢の弾性ストッキング, 弾性包帯排尿障害 ( 頻尿, 排尿困難 ): 抗コリン剤, コリン作動薬,α 遮断薬, 自己導尿睡眠時無呼吸 ( 突然死 ):NPPV(CPAP ないし BiPAP ), 気管切開術 病理所見 1 線条体 - 黒質系 被殻 ( 後部背外側 ) 黒質の神経細胞の脱落, グリオーシス 脱落は主として小型神経細胞, 尾状核の変化は軽度 黒質は緻密帯のみではなく網状帯にも強いメラニン含有細胞の脱 落とグリオーシスを認める. レビー小体がほとんどない. 2 オリーブ 橋 小脳系 下オリーブ核の神経細胞の脱落, グリオーシス 橋は被蓋部は保たれ, 橋底部の横走線維の変性と橋核細胞の脱落 小脳は白質の変性, 萎縮が著明,Purkinje, 顆粒細胞の脱落は 中等 軽度心, 歯状核は保たれる. 中小脳脚の著明な萎縮 ( 小脳求 系の変性 ) 3 自律神経系胸髄中間外側核,Onuf 核の神経細胞脱落, 青斑核, 迷走神経背側核の変性 4 グリア細胞質内封入体 (GCI) --- 微小管由来 GCIは組織学的に病変がある部位だけでなく, 大脳皮質表層, 小脳皮質, 脊髄後索を除いて広範囲に出現している. 進行度 予後 MSAとして2 15 年平均 7~10 年肺炎 呼吸不全 窒息 最近の話題 < 病因の解明 > Tu PH, Wakabayashi らは MSA でみられるグリア細胞質内封入体 (GCI) が α シヌクレイン陽性 αシヌクレイン = 1988 年に同定 神経終末に存在する蛋白の 1 つで さらにアルツハイマー病の脳に沈着するアミロイドの一種である non-aβcomponent of Alzheimer s disease amyloid (NAC) の前駆体と同一 9

10 脳の発達期におけるシナプスの形成や可塑性に関与していると考えられている. α シヌクレインは MSA の GCI を形成する分子で神経細胞のみでなくむしろオリゴデンドログリアに強く発現 -----> 病因として注目 (MSAにおけるαシヌクレイン遺伝子の変異, 発現量の変化, 翻訳修飾を含めた蛋白構造の変化の可能性からα-synucleinopathy) MSAにおけるαシヌクレイン遺伝子の変異はない MSAではオリゴデンドロサイトにアポトーシス関連抗原の発現が認められている. GCIにαシヌクレインとリン酸化タウの共存 仮説 : αシヌクレインの蓄積, 凝集 GCIの形成 オリゴデンドロサイトの障害 ミエリン, 軸索の変性 神経細胞死 日本では全国の MSA 患者から遺伝子を集計してその遺伝学的特徴や機序の解明を試みている (JAMSAC) 10

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